スペカ決闘法公布から数年経ったのだが、イマイチ普及率が低い。なんというかあれだ、コンビニ嫌いな御老人的理由で敬遠されている。
便利には便利だけど、従来のやり方の方がなんとなく安心。喰わず嫌いならぬやらず嫌い。いや嫌ってるってほどでもないか。一々決闘前にカード用意して景品決めて使用カード枚数決めて……とゴタゴタやるのが面倒臭いらしい。
別にどうしても決闘はスペカで行わないといけない訳じゃないからいいんだけど、余計な怪我や諍いを防ぐ為にも早めに受け入れて欲しい。
いつの間にか勘当されてた魔理沙とか、博麗の巫女である霊夢は割りと楽しそうに弾幕ばらまいてるんだけどねぇ。ままならないな。
「ふむ……妖怪達も大義名分が欲しいのでは」
「どういう意味?」
霊夢十三歳の初夏。私は神社に徊子を呼んでスペカ流行の策について相談した。
珍しく知恵の輪を弄っていない徊子は湯飲み片手に眠そうにしている。ひさしで日光が遮られ、影になった縁側は丁度良い涼しさだった。霊夢は妖怪退治に出かけているので神社には二人だけだ。
「白雪さんはほぼ全ての妖怪達に畏れられています。しかし妖怪達にしてみると唯々諾々とたった一柱の神に従うのは気に入らない」
「ふむ」
「白雪さんの公布したルールに大人しく従うのを癪に思っている妖怪も少なからずいると思います。口には出せないでしょうけど」
「つまり私が公布したものだから、という理由ではない何かがあれば妖怪はスペカを使い始めると見ていいんだよね?」
「はい。白雪さんに従っているのではない、というポーズを取れる理由を差し出せば普通に流行するはずです。ルール自体に問題はありません」
「なるほどねぇ。徊子冴えてる」
「いやぁ」
のほほんとした顔を変えず声だけで照れる徊子。
「で、どうすればいいと思う?」
「さあ?」
さあって……そこが重要なんだけど。
私が動くと駄目だよねぇ。裏から手を回してなんかあれをそうしてこうして……あれってなんだ?
んー……
あー……
うー……
……うー! レミリアッ! 紅魔郷!
「異変起こしてその解決にスペルカードルールを使ったらどうかな? 話題性あるし安全性も広まるし、異変とスペカは幻想郷の華って言うし」
「語呂が悪いです。そんな言葉は聞いた事ありませんが」
「今作ったから」
ナイスアイデアと自画自賛して通信符で紫も呼び、事情を説明して根回しを頼んだ。
まずレミリアに適当に異変を起こしてもらう。この時出動するのは霊夢。私が行くと即白旗だと思うから、少なくとも表立って動くのは霊夢のみ。
そして霊夢がレミリアを倒し、スペルカードルールを利用すれば種族的格下(人間)が種族的格上(吸血鬼)に勝てるとの噂を広める。理論上弾幕を当てさえすれば妖精でも神に勝てるのだから、数の多い小妖怪、下剋上を狙う中妖怪を中心に爆発的に広まるはず。
まあ霊夢ならスペカ無しでも吸血鬼と良い勝負しそうな気がするがそれでは意味が無い。私が異変を解決しても既に一度勝っているので意味が無い。
霊夢がスペルカードルールで異変を解決しなければならないのだ。割と出来レースだけど。
数日かけ紫を通じてレミリアと交渉した結果、無事異変を起こす了承を得られた。が、幾つか条件を付けられた。
紅魔館組はスペルカードルールに則るが霊夢を全力で排除する。
当然霊夢がレミリアの所に辿り着いてもわざと負ける事はしない。
霊夢が負けても異変は収束させるが、代わりに吸血鬼条約で決められた吸血鬼に関する規制を一部緩和する。
私は今回の異変でレミリアと闘わない。
異変を起こす対価としてフランドールの能力を押さえるか、能力を暴発させない程度に精神を安定させる。
以上。
妥当な条件だったので素直に飲んだ。フランドールはスペルカードルールを無視されると危険なので霊夢ではなく私が行く。
幻想郷の平穏を守る神社の神が、間接的にとは言え異変を起こしたという噂が広まるのは都合が悪いので霊夢には何も知らせていない。
事情を知っているのは影で調整をしてくれた紫、徊子。紅魔館組の美鈴、咲夜、レミリア。最低限だ。
霊夢には水面下で何か企んでいるのは勘付かれたが詳しい内容はばれなかった。一安心。
なにはともあれこれで数日以内に異変が起きる。裏紅霧異変の始まりだ。
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―0―
幻想郷は、予想以上に騒がしい日々をおくっていた。
謎の来訪者に、夏の亡霊も戸惑っているかのように見えた。
そんな全てが普通な夏。
辺境は紅色の幻想に包まれた。
―1―
ここは東の国の人里離れた山の中。
博麗神社は、そんな辺境にあった。
この山は、元々は人間は棲んでいない、今も多くは決して足を踏み入れない場所で、人々には幻想郷と呼ばれていた。
幻想郷には、今も相変わらず人間以外の生き物と、ほんの少しの人間が自由に闊歩していたのだった。
人々は文明開化に盲信した、人間は生活から闇の部分を積極的に排除しようとしていた。
実はそれは、宵闇に棲む生き物にとっても、人間との干渉もなくお互いに気楽な環境だったのだった。
そしてある夏の日、音も無く、不穏な妖霧が幻想郷を包み始めたのである。
それは、まるで幻想郷が日の光を嫌っているように見えたのだった。
―2―
博麗神社の巫女、博麗霊夢はおおよそ平穏な日々を送っていた。
早朝に二、三人しか参拝客が訪れないこの神社は、退屈だったり退屈じゃなかったりして、楽しく暮らしているようである。
そんな夏の日、霊夢は少しばかり退屈以外していた。
霊夢「もー、なんなのかしら、日が当たらないと天気が晴れないじゃない」
このままでは、霧は神社を越え、人里に下りていってしまう。
幻想郷が人々の生活に干渉してしまうことは、幻想郷も人の手によって排除されてしまうだろう。
こういう時に真っ先に動く祭神は何故か動こうとしない。
霊夢「こうなったら、原因を突き止めるのが巫女の仕事(なのか?)
なんとなく、あっちの裏の湖が怪しいから、出かけてみよう!」
あたりは一面の妖霧。
勘の鋭い少女は、直感を頼りに湖の方向へ出発した。
―3―
博麗神社の神様、博麗白雪は、なんとなく楽しそうに飛んでいった巫女を縁側から静かに見送った。
白雪「何も知らせてないのに勘だけで首謀者に一直線か」
いささか驚いたが、霊夢の勘が鋭いのはいつものこと。放っておいても異変の首謀者を倒して解決してくれそうだ。
白雪「さて、私が動くのはこの後。頑張れ霊夢」
白雪は今はのんびりとお茶をすすった。
―4―
数少ない森の住人である普通の少女、霧雨魔理沙は、普通に空を飛んでいた。
いつのまにか、霧で湖の全体が見渡せなくなっていたことに気付くと、勘の普通な少女は、湖に浮かぶ島に何かがあるのでは? と思ったのだった。
魔理沙「普通、人間だって水のあるところに集落を造るしな」
化け物も水がないと生きていけないのだろうと、実に人間らしい考え方である。
魔理沙「そろそろ、あいつらが動き出しそうだから、ちょっと見に行くか」
少女は、何かめぼしい物が無いか探しに行くかのように出発した。
むしろ探しに行ったのだった。
―5―
湖は、一面妖霧に包まれていた。普通の人間は30分はもつ程度の妖気だったが、普通じゃない人もやはり30分程度はもつようだった。
妖霧の中心地は、昼は常にぼんやり明るく、夜は月明かりでぼんやり明るかった。
霧の中から見る満月はぼやけて数倍にも膨れて見えるのだった。
もしこの霧が人間の仕業だとすると、ベラドンナの花でもかじった人間であることは容易に想像できる。
中心地には島があり、そこには人気を嫌った、とてもじゃないけど人間の住めないようなところに、窓の少ない洋館が存在した。
昼も夜も無い館に、「彼女」は、いた。
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【プレイヤー選択】
博麗神社の巫女さん
博麗霊夢
移動速度☆☆☆
攻撃範囲☆☆☆☆
攻撃力 ☆☆☆
東洋の西洋魔術師
霧雨魔理沙
移動速度☆☆☆☆
攻撃範囲☆
攻撃力 ☆☆☆☆
→博麗神社の神様
博麗白雪
移動速度☆☆☆☆
攻撃範囲☆☆☆☆
攻撃力 ☆☆☆☆
【このキャラクターストーリーは紅霧異変の数日後となります。よろしいですか?】
→はい
いいえ
【武器選択】
→妖の御札「パワーショット」
神の御札「トリックショット」
【戦闘方式決定】
このキャラクターは三面ボス戦闘において二通りの戦闘方式が楽しめます。
→アクション
シューティング
少女祈祷中……