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No.15606の一覧
[0] 孤独少女ネガティブなのは(原作改変・微鬱)[ランブル](2010/04/02 18:12)
[1] プロローグ「きっかけは些細な事なの……」[ランブル](2010/03/15 14:33)
[2] 第一話「友達なんて必要ないの……」[ランブル](2010/03/15 14:36)
[3] 第二話「都合の良い出来事なんて起こりはしないの……」[ランブル](2010/03/15 14:43)
[4] 第三話「泣きたくても耐えるしかないの……」(いじめ描写注意)[ランブル](2010/01/23 17:32)
[5] 第四話「一人ぼっちの夜なの……」[ランブル](2010/03/15 14:52)
[6] 空っぽおもちゃ箱①「とある少女達の語らい」#アリサ視点[ランブル](2010/03/15 15:00)
[7] 第五話「出会い、そして温かい言葉なの……」[ランブル](2010/03/20 16:45)
[8] 第六話「変わる日常、悲痛な声なの……」(グロ注意)[ランブル](2010/03/15 15:22)
[9] 空っぽおもちゃ箱②「誰かを救うということ」#トーレ視点[ランブル](2010/03/15 15:28)
[10] 第七話「これが全ての始まりなの……」[ランブル](2010/03/15 15:51)
[11] 第八話「現実と向き合うのは難しいの……」[ランブル](2010/03/15 16:00)
[12] 第九話「所詮理想と現実は別のお話なの……」[ランブル](2010/03/20 16:47)
[13] 空っぽおもちゃ箱③「欲しても手に入らないもの」#すずか視点[ランブル](2010/03/15 16:18)
[14] 第十話「護るべき物は一つなの……」[ランブル](2010/03/15 16:21)
[15] 第十一話「目的の為なら狡猾になるべきなの……」[ランブル](2010/03/15 16:25)
[16] 第十二話「何を為すにも命懸けなの……」[ランブル](2010/03/15 16:30)
[17] 第十三話「果たしてこれが偶然と言えるの……」[ランブル](2010/03/15 16:38)
[18] 空っぽおもちゃ箱④「打ち捨てられた人形」#フェイト視点(グロ注意)[ランブル](2010/08/24 17:50)
[19] 第十四話「終わらせる為に、始めるの……」[ランブル](2010/03/15 16:39)
[20] 第十五話「それは戦いの予兆なの……」[ランブル](2010/03/20 16:44)
[21] 第十六話「月明かりに照らされた死闘なの……」(グロ注意)[ランブル](2010/08/24 17:49)
[22] 第十七話「不安に揺らぐ心なの……」[ランブル](2010/04/02 18:10)
[23] 空っぽおもちゃ箱⑤「枯れ果てた男」#クロノ視点[ランブル](2010/04/19 22:28)
[24] 第十八話「それは迷える心なの……」[ランブル](2010/05/05 17:37)
[25] 第十九話「鏡写しの二人なの……」[ランブル](2010/05/16 16:01)
[26] 第二十話「芽生え始める想いなの……」[ランブル](2010/06/10 07:38)
[27] 第二十一話「憂鬱の再開、そして悪夢の再来なの……」[ランブル](2010/06/10 07:39)
[28] 空っぽおもちゃ箱⑥「分裂する心、向き合えぬ気持ち」#恭也視点[ランブル](2010/08/24 17:49)
[29] 第二十二話「脅える心は震え続けるの……」(微鬱注意)[ランブル](2010/07/21 17:14)
[30] 第二十三話「重ならない心のシルエットなの……」[ランブル](2010/07/21 17:15)
[31] 第二十四話「秘めたる想いは一筋の光なの……」(グロ注意)[ランブル](2010/08/10 15:20)
[32] 第二十五話「駆け抜ける嵐なの……」(グロ注意)[ランブル](2010/08/24 17:49)
[33] 第二十六話「嵐の中で輝くの……」(グロ注意)[ランブル](2010/09/27 22:40)
[34] 空っぽおもちゃ箱⑦「欠けた想いを胸に抱いたまま……」#すずか視点[ランブル](2010/09/27 22:40)
[35] 空っぽおもちゃ箱⑧「最後から二番目の追憶」#すずか視点[ランブル](2010/10/10 22:20)
[36] 空っぽおもちゃ箱⑨「Super Special Smiling Shy Girl」#セイン視点[ランブル](2010/10/10 22:20)
[37] 第二十七話「その心、回帰する時なの……」[ランブル](2010/10/25 19:25)
[38] 第二十八話「捨て猫、二人なの……」[ランブル](2011/02/08 17:40)
[39] 空っぽおもちゃ箱⑩「遠い面影、歪な交わり」#クロノ視点[ランブル](2011/02/13 11:55)
[40] 第二十九話「雨音の聞える日に、なの……」[ランブル](2011/04/18 17:15)
[41] 第三十話「待ち人、来たりなの……」[ランブル](2011/04/18 20:52)
[42] 空っぽおもちゃ箱⑪ 「殺されたもう一人のアタシ」#アリサ視点[ランブル](2011/06/05 21:49)
[43] 第三十一話「わたし達の時間、なの……」[ランブル](2011/07/03 18:30)
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[15606] 空っぽおもちゃ箱⑤「枯れ果てた男」#クロノ視点
Name: ランブル◆b9dfffe8 ID:ba948a25 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/04/19 22:28
この世は何時だってこんな筈じゃなかった事に満ち溢れている。
不意に僕ことクロノ・ハラオウンは自分の歩んできた人生を振り返り、その歩みの過程と今の自分の現状にそう評価を下した。
父親が死した英雄という事もあってか周りの人間からはまるで悲劇の主人公のように祭り上げられ、そんな自分自身に何の疑問も抱かぬまま所謂エリート街道という奴を直向きに進んでいた自分。
本来ならば所属している組織でもそれなりの役職に就けていたはずの順風満帆な人生に向かって歩を進めていた自分が確かに自分の歩んできた道の過程の中には存在していた。
昼も夜も訓練に打ち込み、暇があれば一つでも多くの知識を脳に刻み、無愛想と周りから評されながらも幼い頃から僕は頑張り続けてきた。
辛くはあった、時々投げ出してしまいたくもなったし……あまり大きな声では言えないが交友関係が狭い自分自身にコンプレックスを抱える事だって少なくは無かった。

でも僕はそんなネガティブな要因を全て無視して努力し続け、その甲斐もあってか僕は自分が望む役職に一旦は身を置く事が出来た。
それは自分にとっても悲願であった事だし、周りの人間も止むことの無い称賛で僕を褒め称えてくれた。
厳しく自分を指導してくれた師も、忙しい身の上ながらもちゃんと僕を見てくれた母も、挫けそうになった時に励ましてくれた幼馴染も皆が皆自分の事のように僕の成功を手放して喜んでくれたのだ。
今まで努力しても誰からも評価されず、報われない日々を送ってきた僕にとってそれは凄く嬉しいことだった。
そして、その時には確かにそんな人達の為にも失望させないよう一層努力しなければいけないと思い立つ自分が確かに存在していた。
此処がゴールではなく、これからそんな人達の期待を一身に背負いながら生きていかねばならないという始まりなのだと期待に胸を膨らませていた自分が確かにいた筈なのだ。

だが、今の自分にはそんな期待も感慨も何もかも存在してはいない。
傍から見れば抜け殻のよう、自分で己を客観視してみても嘗てクロノ・ハラオウンであった人間の残骸か良くてホームレスというような風貌の人間が息衝いているだけな様にしか見えはしない。
そう……そんな順風満帆な人生を送っていた筈の男は己の限界という名の深い溝に嵌り、其処で躓いてしまったのだ。
仕事中にミスを犯し、死ななくても良かった人間の命を犠牲にし、挙句の果てには上の人間の再三の注意にも耳を傾けずに自分が正しいと信じた道を貫こうと抗ったその結果の果てとして。
散々苦しんだし、周りの人間の救いの手も見えなくなってしまうほど自暴自棄にもなった。
知り合いのコネクションで首の皮一枚の所でぶら下っていなければ今日の飯の種も稼げないほどに堕落して、堕ちる処まで堕ちもした。
そして結果僕は自分の身を滅ぼしかけた、もう完全に何もかも終わりだという一歩手前まで足を踏み外しかけた。
それが丁度今から二年半前、僕が進むはずだった未来への道を閉ざしてしまうきっかけが起こってしまったほんの少し後の事だ。
其処で僕は今まで得てきた全ての物を失い尽くし、そして今まで自分が得ることの出来なかった”鍵“を手にしたのだった。
これは今より少し前の過去から始まり、ある一人の男の哀れで滑稽な昔話。
自分自身の存在に酔い、慢心する自分を慢心とも捉える事の出来なかったクロノ・ハラオウンという名の残骸の聞くにも耐えない昔話だ……。

「……一雨、来そうだな……」

今から丁度一年と少し前、まだ僕が今の役職につく前のことになる。
第三管理世界ヴァイゼンの首都、人通りの少ない裏通りにある小さくて寂れきった酒場の前に僕はいた。
クロノ・ハーヴェイと名を偽り、人生の転機を迎えてからもう一年も経過していたある日の事だ。
僕は何時ものように酒場の前に置いてある骨董品の椅子に腰を降ろし、まるで溝川の腐ったような濁りきった瞳で今にも雨が降り出しそうな鈍色の空を見上げていた。
手の内には組織に所属していた時と同じ待機状態のデバイスが力なく握られ、足元には碌に飲めもしないスコッチの入った携帯酒瓶が店の窓から漏れる光に反射して鈍い光を放っている。
だけどそのどれもに生気は篭っていない、勿論そんな物達の所有者である僕自身にも昔のような覇気は一切感じられない。
言うならば犯罪者予備軍、自分の都合のいい様に解釈した所で犯罪者を護る警備員といった所だろうか。
当然の事ながらに非合法、しかし明確な経歴も不明で既になけなしの貯金も使い果たしていた僕につける仕事なんて所詮はこの程度が関の山。
生き恥を晒してちょっとでも自虐的にならなければまともな精神状態を保っていられないほど僕の精神は病んでしまっているのだと言ってしまってもよかったのかもしれない。
まあ何にせよ、この当時の僕がこんな……極道物が密かに集まる集会場を警護するなんて仕事についてしまっていた以上、僕がどうしようもない屑だったという事には変わりは無いのだが。

一見しただけではとても人の寄り付きそうに無い草臥れた酒場でも、お天道様を見上げて生きていく事の出来ない人間にとっては絶好の隠れ蓑となる。
実際、その酒場には実に様々な犯罪者が足を運んでいた。
娼婦、麻薬中毒者、非合法の傭兵、殺し屋、質量兵器の転売人……まあ凡そ僕の所属していた”時空管理局”という組織の中で悪と断定されるような人間なら一通り僕の横を通り過ぎてこの酒場の門を潜っていったと断定してしまってもいいだろう。
そして、そんな人間達が取引をする場所を護り、昔の同僚や他の犯罪組織からの鉄砲玉をなぎ払うのが僕の仕事だった。
まあ本当の所を言うと運がいいのか悪いのか実際はデバイスや魔法を駆使して職務を全うするなんていうような事は起きなかったのだが、それでも何度か警邏に来ていた人間を口八丁で誤魔化して騙したことはある。
本来僕が正しく道を進んでいたのならば共に道を同じくする筈だった人間を、取り締まる筈だった人間を守る為に何度も何度も僕は騙し通したんだ。
結果僕はそれなりにこの店の店主からも信頼され、それなりの額を貰って着の身着のままな生活を続行するだけの余裕を得ることが出来た。
昔は正義やら善行やらにうつつを抜かし、犯罪者から市民を護る正しい人であろうとしたこの僕が今や犯罪者に養われなければその日を生きていくことすら出来ないという事には皮肉を感じたりもした……だが、不思議と屈辱は感じなかった。
自分が犯してきた罪に比べれば如何って事は無い、寧ろこの程度で少しでも贖罪と為り得てくれるのならそれもいいと思っていたくらいだ。
もう僕に戻るべき道は残されてはいない、そう思うが故に僕は何処までもその身を窶す事が出来たのだった。

もうこのままいっそ犯罪者の波に飲まれて最悪な人生を全うするのもそう悪くない話なのかもしれない。
僕が人生二度目の転機を向かえたのはそんな事を真面目に考え始めようとしていた時の事だった。
静かなエンジン音が僕の鼓膜を振動し、やがてキッという締りの良い音と共に一大の車が店の前に停車したからだ。
ふと視線を前へ向けてみると、其処には見覚えのある一台の自動車が停まっていた。
時空管理局の公用車、それも重鎮やその身内等が主な使用対象となるVIP仕様のものだ。
凡そこの草臥れた人通りの無い街並みには不釣合い、そればかりかあまりのアンバランスさに眩暈すら起しそうになる。
この腐りきった犯罪者の巣窟に一体何のようなのだろうか、僕はそんな風に不審に思いながらも手の内のデバイスを車の方へと向けて……そのまま力なくそれを降ろした。
停車した車のドアがゆっくりと開かれ、其処から見知った人物が一人降り出して来たからだ。
その人物は凛々しい目つきをこれでもかという位に歪め、まるで塵屑でも見るような視線で僕を見下しながらゆっくりと此方へ歩を進めてきた。
もうあれから一年も経っている、にも拘らずその人物の風貌やら何やらはまったく変わってはいない。
まるで過去から逃げた僕を追うように投げ捨てた筈の物が追ってきたみたいだ。
僕はあまりにも変化が無いその人物と今の自分とのギャップの差に思わず苦笑いを浮かべながら足元の携帯酒瓶を拾い上げつつ、皮肉めいた言葉をそっと吐き捨てるのだった。

「ふっ……管理局の公用車は随分と音が静かなんだな。ここらを通る安物のソレとは大違いだ」

そんな風に漏らしながら僕は手の内の携帯酒瓶の蓋を何度か捻って開けると、ソレを口元へと持っていって少しずつ傾けていく。
濃厚なアルコールが喉を焼き、フルーティな味わいが口いっぱいに広がっていく。
今も昔も酒は碌に飲めない筈の自分、だけどこうして無理にでも何かで気を紛らわさなければまともに自分自身と言う存在を認識する事すら叶わない。
何とも情けなく何とも不甲斐無い、酒に溺れる事でしか自分という存在が何なのか判別できないようではそれこそ真性の屑野郎と想われたって仕方が無いというものだろう。
そして現にその人物は……彼女は僕を嘲る様に見つめ、そして湧き上がる憤怒と憎悪を必死で押さえ込んだかのような表情で黙り込んでしまっていた。
束の間の沈黙、僕にしろ彼女にしろ気軽に言葉を掛け合うにはあまりにも時が経ち過ぎていた。
言葉にしてみれば数文字という他愛も無い期間、だけど人間としての感覚で捉えるならば僕と彼女の間に生まれた時間の溝はそれこそ取り返しのつかない位に広く深い物だった。

僕が責任という重圧に負けて、局を去ってから丁度一年。
自分のような人間とはもう一生縁も無いような上役の人間から二度とミッドチルダの地を踏むなと警告されてから丁度一年。
誰にも別れを告げず、謝る事も赦しを請う事もしないまま着の身着のままな生活にこの身を窶してから丁度一年。
普通に生活をして真っ当な人生を歩む事の出来るような人間からしてみればなんて事の無いような時間なのかもしれないけれど、僕にとっては永遠の様に永くて冥らい期間だった。
初めの内の何週間かは周りの人間の事や罪の意識で散々苦しみもした。
だけどその後に残ったのはこの先の人生をどうやって生きていけばいいのかという不安と、無くなり掛けている貯金にどうやって上を乗せ続けていこうかという苦悩だけだ。
そしてその後、僕は散々悩み抜いた末に多少非合法な面に身を堕としでもしなければまともに喰っていけないという事を悟った。
幾ら苦しくても他人を頼る事は許されない、僕に関る全ての人間の安全を確保する為にも僕は一人で生き続けなければならなかったのだ。

そしてその結果が今の自分。
もはやハラオウンと名乗る事も叶わなくなった嘗ての自分の残骸だ。
そんな僕を見て一体目の前の彼女は何を想うのだろう。
僕は携帯酒瓶を口から離し、アルコールの匂いの混じった息をフッと宙へと吐き捨てながらそんな風に思った。
失望しているのだろうか、それとも怒りを露にしているのだろうか……はたまたこんな野良犬みたいな僕を哀れんでいるのだろうか。
様々な想いと様々な憶測が頭の中に飛び交い、喉に染み付いたアルコールが潤滑油の役割を担ったかのようにがたついた僕の頭を働かせ続けていく。
だが、頭に浮かんでくるどれもこれもが確かな物ではないような気がして……僕は直ぐに考えるのを止めた。
こういう事は馬鹿みたいに自分の内で自己完結するよりも彼女の口からさっさと言いたい事を吐き出して貰えばいい、そう思ったからだ。
そしてその数秒後、僕の憶測通り彼女は自らが持てるだけの最大の皮肉と最大の蔑みをもってして僕に言葉を投げ掛けてきたのだった。

「あんた……本当にクロスケ?」

「誰に見える」

「塵屑だよ。よく云っても野良犬だね。次元航行船に配属される筈だった執務官にはとても見えない。そもそも、時空管理局に籍を置いていた人間にさえ今のあんたじゃ見えないよ」

「そうかい。まぁ、どれも間違っちゃいないな。でも、一年振りに厭味云う為だけにこんな処まで追って来たっていうのなら君だって相当な変わり者だ。人の事を塵だの屑だの言える様な立場じゃないと思うんだが? なぁ、そうだろう……ロッテ?」

携帯酒瓶に再び蓋をし直し、目の前の人間に向き直りながら僕は戯ける様に目の前の彼女に……嘗ての自分の師であるリーゼロッテにそんな風に言葉を吐き捨てた。
すると彼女は御丁寧にも「気安く呼ばないでよ」と怒気の籠った声で返事を返してきた。
どうやら随分嫌われてしまったらしい、愛称で呼ぶ事すら拒絶してくるくらいなのだから彼女の抱える怒りとやらは相当なものということなのだろう。
まぁ……無理も無い話だったのかもしれなかった。
彼女は僕がまだ幼い頃から師匠として色々と面倒を見てくれた人物だ。
そんな人の信頼をこうも真正面から、それも重ね重ね裏切る様な真似をすれば強く拒絶されるのも無理も無い話なのかもしれない。
確かにショックと言えばショックだった、でも全く想像していなかったという訳でも無い。
寧ろ下手に哀れまれる様な態度が返ってこなくて清々する位だ。
僕は一向に怒声も罵声も浴びせてこない目の前の彼女の表情を伺いつつ、何となく心の中でそう思いながら一年分溜まった鬱憤を払拭する様に宙へとため息を吐き捨てるのだった。

胸倉を掴まれて一発や二発殴られる事は覚悟の上だった。
でなければ、少なくとも僕だって犯罪者の片棒を担ぐような事に手を染めるような真似だけは何としてでも避けようとしただろう。
でも僕は現に此処でこうして最低最悪な醜態を晒してしまっている。
これはある意味世の中を甘く考えた自分自身への自虐行為だと言ってもよかった。
自分は努力し続けてきた、だからこそ報われるのだと本気で思い込んでしまっていた自分。
よくよく考えれば子供の妄言でしかない筈なのに、自らの存在を正義と思い込み独断で突っ走ってしまった自分。
そしてその結果まったく無関係な人を死に追いやってしまい、挙句の果てに周りの人間にまで危害を及ぼしかねない行動を取ってしまっていた自分。
そんな自分自身がどうしようもなく嫌になって、何だか無性に自分自身を傷付けたくなる衝動に僕は駆られてしまっていたのだ。

よく精神を落ち着かせるために手首を刃物で切ったり、頭を壁にぶつけたりするような自傷行為がメディアでも取り上げられるけれど僕が取っていた行動もまたその延長線上にあるものだといってもよかった。
自身の存在に酔い痴れ、正義は我にありと信じて疑わなかった自分がどうしようもない程醜いような気がして……そんな自分を宥めたいが為に僕は背徳的行為に手を染めてしまったいたのだ。
違法と分かっていながら酒や煙草を口にし、昔の自分からは想像も出来ないほどの自堕落な生活を送り、最終的には犯罪者の片棒を担ぐ事で金を稼ぐ毎日。
こんな事をしてはいけないとは何度も思ったし、そもそも何故こんな物に手を出してしまったのかと散々悩みもした。
でも結局僕は何一つとして止める事は出来なかった。
何故なら僕にはもうクロノ・ハラオウンという存在を穢し、蔑み、嬲る事でしか自身のアイデンティティを守る事は出来なかったのだ。
情けない話なのかもしれないが僕という人間はどうしようもなく弱い。
それこそ少し自分の信条が揺らいでしまった位で何もかもかなぐり捨てて、そのまま書置きだけ残して地方の管理世界に逃げてしまうほどに軟く、脆く、弱いのだ。
だからこそ僕は自分の嬲る存在に焦がれた。
自身が痛めつけられる事で少しでもこの気持ちが楽になるのなら少しでも多くの痛みに僕は塗れていたかった。
そしてもしも目の前の彼女が……どういう訳かこんな自分を態々探し出し、訪ねてさえ来たリーゼロッテという存在が僕に苦痛を齎すというのなら僕は甘んじる事無く、その痛みを受け入れてしまいたかった。
それで少しでも彼女や僕を想っていてくれた人の気が晴れるなら……僕の心情は既に決まっていた。

でもリーゼロッテは何時まで経っても拳を振り上げる事はおろか、罵倒の一つを浴びせようともしては来なかった。
代わりに送られてくるのは一目で侮蔑と分かる冷え切った視線と、抑制しきれずに漏れ出した身に余るほどの憤怒と憎悪。
凡そ自分が可愛がった分と同じか、それ以上のものを彼女は胸の内に込上げさせていたのだろう。
沈黙が再び僕達の間に流れ、お互いの心臓の音すらも聞こえてきそうな程の静寂がお互いの存在を包み込む。
僕から彼女に何か言葉を投げ掛ける心算は無い。
どうせ今更何を言った処で言い訳にしかならないだろうから。
だけど彼女は僕に山ほど言いたい事があった筈だ。
侮蔑、罵倒、説教、悪口、戯言……おはようからお休みまで喋り続けても喋りきれないほどの鬱憤が彼女の胸の内には込上げていただろうから。
しかし、どうしてもお互い言葉を掛け合うことは無い……今更何を話したところでお互いがお互い時間の浪費にしかならないという事をよく熟知していたからだ。
そして此処でようやく永劫に続くかと想われた沈黙が晴れ、リーゼロッテが行動を起した。
僕の足元から凡そ数センチ横、少し身を屈めれば取れるような位置に見慣れない茶色の封筒を投げ寄越したのだ。
突然の事に眉間に皺を寄せ困惑する僕、そんな僕の態度を気にも留めないといった風に「取れ」と命令口調で言い放つ彼女。
如何あっても拾うほか無いらしい、僕は彼女の態度からそんな風に頭の中で自身が取るべき行動を定め、携帯酒瓶を地面へと置くのと入れ替わりでその茶封筒を拾い上げるながら説明を求める為に彼女へと視線を投げ掛ける。
すると彼女は律儀にもそんな僕の態度を察してなのか、まだ口にも出していないのに淡々とその茶封筒の詳細を僕へと語りかけてくれたのだった。

「お父様からだよ。どういう訳かは知らないけれど、突然あんたの事を思い出して救済する気になったみたい。あんたの母さんからの推薦状も入ってる。機密文章閲覧用C級IDと単独行動及び単独捜査の許可証、それに失効した執務官としての免許は数日中に何とかするってさ」

「……二人は僕の事をどう言ってるって? 末代までの面汚しだって嘆いていたかい?」

「さぁて、ね。二人ともお忙しい身の上だ。少なくとも理由も言わず局を退職して一年も行方晦ませていた暇人を想うような余裕はないはずさね。それに、あんたにそんな事を話す義理が私にあるとは思えないんだけど」

「はっ、違いない。でもまぁ……その口振りなら元気そうだな。とりあえず当面は安心できるって解釈しとくよ」

そう思うなら勝手にそう思っていればいい、彼女から返ってきた言葉は存外冷たいものだった。
その言葉には一切感情が込められていなかった、ただただ冷淡に事実だけを彼女の言葉は僕へと紡ぎ続けるだけ。
あの感情の凹凸が人一倍激しかったリーゼロッテとは思えない程の変貌振りだ、僕は自分自身の事を完全に棚上げして素直にそんな風に感心していた。
時の流れは人を大きく変えるとよく言うが、まさか此処まで人格から雰囲気に至るまで激的に変化するとは流石の僕も思っても見なかった。
まあそれは彼女からしてみれば当然僕にも言えることで、寧ろ身姿から風貌に至るまで180°代わってしまった僕の方がその評価に当て嵌められるのが適当なのかもしれないのだけれど。
まあともあれ、これで漸く彼女が何でこんな辺鄙で寂れた場所に足を運んでまで僕の元を訪ねて来たのか理解することが出来た。
今はとりあえず目の前で彼女の口から伝えられた事だけに頭を回すことにしよう、僕は彼女から渡された茶封筒を小脇に抱え、二、三度首を捻って骨を鳴らしながらゆっくりと自分の意識を濁りきった思考の沼へと沈めていくのだった。

簡単に今の現状を評するならばリーゼロッテは僕に局に戻って来いと言ってきている、と解釈するのが適切なのだろう。
まあ正確に言えば彼女が、では無く彼女のバックに付いている人間がという事になるんだろうが……正直言って僕にとってはそんな些細な事はどうでもよかった。
何せどちらにせよ、勘潜った所で今更こんな僕に局に戻って来いという奇妙な御達しの内容に変化があると言う訳でも無いからだ。
彼女の言う通り、何故今頃になって彼らがこんな僕を救おうと思ったのか僕には分からない。
彼らの情報網をもってすれば今の僕がどんな状態なのかなんて事くらい直ぐに解った筈だし、それを踏まえた上で僕を改めて引っ張るメリットが何処にも見当たらないからだ。
何も事情を語ること無く「一身上の都合」だけで退職理由を済ませただけでは飽き足らず、更には犯罪者御用達の酒場に抱えられているような身の上だ。
逮捕するなり、取調べをするなりの理由には十分なのだとしても態々自分の恥を晒してまで庇われるような価値なんて僕には無い筈だ。
だからこそ分からない、彼らが一体何の為に自分を拾い上げようとしてくれているのか理解する事が出来ない。
それこそ不気味さで背筋に冷たいものが走るほどに……僕は手の内の茶封筒を弄びつつ、そんな事を頭の中で考えながら不可思議な現状に頭を悩ませ続けるのだった。

そもそも、今更そんな事を言われたところで僕は局に戻る気なんて微塵も無かった。
実際この身はお世辞にも真っ当と言えたような品物ではないし、その上叩けば埃が出てきてしまうほどに穢れてしまっている。
加えて僕は事実上ミッドチルダを追放させられた身だ。
あくまでも法的な手続きや圧力によって執られた処置ではなく、一個人から言い渡されただけに過ぎないのだが……戻れば僕ではなく僕の周りの人間に危害が及ぶ。
そして僕に戻ってくるなと言ってきた人物は赤子の手を捻るよりも簡単に僕の姿を見つけられ、尚且つ迅速にその報復を加えられるだけの実力を有している。
一個人でどうこう出来る様な相手でない以上、僕は僕自身と周りの人間を守る為にその言いつけを護らなければならないのだ。

それに今更どの面を提げて良いのかさえ、僕には見当もつかなかった。
この際だから母さんやグレアム提督の事は置いておくとしよう。
目の前にいるリーゼロッテやもう一人の師匠分が抑えきれないほどの怒りを抱えているであろう事や、今まで自分を支えてくれた人達の期待を丸侭全て裏切ってしまったという事も今更どうしようもないのだから仕方が無いと諦められる。
だが、ミッドチルダにはこの命を投げ捨ててでも護りたい命がある。
色々と倒錯もあったし、腐れ縁だと割り切ろうとした事だって一度や二度の事ではない。
ましてやその人物と……自分の姉貴分であった”彼女“と恋仲と呼ばれてもおかしくないような関係に発展するなんて僕自身今でも信じられない位だ。
だけどその結末は如何あれ僕は確かに彼女を好いていたし、未練がましい事この上なくはあるが今でもその気持ちは揺らいではいない。
この命に代えてでも護りたかった”彼女”という存在……そんな彼女に今のこんな自分を晒す事だけは僕にはどうしても出来なかったのだ。
見捨てられても蔑まれても文句の言えない立場にあるというのに、何とも勝手な話だと自分自身でも思った。
でも、怖かった……唯一最後まで自分を信じてくれた人物が自分を見放すかもしれないというその現実が僕にはどうしようもなく怖かったんだ。
一度逃げ出したこの身の上ならもう一度逃げ出してしまった所で大した変わりなど無い。
僕は再びそんなネガティブな思考で頭を満たし、もう自分は余程駄目な野郎に成り下がってしまったんだなと思いながら、ゆっくりと自分の胸中に込上げてくる思いを言葉に紡ごうとして……其処で一旦言葉を噤んだ。
なんてことは無い、僕が言葉を紡ぐよりも速くリーゼロッテの方が言葉を吐き捨ててきたのだ。
その言葉は何処までも重く、何処までも冷淡で……それでいて何処までも悲しそうな物だった事を僕はよく覚えている。
だけどこの時の僕はそんな彼女の心境も悟れぬまま、放たれた言葉を禄に考えもせずに投げ遣りな態度を取ってしまったのだった。

「……今、局では深刻なまでに人材が不足してる。それこそ、表舞台に立たずに仕事をするような派閥は民間の企業の助けを借りなきゃ碌に立ち回ることも出来ないほどにね。そこで、どういう訳かあんたの名前が浮かんできたんだよクロスケ。程よく評判が最悪で、そこそこ実力もあって……例え切って捨てたとしても大して心の痛まないクロノ・ハラオウンっていう男の名前が、ね。幸いあんたは事件のショックで永らく“休職中”だったし、物好きな連中がその背中を押してくれもしてる。何で皆してそうまであんたの肩を持つのかは知らないけど、御蔭で私がこんな悪党の吹き溜まりにまで使いっ走りだよ。ちょっとは感謝して欲しいもんさね、勿論、私を含めてね」

「別に僕が頼んだ訳じゃない。それに今の僕はクロノ・ハーヴェイだ。大層な評価を貰っておいて申し訳ないが、変に期待を掛けるって言うなら人違いで通させてもらうよ。もうごたごたした事に巻き込まれるのはうんざりなんだ。それにこんな物を貰った所で僕は……」

「そう、なら安心したよ。それなら遠慮なく私も自分の意見が云えるってもんさ。その封筒は何処へなりと捨てな、クロスケ。私は今更あんたのような人間に局に戻ってきて欲しくは無い、迷惑なんだよ。思いの他此処はアンタに似合ってるみたいだし、あんたがそうやって錆びついていく様を見るのは結構楽しいもんだしね。まったく……あのクライド君の息子とは思えないよ。冥府の川の向こう側できっと泣いてる事だろうさ」

「……そう、同感だ。僕のような糞っ垂れな野郎は間違っても法の番人に戻るべきじゃない。此処でこうやって物が腐っていくようにゆっくりと過去の自分を忘れながら、地を這い蹲ってくたばるのがお似合いだろうさ」

くくくっ、と自嘲気味に口元を吊り上げながら僕はリーゼロッテに笑い掛ける。
殴るっていうのならいっそ一思いに殴ってくれた方がこっちも気が楽になる。
だからこそ僕はこんな風に挑発的な態度を取り続け、一刻も早く彼女が苛立つ様に煽る事を止めなかった。
だけど彼女から拳が振ってくる事は無い。
それどころか、先ほどから向け続けられていた突き刺さんばかりの視線さえ彼女は僕から遠ざけてしまっていた。
もう一刻も早くこんな僕から遠ざかりたいのか、それとも直視しているのさえ嫌になったのか……はたまたその両方なのか。
僕は彼女ではないから、彼女が今どんな心境にあるのかを正確に窺い知る事は出来ない。
だけど十中八九こんな物であろうという理由を考える事なら、こんな僕にでも幾らだって出来た。
でも、頭に浮かんでくるどの考えも正直これがそうだと確信付けられるような手応えは無かった。
そのどれもが正解のようで、どうもしっくりと来ないもやもやした違和感がどうしても残ってしまう。
今更こんな事を考えた所でどうなる訳でもないのに、僕は背を向けて遠ざかっていくリーゼロッテの背中を見つめながらそんな風に思いつつも、解決のしようの無い疑問に頭を悩ませ続けるのだった。

しかしそんな僕を他所にリーゼロッテはエンジンを吹かしっぱなしのままにしてある公用車の前で一度立ち止まると、そのままそんなどうでもいいような思考が一瞬にして消し飛ぶような単語を突然口に出して呟いてきた。
それは今僕が一番聞きたくない言葉であり、一番会いたくない人物の名前でもあった。
何故突然リーゼロッテがそんな言葉を口にしたのかは分からない。
正直“解った”としても“分かり”たくはなかった。
自慢じゃないがこの地獄の最果てのような街で用心棒なんていうような職業をしていれば、嫌でも単語だけでその人物が何を言いたいのか分かるようになってくる。
例えそれが主語も動詞も無いただの単語や人名だとしても、そのたった一言だけでこの街にまた一つ新しい柘榴の花を咲かせるのだと窺い知るような機会がこの周辺には幾らでも存在していたからだ。
花代をくすねて見せしめにされる間抜け、聞きたくも無い機密をうっかり常客から聞いてしまった高級売春婦、不必要に犯罪組織のテリトリーを荒し回って粋がるチンピラ……その他エトセトラエトセトラ。
凡そこの街で人の名前が囁かれた後に断末魔が聞こえてこなかった日など無かったくらい、この町は血と暴力に満ち溢れていた。
そしてだからこそ、彼女が突然呟いた“彼女”の名前に僕は嫌な予感がしてならなかった。
当然ミッドチルダに居る筈の彼女にこの街の道理が当て嵌まる筈は無いのは分かっていたし、そもそもリーゼロッテのような正義感が人の形をして歩いている人間からの言葉に僕が考えているような事柄が含まれている筈が無いことも重々承知していた。
でも、だからこそ……そんな微塵も可能性が無いと言えるからこそ余計に不信だった。
何か途轍もないほどの嫌な予感が全身を這うような、それでいて不安という名の炎が一年振りに燈ったような感覚が身体中を駆け巡り、腐り落ちていた筈の懐疑心を胸の内に浮き彫りにさせてくる。
一体何がどうなったというのか……表情を強張らせた僕がそんな感覚に捉われながら押し黙っていると、リーゼロッテはそんな名前に続く言葉を口元から零し、まるで拒絶するように僕へと語りかけてきたのだった。

「やっぱり、その様子からしてまだ引き摺ってたんだね。落魄れたあんたの現状を知って嫌わなかったのはあの娘だけだった。実の母親でさえ呆れて物も言えなかったっていうのにねぇ……お優しい事だよ、まったく。でも、もう忘れな。これが恐らく最後の忠告になるんだろうけど……あんたにしろあの娘にしろお互い全部綺麗さっぱり忘れちまった方が互いの為さね。あんたは誰に気負う事もなく奈落の底へと落ちられるし、あの娘はあの娘で真っ当で輝かしい人生を歩んで行ける。あんたも本当にあの娘を思っているって言うのなら……自分がなにを如何選択すればいいのか分かるでしょ?」

「……彼女は今如何してる?」

「あんたの知った事じゃないさね……って言おうと思ったけど、最後の情けだと思って教えておくよ。あの娘は幸せだ。あんたよりもよっぽど速く昇進の道を着々と歩んでるよ。何でも陸の高官に随分と気に入られたらしくてね、二年か三年くらいキャリアを積めば立派なエリートの仲間入りって奴だ。あぁ……そういえば、だ。あんたの名を出してきた奴って言うのもその高官なんだよ。自分のお気に入りの局員の恋人を哀れに思ったのか如何なのかは知らないけどね。感謝すべきだよ、あんたは。まぁ……あんたにはもう何の関係も無い事だろうけどね」

「なんっ……だと……?」

リーゼロッテの言葉を聞いた途端、僕は金槌で思いっきり頭を殴られたかのような強い衝撃を頭に覚えていた。
嫌な予感っていうのは大概外れる事は無いというが、まさか此処まで的確に当たるとは思いもみなかったのだ。
陸の高官、そんな言葉が僕の頭の中で反響し、過去の記憶を呼び覚ませてくる。
それは今より丁度一年前、ミッドチルダを去らねばならなかったあの日の記憶だ。
忘れたくとも忘れられない、僕が全てを失いつくした時の……どうしようもない記憶だ。
全ての発端はあの次期陸の最高指導者に目されているとかいう胡散臭い本局の重鎮の一言から始まった。

奴は面倒を嫌っていた、そしてそれと同じくらいに僕や僕に順ずる厄介者を自分の傍から排除したくて堪らなかった。
だからこそ奴はまず多額の金を封筒に入れて僕のプライベートルームへと放り込み、当時関っていたとある事件から手を引けと要求してきたのだ。
当然非公式にしろ上からの命令にノーと答える訳にはいかなかった、だから僕は直後に掛かってきた電話の時にこう返事をしたのだ……「ノー」と。
あの時の僕は若かった、そしてそれと同じくらいどうしようもない愚か者で底なしの馬鹿だった。
誰になんと言われようとも自分に与えられた事は最後まで遣り通す、そんな正義馬鹿が一つ覚えのように唱える言葉を僕は口にしてしまったのだ。
そしてその結果、僕以外にこの件に関わっていた人間が皆死ぬ事になった。
とは言ってもその事件に関わっていた人間はそれほど多いという訳ではない。
精々民間協力者が一人に現場担当の上司が一人という極少数の犠牲だった……でも、そのどちらもが僕の顔見知りで、尚且つ毎日顔を合わせるような親密な関係を築いていた人達だった。
そう……僕は愚かにも奴の忠告を聞かなかったばかりに、一生消えないであろう人殺しという烙印をこの身に刻む事になったのだ。

そして奴は最後の最後に僕にこう言ってきた。
「今すぐにミッドチルダの地を去れ、でなければ君自身は勿論、君に関わりを持つ全ての人間に災厄が降り注ぐ事になるだろう」と。
俄には信じがたい話だったが、既に知り合いが二人も自分の選択のミスで死んでしまっている以上僕は従わざるを得なかった。
それに奴は別れ際に先ほどのリーゼロッテと同じように”彼女”の名を呟きながら去っていった。
此処で僕がまた選択を誤れば今度は”彼女“に危害が及ぶ事にもなりかねない、それを悟ってしまっていた以上僕に残された選択肢はたった一つしかなかったのだ。

だが、どうやら奴はそれだけでは飽き足らなかったようだった。
今更こんな僕に何をさせたいのかは知らないが、“彼女”を自分の傍らに置いてまで奴はこうして僕に局に戻る事を強制してきている。
これは警告だ、僕は瞬時に奴が何を考えているのかを悟っていた。
元々唯の一般局員である“彼女”を奴が目に掛ける理由なんて本来は無い訳だし、名指しで指名してきている所から見ても何か碌でもないことを企んでいる事は明白だったからだ。
何処まで僕の人生を弄べば気が済むんだ、僕が不意に自分の胸中に只ならぬ怒りが込上げてくるのを感じていた。
怒りなんて遠の昔に忘れていた感情だと思っていた。
だけど彼女と奴の顔が交互に頭の中を過ぎった時に芽生えた感情は……確かに抑えきれないほどの明確な憎悪だった。

今すぐにでも八つ裂きにしてやりたい、そんな感情が爆発したかのように頭の中を埋め尽くし、冷静な判断力を失わせてくる。
でも、此処で選択を誤れば今度こそ僕は本当の意味で何もかも失い尽くしてしまう事にもなりかねないのもまた事実……彼女の命を保障させる為には僕はどうしてもこの申し出を受けざるを得ないのだ。
悔しさと惨めさ、そして従うしか選択肢が無い自分の無力さに思わず泣きそうになる。
僕の為に尽くしてくれた彼女が、僕を支え続けてくれた彼女が、僕の事を愛し、また愛させてくれた彼女が……僕の一言で死んでしまうかもしれないのだ。
そんな重過ぎる責任をこれ以上背負うなんてとてもじゃないけれど僕には出来なかった。
だけど奴は恐らくは待ってはくれないだろう。
僕がこうやって渋って判断を遅らせているこの瞬間にも奴は”彼女“の喉元に刃を突き立てるかもしれないのだ。
判断を下すしかない、今度こそ自分が選ばなければならない道を選択するしかない。
僕は全身の毛穴から滲み出てくる冷や汗に急かされながらなるべく冷静な態度を装いつつ、今にも車に乗り込もうとしているリーゼロッテへと言葉を投げ掛けたのだった。

「なぁ、リーゼロッテ」

「んっ……なんだい? これ以上私もあんたと話してたくは無いんだけどね。まぁ、クライド君に免じて手短になら答えてあげるよ」

「……結局、この茶封筒の中身は何なんだ?」

「あぁ、なんだ。そんなことかい……。つまんない身内の手柄争いだよ。薬品漬けでお脳のイカれた研究者から、御用達の機械仕掛けのダッチワイフを奪う手柄を他の捜査官から横取りしようって仕事。真っ当な人間ならまず受け持たないような腐った任務だし、正規の連中なら半日で終わらせられる。まぁ……今のあんたじゃあ逆立ちしたって勤まらないとは思うけど、ね」

そう言い残すとリーゼロッテは最後に僕の姿を一睨みし、そのまま車に乗り込んで僕の元を去っていった。
だけど僕の気持ちが休まる事は無い、寧ろ一層ざわつくばかりだった。
自棄になって茶封筒を床へと叩きつけ、携帯酒瓶の中身を一気飲みしてみてもその気持ちは一向に晴れてはくれない。
酔えば酔うほどに苛々が募り、自暴自棄になればなるほど自分自身の存在が醜くて生きている事すら嫌になってくる。
もうこのままいっそ自殺でもしてしまえば楽になれるのだろうか、そんな風な弱気な考えが津波のように頭の中に押し寄せてくる。
だがどれだけ現実逃避をした所で従わなければ彼女が死に、最終的には取り返しのつかない事態に発展する事を考えればそんな考えに流される訳にもいかなかった。

不意に僕は空をそっと見上げてみる。
其処にはあの日と同じ生憎の鈍色の空が広がっていて、どういう因果かは知らないが……一年前のあの日を再現するように気がついた時には止め処ない土砂降りの雨が降り出してきていた。
その雨はまるで僕を嘲笑うかのように冷たく、そして無力で腐った自分を洗い流してくるかのように酷く強い物だった。
そしてそんな雨の様子を見ていると一年分溜まった穢れと疲れが不意にドッと溢れ出てきて、身体中にその重みを駆け巡らせてくるような気がした。
もう僕は今立っている此処から白の世界へ進む事も、黒の世界へ落ちる事も出来ない。
そのどちらでも無い灰色の道を延々と、それも奴の言いなりになって進むしかないのだ。
ならばせめてこの暗い雨の中では情けない自分を曝け出させてほしい。
僕はそんな風な想いを空へと募らせつつ、皺くちゃで草臥れたスーツを雨の滴で湿らせながら人気の無い街の中へとゆっくりと足を踏み出していく。
もう僕に逃げ場所なんか無い、そんな事を静かに頭の内に思い浮かべながら……。

そしてその日を境に僕は精神的なショックによる療養休職から移転という形で局へと復職し、個人捜査専門の部署へと配属される事になった。
とはいえこの個人捜査の部署というのが随分とキナ臭い処で……実質何処にも拠点を持たず、本当の意味で個人捜査をしながら月の末に支給される経費と仕事の内容の記された命令書だけを頼りに各地を転々としていくという得体の知れないものだった。
だから僕は自分の上司である人間も同僚である人間も存じてはいない、というかそもそもそんな物が存在しているかどうかさえも定かではなかった。
だけど僕は何の疑問も持たないままその仕事に没頭し続けた。
最初に言い渡された違法製造の戦闘機人の摘発に横槍を入れて製造中だった型式番号01番と02番を上層部へと引き渡したという指令以外は大して大きな仕事も無かったし、周りからの非難を浴びようとも僕にはやらねばならなかったからだ。

酒も煙草も止められず、泥沼のような環境で綱渡りのような捜査をする事でしか自身の存在の意味すら見出せない僕が最後に引いた一線……それが”彼女”の生死だ。
それが保障されるのであれば僕はどんな卑怯な事だってするし、誰からの非難だって甘んじることなく受けてめるだけの覚悟もある。
何せこの身は穢れ爛れた物だ、今更一つや二つ名前に傷が出来た所で如何という事は無い。
そうして僕はそれからの毎日を卑しく生きてきた、そして恐らくは何時までもそうして溝川の中を転げまわるように汚泥に塗れていく事になるんだろう。
これで昔話は終わる……何も楽しくは無いし、何の抑揚も無いくだらないものだ。
恐らくは誰が聞いても失笑物の転落人生だろう、まるでドラマだと笑う奴もいるかもしれない。
でもそれが実際に自分を巻き込んで展開するとなったら話は別だ。
思い出すだけで情けなくて泣けてくる、泣けてくるのに涙一つ出はしない。
落魄れて腐って蔑まれて、それでも尚転がり続ける自分の一生……我ながら酷い物とは思いつつもそれが似合いだと分かっているから。
そして此処から、ようやく僕の“今”が動き出してくれたのだと確信して止まないから……。





時は流れ、意識は現在へと回帰する。
僕はこれで何度目になるのかすら分からない任務を何時ものように承り、それを密かに解決する為にとある管理外世界の日本という国に身を寄せていた。
上から言い渡された任務の内容はなんて事は無い家出人探し。
それも遺跡発掘を主な生業としている少数民族の子供を捕まえてそれを最寄の次元航行船に引き渡すだけの単純な任務だ。
早くすれば数日中、長く見積もっても数週間時間を掛ければ直ぐにでも解決できる程度の単純なお使いだと言っても良かったのかもしれない。
幸い宛がわれたセーフハウスは充実していたし、次の指令が下るまでは自由にして良いとの事だったから僕自身もそれほど深く物を考えず、休暇ついでに小さな面倒を片付ける程度のことにしか考えてはいなかった。

だが、いざ現地に乗り込んで良いって蓋を開けてみれば保護対象だった子供は既に無残な死を遂げており、その上現地では二十一個ものロストロギアが何も知らない現地人に猛威を振るっているというとんでもない状況だった。
セーフハウスであるマンションに備えられていたテレビでは連日被害者の名前が読み上げられ、被害者は軽症を負った人間も含めれば実に七人にも上る。
しかも、運の悪いことにこの世界……元恩師の出身世界でもある第97管理外世界では魔法という文化が微塵も発展してはいないと来ているのだから事実を知った時は思わず頭を抱えそうになった程だ。
表立って捜査が出来ない上に、下手にロストロギアがこの世界のお偉方に出回りでもしたらそれこそ大問題になる。
挙句その事を上層部に伝えたら伝えたで任務の内容を死体の回収とロストロギアによって引き起こされる事件を早期的に解決しろと命令が変る始末だ。
幾ら大概のことは口を噤んで任を請け負う僕でもこれは少し度合いがきつ過ぎる、せめて応援の人間を呼んでくれなければ対処のしようが無いというが正直な僕の心情だった。

しかし、幾ら上役に取り合ってみたところでその返答は何時も決まって同じ。
「此方としても善処はしたいが回せる人材が出払ってしまっている。しばらくは其方の方で何とか上手く立ち回ってくれ」という一言だけだ。
ふざけるな、と何度返答したことかもう僕自身もよく覚えてはいない。
事態は既に捜査官一人がどうこう出来るような物じゃないし、局とは違う第二、第三の人間がロストロギアを回収する為に動いているという事も耳に入ってきている。
火事場泥棒って言うんなら僕も似たようなものなのかもしれないが、性質が悪いことにその内のどちらかは結界も張らずに魔法を行使してすらいる。
もしもこれがこの世界の報道機関に漏れでもしたらそれこそこの国、いや……この世界全体の基盤を根元から揺るがしかねない事態に発展する事だってありえない話しじゃない。
おまけに当初目標と指定されていた少数民族の少年『ユーノ・スクライア』の遺体はこの世界の民警によって回収されてしまった。
もはや遺族に死に顔を見せる事すらままならなくなってしまった、そう考えると途端に自分の無力さを思い知らされるような気がして……結局自分は昔からちっとも変ってはいないのだなという事を改めて感じさせられたのだった。

「……無様なもんだな。我ながら」

ソファーに深く腰掛け、口元で煙る紙巻の煙草を指で摘みながら僕は力なくそんな言葉を肺を満たす紫煙と共に宙へと吐き捨てた。
脂臭い煙が鼻腔を刺激し、頭がスーッと透き通っていくような感覚と共に口から吐き出した紫煙が天井へと昇っていく。
確かマイルドセブンとかいう現地メーカーのアイスブルー・スーパーライトとか言う名前の煙草だった筈だ。
管理外世界の煙草っていうのは大概期待はずれな物が多く、質が最悪で碌に火がつかないのもそう稀な話しではないのだが……この世界の物は殆ど別格だと言っても良かった。
葉の具合も悪くは無いし、調合や製造の過程も徹底した品質管理が整っていて寸分の狂いも無い。
おまけに清潔感があり、味も香りも比較的上品な物であると言ってもいい。
もしかしたら下手な管理世界製の物よりも上質なのかもしれない、それが自身に慰撫を齎す手の内の紙巻に対する僕の評価だった。

とはいえ、この世界では二十歳を過ぎないと吸うことはおろか購入すら非合法であるらしいのだが……どうせセーフハウス内でしか吸う機会は無いし、真面目にやるには気兼ねの多過ぎる仕事を抱える身の上なのだからこれくらいは見逃して欲しいものだ。
まあ元々僕はミッドチルダでも非合法とされるような時から酒も煙草も散々やってきた訳だし、今更になってこの世界の道理に合わせるというのもおかしな話というものだろう。
それに僕から酒と煙草を取ったら本当に何もかも円滑に立ち回る事が出来なくなってしまう。
高性能なスポーツカーでも燃料が切れたら走れないように、僕もこうやって嗜好品で気を紛らわさなくてはまともに目の前の現実を直視することすら出来なくなってしまう。
今更真面目ぶったって御法に触れたことは一度や二度の事ではない、だったらいっそ開き直ってしまった方が幾分か気も楽になるというものだろう。

だが、何時までも何時までもこうして余韻に浸っているという訳にもいかないというのもまた避けようも無い事実だった。
任務の内容が変更されてからもう何日もの時間が経過してしまっていると言うのに、此方の成果はといえばばら撒かれたロストロギアだと思わしきエネルギー結晶体を一つ回収出来ただけに留まっている。
唯でさえ二十一個もあるというのにこんなペースで集めていては、とてもじゃないが被害が拡大する前に事態を収拾するなんて不可能だ。
しかも性質が悪いことにどうやらこのロストロギアは生物や植物に寄生して暴走する危険性も孕んでいる。
現に僕が今持っている物を回収しようとした時は植物に寄生していたし、下手をすればそのまま取り込まれて養分にされてしまうほどに凶暴な物だった。
あんな物が後二十個近く暴れまわっているのでは最低でもBランク以上の魔導師で編成された熟練の一個小隊位なければ迅速なる解決など夢のまた夢という物だろう。
所詮僕一個人の実力なんてこんなもの、正直な本音を言えばお手上げ以外の言葉が僕の頭の中に浮かんでくる事は皆無だった。

「まぁ……だからと言って投げ出す訳にもいかない、か」

しかし解決出来る人員が僕しかおらず、それで食い扶持を稼いでいる以上は何もしない訳にもいかないだろう。
そんな風に考えながら僕は未だに煙る短い煙草をテーブルの上のガラス製の灰皿へと押し付けてもみ消し、新たな思考に意識を向けていく。
外部勢力のことに関しては僕の管轄外だし、逮捕しようと思ったところで礼状も権利も無いのだからこの世界の住民に危害が及ばない限りは放っておいても別段構いはしない。
そもそも僕の主な仕事は裏工作であって次元連絡船を砲撃して物を掠め取ろうとした重犯罪者を捕まえることでもなければ、そんな人間に便乗して火事場泥棒を遣らかそうとしているこそ泥を引っ立てる事でもない。
給料以外の仕事で骨を折るのは馬鹿らしいし、そうやって正義感の一つ覚えで突っ走った末路がどういうようになるのか身に染みて理解もしている。
これ以上厄介ごとを自ら招きこんで自滅するなんていうような事にだけは何が何でも避けなければならない。
それが分かっているからこそ、僕は与えられた仕事だけに順応して全力を注がなければならない。
やるべき事はたった一つ、そんな風に答えを一つに絞り込めるからこそ僕は何の迷いも無くもう一度事に身を投げようと思う事が出来るのだ。

それにこの街はあの腐った悪党の吹き溜まりのように何時死んでもおかしくない様な人間ばかりで溢れかえっているという訳じゃない。
そんな風に僕は頭の中で今までこの世界で自分が出会ってきた人間の事を思い出しながらカーテンの掛かった窓の方へと近寄って行き、そのままカーテンを腕で払って外の様子に視線を移す。
其処に広がるのは何処までも広がる夜景、凡そミッドチルダでもあの最先端の混沌の都でも大して変らないような景色が其処には広がっていた。
だが、似たような景色であっても住んでいる人間の質には雲泥の差があった。
別に人の命に優劣をつけているという訳ではないが、少なくとも僕が住んでいたあの溝川の底のような場所では見ず知らずの人間の為に手を合わせるような子供はいなかった。

それにこの街の住人には比較的お人よしも多い。
この世界に着たばかりの頃に色々と迷っていた僕に声を掛けてくれたくすんだ金髪の女性の事や、立ち寄った図書館で色々と面倒を見てくれた車椅子の女の子の事などから考えてもそれは明らかだった。
そんな人達をむざむざ見殺しにしていい道理など何処にも無い、今にも消えてしまいそうな微弱な正義感ではあるのだろうが、それでも僕はその気持ちに偽りが無いと言い切ることが出来た。
もう選択を誤って重荷を背負う事になるのは御免だ、そんな自己満足を密かに抱えている自分の存在に気がついてしまっているから……。

「―――――何にしても、もう過ちは繰り返さないさ。二度と、な」

カーテンを元に戻し、机の上からステンレス合金製のジッポライターと煙草の箱をひったくった僕はそれ以上何も語る事なく玄関の方へと歩を進ませていく。
守護者を気取る訳ではないが、この街にはまだこの先も正しく生きていかねばならない命がある。
真直ぐに、そして誠実に生き続けて……幸せを手にしなければならない山ほどの命が。
僕のような人間の安い命ならまだしも、彼らのような人間が犠牲になるようなことだけはどうしても許容する事は出来ない。
だからこそ僕は動く、例えその努力が真っ赤に焼けた石に滴を垂らすような行いであったのだとしても僕はこの命枯れ果てるまで動き続ける。
もうこれ以上、僕の選択の誤りによって誰も傷付けたくないから……。
僕は手の内の煙草とライターをポケットへとしまい、再び夜の街へと繰り出していくのだ。
あの日と同じ、雨の滴が滴る鈍色に染まった空の下で。
安っぽいビニール傘を片手に持ちながら、ゆっくりと……ゆっくりと……。





補足
まあ本当にこんな事どうでもいいのかもしれませんが一応補足です。

名前:マイルドセブン・アイスブルー・スーパーライト・ボックス
値段:300~350円(2001~2003年ごろ)
本数:20本
タール:6mg
ニコチン:0.4mg

一口メモ
既に販売を中止されてしまったマイルドセブンの派生商品。
作者は煙草を吸わないので売れ行きが芳しくなかったのか、味や香りが悪かったのかは分かりませんが友人曰く通好みのものだったとか。
ちなみに未成年の飲酒、喫煙は法律によって厳しく制限されています。
良い子も悪い子も絶対に真似をしないようにお願いいたします。


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