汚染獣の襲来。
数百体の異形の者達に混乱する都市。
小隊による、この学園都市ツェルニに在籍する武芸科の生徒による抵抗空しく、彼らはその力に、その数に押しつぶされようとしていた。
己の非力に憤りながら、彼女は諦めさえ感じていた。
もう駄目なのか?
自分はここで死ぬのか?
ツェルニを護れずに終わるのか?
その考えが、汚染獣と共に切り裂かれる。
なにが起こったのかわからない。
これは現実なのか?まるで夢でも見ているような感覚がした。
だが、これは現実だ。次々と、次々と汚染獣が切り裂かれている。
なにが起こった?
誰が三桁にも及ぶ汚染獣を切り裂いた?
その答えを彼女、第十七小隊隊長、ニーナ・アントークが知った時。
彼女は圧倒的な力で汚染獣を塵殺(じんさつ)し、都市を救った部下の事を恐ろしいと思った。
部下は、彼は強い。この都市に存在する何者よりも。
最弱の汚染獣、都市を襲った幼生体だけではなく、老性体と言う都市すら半壊させる怪物と戦い、1対1で屠ったのだ。
その部下の名は……レイフォン・アルセイフ。
「何がいいかな?美味しい物がいいのは確かだけど、栄養管理も考えて……フェリは甘い物が好きだから……」
「……………」
そんなレイフォンなのだが、現状の彼を見ればとてもそうとは思えない。
現在料理雑誌片手に、緩んだ表情で明日の弁当の事を考えているこの少年こそが、第十七小隊隊員のレイフォン・アルセイフだ。
彼は自分で昼食の弁当を作っており、ついでにフェリの分まで用意していると言う。
それをニーナも知っている。だが、レイフォンはさっきからニーナが呼びかけている事に気づいていないのだ。
「レイフォン、聞いているのか。おい!!」
「あ、先輩」
再三の呼びかけに、やっと気づいたレイフォン。
その事に呆れながらも、その用件をレイフォンへと告げる。
ここは、いつも第十七小隊が利用する訓練室。そしてこの場には、ニーナとレイフォンの他に見慣れない、1人の少年がいた。
「へぇ、入隊テスト……やってたんですか?」
「ああ、あいにく不合格だったがな」
その少年が訓練室を出て行き、扉が閉まるのを見送りながらレイフォンが尋ねる。
それに同意するニーナだったが、レイフォンからすればかなり意外だった。
「ウチの小隊、戦績で言ったら下位なのに、入隊希望者なんているんですね~」
現在、第十七小隊の戦績は1勝2敗。
当初は第十六小隊を破り、派手なデビューを果たした第十七小隊だが、次に対戦した第十四小隊には作戦負け。そして次の試合ではニーナの負傷による棄権と言う形で、2連敗となっているのだ。
故に、成績は下位となっているわけで、そんな隊に入隊希望者がいることは意外だった。
そもそも、レイフォンが入るまで規定人数を満たしていなかったのがこの第十七小隊であり、ニーナが人数集めに苦労していたのだから尚更だ。
「お前がいる所為もあるんだぞ!」
「へ?」
だが、レイフォンの言った言葉に頭にきたのか、ニーナがレイフォンを指差し、怒鳴るように言う。
「対抗戦の戦績はそこそこだが、隊員数は規定ギリギリの少人数。加えて専任のアタッカーが入学したての1年生(オマエ)1人だ……ならば、自分でも入隊すれば活躍出来るのではと考える、浅はかな輩が寄って来るのだ!!」
そう言われて理解する。
確かに人数の少ない小隊で、向こうとしても戦力が増えるのは喜ばしいと思われる第十七小隊。
成績は下位だが、小隊員がエリートであることには変わりないのだ。
故に、武芸科には小隊に所属したい者はたくさんいる。そして第十七小隊ならば活躍出来ると考える者は少なくないのだ。
さっきの少年も、そう言う者だったらしい。
「……でも、それは連帯責任のような……」
だが、納得は出来ない。
むしろ、連帯責任とは言わずどこにレイフォンの責任があるのか?
理解はしたが納得はいかないレイフォンで、ニーナに問い質そうとしたが……
「……なんでもないです」
彼女に睨まれ、沈黙する。
もっとも、そこまでむきになって否定する事でもないし、ハッキリ言ってどうでもいいことである。
「まぁ、この俺の美しさに憧れてくる奴の気持ちも、分からんでもないがな」
「珍しく時間通りに来たな。さぁ、無駄口叩かずに訓練を始めるぞ!」
いつの間にか時間内に来ていたシャーニッド。
だが、ニーナは彼の戯言を流し、訓練の開始を宣言する。
フェリが遅れるのはいつもの事だから、先に始めるのだ。
「ヒデーな隊長。そんなフェリちゃん並みのつれない反ノウッ!?」
「シャーニッド先輩、邪魔です」
だが、そのフェリも今日は珍しく時間内に来ており、悪口を言うシャーニッドに背後から蹴りを放つ。
バランスを崩して床に倒れたシャーニッドだったが、
「ふげっ!?」
「あ、すいません」
更にレイフォンに踏みつけられた。
謝罪しているが、悪気がまったく感じられない言葉。
しかも歩いていて偶然に踏んだのではなく、ドンと言う音を立て、踏み込みの様に踏んでいた。
「みんな揃ったな。着替えようか」
その光景を流しながら、ニーナが訓練着に着替えようと提案する。
それに従い、ロッカー室へと向かって行く十七小隊メンバー達。
「てめっ……レイフォン……」
「自業自得です」
「お前……なんか最近変わった?いい意味で。そして悪い意味で」
「そうですか?」
多少の憤怒を感じながらも、そんな会話を交わしながらロッカー室へと向うシャーニッドとレイフォン。
他、ニーナとフェリなどを合わせて5人。
「……ん?」
そう、ロッカー室に向っているのは5人。
第十七小隊のメンバーは、4人。
錬金鋼のメンテナンスを行うハーレイがたまに出入りするが、彼は現在自身の研究室にいるはずだ。
つまりは、
「1人多い!!」
「わああ!?」
第十七小隊に無関係の者が、この場にいる。
そしてその人物は驚き、慌てて背後へと下がる。
だが、気を取り直し、冷静になり、背筋をビシッと伸ばした。
「は……初めましてっ。僕はレオ・プロセシオ。武芸科1年です。今日は憧れの第十七小隊の皆さんに、お尋ねしたい事があって参りました!!」
礼儀正しく、自己紹介をするレオと名乗った少年。
彼はとても真っ直ぐで、そして輝いていた。それはもう、眩しいほどに。
「うおっ!!何だこの夢と希望に溢れた爽やかオーラは!!ヒイイ、浄化される~~」
レオの存在に、軽く、いい加減なシャーニッドはとても眩しそうに彼の登場に動揺した。
言葉どおりの雰囲気を纏い、周りにはいない人種のタイプにシャーニッドは驚いたのだ。
「もしかして君も入隊希望者か?だったら……」
「いっ、いえ!!」
先ほどと同じ、入隊希望者かと思うニーナ。
ならばテストをしようとしたが、どうやら違うらしい。
「……僕を、十七小隊の練習に混ぜて欲しいんです!」
だが、その違いがニーナには分からない。
練習に混ぜろと言う事は、つまりは第十七小隊に入れてくれと言う事ではないかとニーナは首をひねる。
「……だからな、それにはまず入隊テストを……」
「いえ、入隊とかそう言う事ではなく……ただ横で見ているだけと言うか……強くなるための方法を探りたくて、あの、その」
互いに話が通じる、レオはあたふたと動揺している。
何が言いたいのかニーナには理解が出来なかったが、シャーニッドにはなんとなく予想が出来た。
「要は俺らの訓練見学して、それ参考に自分で練習したいって事?」
「は、はいっ、そうです!!ご迷惑はかけません!!」
理解したが、シャーニッドからすれば彼みたいなのは苦手なタイプらしい。
目を細め、そして眩しそうに視線を逸らしていた。
「見学って事ならいいんじゃないんですか?」
「小隊員になりたいと言うわけでもなく、ただ参考にしたいというのが分からんな」
「……邪魔です」
取材などもたまに来るから、別に構わないのではないかというレイフォン。
それでもあまり納得のいかないニーナ。
フェリは、とても正直にボソリと漏らした。
「……僕がいた都市は、過去に一度も汚染獣との接触がないんです。その所為か武芸に対する関心が低くて、限られた人しか専門の訓練を受けていません」
「では、君も……」
「はい。剄の基本的な使い方くらいしか指導されていなくて」
レオから語られた言葉に、グレンダン出身のレイフォンは内心でかなり驚いていた。
ツェルニの平和さにも驚いたが、レオの出身の都市はそれよりも平和なところだったらしい。
都市戦の時はどうしていたのだろうと思いながらも、レオの話は続く。
「でも僕だって、武芸者として自分の都市を護れるくらいの力は持ちたい!!今はまだ小隊員なんて程遠いけど、少しでも早く近づけるように頑張りたいんです!!」
彼は真っ直ぐだ。シャーニッドが眩しいと思うほどに。
そしてニーナは、こういうのが嫌いではない。
むしろ共感するし、好ましくすら思う。
そんな訳で、
「では、始めるぞ」
「まぁ、こうなるんだろうな」
「シャーニッド。余所見するな!」
レオの見学を受け入れ、いつもどおりの訓練が始まる第十七小隊。
ある程度の間隔を取り、床には硬球がばら撒かれている。
その上に乗り、ニーナは片手に持った硬球を、本来なら二刀復元する鉄鞭の片方で打った。
「はい、フェリちゃん」
ニーナから打たれ、飛んできた硬球をシャーニッドが銃衝術の錬金鋼でフェリに向けて打つ。
「フォンフォン」
「はいっ」
続き、フェリ、レイフォン、そして再びニーナへと打ち返されていく。
それはまるでキャッチボール。または軽業のような光景だった。
凄いとは思う。今の自分には出来ないと思う。
「……………」
だが、レオには何の訓練をしているのか分からなかった。
「あ、あの」
分からないのならば聞く。
硬球の打ち合いがひとまず終了し、一息ついたニーナにレオは問う。
「これはどう言う訓練なんですか?あのボールは一体……」
「アレはただの硬球だが、この上で運動する事で活剄の能力が高められる。ボールを打ち合っているのは基本的な肉体強化にもなるが、衝剄を使って打てば同時にそちらも鍛えられる」
「はぁー」
ニーナの説明に、納得したように息を吐くレオ。
だが、これは全てレイフォンからの受け売りだ。
前回のニーナの入院、そして汚染獣戦を境に、全員で強くなろうと決意した第十七小隊。
フェリのやる気はともかく、レイフォンの提案した訓練方法を取り入れ、この硬球もレイフォンに言われて、予算をおろして買ったものなのだ。
「さぁ、もう一度行くぞ!!」
なんにせよ、再び訓練が再開した。
もう一度、さっきのを順番を変えて行う。
レオはそれを見ずに、近くに転がっていた硬球に乗ってみた。
慣れないために危なげなく、フラフラとしている。
だと言うのに、更に剣まで持っていた。
だが、新入生は小隊にでも所属しない限り、半年は錬金鋼の所持を禁止されているためにあれは模擬剣。
彼個人の持込で、練習用のものだろう。
「よ、よし。このまま素振りを……」
それを使い、素振りまでしようとした時……
「って、わああ!?」
当然の様に足を滑らせ、転んでしまうレオ。
その時、彼の握っていた剣がすっぽ抜けてくるくると回転しながら飛んで行く。
「あ!剣が!!」
それはレイフォンへと、真っ直ぐに飛んでいった。
レオは危ないと言おうとしたが、
「ふっ」
レイフォンは容易く自分の剣でレオの剣を弾き飛ばし、難を逃れていた。
「あ!!」
だが、その弾き飛ばした剣は力みすぎたためか、そのまま天井まで飛ばされる。
そこはちょうどレオの真上の辺りで、体育館の様に高いここの天井には鉄骨などが使われているのだが、レイフォンの弾いた剣はそれすらを破壊していた。
「いかん!」
「隊長!!」
それを見て、レオが危ないと彼をその真下から連れ出そうと押しやったニーナ。
だが、
「ボールが!!……行きましたよ」
現在、訓練中でボールを飛ばしあっていたのだ。
そして次がニーナの番であり、シャーニッドが彼女の方に向けて打ったのだが反応できるわけがない。
硬球のボールがニーナの顎に直撃した。
「な、何をする!!」
「いや、パスしたんだけど。あっ、それより天井が……」
シャーニッドに怒りを向けるニーナだったが、それどころではない。
ニーナはレオを庇うために、彼を押し出したのだ。
そして現在、彼のいたところにニーナはいる。
つまり……
「隊長ーー!!」
彼女の頭上に、破壊された天井、鉄骨やら瓦礫などが降り注ぐ。
それに押しつぶされ、埋もれるニーナ。
そのアクシデントに、一同が呆然とした。
「たたた、隊長さんが!!僕の所為で、うあああ」
「早く瓦礫どけろ!!」
「掘り出せ」
慌てふためき、ニーナを救出しようとするレイフォンとシャーニッド。
「何、これしき……」
「奇跡の生還!!」
だが、ニーナは不死身だった。
自力で起き上がり、瓦礫を押しのけて立ち上がる。
「全然大丈、グフゥ」
「やっぱり駄目か……」
だが、流石に無傷とは行かなかった。
大丈夫と言うおうとしたが、吐血し、項垂れるニーナ。
それに慌てながら治療の容易をするレイフォン。
「あ、あの、あの、僕、やっぱり迷惑を……」
この原因を作ったレオは、とても申し訳なさそうにニーナに謝罪した。
「何を言う。強くなりたいのならば、これしきの事で臆するな!」
「は……はいっ」
が、ニーナは気にするなと言うようにレオに声をかける。
自分も第十四小隊に所属していたころは迷惑ばかりかけていたのだし、しかも吐血はしたがこの程度たいした怪我ではないと自己完結してから言う。
その言葉に慰められ、勇気付けられたレオの返事を聞き、ニーナは満足そうに微笑んだ。
……だが、この日の訓練は中断と言う事で、レイフォンとシャーニッドによってニーナは医務室に連行されるのだった。
そう、臆しないのはこの程度ならの話だ。
『この程度』なら。
翌日、翌々日とレオは第十七小隊の訓練に顔を出すのだが、2日目、レオの弾いた硬球がニーナの顔面に直撃する。
この程度なら医務室に行くほどではないが、彼女は鼻を強打し、鼻血を垂れ流していた。
3日目、またもやすっぽ抜けたレオの剣が、今度はニーナへと飛んで行く。
幸い当たりはしなかったが、彼女の真横を飛び、背後の壁へと剣が突き刺さっていた。
この日は怪我はしなかったのだが、ニーナは死を覚悟したらしい。
「鈍くせぇな、その1年」
「はは……」
「そうですね」
レオが訪れて4日目。
だが、小隊の訓練中ではなく、まだ授業中であり武芸科の1,2年の合同訓練。
合同とは言っても、要は自主トレであり、1年生が2年生にアドバイスを聞いたり個人的な訓練を行うと言ったものだ。
そんな訳でオリバーは、放り投げた空き缶を銃で撃ち抜きながら話を聞き、話していたレイフォンは苦笑し、フェリは随分ストレートにつぶやいていた。
オリバーは自主トレ、レイフォンはそもそもアドバイスを受ける必要がなく、そしてフェリはやる気がない故にこの面子で集まっている。
さっきまではナルキがいて、2年生にではなくレイフォンにアドバイスを受けていたのだが、それを実践すると言って適当な相手を探しに行った。
「だー……駄目だ!外した」
「え、外したって……全部命中しましたよね?」
自主トレ中のオリバーだが、彼が放り投げたひとつの空き缶を3発の銃弾が撃ち抜く。
だと言うのに外したと言うオリバーに、レイフォンは首を傾げて尋ねた。
「良く見ろ。缶に穴が2つあるだろ?だから外れだよ」
オリバーが撃ったのは、3発の銃弾だ。そして缶に開いている穴は二つ。
正確には貫通したために、その裏側と併せて四つあるわけだが、なんにしてもそれだと数が合わない。
3発撃ち、当たったのならば3発分の穴が開いていないと可笑しいからだ。
そしてレイフォンは、気を抜いてはいたが確かに3発全部が当たるところを見た。
つまり……
「なんと言うか……凄い命中精度ですね」
「まだまだだろ?剄も少なく、肉弾戦が苦手な俺は何かひとつ、強力な武器がねぇとな。それが、精密射撃って訳だ。こればかりはしくじる訳にはいかないんだよ」
ひとつの穴に、もう1発の銃弾を通す技術。
1発は外れたのだが、その精度には素直に感心してしまう。
オリバーの弁では肉弾戦、つまりは活剄が苦手らしいが、天剣の中には銃を使い、尚且つ身軽な人物がいたなと思い出す。
そして、威力不足で悩むなら修得や使いどころは難しいが、化錬剄を使えば面白い事になるのではないかと思う。
本来銃と言う武器は、使っているタイプで上限が決まるもののそれでも剄が多いに越したことはない訳で、オリバーの様に命中精度が高く威力が低い場合は、銃弾に変化を持たせればいいのではないかと?
極端な話、炎に変化する弾、氷に変化する弾、または電撃に変化する弾。
はたまた誘導性なんてものを持たせてもいい。化錬剄ほど応用に利く剄技はない。
その分、さっきも言ったとおりに修得は難しいが。
「それにしても、何時までやってるつもりなんだそいつ?」
「え?」
「さっき、話に出てきた1年生だよ」
「ああ」
オリバーは自分の訓練を続けながら、話題を変え、レイフォンに尋ねた。
それにレイフォンがうなずく。
「確かに格上の者の訓練を見たり、参考にしたりするのは悪くねぇ。だけど訓練つうのは、見てるだけじゃ上達しないし、自分にあったもんじゃないと効果が薄いだろ?ま、小隊員じゃない俺が言っても仕方ないけどな」
確かにそう思う。オリバーの言っている事はもっともだ。
参考にするだけではなく、自分なりに応用しなければ意味がない。
例えば全体をバランス良く鍛えたり、オリバーの様に何か一点を伸ばしたり。
「でも、オリバー先輩の場合はその精度なら、小隊員にもなれると思うんですけど」
「うまい事言うね。お前に言われても嫌味にしか聞こえないけど」
「そんなつもりはありませんよ」
「はっ、わかってるよ」
軽く笑い、苦笑するレイフォンとオリバー。
オリバーもまた、前回の汚染獣戦でレイフォンの過去を知る事となってしまった。
だが、オリバーは元々そんな事を気にしないと言うか、彼の存在、趣味自体がちょっと性質の悪い犯罪っぽいものだったり、別に武芸を神聖視していない事から話すつもりはないと言ってくれた。
なんだかんだで、オリバーとレイフォンはこれまでどおり、またはこれまでよりも親しくやっていけそうである。
4日目。
「す……すいませ……」
仏の顔も三度までと言うか、前科があるために始終レオを警戒していたニーナ。
その視線に睨まれ、レオはとても申し訳なさそうに謝罪している。
「よし!今日はここまでだ!」
結局、この日の訓練は何も起こらず、平和に終わったのだが、ニーナ自身の訓練は手付かずと言う感じで終わってしまった。
「ニーナ先輩。おっ、お疲れ様です!」
「ああ、お疲れ様」
今回は平和に、何事もなく終わった訓練。
だが、ニーナとしてはどこか不完全燃焼だったらしく、また頃合だろうと言う事でひとつの提案をレオにしてみた。
「そろそろ君も慣れて来ただろう。どうだ、軽く組み手でもしてみるか?」
「ええっ、いえっ、そんな僕なんてまだまだっ。無理ですよ」
「しかし……」
「ほ、本当に結構ですから」
「ム……そうか……」
手合わせを提案するが、レオは頑なに拒否する。
それに押し切られ、どこか漠然としないまま納得するニーナ。
そしてこの日の訓練は、これで終了したのだが……
「レイフォン?まだ帰ってなかったのか」
「あ、隊長」
いつもなら早々にフェリと帰宅しているレイフォンだが、今日は珍しく1人で残っていた。
まるでニーナが着替えを終えるのを待っていたかのように。まさにその通りであり、レイフォンはニーナに話があったのだ。
「何時まで彼に構っているつもりですか?」
「彼……レオの事か?」
「はい」
レイフォンの話は、レオに関する事。
だが、どうやら内容は世間話のようなものではない。
どこか棘があり、まるでレオを邪魔者の様に思っているのかとさえ取れる言い方だ。
「確かに多少騒がしくもあるが……彼がいる手前、シャーニッドやフェリも真面目にやっているし、そう迷惑と言うわけでもあるまい?」
確かに、見学者がいるのといないのとでは違うのか、シャーニッドやフェリもめんどくさそうではあるが、訓練はちゃんとやっている。
このあたりではレオが見学している点でのプラス要素だと思い、また、自分の考えをレイフォンに述べた。
「何より、強くなろうとする後輩を我々が応援してやらんでどうする!」
強くなろうと努力をするレオ。
ニーナ自身も強くなりたいと願い、このツェルニを護りたいと思っている。
だからこそレオに共感できるし、彼の力になりたいと思った。
何よりそれが、この学園都市での小隊員として、先輩としてのあり方だと思ったからだ。
切磋琢磨。この言葉は、そのためにあると。
「彼は、小隊員にはなれませんよ」
だが、レイフォンから語られる言葉はそれを真っ向から否定するもの。
「基礎もなければ、剄量も突出してるわけじゃない」
「……だからああして我々のところに……」
「他の武芸者だって毎日訓練して強くなってるんです。あんな事してても追いつけるわけありませんよ」
淡々と、冷酷に言うレイフォンの言葉に、ニーナはどこかくらい雰囲気で尋ねる。
「……才能のない人間が、今更あがいても無駄だと言いたいのか」
「そうでなくて。僕達の真似をしてもあまり意味がないと……あのままじゃ何も……」
レイフォンは淡々と、冷酷に事実を言うだけ。
だが、その事実は、話の途中で壁を殴ったニーナによって止められてしまう。
「……お前に何がわかる」
「え?」
我慢の限界だった。
強くなろうと思っているレオを否定され、同じように強くなりたいと思っている自分自身を否定されたようで……
「幼くして故郷グレンダンで、最強の武芸者の証を手にするほど天賦の才に恵まれたお前に……お前に、持たざる者の気持ちがわかるのか」
怒り、レイフォンを睨みながらニーナは言う。
レイフォンは天才だ。そんな事は分かりきっている。
だから自分はそれに追いつこうとして、無茶な訓練を続けて体を壊しもした。
今はそんな無茶をするつもりはないが、それでも今の言葉の様に、その人なりの努力を無碍にする言葉は許せなかったのだ。
だが肝心のレイフォンは、彼の表情には悪気すら浮かんでおらず、相変わらず淡々とした表情をしていた。
その表情で、視線で見つめられ、ニーナは気づいてしまう。
「あ……いや……」
レイフォンはあくまで真実を言い、自分は八つ当たりをしているのだと。
「……すまん、先に帰る!」
それを誤魔化すように、ニーナはまるで逃げ出すようにこの場を去って行った。
それを見送りながら、レイフォンは自分の頬をポリポリと掻く。
そしてさっきまでは淡々とした表情をしていたが、それを崩し、少しだけ苦々しい表情をしていた。
「言い方がまずかったかな?」
「いいんじゃないんですか」
そんなレイフォンの元に、フェリがやって来る。
いつもなら早々と引き上げるのだが、今日は珍しく彼女も残っていたらしい。
「オリバー先輩も言ってたじゃないですか。どの道このままだと、意味はありません」
「それはそうですけど……」
だから忠告したのだが、それは余計なお世話だったのかと思ってしまう。
「あなたが気にする必要はないんですよ。それよりもフォンフォン。今まで待っていたんですから、今日は帰りに甘い物でも食べに行きましょう」
そんな思考は、今更気にしても意味がないし、フェリによって拡散された。
「僕は甘い物……苦手なんですけど?」
「いいんです。私が食べるんですから」
「わかりました。じゃ、どこに行きましょうか?」
気を取り直し、どこか機嫌が良さそうにレイフォンは問う。
レイフォンはフェリを引き連れ、そのまま甘味所へと向った。
(何をしているのだ……みっともない……!!)
ニーナは街中をやや早足で走りながら、先ほどのレイフォンとの会話を思い出す。
自分の言った言葉に対する、後悔を深く感じながら。
(弱さをひけらかして八つ当たりなど……最低だ!!)
レイフォンには自分達の気持ちが分からないと、ニーナは言った。
だがそれは、自分達の都合であって、事実ではなかったのかと。
分かってはいる。レイフォンは武芸における天才であり、本人もそれを自覚している。
傲慢ではなくそれは事実で、レイフォンはそのありのままの事実を受け止めているだけだ。
そんな彼から語られた事実は、武芸の事となると容赦のないレイフォンだからこそ、本当のことなのだろう。
それは分かる。理屈としては十分に分かるのだが……
(……だが……いや……だからこそ、腹が立つ)
事実を真正面から告げられ、自身を否定されたような怒りは拭えない。
容赦はないが、ハッキリ言って人付き合いが苦手なレイフォンはそうやって嫉妬や妬みなどの負の感情を募らせたのではないかと思う。
現にレイフォンは、1年生で小隊員と言う事もあって上級生にそういう風に見られているのだ。
(普段はアレの癖に……)
そんな事を考えても仕方がないと、ニーナはただ歩いていた時、偶然見つけた公園のベンチに腰掛けてため息をつく。
普段のどこかボーっとした、締まりのない表情をしたレイフォンからは予想もつかない事だ。
そんな風に考えていた。思考していた。
その思考を切り裂く、ヒュッ、っと言う風切り音が聴こえてくる。
それはとても鋭い音だ。いや、一般人からすればそうなのだが、いつも訓練をしている武芸者からすれば聴き慣れた音で、その基準で言えば酷く弱々しい。
その聴き慣れた音、剣を振るう音を聴き、ニーナがそちらへ視線を向けると、
「こんなところで自主トレか」
そこには、レオがいた。
模擬剣を使い、素振りをしていた。
「あ!!ニーナ先輩!!お疲れ様です!!」
「ああ、いや、構わないでくれ」
シャーニッドではないが、相変わらず眩しく、爽やかで、そして元気が良くて真面目だと思う。
トラブルは起こすが、彼の真面目さと心意気には好感が持てるとニーナは思っていた。
それは今でも変わらない。
「いつもやっているのか?」
「え?ええ。皆さんの見よう見真似ですけど……」
ニーナの問いに、レオは照れ臭そうに答える。
確かに彼には好感が持てる。だが、そこで、レイフォンが言った言葉を思い出した。
『真似をしても意味がない』
薄々は感づいていた。
だからこそ今日、組み手を提案してみたのだが、レオはそれを拒否した。
確かに、このままじゃ意味がないかもしれない。
『彼は小隊員にはなれませんよ』
だが、この言葉は否定する。
人間に不可能はないはずだ。努力すれば、いつかは報われる。
少なくともニーナはそう信じている。
「………レオ」
「はい!」
ニーナは腰の剣帯の錬金鋼に触れ、強制するように言った。
「私と勝負をしてみろ」
その言葉に、レオの表情が強張る。
「な、何を言ってるんですか!そんな事をしたって、結果は目に見えてるじゃ……」
確かにニーナとレオが勝負をすれば、結果はどうなる加など分かりきっている。
それでも、この勝負は絶対にやらなければならない。
「もちろん手加減はする。拒めば明日から練武館には入れんぞ」
「そんな……な、何のために……」
レオを追い詰めるように言い、ニーナは錬金鋼を復元させる。
もちろん彼女が愛用する武器、鉄鞭だ。
「お前の力を試したいのだ。全力で来い。私が受け止めてやる」
「……………」
だが、レオは動かない。
怯えたように、表情が引きつっている。
声すら出せず、剣すら構えずに、思わず後ろに後ずさっていた。
「どうした、剣を構えろ」
「……だ、だって僕は……小隊どころか一般武芸者としても未熟なのに……小隊長のあなたと勝負なんて……せめてもう少し、力をつけてから……」
レオは尻込みし、ニーナとの勝負を避けようとする。
だがそんな事、ニーナは許さない。
「……お前は、ある日突然汚染獣が襲って来ても、そう言い訳する気か?」
前回の汚染獣戦。
都市外で行われた老性体戦ではなく、このツェルニが襲われた幼生体戦の話だが、都市警に勤めている者ならともかく、錬金鋼を持たない1年生の者は一般人と同様にシェルターへと避難していたのだ。
故に、レオは未だに知らない。本物の汚染獣の脅威を。
「ちっ」
「そんな甘い考えで強くなりたいと言っているのか?」
『違う』と言おうとした。
だが、それを遮りニーナは続ける。
「我々の練習に混ざっているのもだ。隊員達を横で眺めて、自分も強くなっていると錯覚して安心しているのではないか?」
レイフォンが何を言いたいのか、やっと理解できたような気がした。
これを言いたかったのではないかとニーナは思う。
このままだと本当に意味が無いし、変わらなければいけない。
「そっ、そんな事、ありません!!」
「違わんだろう!現に自分の力を試されるのを避けているではないか!弱さをさらけ出すのがそんなに怖いか!臆病者め!!」
ニーナの言葉が、深くレオに突き刺さる。
突き刺さり、レオは震えていた。
それは怒りだ。いいように言われ、臆病者とまで罵ったニーナに向ける怒り。
「あ……あなたはっ……自分が強いからそんな事が言えるんですよ!!」
わかっているのだ、自分が弱い事など。
だが、この怒りだけは抑えきれない。
震える手でしっかり模擬剣を握り締め、ニーナに向けて振りかぶる。
「弱い者の気持ちなんて分からないんだ!!」
怒りに任せて振り下ろした一撃。
その一撃には、彼の切ないほどの想いが込められていた。
それをニーナは彼女自身も切なそうな表情をし、鉄鞭で攻撃を受け止める。
「わかるぞ」
レオの気持ちは、自分でも良く理解できる。
レイフォンに感じていた気持ちこそが、まさにそれなのだ。
彼の圧倒的な力を見せ付けられ、似たような気持ちを抱いていた。
ニーナは鉄鞭で模擬剣を弾き、それと同時にレオの体も背後へと飛ぶ。
背中から地面に着地したレオを見つめ、ニーナは続けた。
「強い人間に対する嫉妬、羨望、劣等感……よく分かるぞ」
地に倒れたレオが、そんなニーナを見上げている。
彼女の表情は、言葉は真っ直ぐにレオを見ていた。
「だが、そこで立ち止まっていてはいかんのだ。弱さを言い訳ではなく糧として前進せねば!!」
少なくともニーナはそうしてきた。
「……それだって、強い人間だけが言えるセリフですよ!!そんなの簡単にできるわけ……」
だが、それは自分には出来ないと、怒鳴るようにレオは言う。
その手に模擬剣を持ち、もう一度ニーナへ向かおうとした。
だがニーナは、真正面から、どこまでも真っ直ぐに言う。
「お前にも出来る」
鉄鞭を振り上げ、それを振り下ろした。
「誰だって、前に進めると私は信じている」
(……嫌な気分だ……)
ニーナは自室でため息を吐き、ベットに仰向けになりながら愛用のぬいぐるみであるミーテッシャを抱きしめる。
実家を家出同然に出て来たニーナだが、そんな実家から持って来た数少ない私物がこのツートンカラーの白黒、熊のようなぬいぐるみである。
ぬいぐるみだが、幼いころから共に過ごした物であり、彼女にとっては親友なのだ。
「なあ、ミーテッシャ。お前はどう思う?」
ぬいぐるみが答えるわけが無いとわかっているが、ニーナは思わず尋ねてしまう。
「あのような高圧的な方法ではなくても、他にやり方があったのではないか?しかし厳しく当たらねば、彼はあのまま足踏みをしていただろう……」
考える彼とは、言うまでも無くレオの事だ。
「ただ、あのまま立ち上がれなくなってしまったら……」
レオに向けて鉄鞭を振り下ろした。
だが、いくらなんでもそれを当てるほどニーナも馬鹿ではない。
ちゃんと外し、彼の真横へと振り下ろしたのだ。
だが、地面にたたきつけられた彼女の鉄鞭は、レオの戦意を消失させるには十分なものであり、見事に粉砕されたレオが武芸を辞めてしまうのではないかと危惧する。
「だが、あの程度で挫折するようでは今後……いや、しかしもっと他にやり方が……」
ミーテッシャを抱きしめ、ああだこうだと思案するニーナ。
唸り、悩む。真剣に考え、とある結論を出した。
「剄の量だって決して少ない訳ではないし、今からきちんとした訓練メニューを組んでこなしていけば、卒業までに小隊員クラスの力だって身につけられるハズだ」
レイフォンが剄の量が突出しているわけではないと言ったが、別に少ないわけでもない。
小隊員としては少ないだろうが、鍛えれば当然多くなるだろうし、何も戦闘は剄の量だけで決まるものではないし、それなりの技術などを身につければ十分に強くなれる。
そう重い、結論を出したところで、ニーナは思う。
「もしやあの時……レイフォンはそう言いたかったのか?」
思い出す。レイフォンは確かに、レオに小隊員にはなれないと言った。
だが、こうも言ったのだ。自分達の真似をしていても意味がないと。ニーナもそれには気づいた。
だが、さらに続けられた言葉を聞かずに、ニーナは去ってしまった。
『あのままじゃ何も』
この言葉に続く言葉はなんだったのか、今ならば予想できる。
あのままでは何も変わらないのなら、自分にあった訓練をすればいい。
そうすれば実力は飛躍的に伸びるだろうし、小隊員を目指すことも可能だろう。
現実に小隊員を目指すにはやはり才能などが要るだろうが、頑張り、努力をすれば不可能ではないと思う。
それを理解し、ニーナの内心には嫌なものがもやもやと漂っていた。
「あいつは……なんでああも平然としていられるんだろうな?言った相手に対しての遠慮や罪悪感は無いのか?」
自分とレイフォンの違いに悩みながら、ぐるぐると巡る思考に苦い表情をしながら、夜は更けていく。
また日が昇り、いつもの日常が始まった。
授業を受け、訓練をすると言う日常。
「えっと……今日は隊長、どうかしたんでしょうか?」
「知りません。また、馬鹿みたいな事で悩んでいるんじゃないんですか?」
翌日、訓練が始まるにはまだ時間があるが、既にニーナの他にレイフォンとフェリが来ていた。
シャーニッドはまだ来ていないが、時間にはまだ余裕があるので遅刻ではない。
そしてレイフォンとフェリの話題の中心になっている彼女はと言うと、何故か元気が無かった。
とても落ち込んでいるようで、声をかけづらい。
その事に心配をするレイフォンと、また馬鹿な事、隠れて訓練などをして悩んでいるのではないかと言うフェリ。
それは当たらずとも遠からずと言うべきか、どちらにしよ、その悩みは意外に早く払拭されるのだった。
「ニーナ先輩!!」
レオがいつものように、訓練室へと入ってくる。
いや、どこか違った。強い意志が感じられ、真っ直ぐにニーナの元へと歩み寄ってくる。
ただ訓練を見学し、手合わせを拒否していた彼とは違う。
「レ、レオ……」
昨日の出来事があり、彼に気後れしてしまうニーナ。
だが、レオからはそんな事は感じさせずに、45度に腰を折った。
「短い間でしたが、お世話になりました!!」
ペコリと頭を下げる。
ニーナには一瞬、訳が分からなかった。
「もう皆さんの邪魔はしません。これからは、自分なりの方法で鍛錬を続けます!」
「……そうか……」
昨日、あんな事をしたのだ。当然の結論だろう。
このままの日々が続くとは思っていなかった。
だけど、どこか寂しく思うところがあるのも確かだった。
「でも」
だが、それは違った。レオの意思は違った。
少なくとも彼は、変わっていた。
「諦めた訳じゃありませんよ。僕はあなたより強くなってみせる!覚悟していてください」
その瞳に、強い意志を宿していた。
「失礼します!」
そう言い残し、去っていくレオ。
「ど……どうしたんですか、彼……」
その変貌に驚きつつ、半ば呆けたようにレイフォンが尋ねる。
「前へ……進んだんだ」
「前?」
それに答えるニーナだが、レイフォンにはその意味が分からない。
そして、ニーナには詳しく説明するつもりはなかった。
「さぁ、訓練始めるぞ。ボーっとするな、レイフォン、フェリ!!」
「熱血なら、1人でやってください」
熱く、燃え上がっているニーナ。
先ほどの落ち込んだ暗い雰囲気がどこかに吹き飛び、とても清々しい笑みを浮かべていた。
「早くせんとレオに追い抜かれるぞ!」
「何の話ですか?」
「ありえませんね、絶対に」
「おーー、今日はいつにもまして熱いなー」
談笑のような口論をしていると、何時の間にやらシャーニッドも来ていた。
そして何時もどおりに訓練が始まる。
それぞれが強くなるという想いを秘め、切磋琢磨をしてこの学園都市ツェルニの武芸者は腕を磨いていくのだ。
翌日。
「たのもー!!」
「来るのはええよ!!」
速攻でニーナに再戦を申し込んできたレオ。
だが、結果は言うまでもなく返り討ちだった。
こうして、レオが再戦に来ては返り討ちにあうという日々が、1週間ほど続くのだった。
あとがき
いかがでしたか?今回の話は、深遊先生の漫画版レギオスの2巻を元にしたSSです。
個人的にはこのレオが好きなんですよね、と言いつつ、今回はフェリ要素が……今回のはニーナが主役ですね。
そこ(フェリ成分?)はまぁ、『おまけ』辺りで……
それはさて置き、原作の話では本来レイフォンが武芸者以外の道を探してて、そのために多数のバイトを掛け持ちして倒れる描写がありますけどこの話では、レイフォンは現在武芸者を続けることに不満は持ってないので、そこはカットです。
フェリのおかげですねw
ちなみにオリバー。彼は精密射撃が得意ですね。制度で言えばシャーニッドに匹敵、凌駕するほどに。
しかし、剄の量が少ないんで、威力不足だったり殺剄がそこまでうまくなかったりします。
銃は殺剄に向く武器らしいですが、苦手な人が居てもおかしくはないですよね?
さて、それでは今回は『おまけ』を!
おまけ
「……フェリと」
「シャーニッドの」
『なぜなにレギオース』
「……何をしているのだ?」
なにやら奇妙な事を始めようとしているシャーニッドとフェリ。
机を用意し、その上にネームプレートを2人分置いてある。
それには『しゃーにっど君』、『ふぇりちゃん』などと書かれていた。
「このコーナーでは、第十七小隊のメンバー達が」
「ズビッっと、ズバッと回答いたします!!」
「勝手に進めるな」
カンペを持ち、ローテンションなフェリとハイテンションなシャーニッド。
それに突っ込みを入れるニーナだが、シャーニッドは相変わらず軽い乗りで答える。
「何だよせっかく、隊員同士の親睦を深めようと企画立ててんのに」
「そう言う事なら……」
軽いが、もっとものような意見。
それにニーナが承諾し、この企画は始まった。
「えー、それでは最初の質問。フェリちゃんの今日の下着の色は……」
シャーニッドが質問ペーパーを持ち、そこまで言う。
言って、彼は……
『しばらくお待ち下さい』
「えー、いきなりですが司会を変わりました、レイフォン・アルセイフです」
「アシスタントのフェリ・ロスです」
「葬られた!?」
何故かアシスタントが変わり、そして先ほどシャーニッドが持っていた質問ペーパーをレイフォンがびりびりに破いている。
床にはシャーニッドが倒れており、そのそばには剣が転がっていた。
刃引きはされたもので、どうやらそれで切られ(殴られ)たらしい。
「それはさて置き、最初の質問です」
清々しい笑みを浮かべたレイフォンが、最初の質問を出す。
『Q 隊員達の趣味は?』
「趣味……訓練か?筋トレとか……」
「期待はしてねぇが、色気の無い答えだな……」
「案の定」
「うっ、うるさい!!」
ニーナのつまらない返答に、復活したシャーニッドとフェリがつまらなそうに言う。
「ま、俺はデートっつーか、ナンパっつーか、あ、これは趣味ではなく俺の人生における……」
「レイフォンは?」
シャーニッドの趣味は聞き流し、フェリがレイフォンに尋ねる。
「僕ですか?そうですね……」
「そういや、コイツが一番謎だよな」
「確かに……」
シャーニッドとニーナも、どこか気にしたようにレイフォンの趣味を聞こうとするが、
「掃除ですかね?後最近は、料理なんかを」
ある意味予想外で、そしてつまらない返答だった。
「なんつーか、似合わねえ……」
「と言うかレイフォン、料理できるのか?」
「あっ、はい。孤児院では当番制でやってましたし、最近は弁当も自分で作ってますからあれこれと試行錯誤を。これが案外、やってみると楽しいんですよ」
レイフォンの答えを聞き、意外だと思うシャーニッドと、何故か負けたと項垂れるニーナ。
フェリは既に知っていることではあるが、やはりレイフォンに料理で負けるのは少し悔しそうだ。
「それでは、次の質問を……アレ?質問ペーパーはもうないんですか?」
次の質問を読もうとしたレイフォンに、シャーニッドが新たな質問用紙を持ってそれを読み上げる。
「フェリちゃんと隊長のスリーサイズを教え……」
シャーニッドがそこまで言いかけ、レイフォンは再び剣を握る。
そして……
『もう一度、もうしばらくお待ち下さい』
「シャーニッド先輩は体調が悪いそうなので帰りました。さて、質問ですが以上のようですね」
「ひとつしかやってないな……しかも趣味だけ」
「無駄な時間を過ごしました」
シャーニッドが消え去り、この場から去っていく3人。
そんな訳で彼らが部屋を出た後……
「アレ?みんないないのかな」
ハーレイが先ほどまで、レイフォン達のいた部屋へと訪れる。
「ぐぉぉ……レイフォンの野郎……」
「どうしたんですかシャーニッド先輩!?」
そこで、何故か血だるまとなって倒れているシャーニッドを発見し、焦るハーレイ。
「ふ……このコーナーでは質問、疑問などを募集して、俺達がお答えします。開催日は未定ですが、皆さん奮ってご参加を。感想のついでに質問などをそえて書き込んでいただければOKです。ただ、感想と質問、疑問などの違いが分かるように明記してください……ぐふっ」
「何を訳の分からない事を……って、シャーニッド先輩!?」
皆さんのご参加、お待ちしております。
『フェリの趣味。 読書、人間観察』
あとがき2
フェリ成分……出せてねぇ……
今回、ネタに走ってしまった気が非常にあります。
やばい……後悔しそうです(涙
次回は予定では、フェリのアルバイトかツェルニに似た少女の話。
本編にいくかとも考えてますが、そっちの可能性は低いかな?
フェリのアルバイトだとレイフォン暴走しそうで、ツェルニに似た少女の話だとオリバーが……
うん、次回が書く前から怖いです。