<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

SS投稿掲示板


[広告]


No.15685の一覧
[0] フォンフォン一直線 (鋼殻のレギオス)【一応完結?】[武芸者](2021/02/18 21:57)
[1] プロローグ ツェルニ入学[武芸者](2010/02/20 17:00)
[2] 1話 小隊入隊[武芸者](2011/09/24 23:43)
[3] 2話 電子精霊[武芸者](2011/09/24 23:44)
[4] 3話 対抗試合[武芸者](2010/04/26 19:09)
[5] 4話 緊急事態[武芸者](2011/09/24 23:45)
[6] 5話 エピローグ 汚染された大地 (原作1巻分完結)[武芸者](2010/05/01 20:50)
[7] 6話 手紙 (原作2巻分プロローグ)[武芸者](2011/09/24 23:52)
[8] 7話 料理[武芸者](2010/05/10 18:36)
[9] 8話 日常[武芸者](2011/09/24 23:53)
[10] 9話 日常から非日常へと……[武芸者](2010/02/18 10:29)
[11] 10話 決戦前夜[武芸者](2010/02/22 13:01)
[12] 11話 決戦[武芸者](2011/09/24 23:54)
[13] 12話 レイフォン・アルセイフ[武芸者](2010/03/21 15:01)
[14] 13話 エピローグ 帰還 (原作2巻分完結)[武芸者](2010/03/09 13:02)
[15] 14話 外伝 短編・企画[武芸者](2011/09/24 23:59)
[16] 15話 外伝 アルバイト・イン・ザ・喫茶ミラ[武芸者](2010/04/08 19:00)
[17] 16話 異変の始まり (原作3巻分プロローグ)[武芸者](2010/04/15 16:14)
[18] 17話 初デート[武芸者](2010/05/20 16:33)
[19] 18話 廃都市にて[武芸者](2011/10/22 07:40)
[20] 19話 暴走[武芸者](2011/02/13 20:03)
[21] 20話 エピローグ 憎悪 (原作3巻分完結)[武芸者](2011/10/22 07:50)
[22] 21話 外伝 シスターコンプレックス[武芸者](2010/05/27 18:35)
[23] 22話 因縁 (原作4巻分プロローグ)[武芸者](2010/05/08 21:46)
[24] 23話 それぞれの夜[武芸者](2010/05/18 16:46)
[25] 24話 剣と刀[武芸者](2011/11/04 17:26)
[26] 25話 第十小隊[武芸者](2011/10/22 07:56)
[27] 26話 戸惑い[武芸者](2010/12/07 15:42)
[28] 番外編1[武芸者](2011/01/21 21:41)
[29] 27話 ひとつの結末[武芸者](2011/10/22 08:17)
[30] 28話 エピローグ 狂いし電子精霊 (4巻分完結)[武芸者](2010/06/24 16:43)
[32] 29話 バンアレン・デイ 前編[武芸者](2011/10/22 08:19)
[33] 30話 バンアレン・デイ 後編[武芸者](2011/10/22 08:20)
[34] 31話 グレンダンにて (原作5巻分プロローグ)[武芸者](2010/08/06 21:56)
[35] 32話 合宿[武芸者](2011/10/22 08:22)
[37] 33話 対峙[かい](2011/10/22 08:23)
[38] 34話 その後……[武芸者](2010/09/06 14:48)
[39] 35話 二つの戦場[武芸者](2011/08/24 23:58)
[40] 36話 開戦[武芸者](2010/10/18 20:25)
[41] 37話 エピローグ 廃貴族 (原作5巻分完結)[武芸者](2011/10/23 07:13)
[43] 38話 都市の暴走 (原作6巻分プロローグ)[武芸者](2010/09/22 10:08)
[44] 39話 学園都市マイアス[武芸者](2011/10/23 07:18)
[45] 40話 逃避[武芸者](2010/10/20 19:03)
[46] 41話 関われぬ戦い[武芸者](2011/08/29 00:26)
[47] 42話 天剣授受者VS元天剣授受者[武芸者](2011/10/23 07:21)
[48] 43話 電子精霊マイアス[武芸者](2011/08/30 07:19)
[49] 44話 イグナシスの夢想[武芸者](2010/11/16 19:09)
[50] 45話 狼面衆[武芸者](2010/11/23 10:31)
[51] 46話 帰る場所[武芸者](2011/04/14 23:25)
[52] 47話 クラウドセル・分離マザーⅣ・ハルペー[武芸者](2011/07/28 20:40)
[53] 48話 エピローグ 再会 (原作6巻分完結)[武芸者](2011/10/05 08:10)
[54] 番外編2[武芸者](2011/02/22 15:17)
[55] 49話 婚約 (原作7巻分プロローグ)[武芸者](2011/10/23 07:24)
[56] 番外編3[武芸者](2011/02/28 23:00)
[57] 50話 都市戦の前に[武芸者](2011/09/08 09:51)
[59] 51話 病的愛情(ヤンデレ)[武芸者](2011/03/23 01:21)
[60] 51話 病的愛情(ヤンデレ)【ネタ回】[武芸者](2011/03/09 22:34)
[61] 52話 激突[武芸者](2011/11/14 12:59)
[62] 52話 激突【ネタ回】[武芸者](2011/11/14 13:00)
[63] 53話 病的愛情(レイフォン)暴走[武芸者](2011/04/07 17:12)
[64] 54話 都市戦開幕[武芸者](2011/07/20 21:08)
[65] 55話 都市戦終幕[武芸者](2011/04/14 23:20)
[66] 56話 エピローグ 都市戦後の騒動 (原作7巻分完結)[武芸者](2011/04/28 22:34)
[67] 57話 戦いの後の夜[武芸者](2011/11/22 07:43)
[68] 58話 何気ない日常[武芸者](2011/06/14 19:34)
[70] 59話 ダンスパーティ[武芸者](2011/08/23 22:35)
[71] 60話 戦闘狂(サヴァリス)[武芸者](2011/08/05 23:52)
[72] 61話 目出度い日[武芸者](2011/07/27 23:36)
[73] 62話 門出 (第一部完結)[武芸者](2021/02/02 00:48)
[74] 『一時凍結』 迫る危機[武芸者](2012/01/11 14:45)
[75] 63話 ツェルニ[武芸者](2012/01/13 23:31)
[76] 64話 後始末[武芸者](2012/03/09 22:52)
[77] 65話 念威少女[武芸者](2012/03/10 07:21)
[78] 番外編 ハイア死亡ルート[武芸者](2012/07/06 11:48)
[79] 66話 第十四小隊[武芸者](2013/09/04 20:30)
[80] 67話 怪奇愛好会[武芸者](2012/10/05 22:30)
[81] 68話 隠されていたもの[武芸者](2013/01/04 23:24)
[82] 69話 終幕[武芸者](2013/02/18 22:15)
[83] 70話 変化[武芸者](2013/02/18 22:11)
[84] 71話 休日[武芸者](2013/02/26 20:42)
[85] 72話 両親[武芸者](2013/04/04 17:15)
[86] 73話 駆け落ち[武芸者](2013/03/15 10:03)
[87] 74話 二つの脅威[武芸者](2013/04/06 09:55)
[88] 75話 二つの脅威、終結[武芸者](2013/05/07 21:29)
[89] 76話 文化祭開始[武芸者](2013/09/04 20:36)
[90] 77話 ミス・ツェルニ[武芸者](2013/09/12 21:24)
[91] 78話 ユーリ[武芸者](2013/09/13 06:52)
[92] 79話 別れ[武芸者](2013/11/08 23:20)
[93] 80話 夏の始まり (第二部開始 原作9巻分プロローグ)[武芸者](2014/02/14 15:05)
[94] 81話 レイフォンとサイハーデン[武芸者](2014/02/14 15:07)
[95] 最終章その1[武芸者](2018/02/04 00:00)
[96] 最終章その2[武芸者](2018/02/06 05:50)
[97] 最終章その3[武芸者](2020/11/17 23:18)
[98] 最終章その4[武芸者](2021/02/02 00:43)
[99] 最終章その5 ひとまずの幕引き[武芸者](2021/02/18 21:57)
[100] あとがき的な戯言[武芸者](2021/02/18 21:55)
[101] 去る者 その1[武芸者](2021/08/15 16:07)
[102] 去る者 その2 了[武芸者](2022/09/08 21:29)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[15685] 19話 暴走
Name: 武芸者◆8a2ce1c4 ID:8aa92727 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/02/13 20:03
フェリの指示に従い、向った場所にいたのは山羊だった。
黄金の牡山羊。
それは幻想的であり、圧倒的威圧感を放っている。
大きく、あまりにも立派な角は無数に枝分かれし、夜の闇を黄金色の光が照らしている。
しかもその牡山羊は大きく、足から角までの高さでレイフォンと同じくらいはある。
この異様な雰囲気からして、家畜ではない事など明白だ。フェリも言っていたではないか。家畜ではないと。
そしてこの牡山羊から発せられる威圧感。それは汚染獣の威圧感にも匹敵し、凌駕するほどだ。
だが、この牡山羊が汚染獣、こういう姿をとっていると言う事は老生体の二期以降だとしても、餌である人間を前にした時の食欲が感じられないのを変に思う。
だが、そんなことはどうでもいい。

「……お前は違うな」

牡山羊が低い声で、なにかを言った。
だけどそんなこと、心底どうでもいい。

「この領域の者か?ならば伝え……」

牡山羊がなにかを言いかけた。だけどそれ以上言わせない。

「はあああああああっ!!」

青石錬金鋼の剣に剄を込め、全力で牡山羊を切りつけた。
正確に言えば、錬金鋼の限界もあるから全力ではないだろう。だが、まさにその限界ギリギリ。
錬金鋼が崩壊する一歩手前まで剄を込めた。

「無駄だ。我は道具故に何者でもなし。何者でもなきものは切れまい?」

確かに牡山羊の体をレイフォンの剣が切ったはずだと言うのに、それでも牡山羊はしゃべり続ける。
平然と、牡山羊は未だにレイフォンの前に立っている。

「しかと伝えよ。我が身は既に……」

「死ねぇぇ!!」

だが、関係ない。レイフォンは再び牡山羊に切りかかる。
今ので駄目だった。ならばどうする?
単純な結論だ。全力で叩く。幸いにも、前回の老生体戦の影響もあり、予備の錬金鋼なら持ってきている。

「む……」

牡山羊が目を見張る。
動物故にその変化はわかりづらいが、驚いているのは間違いないだろう。
レイフォンの姿が増え、数十、数百と言う数のレイフォンが牡山羊を取り囲んでいる。
そして皆、同じ構えで牡山羊へ剣を向けていた。

活剄衝剄混合変化 千斬閃及び、天剣技 霞楼。
先日、汚染獣の老生体すら退けた一撃が牡山羊を襲う。
数十、数百の浸透斬撃。その斬撃のことごとくが牡山羊を切りつけたのだが、それでも牡山羊からは血が溢れ出ない。彼の体を傷つけない。
だけどどうした?

外力系衝剄の変化 轟剣。

赤熱化するほどに錬金鋼に剄を込める。
錬金鋼はどの道、今の霞楼で持たないだろう。ならば遠慮はいらない。

「はああああああああっ!!」

跳び、上空から全力で投擲した。
剄を込められた剣が牡山羊に投げつけられ、それが牡山羊を貫通する。
更には貫通した剣が地面に接触した瞬間、錬金鋼が剄に耐え切れずに爆発する。
その爆発は、轟剣と言う技は牡山羊だけではなく、この都市そのものを震撼させたほどだったが、それでもレイフォンは気を緩めない。
爆煙を睨みつけつつ、獰猛な、肉食獣のような表情をしていた。

「……見事」

声が聞こえた。
だが、その事にレイフォンは驚かない。手ごたえがなかったのだ。
霞楼も轟剣も、確かに牡山羊に命中した。だと言うのに手ごたえがまるでない。
牡山羊は爆煙の中におり、その姿を幻の様に霞ませながらも言葉を続ける。

「我が認識の間違いか?汝、炎を求める者か?」

牡山羊がなにかを言っているが、レイフォンは聞いてもいない。
錬金鋼がなくとも、衝剄を放とうと素手でも振りかぶる。

「我が身は既にして朽ち果て、もはやその用を為さず。魂である我は狂おしき憎悪により変革し炎とならん。新たなる我は新たなる用を為さしめんがための主を求める。汝、我が魂を所持するに値する者なり。我は求める、汝の力を。さすれば我、イグナシスの塵を払う剣となりて、主が敵の悉くを灰に変えん」

レイフォンの牡山羊へと向ける敵意。
微妙に違うところもあるが、それは牡山羊にとって、まさに求めているものだった。
牡山羊が求めるのは都市を護る志を、極限の意思を持った人物だ。今のレイフォンの意志はまさに極限の怒り、敵意。
更に彼は、別に都市自体はどうでもよいかもしれないが、何が何でも護ると決めた少女が存在する。
存在すると言う事は、汚染物質に囲まれたこの世界だ。過程はどうあれ、そうなれば必然とレギオス(自律型移動都市)を護ると言う事につながる。
レイフォンの実力にしたって、牡山羊にとっては都合が良い。
ならばこそ求める。狂った牡山羊は、レイフォンと言う強者を。
だがレイフォンは、牡山羊など求めてはいない。
それが答えだと言わんばかりに、無手のレイフォンから放たれた衝剄が牡山羊を撃ち抜く。

「我は汝を求める……機を見、再び現れよう」

撃ち抜かれた牡山羊はそれだけを言い残し、霧の様に、空気に溶ける様に消えていった。
後に残ったのは静寂。静かな闇の中に、レイフォン1人だけが取り残される。

「……逃がしたか」

舌打ちを打ち、苦々しくレイフォンがつぶやく。
せっかくのところで中断されたために、怒りで半ば冷静さを欠いていたが……なんにしても時間が経ち、少しは冷静になる。

「フォンフォン……フォンフォンっ!」

極めつけはフェリの声だ。
念威端子越しに聞こえた彼女の声が、レイフォンの意識を通常の状態へと戻す。

「フェリ……あれはどこに行きましたか?」

「わかりません……いきなり反応が消えました」

「逃げた?いや……去った?」

落ち着き、冷静になったからこそ理解する。
こちらが一方的に攻撃を仕掛けただけで、あの牡山羊には最初から敵意がなかった。
攻撃を仕掛けても反撃などしてこなかったことから、おそらく最初から戦う気はなかったのだろう。
いくら個人的私情で怒り狂っていたとはいえ、先ほどの牡山羊は人語までしゃべってレイフォンに語りかけてきたのだ。
普通に考えたらありえない状況だったが、それでも話を聞かずに一方的に攻撃した自分は悪者なのだろうかと思ってしまう。
まぁ、怒ってなかったら怒ってなかったで、あんな状況で冷静でいられるわけないだろうが……

「すぐに隊長達がそちらに着きます」

フェリの報告が聞こえ、思考にふけっていたレイフォンはふと我に返る。
遠くから聞こえてきたニーナ達の足音を聞きつつ、それでも頭の片隅にはあの牡山羊のことが残っていた。





































翌日も調査は続けられた。
フェリと第五小隊の念威操者が都市中を探査したが、レイフォンが見た昨夜の牡山羊を見つけることは出来なかった。
だが、その代わりに別のものが見つかった。

「まさか、本当にこうしていたとは……な」

吐息に混じった複雑なものを感じながら、レイフォンもニーナと同じものを見る。

「これは、そうなんでしょうね」

レイフォンもこれ以上は何も言えなかった。
それは墓だ。
生産区の巨大な農場にその墓があり、決して上等なものとは言えない、墓と言うにはあまりにも貧相な作りだ。
作りだどうだと言う以前に、穴を掘って死体を入れ、それに土をかぶせたという雑なものだ。
広大な畑の一画、その至る所にその雑な墓、土の小山が無秩序に配置されている。
おそらく、この都市の人々の屍がそこには埋まっているのだろう。

「……痛ましいな」

ニーナがそうつぶやく。
いつも軽口を叩くシャーニッドも、ただ無言で小山の列を見つめるだけだった。
レイフォンも小山の列を眺める。これだけの数の墓を作るのに、どれくらいの時間がかかったのだろう?
都市中の死体を捜し、運び、穴を掘り、そして埋める。
都市中に充満する腐敗臭から、相当な時間がかかっている事がわかる。
それだけの時間を、死体と向き合って過ごすのはどんな気分になるのだろう?
レイフォンにはとても想像できない。

「……おいっ、なにをしてる!」

声を上げたのはニーナだった。
レイフォンは想像をやめ、そちらを見ると、第五小隊の面々がどこからか見つけてきたスコップで小山を掘り返そうとしていた。

「掘り返して調べる」

ゴルネオの返答に、ニーナの表情が引き攣る。

「何だと?そんな事をする必要がどこにある?」

これは死者の冒涜だ。
土の中で永遠に眠る者達を掘り返すなんて、正気の沙汰ではない。

「……これが墓場だと決まったわけではない。それに、墓だとすれば誰が埋めた?」

「それは……」

だが、ゴルネオの言葉も正論だ。
自分達はツェルニに危害が及ばないよう、この都市の安全を確認しに来たのだ。
ならばこそ、調べなければならない。これが墓だとすれば誰が作った?
昨日、そして今日の調査で、家畜や魚以外の生命反応が見つからなかったのにだ。

「昨晩見たとか言う獣だとでも言うのか?馬鹿馬鹿しい。獣がそんなことをするものか」

ゴルネオのもっともな意見。
それに乗るように、シャンテが鼻で笑った。

「大体、その話だって本当かどうかわかんないじゃん。見たのも察知したのもそっちだけ。うちで確認できなかったんだから」

彼女の指定席である、ゴルネオの肩に座ったまま言い放つ。

「貴様……」

シャンテの言葉に、自分達の、部下の報告が嘘だと思われたのが心外で、怒りを込めてニーナが身を乗り出す。それには理屈はわかっていても、ゴルネオへの怒りも多少は込められていただろう。
レイフォンはそんな彼女を止めようとしたが、それよりも早くシャーニッドがニーナの肩をつかんで引き戻す。

「ゴルネオさんよ。雁首揃えて野良仕事なんてする必要もないだろ?うちは他所を回らせてもらうぜ」

ニーナに先んじて口を開いたシャーニッドを、ゴルネオは胡乱そうに見つめた。

「……勝手にしろ」

「そうさせてもらう……まっ、夕方には迎えが来るんだし、晩飯が肉料理でないことを祈らせてもらうわ」

シャーニッドの軽く、皮肉交じりの一言に第五小隊の面々が苦々しい表情を浮かべる。

「んじゃっ、そう言う事で。行こうぜ」

シャーニッドに促され、レイフォン達はその場を離れた。
先を歩くシャーニッドの隣にはニーナがいて、何か会話を交わしている。
それにおどけ、肩をすくめるシャーニッド。その反応を見て、レイフォンは彼がいてくれてよかったと思える。
シャーニッドのような対応など、レイフォンには無理だ。当然、ニーナやフェリにも無理である。
もし、シャーニッドがいなければあの言い争いはどんな風に発展していたのだろうかと思った。

「フォンフォン」

「なんですか?フェリ」

そんなレイフォンに、フェリが何かを思いついたように語りかけてきた。

「ちょっと屈んでください」

「はっ?」

「いいから」

フェリに強く言われ、分けがわからないままレイフォンはその場に屈む。

「もっと低く」

背中も押さえつけられ、膝も曲げる。殆ど体育座りに近い格好になった。

「……肩が狭いですね」

「いや、普通だと思いますけど」

「……仕方ないですね」

分けがわからないまま、なにが仕方ないのか考える暇もなく、

「え?」

背後に回ったフェリが、レイフォンの両肩に手を置いた。ぐっと肩と背中に体重がかかる。
背中に硬い感触……膝か?
ぬっっと、白いものが視界の両端に現れた。

「って……なにしてんですか!?」

フェリの全体重が両肩にかかって、レイフォンは意味がわからないまま叫んだ。

「仕方がないじゃないですか、肩車です」

「……なにが仕方がないんだか、まるでわからないんですけど」

「いいから行ってください」

……時々、フェリの事がわからなくなるのは自分が悪いのかと思いつつ、レイフォンはゆっくりと立ち上がる。

「ふむ……こんなものですか」

なにやら満足げに頷くフェリに、レイフォンはどこか納得したような気がした。
もしかしてシャンテにでも対抗意識を持ったのだろうか?
ゴルネオの肩に乗るシャンテを見て、自分も乗りたくなったのか?
だが、平均的な身長であるレイフォンの肩には乗れず、仕方がないから肩車などと言っているのだろう。
これがもし、ゴルネオのような巨体だったら?
レイフォンはなんとなく、ゴルネオの肩に乗るフェリを想像して……

「……………」

何故か強烈な殺意をゴルネオに抱いた。
まぁ、想像しただけで本当にフェリがそんなことをするとは思わないが、なんにせよ彼女は今、レイフォンの両肩に乗っているのである。

「フォンフォン、揺らさないでください」

「無理ですよ。子供にするのと違って、やっぱりバランスが……」

呆れたようにため息をつき、レイフォンは先に行ってしまったニーナ達を追うために早足となる。
だが、そのために少しゆれ、レイフォンの肩に乗ったフェリは思わずレイフォンの髪をつかむ。

「わっ」

「ぃたたたたっ!髪引っ張らないでくださいよ」

「だったらもう少し静かに歩いてください」

「隊長達があんなに先に行ってるんですよ?」

「あの人達が行くところなんて把握できます」

念威で簡単に追えると言うフェリに、レイフォンは再びため息をつく。

「とにかく、もう少ししっかりつかまってください」

「わかりました」

「むっ」

「なにか?」

レイフォンの言葉にうなずき、フェリが『しっかり』とつかまる。
その動作に、感触に、レイフォンの顔色が変わった。

「あ、い、いえ……」

「……顔が赤いですよ」

「そ、そうですか?」

惚けてみるが、レイフォンは平常心ではいられず、顎の下に当たる感触にレイフォンは内心で狼狽していた。

(し、しまった。迂闊……)

フェリが両足を使ってレイフォンの首を挟んでいるので、太ももの感触が首と顎辺りに当たるのだ。
しかも彼女はスカートで、、それはレイフォンの頭の後ろでめくれている。
特殊繊維のストッキングを穿いているが、それはかなり薄い。
ストッキングの冷たい感触と、太もものふくよかな感触がダイレクトにレイフォンに伝わり、レイフォンの心臓は喧しいくらいに鼓動している。
落ち着けと内心で何度も言い聞かせ、これ以上そんな迂闊な場所に触らないようにとブーツ越しに足をつかむ。

「あ……どうやら地下施設に行くことが決まったようです。隊長達は先に行くと」

「えっと、どっちです?」

「あちらへ……わっ」

どこに行けばいいのか、レイフォンはフェリに指示を仰ぐ。
ニーナ達は先に行ってしまったようで、姿が見えない。
そしてフェリが方向を指差すのだが、その動作の途中でバランスを崩した。

「ととと……」

「フォンフォン、ちゃんと支えててください」

「いや、そんなこと言われても……」

「だいたい、そんな足の先なんか持ったってバランスなんか取れるわけないじゃないですか。ちゃんとしてください」

「いや、違うんですよ。これには色々と深い理由が……」

「それはきっと、とてつもなく浅くて邪なものだから破棄してください」

「……………」

「そもそも、昨日あそこまでしておいて、今更その反応ですか?」

レイフォンの考えなど、フェリにとってはお見通しだった。そもそも、そう言われては反論のしようがない。
フェリのそっけない対応に落胆しつつ、レイフォンは顔を赤くしたままニーナ達を追う。
レイフォンは気づかない。いや、気づけない。
両肩に乗っているフェリもまた、顔が赤くなっている事に。

「……………」

「……………」

レイフォンとフェリは無言のまま、地下施設へと向うのだった。



































「……いいぞ、埋めなおせ」

どこかうんざりとした声で、命令を下すゴルネオ。
それに従い、第五小隊の隊員達が掘った穴を再び埋めていた。
小山の中にはやはりと言うか、死体が埋まっていた。そのどれもが五体満足ではなく、残骸のような肉片と骨ばかり。
どう考えても、これはこの都市の人達の死体だろう。
ちゃんとした埋葬とは言えなかったが、やはりこれが限界のようだ。

「問題は、誰がこれをしたか……か?」

残された問題となると、まさにそれだ。一体誰が死体を埋めた?
それがわからない。まさかとは思うが、本当にレイフォン達が言ってた牡山羊が埋めたとでも言うのだろうか?
ありえないと首を振り、その考えを否定する。時間はもう昼を回っていた。
夕方にはツェルニが到着して、迎えが来るので、それまでに原因を探っておきたいところだが……

「……ん?」

作業が終わり次第休憩を取り、それから年をもう一度調べなおさなくてはと思った。
そう思い、気づいた。逆になんで今まで気づかなかったのかとも思った。肩が軽い。

「そう言えば、シャンテはどこに行った?」

ぐるりと辺りを見渡してみるも、赤毛の副隊長の姿はどこにもない。
小山を掘り返している途中に肩から降りてどこかへ行ったのだが、そういえばそれから戻ってきていない。
隊員達に尋ねても、誰も居所を知らなかった。

「……まさか、あいつ」

嫌な予感がした。
ゴルネオは隊員達に作業を続けるように命じ、活剄を走らせて生産区から出た。














携帯食で昼食をとり、一休みした後レイフォン達は機関部の入り口の扉を開ける。

「やはり、電力が止まっているな」

何度スイッチを押しても動かない昇降機に、ニーナは仕方ないとつぶやく。

「ワイヤーで降りるしかないな。念のために遮断スーツを確認しておけ。フェリはここに残ってサポートを頼む」

「了解しました」

ここに着く前にレイフォンの肩から降りていたフェリが頷き、念威端子がフェイススコープに接続される。
それを確かめると昇降機の床に穴を開け、レイフォンは鋼糸を使い、ニーナとシャーニッドはワイヤーを使って下へ降りていく。
機関部の電力が止まっている故に、照明はない。当然真っ暗であり、フェリの念威のサポートがなければここは暗闇が支配していただろう。
暗視機能により、青みを帯びた視界が広がる。
あたりには太いパイプがいくつも巡り、その隙間を縫うように人間用の通路が設置されているのはツェルニに似ている。
似ているとは言え、まったく同じと言う事ではなさそうだ。
入り組んだパイプの密度はこちらの方が上で、まるで迷宮の様に見える。
ツェルニの機関部の通路もそうだが、これはそれ以上だ。
腐敗臭がここにはなく、その代わりと言っては何だが、オイルと触媒液の混ざった臭いに、かすかな錆の臭いが溶け合っている感じがした。

「空気がおもっくしいねぇ。お前ら、よくまぁこんな所で働けるもんだ」

機関部掃除のバイトをしているレイフォンとニーナを見て、シャーニッドは渋面を浮かべながら感心するように言った。

「明かりがあればもう少し広く感じられるんだろうがな」

「機関部で照明弾撃つわけにもいかんだろ。なんに火がつくかわかりゃしない」

「そう言う事だ。フェリ、何か異常はあるか?」

「現在のところは何の反応もありません」

フェリの返答に、ニーナが小さく頷く。

「そうか、ならばしばらくうろついてみるか。昨夜の反応の主、隠れているとすればもうここしかないだろうからな」

「隊長は信じてくれるんですか?」

レイフォンは意外そうにニーナを見た。
牡山羊を見つけたのはフェリだが、確認したのはレイフォンだけだ。
第五小隊のメンバーはレイフォンの発言を信じている様子はなく、レイフォンだって冷静に考えてみれば、あれが現実のものとは考えづらい。

「当たり前だろう。2人の言葉を信じない理由がどこにある?」

「……まぁね。お前らがそういう嘘をつくキャラとも思えんし」

ニーナの言葉にシャーニッドも同意する。
確かにレイフォンもフェリも、そういう嘘をつくタイプではない。

「それに、私には当てもある」

「え?」

続けられたニーナの言葉に、レイフォンが首をひねった。

「この都市がまだ『生きている』のなら、いてもおかしくないのがひとつあるだろう?」

「あ……」

そう言われて、レイフォンの頭の中にツェルニの姿が思い浮かぶ。
もちろん、都市そのものではなく、童女の姿をした電子精霊のことだ。

「お前達が見たのはこの都市の意識。私はそう考える」

「なるほど……」

その言葉に納得し、とても近い答えだと思った。

「まずは機関部に辿り着くことが先決だな。二手に分かれるか。私とシャーニッド、レイフォンは1人で大丈夫か?」

ニーナの言葉に、レイフォンは黙って頷く。

「何もなければ1時間後にここに集合だ。行くぞ」

その言葉を最後に交わし、レイフォンは1人でパイプの入り組んだ迷宮を進んだ。








「なにかありましたか?」

「いえ、なにも」

「こちらも何の反応もありません」

静まり返った機関部の闇の中を進むレイフォンに、緊張の混じった声で念威越しにフェリが問いかける。
都市の調査を始めたころは、自分の念威による調査で納得しないニーナに不満を持っていたのに、今はそんな様子を見せない。
昨夜のことは、フェリにとってそれだけ衝撃的なことだったのだろう。

「正直に言うと、あれが本当に実在したものなのかどうか自信が持てません」

弱音をハッキリと形にするフェリに驚きつつ、レイフォンは励ますように言った。
もしかしたら今のフェリの心境は、かなり深刻なものかもしれない。

「大丈夫ですよ、僕は信じます。僕自身も見ました。隊長達だって信じてくれたでしょ?」

「それはそうですが……フォンフォンは、あれが隊長の言う都市の意識だと思いますか?」

「ツェルニ以外を見たことがないので、なんとも言えないですね。ツェルニがしゃべったところを見たことありませんし、当然戦ったことも、敵として前に立ったこともない。ですが、可能性としては否定できないと思いますよ」

「……私はツェルニだって見たことがないんですよ。確信なんてもてません」

「でも、フェリが見つけたものが幻でもなんでもないのは、僕が保障しますよ。僕はこの目で見たんです。僕の目まで疑いますか?」

「……そんなことはないですけど」

それでも不満なようで、フェリの言葉にはどこか力がない。
そんなフェリに向け、レイフォンは平然と答えた。

「誰も信じなくても、別にいいじゃないですか」

「え?」

レイフォンの答えが意外だったようで、念威越しのフェリの声が呆気に取られていた。

「僕だけは信じます。フェリのおかげで僕は二度の汚染獣の戦いを潜り抜けてきたんです。今更疑う要素なんてどこにもありませんよ。フェリのおかげで僕は生きてられてるんです。例え誰も信じなかったとしても、僕は信じます」

「……言いくるめられてる気がします」

「でも、本心ですよ。僕はあなたを信頼してますから」

拗ねたように言うフェリに苦笑しつつ、レイフォンは先へと進む。
パイプの数はツェルニよりもはるかに多く、遠くを見渡すことも困難だ。
機関部の調整をしていた技師は、きっとこの迷路に苦労していたんだろうな、などと考えていると、

「あ……」

「どうしました?」

フェリがなにやら異変を感じたようだ。
すぐに通信を第十七小隊の全員へとつなげる。

「反応がありました」

「どこにだ?」

ニーナが尋ねる。

「待ってください、座標を……」

突然だ。

「フェリ……どうした?返事をしろ」

フェリの声が途切れ、ニーナの言葉に雑音が混じる。

「おい、なんか変だぞ」

シャーニッドの声が雑音の中、遠くから聞こえるように響き……

「……え?」

通信が切れた。視界が完璧に闇に染まる。

「フェリ、どうしたんですか?フェリっ!?」

レイフォンが声を張り上げるも、返答はない。
彼の叫びがただ、闇の中を木霊した。





































悪い予感が当たった。それはとてつもなく苛立たしい。

「……っ、えぇい」

機関部の入り口近くにある木陰に人影が倒れているのを見つけて、ゴルネオは舌打ちをして駆け寄った。
倒れていたのは第十七小隊の念威操者のフェリだ。
レイフォンを武芸科に引き込んだ恥知らずの会長の妹と嫌悪するが、今はそれどころではない。
首筋に手を当て、脈をとり、安堵した。
生きている。気絶しているだけだ。

「そこまで無茶はしないか」

シャンテがフェリと言い争いをしているところを見ただけに、そのことが心配だった。

「まったく、いい歳をして!」

ゴルネオは再び舌打ちを打つ。
どこか獣の雰囲気を宿しているシャンテは、いざというときに武芸者らしい行動を取れない。それがゴルネオの悩みの種だった。

突発的誕生型のシャンテは、孤児であった。
その上不幸なことに、彼女は人に育てられたのではない。
都市のほとんどが森林だと言う森海都市エルパの出身であり、そこは牧畜産業を主体としている。
繁殖力が強く、良質な肉と毛皮、その他、様々に有用な家畜の品種改良を行ってはそれらの遺伝子情報を他都市に売るエルパには、様々な動物がいる。
その数はあまりに膨大であり、管理者の目から外れ、野生化して森の奥深くに生息している種もおり、その種にシャンテは育てられたのだ。
それは猟獣種の獣であり、その獣に拾われたシャンテは母親について狩をしていたらしい。
本来なら人と獣の間には圧倒的に身体能力の差があるが、武芸者であるシャンテは剄の力でその差を埋めていた。つまり、彼女は誰にも剄について教わりもせず、独学でそれを身に付けたのだ。
なんにせよ、調査団の報告によって派遣された武芸者が彼女を保護し、彼女にはライテの姓が与えられ、人並みの教育を受けることになった。
だが、生まれてすぐに獣と共にあった彼女がいきなり人間社会に適応できるはずもなく、また人としてのなにかが決定的に足りなく、持て余した施設から放逐されるような形でツェルニへとやってきた。

なにが足りなかったのか、ゴルネオにはすぐにわかった。
シャンテは猟獣種と共に育ったのだ。狩をすることでその日の食べ物を直接的に確保するのが当たり前で、彼女には働き、報酬を得ることでその日の食べ物を購うと言う間接的な概念にうまく馴染めなかったのだろう。
入学してから5年。何の不運かゴルネオはシャンテの世話をすることになってしまい、最近になってようやく、考え方に少しはまともなものが見えてきたところだった。
それもまた、シャンテの中にある狩猟本能を小隊による対抗試合で解消させるという代償行為があってこそだが
シャンテを育てた獣は群れで狩を行ったと言う。小隊単位での戦いは、彼女に通じるものがあったのだろう。
だが、そんな彼女だからこそゴルネオは後悔する。

「くそっ、あいつに話したのは迂闊すぎたか」

フェリを木陰で寝かせなおし、ゴルネオは機関部入り口に駆け込んだ。
昇降機の床に穴が開けられており、それに飛び込む。ワイヤーを使うなんてのんきなことはやっていられない。シャンテもまたそうしたのだろう。
ゴルネオの言葉で、シャンテはレイフォンを敵と認識してしまったのだ。ゴルネオは止めていたが、彼女はずっとレイフォンを狩る機会を窺っていたのだ。
狭く、移動がままならない機関部は、森を駆け回っていたシャンテにとって得意な場所に違いない。そこならレイフォンを狩れると思ったのだろう。

「くそっ」

それは甘い、甘すぎる。
幼いころから獣と共に育ったシャンテの動きは俊敏で、予測が付きにくい。
それに加えてゴルネオが化錬剄を教えたので、彼女のその適正も合わさった変幻自在の動きを捉えるのは並みの武芸者では不可能だ。
シャンテの境遇がなければ、彼女は都市から出してもらえない才能ある武芸者だろう。だが、それはあくまでも並み。

「その程度のことで討てるものか」

レイフォンに、元とは言え天剣授受者になる男には通じない。
知っているのだ。天剣授受者になるような武芸者がどんなレベルにいるかを。
生まれた時から天剣授受者になる男の側で育ってきたゴルネオは誰よりもそれを理解している。

「くそっ、死ぬなよ」

祈りながら、ゴルネオは闇の中を降下した。








フェイススコープを外し、レイフォンは走った。

「くそっ、くそ!ふざけるな!!」

悪態をつき、全力で走る。
戻る道は理解している。鋼糸を先行させながら戻ればなんら問題ないが、それをやっている時間すら惜しいと錬金鋼を剣の状態にしたまま、全力で走る。
闇の中を全速力で走るのには恐怖を感じるが、そんな恐怖よりもレイフォンは怖い。
フェリを失うことのほうがその何倍も、何十倍も、何百倍も怖い。急げと体に命令を送る。
1秒でも速く、0,1秒でも速く、彼女の元へと駆け寄る。
ニーナが昨日言っていた『少数精鋭を気取るつもりはない』という言葉が重くのしかかった。
だが、それについて悔いる暇も、考え込む暇もない。レイフォンはただ、ひたすらに走る。

「フェリ……」

願うのはフェリの無事。それ以外はどうでも良い。
ただそれだけを考える。それ以外は考えられない。
だと言うのに、急ぎたいと言うのに、レイフォンは足を止めるしかなかった。

「……邪魔をするな」

向けられてくる殺気。
それに対し、レイフォンは同じく殺気を込めて言い返す。
遊んでいる暇はない。今は少しでも早くフェリの元へ行かなければならないのだ。

「……見えてるのか?」

殺気の主は驚いたように問いかけてくるが、それでもその殺気を引っ込めようとはしない。その声を聞いて、レイフォンは相手が誰なのかも理解した。
そもそもこの状況で攻めてくる人物なんて、あの牡山羊を除けばそれ以外思いつかない。
先を急ぎたいレイフォンにとってもどかしく、そして敵意がわいてくる。

「……ひとつ聞きます」

「なんだよ?」

レイフォンが質問を投げかけるが、拒否は許さないと言った感じで問いかける。
だが、相手はあっさりと問い返してきた。
それでも彼女、シャンテ・ライテは不意打ちを台無しにされたのと、余裕のありそうなレイフォンの言葉に不貞腐れたような反応をする。
だが、レイフォンには余裕なんてものは存在しない。

「フェリの念威が止んだんですけど、あなたの仕業ですか?」

「そうだよ」

あっさりと認めた。その返答に、レイフォンの中に黒いものが沸きあがる。

「こんな暗いところじゃ、あんたらは物が見えないんだろ?だったら、見えるようにしているあいつは邪魔だからな。なのに……なんであんたは見えるんだよ?」

それだけで?
たったそれだけの理由でフェリに危害を加えた?

「は……っ」

レイフォンが小さく息を吐く。
それと同時に、とても乾いた声が漏れた。

「まぁ、どっちでもいいや。あんたはどの道ここで死ぬんだ。あんたはゴルネオの敵だ。なら、あたしの敵だ!」

そうだ、敵は自分のはずだろう?
憎いのは自分のはずだろう?
恨んでいるのは自分のはずだろう?
だと言うのになぜ、フェリに危害を加えた?

「は、ははっ……」

レイフォンから再び息が吐かれた。
それはもはや声。笑い声だ。

「なにがおかしい!?」

暗闇の中、シャンテが怒鳴る。
だが、それにかまわずレイフォンは笑い続けた。

「はは……ははははっ!あはははは、ははははははは!!ははははははははははははははははは!はははははははははははっ!!ははは……」

それは狂ったような笑いだ。
笑っていると言うのにレイフォンの瞳は笑っておらず、暗く、虚ろなものとなっていた。
それでもレイフォンは笑い続ける。狂い、発狂したように乾いた笑い声を上げる。

「はは……はははははっ!あはははは、ははははははははは!!はははははははははははははははははははは!はははははははははははははっ!!ははは……」

殺す……殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す

その想いだけを込めて、レイフォンは笑い続ける。
身体を一刀両断にして殺す?
剣で串刺しにし、内蔵を掻き乱して殺す?
頭部を砕いて殺す?

否、簡単には殺さない。少しでも苦痛を与え、生まれて来た事を後悔するように殺す。
全身の骨を砕いて殺す。
手足を1本ずつ切り落として殺す。
耳をそり、鼻をそり、目を抉り取って殺す。
殺してくれと自分から願い出るほどに痛めつけ、最終的に殺す。

「はは……ははははっ!あはははは、ははははははは!!ははははははははははははははははは!はははははははははははっ!!ははは……はは……ははははっ!あはははは、ははははははは!!ははははははははははははははははは!はははははははははははっ!!ははは……」

レイフォンは笑い続け、錬金鋼をシャンテへと向けた。






































あとがき
……………作者、レイフォンと共に暴走した!?
つか、やりすぎました!?
……どうしよう、感想が怖い(汗
場合によっては修正も……

それはさておき、前半で変なフラグ立ちましたw
でも、思うんですよ。原作6巻でレイフォンがツェルニにいなかったら、ツェルニ滅びね?なんて……
そもそもそこで幼馴染と戦闘狂と一足早い再会しますし……
うむ、オリジナル要素が混ざりまくる展開になりそうです(汗


リリカルなのはが好きです。まぁ、前にも言いましたがw
コンプエースに載ってるvividのヴィヴィオ、そしてコロナとリオがかわいいですw
SSみたいんですが、少なくて残念。そんなわけで兄(糖分の友、理想郷での名はかい)のSSを心より応援するこのごろ。
しかし、一時期リリなのと刀語のクロスSSを書いてて、黒歴史となった時期が……
その時は糖分と名乗っていた、忘れ去りたい過去の日々……
そんな黒歴史が、皆さんにはありますか?

リトバスの一八禁止なPCゲーム買いました。やばっ、面白すぎる!!
更新遅れないように、適度にプレイしたいと思います。しかしあの日常と言うか、ギャグが良いw


前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.032761812210083