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No.15302の一覧
[0] 【完結】リリカルなのは ~生きる意味~(現実→リリカル オリ主転生 最強 デジモンネタ)[友](2015/01/12 02:39)
[1] プロローグ[友](2010/01/04 15:51)
[2] 第一話[友](2010/01/04 15:52)
[3] 第二話[友](2010/01/04 15:55)
[4] 第三話[友](2010/01/05 00:19)
[5] 第四話[友](2010/01/17 13:53)
[6] 第五話[友](2010/01/17 14:31)
[7] 第六話[友](2010/01/24 12:46)
[8] 第七話[友](2010/01/31 15:55)
[9] 第八話[友](2010/02/07 10:27)
[10] 第九話[友](2010/02/14 15:40)
[11] 第十話[友](2010/02/21 11:01)
[12] 第十一話[友](2010/04/04 09:45)
[13] 第十二話[友](2010/04/04 09:46)
[14] 第十三話[友](2011/05/03 21:31)
[15] 第十四話[友](2010/03/28 07:45)
[16] 第十五話(前編)[友](2010/04/04 09:48)
[17] 第十五話(後編)[友](2010/04/04 09:49)
[18] 第十六話[友](2010/04/04 09:51)
[19] 第十七話[友](2010/04/18 07:24)
[20] 第十八話[友](2010/04/25 14:47)
[21] 第十九話[友](2010/05/02 21:59)
[22] 第二十話[友](2010/05/09 07:31)
[23] 第二十一話[友](2010/05/16 15:36)
[24] 第二十二話[友](2010/06/06 15:41)
[25] 第二十三話[友](2010/05/30 09:31)
[26] 第二十四話(前編)[友](2010/06/06 15:38)
[27] 第二十四話(後編)[友](2010/06/06 15:39)
[28] 第二十五話[友](2010/06/06 15:36)
[29] 第二十六話 (2013年11月14日 改訂)[友](2013/11/14 22:27)
[30] 第二十七話[友](2010/06/27 17:44)
[31] 第二十八話[友](2010/08/17 21:11)
[32] 第二十九話[友](2010/08/17 21:11)
[33] 第三十話[友](2010/09/19 16:35)
[34] 第三十一話(前編)[友](2010/09/19 16:30)
[35] 第三十一話(後編)[友](2010/09/19 16:34)
[36] 第三十二話[友](2010/11/07 14:58)
[37] 第三十三話[友](2010/12/05 15:37)
[38] 第三十四話[友](2010/12/05 15:36)
[39] 第三十五話[友](2011/01/16 17:21)
[40] 第三十六話[友](2011/02/06 15:02)
[41] 第三十七話[友](2011/02/06 15:00)
[42] 第三十八話[友](2011/03/13 18:58)
[43] 第三十九話[友](2011/03/13 18:56)
[44] 第四十話[友](2011/03/27 15:55)
[45] 第四十一話[友](2011/04/10 20:23)
[46] 第四十二話[友](2011/04/24 16:56)
[47] 第四十三話[友](2011/05/03 21:30)
[48] 第四十四話[友](2011/05/15 14:37)
[49] 第四十五話[友](2011/05/29 20:37)
[50] 第四十六話[友](2011/06/12 22:18)
[51] 第四十七話[友](2011/07/10 23:20)
[52] 第四十八話[友](2011/07/25 01:03)
[53] 第四十九話[友](2011/07/25 21:26)
[54] 第五十話[友](2011/09/03 21:46)
[55] 第五十一話[友](2011/10/01 16:20)
[56] 第五十二話[友](2011/10/01 16:27)
[57] 第五十三話[友](2011/10/01 16:19)
[58] 第五十四話[友](2011/10/30 20:17)
[59] 第五十五話[友](2011/11/27 20:35)
[60] 第五十六話[友](2013/04/21 19:03)
[61] 第五十七話[友](2013/04/21 19:00)
[62] 第五十八話[友](2013/04/21 18:54)
[63] 第五十九話[友](2013/08/22 00:00)
[64] 第六十話[友](2014/03/23 23:15)
[65] 第六十一話[友](2014/03/23 23:13)
[66] 第六十二話[友](2014/05/06 17:27)
[67] 第六十三話[友](2014/08/13 19:34)
[68] 第六十四話[友](2014/11/30 22:33)
[69] 第六十五話[友](2014/12/31 20:29)
[70] 最終話[友](2015/01/12 02:26)
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[15302] 第四十四話
Name: 友◆ed8417f2 ID:7d3a0122 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/05/15 14:37
第四十四話 誕生! 子(狐)連れ狼!




【Side アルフ】




やっほー。

アタシはアルフ。

フェイトの使い魔さ。

使い魔って言うのは、簡単に言えば契約の元、主から魔力を貰って生きる代わりに主を助ける存在さ。

普通使い魔は使い捨てにされる物なんだけど、アタシの優しいご主人様がアタシと結んだ契約は「ずっとそばにいること」。

だから、実質的にどっちかが死ぬまで有効の長期契約なのさ。

実際、もうすぐ生まれて10年になる。

まあ何が言いたいのかと言えば、こうやってそれなりに長い期間生きてると、使い魔らしからぬ感情も生まれる訳で………

今のアタシにはフェイトにも言っていない秘密がある。

それは………



今、アタシは人間形態で海鳴の神社の階段の一番上に座っている。

ここがいつものアタシ達の待ち合わせ場所。

因みに耳と尻尾は隠してるよ。

すると、

「あ、アルフさん?」

後ろから声がして振り向く。

「ああ。 那美かい。 久しぶりだね」

そこには、この神社の巫女で20代半ばの女性である神咲 那美がいた。

那美とは、数年前にこの神社を待ち合わせ場所にするようになってからの知り合いで、気軽に話せる仲だ。

まあ、魔法とか使い魔とかの事は教えてないけどね。

那美の傍らには、子狐の久遠がいる。

「はい、お久しぶりです。 また、あの人を待ってるんですか?」

「ああ。 そうだよ」

「クスッ……相変わらず仲がよろしいんですね?」

「まあね。 あいつは素っ気無い様に見えて、結構優しい奴だからね」

アタシと那美は笑い合う。

ふと、久遠に視線が行き、

「おいで、久遠」

「くぅん!」

アタシが久遠に呼びかけると、久遠は嬉しそうに階段の段差に座っているアタシの膝に飛び乗ってくる。

「よしよし」

アタシは久遠の頭を撫でる。

「くーん……」

久遠は気持ち良さそうに目を細めた。

「フフッ、久遠もアルフさんの事が大好きみたいですね」

那美は笑ってそう言う。

「う~ん、やっぱり久遠は可愛いねぇ。 ねえ那美? このまま久遠お持ち帰りしちゃ駄目かい?」

アタシは久遠を抱き締めながらそう言った。

アタシにしてみれば冗談だったんだけど、那美は何処か悲しそうな表情をした。

「な、那美!? 何でそんな顔をしてるんだい!? 今のはほんの冗談だよ!?」

アタシは少し慌てて那美にそう言う。

「あ! いえ、違うんです! あの、実は久遠なんですけど…………その……ちょっと遠くに引き取られる話がありまして…………ま、まだ本確定ではないんですけど…………もしかしたら、アルフさん達が久遠に会えるのはこれが最後になってしまうかも知れません………」

那美は、所々詰まりながらそう説明した。

「えっ!? そうなのかい!?」

アタシはそれに驚く。

「はい………」

那美は俯きながらも返事をした。

アタシは久遠を見下ろしながら、

「そうなのかい……会えなくなるのはちょっと寂しいけど、元気でな。 久遠」

「くぅ~ん?」

久遠は分かってないのか、首を傾げる様な仕草をした。

その時、

「すまん。 待たせたか?」

そう言いながら階段を上がってくる銀髪の男。

言うまでも無いけど、ザフィーラだ。

実は、アタシとザフィーラは付き合ってる。

これは、フェイトやはやてにも知られていない秘密。

因みに切っ掛けは修行中の時。

アタシが竜に襲われてもう駄目だって思ったときに、ザフィーラは身体を張ってアタシを守ってくれた。

ザフィーラは「これが盾の守護獣の役目だ」って言ってたけど、アタシはその時のザフィーラの姿にクラッと来ちゃったんだよ。

それで、その後は皆にばれない様にアタックを繰り返したんだ。

多少強引だったけど、付き合うことに成功したアタシ達は、局の仕事が休みの時にデートをしてる。

そんな中、ザフィーラの態度は素っ気無いけど、実はアタシを大切に思ってくれてるから、益々惚れちゃったんだ。

アタシは、膝の上の久遠を抱いて立ち上がると、那美に久遠を渡す。

そして、久遠の頭を撫でると、

「久遠、もし遠くに行っても元気でな」

そう言ってアタシは久遠から離れ、ザフィーラと腕を組む。

「それじゃあ、行こうかザフィーラ!」

「ああ……」

アタシ達は階段を下りていく。

でも、その時、

「……………ごめんなさい」

那美が俯いて小さな声で謝った事にアタシ達は気付かなかった。





アタシ達のデートは、人間がやってるのと殆ど同じ。

映画館行って、昼食を食べて、街を歩いたり、公園を散歩したり。

楽しい時間はあっという間に過ぎるもので、夕食を食べ終えて、辺りはすっかり暗くなっていた。

休暇もこれで終わりかと思うと、少し寂しい感じがする。

そこでアタシはふと思った。

「ねえ、ザフィーラ。 神社に寄ってってもいいかい?」

「む……何故だ?」

「久遠の事だけど、近々遠くに引き取られるらしいんだ。 だから、アタシ達が会えるのも今日が最後になる可能性が高いから、最後にもう一度だけ見ておきたいんだ」

「そうか………わかった」

ザフィーラは頷いて了承してくれた。

「ありがと、ザフィーラ」

アタシ達は行き先を神社に変える。

そして、長い階段を登りきって、境内に目を向けたとき、




そこには………




丸くなって眠っている久遠に………




月光を反射する剣を振り上げた………




青髪の女の姿………




アタシはそれを見た瞬間、魔力強化で地面を蹴る。

石畳が砕けたけど、そんなの気にしてられない。

「何やってんだい! アンタ!?」

振り上げた腕が久遠に振り下ろされようとした時、アタシはその女の腕を掴んでそう叫んだ。

アタシの声にビックリして、久遠が起きる。

「くぅん?」

久遠は、何が起きていたのか分かっておらず、そんな鳴き声を上げて、たたっとアタシの後ろに回ってその女を見上げた。

「アンタ! 今久遠を斬ろうとしてたのかい!?」

アタシはそう叫んで問いかける。

「…………あなた達は……?」

その女はこっちに振り向いて、隙の無い姿勢で問いかけてくる。

「………アタシ達は、この神社の巫女をやってる那美の知り合いさ。 久遠とも仲が良いよ」

「そう……ですか………那美の知り合い………では、あなた方は、久遠について何か聞いていますか?」

アタシの答えに、その女は何か考えると、今度はそんな質問をして来た。

「何かって………久遠は唯の子狐じゃ無いのかい!?」

その言葉を聞くと、その女は目を伏せる。

「そうですか………なら!」

その女は、剣をアタシに突きつけてきた。

「何も聞かずに、ここを立ち去ってください。 邪魔をするなら、怪我では済みません」

殺気を出して、そう脅迫する。

「………アタシ達が居なくなったら、久遠を斬るのかい?」

アタシはその殺気を受け流してそう問い返す。

「ッ………!」

その女は、どこか苦しそうな表情をした。

「訳を話しな。 じゃなきゃ、退けるもんも退けないよ。 まあ、訳を聞いたからって、退くかどうかは別だけど」

アタシがそう言うと、

「この世には……知らなくて良い事もあるのです!」

目の前の女はそう答えた。

すると、

「ならば退けんな」

ザフィーラがアタシに突きつけられた剣を掴んだ。

「我も久遠の事は気に入っている。 訳も無く斬ろうとするならば……それなりの覚悟をしてもらおう」

ザフィーラは剣を掴んだままそう言い放った。

その女は剣を動かそうとしているが、ザフィーラに掴まれているその剣はビクともしないようだ。

その時、

「…………はー」

階段を登って、那美が現れた。

「あれ? アルフさん、ザフィーラさん? 薫ちゃんまで………」

那美はアタシ達の名を呼んだ。

目の前の女は、薫というみたいだ。

すると、女――薫――の発していた殺気が薄らいでいく。

殺気が消えた事を確認して、ザフィーラは剣から手を離し、薫と呼ばれた女も剣を鞘に納める。

そして、

「………ごめん」

薫と呼ばれた女は、那美に頭を下げた。





ことのあらましを那美に説明する。

「………そんな……薫ちゃん!」

那美は、薫に詰め寄る。

「………分かってくれ」

薫は辛そうな顔でそう言う。

「前回……目覚めてすぐの状態で……あれだけ………亜弓さんを食い殺して、ばーちゃんに瀕死の重傷を負わせて………それで、やっと………封じることが出来た祟りもの………」

那美は俯く。

「葉弓さんと楓………それから、うち………3人がかりでも封じることが出来るかどうか分からないんだ」

薫はそう言うけど、何も知らないアタシ達には、何の話かさっぱり分からない。

「あのさ、何の話かさっぱり分からないから、アタシ達にも説明してくれるとありがたいんだけど……」

アタシはそう発言する。

「あ………はい………」

那美は、俯きながらも話し出そうとした時、光が巻く様に久遠が人の子供の姿を取った。

「へっ?」

アタシは思わず素っ頓狂な声を漏らし、

「………!」

ザフィーラも口には出さないけど、目を見開いてる。

久遠は黄色の長い髪をポニーテールにして、巫女服に鈴のついた首飾りを下げている少女の姿。

おまけに、アタシ達みたいに、獣の耳と尻尾までついている。

那美の説明では、那美や薫は、いわゆる心残りがあるまま死んだ霊を徐霊する退魔師の家系だということ。

久遠は、獣が年を経て変化したりする『変化』。

いわゆる妖怪という奴らしい。

そいつは人に害をなす輩で、その中でも『祟り』っていう力を持つ厄介な奴もいて、久遠もそんな中の一匹。

で、昔暴れてた久遠を那美の祖母が退治して、その力の殆どを封印した。

でも、その封印にも限界があって、それが明日。

那美は、限られた時間の中で、久遠に優しい心を取り戻させようとしていた。

けど、薫は再封印の自信が無かったから、封印が解ける前に久遠を殺そうとしたらしい。

それを聞いたアタシは、

「………まあ、薫が間違ってるとは言わないけど………気に入らないね!」

そう言って、アタシは久遠を見下ろす。

「くぅん………」

久遠は、不安げな瞳でアタシを見上げていた。

多分、正体がばれたことで、嫌われるかもしれないという事が分かっていると思う。

だからアタシは、

「久遠」

「くぅ?」

隠していた尻尾と耳を出し、ポフッと尻尾を久遠の顔に当ててやる。

「くぅっ?」

一瞬何が起きたか理解できなかったらしく、久遠は声を漏らすが、すぐにアタシの尻尾に気付いた。

「これでお揃いだね。 久遠」

アタシは久遠に笑いかける。

「……………」

ザフィーラも腕を組んだまま、無言で耳と尻尾を出していた。

「くぅん♪」

久遠は笑顔になってアタシに抱きつく。

「えっ……ア、アルフさん?」

那美が驚いた顔でアタシに問いかける。

アタシは、自分が使い魔という事と、魔法の事を簡単に教えた。

「………まっ、そんなわけでアタシとザフィーラも普通の人間じゃないのさ」

アタシはそう言う。

アタシが説明している間、久遠は揺れ動くザフィーラの尻尾に興味津々。

それを素っ気無さそうな顔をしながらも、尻尾を動かす事を止めないザフィーラ。

「……はー、魔法使いって、本当に居たんですね……」

那美が感心したような声を漏らした。

「まあ、それはお互いさまだと思うけどね。 アタシは幽霊や妖怪が本当に居るなんて思ってなかったし」

アタシはそう言って気を取り直すと、

「ところで話を戻すけど、アンタはまだ久遠を殺す気でいるのかい?」

薫にそう問いかける。

那美はその言葉でハッとなり、

「………出来るわけ……無いよね………? ………本当に仲良しだったのに………誰より……私が知ってる………いつもいつも、可愛がって……」

そう言いかけて、

「それでも!」

薫が割り込む。

「哀しい事が、少しでも無くなる様に働くのが……うちらの仕事だ……!」

薫は、辛そうな表情でそう言った。

その時、

――ドクン

何かの鼓動を感じた。

「………!」

「………!!」

那美と薫はその鼓動の正体に気付いているようだ。

――ドクン

静かに鼓動の音が響く。

「…………あ……」

久遠の周りに、小さく電気が走る。

「封が………解ける……!?」

「なんで!? 早過ぎる!」

薫と那美が叫んだ。

「……久遠……ごめん………恨んで構わない!」

薫が剣を抜いて、大きく構えを取る。

「………神気発勝……………真威……楓陣刃ぁあああ!!」

剣から放たれた金色の炎が久遠を襲う。

「…………あ……」

炎が久遠を包むが、久遠は炎に苦しむ様子は無い。

それとは別に、何かに苦しんでいるように見えた。

「………あぁぁぁあ……………あー…………」

――ドクン ドクン

と、鼓動が続く。

そして、久遠は一瞬悲しそうな表情をして、

「………ぁぁああああああっ!!」

雷鳴が響いた。

アタシとザフィーラは咄嗟に那美と薫の前に出て、障壁を張る。

障壁に伝わる衝撃。

衝撃で巻き上がった煙が晴れてくると、

「………く……おん……?」

那美が呟く。

「……………ぁぁ…………あー………」

アタシ達の前には、大人の姿となり、尻尾も5本に増えた久遠。

「封印が………解けた………」

薫が呟く。

すると、

「……まだ……完全には覚醒してない。 今の内に………」

薫は、まだ剣を構えようとしていた。

それを見て、アタシはいい加減ムカついた。

「アンタ! いい加減にしな!!」

そう叫んで、アタシは魔力を込めた拳で、薫の剣を砕いた。

「なっ!?」

「アンタはさっきから久遠を殺すことだけしか考えてないのかい!? 少しは助けようとは思わないのかい!?」

アタシは思わず叫ぶ。

「くっ! うちだって出来ればそうしたい! けど……依代を殺さずに祟りを滅する方法はないんだ!」

「そうやって決め付けてるから何にも出来ない事に何で気付かないんだい!! もういいよ! ここからは、アタシ達のやり方でやらせてもらうから!!」

アタシはそう言って久遠に向き直る。

すると、

「………久遠………」

那美が久遠に近付いていく。

そんな那美に久遠は、

「………ぁ……ぁあああああああっ!!」

悲痛な声を上げて、電撃の宿る爪を振りかぶった。

「那美! 下がりなっ!」

アタシは那美の腕を引っ張って、強引に後ろに下げる。

間一髪、久遠の爪は空を切った。

それでも那美は、

「久遠! 駄目だよ、そんなことしちゃ………久遠は……いい子だよね?」

そう言い聞かせるように久遠にそう言った。

「……ぁああっ!!」

久遠は、泣き叫ぶように天に手を翳す。

雷が鳴り、

「あああああっ!!」

辺りに降り注いだ。

「きゃあっ!」

那美は悲鳴を上げる。

アタシは那美を引っ掴むと、

「ザフィーラ! この2人を頼むよ!」

那美をザフィーラに預けて、アタシは久遠と相対する。

「……ああ………」

久遠の悲しそうな瞳。

アタシが思うに、今の久遠は泣き叫んでる子供と一緒だ。

だったら………

「久遠! 何を泣いてるかは知らないけどね、そうやって見境なしに暴れられると、皆が困るんだ。 だから………」

アタシはこの神社周辺に結界を展開する。

「アタシが受け止めてあげる! 久遠の怒りも憎しみも悲しみも! 皆アタシが受け止めてあげる! だからさ、気が済んだら、元の優しい久遠に戻ってね。 約束だよ! 久遠!」

「あああああああっ!!」

アタシの言葉に応える様に、久遠は叫び声を上げて、私に電撃を放ってくる。

アタシは、あえて障壁を張らずに、その電撃を受けた。

「ぐっ………!」

アタシは思わず声を漏らす。

でも、

「こんなものかい久遠!? これじゃあ、アタシのご主人様やリニスの電撃には、遠く及ばないよ!!」

アタシは見栄を張ってそう叫ぶ。

フェイトやリニスに遠く及ばないって言うのは嘘じゃないけど。

「あああああっ!!」

再び久遠は雷撃を放ってくる。

アタシは、それを黙って受けた。

そして、一歩進む。

「ぁああああああっ!!」

また久遠が雷撃を放ち、アタシはそれを受け、また一歩進む。

それを何度も繰り返した。




「はぁ……はぁ……」

アタシは息をついて久遠を見る。

久遠との距離は、後3歩位の距離。

久遠の表情は、どこか辛そうな顔をしていて、その瞳には、涙が滲み始めている。

「ぁ………ああああああっ!!」

久遠は一瞬躊躇したあと、雷撃を放つ。

「ッ………!」

アタシはそれを受けるが、最初の頃と比べると、威力は格段に低い。

アタシは、また一歩進んだ。

「久遠……アンタの過去に何か悲しい事があったのは分かった………けどね……それに引き摺られて、これからの幸せも無くしちまう気かい? このままじゃ、久遠、本当に独りぼっちになっちまうよ?」

「ぁあ………」

「久遠は1人じゃないんだよ? 久遠には、那美っていう友達もいるじゃないか。 友達で物足りなきゃ、アタシが久遠のママになってやってもいい!」

「ぁ………と……も……だ……ち……………ま……ま………?」

久遠が反応する。

「そうだよ! 那美が友達! アタシがママだ!」

久遠が反応した事に対して、アタシは思わずそう叫んでしまう。

すると、久遠は那美へ視線を向けた。

「…………な……………み…………」

微かに、那美の名前を呼んだ。

「………な……み……………と……も……だ……ち……」

今度は、もっとはっきりと。

久遠の瞳から涙が零れる。

すると、今度はアタシに視線を向ける。

「………あ……るふ…………ま……ま……」

「久遠………」

アタシは久遠の言葉に、思わず微笑む。

本当にこのまま自分の子にしたいって思うぐらいだ。

すると、電撃が久遠の身体の中に収束していく。

それにやな予感がしたアタシは叫んだ。

「やめなっ! 久遠!!」

「久遠! 駄目!」

同時に那美も叫ぶ。

「なみ………まま……………だいすき………」

瞬間、久遠の身体が輝き、轟音と共に光が弾けた。

「「久遠!!」」

アタシと那美が叫ぶ。

光が収まると、久遠は子狐の姿になり、こげた匂いを放ちながら倒れた。

「「久遠っ!!」」

アタシと那美は久遠に駆け寄ろうとした。

けど、

「まだ!」

薫が叫ぶ。

「まだ終わってない!」

「薫ちゃん!?」

薫の言葉に、那美が振り向く。

「………久遠が倒れても、『祟り』自体は消えない!」

薫がそう言ったとき、久遠の身体から不気味な色の煙のように、『なにか』が立ち上る。

「……それが……久遠を駆り立てていた『祟り』………」

薫は何とかこれに対する手段を探そうとしてたけど、さっきアタシが剣を砕いた所為で、対抗手段が無いらしい。

でも、丁度いい。

「つまり、コイツが久遠を不幸にしてた大元ってことかい………だったら!」

アタシは身体に魔力を張り巡らせる。

「まて! 祟りに通常の攻撃は………!」

薫が叫ぶが、アタシはその『祟り』を見て思った。

コイツは、ロストロギアの思念体に近い。

だったら、

「魔力による攻撃は効くんじゃないのかい!?」

アタシはそう叫んでフォトンランサーを放った。

アタシの放ったフォトンランサーは、『祟り』に直撃し、『祟り』はまるで苦しむかのように蠢く。

「よっしゃ、効果あり!」

アタシは叫ぶ。

すると、その『祟り』が渦を巻くようにアタシに迫ってきた。

「やばっ……」

油断していたアタシがそう漏らした時、

「鋼の軛!」

地面から飛び出した魔力の槍が『祟り』を貫き、一部を四散させる。

「油断するな」

ザフィーラがそう言った。

「ありがと、ザフィーラ」

アタシは軽くそう言って、ザフィーラに吹き飛ばされた『祟り』に向き直る。

「それじゃ、一気に決めるよ!」

アタシは右腕を振りかぶり、魔力を集中する。

「獣!」

『祟り』がアタシがしようとしていることに気付き、再び渦を巻いて迫ってくる。

「王!」

でも遅い。

「拳!!」

アタシは『祟り』に向かって拳を繰り出す。

拳から放たれる狼の頭を模した魔力波。

それは『祟り』に直撃し、閃光と共に消し去った。

それを確認したアタシは、

「…………あれ?」

今頃、久遠から喰らい続けてきた電撃が聞いてきたのか、意識が遠くなっていく。

身体から力が抜けて、倒れようとするアタシを、逞しい腕が受け止めた。

それに気付いたアタシは、安心して意識を手放した。




【Side Out】









さて、今日は久々に八神家一同がこの翠屋に全員集合している。

序に、スカリエッティとナンバーズも居る。

ナンバーズは、No9ノーヴェとNo11ウェンディが目覚めて、総勢9名となった。

まあ、翠屋にいるのはドゥーエを除いた8人なんだけど。

因みに、ノーヴェとウェンディに桜のシュークリームを食わせたときの反応は、

ノーヴェ、

「……………………………………うまい」

ウェンディ、

「いや~~~~、美味しいッスねぇ~~~~」

以上の通り。

それで、八神家が全員集合しているという事は、

「かーさまー!」

「我が娘よ!」

リインフォースとリィン。

「お母さん!」

「如何した? エリオ」

エリオとシグナム。

「お母さん」

「キャロ」

キャロとヴィータ。

「御袋~」

「頑張ってる? アギトちゃん」

アギトとシャマル。

母子が大集合という事になります。

因みに、そんな夜天の騎士達の主といえば………

「うわぁあああああああん!! 皆主である私を差し置いて子供作るなんてどういうことやぁ~~~~!! ザフィーラ! やっぱり私の味方はザフィーラだけやぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

狼形態のザフィーラに泣き付くはやて。

とりあえずザフィーラよ。

飲食店経営者として、店の中ではなるべく狼形態は止めてくれと前から頼んでいるはずだぞ。

ふと見ると、はやてに泣き付かれているザフィーラは、何処か明後日の方向を向き、冷や汗をダラダラと流している。

「ん? どうしたザフィーラ?」

気になった俺は尋ねてみる。

すると、

「……………主」

ポツリとザフィーラが呟く。

「ん? 何や?」

はやては、気を取り直して一度離れる。

すると、

「申し訳ありません。 主」

突然人間形態となり、見事な土下座をかますザフィーラ。

「い、いきなり如何したんやザフィーラ?」

はやても、いきなり土下座したザフィーラに困惑する。

「それは………」

ザフィーラが説明しようとした時、

「邪魔するよ!」

店の入り口を開けて、人間形態のアルフが入ってきた。

「おお、アルフか」

俺はそう漏らすが、アルフの腕に、小さな子狐が抱かれている事に気付く。

「おいおいアルフ。 ウチは飲食店だぞ。 動物の連れ込みは勘弁してくれ」

一応、使い魔の連れ込みは(リニスも使い魔なので)許可しているが、普通の動物の連れ込みは遠慮している。

俺がそう言うと、

「安心しなって、この子も使い魔みたいなものなんだからさ。 さっ、久遠」

アルフはそう言って子狐を放す。

って、今アルフの奴、久遠って……

すると、その子狐は、床をとととっと駆けると、ザフィーラに向かっていく。

そして、ザフィーラの前で、ポンっと音を立て、

「……ぱぱ」

黄色の髪に巫女服を着て、狐の耳と尻尾を生やした少女に変わり、ザフィーラの腕に抱きついた。

――ピシィ!

その瞬間、音を立てて固まるはやて。

どっから如何見てもとらハ3の久遠じゃねーか!

何でだよ!?

「紹介するよ! アタシとザフィーラの娘の久遠さ!」

アルフは笑ってそう言った。

俺は、内心混乱しながら、

「い、色々と聞きたいことはあるけど先ず一つ………アルフとザフィーラって付き合ってたの?」

俺はそう聞く。

「ああ。 皆には秘密にしてたけど、もう3年ぐらい前から付き合ってるよ!」

アルフはそう答えた。

「そ、そんなに昔からか…………」

俺は唖然となる。

「で、話は変わるんだけど、アタシと久遠も、ここに住まわせてくれないか?」

そんな事を言ってきた。

「ここに住むって………管理局は?」

「辞めて来た」

「はぁああっ!?」

アルフの言葉に、俺は驚く。

「前から考えていたことなんだけどさ、今のフェイトはアタシが居なくても大丈夫だからね。 フェイトが帰ってくるところを守りたいのさ。 で、久遠を引き取ったから、丁度いいと思ってさ。 いいだろ? ちゃんとウェイトレスはやるからさ」

そんな中、

「可愛いですぅ!」

「久遠って言うんだ?」

チビッ子達を中心に、久遠に集まる。

「くぅん?」

久遠は、状況が分かっていないのか、首を傾げる。

「はうっ!」

何やらそんな声が聞こえたので、そちらに目をやると、何かクアットロが頬を真っ赤にしている。

如何したんだ?

「皆、久遠はまだ上手く言葉が喋れないんだ。 少しずつ話してあげてくれないか?」

アルフは皆にそう言う。

久遠はアルフを見上げ、

「…………まま……?」

そう尋ねるように呟く。

するとアルフは、

「久遠、ここに居る皆は、久遠の友達だよ」

そう久遠に言う。

「……とも……だち?」

久遠は片言でそう呟く。

「みんな………ともだち………!」

それを理解したのか、久遠はニッコリと笑う。

「はうあっ!」

再びそんな声が聞こえたのでそちらに顔を向けると、クアットロが蹲っている。

………もしかしてクアットロの奴……

「如何したのクアットロ?」

ウーノが尋ねる。

「い、いえウーノお姉さま。 何でもありません」

クアットロは慌てて表面を取り繕ってそう言う。

だが、

「もしかしてクア姉、久遠を見て悶えてたんじゃ?」

セインが的確に突っ込む。

「そ、そんなわけありませんわ! そんなの私のキャラでは………」

クアットロは、やや焦った顔でそう言う。

すると、それを聞いたアルフがニンマリと笑い。

久遠を子狐形態にして抱き上げ、クアットロの所に行く。

「クアットロ」

アルフはクアットロに声をかけ、

「な、何ですの?」

クアットロは、やや焦り気味でそう尋ねた。

そして、

「ほら」

座っていたクアットロの膝に、久遠を乗せた。

「くぅん?」

久遠は、クアットロを見上げてそう鳴き声を漏らす。

クアットロの顔が見る見るうちに赤く染まっていく。

うん、俺から見ても十分可愛い仕草だ。

そして、久遠はすぐ近くに置かれていたクアットロの手に顔を寄せ、

――ペロリ

と舐めた。

その瞬間、

「―――――――ッ!」

クアットロは声にならない声を漏らし、

「久遠ちゃぁぁぁぁん!」

久遠を抱き締めた。

「久遠ちゃん、可愛いわぁ!」

クアットロは頬ずりまでする始末。

その時、

――じー

っと、約一名以外の全員からその様子を見られていた事に気付き、

「――――――――――――ッ!!!???」

さっきとは違う意味で声にならない声を上げた。

「クア姉の意外な一面ッスね」

「意外だな……」

「クアットロも女の子だったんだねぇ」

しみじみと言うスカリエッティ陣営。

と、その時、

「…………………ザ」

今の今まで固まっていたはやてが、ようやく再起動を果たしたらしい。

「……ザ……ザ………」

何やら呟き、

「ザフィーラの裏切り者ぉおおおおおおおおおおおっ!!」

そう叫んで、滝のような涙を流しながら走り去るはやて。

それを見て俺は、次に子供を保護することがあったら、はやてに面倒見させよう。

と、しみじみ思うのだった。




あれ? でも、StS編で残ってる子供って、あとヴィヴィオだけじゃ?







あとがき


第四十四話の完成。

久遠の両親はアルフとザフィーラでした。

アルフとザフィーラの付き合い方は、スパロボOGのキョウスケとエクセレンみたいな関係と思っていただければ……

問題は、『祟り』に攻撃が効くのか?というところでしたが、リリちゃの久遠は、イデアシードの思念体?みたいなモノを雷撃で消していましたので、その逆もまた然りってことで………

まあ、ちょいと手抜きが目立ちますね。

アルフが気絶してから、久遠が子供になるまでの描写が無い。

ままと呼ばせる方法も強引ですし………

ぶっちゃけますと、どうやってアルフの子供に持っていくかということが思いつかなかったのです(爆)

最初は、久遠は野良狐で、それをアルフとザフィーラが拾うような事を考えていたのですが、そこまでとらハのストーリーを無視するのはやっぱり………

という事でこんな形になりました。

久遠とクアットロの絡みを望んでいる人が居たのでこんな形にしてみたのですが、どうですかね?

さて、恐らく次はレジアスとの交渉に入ると思います。

では、次も頑張ります。



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