丈夫な毛皮の小妖怪
封山 毛玉 -Huzan Kedama
能力:異世界に偏在する程度の能力
危険度:中
人間友好度:極低
主な活動場所:ほとんどの世界、如何なる場所でも
妖力は低いが能力故にどこにでも出没する。珍しく人の形をしていない、白い毛
皮の妖怪である。
知能は低く会話もほとんどせず、問答無用で近くにいる生き物を丸呑みにする。
普段は闇夜に紛れて転がって移動し、昼間は暗がりでじっとしている。
体温は低く、傍目には生き物に見えないので、油断して近付いて食べられてしま
うケースも多い。
厄介な妖怪である。
肉食だが、空腹時は草も食べるので好みの問題のようだ。
◆目撃報告例◆
・いつの間にか寮の部屋に転がってた。つついたら食べられそうになったから浮
遊術で外に放り出したよ。
(魔法学校の生徒)
下手に手を出してはいけない。
・川原で犬の散歩してたんだけど、変な毛玉が坂を転がって川に落ちたんだ。そ
のまま流されて行ったけど、あれは何だったんだ?
(匿名)
あまり移動は得意ではないようだ。
・あいつのせいで死にかけた。でもお陰で面白い奴等と会えたからなぁ……
(白雪)
胃袋に入ってから上手く助かれば異世界に移動できる。運が良かった。
◆対策◆
力は小妖怪か下手を打てば妖精並なので、恐れるに足りない。怪しい毛玉を見ても無視して通り過ぎればまず安心である。
もしも手違いで食べられてしまった場合は、胃液で溶かされる前に暴れてみると良い。
毛玉の毛皮は外側は丈夫だが内側は弱い。刃物があれば案外簡単に脱出できるだろう。
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妖森の妖怪大将
剛鬼 -Gouki
能力:土を操る程度の能力
危険度:中
人間友好度:低
主な活動場所:妖の森周辺
半纏に袴姿、茶髪に一本角を生やした大妖怪。昼夜構わず時折村に現れ、人をさらおうとする(※1)。
短絡思考の単純な性格をした妖怪で、自己中心的。自分が楽しければ良いと普段から言っている。
また典型的な鬼の気質も持ち合わせており、正面からの力技の多用、約束を破らない(※2)、酒好きなど、本性に忠実である。
配下の妖怪に酒を造らせ、いつも酒瓶を手放さない。差し出されれば何でも飲むので、酒の種類にこだわりはないようだ。
酒が不足してくると自分も酒造りを手伝う。
◆目撃報告例◆
・朝森の外れに出かけたら、岩の上で大の字になって寝ていた。
(匿名)
月見酒でもしていたのだろうか。
・紅い衣の妖怪を追いかけ回していた。
(匿名)
強い妖怪や人間と闘いたがるのも鬼の特徴だ。
・喰われかけたが、謎かけを仕掛けて勝ったら見逃してくれた。悔しそうだった。
(匿名)
頭は良く無いので、謎かけ勝負で正解である。力勝負では勝目は無い。
◆対策◆
襲われた時に喋る余裕があれば、白雪の名前を出すと良い。大概約束を思い出して引いて行く。
酒があるなら差し出せば上機嫌になって襲うのを忘れる。この時に力仕事を頼むと手伝ってくれる事が多い。
また何かの事故で決闘を仕掛けられたら、頭脳戦に持ち込む事を勧める。まず負けないだろう。勝てば見逃してくれる。
何にせよ怒らせると危険だが、対処のしやすい妖怪である。
※1 大抵は白雪に止められる。
※2 覚えていれば。
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人心狂わせる夢幻の瞳
楽浪見 あやめ -Rakuroumi Ayame
能力:惑わす程度の能力
危険度:極高
人間友好度:極低
主な活動場所:人のいる場所
人間の心を惑わせ、互い争わせる狡猾な妖怪。眠た気に半分閉じられた瞳は底知れない光を湛える。
人のいる場所にふらりと現れては、人心を惑わせ争いを起こし、自分は高見の見物を決め込む。
同士討ちで死んだ人間の屍は綺麗に食べ尽くし、彼女が通った村、町には廃墟しか残らない。
しかし特別人間が憎い訳では無く、食欲を満たしたいだけのようだ。動物や妖怪に対しては食欲が沸かないので、至って友好的である。満腹時には帽子の中に飼っている兎と戯れている。
◆目撃報告例◆
・竹林の側で兎を枕にして昼寝をしていた。気持ち良さそうに寝ていたよ。
(炭焼き職人)
起こさなくて正解である。目が覚めていたらその場で食べられただろう。
・行商に出て帰ってきたら、村から人が消えていた。
(村の生き残り)
彼女は食糧を無駄にしない。血の一滴まで綺麗に舐めとるので一見神隠しに見える。
・目が合ったけど食べられなかった。なぜだろう?
(匿名)
満腹で眠る直前だったと思われる。
◆対策◆
目と心を惑わされ、ほとんどの場合真正面に居ても気付けない。
人のいる所にはどこにでも現れるので、遭遇を避けるのは難しい。天災に近いものがある。年齢の割に直接的な力は強くないものの、妖怪基準の話であり慰めにならない。
役に立つとは言い難いが、普段から心を強く持っていれば惑わせられず助かる……かも知れない。それ程危険な妖怪である。
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お茶目なドッペルゲンガー
煙霧 意捕-Enmu Idori
能力:相手の真似をする程度の能力
危険度:中
人間友好度:低
主な活動場所:妖怪の山
妖術を使って霧を出し、相手の姿を真似て驚かす妖怪。いつも誰かの姿を真似ているので正体は見られた事がない。
姿を真似て混乱させ、人間ならあわよくば食べようとしてくる。しかし詰めが甘く獲物を取り逃がす事が多い。反撃を受けて慌てる様子は人間臭く憎めない。
霧を出すのは真似をしきれない細部を誤魔化すためらしい。
◆目撃報告例◆
・山菜取りに行ったら急に霧が出てきた。不思議だったけど何も起こらなかった。
(匿名)
彼女は寝ても覚めても常に霧を出している。偶然睡眠中だったのだろう。
・霧の中で迷っていたら自分そっくりの人が近付いてきた。怖くなって逃げた。
(匿名)
霧の中で道が分かれば逃げ切れる。
・濃い霧で迷っとったが、親切な妖怪が麓まで送ってくれたんよ。やけに怯えとったが大丈夫かね。
(反物屋の老人)
白髪の人間は苦手らしい(※1)。
◆対策◆
彼女が出没する前には必ず霧がでるので、それを目安に山を降りるとよい。
万一霧に飲まれて迷ってしまったら、襲われる前にとにかく真直ぐ走ってみる事を勧める。運が良ければその内外に出られるだろう。
放っておくと少しずつ霧の範囲を広げるので定期的に退治してやる事も大切だ。
※1 白髪なら人間に限らない。
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信仰無き鬼の神
宿儺 百合姫-Sukuna Yurihime
能力:身を分ける程度の能力
危険度:高
人間友好度:中
主な活動場所:旧都
色男が多い男の鬼達に言い寄られ、しかし全て袖にした美貌を持つ古い鬼である。ほとんど髪に埋もれているが頭頂に短い角が一本生えている。
鬼にしてはこまやかな感性を持ち、毎日湯浴みを欠かさない。しかし宴会続きで入浴を怠っても珠の肌は変わらない、羨ましい体質の妖怪だ。
鬼でありながら神と呼ばれているものの信仰は無く、鬼の頭領の意味合いが強い。昔は妖怪の山を統べていたが、今は旧都で半分隠遁生活を送っている。
地霊殿に顔をだしたり鬼達の宴会に混じったり気ままに過ごしているが、一方で小競り合いの仲裁(※1)なども行っている。
酒好きで酒器にもこだわり、配下の鬼で気に入った者には地下で飼育している酒虫を利用した無限に酒が湧き出る杯や瓢箪を作る事があるらしい。
大雑把な部分も多々あるが基本的には面倒見の良い性格である。
だが人間に対しては冷淡な面を見せ、特に非力な者は家畜以下と見ている節がある。
◆目撃報告例◆
・怨霊と一緒に平然と温泉に入っていた。
(匿名)
彼女は永きを生きた大妖怪であり、並の妖や霊では影響を与えられない。
・店に酒を買いに来た事がある。砂金で支払っていった。
(酒屋の主人)
人里のルールは守っている。昔貯めた財宝が残っているらしく羽振りが良い。
・三日で服を仕立てないと食らうと脅された。間に合って良かった。
(呉服屋の菊)
彼女は人間の技術も認めてはいる。ただし利用するだけで感謝はしない。
◆対策◆
人里では人間を襲わないので間欠泉の付近で会わないように注意すれば良い。
もし会ってしまっても逃げてはいけない。彼女は勝負から逃げる者を最も嫌う。
正面から勝負をしてもまず負けて喰われるが、気概を認めて逃がしてくれる事もある。ほとんど運である。
間欠泉に用事がある時は姫百合の花を用意して贈り物にすると良い(※2)。しばらくは襲わないでいてくれるだろう。
※1 大体において理由も聞かず両成敗する。やはり鬼である。
※2 姫百合の花言葉は`強いから美しい´。
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人嫌いの魔女
マレフィ ノーレッジ-Malefi Knowledge
能力:土水火風を操る程度の能力
危険度:中
人間友好度:極低
主な活動場所:魔法の森
右目にモノクルをかけた紅魔館の魔女の先祖。リウマチを患っていて肉体労働は苦手。
また人付き合いが悪く、極一部の妖怪と魔法使い以外は相手にしない。
魔法薬精製を得意とする魔女。上手く頁を捲れないので本は好きでなく、魔法陣を書くのも不得手。その代わりに詠唱が抜群に速いらしい。
植物実験と称して森に魔法薬を散布し、化け物キノコの一大繁殖地に変えた経歴を持つ。
人嫌いが激しく、魔法の森の小屋からほとんど出ない。小屋の結界を越えて誰かが訪ねて来ても黙殺。いつも不機嫌。不機嫌が普通なのだろう。
◆目撃報告例◆
・大図書館でパチュリーと話してたぜ。二人並ぶとそっくりだな。
(霧雨魔理沙)
飛行も苦手なので空間転移で直接紅魔館内に移動する。遠い血縁なので似ている所もあるだろう。
・話し掛けたら無視されたわ。八つ裂きにしてやろうかしら。
(紅魔館の主)
何かの要因で気に入られなければ会話を成立させるのは難しい。
・魔法薬の原料を永琳に売り付けてた。あの交換レートはぼったくりじゃないかな……
(博麗白雪)
彼女は人付き合いが無いので金銭感覚が鈍い。
◆対策◆
そもそも遭遇する機会が滅多に無い。魔法の森の奥深くか紅魔館のどちらか以外で見掛ける事は無いだろう。
不幸な偶然が重なって会ってしまっても慌てる必要は無い。あちらはこちらに興味が無いので、話し掛けなければ危害を加えられる事は無い。
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執念の怨霊
マナ-Mana
能力:敵から逃げ切る程度の能力
危険度:極低
人間友好度:中
主な活動場所:間欠泉付近
昔自分の村を滅ぼされ、妖怪への復讐に生きた女の霊。死後も憎悪は衰えず怨霊となった。
妖怪は種族問わず憎んでいるが、今は仇の大妖怪のみを追っている。
生前は腕の良い退魔師だった。村々を放浪し、行く先々で妖怪を退治しつつ怨敵を探していたが、その仇の手により幻想郷へ連れ込まれた。
普段は冷静で丁寧な言動をとるが妖怪を前にすると敵意を隠さない荒っぽい言葉遣いになる。
永い間地底に封じられていたが、間欠泉と共に地上に出てきた。
人間にはある程度友好的で半霊や半獣は無視する。
しかし怨霊となった今、自らも退治される対象へ変貌した事には気付いていない。
◆目撃報告例◆
・間欠泉の辺りで狐の妖怪を追い回していた。
(匿名)
仇の妖怪の配下だろう。
・道に迷 った所 を家まで案 内をしても らったんだが、帰宅し てから悪寒 が止ま らな い。
(匿名)
彼女が親切心で行動したとしても、怨念の影響は免れない。不調が続くようなら御祓いを受ける事を推奨する。
・真っ昼間でもよくみかける。本当に怨霊だよな?
(匿名)
彼女は白玉楼の亡霊姫ほどではないものの、力の強い霊である。昼間に動くと疲れるが大事は無い、らしい。
◆対策◆
人間に対してはそれなりに親切なので危険は少ない。しかし幾ら友好的な霊であっても怨霊には違いなく、長時間近くにいれば悪寒や得体の知れない恐怖などを感じる。
健康的とは言い難いので近付くのはやめておいた方が良いだろう。
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探求する仙人
姑尊徊子-Koson Kaishi
能力:鍵や箱などを開ける程度の能力
危険度:中
人間友好度:中
主な活動場所:冥界
普段冥界に居るのは扉を閉める訓練をするためである。しかしその割りにはあまり練習風景は見掛けない。大抵知恵の輪を解いているかぼうっと虚空を見つめている。
腰に下げた鍵束はただの飾り。
頭は良いらしいがマイペースで会話の調子をとり難く、知恵を借りるのには苦労する。
師につかず自力で仙術を会得した才女であり、不老では無いが老化は非常に遅い。百年経っても容姿に目立つ変化が無い所から限り無く不老に近い存在であると推測できる。
魔法使いと同じく食事はいらない。周囲の霊力を体内に取り込んで生きているらしい(※1)。
◆目撃報告例◆
・博麗神社の境内でぼんやり立っていた。一月経ってもまだ同じ位置で立っていた。
(参拝客)
考え事をしている間は動かない。しかし話しかければ普通に返事をする。
・知恵の輪?ってヤツを借りたんだがさっぱりだ。一番簡単なものらしいんだが……
(匿名)
彼女が持っている知恵の輪はどれも難易度が非常に高い。自作のものもあるらしい。
・よく分からない問答の後、よく分からない内に腰の痛みが消えていた。
(大工の厳)
彼女の思考は読みにくい。受け答えの中の何かが琴線に触れたのだろう。
◆対策◆
基本的に冥界や無縁塚、三途の川など危険域ばかりに姿を現すので滅多に会う事は無いだろう。元は人間なので会っても対策は必要無い。
時折人里にも姿を現すが実になる会話は期待できない。医術も習得しているが使う事は稀だ。
特に益も無く、害も無い仙人である。
※1 俗に「霞を食っている」などと言う。
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最古の幻想
博麗 白雪 -Hakurei Shirayuki
能力:力を操る程度の能力
危険度:中
人間友好度:極高
主な活動場所:博麗神社
遥か昔、人間が誕生する前から生き続けていると噂される神。紅の衣を帯で締め、長い白髪を藍色の紐で縛り一つに纏めている。
全ての人、妖、神に友好的(※1)で、余程の事があっても殺生だけはしない(※2)。
博麗神社の祭神であり、幻想郷最強の存在であると言われている。何かの事情で力が半減しているにも関わらず妖怪の間では絶対に敵対したくない相手に真っ先に挙げられる。
幻想郷を覆う二つの結界にも深い関わりがあるらしい。
また彼女は能力故かその強大な力を完璧に制御しており、理不尽な理由で振りかざす事は無い。
巫女と共に幾度も人里や幻想郷全体の平和を守っており、信仰は高い。
◆目撃報告例◆
・この前神社の賽銭箱を覗いて笑ってたわ。賽銭が少ないのは私のせいじゃないわよ。
(博麗 霊夢)
信仰は高いのだから、立地を変えれば賽銭も増えると思うのだが。
・妖怪の山を見て遠い目をしていた。
(匿名)
何か思い入れがあるのだろうか。想像もつかない。
・茶葉を取りに行ったら倉庫で寝ていて驚いたよ。
(茶屋の店員)
稀にふらりと人里にやって来て無断で宿を借りる事もある。そういう時は強力な御札などを置き土産にしていくので(※3)文句を言いにくい。
◆対策◆
特に対策は要らず、むしろ益がある神なので見掛けたら話しかけてみると良い。
事情を話せば大概快く病気を治したり御祓いをしたりしてくれる。ただ頻繁に頼むと嫌な顔をするのでほどほどにしておくのが吉である。。
彼女に迂闊に手を出しトラウマを作った人間や妖怪は数知れない。普通に接していれば安全だが、絶対に怒らせてはいけない。
※1 極一部を除く月人は嫌っているらしい。
※2 つまり敵対した者は生き地獄を味わう。
※3 大抵は性能の高い護符を置いていく。非売品。