開始のサイレンと同時に、停止していた空気が爆発したように動き出す。
その空気の中で1人、シャーニッドは激流の様に動き出す気配の隙間を抜け、慎重に、素早く移動する。
手にした軽金錬金鋼の狙撃銃が音を立てないように気をつけ、走る。
音を立てないこと、他人に自分の存在を知られないこと……これがこの時のシャーニッドの役目だ。
おそらく対戦相手の小隊、特に念威操者は必死になってシャーニッドを探していることだろう。その監視の目をくぐって進む事に、シャーニッドは腹の奥に塊が出来るような緊張感を覚える。
慎重に行動しなければならないと言うのに、焦れて暴走したくなる。
もしここで、大きな声でも出せばどうなるか?
そういう、馬鹿な想像が頭の中をよぎっていく。
全てを台無しにしたい……そんな未来への懸念を絶対的に無視した、現在だけの欲求を弄びながら、シャーニッドが作戦位置に辿り着いた。
敵の武芸者や念威操者に見つからないように、静かに活剄の密度を上げて視力を強化する。
念威操者のサポートのみでも敵を捉える事は出来るが、どうしても察知から行動までにワンアクション、余計な過程が入ってしまう。
武芸者同士の戦いでは速度が重要だ。削れるものは削ったほうがいい。
そのワンアクションを削るため、シャーニッドはソリッドになる。
この瞬間、シャーニッドは弾倉に放り込まれた弾頭に注がれる剄の境地になる。
弾倉の中にジャラジャラと詰まった固形麻酔薬の弾丸。そのひとつ、バネ仕掛けで薬室に運ばれた弾丸に剄を纏わせる。
引き金を引くと薬室内に一点だけある紅玉錬金鋼が弾丸を覆う剄の一部を変化させ、火炎化、膨張、爆発し火気を纏った剄弾を撃ち出す。
それら一瞬で行われる過程を感じる事が出来る。後はその瞬間を待つだけ。
野戦グラウンドの中央では戦いが起きている。
中央を貫く黄金の奔流を見つめる。奔流の正体はシャーニッドの仲間だ。
ダルシェナ・シェ・マテルナ。
巨大な突撃槍(ランス)を突貫するダルシェナの姿は、氾濫した河川のようでもあり、同時に一筋の矢のようでもある。
黄金の河川の氾濫。無数の螺旋を描く彼女の金髪を見ていると、そう思ってしまう。泡立つ奔流を引き連れて行進し、あらゆる敵を薙ぎ倒し飲み込んでいく。
その氾濫を止めさせないためにシャーニッドが、そしてもう1人、ディン・ディーがいる。
シャーニッドが奔流を遮ろうとする堰に穴を穿つ役目ならば、ディンの役目は穴を押し広げる事だ。
引き金を引く。念威操者からの情報を自分の目で確かめ、剄弾を放つ。
フラッグに向って突貫するダルシェナを止めようと、横から強襲しようとした敵小隊員を狙撃したのだ。
3人いた敵小隊員のうち1人が倒れる。出鼻をくじかれ、怯む小隊員に影の様に接近したディンが襲い掛かる。
そのディンに援護でもう1発撃つと、シャーニッドは場所を変更するために立ち上がった。
味方の念威操者が、こちらに接近してくる気配を伝えてきたからだ。
そうでなくとも、射撃位置がばれては命中率が落ちる。
移動する前に、シャーニッドは止まることなく直進するダルシェナを見た。直に陣前で防衛する小隊員との戦闘となる。
その時こそダルシェナの最大の攻撃力を発揮する瞬間で、その場面で何も出来ないような事になってはいけない。
彼女を最大の効果が発揮できる場所へ連れて行く。それがシャーニッドとディンの役目だ。
移動を急ぐ必要があるのだけど、シャーニッドはダルシェナの背中を見つめた。
(今日は勝つな)
フラッグから視線をそらさず、一直線に突き進む彼女を見ていると、シャーニッドはそうかんじる事ができ、移動を急いだ。
そうかんじたあの日から、1年が過ぎた。
「あたしは嫌だからな」
「へ……?」
朝一番、図書館前の芝生で仮眠を取っていると、ナルキに胸倉をつかまれてこう言われた。
ツェルニは現在、セルニウム鉱山での採掘作業もあって休講となっていた。
生徒会の発表では、発掘作業は1週間ほどかかるらしい。
実際の発掘作業は重機を扱える工業科の生徒と、肉体派の有志達によって行われるのだが、他の科も彼らをさまざまな面で支援するので、下級生達の授業を行う上級生の数が足りなくなる。
そのための休講、休みであり、代わりに課題が出されるのだ。
レイフォンは機関掃除のバイト後、急いで寮へと戻って昼食を用意し、スポーツバックを枕に眠っていた。
前日に、メイシェン達から休暇中の課題を片付けてしまおうと提案され、いつも昼食を取る5人で図書館に集まる事にしたのだ。
そのまま部屋で仮眠を取ると寝過ごしてしまいそうだったので、ここならばメイシェン達が来れば起こしてくれるだろうと図書館の開園時間まで眠る事にした。
それで、レイフォンはその思惑通りに起こされた。
ただ、予想と違っていたのはレイフォンを起こした人物、歩み寄ってきたナルキがいきなりレイフォンの胸倉をつかんだことだろう。
「え?え?」
胸倉をつかまれたまま、レイフォンはわけがわからないまま辺りを見渡した
ナルキは、なんだかとっても怒っていた。その後ろで、ミィフィとメイシェンも困惑している。彼女達もわけがわかっていないのだろう。
「朝からいきなり、なんなんですかあなたは?」
既にフェリも来ており、ナルキの暴挙に不機嫌そうな無表情で疑問を投げかける。
「レイとんだろう、隊長さんにあたしの事言ったのは。それともフェリ先輩ですか?」
「は?」
「へ?」
だが、わけがわからずにレイフォンとフェリは同時に首をかしげた。
「なんて言ったのか知らないけど……あたしは絶対に嫌だからな」
「……ごめん、まったく事情が飲み込めないんだけど」
「説明を要求します」
「……レイとん達じゃないのか?」
レイフォンとフェリの言葉に困惑した様子で、ナルキは胸倉から手を放す。
「だから、なに?」
姐御肌で、いつも落ち着いた雰囲気のあるナルキなのだが、今は何故だか取り乱している。
「だから、隊長さんだよ。隊長さんがあたしのところに来たんだ。昨日の晩、署の方に」
「……あ、ああ」
「……………」
その言葉にレイフォンが引き攣った表情で頷き、フェリは無表情のまま頭を押さえる。
そのしぐさにナルキが反応した。
「やっぱり、レイとんだな!?」
「違うよ、僕は何も言ってない。いや、言ったかな……?あ、待って待って、言ったけど、それは隊長に意見を求められたからだよ。隊長は最初からナルキに目をつけていたんだって」
再び胸倉をつかまれそうになって、レイフォンは慌ててナルキを止めた。
「なんでだ?」
「知らないよ」
ナルキが『むう』と唸る。レイフォンはすっかり目が覚めてしまった。
「えーと……まるきり事情が飲み込めないんだけど」
それまで黙っていたミィフィが手を上げて質問する。
メイシェンも何事かと気になり、無言でこくこくと頷いていた。
「なにがどうなってんの?」
「……レイとんとこの隊長さんにスカウトされた」
「……ええっ!?」
苦々しい顔で答えるナルキに、2人が驚きの声を上げる。
つまり、ニーナがついに行動を起こしたと言うことだ。
前回の都市の調査中にも言っていたが、ナルキに目をつけており、3日後に予定している合宿前に彼女をを入れたいと考えたのだろう。
少数精鋭を気取るつもりはないと言っていたし、前回の調査の時にも隊員(人手)がいればどうにかなっていた危機があった。
特にレイフォンはそのことを痛烈に実感したために、隊員を増やすという考えに反対はない。むしろ賛成である。
だが、ニーナがナルキにどこで目をつけたのかまではわからない。話題には出ていたので、いつかナルキに話がいくと思っていたのだが、それが昨日だったらしい。
「いい迷惑だ」
図書室の自習室でレポートを取りながら、ナルキがはっきりと言う。
「あたしは、小隊員になるつもりはないからな」
「うん、まぁ、そうだろうなぁとは思ってたんだけど……」
だが、それでニーナが諦めるとは思えない。
第十七小隊の弱点ははっきりしている。人数不足だ。
戦闘要員が最大7人まで許されていると言うのに、最低数の4人しかいない。
対抗試合で攻撃側に回ればまだやりようはある。隊長のニーナが倒れない限り負けではないので、その間にレイフォンやシャーニッドがどうにかすればいい話である。
だが、防御側に回ると人数の差の問題がはっきりと出てくる。
護らなければいけないのはまるで動かないフラッグで、単純計算で隊員全員が1人ずつ足止めしたとしても、最大7人の小隊相手なら3人が自由に動けることになるからだ。だから隊員は1人でも欲しい。
だが、隊員になれそうな実力の生徒は既に他の小隊に取られているし、またいたとしても、比較的低学年層で構成されている第十七小隊に入りたがる上級生はいない。
そんなわけでニーナは、1,2年生の中で将来有望そうな生徒に声をかけることにしたのだ。それがナルキである。
「あたしは都市警で働いていたいんだ。レイとんやフェリ先輩には悪いけど、小隊員なんてやっている暇はない」
「うーん、それは僕もわかってるんだけどね」
「本人の自由ですし、それについては何にもいいません。むしろ問題なのは隊長のほうです。まったく、困った人ですね」
ナルキの気持ちはわかるが、だからと言ってどうにかできるわけではない。
ニーナは一度思い込んだらまっすぐに突き進む。それは凄いと思うが、他人からすれば迷惑だと感じることもある。
一度こうと決めたら曲がれず、止まれない。そんな猪みたいな性格をしているのだ。
「いいじゃん、なっちゃえば」
課題に飽きたらしいミィフィがペンを投げ出し、気楽に言う。
「気楽に言うな」
「えー、どうしてよ?レイとんだって小隊にいて機関掃除のバイトもしたりしてるじゃん。隊長さんだってレイとんと同じバイトだし、出来ない事はないと思うよ?」
一番きついと言われる機関掃除のバイトをやっているレイフォンとニーナ。
そんな彼等が小隊に所属しているのだから、ナルキも都市警に所属しながら出来るのではないかと言うミィフィ。
「出来る出来ないなら、そういうやり方もあるだろうさ。だけどあたしは半端な真似をやりたくないんだ。あたしはレイとんほど器用じゃないし、実力があるわけでもない」
「実力はともかく、フォンフォンが器用だと言うのは語弊が生じます」
「なんか酷くないですか?フェリ」
ナルキの言葉にフェリが突っ込みを入れ、それにレイフォンが苦笑いをする。
レイフォンは器用ではない。普段の行いからもそう取れるところもあり、そして不器用だからこそグレンダンでは天剣を剥奪されて追放されるなんて結果になってしまったのだ。
しかも、当初は武芸を辞めるつもりだったのに現在は第十七小隊の1年生エース。
武芸に関しては開き直りつつあるものの、とても器用な行動を取っての結果とは思えない。
「とにかく、レイとん。あたしが嫌だって言うのをちゃんと伝えておいてくれよ」
「……がんばってみる」
ナルキに念押しで言われ、レイフォンは困ったような表情でうなずくのだった。
そんな話をしていたので、課題にはあまり集中できずに、朝食を取った後も雑談ばかりしていた。
時間が来て解散となり、レイフォンとフェリはメイシェン達と別れて練武館へと向う。
最近暖かくなってきた。
夜の肌寒さもなくなり、昼間は制服をキッチリと着ていると汗ばむ事もある。
都市が暑い地域に入りだしたのだ。
今はセルニウムの補給で足を止めているが、再び移動を開始すれば温度はまた上がってくるのかもしれない。
強くなってきた日差しを浴びながら、レイフォンとフェリは練武館へと入った。
本来なら、練武館の内部はひとつの膨大な空間なのだが、それをパーティションでいくつもの部屋に分けられている。
防音効果のあるパーティションを揺るがす訓練の音がひしめく中を進み、第十七小隊へと割り当てられた部屋へと入った。
他の部屋から聞こえる音に比べ、ここは静かだった。
比較的、静かだった。
「おはようございます」
ドンドンと言う音が間断なく部屋の中で鳴り響いている。
最初に来るのがニーナだと言うのが、いつもの事だ。
そのニーナは、パーティションの立てかけられた板に、両手に持った黒鋼錬金鋼の鉄鞭で無数の硬球を打ち込んでいる。
「む……」
板から跳ね返ってくる硬球を鉄鞭で打ち返すニーナだが、レイフォンからかけられた声に反応し、盛大に空振りをする。
それをレイフォンは、すぐさま青石錬金鋼の剣を復元させ、まとめて打ち返す。
それはニーナを避けるように板へと向い、再び跳ね返ってきた硬球を気を取り直したニーナが再び打ち返す。
「ナルキに声をかけたんですね」
「……ああ」
「僕が怒られたんですよ」
言いながら、活剄を全身に流して体の調子を上げていたレイフォンに向けて硬球を打ってきた。
跳ね返ってくる硬球の全てをだ。
レイフォンは再び剣で、全てそれを打ち返す。
「あそこまで嫌がるとは思わなかった」
ニーナが意外そうな口調で言い、レイフォンに打ち返された硬球を打ち返す。
そのまま、レイフォンとニーナは硬球を打ち合い続ける。
「相手の都合を考えないのが悪いんですよ。そもそも、なんで署にまで押しかけたんですか?」
「む……」
フェリの吐く毒に苦い顔をしつつ、ニーナは口を開く。
「目を付けていたのは前に言ったな?そろそろ期限だと思ったからな」
「期限?」
その言葉に、レイフォンが首をひねる。
「武芸大会……都市との縄張り争いは、何時始めますなんて告知はないだろう?」
「ああ、そうですね」
武芸大会と銘打たれ、それは学園都市連盟に管理されているとは言っても、都市は基本、自らの意思で歩き続ける。
それを管理し、何時武芸大会を始めるかなんて誰にも定める事は出来ない。
「学連の審判員がまだ来てないのは気になるが、審判なしで試合が始まる例はよくあることのようだから、余りそれは当てにならない。私はそろそろ本番が始まるような気がするんだ」
「どうしてです?」
「セルニウムの採掘だ。試合の後、もし負けたらする事が出来ない補給だからな。やるなら今のうちだろう?」
「ああ、なるほど。そうですね、戦うなら、補給はしっかりしておいた方がいいでしょうね」
「そうだ。本来ぶつかり合わない都市がぶつかると言う事は、普段の移動半径から外れた場所を進むという事だ。そういう意味でも補給は必要だ」
ニーナの言葉に、レイフォンは武芸大会が近づいて何時のだと理解する。
今現在、ツェルニに残っているのは採掘作業をしているこの鉱山だけ。
この鉱山を失えば、ツェルニは緩やかな死を迎えるしかない。
ツェルニを出ればそれで済み、やり直しが出来るかもしれないが、レイフォンはこのツェルニで過ごしたかった。
フェリと出会い、仲の良い友人達が出来た。
小隊に入り、ニーナやシャーニッド達とも出会った。そんな場所が、ツェルニが好きになったから、レイフォンは武芸を続けようと思ったのだ。
その一番の理由は、フェリを護ると言う強固な気持ちなのだが。
「新人を入れるなら、今がギリギリだろう。実力的には追いつかなくても、自分の役割にそった動きを覚えさせるなら、今からでも遅すぎるぐらいだ」
そこで話が再びナルキに戻る。
硬球を打ち合い続けるレイフォンとニーナ。
そんなニーナに、フェリが再び毒を吐いた。
「なんにせよ、隊長に交渉ごとは向かないようですね」
「む……」
フェリの言葉に心外そうな顔をするニーナだが、それに構わずフェリは続ける。
「ナルキがあんなに怒っていた事もそうですし、そもそもフォンフォンの時だって交渉や話し合いではなく、強引に呼びつけて無理やり小隊に入れたじゃないですか。隊の長として、それはどうかと思いますが?」
「それはそうだが……そもそも、武芸科に在籍する者が、小隊員になれるのは栄誉ことでだな……」
「ご自分の価値観に他人を巻き込まないでください。迷惑です」
「むぅ……」
容赦のないフェリの言葉に、ニーナは困ったような表情をする。
その様子に苦笑し、レイフォンはニーナにフォローを入れた。
「まぁまぁ、フェリもそれくらいで。僕は別に十七小隊に入ったことは後悔してませんから。むしろ良かったとすら思ってますよ」
「レイフォン、それは……」
レイフォンの入れたフォローは本心だったのだろう。
第十七小隊に入ったのは後悔していないし、入って良かったとすら思っている。
それは間違いなく本心だ。だが、ニーナは疑問を抱き、それをたずねようとしたが思わず口を閉ざす。
「……いや、やはりなんでもない」
「?」
レイフォンが首をひねった。
自分でもなにを言っているのかと疑問に思った。
レイフォンが第十七小隊に入って良かったと言う理由。それにはフェリが関係しているのではないかと思ったからだ。
前回の都市の探索中に感じたことだが、レイフォンはフェリの事を特に気にかけている。いや、それはもはや依存していると言ってもいいかもしれない。
フェリの念威が途絶え、ニーナがレイフォンの元へ駆けつけると、そこではレイフォンがシャンテとゴルネオを殺そうとした。
当然、それを傍観する訳には行かないのでニーナは止めた。なにをしているのかと尋ねた。
レイフォンはそれに何の迷いもなく殺すと答え、それでも抑止しようとするニーナに言ったのだ。
『うるさいですね。それ以上邪魔をすると言うのなら、いくら隊長でも……』
この先の言葉を想像しただけで、ニーナは戦慄する。
普段のレイフォンはどこか頼りなく、優柔不断と取れるところもあるが、性格は基本的に優しい。
誠意には誠意で答えるし、前回の老生体戦の経緯からニーナに金剛剄と言う剄技を教えてくれた。
そんなレイフォンのことを、ニーナは部下として誇りに思っている。そして、どこか頼っている。
そんな彼なのだが、あのときのレイフォンはニーナを見ていなかった。いや、見ていたのかもしれない。
だが、その視線は鬱陶しそうに、邪険そうに……
その言葉と表情に、ニーナは恐怖すら覚える。
そんな彼の気持ちと感情を独占していたのは、フェリの存在。
ニーナが止めようとしても聞き入れる気がなかったレイフォンが、念威越しに聞こえたフェリの声で止まり、表情が、感情が元に戻った。
ニーナの言うことは聞かなかったのに、フェリの言うことには拍子抜けするほどあっさりと従った。
その事実に、ニーナは何か思うところがあった。しばらくレイフォンとはまともに顔も合わせず、そして考え込んでしまう。
だけどレイフォンはいつもどおりなのだ。
あんなことがあったと言うのに、ニーナにいつもどおりに接している。
シャンテに重傷を負わせ、なにがあったかは詳しくは知らないが、ゴルネオの心を折ったと言うのにまるで気にせず、普段どおりにすごしている。
普段どおりにどこか頼りなく、普段どおりに優柔不断で、そして普段どおりに優しい。
だけどそんなレイフォンが見ているのは、フェリだけではないのかと思ってしまう。
レイフォンはフェリがいるからこそ第十七小隊に入り、そして隊長である自分のことなど気にもかけていないのではないかと思った。思ったが……そんな馬鹿な考えは早々に破棄する。
気にもかけていないなら、そもそもニーナに剄技を教えるなんてことはしないだろう。語りかけることすらしないだろう。
だけどレイフォンはいつもどおりで、そして優しい。それで十分ではないか。
確かにあの時のレイフォンはおかしかったが、それは頭に血が上っていただけの話なのだろう。
自分も冷静にはいられず、他者の主眼からは人のことは言えないらしいが、そういうものではないかと思った。
そう考え、無理やりに納得する。そのときに胸にわずかな痛みが走ったが、ニーナはそれを無視しようと、忘れようとした。
いい加減立ち直らなければいけない。レイフォンはいつもどおりだというのに、隊長である自分がいつまでもうじうじとしているわけには行かないのだ。
そう考えているうちに、ニーナはまたも硬球を打ちもらす。
先ほどレイフォンに声をかけられて気をそらし、そして今の失態にニーナは思わず舌打ちをする。
打ちもらした硬球はニーナの背後へと飛び、
「おいーっす」
ちょうどドアを開けて入って来たシャーニッドの顔をめがけ、真っ直ぐと飛んでくる。
「おっと」
シャーニッドはかがんで硬球を受け流し、硬球は廊下の壁を打って跳ね回る。
「まぁた、そのゲームか?好きだねぇ」
言いつつ、シャーニッドははね続ける硬球をつかんで部屋の中に投げ込んだ。
「シャーニッド、フェリ。お前らも入れ」
思考を切り替えようと、気合を入れ直す様にニーナが言った。
「地獄絵図の再来かい?」
「負けたら夕食。あの賭けに乗ってやるぞ」
「いいね」
珍しいニーナの挑発的な発言に、シャーニッドは意外そうな顔をしたが、すぐに乗ってきた。
剣帯にある3本の錬金鋼のうち2本を抜き出して復元する。
黒鋼錬金鋼の拳銃であり、命中精度よりも打撃の威力を重視した銃衝術専用の錬金鋼だ。
「負けるのは隊長か先輩のどちらかと思いますけど」
無表情のまま呆れたように言い、フェリも重晶錬金鋼を復元する。
辺りに舞う念威端子は念威爆雷と呼ばれる移動する爆弾を操る攻撃方法もあり、また、ある程度の防衛能力も持ち合わせている。
これで飛んで来る硬球を跳ね返すくらいなら、わけなくこなすことが出来る。
そして地獄絵図、これから行う訓練と言うのが一種の遊びで、ただボールを相手に向けて打ち合うだけ。
自分のところに飛んで来た硬球を打ち返せなかったら1点。見当違いのほうに打ち返した場合も1点とカウントして行き、制限時間までに点数が多かった者が負けとなる。
ちなみにその制限時間というのが、今から訓練が終わるまでの時間だ。
「およ、そんな事言ってていいのかな~?」
「そうだ、お前ら2人に負けてばかりはいられん」
シャーニッドとニーナがそう言い、それぞれの手に5個の硬球が渡される。
レイフォンとフェリも持ち、4人で合計20個の硬球だ。
「さて、覚悟しろ?」
ニーナの言葉を合図に、20個の硬球が暴れまわる地獄絵図が展開された。
シャーニッドはゲームだと言っていたが、これは立派な訓練だ。
この訓練を提案したのはレイフォンだ。ニーナはレイフォンの提案で隊の予算を使い、硬球を大量に購入した。
硬球を床にばら撒き、その上で動く練習は活剄の基本能力を高める。
そして今日のようなボールの打ち合いは、反射神経と共に肉体操作の錬度を高める。
より高度になっていけば硬球に衝剄を絡め、硬球に絡まった衝剄をまた新たな衝剄で相殺すると言う事もしたりする。
それはつまり、衝剄の基本能力を高めることにつながるのだ。
活剄と衝剄を使った技は様々あるが、やはり技と言ったものは基本が出来ていると生きてくる。
限られた時間で新しい剄技を覚えるより、基本の、現状の能力の底上げ。
それがレイフォンの提案した意見であり、ニーナも納得したことだった。
そして訓練が終わり、夕方。
「次こそは……」
レストランのテーブルでメニューを睨みつけながら、ニーナが悔しそうにつぶやく。
ゲームの結果はレイフォン0点、フェリ3点、シャーニッド12点、ニーナ13点と言う、僅差でのニーナの敗北となった。
「……半分、出しましょうか?」
「いらん」
レイフォンの提案に、ニーナはムキになったようにそれを拒否する。
だが、奨学金がどうなっているのかは知らないが、家出同然にツェルニに来たニーナは機関掃除のバイトで生活費を稼いでいるので、この出費は痛いだろう。
「レイフォン、敗者に情けは禁物だ」
シャーニッドが痛ましげな表情でレイフォンの肩を叩く。
だが、その口元には勝者の余裕がひくひくと浮かんでいた。
「くっ、1点違いのくせに……」
「その1点で勝敗は決してしまうんだなぁ。世界は厳しい」
「本当にねぇ。あ、僕これにしよう」
ニーナの負け惜しみに、余裕の笑みを浮かべるシャーニッド。
それに同意するように、ニーナの隣でメニューに集中したハーレイが相槌を打つ。
「……待て、お前にまで奢るとは言ってないぞ」
「え?そうなの?」
「当たり前だろう。嫌なら勝負しろ」
「いや、武芸者の勝負に僕が勝てるわけないじゃん」
「ならだめだ」
「ちぇ、まぁいいや」
大人気ない、けち臭いニーナの発言を気にした風もなく、ハーレイはレイフォンに向けて語りかける。
「レイフォン、この間のあれ、簡易版の方ね。一応完成したから明日にでも来てくれないかな?最終調整するから」
「あ、はい」
「あ~、なんだっけ?この間の馬鹿でかい奴か?」
その会話を聞き、シャーニッドがこの前老生体戦でレイフォンが使っていた巨刀を思い出す。
「複合錬金鋼ね。重さ手ごろの簡易版が出来たから」
「レイフォンがどんどん凶悪になっていくわけだな」
「そう言う事だね」
「いや、凶悪って……」
シャーニッドとハーレイの言い様に苦笑するレイフォンだが、2人からすれば当然の意見である。
「凶悪だろう。普通考えねぇぞ、汚染獣に1人で喧嘩売ろうなんて」
「そうかもしれないですけど……」
「おかげで、こっちはちょっと無茶なものも作れてありがたいけどね」
「まぁ、あんな無茶は二度とやらせない」
その会話に釘をさすように、ニーナはレイフォンの方を見て言った。
そんなこんなで全員の注文が決まり、料理がテーブルに並ぶ。
「そう言えばよ、あの硬球の訓練ってレイフォンが考えたわけ?」
「いえ、あれは……園長が、つまりは養父さんが……」
シャーニッドとレイフォンがそこまで言ったところで、がやがやとした音が近づき、会話が途切れた。
「……お?」
「……ん?」
シャーニッドが顔を上げ、近づいてきた集団も顔を上げた。
「よう、ディン」
「……活躍しているようじゃないか」
シャーニッドの言葉に、戦闘を歩いていた禿頭の男がそう言った。
痩せすぎた肉体をしているが、それはとても鍛えられている。
余分な筋肉と脂肪はない見事な体つきをしていた。
(えーと、確か……)
胸元にはⅩと刻まれたバッジがあり、ディンとシャーニッドが呼んでいた。
そのことからニーナに覚えさせられた小隊員の名前、ディン・ディーを思い出す。
彼の連れも全員バッジをしていた。隊員なのだろう。
「まぁね。俺様のイカス活躍を見てくれてるのかい?」
「ムービーで確認している。相変わらず一射目は見事だが、二射目からリズムが同じになる癖は直ってないな」
「厳しいご指摘だ」
仲が良さそうとも取れる会話。
だが、少なくともディンの雰囲気はそれとは程遠い。
「……お前がいなくなって、こっちはずいぶんまとまりがよくなったよ」
「ははは、そいつは重畳だ。シェーナのご機嫌はいいってか?」
「……シャーニッド」
ディンがテーブルに手を付き、シャーニッドにぐっと顔を近づける。
「もう、お前は俺達の仲間じゃない。気安く呼ぶな」
「そいつは悪かった」
ディンの怒りを、シャーニッドは飄々と受け流す。
そんな彼に、ディンが舌打ちするのをレイフォンは見逃さなかった。
「次の対戦相手はお前達第十七小隊だ。シャーニッド、第十小隊にお前の居場所なんてなかったって事を、その体に叩き込んでやる」
「がんばってくれ」
シャーニッドがひらひらと手を振り、ディンが早足で去っていく。
怒りのためか、ディンの禿頭の後頭部が真っ赤に染まっていた。
「……相変わらずのタコっぷりだ」
「ぶっ」
その背を見ながらのシャーニッドのつぶやきに、ハーレイが口の中に含んだドリンクを吹き出しそうになり、むせた。
「シャーニッドは、去年まで第十小隊にいました」
レストランの帰り道、フェリがそう教えてくれた。
いつもどおりの日課。寮の方向が同じと言う事もあるが、レイフォンはいつもどおりに恋人を家まで送る。
「シャーニッドにディン、それに今の副隊長のダルシェナ。同学年と言う事もあったのか、彼ら3人の連携は全小隊でナンバーワンの攻撃力を誇り、第一小隊を超えるのは第十小隊だと言われたほどです」
「でも、先輩は抜けたんですよね」
それはフェリに聞かなくとも、シャーニッドが現在第十七小隊に所属している事から理解できる。
「ええ。対抗試合後半に、突然のことでした」
「どうして?」
「それはわかりません。ですけど、それで第十小隊の戦績は一気に下がり、結果的には中位程度のランキングになってしまいました」
3人の連携ができなくなったとか、隊員の数が1人減ったと言うだけの問題ではない。
それだけの連携が可能なほどの信頼関係の崩壊。それが第十小隊の戦力低下の最大の原因に違いない。
そしてその結果が、先ほどのシャーニッドとディンのやり取りなのだろう。
「3人の間に何かあったことは確かですけど、それが何かは知りませんし、知らなくていいことなら知らないままでいいと思います」
「そうですね」
フェリの冷静な意見にレイフォンは頷いた。
なにがあったのはわからない。だけど、知らなければならない時が来ればシャーニッドは教えてくれる気がする。
普段は飄々としてやる気があるかどうかもわからないシャーニッドだが、重要なところで、決めるときに決めるのが彼なのだ。
それは言葉だけでなく、対抗試合でのシャーニッドの戦い方を見てもそれはわかる。
殺剄によって戦場から気配を消し、来て欲しい場所に来て欲しいタイミングで一撃を撃ち出す。
戦い方にも人間性が出てくる。狙撃手と言うポジションを完璧にこなそうとするシャーニッドの姿こそ、本来のものに違いないと思う。
そこには普段感じられない生真面目さが宿っている。
「そうですか?」
だが、フェリの意見はレイフォンとは違うらしい。
「腕が確かなのは認めますけど、性格はどうしようもないと思います」
「そんなことはないですよ。先輩が後ろにいると、背中が自由になった気がします」
シャーニッドの腕は間違いなく良い。
剄の量においては熟練された武芸者には及ばないが、命中精度においてはベテランの域に達するほどの技術を持ち、精神面に関しても落ち着いている。
いつもは飄々とした態度を取っているが、狙撃にとってはその精神面、平常心でいられることが重要なのだ。
「……私もいますけど?」
「フェリの念威の感触は違いますよ」
シャーニッドを褒めるレイフォンに、フェリはどこか拗ねるように言った。
「どんな感じですか?」
「感覚が広がる感じです」
「当たり前じゃないですか、私は念威操者です」
更にフェリが拗ねた。
念威操者の役割は、戦場中の情報を集め、必要なものを隊員達に伝えることだ。
そこには隊員同士の音声の伝達も含まれる。
「目を与え、耳を与えるのが念威操者です。そうじゃなくて……どうかしましたか?」
「あ、いえいえ、なんでもないです」
フェリが更に拗ねる。表情が小さく、不機嫌そうになった。
レイフォンが笑っていたからだ。
「気になりますね……」
「別にたいしたことじゃないですよ。ただ、フェリがかわいいなぁ、って」
「なっ……」
フェリの表情が赤く染まる。
その表情を見て、更にレイフォンが微笑ましそうな笑みを浮かべた。
「からかわないでください!」
「別にからかってませんよ。本心ですから」
「……………」
顔を赤くしたままそっぽを向くフェリに更に微笑ましい視線を向けつつ、レイフォンは黙って彼女の言葉を聞く。
「私には……それくらいしか出来ませんから。戦場で戦うフォンフォンを念威でサポートすることしか……」
当然だが、フェリは念威操者であり、直接的な戦闘力は持ち合わせていない。
念威爆雷なんて攻撃方法はあるが、それは威力がお世辞にも高いとは言えず、とても微々たるものである。
汚染獣戦において、罠に用いる位しか使い道はない。
だからこそもどかしい。レイフォンが戦場で戦っているというのに、自分は念威でそれをサポートすることしか出来ないのかと。
最初はこんなことなど考えられなかった。念威操者をやめようと、それ以外の道を探そうとしたのに、いつの間にか自分のこの力を使っている。
念威操者として生きるのは嫌なのに、レイフォンのために使えることを喜ばしくもある。
むしろ、それ以上の力を望んでしまう。レイフォンのために、彼が戦うのに不自由なく、そして念威以外にも何か自分に出来ることがないのかと。
我侭なのだろうか?
念威の才能に十分恵まれているというのに、それ以上を求める。戦場で共に戦える存在を、ニーナやシャーニッドのことを羨ましいと思うのは?
そんなフェリの言葉に、今度はレイフォンの顔が赤くなる。
本当に何なのだろう、この人は?
可愛過ぎる。もう、持ち帰っていいのではないかとすら思えた。
レイフォンにとって、天剣授受者にとっては念威のサポートだけで十分だ。
念威のサポートさえあれば、例え1対1でも老生体すら退けられる。
フェリの才能溢れる念威だと、更にその精度も感覚も広がる。
それで十分だと言うのに、レイフォンに尽くそうと、力になろうとするフェリのことが本当に可愛らしく、愛おしい。
「フェリ……」
レイフォンはフェリに声をかけ、このまま部屋に誘おうかとすら思ったが……
「なんでこんな時に……」
どうして自分はここにいるのだろう?
そんな疑問と共に、呼び出したフォーメッドへと理不尽な怒りを向ける。
なんでも今回は、違法酒絡みの事件らしい。
偽装学生と言う不正にツェルニに侵入した輩が、剄脈加速薬、『ディジー』を密輸、販売しているらしいのだ。
違法酒は剄や念威の発生量を爆発的に増大させると言う御礼があるが、それには当然副作用が存在する。
剄脈に悪性腫瘍が発生する確率が80パーセントを超え、違法酒を使用した多くの武芸者や念威操者が廃人となったのだ。
それ故に武芸者の激減が恐れられ、合議するまでもなく各都市でそれらは製造、輸入共に禁止された。
だが、全ての都市がそうなったわけではなく、中には未だに製造し、販売する都市も存在する。
そして偽装学生にまでなって密輸した彼らは現在、多くの都市で大人気のウォーターガンズと言うスポーツのボードを売る店に潜伏している。
その上、なにやら武芸者まで潜伏しているらしく、しかもかなりの手練だ。
潜伏していると言うのに剄を隠そうとすらせず、こちらを挑発すらしてくる。
学園都市の武芸者では、小隊員ですら相手にならないほどの使い手だ。
「課長……包囲完了しました」
伝令役をやっていたナルキが、フォーメッドにそう伝える。
「よし、では……」
「……来る」
フォーメッドの言葉の途中で、レイフォンがつぶやく。
「え?」
唖然としているナルキの背後で、爆発が起こった。
「ぬあっ!」
その爆風にフォーメッドがたじろぐ。
シャッターが爆発で飛び、こちらに向かって飛んでくる。
ナルキがフォーメッドを庇うように素早く移動するが、
「調子に乗るなよ」
剣帯から錬金鋼を抜き出し、復元し、剣で一刀両断にする。
そのシャッターの陰に、いた。
「っ!」
「ひゃはははははっ!いい目してるさ~」
陰から飛び出した襲撃者の落とすような斬撃を受け止め、弾き返す。
剄の主はその勢いを利用して空中を回転しながら、笑っていた。
片刃の剣、刀を使用している。その姿に一瞬、養父であるデルクの姿が浮かんだが、その思考をすぐさま破棄する。
バンダナで鼻から下を覆って、顔を隠す赤毛の襲撃者、レイフォンとそう歳の変わらなそうな少年を見つめ、レイフォンは決意した。
とりあえず半殺し。
八つ当たりだが、骨の1本や2本はもらう。
「逃がすかっ!」
レイフォンは殺意を振る巻き、街灯を蹴って、飛ぶように頭上を跳んで行く少年を追う。
「くそっ、突入!突入!!」
背後でフォーメッドの喚きが聞こえた。
だが、それも破棄する。
行き場のない怒りを少年へと向け、レイフォンはどこかやるせない気持ちで後を追った。
あとがき
4巻、プロローグ完成!
そしてついにさ~坊の登場w
アニメ版では無駄に声優さんの声がかっこよかったなと。
もう少し、さ~坊はイメージ的に子供っぽいほうが良かったと思いつつ、あれはあれでよかったです。
それにしてもIFの物語の方とか、そっちも更新しなければ……
まぁ、近いうちにしますので気長に待っていてください(汗
そして恋姫のアニメを見ているこのごろ。
言いたいですね、一言。一刀の出番はなしかい!!
これはあれなんでしょうか、番外編?それとも一刀が来る前の様子をアニメにしたものなんでしょうか?
まぁ、あれはあれで見る分には面白いかなと思ったり。
見てて思ったんですが、華琳はおもいっきりレズなんですねw
まぁ、コミックでも知ってましたが、アニメだと、ねぇ……
それにしても、本当に恋姫が欲しい。
新作も出るらしいんですが、ああいうゲームは高すぎるんですよねぇ。
とりあえずはアニメは8話まで見たから、その先も時間があったら見ようと思いつつ、リトバスをやりながら執筆をがんばろうと思います。
PS. それから、最近戯言シリーズに興味を持ったんですが、あれの1巻って、クビキリサイクルでいいんですかね?