[七ツ夜と魔法(MELTY BLOOD×魔法少女リリカルなのは)]
オレとよく似た眼を知っている?
それはどうも。
どうせ、そいつもロクなヤツじゃないんだろ。
~第9話「Re;/paradox」~
…まったく、あっちの世界での住人とまた殺し合えるのは、嬉しい限りなんだが…
いちいち戦うのに目的が付いてくるとは、俺は正義の味方じゃぁ無いんだけどな。
ヒロインを助けて自分はデッドエンドなんて、何処の三流役者だ?
…まぁ、こんな闘いも悪くは無いか。
「ええと、包帯は取り換えたから……後は、治療術式を再構成して…」
ん?聞き慣れない声だな?眠っているのも、そろそろ限界か。
起きるとするか
眼を覚ますと、はじめに映ったものは高町家の天井では無かった。
天井が高いモダンな造りの部屋…見知らぬ部屋
場所の特定は後回しにしよう。今は自身の確認が先決。
体を起こし、ベッドから降りる。
ふと見ると上半身は裸になっていて覆い隠すように包帯がくまなく巻いてある。
骨、筋肉共に違和感はない。強いて挙げるなら、体中に巻かれた過剰ともいえる包帯の量だが…
「死を覚悟するくらいの怪我だったんだがな…どうなってる?」
なのはちゃんたちが直してくれたのだろうか?だとしたら、なんて無様だ。
守った筈の少女に命を救われるなんて、安い男なんてレベルじゃない。
七夜志貴はどんな時でも余裕の姿で瓢々としているものだ。
ああ、どうしちまったんだ…
ガチャリ
と、部屋のドアが開き、この前の金髪の少女が少し驚いた顔でやってくる。
「え……と、ナナヤさん?で…いいのかな?眼が覚めたんだ。」
彼女の両手には換えの包帯と消毒液がたくさん抱えられている。どうやらこの包帯は彼女が巻いてくれたものらしい。
「ああ、おかげでだいぶ良くなったよ。助けてもらって感謝するよ、お姫様。」
「えーと、私…そんな、お姫様じゃぁ…」
「…そういえば、まだ名前を聞いていなかったな。それとも、お姫様のままがいいかい?」
「フェイトです。フェイト・テスタロッサ」
「フェイト…ああ、運命って意味か。いい名前じゃないか。」
少々からかう意味で口にしてみたが、フェイトは思いのほか顔を真っ赤に染め上げ、頭からは湯気が立ちのぼる。
「え、ええええええぇ、と、私!コンビニでお弁当買ってきます!」
そう言って包帯と消毒液を抱えたまま部屋を飛び出して行ってしまった。
「やれやれ、お姫様にはまだ刺激が強すぎたかな?」
そんな独り言を吐きながら、体の感覚を取り戻すためにベッドから降りて立ち上がる。
まずは、今いるフェイトの家を把握して、出来るだけ早くここから立ち去ることを考える。
部屋から出ると、モダンな造りのリビングへと出た。
しかし、フェイトは物欲に乏しいらしい。なのはちゃんの部屋と比べると思考が大人びているようだ。
まずは時間の把握、これは壁掛けのアナログ時計と外の様子から16時40分と判明。
日付は…確認できないがネロとの戦闘から、1晩ないし2晩は経過していると予測。
フェイトに預けた学ランは、テーブルの上にきれいにたたまれた状態で置かれていた。小太刀も同じくして隣に置かれていた。
ただ気になるのは、学ランの第2ボタンが紛失していた。
「……?まいったな。ボタンの代えはあったかどうか……」
そこでふと、棚に置かれている写真立てに眼がいく。
そこには、ひとりの金髪の少女と、ひとりの黒髪の女性の姿が映っている。
「これは…お姫様の写真かな?ってことは、隣に映っているのが母親か?……ん?」
しかしそこで、金髪の少女に違和感を覚える。
浄眼をつかい、眼を凝らしながら写真の少女を見つめる。
「……別人か?お姫様じゃないな……姉妹か双子か…?」
しかし、それでは説明がつきづらい。
姉妹にしては似すぎている。
双子だとしたら、この写真にフェイトが映っていないのは何故だ?
フェイトがひとり暮らしをしていて、そこに送りつけた写真だろうか?
だとしたら、えらくおかしな話だ。
何でフェイトしかここで暮らして居ないのか?
浄眼でフェイトを見つめたことがあるが、これといって普通の少女であり、退魔衝動も起きなかった。
彼女はまっとうな人間の筈だ。
タタリの複製者でもない。
「………」
すぐにここからいなくなるつもりだったが、気が変わった。この写真の金髪の少女はこんなにも幸せそうな顔をしているのに、フェイトは何で以前の翡翠みたいな眼をしているのか…
…まったく、自分を殺す殺人鬼を経て、雪原を守るシリウスの次は、"お姫様"(運命)を救おうとするナイトか?
何の冗談か。
しかし、悪くない。
漸く「七夜」としての人生が始まろうとしている。
―――――――
時は少しさかのぼり、ネロ・カオスとの戦闘が終わり、七夜の応急処置が終わったところで、公園で対峙する二人の少女。
「七夜さんは私の家に住んでるの!だから私が看病するの!」
高町なのはは未だに頭のネジが緩い発言をしていた。
「いやいや!!?なのは!?無理だから!どうやってこの惨劇を家族に説明するつもりだい!?」
ユーノ・スクライアは必死になのはに対しての説得を行いながら、金髪の少女に対して注意を向ける。
「ユーノ君!もしも七夜さんをアノ小に預けようとしてるなら…………」
レイジングハートの先をユーノに向ける。
「まって、なのは!?ご、ごめんなさい!!うん!ゴメンナサイ!!!」
「――――――え、と……」
対してフェイトは冷や汗ものだ。
自身の全身打撲は未だに痛みがあり、とても目の前の少女と闘うだけの体力は無い。
しかし、ここで引いたら、乙女として決定的にナニカに負ける気がする。
そう思い、ふと今、自分の肩にかかっている七夜の学ランを思い出すと
「………学ランの第2ボタンをアゲル」
「……………は?」
「…………………良いよ。その代り1晩だけだよ!」
「え?なのは!?ナニがドウなってるの!?」
ここに乙女の盟約が結ばれた。
―――――――――――
誰も居ないビルの裏路地
ヒトのいない細い通路
そこに在るのは死者
動く屍
死
蒼い眼が独り
右手に握るのは退魔の宝刀
無秩序な悲鳴の数多がこだまする
さぁ、虚言の月夜は太陽の浸食をハジメル
「賢者の石の再構成を開始する。基本ベースは三咲町のバックアップデータを活用。差異が発生する地点の修正演算を開始―――――――」
~あとがき~
短いです。 遅いです。 ご容赦を!
好感度
なのは +15
美由希 +15
フェイト +15 or -10
続きたい
H22/7/19 誤字を修正