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No.15302の一覧
[0] 【完結】リリカルなのは ~生きる意味~(現実→リリカル オリ主転生 最強 デジモンネタ)[友](2015/01/12 02:39)
[1] プロローグ[友](2010/01/04 15:51)
[2] 第一話[友](2010/01/04 15:52)
[3] 第二話[友](2010/01/04 15:55)
[4] 第三話[友](2010/01/05 00:19)
[5] 第四話[友](2010/01/17 13:53)
[6] 第五話[友](2010/01/17 14:31)
[7] 第六話[友](2010/01/24 12:46)
[8] 第七話[友](2010/01/31 15:55)
[9] 第八話[友](2010/02/07 10:27)
[10] 第九話[友](2010/02/14 15:40)
[11] 第十話[友](2010/02/21 11:01)
[12] 第十一話[友](2010/04/04 09:45)
[13] 第十二話[友](2010/04/04 09:46)
[14] 第十三話[友](2011/05/03 21:31)
[15] 第十四話[友](2010/03/28 07:45)
[16] 第十五話(前編)[友](2010/04/04 09:48)
[17] 第十五話(後編)[友](2010/04/04 09:49)
[18] 第十六話[友](2010/04/04 09:51)
[19] 第十七話[友](2010/04/18 07:24)
[20] 第十八話[友](2010/04/25 14:47)
[21] 第十九話[友](2010/05/02 21:59)
[22] 第二十話[友](2010/05/09 07:31)
[23] 第二十一話[友](2010/05/16 15:36)
[24] 第二十二話[友](2010/06/06 15:41)
[25] 第二十三話[友](2010/05/30 09:31)
[26] 第二十四話(前編)[友](2010/06/06 15:38)
[27] 第二十四話(後編)[友](2010/06/06 15:39)
[28] 第二十五話[友](2010/06/06 15:36)
[29] 第二十六話 (2013年11月14日 改訂)[友](2013/11/14 22:27)
[30] 第二十七話[友](2010/06/27 17:44)
[31] 第二十八話[友](2010/08/17 21:11)
[32] 第二十九話[友](2010/08/17 21:11)
[33] 第三十話[友](2010/09/19 16:35)
[34] 第三十一話(前編)[友](2010/09/19 16:30)
[35] 第三十一話(後編)[友](2010/09/19 16:34)
[36] 第三十二話[友](2010/11/07 14:58)
[37] 第三十三話[友](2010/12/05 15:37)
[38] 第三十四話[友](2010/12/05 15:36)
[39] 第三十五話[友](2011/01/16 17:21)
[40] 第三十六話[友](2011/02/06 15:02)
[41] 第三十七話[友](2011/02/06 15:00)
[42] 第三十八話[友](2011/03/13 18:58)
[43] 第三十九話[友](2011/03/13 18:56)
[44] 第四十話[友](2011/03/27 15:55)
[45] 第四十一話[友](2011/04/10 20:23)
[46] 第四十二話[友](2011/04/24 16:56)
[47] 第四十三話[友](2011/05/03 21:30)
[48] 第四十四話[友](2011/05/15 14:37)
[49] 第四十五話[友](2011/05/29 20:37)
[50] 第四十六話[友](2011/06/12 22:18)
[51] 第四十七話[友](2011/07/10 23:20)
[52] 第四十八話[友](2011/07/25 01:03)
[53] 第四十九話[友](2011/07/25 21:26)
[54] 第五十話[友](2011/09/03 21:46)
[55] 第五十一話[友](2011/10/01 16:20)
[56] 第五十二話[友](2011/10/01 16:27)
[57] 第五十三話[友](2011/10/01 16:19)
[58] 第五十四話[友](2011/10/30 20:17)
[59] 第五十五話[友](2011/11/27 20:35)
[60] 第五十六話[友](2013/04/21 19:03)
[61] 第五十七話[友](2013/04/21 19:00)
[62] 第五十八話[友](2013/04/21 18:54)
[63] 第五十九話[友](2013/08/22 00:00)
[64] 第六十話[友](2014/03/23 23:15)
[65] 第六十一話[友](2014/03/23 23:13)
[66] 第六十二話[友](2014/05/06 17:27)
[67] 第六十三話[友](2014/08/13 19:34)
[68] 第六十四話[友](2014/11/30 22:33)
[69] 第六十五話[友](2014/12/31 20:29)
[70] 最終話[友](2015/01/12 02:26)
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[15302] 第五十七話
Name: 友◆ed8417f2 ID:8beccc12 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/04/21 19:00
第五十七話 強くなるために




【Side ティアナ】



襲撃してきたガジェットが全滅すると、アリサさん達と戦っていた3人の襲撃者達はあっさりと撤退していった。

事後処理が進む中、私は先ほどのミスショットが頭から離れず、気分が優れない。

そんな時、

「ティアナ」

後ろから声をかけられ振り向くと、そこには兄さんがいた。

「兄さん…………」

「ちょっと話さないか?」

兄さんからの突然の誘いに、

「えっ? でも、事後処理がまだ…………」

そう言いかけたところで、

「大丈夫。 隊長達から許可は貰ってるから」

そう笑みを浮かべて、私の手を取ると、半ば強引に私を連れ出した。




私と兄さんは、森の中を歩く。

「ティアナ…………話は聞いたが、かなり無茶をやらかしたみたいだな」

投げかけられる言葉に、私は俯く。

「…………ごめんなさい」

そう呟く私。

「まあ、ティアナが執務官を目指していて、そのために戦果を上げようと焦る気持ちもわからなくはないけどな……」

兄さんはそう言いながら言葉を区切る。

「けど、その為に命令無視や勝手な行動をしたら、本末転倒だぞ」

軽く叱るようにそう言われ、

「もし、今回の指揮官がティアナだったとして、今回自分が行った行動は、最善な行動だったか?」

そう言われ、私は気付く。

時間稼ぎなら、私やスバルだけでも十分だった。

そして、副隊長達が合流後、ガジェットを全滅させたほうが危険度も低く、確実性も上だ。

でも、私が焦ってガジェットを全滅させようとしたから、危うくミスショットをしそうになった。

「私も今まで色々な部隊にいた。 その中には、今のティアナみたいに功績を焦る者もいた。 けど、その殆どは逆に失敗する。 指揮官の指示を無視し、隊の連携を乱してうまくいくはずがない」

兄さんは言葉を続ける。

「確かに理不尽な命令や、自分を曲げてまで命令を厳守しろ、とは言わない。 だが、だからと言って、全てを自分の判断で行ったら、それは仲間を危険に晒すことになる」

「……うん」

「基本的に命令を守れば、結果は後からついてくる。 少なくともこの機動六課には、手柄を独り占めしようとしたり、他人を蹴落とすような人物は、誰一人としていない」

兄さんの言うとおり、機動六課に配属されている人たちは、ロングアーチやバックアップも含めて、みんないい人達だ。

そう思っていると、兄さんは私の頭に手を置き、

「だからティアナ、焦らなくてもお前はまだ若い。 時間は沢山あるんだ。 お前が歩みを止めなければ、きっと夢は叶う」

兄さんは微笑んでそう言う。

「話はこれだけだ。 今日はゆっくり休んで、明日からまた頑張るんだぞ」

「……うん!」

兄さんの言葉に、私はしっかりと頷いた。





私は凡人だから、もっと頑張らないと。




【Side Out】






その日の夜。

食堂を片付けてふと外を見ると、ティアナが原作でやっていたように、自主トレーニングをしていた。

おいおい、この世界じゃティーダさんが生きてるからあんまり無理しないと思ってたんだけどなぁ。

まあ、ティアナが努力家なのは根っからってことか。

この世界のなのはなら、アニメのように撃墜したりはしないだろうけど、こうやって無茶やってる姿を見るのもなんだかなぁ。

そう思った俺は、コーヒーを水筒に入れ、ティアナの所へ向かった。





「よっ、お疲れさん」

俺はそう言いながらティアナに声をかける。

「ッ…………ユウさん」

ティアナは俺に気付き、訓練を一旦中断する。

「…………ユウさんも、無茶を止めろって言いに来たんですか?」

ティアナは、若干拗ねるように言ってくる。

それに対し俺は、

「いや…………俺には強くなろうと努力してる奴を止める権利なんかないさ」

「えっ?」

俺の言葉に、ティアナが軽く驚いた声を漏らす。

才能の塊みたいな俺に、ティアナを止める権利はない。

俺の存在自体が、努力している奴をあざ笑うに等しいから。

まあ、魔力制御がてんでダメという欠点もあるが。

「それでも、一息入れるぐらいは良いんじゃないか?」

俺は、水筒に入れたコーヒーをコップに注ぎ、ティアナに差し出す。

「あ…………すみません……」

ティアナは若干躊躇したようだが、デバイスを待機状態に戻し、コーヒーを受け取った。

コーヒーを冷ましながら、両手でコップを持ち口を付けるティアナ。

「…………あったかい」

ポツリと漏らすティアナ。

不覚にもその姿を可愛いと思ってしまった。

「ティアナは………」

「はい?」

「ティアナは何で自分を凡人だと思うんだ?」

俺はそう尋ねてみる。

ティアナは若干俯くと、

「…………私には、スバルやシグナム副隊長みたいな近接能力も無ければ、フェイト執務官みたいなスピードもない。 アリサさん達は、魔導師の力は無くてもマギメンタルを開発した超天才。 得意の射撃も兄さんや高町隊長に比べれば、児戯みたいなものです。 レアスキルも持ってなければ、魔力が特別多いわけでもない。 こんな私が凡人でなければなんだと言うんですか?」

ティアナは自傷気味に呟く。

「少なくとも、魔力制御は飛び抜けて高いと思うが?」

俺はそう言ってやる。

「え?」

ティアナは驚いた顔で俺を見る。

俺は、ふと思いついた。

ティアナなら、『アレ』が出来るかもしれない。

昔思いついたことだが、魔力制御が下手くそな俺には無理だったこと。

俺は両手を前にだし、それぞれ人差し指を立てて、人差し指の先にオレンジと青の魔力弾を発生させる。

「ティアナ、問1。 オレンジがティアナの魔力弾。 青がなのはが戦闘時に使っている魔力弾だ」

2つの魔力弾の大きさは全く同じ。

「この魔力弾は、貫通系の魔力弾だ。 この2つをぶつけ合えば……」

俺はそう言いながら魔力弾を飛ばし、空中で2つをぶつけ合う。

その結果、オレンジの魔力弾は砕かれ、青の魔力弾はそのまま飛んで空に消える。

「さて、同じ大きさなのに、何故オレンジの魔力弾は撃ち負けた?」

俺はティアナに問いかける。

「それは……込められている魔力の密度が青いほうが高いからです」

ティアナの答えに、

「正解」

俺は頷いた。

「では問2。 込める魔力は変えずに、オレンジの魔力弾が青の魔力弾を撃ち破るにはどうすればいい?」

「えっ?」

俺の問いにティアナは思わず顔をしかめる。

「それは……無理なんじゃ……」

ティアナはそう呟くが、

「そうかな?」

俺は先ほどと同じ青の魔力弾を飛ばして自分の方へ向かうようにコントロールする。

そして、左手の指先に先ほどと同じオレンジの魔力弾を作り出し、向かってくる青の魔力弾に向かって構える。

「シュート」

俺がそう呟いた瞬間、閃光が走ったかと思うと、いつの間にか青の魔力弾が砕かれて四散していた。

「えっ? 今の……一体どうやって……?」

ティアナは四散した魔力弾を呆然と見ている。

「ティアナは銃型デバイスを使っているけど、そもそも銃がどういう物か知っているか?」

「えっ? ……えっと……確か、種類にもよりますけど、鉛玉を高速で撃ち出すものでしたよね?」

若干自信なさげに答えるティアナ。

「まあ、正解。 因みに、その速度はどのくらいか分かるか?」

「そ、そこまでは……」

「そうか。 参考までに言っておくと、拳銃タイプではおよそ秒速355m。 音速より速いな。 ライフルになれば秒速800m超なんてものもあるぞ」

「ッ!?」

ティアナは絶句する。

「当然魔法じゃないから銃弾をコントロールなんて事は出来ない。 けど、狙いを付けられて撃たれたら、並の魔導師では対処不能だ」

俺は至近距離で放たれた銃弾を掴むなんて離れ業をやらかした事もあるが……

「今から言うことは俺の勝手な意見だから気を悪くしないでくれ。 ティアナやなのはが使っている射撃型の魔力弾は、誘導することも考えているせいか、弾速はそれほど速くない。 いくら速いとは言っても、魔力強化なしでも視認することは可能だ」

「はい……」

「だから、はっきり言って銃型のデバイスを使っている意味は何もない。 魔力弾をコントロールするなら杖型を使ったってなんら変わりはない」

「ッ……!」

流石にその言葉はショックだったのか、ティアナは声を漏らす。

「銃とは狙って撃つ物だ。 本来はコントロールするものじゃない」

俺は再び左手にオレンジの魔力弾を発生させる。

「俺がさっきやったことは、魔力弾を銃弾に近づけたことだ。 先ずは魔力を圧縮……」

拳大の大きさだった魔力弾が直径10mmぐらいの大きさまで圧縮される。

「魔力弾の形を円錐状に……」

魔力弾の形が銃弾の形に近くなる。

「更に回転を加えて……」

魔力弾が高速回転し、

「圧縮した時の反動を弾の後方部分から開放」

次の瞬間、視認できないスピードで魔力弾が撃ち出された。

ただ、魔力光が一筋の線を描いていた。

「……とまあこんな感じだ。 スピードが速すぎるからコントロールは出来ないが、銃型のデバイスを使うティアナには、おあつらえ向きじゃないか?」

ティアナを見ると、ふるふると震えていた。

「私となんら変わらない魔力弾が……ここまでのものになるなんて……」

「魔力制御が下手くそな俺は、全部デバイス任せで、単発ずつしか撃てないけどな。 ティアナなら連射も可能になるんじゃないか?」

俺は至極真面目にそう言う。

「私に……出来るでしょうか?」

「必ずできる!…………なんて無責任なことは言えないが、俺よりも可能性があるのは確かだ」

「……そこは嘘でも出来るって言う所じゃないでしょうか?」

ティアナは苦笑しながらそう言う。

「ま、あとはティアナの頑張り次第だろ?」

俺はそう言って踵を返す。

「まあ、魔力制御の練習なら体力は使わないだろうし、寝不足にならない程度に頑張れ。 勝つためには、実力をつけることもそうだが、万全の体調で望むことも大事だからな。 それに、スクランブルがかかった時も、ちゃんと出れるようにしとけよ。 お前はもう訓練生じゃない。 立派な一人の部隊員なんだからな。 疲れてて任務失敗じゃ、お話にもならねーぞ」

それだけ言って俺はその場を立ち去った。








【Side ティアナ】



「お前はもう訓練生じゃない。 立派な一人の部隊員なんだからな。 疲れてて任務失敗じゃ、お話にもならねーぞ」

その言葉を聞いたとき、私の心に衝撃が走った。

そうだ。

私はもう訓練生じゃない。

私の行動が、人の命を左右することだってあるのだ。

そんな時に疲れてて失敗したら、目も当てられない。

高町二尉の訓練は確かに厳しい。

でも、翌日に疲れを残さないようにしっかりと調整されているし、いざという時にスクランブルがかかった時にも、即座に動けるだけの体力は残っている。

私は、自分が行おうとした愚行に気付いた。

高町二尉の訓練だけでもギリギリなのに、そこから無理して訓練すれば疲れが溜まるのは目に見えている。

それなのに、目先の失敗にとらわれて無茶な特訓をしようとしていた。

私は、クロスミラージュを顔の前に持ってきて一発の魔力弾を創りだす。

ユウさんがやっていたように、魔力弾の圧縮を試みる。

「くっ……!」

思ったよりも難しく、魔力弾は半分程度しか縮まらない。

それでも私はクロスミラージュを構え、近くの木に狙いを定め、引き金を引く。

しかし、放たれた魔力弾は思ったよりも弾速が速く、コントロールする暇もなく狙った木を外れ、その後ろにあった木に当たった。

私の通常の魔力弾は、木を貫通するほどの威力はない。

でも、今作った魔力弾は簡単に木を貫通し、その後ろの木を中程まで削った。

「………………」

私はその威力に呆然となる。

使った魔力はいつもと変わらない。

でも、その威力は倍以上。

しかし、弾速が速すぎてコントロールが難しい。

いつもなら簡単に当てられる距離を外してしまった。

その時、もう一つユウさんが言っていた事を思い出した。

『銃とは狙って撃つ物だ。 本来はコントロールするものじゃない』

「銃とは……狙って撃つもの……」

私はユウさんに言われた言葉を反復する。

ユウさんが言っていた。

今の私の使い方では、銃型デバイスを使っている意味は無いと。

ユウさんの言葉と、今撃った魔力弾の跡を見つめ、私は自分のやるべき事に気付いた。

「ありがとうございます。 ユウさん」

私はもうこの場にいない人に向けてお礼を言った。







【Side Out】












【Side とある管理局員】





「はぁ…………」

思わずため息を吐く。

その理由は、目の前にいるローザ・レイシス一等空尉。

「ムキー! 一体どうしたの私は!? 最近全然調子が出ないわ!」

そう叫ぶレイシス一尉。

そりゃそうだ。

ここ最近のレイシス一尉は、任務で失敗ばかり。

エースオブエースと呼ばれている彼女は、「彼女に不可能な任務は無い」と言われたほどだ。

ところが、最近では味方誤射など日常茶飯事、人質を犯人ごと攻撃、護衛物を破壊などなど、色々な失態を繰り返している。

雑誌などでも、「レイシス一尉、まさかの不調!?」とか、「エースオブエース失墜の危機!?」などと囁かれている。

ぶっちゃけ俺には…………というか、レイシス一尉本人以外の部隊員にはその理由は分かっている。

その理由は、高町二尉がいなくなったからだ。

数ヶ月前、高町二尉は新設された部隊、『機動六課』に出向となった。

このレイシス一尉率いる部隊には、レイシス一尉以外が知る、暗黙であり共通の見解が一つあった。

それは、『真のエースオブエースは高町 なのは二等空尉である』というものだ。

高町二尉は、レイシス一尉の敵味方関係なしの無差別攻撃から仲間を守り、レイシス一尉が攻撃する前に人質を犯人から救出し、これまた護衛物をレイシス一尉の考え無しの攻撃から守ったりetc。

レイシス一尉の尻拭い全てを受け持っていた。

その高町二尉の尽力に何一つ気付かないレイシス一尉は、手柄をすべて自分の物とし、エースオブエースの名を欲しいままにしていた。

訓練の模擬戦闘では、レイシス一尉は高町二尉に無敗だが、傍から見ても高町二尉が手を抜いているのは丸分かりだった。

そんなことにも気付かないレイシス一尉は、増長を続ける。

ある日、俺は高町二尉に訪ねたことがあった。

何故レイシス一尉にワザと負けているのかと。

その問に返ってきた答えは、

「あの人、勝ったら勝ったでめんどくさそうなんだもん」

不覚にも凄まじく納得してしまった。

レイシス一尉の魔導師ランクはS+。

しかし、その殆どはレイシス一尉が持つ、馬鹿げた魔力量のおかげだ。

対して高町二尉の魔導師ランクはAAA。

もし高町二尉がレイシス一尉に勝ったら、確かに色々めんどくさそうだ。

あの人、プライドだけは人一倍あるからな。

話が逸れたが、レイシス一尉の尻拭いを受け持っていた高町二尉が居なくなったため、レイシス一尉のメッキが剥がれだしたのだ。

俺たちもフォローしようとしているが、全く追いつかない。

居なくなって、高町二尉の凄まじさを再認識した。

それでも、調子が悪いとかなんとか言い訳ばかりして、自分の非を認めようとしない。

いや、もしかしたら気づいているのかもしれないが、それを認めるのを自分のプライドが許さないってところか?

ふと海辺を見ると、遠くに見覚えのある桜色の魔力光が見える。

そういえば、この辺りには機動六課の隊舎があるって話だったな。

「あら? あの魔力の色は……?」

レイシス一尉も、その魔力光に気付いた。

レイシス一尉の顔を見ると、ニヤリと怪しい笑みを浮かべていた。

うわ、嫌な笑顔。

また無茶なこと考えてるのか?

そうならないように祈るものの、この数十分後に問題は起きてしまうのだった。






【Side Out】








俺がティアナに圧縮魔力弾を教えてから数週間。

今日は、なのはとの模擬戦の日だ。

どうやらティアナは、アニメの時のような無茶はせず、調子も良さそうだ。

俺と桜はちょっと気になったので、模擬戦を観戦させてもらってる。

スバルとティアナは今までの訓練を活かし、うまくなのはと戦っている。

ティアナは、俺の教えた圧縮魔力弾は使っていないが、キレのある魔力弾のコントロールで、なのはを攻撃していく。

とはいえ、元々の地力が違うので、ジリジリとスバルとティアナは追い詰められていく。

しかし、

「ここまでは想定通り! スバル、次で最後よ!」

「うん! なのはさんをあっと言わせてあげよう!」

何かを企んでいるのか、そうやり取りを交わす2人。

「勝負を掛けてくるみたいだね」

身構えるなのは。

そして、

「うぉおおおおおおおおおおおっ!!」

ウイングロードと共に、スバルが突っ込んでいく。

「一直線に突っ込んでくる!? 幻影?」

なのははとりあえず迎撃しようと魔力弾を放とうとするが、別方向からティアナの魔力弾が飛んできた。

なのはは咄嗟にそれを躱すが、その隙にスバルが突っ込んでいく。

そこでなのはは気付く。

「幻影じゃない! 本物!?」

「一撃必倒! ガルルキャノン!!」

スバルは、ガルルキャノンをゼロ距離で打ち込む。

なのはは咄嗟にプロテクションを張ってそれを防いだ。

いくらなのはでも、スバルのガルルキャノンは防御に集中しないと防ぎきれない。

「くぅうううううっ!」

「はぁああああああああっ!!」

スバルは力を込めるが、流石に破れそうにない。

「惜しかったけど、これで終わりだね!」

スバルのガルルキャノンの勢いが弱まってきたので、なのははスバルにバインドをかけようと手を翳す。

しかし、スバルはニヤリと笑って、

「まだ終わりじゃないですよ、なのはさん」

その言葉に怪訝に思ったなのはだが、そこで気付いた。

シュミレーターで作った廃ビルの屋上に、ティアナがクロスミラージュを構え、立っていた。

「ティアナ!? でも、ティアナの魔力弾じゃ、私の防御は抜けない……!」

「そうとは限らないですよ。 ティアだって、毎日頑張ってるんだから!」

スバルはそう言うと、ガルルキャノンの反動でその場を飛び退く。

「ティア!」

「OK!」

スバルがティアナに合図を送ると、ティアナはなのはに狙いを定める。

「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

ティアナは引き金を引いた。

その瞬間、圧縮された魔力弾が目にも止まらぬスピードで発射された。

その魔力弾は、なのはのプロテクションに当たるが、それを貫き、なのはのバリアジャケットをも貫いた。






【Side なのは】





私は呆然とした。

ティアナの魔力弾は今までの魔力弾とは比較にならないスピードと貫通力を持っていた。

私のプロテクションを軽々と貫き、バリアジャケットまで破った。

私は、肩口の破かれたバリアジャケットを見る。

ティアナの魔力弾は、辛うじてかするに留まった。

もし直撃したら一撃で落とされていたと思う。

「外したっ!?」

ティアナが悔しがる。

今のはユウ君が考えた超圧縮魔力弾。

ユウ君いつの間に教えたの。

私には出来なかったし、桜お姉ちゃんでも一発作るのに相当の集中力と時間がいる。

それをティアナはこんな短期間に……

しかもトレーニングバインドつけたままで。

やっぱりティアナは魔力制御に関しては天才なの。

私は平静を装ってスバルとティアナにバインドをかける。

「はい、2人とも捕獲。 これにて模擬戦修了」

私はそう言うが、内心冷や汗ものだった。

「ああ~、惜しかったなぁ」

スバルがそう漏らす。

「ごめん、最後にミスったわ」

ティアナがスバルに謝った。

「それでも凄いよ。 なのはさんのプロテクションとバリアジャケットを貫くなんて!」

スバルは笑ってティアナを賞賛している。

うん、私もビックリしたよ。

さてと、今日の模擬戦の反省点を教えようとしたとき、

「ッ…………!?」

ひじょーに見覚えのある色の魔力弾が私に向かって飛んできた。

私は咄嗟にプロテクションを張ってその魔力弾を受け止める。

「なのはさん!?」

いきなり攻撃を受けた私に驚いてスバルが声を上げる。

今の魔力光の色を持っていて、こんなことをする人なんて、私の知る限り1人しかいない。

「…………いきなり何するんですか? レイシス一尉?」

私は上空にいるレイシス一尉に呼びかけた。

「うふふ。 久しぶりですね高町さん。 いえ、たまたま貴女の訓練を見かけたから、どんなものかと思いきや、随分と甘っちょろい訓練をしているのね?」

私は頭が痛くなってくるのを感じた。

相変わらずの相手を馬鹿にするような話し方だね。

「私の訓練はともかく、いきなり攻撃するのはどうかと思うんですけど?」

「そう遠慮しなくてもいいのよ。 今日は特別に私の訓練を受けさせてあげるわ」

あ~、本当に頭が痛くなってくる。

「ロ、ローザ・レイシス一等空尉…………?」

「あ、あのエースオブエースの…………?」

私の後ろではスバルとティアナが呆然と声を漏らしている。

私は、2人のバインドを解除すると、

「2人とも、早くこの場を離れて」

そう呼びかける。

「「えっ?」」

「早く!」

私は2人を急かすが、

「特別大サービスです。 そこの2人にも私の教導を受けさせてあげるわ!」

そう高らかに言うレイシス一尉。

あ~も~、貴女教導資格持って無いでしょ!

私は叫びたくなるのを必死で堪える。

私の大事な教え子をこんなところで潰されたくないの!

「さあ、教導開始よ!」

問答無用で魔力弾をばら撒き始めるレイシス一尉。

相変わらずの無差別攻撃なの~!

「レイジングハート!」

『Wide area protection.』

私はレイジングハートに呼びかけ、広範囲障壁を張って、レイシス一尉の攻撃に備えた。





【Side Out】






【Side スバル】





レイシス一尉の魔力弾が雨霰と降り注いでくる。

って、こんなの避けれるわけ無い!

その時、

「レイジングハート!」

『Wide area protection.』

なのはさんが障壁を張ってくれて、私達を守ってくれた。

「2人とも、私の後ろから出ちゃダメだよ!」

なのはさんはそう言って魔力弾を受け止め続ける。

だけど、なのはさんの表情を伺うに、かなり厳しそうだ。

「ほらほら! どうしたの高町さん!? そんなことでは教導にならないわよ!」

そう言ってくるレイシス一尉。

でも、こんなの教導とは思えない。

「何言ってるのよあの人! これの何処が教導なのよ!?」

ティアも私と同じことを思っているのか、そう口から漏らす。

あの人は、ただ闇雲に魔力弾をばら蒔いているだけ。

きっと、なのはさんだけならなんとか対処出るんだけど、私達を守るために受けに回ってるんだ。

私は、なのはさんに自分たちを気にしないように言おうとした。

でも、

「な、なのはさ「スバル、ティアナ……」」

なのはさんが私の呼びかけに被せるように声を発した。

「心配しないで。 絶対に守るから!」

そう言ったなのはさんの背中は、とても大きく見えた。

ああ、そうだ。

だから、私はこの人に憧れたんだ。

この人のように、誰かを守れるようになりたいと、そう思えるようになったんだ。

その時、魔力弾の嵐が一旦途切れる。

終わった?

私はホッとしてレイシス一尉を見上げた。

でも、

「…………ッ!」

そこには、今まで以上の魔力を杖に集中させるレイシス一尉の姿。

「砲撃ッ!?」

ティアが思わず叫ぶ。

そして、

「受けなさい!」

それが放たれた。

「レイジングハート! 全力防御!」

『Yes,master.』

砲撃をなのはさんが受け止める。

「ッ…………! くぅぅぅぅぅぅぅ…………!」

でも、砲撃の威力は凄まじく、なのはさんのプロテクションに罅が入り始めた。

このままじゃみんな吹き飛ばされちゃう。

その時、

「レイジングハート! バリアジャケットの魔力をプロテクションに回して!」

なのはさんのバリアジャケットが消え、いつもの教導制服になる。

でも、そんなことしたら、いくら非殺傷の攻撃でも身体にダメージが!

なのはさんのプロテクションは、先程よりも持ちこたえてるけど、破れるのも時間の問題。

レイシス一尉は、まだ余裕がある。

「これで終わりよ! 高町さん!!」

レイシス一尉が更に砲撃に魔力を込め、極太の砲撃となってなのはさんのプロテクションに罅を入れていく。

「くぅぅぅ…………あああっ!?」

遂になのはさんに限界が訪れ、プロテクションが破られた。

「「なのはさん!!」」

私とティアは思わず叫ぶ。

そして、なのはさんが閃光に飲み込まれようとした刹那。

突然砲撃が縦に切り裂かれた。

更に、

「ドラモンキラー!!」

次の瞬間に衝撃が走り、レイシス一尉の砲撃を跡形もなく吹き飛ばした。

「えっ?」

「い、一体何が……?」

呆然と呟く私達。

すると、目の前になのはさんを優しく抱き上げた黄金の装甲を纏う一人の男の人がいた。

「あ…………ユウ君…………」

なのはさんは、魔力を使い果たしたのか、弱々しくそう呟く。

って、この人ってユウさん?

「大丈夫か、なのは?」

そう優しい声で語りかけるその人の声は、紛れもなく毎日聞いているユウさんの声だ。

でも、髪と瞳の色が赤くなっている。

「うん……助けてくれたんだね…………ありがとう」

なのはさんは、もう心配することは無いと言わんばかりに安心しきっている表情だ。

すると、疲れ果てたのか、なのはさんはそのまま気を失った。

そして次の瞬間、

「「ッ!?」」

押しつぶされそうな程の凄まじい魔力を感じた。

その発生源は目の前のユウさん。

ユウさんは、上空のレイシス一尉を睨むように見上げている。

「ユ、ユウさんが…………怒ってる?」

私は思わず呟く。

ユウさんが怒ってる所なんて初めて見た。

そして、

「待って、ユウ」

そんなユウさんを、呼び止めた人がいた。

それは、

「さ、桜さん…………」

ティアが呟く。

「ユウ、ここは私にやらせて」

桜さんは、ユウさんに近づいていくと、気を失っているなのはさんの頭を、そっと撫でる。

「…………わかった。 ここは譲ろう」

ユウさんは、先程までの魔力を収め、なのはさんを抱いたまま数歩下がる。

代わりに、桜さんが前に出た。

「そこの貴女。 確か、レイシス一等空尉だったかしら?」

桜さんがレイシス一等空尉に呼びかける。

「え、ええ…………そういう貴女は? 高町さんにそっくりですけど?」

レイシス一尉はさっきのユウさんの魔力にあてられたのか、少し吃っている。

「私は高町 桜。 なのはの双子の姉よ」

「高町さんの姉? 初耳ね」

「私は管理局員じゃないしね。 私はただのパティシエ見習いよ」

そういう桜さん。

って、桜さんがパティシエ見習いだったら、9割のパティシエは、パティシエ見習い以下って事なんだけど…………

「そう。 それで? その高町さんのお姉さんが、この私になんの用?」

「そうね。 簡単に言うわ。 私って、他の皆から言わせれば、結構シスコンらしいのよね?」

「は?」

桜さんは、何とも場違いな発言をする。

レイシス一尉もポカンとして声を漏らした。

「まあ、なのはを大切に思ってることは事実だし、別に否定する気はないんだけど…………」

「な、何が言いたいの!?」

レイシス一尉が声を荒げた。

「わからない?」

その瞬間、桜さんの雰囲気が目に見えて変わった。

「私の大切な妹を理不尽にいたぶって、ただで済むと思っていないでしょうね!!」

桜さんは凄まじい怒気を含んでそう叫んだ。

そして、

「レイジングソウル! セットアップ!!」

桜さんが白銀の魔力光に包まれた。

その魔力光の中から現れた桜さんは、なのはさんのバリアジャケットとよく似たバリアジャケットを纏っていた。

なのはさんのバリアジャケットとの違いは、青いラインが赤くなっているところと、髪型がポニーテールになっている事。

そして、デバイスの杖のコアが白銀なのと、持ち手のところが赤くなっていることだけだ。

桜さんは空を飛び、レイシス一尉と対峙する。

「気は確か? エースオブエースであるこの私に楯突くなんて?」

「もちろん。 何で貴女如きに臆さなきゃいけないわけ? なんちゃってエースオブエースさん?」

レイシス一尉の言葉にそう返す桜さん。

っていうか、なんちゃってエースオブエースって……

「な、なんですってぇ~!?」

当然というか、怒りで顔を真っ赤にするレイシス一尉。

「事実じゃない。 最近の貴女の失敗談は、世間話のいいネタよ」

「そ、それは偶々調子が悪かっただけよ!」

桜さんの言葉に、目に見えて焦るレイシス一尉。

「ふ~ん…………どうして調子が悪くなったか教えてあげようか?」

そんなことを言う桜さん。

って、桜さん分かるの?

「な、何故あなたが私の不調の原因を知っているんです!?」

「別に私じゃ無くても、アンタの部隊の人間なら、アンタ以外全員分かってるんじゃないの?」

その言葉を聞いて、レイシス一尉がバッと勢いよく振り向く。

その視線の先には、いつの間にかレイシス一尉の部下と思われる数名の局員がフェイト隊長達と一緒に観戦していた。

レイシス一尉が振り向くと、その局員たちは、露骨に視線をそらしている。

ご丁寧に口笛まで吹いてる人もいるし。

うわ~、これって桜さんの言ってたことが図星って事?

「で、アンタの不調の原因だけど、不調になり始めた時期に何かがあったでしょう?」

「は? 不調になり始めた頃? その時は高町さんが出向になったぐらいで、私には何の関係もないわ」

それを聞くと、桜さんは思いっきりため息をついた。

「そこまで言って気づかないのなら別にいいわ。 私がアナタに制裁を加えることには変わりないから」

桜さんは構える。

「ふん! 身の程を知りなさい!」

レイシス一尉も構えた。

すると、

「スバル、ティアナ、なのはを頼む」

ユウさんがなのはさんを私達に預けてきた。

「あ、あの、ユウさん?」

ティアナが質問しようとしたところで、

「そこを動くなよ。 心配するな。 一発も通さねえよ!」

そう言って魔力弾を用意するレイシス一尉を見上げた。

って、レイシス一尉もしかして!

その瞬間、再び辺り一面に魔力弾がばら蒔かれた。

うわ~!

また無差別攻撃!?

桜さんは余裕の表情でその魔力弾の嵐をひょいひょいと避けていくけど、私達は……

だけど次の瞬間、

「はぁああああああっ!!」

ユウさんが右腕を横薙に振るう。

それと同時に魔力斬撃が吹き荒れ、私たちの方に降り注いでいた魔力弾を全てかき消した。

「す、すごい…………」

私は呆然と呟く。

確か、レイシス一尉の魔導師ランクはSランクオーバーだったはず。

じゃあ、その攻撃を簡単にかき消したユウさんって一体…………

その時、

「シュート!」

桜さんが魔力弾の嵐を掻い潜りながら、1発の魔力弾を放った。

その白銀の魔力弾は、レイシス一尉へ一直線に向かう。

でも、私は1発だけじゃすぐにレイシス一尉の魔力弾にかき消されてしまうと思った。

だけど、それは違った。

「ふっ!」

桜さんが魔力弾をコントロールして、魔力弾の嵐の隙間を縫うようにレイシス一尉へ向かっていく。

そして、

「がっ!?」

魔力弾の嵐を掻い潜った白銀の魔力弾がレイシス一尉の頭部へ直撃した。

それによって魔力弾の嵐が途切れる。

「その程度?」

桜さんが余裕綽々の態度で言葉を投げる。

「くっ……その程度の魔力弾で私を倒せると思っているの!?」

レイシス一尉は頭に血が上っているのか、声を荒げて叫んだ。

「そう思うなら、さっさと私を落としてみなさい」

桜さんは挑発的な言動を続ける。

「このっ…………がっ!?」

桜さんに杖を向けたレイシス一尉の頭部に再び白銀の魔力弾が直撃する。

「それっ!」

桜さんが杖を振り上げると、いつの間に用意していたのか下から魔力弾が急上昇してきてレイシス一尉の顎を打ち上げる。

「がふっ!?」

大きく仰け反った所に、

「はっ!」

腹部にボディーブローの様に魔力弾を叩き込んだ。

その様子を見ていて、私はすごいと思った。

まるで、近接格闘の連撃の様に鮮やかな魔力弾の操作だ。

さっきから、桜さんは強力な魔法を使っていない。

ティアが普段使ってるぐらいの魔力弾だ。

「このっ……調子に乗るなっ!!」

レイシス一尉はそう叫ぶと、身体全体を防御フィールドで覆った。

桜さんの魔力弾は、その防御フィールドに全て弾かれて消える。

「うふふ。 この私の防御フィールド、破れるものなら破ってみなさい!!」

レイシス一尉はそう高らかに叫ぶ。

だけど、

「………………」

桜さんは全く攻撃しようとしなかった。

「ど、どうしたの!? さあ! 早く攻撃してみなさい!」

桜さんの様子に、そう促すレイシス一尉。

「なんで?」

桜さんは首を傾げてそう聞く。

「え?」

「何で攻撃が効かないって分かってるのに攻撃しなきゃいけないの?」

桜さんは、何を当然な事をと言わんばかりに問いかける。

「な……? そ、そう。 貴女は負けを認めるというのね?」

レイシス一尉はそう言うが、

「何で? 防御フィールドを張っている間は、あなたも攻撃出来ないでしょ? それでどうやって私を倒すの?」

「うぐっ……」

桜さんの切り返しに言葉を詰まらせるレイシス一尉。

「私は自分の出来ることと出来ないことを理解してるだけよ。 アンタと違ってね」

桜さんはそう言っているが、

「お前がその気になれば、今の状態でもあの程度の防御フィールド余裕でぶち破れるだろうに…………」

ユウさんが何かボソッと呟いた。

「まあ、仕方ないか。 アンタ、普通にヘッポコだもんね」

「わ、私がヘッポコですって!?」

桜さんの言葉に顔を真っ赤にして怒るレイシス一尉。

っていうか桜さん、エースオブエースをヘッポコって……

「ええ。 普通に戦って分かったわ。 アンタ、なのはの足元にも及ばないわ」

「な、何を言ってるのかしら? 私は高町さんには模擬戦で無敗なのよ!?」

「だからアンタはヘッポコなのよ。 なのはが手加減してることにも気付かないなんて……。 Sランクの試験に合格したのも偶々じゃないの? 私からすれば、あんたの魔導師ランクは、魔力を除けばAランク以下よ」

「な、何ですってぇ~~!!」

「魔力操作もおざなり、魔力弾も滅茶苦茶、砲撃も無理やり、戦況も見えてないし、戦術に至っては問題外。 これがヘッポコ以外のなんだって言うのよ?」

「ぐぎぎ……」

桜さんの言葉に、レイシス一尉は歯を食いしばる。

「そんな上官の尻拭いをやってたなのはの苦労がよくわかるわ」

桜さんはやれやれと首を振った。

その瞬間、

「このっ、言わせておけば!!」

レイシス一尉が杖に魔力を集中させ、

「喰らいなさい!!」

砲撃を放った。

その砲撃は、油断していた桜さんを飲み込む。

「「桜さん!?」」

私とティアは思わず叫ぶ。

しかも、その砲撃の射線軸上には私達のところも。

迫ってくる砲撃。

「こ、こっちに来る!」

私は慌てるが、

「落ち着け」

ユウさんの言葉で我に返り、

「ふん」

ユウさんの裏拳の一撃で砲撃は軌道を変えられ、海の方へ消えた。

「…………おいおい、今の殺傷設定だったぞ」

ユウさんが呆れた声でそういう。

でも、私は今の言葉を聞いて血の気が引いた。

じゃあ、今の砲撃に飲み込まれた桜さんは!

私は慌てて空を見上げる。

「あっはははは! 私を馬鹿にするからそうなるのよ!」

そう高らかに笑うレイシス一尉。

だけど、

――チャキ

「やっぱりアンタ、ヘッポコよ」

レイシス一尉のすぐ後ろで、なのはさんのバスターモードに似た形態の杖をレイシス一尉の後頭部に添えた桜さんの姿。

桜さんの言葉で笑いが止まるレイシス一尉。

一体どうやって?

「私も幻術が使えるの。 ティアナほどじゃないけどね」

私の疑問に答えるように桜さんが言葉を紡ぐ。

「それからさっきのあんたの評価に追加しておくわ。 心構えも全っ然ダメ」

その言葉でレイシス一尉が振り返った瞬間、

「ディバイン…………!」

桜さんのデバイスに魔力が集中し、

「…………バスターーーーーーーッ!!」

白銀の砲撃がレイシス一尉を飲み込んだ。

「きゃぁあああああああああっ!?」

レイシス一尉の悲鳴が響く。

何て言うか……桜さん、ある意味なのはさん以上に容赦ないな~。

いつもと違う雰囲気の桜さんに、思わず冷や汗を流した。






【Side Out】






レイシス一尉を落とした桜が、スッキリした顔で戻ってきた。

「お疲れさん……というほどでもないか?」

「当然。 あの程度楽勝よ」

桜はイイ笑顔でそう言う。

何と言うか、とことんプライドをズタズタにする戦い方と挑発だったな。

それはともかく、

「あんだけ馬鹿にしまくって、後からイチャモンつけられないか?」

俺がそう聞くと、

「それは大丈夫だと思うわよ。 なのはから聞いた限りじゃ、アイツはエースオブエースの称号に固執してるみたいだから。 タダのパティシエ見習いにコテンパンにやられたなんて言ってみなさい、間違いなくエースオブエースの座から転がり落ちることになるわ」

「なるほど」

俺は納得した。

ただ、お前がタダのパティシエ見習いってところは訂正したい。

お前は、パティシエとしても魔導師としても、全然“タダの“じゃねえだろ。

すると、桜はティアナの方へ歩いていき、

「ティアナ、私の戦い方、見てくれた?」

「は、はい。 凄かったです」

ティアナは若干緊張した面持ちで桜を見た。

まさか、翠屋のパティシエである桜が、エースオブエースを圧倒する実力の持ち主とは思っていなかったのだろう。

まあ、相手がヘッポコだったのも理由が大きいが。

「そんなに謙遜しなくていいから。 正直に答えて、今の私の戦い方、自分には不可能だと思った?」

そう言われた桜の問いに、

「…………不可能だとは……思いませんでした……」

遠慮がちにそう答える。

「よしよし。 これで不可能だなんて言ってたら、レイジングソウルでぶん殴ってた所よ。 なのはの訓練をここまで受けたんだから、あのぐらい出来て当然よ」

桜はティアナの頭を撫でながらそう言う。

そのティアナは桜の言葉に若干引いているが……

「少なくとも、今のティアナは戦い方によってはあのなんちゃってエースオブエースを倒すことができるぐらいには強くなってるわ。 だから、自信を持って。 ね?」

そう言われてティアナはハッとして、

「もしかして桜さん。 その事を私に教えるために?」

「ん~、まあ、アイツのプライドをズタズタにしてやりたいって気持ちもあったけどね。 Aランクレベルの技能でSランクオーバーの相手を倒す。 まあ、最後のディバインバスターは、ティアナの超圧縮魔力弾の代わりだけどね。 私じゃティアナみたいなスピードであの魔力弾は作れないから」

「えっ?」

「ティアナは気付いてないかもしれないけど、あの超圧縮魔力弾はSランクオーバーの魔力制御技能が必要よ。 連射となればそれ以上。 仲間内で魔力制御が得意な私でも、時間をかけて単発を作るのが精々。 ユウは魔力制御は問題外だけど、デバイスが規格外だからね」

「え? ええっ!?」

ティアナは驚きすぎて頭がついていかないらしい。

「そういうわけで、ティアナはもっと自信を持ちなさい。 あんまり謙遜してると、イヤミになるからね」

「は、はい……」

「ならば良し…………それからアンタ達!」

桜はレイシス一尉の部下達に呼びかける。

「アレ、何とかしといてね」

気絶しているレイシス一尉を指差し、イイ笑顔でそう言った。

「「「「イエス マム!!」」」」

見事な唱和と、一糸乱れぬ敬礼であった。








あとがき



第五十七話の完成。

また遅れてすみません。

3週連続土曜日出勤でした。

まあともかくティアナの魔改造が加速しました。

既になのはのプロテクションとバリアジャケットを貫く威力の持ち主です。

まだ狙いが甘いですが。

さて、ティアナ撃墜がなのは撃墜になったのかと思えばキレた桜によってなんちゃってエースオブエースの撃墜となりました。

まあなんちゃってエースオブエースは、なのはがいなけりゃタダのヘッポコですから。

今回はこの程度ですが、いずれはなのは自身がキッチリと落とし前を付けるつもりですが。

さて、次回もオリジナル分が大量に入ってきます。

とりあえず自分が読んできたなのは二次小説の中で、見たことないストーリーを書こうと思ってます。

まあ、探せばおそらくあるのでしょうけど……

ヒント、中心人物はエリオ君。

では、次回も頑張ります。




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