第五十四話 初陣
【Side ティアナ】
私達がデバイスルームで新デバイスを受け取っていると、機動六課に警報が鳴り響く。
それは、紛れもなく出動の合図。
すぐに通信で八神部隊長から連絡が届き、山中を移動中のリニアレールがガジェットに乗っ取られ、暴走中らしい。
私達の任務は、ガジェットの殲滅と、そのリニアレールに積まれているであろうレリックの回収。
八神部隊長の説明が一通り終わると、
「皆、初めての出動だけど、緊張しないで、いつもの訓練通りにやれば大丈夫だからね」
高町二尉がそう声をかけてくる。
「特にスバルとティアナ。 慣れない新デバイスでいきなりの実戦は不安かもしれないけど、何時動作不良を起こすかもしれない物よりかはマシだと思うから、頑張って」
「「はい!」」
私とスバルは返事を返す。
「一応、現場に到着するまで少し時間があるから、一度セットアップして、感触だけでも慣れておくといいよ」
「「わかりました!」」
高町二尉の指示に、確かにと内心頷きながら返事した。
慣れないデバイスは確かに不安だけど、高町二尉の言うとおり、何時動作不良を起こすか分からない物よりかは、動作不良を起こす可能性が限りなく低い新デバイスの方が良いに決まっている。
そして、私達は、ヴァイス陸曹が操縦するヘリに乗り込み、現場へと飛び立った。
【Side Out】
【Side なのは】
計画通りジェイルさんがリニアレールをガジェットに襲わせたらしい。
やっぱり、経験を積むには実戦が一番だしね。
まあ、わかってやってることだから、ある意味これも訓練と言えなくも無いんだけど………
私達は、ヴァイス君の操縦するヘリに乗って現場へ急行した。
スバルとティアナは、私の言った通り、新しいデバイスを展開して感触を確かめている。
すると、ロングアーチから航空戦力の増援が来たことが伝えられ、私とフェイトちゃんはそっちに向かうことになった。
まあ、これも新人たちに経験を積ませるための計画だけどね。
ヴァイス君に後部ハッチを開けてもらい、私はレイジングハートとバリアジャケットを展開する。
それから飛び降りようとしたところで、
「……………そういえば言い忘れてたけど」
私はふと言い忘れたことを思い出し、皆に向き直った。
「偶にこういうヘリとか高台とかから、飛び降りてからバリアジャケットを展開する“バカ”な人達がいるけど、そんな事絶対に真似しちゃだめだからね! 戦場では何が起こるか分からない。 限りなく低い可能性と言えど、飛び降りた瞬間に攻撃が来るかもしれない。 そうなった時、生身だったら一巻の終わりだよ。 だから、戦場に出るときは、必ず戦闘準備を完了させてから出ること! これは絶対だよ!」
私は昔桜おねえちゃんに注意されたことを、改めて皆に伝えた。
「「はい!」」
スバルとティアナはしっかりと返事をして、
「当然じゃない、そんなこと」
「うん。 わかってるよ」
「っていうか、そんな命知らずホントにいるの?」
アリサちゃん、すずかちゃんは何当たり前のことをと言わんばかりに頷く。
それからアリシアちゃん。
私は、そんな命知らずの副官をやってたんだよ?
私は、カッコつけるために、ことごとく飛び降りてからセットアップする自己中エース・オブ・エースを思い浮かべる。
私が何度進言しても、結局直してくれなかったし。
私は軽くため息を吐くけど、すぐに気を取り直し、後部ハッチの端に立つ。
「スターズ01、高町 なのは。 行きます!」
私はそう宣言して飛び降り、航空型ガジェットへと向かった。
【Side Out】
【Side スバル】
なのはさんが航空戦力の迎撃に向かった後、私達は降下ポイントに向かう。
その間、リインフォース曹長から作戦の内容を伝えられる。
それは、スターズとライトニングに分かれて、リニアレールの最前列と最後尾から中央の重要貨物室に向かってガジェットを破壊しつつ向かうというもの。
先に到達した方がレリックを確保するということだった。
「私も現場管制として降りるが、基本的に手は出さないと思ってくれ。 危険になったら助けるが、お前たちの経験を積むためにも、お前たちだけで解決して見せろ」
リインフォース曹長がそう言う。
「「「「「了解!」」」」」
そうやって、作戦内容を確認してる間に、降下ポイントに到着する。
「さーて、隊長さんたちが空を押さえてくれてるお蔭で、安全無事に降下ポイントに到着だ。 準備はいいか!?」
「「「「「はい!」」」」」
ヴァイス陸曹の言葉に、私達は返事を返す。
すると、後部ハッチが開いた。
私は、ティアと顔を見合わせて、互いに頷く。
「マッハキャリバー!!」
「クロスミラージュ!!」
「「セットアップ!!」」
私達は、なのはさんの言った通りに飛び降りる前にバリアジャケットとデバイスを展開する。
さっきまで展開しておいたから、感触にはだいぶ慣れた。
後は、実際に使って、能力を把握するだけ!
「スターズ03! スバル・ナカジマ!」
「スターズ04! ティアナ・ランスター!」
「「行きます!!」」
私達はそう宣言して後部ハッチから飛び降りた。
私達は、うまくリニアレールの先頭車両の上に着地する。
リインフォース空曹は、飛行魔法でゆっくりと着地した。
ヘリを見上げると、リニアレールの最後尾で、アリサさん達が飛び降りているところだった。
「さあ、気を引き締めろ。 ミッションスタートだ」
リインフォース曹長の言葉に、
「「はい!」」
私達が応える。
それと同時に車両の天井がボコボコに変形し、吹き飛ぶと同時に複数のガジェットが飛び出してきた。
私達はそれを飛び退くことでかわし、
「シューーーーーット!」
ティアが魔力弾でガジェットを撃ち抜く。
その隙に私は穴の開いた天井から車両の中に飛び込む。
車両の中には、まだ2機のガジェットがいたけど、
「うぉおおおおおおおおおっ!!」
私は、ガジェットが放つレーザーを掻い潜り、駆ける。
「おりゃぁああああっ!!」
そうして近づいた一機を、右腕のリボルバーナックルで殴りつける。
ガジェットは爆発し、私は他のガジェットからの攻撃を避けるためにすぐに飛び退き、マッハキャリバーを高速回転させ、車両の壁を駆ける。
「はぁあああああっ!!」
そのまま勢いを維持してガジェットに突っ込み、蹴り上げる。
その一撃でガジェットは粉砕した。
でも、
「うわっと!」
勢いが付きすぎて、天井から飛び出てしまう。
でも、
『Wingroad』
マッハキャリバーがウイングロードを出現させて車両から落ちるのを防いでくれた。
私は車両の上に着地する。
私は少し驚きながらもマッハキャリバーにお礼を言って、再びガジェットに向き直った。
【Side Out】
【Side アリサ】
私は、すずか、アリシアと一緒に、リニアレールの最後尾の車両に降り立つ。
その途端に、ガジェットが襲い掛かってきた。
ドクターの作ったものってことは知ってるけど、油断してると痛い目見るって話だから、気を引き締めていかないとね。
私達は構え、
「ナックルファイヤー!!」
「紅葉おろし!!」
「ブルーサンダー!!」
それぞれの魔法で攻撃する。
AMFキャンセラーは問題なく機能しているようで、私達の魔法は、ガジェットのAMFを素通りしてガジェットを破壊する。
本当の実戦で使ったのは初めてだけど、問題はなさそうね。
「よーし! このまま一気に重要貨物室まで行くわよ!」
私は、すずかとアリシアにそう呼びかける。
「うん!」
「オッケー!」
2人は頷いて私に続く。
そのまま車両ごとに数機のガジェットがいたけど、特に問題なく破壊して、先に進む。
リインフォースに確認を取ってみると、スバルとティアナは、私達より若干遅れているらしい。
まあ、こっちは3人だし、何より向こうは桜のトレーニングバインドをつけてるからね。
これで私達が負けたらかなり恥ずかしい。
そう思いながら重要貨物室の一個手前の車両に到達すると、今までより巨大で円形のガジェットが現れた。
「こいつって!」
「Ⅲ型だね」
「一機だけ今回の任務に出てくるって聞いたけど、私達は見事に当たりを引いたってことかな?」
そんなことを言ってると、Ⅲ型が2本のアームを伸ばして攻撃してくる。
私は、それを飛び退いてかわすと、
「ナックルファイヤー!!」
右の拳から炎を放つ。
その炎はAMFを素通りしてⅢ型の本体に直撃した。
でも、
「ッ!? 効いてない!」
表面が焦げただけで、Ⅲ型は特に問題なくそこに存在していた。
「かなりの装甲だね。 生半可な攻撃じゃビクともしないよ」
すずかがそう言う。
Ⅲ型が再びアームを伸ばしてきた。
私達は再び飛び退いてかわす。
「なら、私がアレで決めるわ! すずか、アリシア! サポートをお願い!」
私がそう言うと、
「わかった!」
「任せといて!」
2人は頼もしく頷く。
私はⅢ型に向き直ると、その場で跳躍した。
当然、Ⅲ型は空中の私を攻撃しようとアームを伸ばしてくる。
でも、
「草薙!!」
すずかが背中に背負った巨大な手裏剣を投げ、
「ライトニングブレード!!」
アリシアが手に持った剣から青い稲妻の斬撃を飛ばす。
すずかの草薙はⅢ型の左のアームを。
アリシアのライトニングブレードはⅢ型の右のアームを根元から切断する。
両方のアームを切断され、ただの丸い鉄の塊になったⅢ型に向かって、
「ファイヤー…………」
私は空中で体勢を変え、Ⅲ型に向かって跳び蹴りの体勢をとる。
そして、
「……………ロケット!!」
全身に炎を纏い、Ⅲ型に向かって急降下した。
そのままⅢ型のど真ん中を蹴り抜く。
私は車両を壊さないように調整しつつ、着地した。
私が確認の為に振り向くと、本体の真ん中に大穴を開けたⅢ型。
そして、一瞬置いて爆発した。
私は、上手くいった事にホッと息を吐く。
それからレリックを回収しようと思ったところで、
『スターズ分隊、レリックの回収完了』
リインフォースがそう報告してきた。
「あちゃぁ、時間かけすぎちゃったか」
私は、ちょっと残念に思った。
でも、マギメンタルの初披露としては上々だ。
私達は、そのまま事後処理に移行することにした。
【Side Out】
【Side なのは】
私とフェイトちゃんは、空中からリニアレールを見下ろしていた。
えっ?
ガジェット?
数分で片づけたけど?
「第一段階合格………だね?」
フェイトちゃんがそう言ってくる。
「うん。 ユウ君の言った通りだね。 じゃあ、次からはいよいよ皆にも手伝ってもらうことにしよっか?」
私は、フェイトちゃんと一緒にリニアレールを見下ろしながら、次の試練を考えることにした。
あとがき
第五十四話完成。
また遅れた。
でも短い。
ごめんなさい。
最近、休日の土日に予定が入っていて、執筆の時間が削られています。
それでもやめることは無いと思うので、気長にお待ちください。
さて、今回は流れはほぼ原作通り。
でも、ところどころ原作に対するツッコミが入ってます。
後、アリサのファイヤーロケットは、体当たりではなく、炎に包まれたライダーキックと思ってください。
では、次回も頑張ります。