[七ツ夜と魔法(MELTY BLOOD×魔法少女リリカルなのは)]
魂魄ノ華 爛ト枯レ、杯ノ蜜ハ腐乱ト成熟ヲ謳イ例外ナク全テ
ニ配給、嗚呼、是即無価値ニ候…………!!!!
~第4話「Holiic/Of each」~
私立聖祥大付属小学校
通学バス
朝食後にスクールバッグを持ったなのはは、桃子に見送られ家を後にする。
最後尾の席にはいつも通りの親友
ブロンドがかかった金髪のアリサ・バニング
青みがかかった髪の月村すずか
いつもなら二人とも満面の笑みでなのはを出迎えるところなのだが、今日は少し様子が違った。
「で、一体昨日の男は何だった訳?今はなのはの家にいるんでしょ?」
アリサが訪ねてくるのは無理もない。いきなりなのはをお姫様だっこして歩いてくる不審な男が現れ、とりあえずすずかの部屋になのはを寝かせた途端
なのはの兄である恭也が真剣で男に襲いかかり、危険だということで、無理矢理家に帰されてしまったのだから。
すずかは若干顔を強張らせている。姉の忍から人外を殺す一族の人間と聞かされ、怖くて昨夜は寝ることができなかったくらいである。
そして彼は衝動を持っている。人外を殺そうとする殺人衝動。
(どうやって話せばいいのかな?)
なのはが昨日七夜から聞いた内容としては
小さい頃に両親を事故で亡くし、拾われた家で8年ほど暮らしたけど、生まれつき本来なら視えないもの(幽霊?)を視ることができる浄眼というモノを持っていた為
家では気味悪がられ続け、今年で18歳になるということもあったので全国を回る旅に出たというものだ。
兄である恭也と互角以上の戦いができた理由は、親が暗殺者で小さい頃に訓練を受けていたからとの説明だった。
確かになのはは納得できる理由だ。動き方や身のこなしが暗殺者のソレなら兄や父、月村一家が過剰に反応することもうなずける。
何せ月村は富豪の良家だ。
「昨日の男の人は七夜志貴さんって言うんだよ」
「ナナヤ?何か変った名字ね。」
「うん。なんでも、家庭の事情で今は全国を旅してまわっている途中らしいの。」
なのはは出来る限り七夜から聞き出した身の上と、なのはが出会った経緯を話し、七夜がちょっといじわるそうだけど優しい人だと説明した。
「…何だか複雑な事情を抱えてそうな人ね。おまけに性格が意地悪とか、私とウマが合わないわよ。」
「にゃはは…という訳で、七夜さんはそんなに怖い人じゃないと思うよ。昨日の夜にお話ししてみたけど、武術を習ってたことがあるみたいで、それに気が付いてお兄ちゃんが攻撃してきたみたいなの。」
「なるほど。確かにあんたのお兄さんは、すずかのお姉さんにぞっこんだもんね。過剰に反応するのは当然って言えばそうよね。」
一応アリサは納得したようだったが
「それで?何ですずかはまだ暗い顔をしてるのよ?」
すずかは俯いたまま、死にそうなほど顔を蒼くしている
「え、ぁ…ううん。大丈夫……だいじょうぶだから……」
その顔は今にも心臓が止まってしまうのではないかと錯覚してしまうほど沈んでいた。
――――――――
「いらっしゃいませ、瑞々しいお嬢様がた。ご注文はいかが致しましょうか?」
時刻は11時45分、喫茶店はそろそろ人でにぎわう時間。
執事服を着こんだ七夜志貴は持ち前の営業スマイルでウェイターをしていた。
高町家の喫茶店『翠屋』
いつもなら高町士郎はにこやかな表情でオリジナルのブレンドコーヒーを客に届けるところだが、今日は愛妻桃子に止められてしまっている。
理由は七夜を警戒してか自然と眉間に皺が寄ってしまっている為である。
個人経営の接客業、しかも喫茶店ともなれば従業員の表情や態度一つが売り上げを大きく左右する為、致し方が無いと言える。
おまけに今日は喫茶店では珍しい、執事服の見た目好青年が映えている。マスターである士郎はいつも通りのエプロン姿なので、客受けも自然と七夜に傾く。
「だけど本当に七夜君、接客が上手ね。これなら泊まり込みの従業員としてずっとウチに居てくれても構わないわ。」
桃子が士郎にとって更に表情を悪化させかねない事を言う。
そんな七夜はトレイを片手に持ちながら桃子に近づき
「いえいえ、こういった場でのお客様へのエスコートは基本ですよ。それが貴婦人の下でとなれば、手なんて抜けるはずがありません。」
そう言いながら、たまに来る男性客に対する態度が緩慢なのを指摘したい士郎だが、桃子が七夜に夢中になっていることから易々ということができないでいる。
そこで士郎はふと、今週末の温泉旅行について思い出した。七夜の騒動があり、すっかりと気持ちが醒めてしまっていたがどうしたものか。
恭也も忍君と一緒に行く為、翠屋はアルバイトのみの営業となる。
(だめだ、今七夜君から目を離すことは出来ない…いっそのこと連れていくか?…危険すぎる。月村家の湯けむり温泉殺人なんて洒落にならん…)
袋小路の考えに、せめて自分だけでも残るべきではないかと考えていると。
「そうそう、今週末私たち一家となのはのお友達とで温泉旅行に行くのよ、七夜君も良かったら一緒に来ません?」
(――――っ!!桃子、なんてことを)
「温泉ですか……とても魅力的なお誘いですが、私のような者が団欒の一時から旅行にまでお邪魔するのは申し訳ない。」
「気にしなくても大丈夫よ。もう七夜君も我が家の家族なんだから。それに美由希さんも七夜君がいればきっと喜ぶわよ。ね?あなた。」
あなた と言われて士郎は顔を青ざめながら目を白黒させる。
桃子の心が広いのも考えようだ。
恭也や美由希は桃子と血の繋がりは無い。それでも顔色一つ変えず二人を我が子として受け入れる姿勢は、まさに母性の鑑といえる。
しかしその母性が今、最も不確かで危険極まりない青年を受け入れようとしている。
それと、今ナントいった?
美由希が七夜君を?――――誤算だった。
恭也でも七夜君には勝つことができないと踏んで、不安を与えないように美由希には伏せていたが、如何せん年齢が近すぎた。
剣のことしか視ていなかった自分は年頃の娘の思考など全く考えもしなかった。
(危険だ、危険すぎる!)
そう思いとっさに出た言葉が
「美由希に手を出すようなことは許さんぞ。」
この言葉が墓穴となった
桃子の認識は
『美由希さんを俺に下さい。』『お前のような若造にはやれん!』のようなものと捉えてしまった。
それに気が付いた士郎は思い余って背中に仕込んである刀に手を伸ばすが。
「店内での抜刀は厳禁となっております。マスター?」
当然のことを七夜に指摘された。
――――――――――
それは例えるなら罅だらけの硝子
蜘蛛の子を散らすように視界を死界で埋めつくす
手に入れたのは直死の魔眼
殺したモノは"真祖の吸血鬼"(白き姫)
生きているのなら神様ですら殺してしまう魔王の眼
吾、全てを殺す者也。紅い月の契約の下、此の世の全てに貴き死を。風に此の身を、佇むは影絵の街、七ツの闇夜を。瞳に死界を。――――――さあ、殺し合おう。
――――――――
高町士郎と高町恭也は憤慨していた。
今日は楽しい、楽しみにしていた筈の温泉旅行だったはずだ。
車を運転する士郎は鼻歌交じりになり、助手席には高町桃子を乗せ、後部座席には、なのはやその友達が笑顔を絶やさなかったことだろう。
恭也は忍に運転を任せ月村家と楽しく過ごせたはずだろう。
そのはずだったのに
「眠い…」
引きつった笑顔に青筋を浮かべる士郎。隣で暇だと言わんばかりの七夜。その後ろに、手に持つ小太刀をいつ抜刀してもおかしくない恭也。状況を全く知らず舞い上がっている美由希。
人呼んで『暗殺車』と称してもいい物騒な戦闘集団がここにあった。
「ね、ねぇ七夜君。七夜君は温泉とか初めて?」
「ああ、初体験さ。生憎その手の娯楽とは無縁だったものでね。でも、一通りの作法は知識としてあるから心配はいらない。それと、何事にも初体験は思い出に残る、今日の旅行には感謝しているよ。美由希さん。」
七夜の発言でまたもや美由希は顔を赤らめテンションを上げる。
そんな美由希をルームミラーで視てしまった士郎は
「七夜君!眠いのなら寝ていて構わないよ!――――なに、着いたら起こすよ」
(貴様!!それ以上美由紀と話すな!!!―――――斬り殺されたいか!!)
合わせて恭也も
「ああ!それがいい。こんなにいい天気なんだ!七夜のおかげで翠屋も更に儲かっているし、気にするな!」
(話は聞いている…後ろから串刺しにされたくなければ大人しくしていろ。)
しかし副音声を理解していない美由希にとってみれば
「お父さん、恭ちゃん。ここのところ何だか七夜君に対して冷たいよ?なんかお店で揉め事でもあったの?」
ここ数日美由希から見た士郎と恭也の発言はKYなものが多い。主に七夜と話をしている時に限るが。
二人が秘密を言うに言い出せず、目を白黒させているのを後目に、然も気にせずいる七夜は。
(成程、移動車両の中の殺人か…面白いかもしれないな……)
机の下より難易度は高そうだ。
などど考えていた。
一方月村忍の運転する車両は、本来よりも人口密度が高くなっている中で
「いい、すずか。七夜君はケダモノのロリコンだから絶対近づいちゃ駄目だからね!」
忍はいくら可愛い妹を守るための方便とはいえ、七夜の名誉を著しく傷つける発言をしていた。
「あら~?七夜君はもしかして美由希さんよりもなのはのほうが好きなのかしら?」
「お母さん……意味がずれてるよ……」
「ろ、ロリコン!?そんな危険人物を連れてきちゃってるの!?それならすずかがこの前から暗い顔しているのも納得だわ!美少女の敵よ!!」
アリサは今の会話で七夜の人物像をかなり誤解することになるが、それは旅館に着いたときに改まることとなる。
そして
「はい、あれはロリコンです!!すずか様と忍さまを狙うぺ○フィリアです!!」
メイドのファリン・K・エーアリヒカイトは忍たちの会話の流れに乗ろうとよく解っているのか定かでない発言をした。
車内は一部を除き、一瞬ドン引き状態
流石に言い出しっぺの忍は苦笑いになり。
「え……と、…それは言いすぎなんじゃ――――」(もしもウチを狙ってきたんじゃない『只の暗殺少年』だったら、全面的に責められるの私じゃん!?)
それと、私はれっきとした成人でロリでもペ○でもない。ナイスバディなお姉さんな筈だ!と、心の中で叫んでいた。
―――――――――――
旅館について、駐車場での出来事
アリサ・バニングスは驚いていた。
「あ、あんたが七夜?話に聞いていたのと随分と雰囲気が違うわね。」
「?噂が何なのかは知らないが、そういった情報は得てして誤っているものが殆どさ。…例えるなら男は悪いイメージの噂がより強く、現実には当てはまらないことが多い。しかし女性は、見目麗しき絶世な噂は実際はそれ以上ってことがあるだろう?」
「まあ、男の場合はイジメとかにある典型よね。でも女性はそんなことあるのかしら?」
「いい質問だ。古来から女性の美貌に関するうわさは、視えないからこそ虜にする魔力があってね。しかも興味を持つ分、初見の印象も大抵は良いものだ。つまりアリサちゃんは、なのはちゃんが自慢するだけのことはある立派なレディーに視えるってことだよ。」
「――――――い、いいいいイキナリ私のことを口説こうっていったって、そうはいかないわよ!」
だけど、今の会話の流れで分かった。こいつは平気な顔をして特に気にもせずに女を"口説く"(殺す)男だ。
「ねえ、七夜君!荷物、部屋に置いたら裏手の森へ散歩に行かない?」
「構わないよ。」
そして、既に1名の末期患者が、よりにもよって美由希さんとは…
―――その時、何故か私の背後からものすごい負のオーラをまき散らすなのはが
「七夜さんっ!お散歩はなのはと行くって約束してたじゃん!」(ジュエルシードの探索にお姉ちゃんは連れて行けませんよぅ。)
!?そんな、なのはも手遅れだなんて――――たった数日でここまでの被害とは。
「えー。いいじゃんなのはぁ。」
「絶対だめぇ!!七夜さんは私の!!」『七夜さんは私(とジュエルシードの探索に行く)の!!』
どさり
後ろを振り返ると、なのはのお父さんが発狂したのか、物凄い奇声を挙げながら七夜に向かって刀を振り回している。
恭也さんは怒りのあまりに気絶して、ノエルさんと忍さんに抱きかかえられるような形になっている。
「何だかなのはの一家が壊れていってるわ…」
唯一の頼みの綱であろう、なのはのお母さんですら。
「あらあら。なのはったら、美由希さんに負けまいと猛烈アタックね♪」
「う……うう、ノエルさんーーーー!!なのはに七夜君盗られたーーーーーー」
「…………………」
「貴様ぁああああああああ!!」
「まてまて。そう事を荒らげてもいいことは無いですよ。可愛らしい乙女からの誘いに乗るのは男の甲斐性って奴です。」
ひょいひょい刀を避けながらなんか火に油を注いでいる気が…
「恭也っ、しっかりしなさい!」
「たたたたたたったったたたた大変ですぅ!??!くきゅ、救急車ーーーー」
「ああーーーーーもう、うるさーーーーーーーい!!!!」
~あとがき~
就職活動が忙しすぎる。
原作崩壊、ついカッとなってやってしまいました。アリサだけは最後の良心であってほしい。
次回予告:タタリ登場予定
何とか巧く繋げてA'sまで行きたいな…それまで高町家がどれだけ原作崩壊するか…OTL
好感度
なのは ±0
フェイト -2
美由希 +10
次回投稿時に『とらハ板』に移りたいと考えています。
続きたい