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No.15685の一覧
[0] フォンフォン一直線 (鋼殻のレギオス)【一応完結?】[武芸者](2021/02/18 21:57)
[1] プロローグ ツェルニ入学[武芸者](2010/02/20 17:00)
[2] 1話 小隊入隊[武芸者](2011/09/24 23:43)
[3] 2話 電子精霊[武芸者](2011/09/24 23:44)
[4] 3話 対抗試合[武芸者](2010/04/26 19:09)
[5] 4話 緊急事態[武芸者](2011/09/24 23:45)
[6] 5話 エピローグ 汚染された大地 (原作1巻分完結)[武芸者](2010/05/01 20:50)
[7] 6話 手紙 (原作2巻分プロローグ)[武芸者](2011/09/24 23:52)
[8] 7話 料理[武芸者](2010/05/10 18:36)
[9] 8話 日常[武芸者](2011/09/24 23:53)
[10] 9話 日常から非日常へと……[武芸者](2010/02/18 10:29)
[11] 10話 決戦前夜[武芸者](2010/02/22 13:01)
[12] 11話 決戦[武芸者](2011/09/24 23:54)
[13] 12話 レイフォン・アルセイフ[武芸者](2010/03/21 15:01)
[14] 13話 エピローグ 帰還 (原作2巻分完結)[武芸者](2010/03/09 13:02)
[15] 14話 外伝 短編・企画[武芸者](2011/09/24 23:59)
[16] 15話 外伝 アルバイト・イン・ザ・喫茶ミラ[武芸者](2010/04/08 19:00)
[17] 16話 異変の始まり (原作3巻分プロローグ)[武芸者](2010/04/15 16:14)
[18] 17話 初デート[武芸者](2010/05/20 16:33)
[19] 18話 廃都市にて[武芸者](2011/10/22 07:40)
[20] 19話 暴走[武芸者](2011/02/13 20:03)
[21] 20話 エピローグ 憎悪 (原作3巻分完結)[武芸者](2011/10/22 07:50)
[22] 21話 外伝 シスターコンプレックス[武芸者](2010/05/27 18:35)
[23] 22話 因縁 (原作4巻分プロローグ)[武芸者](2010/05/08 21:46)
[24] 23話 それぞれの夜[武芸者](2010/05/18 16:46)
[25] 24話 剣と刀[武芸者](2011/11/04 17:26)
[26] 25話 第十小隊[武芸者](2011/10/22 07:56)
[27] 26話 戸惑い[武芸者](2010/12/07 15:42)
[28] 番外編1[武芸者](2011/01/21 21:41)
[29] 27話 ひとつの結末[武芸者](2011/10/22 08:17)
[30] 28話 エピローグ 狂いし電子精霊 (4巻分完結)[武芸者](2010/06/24 16:43)
[32] 29話 バンアレン・デイ 前編[武芸者](2011/10/22 08:19)
[33] 30話 バンアレン・デイ 後編[武芸者](2011/10/22 08:20)
[34] 31話 グレンダンにて (原作5巻分プロローグ)[武芸者](2010/08/06 21:56)
[35] 32話 合宿[武芸者](2011/10/22 08:22)
[37] 33話 対峙[かい](2011/10/22 08:23)
[38] 34話 その後……[武芸者](2010/09/06 14:48)
[39] 35話 二つの戦場[武芸者](2011/08/24 23:58)
[40] 36話 開戦[武芸者](2010/10/18 20:25)
[41] 37話 エピローグ 廃貴族 (原作5巻分完結)[武芸者](2011/10/23 07:13)
[43] 38話 都市の暴走 (原作6巻分プロローグ)[武芸者](2010/09/22 10:08)
[44] 39話 学園都市マイアス[武芸者](2011/10/23 07:18)
[45] 40話 逃避[武芸者](2010/10/20 19:03)
[46] 41話 関われぬ戦い[武芸者](2011/08/29 00:26)
[47] 42話 天剣授受者VS元天剣授受者[武芸者](2011/10/23 07:21)
[48] 43話 電子精霊マイアス[武芸者](2011/08/30 07:19)
[49] 44話 イグナシスの夢想[武芸者](2010/11/16 19:09)
[50] 45話 狼面衆[武芸者](2010/11/23 10:31)
[51] 46話 帰る場所[武芸者](2011/04/14 23:25)
[52] 47話 クラウドセル・分離マザーⅣ・ハルペー[武芸者](2011/07/28 20:40)
[53] 48話 エピローグ 再会 (原作6巻分完結)[武芸者](2011/10/05 08:10)
[54] 番外編2[武芸者](2011/02/22 15:17)
[55] 49話 婚約 (原作7巻分プロローグ)[武芸者](2011/10/23 07:24)
[56] 番外編3[武芸者](2011/02/28 23:00)
[57] 50話 都市戦の前に[武芸者](2011/09/08 09:51)
[59] 51話 病的愛情(ヤンデレ)[武芸者](2011/03/23 01:21)
[60] 51話 病的愛情(ヤンデレ)【ネタ回】[武芸者](2011/03/09 22:34)
[61] 52話 激突[武芸者](2011/11/14 12:59)
[62] 52話 激突【ネタ回】[武芸者](2011/11/14 13:00)
[63] 53話 病的愛情(レイフォン)暴走[武芸者](2011/04/07 17:12)
[64] 54話 都市戦開幕[武芸者](2011/07/20 21:08)
[65] 55話 都市戦終幕[武芸者](2011/04/14 23:20)
[66] 56話 エピローグ 都市戦後の騒動 (原作7巻分完結)[武芸者](2011/04/28 22:34)
[67] 57話 戦いの後の夜[武芸者](2011/11/22 07:43)
[68] 58話 何気ない日常[武芸者](2011/06/14 19:34)
[70] 59話 ダンスパーティ[武芸者](2011/08/23 22:35)
[71] 60話 戦闘狂(サヴァリス)[武芸者](2011/08/05 23:52)
[72] 61話 目出度い日[武芸者](2011/07/27 23:36)
[73] 62話 門出 (第一部完結)[武芸者](2021/02/02 00:48)
[74] 『一時凍結』 迫る危機[武芸者](2012/01/11 14:45)
[75] 63話 ツェルニ[武芸者](2012/01/13 23:31)
[76] 64話 後始末[武芸者](2012/03/09 22:52)
[77] 65話 念威少女[武芸者](2012/03/10 07:21)
[78] 番外編 ハイア死亡ルート[武芸者](2012/07/06 11:48)
[79] 66話 第十四小隊[武芸者](2013/09/04 20:30)
[80] 67話 怪奇愛好会[武芸者](2012/10/05 22:30)
[81] 68話 隠されていたもの[武芸者](2013/01/04 23:24)
[82] 69話 終幕[武芸者](2013/02/18 22:15)
[83] 70話 変化[武芸者](2013/02/18 22:11)
[84] 71話 休日[武芸者](2013/02/26 20:42)
[85] 72話 両親[武芸者](2013/04/04 17:15)
[86] 73話 駆け落ち[武芸者](2013/03/15 10:03)
[87] 74話 二つの脅威[武芸者](2013/04/06 09:55)
[88] 75話 二つの脅威、終結[武芸者](2013/05/07 21:29)
[89] 76話 文化祭開始[武芸者](2013/09/04 20:36)
[90] 77話 ミス・ツェルニ[武芸者](2013/09/12 21:24)
[91] 78話 ユーリ[武芸者](2013/09/13 06:52)
[92] 79話 別れ[武芸者](2013/11/08 23:20)
[93] 80話 夏の始まり (第二部開始 原作9巻分プロローグ)[武芸者](2014/02/14 15:05)
[94] 81話 レイフォンとサイハーデン[武芸者](2014/02/14 15:07)
[95] 最終章その1[武芸者](2018/02/04 00:00)
[96] 最終章その2[武芸者](2018/02/06 05:50)
[97] 最終章その3[武芸者](2020/11/17 23:18)
[98] 最終章その4[武芸者](2021/02/02 00:43)
[99] 最終章その5 ひとまずの幕引き[武芸者](2021/02/18 21:57)
[100] あとがき的な戯言[武芸者](2021/02/18 21:55)
[101] 去る者 その1[武芸者](2021/08/15 16:07)
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[15685] 67話 怪奇愛好会
Name: 武芸者◆8a2ce1c4 ID:d980e6b9 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/10/05 22:30
「なんでこうなったさ……」

ハイアは思う。どうして自分はここにいるのだろうと。
時刻は夜。生徒会棟のすぐ側にある建物。結構な規模を持つこの建物は、旧錬金科実験棟らしい。
かなり老朽化しており、窓ガラスが薄汚れており、表面の保護塗料はところどころはげていた。
不気味だ。夜ということもあってその雰囲気には磨きがかかっている。まさに肝試しをするには絶好の場所だろう。

「ハイアちゃん……」

「ったく、なんで俺っちが肝試しなんかしなくちゃいけないさ~」

隣で怯えるミュンファを見てため息を吐き、ハイアはここに集まった集団に視線を向けた。
数は十人ほど。怪奇愛好会という如何にも怪しげなサークルのメンバーらしく、このイベントを取り仕切っているのが彼らだ。
ここにいるのは十人くらいとやや少ないが、このサークルは支部らしくツェルニ全体で見ると千人以上の者が怪奇愛好会に在籍しているらしい。とはいっても、こういったイベントに参加する真面目な人はここにいるので全部だとか。規模が大きいのか小さいのかいまいちわからない。
他にもサークルで不定期に発行される怪奇本は好評らしく、その売り上げでこのサークルは運営されているようだ。時には大きなイベントも行われるらしいが、そんなことなど正直ハイアにはどうでもよかった。

「今さらぐちぐち言わないでください。あなたが参加しないとミュンファも参加しないと言うから、仕方ないじゃないですか」

フェリの言葉に、ハイアはあからさまに納得できないと言うような顔をしていた。だが、決してこれ以上の不満は漏らせない。口に出すことが出来ない。
何故ならばハイアの後ろにはレイフォンがおり、今にも切りかかってきそうな雰囲気で背中を見詰めていた。ハイアが怪しい動きをすれば、すぐにでも切り殺されるだろう。する気はさらさらないが。

「はぁ……」

ハイアはもう一度ため息を吐く。当初はミュンファにこのイベントへの参加を懇願され、それをあっさりと断った。すると今度はフェリが訪れ、ハイアに参加を強要してきた。
それも断ると、今度はレイフォンがハイアの病室に乱入。お願いなんて生易しいものではなく、もはや強制。嫌がるハイアを引きずり、無理やりこの場に連れてきたのだった。
ハイアは未だに入院中の身だ。左腕と右足は完全にくっつき、歩く分にはなんら問題ないが、未だに右腕の肘から先がない。現代の医学なら再生手術を施せばすぐに右腕は生えてくるのだが、それにはかなりの体力を消費するために今はハイアの回復を待っている状態だった。とはいえ、現状ハイアもだいぶ回復したので、退院の日も遠くないだろう。なので、この程度のイベントなら別に参加しても問題はない。
と言うか、断ればレイフォンに殺られる。再び入院どころの話ではなく、マジで殺られる。
レイフォンのハイアに対する憎しみは未だに癒えていないようで、常に殺気染みた視線を向けられていた。

「うわぁ、こんなにたくさん。フェリさん、ありがとうございます」

「別にあなたのためにやったと言うわけではありません。暇人が多いんですよ」

フェリの言葉に、ならば帰っていいかと思うハイアだったがやめた。背を翻すと同時にレイフォンが錬金鋼を復元し、ハイアの首筋にぴたりと当てたからだ。
ハイアが慌てて回れ右をすると、レイフォンもすぐに錬金鋼を待機状態に戻した。

「皆さん、今日はよろしくお願いしますね」

さて、先ほどフェリに語りかけた人物だが、彼女の名はエーリ。フェリのクラスメイトらしい。
先日のバンアレン・デイで接点を持ったらしく、フェリとはそれ以来友人関係になったのだとか。もっとも、フェリはエーリと友人と呼ばれるのに若干抵抗を感じているようだったが。
それはともかく、このエーリが怪奇愛好会に所属しており、今回ハイアたちがこのイベントに参加することとなった原因だった。
なんでも新規参加者は友達を誘わねばならないらしく、エーリの友達と呼べる人物はフェリだけ。そのフェリはミュンファを誘ってみて、怖いものが苦手なミュンファはハイアが行くならば行くと答えた。で、ハイアは一旦断ったわけだが、レイフォンに脅されて強制参加。ハイアが参加すると言うことになれば、ハイアに良い感情を持っておらず、フェリに対しての危険人物と認識しているレイフォンも監視と称して参加。
いつでもハイアを抹殺できるようにフル装備で、今か今かとその機会を待っていた。

「ユーリちゃんも、今日はよろしくお願いしますね」

「……………」

その他にももう一人、ユーリもこの集まりへと参加していた。彼女は現在、ロス家に居候中の身なわけだが、レイフォンとフェリがこのイベントに参加することとなったため、ほぼ強制的に参加となってしまった。
こんな小さな子供が夜中に出歩くのはあまり褒められないかもしれないが、それでも家に一人でいるよりは良いというのがレイフォンとフェリの判断だった。カリアンは生徒会の仕事が多忙なため、滅多に家には帰ってこない。

「かわいいよね、ハイアちゃん」

「そうか~? 俺っちはガキは嫌いさ。それとミュンファ、ハイアちゃんと呼ぶのはいい加減やめるさ」

「でも、もう団長じゃないし」

「ちっ……」

ユーリを見て表情を緩ませるミュンファに、ハイアは苦々しい口調で言った。実を言うとミュンファはかなりの子供好きだ。なんでも将来の夢は幼稚園の先生なのだとか。
そんなことはどうでもいいが、いい加減ハイアちゃんという呼び方をどうにかして欲しい。これはかなり恥ずかしいのだ。

「あ、始まりますよ」

あれやこれやと雑談を交わしていると、集合の声が全体にかかった。イベントの始まりだ。
最終的な人数は二十人以上に達し、その全てが怪奇愛好会の会長であろう女性の下へ集まった。当然その仲にはハイア達もおり、今は無言で会長の話を待った。

「まずは、初めてここに挑戦する新人達もいるから、説明から始めようか。じゃ、特別ゲスト、どうぞ」

「おいおい、紹介もなしか?」

最初からいきなりの特別ゲストの登場。その人物があまりにも意外な人物だったために、ハイアは目を丸く見開いた。

「なぁ、レイフォン」

「気安く語り掛けないでくれるかな? というか、同じ空気を吸わないでくれる。呼吸を止めて死ね」

「お前はそんなに俺っちのことが嫌いか!?」

レイフォンに確認を取ろうとするハイアだったが、あまりにも刺々しい言葉を投げかけられて断念する。
だが、もう確認を取る必要はなく、特別ゲストは自分から名乗った。

「特別ゲストのヴァンゼ・ハルデイだ」

ヴァンゼ・ハルデイ。それはこの都市で実質ナンバー2、武芸長という役職についている人物の名だ。そして現れたのは勿論、武芸長のヴァンゼその人。
彼は若干照れくさそうにしながらも、この集団の前に出る。
ハイアは呆れていた。ヴァンゼとはこの都市、ツェルニの武芸者の頂点に立つ男だ。実力的にはレイフォンとハイアには遠く及ばず、もはや比べることが愚かなのだが、それでもこの都市を動かす重役の一人だ。
そんな男がこのような馬鹿馬鹿しいイベントに参加しているなど、ハイアからすれば以外だった。
だが、ここは学園都市。そしてヴァンゼは少々ふけているため、とてもそうは見えないが彼もまた学生。ならばこのような馬鹿馬鹿しいイベントに参加し、馬鹿騒ぎをしてもおかしくはないのかもしれない。
そのヴァンゼは多少照れつつも、説明を開始した。

「この建物は旧錬金科実験棟だ。現在の錬金科実験棟前の建物になる。およそ三十年前の建物になる」

今の言葉の中で『建物』という言葉を何回使ったのだろうか?
ハイアはそんなどうでもいいことを考えつつ、ヴァンゼの言った三十年という言葉にも反応する。
そんなに長い間この建物を放置して、一体どういうつもりなのだろうか?
移動都市の土地は限られている。要らない建物ならば早々に取り壊すのが効率的だ。ならば何故それをしない?
まさかこのようなイベントのためにわざわざ取っている。流石にそれはないと、ハイアは自己完結をして首を振った。

「この建物が廃棄されることになったのは錬金科による実験が原因だ。どんな実験かは記録が残っていないが、大きな事故だったようだ。内部に入ってみればわかるが、そこかしこが崩れている。危険だから崩落部分には近づかないように」

ならば、そんなところでこのようなイベントをするなとハイアは思った。あと、とっとと取り壊せとも。

「その自己は校舎の破壊だけに留まらず、多くの死傷者が出た。そのことで当時の生徒会はこの建物の廃棄を決定。別の場所に新しい錬金科棟を新築した。さて、旧実験棟となったこの建物だが、もちろん即時取り壊しが決定された。だが、取り壊しが行われようとすると様々な事故が起きるようになった。重機が動かなくなるのを始め、作業員の怪我などもある。最後には深夜にこの近くを通った者が、いるはずのない生徒を見たという報告まで上がる始末だ。幽霊騒ぎが起きたらしい」

心底馬鹿らしいとハイアは思った。なので、ハイアはあとのヴァンゼの説明を受け流す。
横目で見るとフェリも退屈そうで、明らかに話を聞き流していた。彼女もまた、幽霊を信じていなさそうだ。
だが、ちらりとフェリとは反対の方にいるミュンファに視線を向ける。彼女はヴァンゼの一言一言に肩を震わせ、おっかなそうに話を聞いていた。明らかに怖がっている。
これで元サリンバン教導傭兵団だというのだから、ハイアは少しだけ情けなくなってきた。もっとも、そのサリンバン教導傭兵団はレイフォンの手によって完膚なきまでに潰されたわけだが。
レイフォンはレイフォンで、顎に手を当て何か考え事をしているようだった。一体何を考えているのか多少気にはなったが、あれこれと思考を巡らせている内にヴァンゼの説明が終わった。
続く会長の言葉もすぐに終わり、参加者には地図と懐中電灯が渡されていく。なんでも二人一組で順番に回っていくようだ。
その二人一組はくじで決められるらしいが、さてさて、どうなることやら……


†††


「うふふふ……なんだかドキドキしますね」

「……………」

テンションの高いエーリと、それと比べると明らかにテンションの低いフェリ。
エーリは軽やかに足を進め、その歩幅に合わせて彼女の持つ懐中電灯がゆらゆらと揺れる。フェリは湿気とカビと埃の臭いによってしかめっ面を作っていた。

「うふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ……」

先ほどからエーリは笑いっぱなしだった。その笑みがとても不気味だったが、フェリは特に突っ込まずに地図へと視線を向ける。
その地図は不完全だった。爆発によって崩壊した危険地帯については詳しく、詳細に記されており、絶対に近づくなと注意書きがされている。
だが、他の部分は大雑把にしか描かれていない。これはおそらく、自分の目で確かめろということなのだろう。

「フェリさん、怖くないんですか?」

「エーリさんこそ、どうしてそんなに楽しそうなんですか?」

エーリがフェリに話題を振り、フェリはうっとうしそうにしながらも話題を投げ返す。
するとエーリは、とても不思議そうに首を傾げて見せた。

「だって、幽霊ですよ」

「……説明になってません」

「なんでですか? 生きてる人には理解できない方法で現れたり追っかけてきたり取り憑いてみたり呪い殺してみたりあっちの世界に連れて行って見たり、そんな素敵な存在が幽霊なんですよ」

「死者に対してひどく失礼なことを言ってませんか?」

素敵だとエーリは言うが、その言葉のどこに素敵な部分があるのだろうか?
だが、今しがたエーリが言った取り憑くという言葉を聞いてフェリには思うところがあった。
取り憑くといえば廃貴族だ。サリンバン教導傭兵団の創設理由であり、先日の騒動の原因。よくよく考えてみればあれもまた幽霊のような存在だった。フェリ自身は見たことがないが、このツェルニを始めとする電子精霊もまた幽霊と似た存在と言えるかもしれない。
そう考えるのなら、もしかしたら幽霊はいるのかもしれない。エーリの言うような存在ではなく、あくまでそれに似た否なるものとフェリは考えるが。

「きゃああああああああ!!」

フェリが思考を巡らせていると、前方から女性の悲鳴が聞こえた。聞き覚えのある声。これはミュンファの声だ。
悲鳴と共にドタバタした足音がこちらに近づいてくる。おそらく、いや間違いなく走っているのだろう。あれでもミュンファは武芸者。その足は一般人よりはるかに速く、その姿はすぐさま確認することが出来た。

「ミュンファ」

「フェリさん。フェリさん! うわあああん!!」

ミュンファは泣きじゃくりながらフェリの側へとやってくる。いっそのこと抱きつきたかったが、その手にはユーリが抱かれているために出来ない。
ミュンファはユーリと組み、フェリとエーリの一つ前の順番でこの中へと入っていった。そして何か変なものを見て、驚いてここまで逃げてきたのだろう。慌てて、取り乱し、見るからにミュンファが小心者であることを示していたが、それでもユーリを置き去りにして一人で逃げてこなかったのは評価できるとフェリは思った。

「一体どうしたんですか?」

「でた、出たんですよお化けが! うぅ、怖かったですぅ……」

「はぁ……」

ぐす、ぐすと嗚咽を上げるミュンファに、フェリはなんともいたたまれない気持ちで相槌を打った。
これが本当にかのサリンバン教導傭兵団の元団員なのだろうか?
彼女は廃貴族を追い求めていたはずだ。だというのにたかが幽霊相手に取り乱し、こうも醜態を晒す。幽霊と廃貴族が別物といってしまえばそれまでだが、それでもミュンファのこの姿はとても情けなかった。

「ユーリは大丈夫でしたか?」

「……………」

ユーリはきょとんとしていたが、それでも大丈夫だというように笑顔で頷いた。
ミュンファよりも幼い少女がこうして笑い、平然としていることがミュンファの情けなさをいっそう目立たせる。

「いたんですか? 見たんですか幽霊を!!」

対して、ミュンファの反応にエーリは大喜びだった。ぶんぶんと腕を振り、懐中電灯の光が激しく揺れる。
今にもダンスを踊りそうなほどで、エーリはその場で激しく足踏みをしていた。

「うぅ、この先の研究室で白くて細長いものが……」

「聞きましたかフェリさん!? 行きましょう、すぐに行きましょう!」

「勝手に一人で、どこにでも行ってください」

「ああん、そんなに冷たいことを言わないでください」

テンションが限界にまで上がったエーリと、さらにテンションの下がるフェリ。このようなノリは苦手で、エーリのテンションにただただ引くばかりだった。

「ええっ、行くんですか!? やめておいた方がいいですよ……」

「いいえ、行きます! ミュンファさんでしたっけ? あなただけ幽霊を見て、私が見れないなんてずるいです」

「別に見たくて見たわけじゃ……」

「さあさ、行きますよ!」

「あっ、待ってくださいよ」

エーリはこのテンションのまま、さらに奥へと進んでいく。フェリはエーリとのペアなので、仕方なく後に続いた。
さて、問題はミュンファとユーリなのだが、彼女達は戻ることをせずに、フェリ達と共に再び奥へと入っていった。
これは少人数で行動するよりも、大人数で行動した方が安心できるからだった。幽霊のようなものを目撃したミュンファにとって、ユーリと二人だけで出口に戻る勇気はない。
ならば再び奥に行く羽目になろうとも、フェリやエーリと共に行動をしたいというのが正直な意見だった。

「うぅ、ハイアちゃん……」

本来なら、ここにハイアがいてくれればどんなに心強いことだろうか?
ミュンファは重たい足を引きずり、フェリ達と共に旧錬金棟の更なる奥へと向かっていった。


†††


「……………」

(なんでこうなったさ……)

ハイアは懐中電灯を持ち、その隣ではレイフォンが地図を眺めている。くじ引きの結果ペアを組むことになった二人は、一番最後に建物に入り、おそらくは最後尾を歩いていた。
互いに無言だ。親しい間柄ではなく、むしろ敵同士と言ってもよいのだからそれも仕方ないだろう。
それ故に思う。この組み合わせには悪意しか感じないと。普通、肝試しならば男女共にペアを組むのが当たり前だ。そして、あわよくば恋愛に発展したりと、色気のあるイベントのはずだ。だというのに何が悲しくて、男と二人で歩かねばならないのだろうか?
ハイアは別に色恋沙汰に興味があるわけではないが、それでもレイフォンと共に歩くということが胃に響くほどの苦痛だった。レイフォンは明らかにハイアを嫌っているが、ハイアだってレイフォンのことは好きではない。むしろ嫌いだった。相思相愛。いや、『相思相憎(そうしそうぞう)』か。

「ハイア」

「なんだ?」

唐突にレイフォンが口を開く。ギロリと明らかに好意的ではない視線をハイアへと向け、釣られてハイアの視線も鋭くなる。
無駄な言葉は交わさず、レイフォンは短く用件を言った。

「次の角を右」

「こっちか」

進む方向を指示し、それにハイアは従う。だが、ハイアはすぐに歩みを止めてレイフォンの方を見た。

「おいおい、レイフォン君。お前は地図すら読めないのかさ~」

そこは階段だった。だが、その階段そのものがない。事故の影響か、それとも古くなって崩れたのか、階段のあった場所にはぽっかりと大きな穴が開いて瓦礫が散らばっていた。
そこは危険なので、入らないようにとテープで仕切られている。こういった場所には近づかないようにと、レイフォンの持っている地図にも書かれているはずだった。

「いいや、あっているよ」

レイフォンはハイアの言葉を否定した。自分の言っていることに間違いはないと。

「ここが、地獄への入り口だ」

「ちょっ、おま……」

レイフォンはハイアの体を押した。テープで仕切られている先、穴の開いた階段へと向けて。
ポンと優しく押すのではなく、ある程度力を入れてもはや突き飛ばす。ハイアの体はテープを切り、穴に吸い込まれるように落ちていく。

「くそっ……」

悪態を吐く。不意を突かれたハイアだが、それでもこの身は武芸者だ。たかが階段から落ちた程度で死ぬことはない。
病み上がりで右腕のない状態だったが、それでもうまく空中でバランスを取って地面に着地する。

「今ので死んでいれば楽だったし、事故で片付けられたのに」

レイフォンはハイアの後を追う形で飛び降り、地面に着地した。その手には錬金鋼が握られ、既に刀へと形状を変えていた。
元からあの程度でハイアを殺せるとは思っていなかったのだろう。追撃をかけ、止めを刺すつもりだ。

「これはなんの真似だ?」

「わからないのかな? お前を殺そうとしているんだよ」

ハイアの問いかけにレイフォンはあっさりと返す。レイフォンはハイアが嫌いだ。大嫌いだ。殺したいほどに憎んでいる。
だが、フェリが止めるためにハイアを殺すことが出来ない。殺したいのに殺せない。それがレイフォンを苛立たせる。
そして考えた。ならば事故に見せかけて殺すのはどうかと。そうすればフェリに嫌われずにハイアを始末できる。幸いにも今回のイベントはその計画に都合がよく、ハイアとペアになれたのも幸運だった。

「いい加減にしろよ、レイフォン」

「お前こそいい加減に死んでくれないかな、ハイア」

互いに視線を交える。怒りと憎悪が入り混じった険悪な視線。肝試しという目的は掻き消え、二人は激突する。
























あとがき
肝試し編前編です。後編は早いうちに更新したいです。でも、その前に史上最強の弟子イチカを更新しようと思ってます。
さて、今回のお話は原作十三巻の番外編でやったあのお話。フェリとエーリの肝試しイベントですが、それに様々な人が加わりました。
特にレイフォン。原作では機関部掃除をしてましたが、それをサボっての参加です。
それから最近、レイフォンは推理ものの小説を読むようになったとか。さて、それはどうしてなんでしょうね(棒

原作最新刊のレギオス。まだ全部読んでませんが、途中まで読んだ感想。クララが相変わらずかわいい!
クララが戦闘のたびに変な声、悲鳴を上げると思わずにやけ、和んでしまいますw
ああ、クララ一直線も早く更新しないとなぁ……
それでは、次回もがんばります。


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