「リーリン、家具はここでいいの?」
「ええ。ありがとう、レイフォン。引越しを手伝ってくれて」
「別にいいよ、これくらい」
グレンダンからツェルニにやってきた、レイフォンの幼馴染であるリーリン。彼女はこれから、短期留学生としてツェルニに在籍することが決まっていた。
そのための住居を見つけ、今は引越しの真っ最中。レイフォンはその手伝いとしてここにいた。
「それにしても、リーリンがツェルニに来るとは意外だったよ。何しに来たの?」
「……あら、幼馴染が元気にやってるか、様子を見に来たらいけないの?」
何気なく、発せられたレイフォンの疑問。その疑問に、リーリンの表情が引きつった。
「え、でもリーリンってグレンダンで学校に通ってるんだよね。なのに、そっちを休んでまでわざわざツェルニに来るの?」
「別にいいじゃない……」
もっともな意見を言うレイフォンだが、リーリンは表情を暗くし、拗ねたようにいう。
その真意をレイフォンに理解することはできなかったが、この話題は触れない方がいいのだろうと思い、話題を変えた。
「そういえば、養父さんは元気?」
「ええ、元気よ。ちょっと前に怪我をしたんだけど、今はもう完治してるし」
「え、怪我をしたの!?」
「そうよ。あの時は大変だったんだから」
この話題の選択も失敗だったらしい。そういえば、マイアスでサヴァリスが言っていた。寄生型の汚染獣に乗っ取られたガハルドが、デルクを襲ったと。リーリンの言う怪我とは、多分その時のことだろう。
ならば、次にどんな話題を振ればいいのか?
とりあえず、自分達も年頃の男女なので、たわいのない恋愛話を振ってみることにした。
「そういえば、リーリンも年頃だし、好きな人とかできたの? 身内びいきじゃないけど、リーリンはかわいいからもてるんじゃないかな?」
「……………」
「痛いっ!?」
何故かリーリンは無言で、そのままレイフォンにビンタを放った。いきなりリーリンがビンタを放つという不測の事態に、レイフォンはかわすこともできずに、ただ唖然と彼女を見つめることしかできなかった。
「……え、何? 僕、何かした? 何でリーリンに叩かれたの?」
「うっさい! もっとデリカシーを学びなさい、馬鹿レイフォン!」
やっとのことで投げかけた抗議の言葉だったが、リーリンはとても彼女らしからぬ乱暴な口調で抗議を跳ね除ける。
どうやら、この話題はもっとも触れてはいけない話題だったらしい。
「わけがわからないよ……」
「何か言った!?」
「いえ、何も……」
いろいろといいたいことがあったレイフォンだが、リーリンの出す威圧感によってそれは黙殺されてしまう。
もうこうなったら、とっとと作業を終えて帰ろうと、引越しの手伝いを再開した。
「ねえ……レイフォン」
「なに?」
ベットを一人で軽々と持ち上げ、指定の場所に移動させる。その最中に、リーリンがレイフォンに問いかける。
「フェリさんとは、仲良くやっているの?」
「もちろん。この間僕が寝込んだときは、フェリが看病してくれたんだよ。あの時は本当に嬉しかったなぁ」
「……………」
レイフォンはとてもにやけた表情で、とても嬉しそうに語る。
その表情と答えに、リーリンの表情が強張った。
「そう……うまく、やってるんだ」
「そうだよ。リーリンも結婚……はまだ早いとして、誰かと付き合えばいいのに。リーリンならきっと、いい人が見つかるよ」
レイフォンはベットを下に置き、清々しい笑顔でリーリンに言い放った。
「……………」
「痛いっ!?」
それが間違いだった。またもリーリンからビンタをもらい、打たれた頬を手で押さえる。
理由はわからないが、今日のリーリンはかなり機嫌が悪いらしい。
「えっと……次は何をすればいいのかな?」
「そうね、それじゃあ……」
レイフォンにできることは、これ以上リーリンの逆鱗に触れないように、言われたとおりの作業を黙って続けることだけだった。
†††
「リーリン、どうしたんだろう?」
結局、リーリンの機嫌は始終悪いままだった。何が何なのか理由がわからないレイフォンは、引越しの作業が終わると逃げるように部屋を出てきた。
「レイフォン、手伝いは終わったのか?」
「あ、隊長」
リーリンの部屋は二階にある。階段を下り、一階のリビングを通ると、ニーナに声をかけられた。リーリンの暮らすこととなった寮は、ニーナも暮らしている女子寮だった。
「はい、今さっき」
「そうか。ご苦労だったな。お茶でも飲むか?」
「あ、じゃあ、いただきます」
お茶を飲んでいたニーナはレイフォンにも勧め、一仕事終えたばかりのレイフォンは断る理由もなく受け入れた。
ニーナはポットのお湯を急須に注ぎ、カップに淹れてレイフォンに差し出す。
「ありがとうございます」
レイフォンはカップを手に取り、お茶を口にする。
「おいしいですね」
「そうか、それはよかった。それにしても、こんな時期に、この寮に二人も住人が増えるとは思わなかったぞ」
「僕も意外でしたよ。まさかリーリンがツェルニに来るなんて……隊長、リーリンをよろしくお願いします」
「ああ、任せろ……と言いたいところだが、私は少々家事が苦手でな。この寮ではあまり力になれないかもしれん」
お茶を飲み、茶菓子を食べながら世間話に興じるレイフォンとニーナ。
大抵はフェリと一緒にいるレイフォンだったが、今日はそのフェリがいない。ユーリと共に、ブリリアント・エクスカリバーを連れて動物病院へ行ったからだ。
ペットとされるフェレットは、発情期に体臭が非常に強くなったり、凶暴になるために去勢、または避妊手術が必要となる。一見かわいそうにも思えるが、これもフェレットを飼うことにあたって必要な処置だ。中には去勢などをせずにこの臭いを嫌い、捨てる、または処分するといった無責任で心無い飼い主もいるほどだ。そうならないためにも、この処置はとても重要だった。
そんなわけで、今日のレイフォンは完全フリー。つまり暇だった。特に予定もなく、だからリーリンの手伝いをしていた。その手伝いも終わり、これからどうしようかと思考を巡らせるが、特に何も思いつかない。
「これからどうしようかな……」
「む、今日はもう予定がないのか?」
「そうなんですよ。フェリはユーリと出かけてますから、得にすることがなくて」
「ならば戦いましょう」
世間話をしていたレイフォンとニーナの間に割って入ってきたのは、リーリンと同じく、新たにこの寮の住人となる少女だった。
名はクラリーベル・ロンスマイア。レイフォンを追ってツェルニへとやってきた少女だ。
「はい」
「あら、美味しいですね、このクッキー」
レイフォンはクラリーベルに茶菓子のクッキーを差し出し、クラリーベルはそれを食べる。そして自分もお茶をすすり、目を細めてから言った。
「それで、今日はどうしようかって話なんですけど……」
「だから、私と戦いましょうよ!」
「なにか、いい暇つぶしはないでしょうか?」
「無視しないでください! 暇なら、私と戦おうと言っているのですよ、レイフォンさん!!」
レイフォンは、クラリーベルの提案をあからさまに流そうとしていた。それを許さないクラリーベル。
ひときわ大きなため息を吐いたレイフォンは、鬱陶しそうな視線でクラリーベルを見つめる。
「そんなことをしたら……死ぬよ」
「っ……!?」
洒落や冗談ではない。レイフォンから吐かれた言葉に、クラリーベルは思わず背筋を震わせる。
これでも、クラリーベルはグレンダントップクラスの実力を持つ武芸者だ。さすがに天剣並みとはいかないが、彼らに迫れるほどの実力を持っている。つまり、勝つことは不可能だが、それでもそれなりの勝負ができるだろうと自負している。
だが、今のレイフォンを前にして、果たしてそれなりの勝負ができるのだろうか?
どういった経緯かは知らないが、今のレイフォンには廃貴族が取り憑いている。ただでさえ強かったレイフォンが、洒落にならないほどの力を手に入れた。
その力はクラリーベルを一蹴し、同じ天剣だったサヴァリスをも退けるほどだ。そんな存在に、自分は勝てるのだろうか?
いや、それよりも、戦って無事にいられるのだろうか?
「上等っ!」
そんなことは関係ない。考えても仕方がない。戦う前から自らの保身を考えるなど、そんなのクラリーベルの性質ではない。
思い立ったらすぐに行動。それがクラリーベルの性質だ。だからこそ、グレンダンを家出同然に出てきてここにいる。レイフォンと戦うために、ツェルニへとやってきたのだから。
「はぁ……」
レイフォンはもう一度、大きなため息を吐いた。もはや諦めたようにカップをテーブルに置き、玄関へと向かう。
「外に出ようか。遊んであげるよ」
「遊びじゃありません! 本気で来てください」
「そんなことをしたら、本当に死ぬよ。というか、ツェルニがもたない」
レイフォンはクラリーベルを連れ、そのまま外へと出て行ってしまった。それを見送るニーナ。
しばらくすると外で轟音が響き、都市が揺れた。一瞬、都震かと思ってしまうほどに激しい揺れだったが、揺れはすぐに収まった。それからは、拍子抜けするほどに静かな雰囲気が流れる。
それからまたしばらくして、レイフォンが戻ってきた。その手には気絶したクラリーベルを抱え、玄関から入ってくる。
「終わりました」
「ああ、ご苦労だったな……」
レイフォンはそう言うと、そのままクラリーベルをソファに寝かせた。
お姫様抱っこという、抱えやすい抱き方で抱き上げていたが、ソファに置く時は少々乱暴だった。おかげでクラリーベルがなにやら呻いていたが、レイフォンは気にせずに、テーブルに置かれていたお茶の残りを口にする。もうすっかり冷めていた。
「それにしてもお前は、本当にとんでもないな」
「え、そうですか?」
ニーナは新たに熱いお茶を淹れ、それをレイフォンに差し出す。頭を下げて感謝するレイフォンだったが、ニーナから吐かれた言葉に今度は首をかしげた。
「クララだが、彼女はかなりの実力の持ち主だろう? それなのに彼女を瞬殺とは……お前はどれだけむちゃくちゃなんだ?」
クララとは、クラリーベルの愛称だ。彼女の親しい間柄の人物は、皆そう呼ぶらしい。
この寮に来てまだ日の浅いクラリーベルだが、その人当たりの良い性格から寮生達とは良好な関係を築いているようだった。ニーナがクララと呼んでいるのもその証拠だ。
また、クラリーベルはこの寮で暮らす住人の中で、ニーナを除いた唯一の武芸者である。あとの住人は全て一般人。同じところに住む者として、同じ武芸者として、訓練を共にしたこともあるのかもしれない。
だからこそ、ニーナはクラリーベルの実力を知っている。
「そうですね……クラリーベルさんはグレンダンでもかなりの実力者でしたから。確かに僕の地力が上がっているんでしょう。これも廃貴族の力というやつですか?」
天剣に迫る実力の持ち主を一蹴。それは明らかに、レイフォンの力が増大しているということだ。
最近では更なる剄の増幅が見られ、自分でもどこまで強くなるのか不安でもある。
「けど、どんなに強くなれるからといって、この間のようなことはもうごめんですけどね」
「あの時は大変だったな……お前の存在が、どれほど重要なのか身に染みたよ」
「やめてくださいよ」
ニーナの冗談に、レイフォンは苦笑を浮かべる。ソファでは、うんうんとクラリーベルが魘されていた。
フェリはいないが、たまにならこんな日もいいかもしれない。
おまけ
「うぅ……不甲斐ないです」
レイフォンにやられ、気絶したクラリーベルだが、しばらくすると見事に復活を果たした。
今はソファに座ったまま、先ほどの戦闘を思い出して反省中だった。
「そもそも、反則過ぎるんですよ! レイフォンさんに廃貴族って時点で! もとから剄量は天剣随一と言われてたのに、それに更なる剄の増大って……それをどうやって倒せっていうんですか!? もう陛下かリンテンス様を呼んできてください! 私にも廃貴族の一体や二体憑けば負けませんのに……」
というか、もはや愚痴ってた。ああだこうだと独り言のようにつぶやき、恨めしそうにレイフォンを見つめる。
ニーナはすでに自室に戻っており、ここにいるのはレイフォンとクラリーベルだけだった。
「そんなこと言われても……あげれるんならあげたいんですけどね、廃貴族」
「何ですかその物言いは!? レイフォンさん、あなた今、私を侮辱しましたね!!」
クラリーベルの恨み言に対し、レイフォンは平然とそんなことを言う。その言葉が、クラリーベルの癇に障った。
「いや、別にそんなつもりは……」
「そんなつもりはなくともしました! いいですか、レイフォンさん。あなたはサヴァリス様の記録を破る十歳で最年少天剣授受者となり、私達同年代から下の武芸者にとっては憧れの的なんですからね!」
「えー、嘘だぁ」
「嘘なもんですか!」
「だって、僕は犯罪者だよ」
「一般市民の感覚と武芸者の感覚を一緒にしないでください。そもそも、グレンダンでは武芸者道とでも言うべき高潔な精神というのは、グレンダンでは割と少数派だって知ってるじゃないですか」
「うーん、そんなこともないと思うけど。サリンバンの源流だってことで、サイハーデンは結構軽蔑されてたよ。傭兵嫌いだよね、グレンダンの人って。なんでだろ?」
「それは、根無し草だからというよりは、グレンダンという過酷な戦場から逃避して、生温い余所の戦場で粋がってるから、でしょうか?」
「ああ、確かに」
サリンバン教導傭兵団に対する、クラリーベルの仮説。それにレイフォンは、なるほどと相槌を打った。
「あいつらって、本当に粋がってるよね。実際のところ弱かったし。戦場の犬とか偉そうなことほざいてて、結局はそこらの野良犬以下だったよ」
レイフォンはとてもレイフォンらしからぬ口調で、辛らつな言葉を吐く。その言動からはグレンダンの住人以上に傭兵団を嫌っており、まるで因縁でもあるかのようだった。
「えっと……レイフォンさん。ひょっとして、傭兵団と戦ったことがあるのですか?」
「あるよ。その結果、傭兵団は潰れたらしいけど」
「潰したんですか!? レイフォンさんが! やっぱりあなたは最高です!!」
まるで自分のことのように誇らしげに言うクラリーベルだったが、レイフォンからすれば満足のいく話ではない。
「そうかな? でも、団長が未だに生きてるのが気に入らないんだよね。あ、そうだ。クラリーベルさんが傭兵団の団長を倒し(殺し)たら好きなだけ戦ってあげるよ。本気を出せって言うなら……まぁ、死なない程度に本気を出してあげるからさ」
いいことを思いついたと、そんな提案をクラリーベルに出してみる。対して、クラリーベルは思った以上に乗り気だった。
「本当ですか!? あ、それとは別にレイフォンさん、私のことはクララと呼んでください」
「倒したらそっちも考えるから」
「本当ですね? 約束ですよ! では、いってきます」
「いってらっしゃい」
クラリーベルは寮を飛び出し、傭兵団の団長を倒すために弾丸のように出て行った。
だが、その倒すべき相手、ハイアがどこにいるのか知っているのだろうか?
「さて、僕も帰ろうかな」
家に帰って、掃除でもしようかと考える。せっかくだから、この話をサヴァリスにしても面白いかもしれないと思った。
あとがき
最近放っていた、リーリンとクララを出してみました。
フェリが大勝利状況なので、彼女達の出番が本当に少ない……クララは好きなキャラなのに。
そのクララですが、原作最新刊では見事主役回でした。クララがかわいすぎる! 妄想が膨らみ、クララ一直線のアイデアが浮かんでくる内容でした。
クララって中二キャラだったんですね。なんだか最近、中二キャラが多い気がしますw
そんなわけで今回は、中二全開なクララの短編をおひとつ!
念威少女 魔磁狩ユーリ
第一話 念威少女誕生
「力を貸して!」
空から落ちてきた、一匹の変な生き物。名をカラスミという。
このカラスミとの出会いが、どこにでもいる普通の少女、ユーリの日常を変えることになるとは思ってもいなかった。
『なにあれ? なにあれ!?』
「あれが魔磁(まじ)だよ! 世界を侵食する存在。僕達の敵だ」
正体不明のカラスミ以上に変な生き物に追われ、ユーリはパニックとなる。
とにかく走った。カラスミを抱え、全力で逃げる。
『どうすればいいの?』
「倒せばいいんだよ。この、ラ・ピュセルを使って!」
ラ・ピュセルと呼ばれた長大な杖。それをユーリに渡し、カラスミは言った。
「さあ、呪文を! 僕に続いて。ラ・ピュセル構えて、ショウ・ミー・ハート」
『ショウ……ミー・ハート?』
その言葉とともに、ユーリの体が光に包まれた。いつの間にかその身を纏っている純白の戦闘衣。この衣服のところどころには、フリフリのふりるが付いていた。
『すごい……』
「君は今日から念威少女だ! さあ、その力で魔磁を倒すんだ!!」
『うん!』
カラスミの言葉に頷き、ユーリはラ・ピュセルを振るった。念威端子がラ・ピュセルから飛び出し、変な生き物の進路上に配置される。
そして起爆。念威爆雷だ。爆発に巻き込まれる変な生き物。
『やった!?』
「それ、やってないフラグ!!」
カラスミの悲鳴染みた言葉とともに、爆煙の中から変な生き物が飛び出してくる。変な生き物は、そのままユーリに飛び掛るように襲ってきた。
『きゃっ!?』
ユーリは地面を転がり、なんとか変な生き物の攻撃をかわす。すぐに立ち上がったが、変な生き物の目は以前とユーリの姿を捉えていた。
「念威爆雷じゃ奴は傷つけられない……雷因性砲撃(らいいんせいほうげき)を使うんだ!」
『雷因性砲撃? なにそれ!!』
「磁性結界による指向性を付加させることによって……ええい、口で説明しても仕方ない! 端子を円のように配置して、イメージするんだ。そこから放たれる必殺の一撃を!」
『えぇ!? こ、こう……?』
ユーリは半信半疑のまま、カラスミに言われたように念威端子を配置する。
ラ・ピュセルからは大量の念威端子が飛び出し、杖の先端から目標にかけて、円筒を作るように置いた。
「な、なんて端子の数だ!? まさか、これほどの念威を秘めているだなんて……」
ユーリの持つ才能に、カラスミは驚愕の声を上げる。
杖の先端部分にユーリの念威が収束し、磁性結界を展開している。
大雑把に言ってしまえば、念威爆雷とこの雷因性砲撃に大きな違いはない。雷因性砲撃は念威爆雷に指向性を持たせ、ただ真っ直ぐに放つだけなのだから。
だが、ユーリの念威と、ラ・ピュセルの膨大な端子のみが可能とする増幅能力と収束補正能力が合わさり、その破壊力は念威爆雷とは比べ物にならない。
ラ・ピュセルは光り輝き、巨大な光の槍となった。
『えっと、えっと……ごめんなさい!』
ユーリはわけがわからないままに、光の槍を変な生き物に放った。
槍が変な生き物を貫く。貫かれた変な生き物は中心から崩壊を始め、砂のように崩れ、最終的には粒子となって消えた。
『お、終わったの……?』
「凄い、凄いよホントに! まさか初めての戦闘であそこまで戦えるなんて! 君は念威少女になるためだけに生まれてきたようなものだよ!」
『わけがわからないんだけど……説明、してくれるよね?』
「もちろん!」
こうして、少女と変な生き物が出会った。果たして、この出会いは偶然か? それとも必然なのか?
それはまだ、誰にもわからない。
「ふふふ、あれが新しい念威少女ですか。少女というからには当然ですが、まだ若いのですね」
高い建物の屋上。そこからユーリ達を見下ろす視線があった。
「カラスミ、あなたはいい契約者を見つけました。ですが、それで果たして私達に勝てるのでしょうか?」
そうつぶやくのは、黒衣の衣装に身を包んだ少女。綺麗な黒髪をサイドポニーで縛っており、髪の一部分は白く染まっていた。別に染めているのではない。生まれつきなのだ。
「今回は様子見です。ですが、次からはそうはいきませんよ。ねぇ、顔面刺青男」
「なんで俺っちがこんな真似を……」
少女の後ろには、顔の半面に刺青の入った男が控えていた。彼はぶつぶつとぼやいており、とてもめんどくさそうな表情をしている。
「次はあなたが行きなさい。そして、見事、念威少女を倒してくるのです!」
「あいよ。姫様のお望みのままにさ~」
新たな脅威が、ユーリに襲い掛かる。
CAST
念威少女 ユーリ
カラスミ アーチング・ミランスク
謎の黒衣の少女 クラリーベル・ロンスマイア
顔面刺青男 ハイア・ライア
脚本・演出・監督 アーチング・ミランスク
次回予告
平凡な暮らしを続けながら、念威少女を始めたユーリ。彼女には次々と苦難が襲い掛かる。
「あんたが念威少女か? 俺っちはハイ……顔面刺青男。悪いが、消えてもらうさ~」
襲い掛かる強敵。念威少女、まさに絶体絶命!?
「君は手にする。勝利の栄光を!」
「なんなんさ~、こいつは? フェレット?」
「ヴァカめ」
「あん!?」
その時現れる救世主。少女ものにはお約束のお助けキャラ。
「知らなかったよ。そんなに死にたかっただなんて」
「テメェは……くそっ、閃光のレイ!!」
顔面刺青男、絶体絶命!?
念威少女 魔磁狩ユーリ
第二話 約束された勝利の剣と閃光のレイ
あとがき2
中二全開のクララとか言ってましたが、これじゃちょい役ですね。もう少し活躍させるはずだったのに……
ちなみに先のあとがきは昨日書き上げ、このおまけの作品と、このあとがきは先ほど書き上げたものです。予定とかなり違った(汗
なにはともあれ、念威少女ユーリ。原作じゃフェリが主役で、文化祭の時に映画として公開されてましたが、これは続きます。UCみたいなOVA的作品。全3話を予定。ツェルニの文化祭で公開されるようです。
さてさて、次回はご要望も多いので、自分も息抜きのつもりで久しぶりにありえないIFの物語を更新しようと思っています。
とはいえ、まだ下書きもできていない状態なので、予告なく変更する可能性もありますのであしからず。
18禁は本当に難しいよなと思うこのごろでした。