「レオ、率直に言うと君には才能がありません。剄量は並以下で身体が恵まれているわけでもない。なにより、基礎がまったく出来ていない。長所がないと言っても過言ではありません。さて、どこから鍛えるべきでしょうか?」
「……………」
サヴァリスのあまりの言いように、レオは何も言い返すことが出来なかった。いや、正しくは言い返したくとも返す余裕がないと言うべきか。
レオは仰向けに倒れ、荒い呼吸で天井を見詰めていた。全身をサヴァリスに余すところなく殴られ、打撲のような痛みが走っている。起き上がるどころか、指一本動かすための力が入らない。
レオはサヴァリスに師事して一日目、一時間にも満たない時間で既に音を上げようとしていた。
「剄息は絶えず続けてくださいよ? 寝ている時もです。剄量が並以下とはいえあるに越したことはないんです。少しでも剄が多ければ、それは武芸者にとって大きなアドバンテージとなる。もっとも君の場合、少し剄量が増えたところで高が知れてますけどね」
サヴァリスは本当にレオを鍛える気があるのだろうか?
駄目出しばかりでレオを労わる気がまったくない。確かに甘やかすのは駄目だろうが、だからと言って鞭ばかりで飴を一切与えないのもどうかと思う。もっともサヴァリスを知る者ならば、あのサヴァリスがそんなことを考慮するとは思わないだろう。
「あとはまぁ……体を鍛えますか。武芸者にとって重要なのは剄ですが、強い肉体を持って困ることはありません。レイフォンやクラリーベル様は見た目、そこまで鍛えられてるようには見えませんが、アレはアレで良質な筋肉を持っています。自慢をするわけではありませんが、僕も十分に鍛えられているでしょう」
サヴァリスは自身の腕を指差し、レオに言い聞かせる。筋肉はあって困るものではなく、むしろあった方が何かと有利だ。腕力の向上は一撃の威力の向上に繋がる。なにより、レオの肉体は武芸者として少々軟弱だった。
「そんなわけで筋トレです。さっきも言いましたが剄息は絶えず行ってください」
「ちょ、待ってください……少し、休ませて……」
「せっかく僕が貴重な時間を削って見てあげてるんですから、そんな暇はありませんよ。さて、まずは軽く腕立て伏せ千回、腹筋千回、背筋千回を三セットやりましょうか」
「そ、それのどこが軽くなんですか~!?」
「軽くですよ。そうそう、休んだら衝剄を放ちますので手を抜かないように。死にますよ」
「うわあああああああんっ!!」
レオの懇願を軽く受け流し、サヴァリスは冷酷に指示を出す。レオは瞳に涙を浮かべ、自棄になりながら腕立て伏せを始めた。
「まぁ、実際に筋肉というものは実戦で付けた方がいいんですけどね。素振りや筋トレも悪くはないんですが、たとえば筋トレをする必要がないほどに組み手などで体を鍛えると、戦いに余分な、不要な筋肉が付かなくていいんですよ。あまりにも筋肉があり過ぎては逆に動きを阻害しかねませんからね。そんなわけで、筋トレが嫌だというのなら、筋トレが必要ないほどの組み手をやりますか? この僕と」
「け、結構です!」
「……なら、がんばってください」
どこか残念そうに言うサヴァリスに、レオはぶるりと背筋を震わせた。そして思う。サヴァリスに師事したのは間違いだったのではないかと。
そもそもレオが師事する予定だったのはレイフォンだ。それなのに何故、このようなことになっている?
当のレイフォンは今、何をしているのだろうか?
「そういえば、もうすぐ文化祭ですね。フェリのクラスはなにをやるんですか?」
「クラスでは無難に喫茶店をやるらしいです。私にもウエイトレスをやって欲しいと頼まれましたが、正直めんどくさいです」
「がんばってください。僕も行きますから」
「フォンフォンが来るなら……私もがんばります」
当のレイフォンは今、フェリといちゃついていた。
先日結婚したばかりで、バリバリの新婚夫婦。そんな二人はレオには目もくれず、近々迫った文化祭について会話を交わしていた。
「余所見をしている暇はないですよ。死にたいんですか?」
「やります! やりますから!」
それをのんきに聞いている暇などレオにはなかった。サヴァリスに急かされ、腕立て伏せを始める。
「そういえばゴル、僕の弟はここで小隊長をしてるんだって? これは是非ともその実力を確かめないとね。まぁ、所詮は学生武芸者だからそこまでは期待できないけど、グレンダンを出て五年経つんだし、少しは上達しているかな? してないなら扱けばいい。なにせ、ゴルには将来的にルッケンスの武門を継いでもらわなければならないからね」
腕立て伏せをするレオを見ながら、サヴァリスは不穏なことをぶつぶつとつぶやいていた。
サヴァリスの弟、ゴルネオ・ルッケンス。第五小隊の隊長を務めており、ツェルニでも屈指の実力者として知られている。
ちなみにルッケンスとはグレンダンでは有名で、高名な武門らしい。サヴァリスはその跡取りに兄である自分を差し置き、弟に武門を継がせようとしていることからおそらく才能もあるのだろう。レオがそんなことを考えていると、サヴァリスがどかりと腕立て伏せを続けるレオの背中に座った。
「……なにをしているんですか?」
「いえね、強靭な肉体を持つ武芸者なんですから人を載せた状態で腕立て伏せくらい出来ませんと。ほら、何をボーっとしているんです? あと九百五十三回ですよ」
「うぅ……」
レオは泣きそうになりながら腕立て伏せを再開する。そんな時だった。訓練のために借りてる、練武館に一人の来訪者が訪れたのは。
「失礼します。レイフォンさんはいらっしゃいますか? 生徒会長がお呼びです」
来訪者は生徒会の制服を着た少女。どうやら目的はレイフォンらしかった。
†††
「またですか」
「またなんだよ。困ったね……よりによってみんながみんな浮き足立っているこの時に」
義兄と義弟の会話。レイフォンはフェリと結婚したために姓もアルセイフからロスへと変わり、カリアンは義理の兄となる。
そんな兄は申し訳なさそうな表情で、レイフォンに懇願するように言った。
「そんな訳で一般生徒達に気づかれないよう、内密に処理したいのだけどできるかな?」
「問題はないと思います。ただ、フェリには負担をかけたくないので傭兵団の念威繰者、フェルマウスを使いたいと思うんですが」
「そう言うだろうと思って、既に話は通してある。向こうも快く協力してくれるそうだよ」
「流石ですね」
互いにどこか黒い笑みを浮かべ、カリアンとレイフォンは笑い合う。それはまるで本物の兄弟のように微笑ましく、そして恐ろしい笑顔だった。
「フォンフォン、兄さん」
「大丈夫ですよ。この程度の相手にフェリの力は必要ありません。都市からもあまり離れるつもりはありませんし、なにより今のフェリに無理はして欲しくありません」
「ですが……」
「フェリ。レイフォン君の言うことを聞きたまえ」
「はい……」
不満を漏らすフェリだったが、レイフォンに宥められ、カリアンによって言い聞かせられる。
二人はただ純粋に、フェリの身を案じているのだ。レイフォンとの子を身篭っている彼女に無理はさせたくない。
それにサリンバン教導傭兵団がいる。なら、利用できるものは利用しようというのがカリアンとレイフォンの考えだった。
「戦力の方は大丈夫かな? とはいえ、君を援護できるほどの人物はツェルニの生徒にはいないけどね」
カリアンはちらりと、ソファーに腰掛けて写真を見ているサヴァリスに視線を送った。
ツェルニの学生にレイフォンのサポートをすることは不可能だろう。だが、学生でなければ? 現役の天剣授受者、サヴァリスならばどうだ?
天剣授受者すら利用しようとするカリアンに、流石のレイフォンも苦笑を浮かべることしか出来なかった。
「この程度なら僕一人で何とかできると思いますが……そういえば、ハイアの手術が終わったんですよね。もう退院も間近だとか。なら、ハイアを囮に使っていいですか? ハイアが襲われている隙に僕がハイアごと止めを刺します」
「却下です」
レイフォンの意見をカリアンではなく、フェリが退ける。別にハイア自身のためではない。ハイアに何かあれば、フェリの友人であるミュンファが悲しむだろうからだ。
レイフォンはフェリに逆らえないため、非常に残念そうだが渋々と同意する。
「あ、あの……サヴァリスさん」
「なんだい?」
「……なんで僕がここにいるんですか?」
そんな中、非常に居心地が悪く、場違いな雰囲気を感じていたレオが申し訳なさそうに、恐る恐る言葉を発する。
生徒会の役員がレイフォンを呼びに来た時、何故かレオまでも連れて来られてしまったのだ。
「物凄く面白そうな気がしたからさ。案の定、来てみたらとても面白い話をしていただろう」
「あなたの感性がわかりません! 都市に汚染獣が迫っているっていうのに面白いわけないじゃないですか!!」
思わず悲鳴染みた叫びを上げてしまった。だが、これも仕方ないだろう。
再びツェルニを襲う脅威、汚染獣。学園都市は汚染獣との遭遇が非常に稀だという話だが、ツェルニは今年だけで幾度も汚染獣と遭遇している。その度に汚染獣の恐ろしさを再認識させられたほどだ。
だというのに、サヴァリスは余裕の表情で絶望的な事実を述べる。
「写真を見るに老生一期の成り立てだろうね。この間は雄性体の汚染獣が集団で襲ってきたらしいけど、それが雑魚にしかならない相手だよ」
「えっ……」
レオが呆気に取られる。それでもサヴァリスは笑い続けていた。
「本当に面白いですね。天剣のない状況での汚染獣戦。レイフォン、僕が出てもいいかな?」
「囮としてならいいですよ。巻き込まれて死なないように気をつけてください」
「別に倒してしまっても構わないんだろう?」
「できるのならどうぞ」
都市の危機だというのに、そんなものをまったく感じさせないサヴァリスとレイフォンの会話。
レオがその会話に戸惑いを覚えていると、不意にポンと肩に手を置かれた。
「もちろん、君も行くんですよ」
「はいっ!?」
肩に手を置いたのはサヴァリスだった。意地の悪い笑みを浮かべ、レオに残酷な宣告をする。
「一期ですが、せっかくの老生体戦なんです。その戦闘を間近で見れば得るものは大きいと思いますよ。なんなら実際に戦ってみますか?」
「いやいや、いやいやいや!」
「なに、人間はいつか死ぬんです。それが早いか遅いかだけの違いですよ」
「た、助けてぇ!!」
この時、レオは心の底から後悔した、サヴァリスに師事したことを。
予想される汚染獣、老生一期との遭遇は明朝。それを都市外で迎え撃つべく、準備が始まる。
†††
「そういや、今年もミスコンが行われるんだと」
「はぁ……ミスコンですか? 去年、フェリが優勝したという」
「そうそう」
準備中、レイフォンは汚染獣との決戦場所にまで運んでくれるオリバーと会話を交わしていた。
レイフォンが錬金鋼と都市外装備の確認をしている中、オリバーは移動用の放浪バスの最終チェックをしている。
「けど、フェリちゃんはミスじゃなくミセスになっちまったからなぁ。今年は誰が優勝するんだって話題が、都市中の男達の間でもちきりだぜ」
「別にどうでもいいです」
「相変わらずフェリちゃん一筋か? 妬けるな」
会話の内容は文化祭のメインイベントと言っても過言ではないミスコンについて。フェリは去年の優勝者であり、ミスツェルニという称号を持っている。
その容姿から人気は高く、しかも小隊員。非公式であるフェリ・ロス親衛隊が急激に巨大化したことから連覇に期待が寄せられたが、レイフォンと結婚したために今年はミスコンに参加しない。
元々去年の参加だってフェリの本意ではなく、ミスツェルニなんてものに興味はなかったのだ。予選に勝手に登録され、そのままとんとん拍子で本戦に。あっという間に優勝してしまった。ただそれだけのこと。
そしてフェリが出ないのなら、レイフォンはミスコンなんてものにまったく興味がない。
「でも、一応聞いとけ。ほら、お前の同級生でミィフィさんの友達の……メイシュン?」
「メイシェンです」
「ああ、そうそう。その子も参加するらしいぞ。こういうことに参加したがる子には思えなかったんだがな」
名前の間違いを訂正したレイフォンだが、それでもオリバーの口から出た意外な人物の名に驚きを隠せない。
オリバーの言うとおり、メイシェンがミスコンに参加するとは思えなかったからだ。もっとも、ミィフィ辺りが勝手に申し込んだのだと容易に予想できたが。
「そういえば、この間マイアスからツェルニに来た女の子二人もお前の知り合いなんだろ? なんかツェルニに留学生として転入するらしいぞ。二人とも可愛いって評判で、クラスメイトが騒いでいてな」
「そうなんですか」
オリバーが言っているのはリーリンとクラリーベルだ。彼女達は留学生という形でツェルニに転入し、学生生活を謳歌するつもりらしい。
リーリンの場合は戦争時期のために放浪バスも来ず、帰るに帰れない状況のために時間を無駄にしないように勉学を学ぶのだとか。生徒会の紹介で就労もするらしい。
クラリーベルはただ純粋に、学生生活を楽しもうとしていた。もちろん就労もするつもりだそうだ。
それはともかく、レイフォンからすればことあるごとにちょっかいをかけてくることをやめて欲しかった。サヴァリスと似た感性のクラリーベルを相手にするのは、正直楽じゃない。
「この二人がミスコンに参加するなら、優勝候補筆頭だろうな。もっとも俺はミィフィさんを押すけど」
「どうでもいいです」
「他に優勝候補というと……ツー・テラッカくらいか?」
「誰ですかそれ?」
「知らないのか? 結構有名だぞ。芸能関連のサークルで活躍してて、今までにCDも何枚か出してるし。この間写真集も発売されたらしいな。ちなみに去年のミスコンの準優勝者」
「へ~……」
学生によって運営されているとはいえここは都市だ。企業が存在し、政治や経済、工業に農業などもしっかりと行われている。また、住民のほとんどが若者のためか娯楽に関してはかなり貪欲だ。
音楽やスポーツ、書物に映画などなど、これらのものは学園生活をより有意義に過ごすためには欠かせないものだった。
ツー・テラッカという人物はそんな娯楽を代表する少女、要するにアイドルだ。ミスコン準優勝という看板を引っさげてのアイドルデビュー。
整った容姿と、鈴の音のような歌声は見る者と聴く者を虜にする。彼女のCDや写真集はツェルニだけではなく、他の都市にも販売されて根強い人気を誇っていた。
また、ミスコン優勝者のフェリにもそういった話が来ていたらしいが、彼女は柄じゃないからと断ったらしい。レイフォンは一瞬だけアイドルとして活躍するフェリの姿を想像したが、確かに柄じゃないと苦笑を浮かべていた。
「それと親衛隊もあったな。流石にフェリ・ロス親衛隊ほど大きくないけど、それでも何百人もの熱烈なファンが存在するんだぜ。その隊長がサットン先輩だ」
「……え?」
未だに続く雑談。その中に、何か凄い単語が聞こえた気がする。
「実はアイドルオタクなんだよ、サットン先輩って。前に一度だけツーのコンサートに誘われたことがあるんだけど凄かったぜ。ありゃ鬼だ」
「そ、そうなんですか……」
サットンとはハーレイのことだ。第十七小隊のダイト・メカニックを務める人物、ハーレイ・サットン。
レイフォンも錬金鋼のことで何度もお世話になっている。そんな彼がツーの親衛隊、通称ツー・テラッカ親衛隊を仕切っているらしい。ハッキリ言って意外だった。
「それはそうと凄く落ち着いてますね。汚染獣が迫っているんですよ」
「そりゃ慣れだ。あんだけ立て続けに騒動が起きれば嫌でも慣れる」
今までどうでもいい話を続けていたが、ここに来てレイフォンが話を戻す。
これから戦闘なのだ。人類の脅威、汚染獣との死闘。だというのにオリバーは冷静で、以前のように動揺を見せることはなかった。
「それに戦うのは俺じゃないしな。お前が戦うのならのんびり汚染獣が駆逐されんのを待つだけだ」
「あんまり僕に期待されても困るんですけどね……」
言葉通り慣れてしまったのだろう。直接の戦闘はないが、それでもオリバーはそれなりに場数を踏んだと自負している。
「レイフォン。錬金鋼の調子はどう?」
「はい、大丈夫です」
レイフォンが錬金鋼を復元し、素振りをしながら手に馴染ませていると、先ほど話題に上がったハーレイが声をかけてきた。その姿を見て思うが、やはり意外だった。人は見かけにはよらない。
「サヴァリスさんの準備も終わったし、いつでも出れるよ」
ちなみにハーレイは、今までサヴァリスの錬金鋼のメンテナンスをしていた。
「それはそうと……本当に連れて行くの?」
「サヴァリスさんはそのつもりのようですね」
ちらりと、ハーレイが部屋の隅に視線を向ける。そこでは蹲り、体を小さくして震えているレオの姿があった。
「なんでこんなことに? なんで? どうして? いやだいやだいやだ」
ぶつぶつとつぶやき続けるレオ。この度汚染獣戦に同行することになってしまい、彼は心の底から後悔しているのだろう。サヴァリスに関わらなければよかったと。
「まぁ、安心しろ。レイフォンがいるんだ。死ぬことはねぇよ……たぶん」
「オリバー先輩……他人事だと思って」
「実際他人事だし」
「うわ~んっ!」
ちなみに、オリバーとレオはルームメイトだった。格安の男子寮で暮らしており、そこでは基本的に二人で一部屋を使うことになっている。
レイフォンは既に引っ越し、フェリやカリアンと共に暮らしているが、その寮にいたころは部屋割りの都合で一人部屋だった。
オリバーとは隣の部屋だったため、オリバーのルームメイトがレオだと知った時は少しだけ驚いたものだ。
「それはそうといいのかな? 今回のことニーナに黙ってて」
「生徒会長の決定ですから、僕らがどうこう言っても仕方がないですよ。それに今回は老生体が相手ですから……」
「そう、だね……」
ふと、ハーレイが不安そうにつぶやき、レイフォンは事実を突きつける。
カリアンは今回の件を穏便に片付けたいと思い、レイフォンとフェリの所属する隊の隊長、ニーナどころか武芸長であるヴァンゼにもこの事実を告げていない。
仮に告げられたとしても、相手は老生体の汚染獣なのだ。未熟な学生武芸者では戦力になりえない。正直に言うと足手まといであり、その足手まといはレオ一人だけで十分だった。
「ニーナが知ったら凄く怒りそうだね」
「その時は一緒に怒られましょう」
「だね」
激怒するニーナを想像し、零れる苦笑。その時は素直に謝れば許してもらえるだろうか?
「楽しみですね。グレンダンでは幾度も汚染獣と戦いましたが、老生体相手に天剣なしという状況は初めてです。レオ、君の後見を考えてましたが、我慢出来ずに僕が倒してしまったらすいませんね」
「是非ともそうしていただけるとありがたいです。なんなら僕、留守番してますよ」
「またまた、冗談を」
「冗談じゃないです」
サヴァリスも笑っていた。けれど、その笑みの意味はぜんぜん違う。とても楽しそうで、期待に満ち溢れた笑みだ。
「フォンフォン、無事に帰ってきてくださいね」
「はい、フェリ」
フェリの見送りを受け、レイフォンの気分が羽のように軽くなる。やる気に満ち溢れ、戦意が滾ってくる。
「汚染獣を倒して、ちゃんと無事に帰ってきますから、食事の用意をして待っててくれますか?」
「構いませんが……私は料理が下手ですよ」
「フェリの作るご飯がまずいわけないじゃないですか。ちゃんと残さず食べますから、よろしくお願いします」
「わかりました。たくさん作りますので、覚悟してくださいね」
「はい」
無事に帰ってくることを誓い、レイフォンは戦場に赴いた。
あとがき
第一部が完結して約二ヶ月。久しぶりのフォンフォン一直線更新です。
ですが第二部ではありません。第一部と第二部の間、つなぎの話とでもいいましょうか。
原作レギオスじゃ7巻から9巻の間でいきなり3ヶ月跳んでますからね。その空白の3ヶ月を書きたいように書いていこうと思います。
そんな訳でまずは文化祭編。これは今年のドラマガ7、9,11月号に載ってたレギオス漫画が元となっています。今現在、学校などでも文化祭の準備が進んでるので時期的にもちょうどいいかなと思いまして。
ただ、ドラマガに連載されてた漫画だと未だにリーリンが訪れていない時期だったんですが、そこは二次創作ですし、祭り(文化祭)風景を書くのは楽しそうなのでまぁいいかと。
次回は文化祭の準備をするツェルニサイドの人々を書きたいです。クララとか退院したハイアにミュンファとか、その他いろいろとか。
ハーレイに関してはあれですね、別に反省していません。ギャグとかなら鼻フックデストロイヤーをやってもいいのではと思っています。流石にシリアスパートでやる勇気はもうありませんけどね(汗
どうでもいいけどリーリンにおまえの母ちゃん××だとか歌って欲しいですよね。凄くどうでもいいことですが。