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No.15685の一覧
[0] フォンフォン一直線 (鋼殻のレギオス)【一応完結?】[武芸者](2021/02/18 21:57)
[1] プロローグ ツェルニ入学[武芸者](2010/02/20 17:00)
[2] 1話 小隊入隊[武芸者](2011/09/24 23:43)
[3] 2話 電子精霊[武芸者](2011/09/24 23:44)
[4] 3話 対抗試合[武芸者](2010/04/26 19:09)
[5] 4話 緊急事態[武芸者](2011/09/24 23:45)
[6] 5話 エピローグ 汚染された大地 (原作1巻分完結)[武芸者](2010/05/01 20:50)
[7] 6話 手紙 (原作2巻分プロローグ)[武芸者](2011/09/24 23:52)
[8] 7話 料理[武芸者](2010/05/10 18:36)
[9] 8話 日常[武芸者](2011/09/24 23:53)
[10] 9話 日常から非日常へと……[武芸者](2010/02/18 10:29)
[11] 10話 決戦前夜[武芸者](2010/02/22 13:01)
[12] 11話 決戦[武芸者](2011/09/24 23:54)
[13] 12話 レイフォン・アルセイフ[武芸者](2010/03/21 15:01)
[14] 13話 エピローグ 帰還 (原作2巻分完結)[武芸者](2010/03/09 13:02)
[15] 14話 外伝 短編・企画[武芸者](2011/09/24 23:59)
[16] 15話 外伝 アルバイト・イン・ザ・喫茶ミラ[武芸者](2010/04/08 19:00)
[17] 16話 異変の始まり (原作3巻分プロローグ)[武芸者](2010/04/15 16:14)
[18] 17話 初デート[武芸者](2010/05/20 16:33)
[19] 18話 廃都市にて[武芸者](2011/10/22 07:40)
[20] 19話 暴走[武芸者](2011/02/13 20:03)
[21] 20話 エピローグ 憎悪 (原作3巻分完結)[武芸者](2011/10/22 07:50)
[22] 21話 外伝 シスターコンプレックス[武芸者](2010/05/27 18:35)
[23] 22話 因縁 (原作4巻分プロローグ)[武芸者](2010/05/08 21:46)
[24] 23話 それぞれの夜[武芸者](2010/05/18 16:46)
[25] 24話 剣と刀[武芸者](2011/11/04 17:26)
[26] 25話 第十小隊[武芸者](2011/10/22 07:56)
[27] 26話 戸惑い[武芸者](2010/12/07 15:42)
[28] 番外編1[武芸者](2011/01/21 21:41)
[29] 27話 ひとつの結末[武芸者](2011/10/22 08:17)
[30] 28話 エピローグ 狂いし電子精霊 (4巻分完結)[武芸者](2010/06/24 16:43)
[32] 29話 バンアレン・デイ 前編[武芸者](2011/10/22 08:19)
[33] 30話 バンアレン・デイ 後編[武芸者](2011/10/22 08:20)
[34] 31話 グレンダンにて (原作5巻分プロローグ)[武芸者](2010/08/06 21:56)
[35] 32話 合宿[武芸者](2011/10/22 08:22)
[37] 33話 対峙[かい](2011/10/22 08:23)
[38] 34話 その後……[武芸者](2010/09/06 14:48)
[39] 35話 二つの戦場[武芸者](2011/08/24 23:58)
[40] 36話 開戦[武芸者](2010/10/18 20:25)
[41] 37話 エピローグ 廃貴族 (原作5巻分完結)[武芸者](2011/10/23 07:13)
[43] 38話 都市の暴走 (原作6巻分プロローグ)[武芸者](2010/09/22 10:08)
[44] 39話 学園都市マイアス[武芸者](2011/10/23 07:18)
[45] 40話 逃避[武芸者](2010/10/20 19:03)
[46] 41話 関われぬ戦い[武芸者](2011/08/29 00:26)
[47] 42話 天剣授受者VS元天剣授受者[武芸者](2011/10/23 07:21)
[48] 43話 電子精霊マイアス[武芸者](2011/08/30 07:19)
[49] 44話 イグナシスの夢想[武芸者](2010/11/16 19:09)
[50] 45話 狼面衆[武芸者](2010/11/23 10:31)
[51] 46話 帰る場所[武芸者](2011/04/14 23:25)
[52] 47話 クラウドセル・分離マザーⅣ・ハルペー[武芸者](2011/07/28 20:40)
[53] 48話 エピローグ 再会 (原作6巻分完結)[武芸者](2011/10/05 08:10)
[54] 番外編2[武芸者](2011/02/22 15:17)
[55] 49話 婚約 (原作7巻分プロローグ)[武芸者](2011/10/23 07:24)
[56] 番外編3[武芸者](2011/02/28 23:00)
[57] 50話 都市戦の前に[武芸者](2011/09/08 09:51)
[59] 51話 病的愛情(ヤンデレ)[武芸者](2011/03/23 01:21)
[60] 51話 病的愛情(ヤンデレ)【ネタ回】[武芸者](2011/03/09 22:34)
[61] 52話 激突[武芸者](2011/11/14 12:59)
[62] 52話 激突【ネタ回】[武芸者](2011/11/14 13:00)
[63] 53話 病的愛情(レイフォン)暴走[武芸者](2011/04/07 17:12)
[64] 54話 都市戦開幕[武芸者](2011/07/20 21:08)
[65] 55話 都市戦終幕[武芸者](2011/04/14 23:20)
[66] 56話 エピローグ 都市戦後の騒動 (原作7巻分完結)[武芸者](2011/04/28 22:34)
[67] 57話 戦いの後の夜[武芸者](2011/11/22 07:43)
[68] 58話 何気ない日常[武芸者](2011/06/14 19:34)
[70] 59話 ダンスパーティ[武芸者](2011/08/23 22:35)
[71] 60話 戦闘狂(サヴァリス)[武芸者](2011/08/05 23:52)
[72] 61話 目出度い日[武芸者](2011/07/27 23:36)
[73] 62話 門出 (第一部完結)[武芸者](2021/02/02 00:48)
[74] 『一時凍結』 迫る危機[武芸者](2012/01/11 14:45)
[75] 63話 ツェルニ[武芸者](2012/01/13 23:31)
[76] 64話 後始末[武芸者](2012/03/09 22:52)
[77] 65話 念威少女[武芸者](2012/03/10 07:21)
[78] 番外編 ハイア死亡ルート[武芸者](2012/07/06 11:48)
[79] 66話 第十四小隊[武芸者](2013/09/04 20:30)
[80] 67話 怪奇愛好会[武芸者](2012/10/05 22:30)
[81] 68話 隠されていたもの[武芸者](2013/01/04 23:24)
[82] 69話 終幕[武芸者](2013/02/18 22:15)
[83] 70話 変化[武芸者](2013/02/18 22:11)
[84] 71話 休日[武芸者](2013/02/26 20:42)
[85] 72話 両親[武芸者](2013/04/04 17:15)
[86] 73話 駆け落ち[武芸者](2013/03/15 10:03)
[87] 74話 二つの脅威[武芸者](2013/04/06 09:55)
[88] 75話 二つの脅威、終結[武芸者](2013/05/07 21:29)
[89] 76話 文化祭開始[武芸者](2013/09/04 20:36)
[90] 77話 ミス・ツェルニ[武芸者](2013/09/12 21:24)
[91] 78話 ユーリ[武芸者](2013/09/13 06:52)
[92] 79話 別れ[武芸者](2013/11/08 23:20)
[93] 80話 夏の始まり (第二部開始 原作9巻分プロローグ)[武芸者](2014/02/14 15:05)
[94] 81話 レイフォンとサイハーデン[武芸者](2014/02/14 15:07)
[95] 最終章その1[武芸者](2018/02/04 00:00)
[96] 最終章その2[武芸者](2018/02/06 05:50)
[97] 最終章その3[武芸者](2020/11/17 23:18)
[98] 最終章その4[武芸者](2021/02/02 00:43)
[99] 最終章その5 ひとまずの幕引き[武芸者](2021/02/18 21:57)
[100] あとがき的な戯言[武芸者](2021/02/18 21:55)
[101] 去る者 その1[武芸者](2021/08/15 16:07)
[102] 去る者 その2 了[武芸者](2022/09/08 21:29)
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[15685] 51話 病的愛情(ヤンデレ)
Name: 武芸者◆8a2ce1c4 ID:a5553e4d 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/03/23 01:21
「この都市にいるのも今日までですか。長いようで短かったですね」

場所は宿泊施設の食堂。
都市発見の報は既にマイアス中を駆け巡り、食堂に集まった人達はその話題で盛り上がっていた。
勝敗による結果は変わらないとはいえ、学園都市同士で行われる戦争は血が流れない。
凄惨さを伴わない大規模な行事となっており、まるで格闘技の試合が行われるような盛り上がりを見せていた。
そんな雰囲気の中で、クラリーベルは色々あったマイアスの出来事を思い出す。

「サヴァリス様、教導の方はどうですか?」

「人に教えると言うのも案外いいかもしれませんね。そうすることによって違った視点で自分自身を見詰め直すことが出来ますし、何よりストレスの発散になりました。本当に有意義な日々でしたよ」

爽やかな笑みを浮かべて言うサヴァリスに、リーリンは戦慄した。
一度だけ、たったの一度だけ興味本位でサヴァリスの教導を覗き見したことがあり、その光景を思い出すだけで背筋が冷える。
養父のデルクが教えるサイハーデン刀争術もかなりきつい鍛錬を行っているが、サヴァリスの教導はそれの比ではない。
もはや、教導と呼べるものではなかった。彼の言葉どおり、まさにストレス発散。
マイアスの学生武芸者達はサヴァリスのサンドバックと化し、殴られた人が数十メルトル吹き飛ぶ光景なんて冗談にしか思えなかった。
サヴァリスは実戦を交え、体に直接覚えさせると言う教導の真似事をやっていたが、その真似事で果たして何人の学生武芸者が負傷したことだろう?

「ですが効果はありました。まさかあの短期間で、不完全ながら千人衝を習得するとは思いませんでしたよ。良い才能です。こんな平和な都市にいるのは勿体無いと思うほどに」

楽しそうにサヴァリスが笑う。
リーリンには千人衝がなんなのかわからないが、おそらくは凄い技なのだろう。クラリーベルはその事実に目を丸くし、興味深そうにサヴァリスに尋ねた。

「シェルさんのことですか?あの人は確かに面白いですね」

「はい、出来るならグレンダンに持ち帰りたいですね。あれは……良い師を付ければ化けますよ」

サヴァリスはお茶を飲みながら、クラリーベルの言葉に同意する。
シェル・ファイム。一般人であるリーリンには理解できない話だが、彼女はかなりの実力と才能を持っている。
その実力は未だ学生と言うことで未熟ではあるが、それは経験不足や良い指導者の不在から来るものだ。
彼女の出身都市は、汚染獣との交戦が少ない、平和ボケした都市である。そんな都市では彼女に教えることの出来る、熟練した武芸者は存在しない。
学園都市はもはや論外であり、未熟者の集まりであるここでは武芸者としての高みは到底目指せない。
故にサヴァリスは思う。シェルはグレンダンに来るべきだ。そうすれば彼女は武芸者としての高みへと上れる。そう思っているからこそ、シェルがこんな場所にいるのはもったいないと思っていた。

「私がどこにいようと勝手じゃないですか」

「おや?」

シェルのことについて熱弁していたサヴァリスが、本人の登場に驚いたような反応を示す。
最も気配などで後ろにいたことには気づいており、あえてそういう風に振舞っていた。
それとは別に前回の汚染獣戦で破損した彼女の義足だが、現在は予備の義足を付けている。破損したものは出身都市へと送り、修理をしてもらう予定だ。

「都市戦の前だと言うのにこんなところで何をしているんですか?」

「ここは食堂ですよ?昼食を取りに来たに決まっているじゃないですか」

サヴァリスの言葉にそう返したシェルの手には、彼女の分の昼食が握られていた。
シェルはこの都市の学生で、ここは宿泊施設の食堂ではあるが、別に彼女がここで昼食を取ってはいけないという決まりはない。
それに、先日の騒ぎでシェルとリーリンの間には交友が出来ている。その中に順応力の高いクラリーベルも加わり、同年代と言うこともあってか3人は良好な関係を築いていた。

「ロイ君もこっちこっち!」

「あ、う……」

今回はシェルのおまけとして都市警察にも所属しているロイが一緒に来ていたが、彼はリーリン達の姿を見て気まずそうに恐縮している。
何故かリーリンとシェルには記憶がないが、先日の騒ぎの一端を担った負い目からまともに顔を見ることが出来ない。
その上、記憶が消えているのはリーリンとシェルの2人だけであり、サヴァリスとクラリーベルはばっちりとロイがしたことを覚えているのだ。そんな2人がいる場所に、あの空間に入り込むなんて気まずすぎる。

「は~や~く!」

そんなロイの気など知らず、シェルは気楽に、陽気な声でロイを呼びかける。
ロイは冷や汗を流しながら、渋々とシェルの隣の席へと腰掛けた。
そこはサヴァリスの対面の席であり、クラリーベルの隣の席だ。まさに最悪のポジション。

「明日には都市戦が始まるそうですが、自信の程はどうですか?」

「誰かさんがいじめて(扱いて)くれたので、結構やれるんじゃないかと思いますよ」

「それはそれは」

だが、サヴァリスはロイにまったく興味を見せずに、笑顔でシェルに語りかけていた。
そのことに安堵し、ほっと息を吐くロイだったが、隣にいたクラリーベルが他の面子には聞こえないようにぼそりと耳打ちをしてくる。

「あの時のお礼は、しっかりとさせていただきますよ」

「……………全力でご遠慮したいんですが」

「シェルさんに全部話しちゃいますよ?」

「……………」

にこやかな笑みを浮かべ、さらりと脅迫までしてくるクラリーベルにロイは引き攣った表情を作る。
サヴァリスは相変わらずロイに対しての興味を抱かず、背後から聞こえてきた会話に耳を傾けていた。

「どっちが勝つかな?」

「こっちじゃないか?何しろこの間、汚染獣を倒してるんだぞ。それに聞いた話だとツェルニは前回の時には全敗しちまったらしい。武芸者の実力がとことん低いんだよ」

「はぁ、でもよ。もしかしたら有望な新人が現れてるかもしれないぜ。何しろ学園都市だ。 毎年、外から人がやってくるんだからな」

「はっ、将来有望な武芸者を外に出すような馬鹿な都市がどこにあるってんだ?」

「よし、なら賭けるか?」

旅慣れた様子の男が2人、そんな会話を交わしていた。
もしかしたら、都市間で情報を売り買いするのを生業にしているのかもしれない。だからマイアスのこと、ツェルニのことをある程度は知っているのだろう。
だけど、彼らは知らない。ツェルニには本当に有望な新人、レイフォンがいることに。
その気になれば一般の都市を1人で制圧できる、圧倒的実力を持つ武芸者がツェルニにはいる。

「うちの弟は1人で戦局を変える真似は出来ないらしい。嘆かわしいことです」

「弟!?」

だが、その話を聞いていたサヴァリスは、レイフォンには触れずに別のことを口にした。
彼の弟、ゴルネオ・ルッケンス。現在5年生なので、前回の都市戦に参加していてもなんらおかしくはなかった。

「ツェルニにはサヴァリスさんの弟さんがいらっしゃられるんですか!?」

「いますよ。そんなに驚くことですか?」

サヴァリスの弟発言に、過剰な反応を示すシェル。彼女の隣では、ロイがなんとも言えない表情を浮かべていた。
学生達を絶望へと追い込んだ汚染獣を鼻歌交じりで圧倒する、まるで冗談としか思えない圧倒的な実力を持つサヴァリス。そんな彼の弟だ。シェルとロイはゴルネオのことをどんな怪物なのかと思ったのだろう。

「とはいえ、僕と比べれば全然なってませんが。あれでいっそ、才能など欠片もなければよかったのでしょうけどね。身内びいきになるかもしれませんが、才能はあるのですよ。ただ、僕が最初に生まれていたことが、あれの不幸なのでしょうね。まぁ、どうでもいいことですが」

だが、実際にはゴルネオの実力はサヴァリスに遠く及ばない。それは比べるのが可愛そうなほどにだ。
その上、『どうでもいい』と締めくくったサヴァリスの言葉に嫌な説得力があり、リーリンは背筋を冷やした。

「弟さんですよ」

「だから、なんですか?」

非難をこめたリーリンの言葉を、サヴァリスは軽く受け流す。

「天剣授受者に求められるのは純粋な強さですよ。それの邪魔となるのなら、弟どころかルッケンスの武門だって捨ててみせましょう」

言葉と共に、微細にだがサヴァリスの笑みが深みを増した。冗談ではなく、本気で言っているのだ。
その事実にリーリンだけでなく、シェルとロイも言葉を失っている。唯一、クラリーベルだけは平然とし、食後のお茶を啜っていた。

リーリンは孤児だ。血縁は存在せず、無条件で自分を愛してくれる者は存在しない。
だが、だからこそ、家族と言ういて当たり前な存在がどれだけ大切かと言う事実を、リーリンは誰よりも理解しているつもりだ。
それなのにサヴァリスはそんな家族を、そして自分が育ってきた武門を、あっさり捨てると宣言したのだ。

「ああ、僕だけがこんなことを考えているなんて思われるのは心外なので言っておきますけど、天剣授受者はおおよそこんな考え方ですよ」

「え?」

「天剣授受者と言うのはグレンダンでの最高位の武芸者の集団ですが、言い換えてしまえば異常者の集団ですよ。強さと言うものの究極を何を捨ててでも得たいと考えているような連中が殆どです。レイフォンが違ったと言うだけのことです」

サヴァリスの言葉が本当なら、天剣授受者とはリーリンには到底理解できない存在なのだろう。
だが、レイフォンだけは違う。そのことに、リーリンは僅かな喜びを感じた。
サヴァリスの言い様では、異常者の集団にレイフォンが分類されないからだ。

「あえて言わせてもらえば、自らの強さのことだけ考えていれば、ガハルドのごとき愚か者に弱みを握られることもなかったし、グレンダンから離れる必要もなかった」

だが、その喜びは一瞬だけだった。異常者ではなかったからこそ、レイフォンが甘かったからこそ、彼はグレンダンを離れる破目になってしまった。
その事実が、リーリンに重く伸し掛かる。

「えっと……話がまったくわからないんですけど、サヴァリスさんはその、天剣授受者なんですか?」

「ああ、そう言えばあなた方は知りませんでしたね。あまり公言されると困るんですが、僕はグレンダンでは天剣授受者と言う地位についています」

グレンダン出身ではないシェルはサヴァリスの言葉に首を捻り、当のサヴァリスは困ったように苦笑の微笑みを浮かべる。
未だに状況を理解できていないシェルは、次々と感じる疑問を吐き出していった。

「……つまりサヴァリスさんは、武芸の本場と呼ばれているあのグレンダンで天剣授受者と言う最高位の地位についてるんですね?って、何でそんな凄い人がこんなところにいるんですか!?」

「深くは言えませんが、ある任務だと言っておきます。女王直々に命を与えられましてね」

「はぁ……そうなんですか。で、サヴァリスさんの話だと、明日戦うことになるツェルニには天剣授受者……つまりはサヴァリスさんクラスの人がいるように聞こえるんですが……」

「いますけど、なにか?」

「え、ええ~……」

気が抜けるほどあっさりと肯定するサヴァリスに、シェルはなんと言えばいいのかわからなかった。
疑問を感じ、ちゃんとそれには答えてもらっているのだが、また新たな疑問が湧いてくる。

「おかしいですよね?何でそんな人がツェルニに、グレンダンの外にいるんですか!?サヴァリスさんクラスなんでしょう?そんなのいるだけで反則ですよ!!」

「ええ、明日の都市戦は間違いなくマイアスが負けると思いますよ」

「教導した都市の生徒を前に、よくそんなことが言えますね?」

取り乱すシェルに、サヴァリスは『くっくっ』と意地悪く笑っていた。
見た目は好青年の彼がそんな風に笑っている姿は本当に良く似合っているのだが、シェルからすれば殺意以外湧いてこない。

「レイフォンがツェルニにいるのは、グレンダンである問題を起こして追放されたからです。性格、武芸者としての在り方には難がありましたが、実力だけは確かですよ」

「そうなんですか……明日の都市戦、勝てるかな?」

「無理だと言ったじゃないですか?」

「断言しないでください」

あまりにも無神経なサヴァリスの言葉に、シェルは深いため息を付く。
都市戦前の高揚感に包まれているマイアス。だがシェルと、その隣に座っていたロイは不安でいっぱいだった。

「そう言えば、リーリンさんはツェルニに行くのが目的でしたよね?そこにいる幼馴染に錬金鋼を持っていくとか。まさか、そのレイフォンと言う人がそうなんですか?」

「そ、それは……」

「へぇ~」

そんな気分を払拭しようと、ロイは事情聴取でのリーリンとの会話を思い出す。
指摘されたリーリンは顔を赤くし、シェルは興味深そうににやけた笑みを浮かべた。

「つまり、そう言う事なんですね?」

「ちょ、シェルさん!?」

「別に恥ずかしがることじゃありませんよ」

シェルは微笑ましそうにくすくすと笑っていたが、あることを思い出し、少しだけ言いにくそうに頬を掻いた。

「あ~……でも、せっかくツェルニが近くにあると言うのに、放浪バスを待たないといけないってのは残念ですね」

「え!?」

「いや、『え』って……え?まさか移動するつもりだったんですか?戦争中に」

予想外の言葉に驚くリーリンだったが、シェルの言っていることはもっともだ。
ツェルニとマイアスが接近している。それは武芸大会と言う体裁を取っていても戦争である。
そんな場所、戦場を、一般人であるリーリンが移動できるわけがない。

「あ……」

「ああ、しまった」

シェルの言葉にクラリーベルは苦笑いを浮かべ、サヴァリスは感情のこもらない声で天を仰ぎ、頭を下げた。

「すいません、僕とクラリーベル様の基準で考えてました」

「その言い方だと、普通では移動できないってことですか?」

「ええ。戦争経験は僕もそれほどありませんが、勝敗が決した後は例外なくすぐに移動を再開しますね。そうか、リーリンさん達はシェルターにいますものね、知らなくて当然か」

ツェルニが近くにあると言うのに、移動することが出来ない。
その事実にリーリンは、言いようのないもやもやとした感情を抱く。

「どうしましょう?」

放浪バスが来ていない以上、それを利用する手段はない。
だからと言って自分の足で移動するにしても、接触箇所が一番の激戦地になるだろうことは、如何に戦いに疎いリーリンにだってわかることだ。そんな場所を通り抜けるなんて、一般人には不可能である。
なら、戦いが終わった後に改めて放浪バスを待つのか?
もしかしたら都市戦が近いことが、放浪バスが来なかった原因かもしれない。都市戦が終わり、しばらく待てば放浪バスはやって来るだろう。
だが……

(待ってなんていられない)

見てしまったのだ、ツェルニを。レイフォンがすぐそこにいることを知ってしまった。
そんな状態で待ち続けることなど、リーリンには出来なかった。

「まぁ、そこまで心配しなくてもいいですよ」

サヴァリスは気楽な様子でそんなことを言う。リーリンは思わず、サヴァリスをきっと睨みつけていた。
もし、もう少し待てばなんて言おうものなら、リーリンは怒鳴っていたかもしれない。
だが、彼女が怒鳴る必要などまったくなかった。

「あー、もしかして忘れているかもしれませんが、僕とクラリーベル様はまがりなりにも武芸者ですよ」

「そうですよ。移動する方法なら、幾らでもあります」

その言葉に、リーリンはこの2人がどうやって移動するつもりだったのか察した。

「もしかして……」

先日のことを思い出す。
汚染獣が襲ってきた時、避難するためにクラリーベルに抱えられ、壁を疾走したあの出来事だ。

「そこら辺の学生武芸者に察知されるようなへまはしませんよ。あなたを安全にツェルニまで送って差し上げます」

サヴァリスはにっこりと微笑んで保障し、食後のお茶を冷まそうと息を吹きかける。
クラリーベルも笑いながら、デザートのシャーベットを食していた。

「えっと……私達都市警察に所属しているんですけど?サヴァリスさんの言いようだと、都市戦当日はシェルターに避難しないで、ツェルニに移動しようとしているように聞こえるんですけど?」

「そのつもりですけど何か?」

「ええ~~~……私の常識が間違っているんですか?」

都市警察として取り締まるべきか思い悩むシェルだったが、サヴァリスに常識は通用しないと諦め、深いため息を付くのだった。




































残された1枚の手紙。それを読んだレイフォンは、くしゃりとそれを握りつぶした。

「くっ……はは、ははは……」

笑みがこぼれる。渇いた笑い声が部屋の中に響いた。
瞳から感情の色が消えた、底冷えしそうなほどに冷たい笑み。
視線だけで人を殺せそうなほどに、レイフォンの視線は鋭かった。

ここはカリアンとフェリが暮らしている寮だ。フェリの送り迎えはレイフォンの日課と化しており、今日も何時もどおりにフェリの迎えに来た。
呼び鈴を鳴らしても反応がなく、扉の鍵が開いていたので不審に思いながらもレイフォンは中へと入った。次の瞬間、レイフォンは部屋の中の光景に絶句する。
荒らされた室内。まるで強盗でも入ったような跡だった。
次に発見したのは、眼鏡が割られ、床に倒れているカリアンの姿。レイフォンはすぐにカリアンの容態を確認したが、どうやら気を失っているだけだったようで一安心する。
だが問題なのは、レイフォンが一番気がかりなのは、フェリの安否だ。
気絶しているカリアンをソファーへと寝かせ、レイフォンはフェリの姿を捜す。だが、彼女の姿はこの部屋のどこにもなかった。
そんなレイフォンがフェリの代わりに見つけたのは、この部屋に置かれていた1枚の置手紙。
それを読んだレイフォンはこの乾いた笑いが収まると、今度は殺伐とつぶやいた。

「まさか、そんなに死にたかったとは知らなかった」

手紙の内容を思い浮かべる。
あまりにもふざけた内容で、殺したいほどに憎い相手からの手紙。

『フェリ・ロスは預かった。帰して欲しければ明日、一対一(サシ)の勝負をしろ。お前が使うのはもちろん刀だ』

要約すればそんな内容の手紙。
あまりにもふざけすぎて、今すぐにでもハイアを殺したくなってしまった。
手足を1本ずつ切り落とし、腹を裂き、臓器を切り刻む。その上で最後に首を刎ね、殺してやる。
そう思い立つのはいいが、ハイアが指定してきた日時は明日だ。それが何故なのかはわからない。レイフォンは今すぐにでもハイアを殺しに行きたいと言うのに。
しかも、ハイアはレイフォンに刀を使うことを要求している。つまりはレイフォンがけじめとして使うのを拒んでいる刀を、サイハーデン刀争術を使えと言っているのだ。
だが、それがどうした?
確かにレイフォンはけじめとして、罪滅ぼしとは言わないが刀を使うことを拒んでいる。だけどそんなものとフェリ、どちらが大事かと聞かれればレイフォンは即答するだろう、フェリの方が大事だと。
ハイアが望んでいることだし、フェリを助けるために必要だと言うのならレイフォンは迷わない。刀を、サイハーデン刀争術を存分に使い、ハイアを殺す。
養父に教わった技で人を殺める、つまりは再びこの技を汚すことになってしまうが、そんな負い目よりもフェリの方が何倍も大事だ。
フェリのためならば、レイフォンは何度だってサイハーデン刀争術を汚す。そう決意して、レイフォンは剣帯に差してある錬金鋼へと視線を向けた。
マイアスに行った時に手に入れた、自身の剄をどれだけ注ぎ込もうと壊れない天剣並みの錬金鋼。
それを使う。容赦せず、情けをかけず、ハイアを……

殺す……殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
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無意識のうちに、レイフォンの体からは剄が溢れ出す。純粋な殺意に満ちた、どす黒い剄。
通常の剄は青光りや金色に光ると言うのに、レイフォンの剄は鈍く、黒い光を発していた。
それはまるで、彼の心境を代弁しているかのように刺々しい。
フェリを助ける、絶対に、確実に。
その後は皆殺しだ。ハイアはもちろん、サリンバン教導傭兵団全員殺す。
そう決意したレイフォンから溢れ出している剄は、天剣授受者であるカルヴァーンの刃鎧(じんがい)のように半物質化しており、まるで翼のような形状を作っていた。
剄による漆黒の翼。その出で立ちは物語などに出てくる悪魔の様だ。

「カリアン!おい、カリアン!?」

玄関から聞き覚えのある男の声が聞こえてくる。レイフォンの記憶が確かなら、この声は武芸長ヴァンゼの声だ。
この部屋の主であるカリアンは生徒会長であり、おそらく、何時までたっても姿を現さない彼の心配をしてヴァンゼは様子を見に来たのだろう。
若干、ヴァンゼの声には焦りと恐怖を感じている気がした。その原因は、考えるまでもなくレイフォンが発している剄だ。
この刺々しく、禍々しい剄がヴァンゼを警戒させているのだ。だけどレイフォンはヴァンゼがどんな風に感じていようと興味がないし、関係ない。

「開けるぞ!いいな!?」

警戒心を緩めず、緊迫した雰囲気でヴァンゼは今にも扉を蹴破ってきそうだ。
レイフォンはそんな彼に欠片も関心を抱かず、ヴァンゼが開けようとした扉を開け、正面から堂々と出て行く。

「レイ……フォン……?」

レイフォンを見て、あまりにも普段の彼からかけ離れた姿にヴァンゼは硬直する。
恐ろしい……一目見て、そう感じた。
先日ツェルニを襲った恐怖、汚染獣。だがそんなもの、このレイフォンの前では霞んでしまう。
感じるのは明確な死のイメージ。今すぐにでも逃げ出したい。一刻も早くここから離れたい。
恐怖に身を震わせながらも、ヴァンゼは掠れるような声でレイフォンに問い質した。

「カリアンは……どうした……?」

その問いにレイフォンは冷たい視線を向け、ヴァンゼの巨体がまるで小動物のようにびくりと震えた。
そんな反応にすら無関心で、レイフォンは一つの紙くずをヴァンゼへと手渡す。それはレイフォンが握りつぶした、ハイアの手紙だった。

「こう言う事です。僕は用事があるので外しますけど、中では義兄さんが寝ているので後をお願いします」

そしてこれだけを言い残した。

「お、おい!?」

ヴァンゼが抑止の声をかけるが、レイフォンは反応しない。
背を向け、淡々と出口へと向かって歩いていく。
追うかとも考えたが、ヴァンゼにはあの背中を追う勇気はなかった。
もしレイフォンの邪魔をしようものなら、今のレイフォンは何の迷いもなく邪魔者を消すだろう。そう確信できるほどに、レイフォンの瞳は冷え切っている。
ヴァンゼにできることは何もなく、レイフォンに渡された手紙を開き、それを読んで、すぐさま中で気絶しているカリアンの元へ向かうのだった。

























あとがき
ネタ回を本編として上げてしまい、賛否両論が激しかったのでその修正版です。


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