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No.15302の一覧
[0] 【完結】リリカルなのは ~生きる意味~(現実→リリカル オリ主転生 最強 デジモンネタ)[友](2015/01/12 02:39)
[1] プロローグ[友](2010/01/04 15:51)
[2] 第一話[友](2010/01/04 15:52)
[3] 第二話[友](2010/01/04 15:55)
[4] 第三話[友](2010/01/05 00:19)
[5] 第四話[友](2010/01/17 13:53)
[6] 第五話[友](2010/01/17 14:31)
[7] 第六話[友](2010/01/24 12:46)
[8] 第七話[友](2010/01/31 15:55)
[9] 第八話[友](2010/02/07 10:27)
[10] 第九話[友](2010/02/14 15:40)
[11] 第十話[友](2010/02/21 11:01)
[12] 第十一話[友](2010/04/04 09:45)
[13] 第十二話[友](2010/04/04 09:46)
[14] 第十三話[友](2011/05/03 21:31)
[15] 第十四話[友](2010/03/28 07:45)
[16] 第十五話(前編)[友](2010/04/04 09:48)
[17] 第十五話(後編)[友](2010/04/04 09:49)
[18] 第十六話[友](2010/04/04 09:51)
[19] 第十七話[友](2010/04/18 07:24)
[20] 第十八話[友](2010/04/25 14:47)
[21] 第十九話[友](2010/05/02 21:59)
[22] 第二十話[友](2010/05/09 07:31)
[23] 第二十一話[友](2010/05/16 15:36)
[24] 第二十二話[友](2010/06/06 15:41)
[25] 第二十三話[友](2010/05/30 09:31)
[26] 第二十四話(前編)[友](2010/06/06 15:38)
[27] 第二十四話(後編)[友](2010/06/06 15:39)
[28] 第二十五話[友](2010/06/06 15:36)
[29] 第二十六話 (2013年11月14日 改訂)[友](2013/11/14 22:27)
[30] 第二十七話[友](2010/06/27 17:44)
[31] 第二十八話[友](2010/08/17 21:11)
[32] 第二十九話[友](2010/08/17 21:11)
[33] 第三十話[友](2010/09/19 16:35)
[34] 第三十一話(前編)[友](2010/09/19 16:30)
[35] 第三十一話(後編)[友](2010/09/19 16:34)
[36] 第三十二話[友](2010/11/07 14:58)
[37] 第三十三話[友](2010/12/05 15:37)
[38] 第三十四話[友](2010/12/05 15:36)
[39] 第三十五話[友](2011/01/16 17:21)
[40] 第三十六話[友](2011/02/06 15:02)
[41] 第三十七話[友](2011/02/06 15:00)
[42] 第三十八話[友](2011/03/13 18:58)
[43] 第三十九話[友](2011/03/13 18:56)
[44] 第四十話[友](2011/03/27 15:55)
[45] 第四十一話[友](2011/04/10 20:23)
[46] 第四十二話[友](2011/04/24 16:56)
[47] 第四十三話[友](2011/05/03 21:30)
[48] 第四十四話[友](2011/05/15 14:37)
[49] 第四十五話[友](2011/05/29 20:37)
[50] 第四十六話[友](2011/06/12 22:18)
[51] 第四十七話[友](2011/07/10 23:20)
[52] 第四十八話[友](2011/07/25 01:03)
[53] 第四十九話[友](2011/07/25 21:26)
[54] 第五十話[友](2011/09/03 21:46)
[55] 第五十一話[友](2011/10/01 16:20)
[56] 第五十二話[友](2011/10/01 16:27)
[57] 第五十三話[友](2011/10/01 16:19)
[58] 第五十四話[友](2011/10/30 20:17)
[59] 第五十五話[友](2011/11/27 20:35)
[60] 第五十六話[友](2013/04/21 19:03)
[61] 第五十七話[友](2013/04/21 19:00)
[62] 第五十八話[友](2013/04/21 18:54)
[63] 第五十九話[友](2013/08/22 00:00)
[64] 第六十話[友](2014/03/23 23:15)
[65] 第六十一話[友](2014/03/23 23:13)
[66] 第六十二話[友](2014/05/06 17:27)
[67] 第六十三話[友](2014/08/13 19:34)
[68] 第六十四話[友](2014/11/30 22:33)
[69] 第六十五話[友](2014/12/31 20:29)
[70] 最終話[友](2015/01/12 02:26)
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[15302] 第五十九話
Name: 友◆ed8417f2 ID:8beccc12 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/08/22 00:00


第五十九話 心の傷





【Side レジアス】




機動六課の発足から数ヶ月。

部隊員の人間関係でいくつか問題が上がっているが、機動六課そのものには大した問題も無く、ここまで来ている。

俺がそのように考えていると、部屋のドアが開き、オーリスが険しい表情をして入室してきた。

「大変です! 中将!」

俺の前に来るなりそう叫ぶオーリス。

「どうした?」

俺がそう尋ねると、

「今しがた入った報告ですが、機動六課に緊急に査察が入るそうです! それを命じたのは最高評議会です!」

オーリスがそう言ってくる。

「それがどうした? 機動六課に査察が入ったとて、これといった問題点は無いと思うが……」

査察が入る程度十分に予想できる範囲内だ。

そして、機動六課そのものには致命的と言える問題点はない。

査察が入ろうとも、そこまで慌てる事では無いと思うが………

「六課に入る査察官が大問題です!」

オーリスは鬼気迫る表情で叫ぶ。

「やれやれ、一体誰だというのだ?」

私はそう聞きながら、机に置いてあったコーヒーを口に含む。

「クルーザー元提督! 現一等空佐です!」

その言葉を聞いたとたん、思わず吹き出した。

「ブフォッ!? 何だとぉッ!!??」

そこで気付いた。

私が吹き出したコーヒーが、正面にいたオーリスにモロにかかっていた事に。

「…………………」

オーリスは無言でメガネを外し、布でレンズを拭く。

そして、そのメガネを掛け直し、私に笑いかけると…………

ま、まて。

早まるな!

私が悪かったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!







【Side Out】






【Side はやて】




機動六課創設から今まで、大した問題も無くここまで来とる。

まあ機動六課自体、ジェイルさんの起こした問題を迅速に解決する部隊やからな。

予めジェイルさんから連絡来るから、即座に解決できるのは当たり前や。

まあ、それでも即座に解決せな後で面倒になる事件ばっかやけどな。

ジェイルさんを危険視する声も、管理局の中じゃ大分高まってきとるし、計画通りや。

と、その時レジアス中将から緊急の通信がきた。

「はいはい。 お久しぶりですレジアス中将」

私は通信を開くとそう挨拶する。

けど、

『挨拶は後回しだ! すぐにユウ君を隊舎から連れ出せ!!』

険しい表情でそう叫ぶレジアス中将。

でも、その頬に見事な紅葉が付いていて、シリアス感に欠ける。

「そんなに慌ててどないしたんですか? あと、見事な紅葉ですね」

『いきなりだが、抜き打ちで機動六課に査察が入ることになった!』

紅葉についてはスルーされた。

でも、

「査察ですか? でも、なんでユウ君を連れ出す必要が………?」

ユウ君達翠屋の店員は、民間協力者という立場で隊舎内に入ってもらっとる。

まあ、我ながら無茶したと思っとるけど、お陰で訓練の士気も鰻上りやから、十分に効果を発揮しとる。

致命的と言える問題は無いはずやで?

『査察する人物が問題なのだ! いいか!? 今回の査察官は、クルーザー元提督だ!!』

その人物の名を聞いた瞬間、私は固まった。

「クルーザー元提督って…………もしかしなくてもあの………」

私が確認しようとしたその瞬間、

――ゾクッ

背筋に悪寒が走るぐらいの凄まじい魔力を感じた。

「って、まさかもう手遅れ!?」

私は通信そっちのけで駆け出した。





【Side Out】






「あ~! おなかすいた!」

朝の訓練を終えて、スバルが大きな声でそう言いながら食堂に入ってくる。

ティアナ、アリサ、すずか、アリシアもそれに続く。

いつもと変わらぬ平和な日々。

だけど、

「何故この私がこのような部隊の査察などを………」

どこかで聞いたことがあるような声。

「仕方ありませんよクルーザー一佐。 最高評議会の勅命なのですから」

続いて、忘れるに忘れられない名前も聞こえた。

見れば、管理局の制服を着た、10人前後の集団がいる。

そしてその集団を率いる50代ぐらいの男性局員がいた。

更に、その顔は………

「―――――――ッ!?」

俺は思わず殴りかかりたくなる衝動を必死で抑えた。

落ち着け、ここで奴を殴ってもはやて達に迷惑が掛かるだけだ。

自分にそう言い聞かせ、心を落ち着かせるために深呼吸する。

「ユウ………」

桜もその事に気付いたのか、カウンターの影になって食堂の方から見えない所で俺の手を握ってくれてる。

桜のお陰もあり、ようやく心が落ち着いてくる。

「何だこの部隊は? 査察官に出迎えもなしか?」

上から見下した物言いでそう言ってくるクルーザー。

それだけでも、俺の心は沸騰しそうになる。

普通なら、このぐらい言われても我慢できる。

だけど、こいつは………

コイツだけは………!

「………ユウ!」

桜が先程よりも手を強く握って俺を落ち着かせようとする。

「―――ッ! ………すまん」

俺は桜に謝る。

「仕方ありませんクルーザー一佐。 今日の査察は事前に知らせていないという話ではありませんか」

取り巻きがそういうが、

「たとえそうだとしても、上官が現れたら持て成すのが下士官の義務ではないのかね?」

またふざけた事を抜かすクルーザー。

なんでコイツは俺の感情を逆なでするような事しか言わねえのかな!?

俺がそう思っていると、

「フン! 大体何故この私がこのような部隊の査察になど来ねばならんのだ! それもこれも、みんなあのハラオウンの小僧の所為だ! 親の七光りで提督になっただけの若造が!」

七光りだけで提督までなれるかっつーの。

少なくともクロノは努力は惜しんでなかったぞ。

「クルーザー一佐。 それ以上は上官侮辱罪になります」

取り巻きの一人が宥めようとするが、

「ええい、忌々しい。 奴さえ居なければ私は今頃はこんなところにはいなかったはずだ! あの程度のことをグチグチ言いおってからに…………奴らは私の出世の足掛かりにしてやろうとしたのだ。 逆に光栄に思ってくれなければ!」

その瞬間、俺の思考は怒りで埋め尽くされた。

コイツハイマナントイッタ?

次の事を考える前に、俺は握られていた桜の手を振りほどいていた。







【Side スバル】




朝の訓練が終わって、朝食のために食堂に来ていた。

ティアも、最近は訓練の成果が実感できるようになったのか、どこか嬉しそうに思える。

訓練はキツいけど、そのあとの食堂では癒されるよね。

翠屋三大マスコットのリィンちゃんと、アギトちゃんと、久遠ちゃん。

この3人の可愛らしい姿を見ただけで訓練の疲れなんか吹っ飛ぶよ!

で、いつもの様に3人に癒されながら朝食を摂ってたんだけど、

「何故この私がこのような部隊の査察などを………」

なんか偉そうな声が聞こえてきた。

「仕方ありませんよクルーザー一佐。 最高評議会の勅命なのですから」

私達が振り返ると、局員の制服に身を包んだ10人前後の集団がいた。

誰だろう?

今日は何も予定は来てなかったけど、

「抜き打ちの査察かしら?」

ティアが呟く。

「何だこの部隊は? 査察官に出迎えもなしか?」

「仕方ありませんクルーザー一佐。 今日の査察は事前に知らせていないという話ではありませんか」

「たとえそうだとしても、上官が現れたら持て成すのが下士官の義務ではないのかね?」

なんかやな感じの査察官だなぁ。

私がそう思っていると、

「フン! 大体何故この私がこのような部隊の査察になど来ねばならんのだ! それもこれも、みんなあのハラオウンの小僧の所為だ! 親の七光りで提督になっただけの若造が!」

「クルーザー一佐。 それ以上は上官侮辱罪になります」

「ええい、忌々しい。 奴さえ居なければ私は今頃はこんなところにはいなかったはずだ! あの程度のことをグチグチ言いおってからに…………奴らは私の出世の足掛かりにしてやろうとしたのだ。 逆に光栄に思ってくれなければ!」

その瞬間、

――ゾクッ

背筋に悪寒が走った。

更に、押しつぶされそうに感じる強大な魔力。

こ、この感じって前にも………

私達が咄嗟に振り向いた瞬間、

――ドゴォォォォン

食堂のカウンターが吹き飛んだ。

「「「「「「「「「「なっ!?」」」」」」」」」」

食堂にいた全員が声をあげる。

そこには、

「テメエは……………どの口がそんな事ほざいてやがる!!!」

鬼気迫る表情で叫ぶ、ユウさんがいた。

今のユウさんは、いつもの穏やかな雰囲気は全くなく、前のレイシス一尉の一件と同じぐらいの………ううん、それ以上の怒りの感情が読み取れた。

「な、何なんだ一体!? 貴様は誰だ!?」

クルーザー一佐がそう言った瞬間、

「ッ!? ……………そうかよ………俺が誰だか分からねえか…………」

一瞬驚愕の表情をしたあと、

「このっ………クズ野郎がっ!!」

ユウさんは拳を振りかぶってクルーザー一佐に殴りかかった。

私達は、いきなりのことで止める暇もなかった。

だけど、

「ユウ! だめぇ!!」

桜さんが叫んでユウさんの振り上げた拳にバインドを発生させる。

そのおかげで、ユウさんの動きは一瞬止まる。

でも、すぐにバインドは引きちぎられようとしていた。

けど、その一瞬出来た隙に、ユウさんの体にいくつものバインドが掛けられる。

「抑えてください! ユウ!」

「気持ちはわかるけど落ち着きな!」

見れば、リニスさんとアルフさんが手を厨房の前で手を翳していた。

その時、

「ユウ! 落ち着きなさい!」

「ダメだよ! ユウ!」

アリサさんとアリシアさんがユウさんに抱きつくように抑えていた。

すると、すずかさんがユウさんの目の前に行き、ユウさんの顔に手を添えると目を瞑り、

「ユウ君、ゴメン!」

一言謝ると、すずかさんが目を見開く。

でも、すずかさんのその眼は、いつもの色ではなく、血のような紅に染まっていた。

すずかさんの眼がユウさんと合う。

すると、ユウさんの体がぐらりとよろめいた。

そして、

「ごめんなさい! ユウ君! ファイエル!」

ファリンさんの声が聞こえたかと思うと、何かが目の前を通り過ぎ、

「ぐはっ!?」

ユウさんが吹き飛ばされていた。

って、今ユウさんを吹き飛ばしたのって………

「「手?」」

私とティアは思わず声を漏らした。

ユウさんを吹き飛ばしたのは、どう見てもワイヤーがついた手にしか見えない。

すると、その手がワイヤーに引っ張られて引き戻されていく。

私とティアは思わずその手を視線で追っていき、

――カキン

という音と共に戻ったのは、ファリンさんの腕だった。

「「ファ、ファリンさん?」」

一体今のは何だったんだろう?

私達が疑問に思う間もなく、

「頭冷えた? ユウ」

桜さんがユウさんに歩み寄り、そう声をかけた。

すると、ユウさんは静かに立ち上がり、

「………ああ……………すまん、頭冷やしてくる」

俯きながらそう呟いて、食堂を立ち去った。

ユウさんが立ち去って少しすると、

「き、貴様ら! この私に向かって何ということをしたのだ!? この事は上に報告してやるからな!」

いきなり我に返ってそうまくし立てるクルーザー一佐。

私達が大変だと思っていると、

「失礼、クルーザー一佐」

そこへ八神部隊長が現れた。

「機動六課部隊長、八神 はやて二等陸佐です。 先程は大変失礼をしました」

八神部隊長は敬礼しながら謝罪の言葉を口にするが。

「今更謝っても遅いわ! この事は厳しく上に報告する! 覚悟しておくんだな!」

怒りで顔を真っ赤にしながらそう叫ぶクルーザー一佐。

すると八神部隊長は、冷たい視線をクルーザー一佐に向けた。

でも、それも一瞬のことで、すぐにいつもの表情になると、

「先程の彼の名はユウ・リムルート。 この名を聞いて何とも思わなければ、報告でもなんでもご自由に」

八神部隊長はそう言う。

って、リムルート?

ユウさんのファミリーネームは、利村じゃ………

すると、クルーザー一佐は、目に見えて動揺した。

「リ、リムルートだと………ま、まさか………」

クルーザー一佐は何か呟くと、逃げるように立ち去った。

「まったく。 迷惑なやっちゃな」

八神部隊長は呆れるようにそう言うと、私達に視線を向けた。

「すまんな2人とも。 驚かせたみたいやな」

そう謝ってくる八神部隊長。

「い、いえっ!」

「た、確かに少し驚きましたけど……」

私達はそういうが、実際にはちょっとどころか、すごい驚いた。

前のレイシス一尉の時は、なのはさんを理不尽に傷つけようとしたから、ユウさんは怒ったんだと思う。

ユウさんは、なのはさんや桜さん達をとても大切に思っている。

昔から翠屋に通っていて、ユウさんの事を見ていたからよくわかる。

そして、虫を殺すことも躊躇するほどの優しい人。

そんなユウさんが、あれほどまでに怒るなんて、ただ事じゃないと思っていた。

「そうは言っとるけど、やっぱり気になるって顔やなぁ」

八神部隊長にはあっさりと見抜かれた。

と、その時、

――ドゴォォォン

いきなりの爆発音と共に、隊舎が震える。

「な、何っ!?」

私は驚いて叫ぶ。

――ドゴォォォォォン ズドォォォォォォン

爆発音と振動は、断続的に続いている。

「あ~あ、派手にやっとるようやなぁ………」

八神部隊長は、気楽そうな声色で。

それでいて、どこか悲しそうな雰囲気を思わせる表情で呟いた。

私達が外へ出ると、そこには、

「ユウ………さん……?」

ティアが呟く。

私達の視線の先には、私達が訓練で使っているシュミレーターで、そのシュミレーター全てを埋め尽くさんとする膨大な数のガジェットと、そのガジェットを次々と破壊していくユウさんの姿。

「ちょ、これって!?」

シャーリーさんが慌てたようにシュミレーターの操作パネルを開く。

「動作レベル、攻撃精度、共に最大レベル………! ああっ、痛覚レベルも!」

シャーリーさんがそう呟いて言葉を失う。

前に聞いた話だけど、このシュミレーターの最大レベルは、本物を遥かに超えるスペックを持ち、隊長達でも一人ではクリアできない難易度だ。

そして痛覚レベルは、読んで字のごとく攻撃を受けた時に感じる痛みの強さ。

最大レベルだと、本当に攻撃を受けたかのような痛みが走る。

実際に怪我はしないけど、その痛みは相当なものだと思う。

「や、止めさせないと!」

シャーリーさんが慌ててパネルを操作し、シュミレーターを終了させようとした。

でも、

「シャーリー、ユウ君の好きなようにさせてあげて」

なのはさんがそれを止めた。

「なのはさん!? でも、これじゃ危険すぎます!」

シャーリーさんはそう叫ぶが、

「うん………でも、今はそっとしておいてあげて」

なのはさんはそう言うと少し悲しそうな視線をユウさんに向けた。

「なのはさん………」

私はなのはさんにつられてユウさんを見る。

ユウさんは、凄まじい魔力を以て次々とガジェットを破壊していく。

だけど、不思議と先ほどのような恐怖は感じられない。

まるで、子供が泣き叫んでいるかのような印象を受ける。

「…………スバル、ティアナ。 ユウ君のことが気になる?」

「「………はい」」

なのはさんの言葉に、私とティアは正直に頷いた。

何故ユウさんがあんなにも怒り、そして今泣き叫んでいるのか。

その理由を知りたいと思った。

「そう…………じゃあ、ロビーに来て。 そこで教えてあげる」

なのはさんはそう言うと歩き出し、私たちもそれに続いた。







ロビーには、隊長、副隊長全員と、フォワード陣、そして、子供達までもが集合していた。

「なのはさん……これは?」

隊長達はともかく、子供達がなんでいるんだろう?

「あ、ごめんね。 子供達も話を聞くってきかなくて」

子供達も、何でユウさんがあんな行動を起こしたのか知らないんだ。

「私達は、父様の娘です」

「当然、話を聞く権利は我らにもある」

星ちゃんと夜美ちゃんがそう主張する。

なのはさんは、子供達の気持ちをわかっているのか何も言わない。

それから、なのはさんに椅子に座るように促され、私達はそれに従う。

なのはさん達も、椅子に座った。

そして、少し間を置いて話しだした。

「…………………先ず、さっきはやてちゃんの言葉を聞いた人もいると思うけど、ユウ君の本当のファミリーネームは、利村じゃなくてリムルート。 これだけで、ティーダさんぐらいの年代の人なら、大体の予想はつくんじゃないかな?」

私達は、思わずティーダさんに視線を向ける。

「リ、リムルートって……………もしかしてあの………」

ティーダさんは、目を見開いて驚愕している。

私達には、何のことか分からないけど。

「多分………いや、十中八九ティーダさんの言うとるリムルートで間違いないと思う」

八神部隊長がティーダさんの考えを肯定する。

いや、だから私達には何のことかさっぱりわからないんですけど。

「今から十数年前の話だけど………とある部隊が、無人の管理外世界で未確認の魔法生物と戦闘になったの………」

フェイトさんが真剣な面持ちで話しだした。

「当時、その部隊には2人のスーパーエースがいた。 それが、レイジ・リムルート執務官とリーラ・リムルート執務官補佐…………ユウの両親」

桜さんもその話に便乗する。

「そして、当時その部隊を率いていた人物こそクルーザー元提督。 現一佐」

「「ッ!?」」

その事実に、私とティアは僅かに声を漏らす。

「当時の報告では、ユウの両親は部隊を守るため、自爆魔法で魔法生物と相打った………そう報告されていた」

「でも、ユウの元には、両親からデバイスが転送されてきていた。 真実と、両親からの最後のメッセージを記録したデバイスが…………」

「そのデバイスには、クルーザー元提督がユウ君の両親を魔法生物の足止めに使い、アルカンシェルでユウ君の両親諸共吹き飛ばした事実が記録されてた」

「なっ!? そんな……………!」

「嘘………!?」

私達は信じられなかった。

管理局員がそんな非道な行為を行ったことが。

「当時のユウ君の年齢は7歳。 しかも、その日は丁度誕生日だった。 本来なら両親から祝福されるはずの誕生日が、両親との永遠の別れの日になっちゃったの」

「「……………………」」

何も言えなくなる私達。

「普通の子供だったら、訳も分からず泣き叫ぶだけだったはず。 でもね、ユウは他とちょっと違うところがあって、子供の時から大人と同等の考えができたの。 だから、ユウはこの出来事を作戦の為の犠牲だと割り切ろうとした。 だけど、管理局がユウに伝えたのはさっきも言った体良く改竄された偽の報告。 そしてなにより、ユウの両親に対する謝罪が無かったことで、ユウは管理局に対してこれ以上ない嫌悪感を持つようになった。 今ではある程度マシになってるけど、それでも嫌悪感は完全には拭いきれていないわ。 今機動六課にいる事だって、はやてが拝み倒して、尚且つ部隊のメンバーが顔見知りが大多数を占めるということで何とか納得してもらったのよ」

ユウさんの壮絶な過去に、私達は呆然となる。

「で、さっきのクルーザー元提督は、後に当時執務官だったクロノ提督に告発された。 でも、管理局からクルーザー元提督に出された罰は、降格と数年の懲役。 しかも、懲役の方は執行猶予期間内に功績を挙げたから、ほぼ免除。 実質的にクルーザー元提督の罰は降格のみ」

「そんな!? そんなことってありえるんですか!?」

ティアが我慢できなかったのか、そう叫ぶ。

「ティアナ、スバル。 あなた達は管理局のことを問題が無い組織だと思ってるかもしれないけど、私たちからすれば、結構問題の多い組織なのよ」

「「えっ?」」

「まずは、管理局の基本的な役割を言ってみて?」

「えっと、次元世界をまとめて管理する、警察と裁判所が一緒になったところで、各世界の文化管理や、災害救助、そして、危険なロストロギアの回収及び管理が主な活動………ですよね?」

ティアがそう言うと、

「うん、だいたい正解。 さて、そこで既に問題があります。 それはどこ?」

えっ?

この時点で既に問題があるの?

「え、え~と…………わかりません!」

私は素直にギブアップする。

ティアを見ると、

「………すみません。 私にもわかりません」

そう言って、ティアもギブアップした。

「うん、それはしょうがないよ。 ティアナたちにとっては当たり前のことだからね」

「まあ、これからいう事は、あくまで私たちから見た視点ってだけで、一概に全部が悪いとは言い難いから、勘違いしないでね」

「管理局の役目は、さっき言った警察と裁判所が一つになったようなもの………つまり、法を適用する役割と、法を執行する役割があって、それがひとつの組織の中に入っちゃってるってこと」

「更には、その法を決めることも管理局が行っている。 つまり管理局は、法の決定、適用、執行を全て行えるということだ。 これがどういう事か分かるか?」

そこまで聞いて何となくわかるような気がするけど、何ていうか表せる言葉が出てこない。

「……………ッ!? 管理局は、次元世界の王とも呼べる組織………!?」

ティアが気づいたように口にする。

「その通りだ。 確かに全てを1つの組織に統合すれば、組織内のやり取りは円滑に進み、より多くの犯罪の対処が可能になる。 だが、その代わりに権力が集中し、濫用を行うことも容易い」

私はそれを聞き、

「じゃあ、クルーザー元提督の罪も………」

「十中八九操作されたと思う。 本来なら、問答無用で刑務所行きや」

「そんな………管理局がそんな事を…………」

ティアが悲痛な表情をする。

かくいう私も、それは酷いと思った。

「もう一つ言っておくけど、今話したような不正は、管理局全体で行われているわけじゃなくて、あくまでごく一部で行われていること。 だから、管理局全部が悪いってわけじゃないから、そこのところは勘違いしないでね」

「これで話は終わり、この話を聞いて、これからどうするかは、あなた達が決めて」

隊長達は、最後にそう締めくくった。







私とティアは、既に傾き始めた日の光の中を歩く。

「ねえ、ティア。 ティアは隊長達の話を聞いてどう思った?」

私はティアに尋ねる。

「正直信じられなかったわ。 でも、少なくともユウさんに関する過去は、事実だったと思うわよ。 なのはさん達が、ユウさんをダシに嘘をつくとは思えないし」

ティアはそう答える。

「うん………私もそう思った………だけど、管理局に対していい思いを持ってないユウさんが、今ここにいる理由って何なんだろう?」

「そうね、私もそれは考えたわ。 話では八神部隊長が頼み込んだっていうことだけど、だったらなんでユウさんが嫌うような管理局にわざわざ入局したのかってことになるのよ」

「そうだね。 はたから見てるだけで、なのはさんたちみんなユウさんにぞっこんだし………」

「アンタがそれを言う? ユウさんに会いたいからって毎度毎度翠屋に誘われてた私の身にもなってよ」

そう言われて、一瞬で顔が熱くなるのがわかった。

「あ………ううう…………ティ、ティアだってコーヒー飲みながら、ユウさんの事何度もチラ見してたじゃん!」

私は恥ずかしくなって思い当たることを言い返す。

すると、ティアの顔がボっと赤く染まった。

えっ? もしかして図星?

「そっ、そんなのアンタの見間違いよ、バカ!」

ティアは否定するけど、そんな真っ赤な顔で言われても説得力ないよ。

私がじーっと見つめていると、

「はぁ~~~~………」

突然大きなため息を吐いた。

「殆ど確信してたけど…………やっぱりアンタもだったのね? スバル」

「そう言うティアも?」

コクンと頷くティア。

「「はぁ~~~~~………」」

私とティアは、同時にため息を吐いた。

「アンタは何時から?」

そう聞いてくるティア。

「私は、この体の事を知られた時かな? それ以前は憧れのお兄さんって感じだった………私は気にしてないつもりだけど、やっぱりお母さんのクローンで戦闘機人って事実は変わらないから、こんな体の私を好きになってくれる人なんていないって……恋なんて私には無理だって諦めてた。 だけど、ユウさんは違った………もちろん桜さん達もだけど、こんな私やギン姉を自然に受け入れてくれた。 他の人達が見せる同情や哀れみじゃない………純粋に”ヒト”として私達を受け入れてくれた………その時だね、私が気持ちを自覚したのは………多分、ギン姉も一緒じゃないかな? 確認した訳じゃないけど」

私は自分の気持ちを正直に白状した。

「ティアは?」

「私は、前々からちょっと気になる男の人ぐらいだったんだけど………いつの間にか……かな? いろんな事に相談に乗ってくれたり、悩みを聞いてくれたり………思えば、兄さん以外じゃ一番頼れる男の人だったのよね」

ティアも素直に白状した。

「「…………はぁ~~~~~~………」」

また二人同時にため息が出る。

「どうする?」

ティアが聞いてくる。

「…………私は……知りたい……! もっともっと、ユウさんの事を……! あれ程の過去を持ちながら、なんで今機動六課にいるのかを………!」

私は自分の気持ちを口にする。

「そう………私も同じ気持ちよ」

「ティア………」

私は思わず笑みを浮かべる。

「じゃあ、早速ユウさんに宣戦布告しなきゃ!」

私はそう言って立ち上がる。

「へっ?」

ティアは呆けた顔をしてるけど、その手を掴み、

「え? ちょっと、本気?」

「本気も本気、マジ本気!」

ユウさんを探しに駆け出した。

「ちょっとぉ~~~~ッ!?」





【Side Out】





「はぁ~~~~~……………」

俺は思わずため息を吐く。

「やっちまった…………」

我慢しようとはしていたが、あいつの言葉に思わず我を忘れてぶん殴ろうとしていた。

今は大暴れして大分頭が冷えてきたが、自分がどのような事をしていたのか、今になって後悔している。

それに………

「なのは達はともかく………スバルやティアナ達がな~~~…………」

元々俺の過去を知っていて、何回か怒ったところも見たことがあるなのは達はともかく、スバルやティアナ達には、どうにも顔が合わせ辛い。

恐らく、あいつらの中の今までの俺のイメージが、ガラガラと音を立てて崩れたに違いない。

最悪避けられるかも…………

と、そこまで考えたところで、

「ユウさん見つけた~~~!!」

現在進行形で悩んでいた張本人であるスバルと、スバルに引きずられるように手を掴まれているティアナ。

顔を合わせ辛い2人に遭遇してしまった。

だが、2人は特に嫌な顔はせずに俺に駆け寄ってきた。

いや、ティアナはスバルに引きずられて、だが。

「スバル………ティアナ………」

どうにも顔が合わせづらいが、2人は俺の目の前までくる。

「あ~っと………悪かったな。 いきなりあんなことになって」

俺はとりあえず謝る。

「いえ! 確かに驚きはしましたけど、ユウさんが謝る必要はありません!」

スバルがそう言ってくる。

「え?」

「その………隊長達から聞いたんです………ユウさんの過去を………何故クルーザー一佐にあそこまで感情を露にしたのかを………」

ティアナが言いにくそうにそう言う。


「…………そっか」

「それでですね、その話を聞いて決めたことがあるんです!」

スバルが元気よくそう言う。

「何を決めたんだ?」

俺は特に不思議に思わずにそう聞いた。

そして、

「はい! 私達も、ユウさんのお嫁さん候補に入れといてください!」

思いっきりズッコケた。

「おい! 俺の過去を聞いたことの、何処をどうすれば今の話につながるんだ!? ティアナも何か言ってやれよ!」

俺は立ち上がり思わず叫ぶ。

「あ……いえ………その…………け、決してユウさんのお嫁さんになるのが嫌なわけじゃ………」

おいおい、ティアナもか?

スバルは踵を返す。

「ユウさん。 今言ったこと、本気ですから」

スバルは真剣な声でそう言うと、再びティアナの手をとって駆け出した。

「…………………」

俺はその場で呆然と見送り、

「なんでこうなるの?」

特に意識もせずに着々とハーレムを拡大していく自分に嫌気がさす。

『諦めてくださいマスター。 マスターのハーレム構築能力は、もはやレアスキルと言っていいレベルです』

『こうなればもはや腹を括って、全員面倒見るくらいの甲斐性を見せてください』

ブレイズとアイシクルがそう言ってくる。

「他人事だなテメーら」

『『他人事ですから』』

「はぁ~~~~~~~~…………!」

俺は最後に、深いため息をついた。







あとがき


やっと書けた………

第五十九話の完成です。

その割には出来はよくありませんが………

スランプ状態で強引に書いたものです。

別に今回の話はやらなくても問題なかったのですが、一応入れとこうと思いまして。

ついでにスバルとティアナのフラグをやや(?)強引に突っ込んどきました。

そして久しぶりに喋ったブレイズとアイシクル。

相変わらずのハーレム推奨派な2人(機?)です。

あと、最初にユウ君ぶっ飛ばされましたが、すずかの眼には催眠能力がある魔眼効果を勝手に設定しました。

原作とらハ3では、記憶操作ぐらいできますから、催眠能力ぐらいあってもおかしくないですよね?

その所為で、ユウ君がファリンにぶっ飛ばされました。

ファリンにもロケットパンチ装備です。

さて、次回はお子様達(三大マスコット除く)が大暴れの予定。

更にはその次に翠屋メンバーが大暴れの予定。

で、その次から3~5話ぐらいで終了の予定です。

では、次も頑張ります。



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