【Side 桜】
「うぉおおおおおおっ!!」
ブラックウォーグレイモンに斬りかかった。
「おおおおおおっ!!」
ブラックウォーグレイモンも、ドラモンキラーを突き出す。
――ガキィィィィン!!
グレイソードとドラモンキラーがぶつかり合い、激しい火花を散らす。
だが、先程のように簡単に押し負けたりしない。
「はぁあああああっ!!」
「うぉおおおおおっ!!」
――ガキィ! ギィン! ガキッ! ガキィン!
グレイソードとドラモンキラーの激しい応酬が繰り返される。
その一発一発は、私達にとっては正に必殺の威力を持っている。
その時、
――ガキィィィィン!!
お互いの渾身の一撃がぶつかり合い、互いに吹き飛ばされ間合いが開く。
ユウはその勢いに逆らわずに回転、流れるような動きで右腕をブラックウォーグレイモンに向けると同時に砲身を展開する。
でも、それと同時にブラックウォーグレイモンもガイアフォースを放てる状態に入っていた。
「ガイアフォーーーース!!」
ブラックウォーグレイモンは、赤いガイアフォースを放ち、
「ガルルキャノン!!」
ユウは右腕の砲身から、圧縮された魔力弾を放った。
ガイアフォースとガルルキャノンがぶつかり合い、
――ドゴォォォォォォォン!!
ユウの方がやや押されはしたものの、何とか相殺する事に成功する。
すると、
「はぁああああっ!!」
ユウは間髪いれず、2発目のガルルキャノンを放った。
2発目のガルルキャノンは、相殺時の爆煙を吹き飛ばし、ブラックウォーグレイモンへ直進する。
「何っ!?」
ブラックウォーグレイモンは、驚愕の声を漏らし、
――ドゴォオオオオオオオン!!!
ガルルキャノンの爆発に呑まれた。
「よっしゃ! 直撃だぜ!!」
ヴィータが声を上げる。
確かに見た限りでは直撃した。
でも、煙が晴れてくると、
「あっ……」
フェイトが声を漏らした。
「防がれたか……」
ザフィーラが呟く。
ザフィーラの言った通り、ブラックウォーグレイモンは背中のブラックシールドを前面に構えて盾にしていた。
ブラックウォーグレイモンは、シールドを背中に戻すと、
「今のは直撃していれば危ない所だったぞ。 やはり貴様は最高だ!」
自分が危険だったという発言ながら、嬉しそうに叫ぶブラックウォーグレイモン。
ブラックウォーグレイモンは、再び構えてユウに突っ込んでいく。
ユウも、グレイソードで迎え撃った。
「うぉおおおおおっ!!」
「はぁあああああっ!!」
――ギィン! ガキィ! ギギィン! ガキキィン!
再び繰り広げられる激しい剣戟。
正に、一進一退の攻防。
すると、ドラモンキラーを弾いたユウが、突然マントを翻した。
「むっ!?」
それによって、ブラックウォーグレイモンの視界が一時的に塞がれる。
そして、マントが通り過ぎた時、ブラックウォーグレイモンの視線の先にユウはいなかった。
「なっ!?」
ユウの姿が消えたことに、一瞬動揺するブラックウォーグレイモン。
その時、ユウはマントを翻した時にできた死角を利用して、ブラックウォーグレイモンの上にいた。
グレイソードに魔力を通し、激しい炎を纏っている。
ブラックウォーグレイモンも、そこでユウに気付く。
「グレイソードッ!!!」
ユウは渾身の斬撃を放つ。
対するブラックウォーグレイモンは、瞬時にブラックシールドを展開した。
――ガキィィィィィィィィィィィィィン!!
グレイソードとブラックシールドは激しい火花を散らすが、ブラックシールドには傷が付くだけで砕けそうにない。
「はぁあああっ!!」
ブラックウォーグレイモンの蹴りが、ユウの腹部に叩き込まれる。
「がはぁっ!!」
ユウは苦しそうな声を上げた。
オメガフォームでも、究極体の攻撃力は防ぎきれない。
っていうか、ユウって聖王の血を継いでるから、聖王の鎧も持ってる筈じゃ………
バリアジャケット+聖王の鎧の防御力を唯の蹴りでぶち破るって、やっぱり究極体の攻撃力はシャレにならないわね。
ユウは吹き飛ばされるも、腹部を押さえながら体勢を立て直す。
グレイソードは、攻撃力だけならガルルキャノン以上の筈。
それでもブラックシールドを破れないとなると、かなりヤバイ。
「ふう…………」
ユウは、一度、息を吐く。
そして、再びブラックウォーグレイモンを見据えた。
その眼は何かを狙っている。
すると、ユウは展開していたグレイソードとガルルキャノンを戻した。
「「「「「「「「えっ?」」」」」」」」
その行動に、思わず声を漏らす私達。
でも、
「はあっ!!」
ユウが気合を入れると、左手のウォーグレイモンの頭を模した手甲に激しい炎が、右手のメタルガルルモンの頭を模した手甲に凄まじい冷気が発生する。
そして次の瞬間、ユウは一直線にブラックウォーグレイモンに突撃した。
ブラックウォーグレイモンは、ブラックシールドを構える。
でも、それに構わずユウは左手を振りかぶる。
「ダブルッ!!」
炎を纏った左手を、ブラックシールドに叩き込む。
「うぉおおっ!?」
ブラックウォーグレイモンは、思った以上の威力に声を漏らす。
だが、炎を纏った一撃も、ブラックシールドに熱を持たせるだけで破れそうにない。
少しの間炎を纏った一撃を繰り出し続けていたが、今度は冷気を纏った右手を振りかぶる。
「トレントォッ!!」
そのまま左腕を引くと同時に冷気を纏った右腕を叩き込んだ。
「ぐおっ!?」
その冷気は、ブラックシールドを凍りつかせる。
しかし、シールドは砕けず、冷気もブラックウォーグレイモン自身には届いていない。
でも、右腕を叩き込んだ反動でユウがブラックウォーグレイモンから離れる瞬間、ガルルキャノンを展開する。
「ガルルキャノン!!」
至近距離からガルルキャノンを放った。
爆発に呑まれる2人。
すると、ユウは爆煙の中から飛び出してきて、吹き飛ばされながらも地面に着地する。
ユウは、至近距離でガルルキャノンを放ったため、爆風で少しダメージを負ったようだった。
一方、ブラックウォーグレイモンは、
「くっ………捨て身の攻撃とは……」
これといってダメージを受けていないように思えた。
「惜しかったな……だが……」
そうブラックウォーグレイモンが続けようとした所で、
――ピシッ
ブラックシールドに罅が入る。
「何っ!?」
――ピシピシッ
罅がシールド全体に広がる。
そして、
――バキィィィィン
ブラックシールドは粉々に砕け散った。
「バカなっ!?」
ブラックウォーグレイモンは驚愕する。
「……ダメージが蓄積していたのか?」
それを見ていたシグナムがそう漏らすが、
「いや、それだったら今まで罅が入らなかったことはおかしい」
クライドさんが否定する。
そこで、私は気付いた。
「分かった! 急激な温度変化よ!」
私はそう言う。
「なる程、先程の攻撃の狙いはそれか!」
クロノは、私が言った言葉に納得し、頷きながらそう言った。
「「「え?」」」
なのは、フェイト、はやてが何で?といった声を漏らす。
「簡単に言えば、急激な温度変化を与えると、物質は脆くなるのよ。 つまり、ユウはさっきの攻撃でブラックシールドに急激な温度変化を与えて脆くしてから、ガルルキャノンで砕いたって事よ」
私の説明で納得したのか、3人は頷く。
すると、
「ククク………いいぞ……ここまで俺を追い詰めたのはあいつ等以来だ………」
ブラックウォーグレイモンは不適な笑みを零す。
っていうか、あっちも追い詰められてるはずなのに笑えるって事は、シグナムもビックリのバトルマニアよね……
「おおおおおおっ!!」
ブラックウォーグレイモンはユウに襲い掛かる。
――ガキィ!
「なっ!?」
ユウは、グレイソードで防ごうとしたが、右腕のドラモンキラーの一撃で防御した左腕が弾かれる。
「はぁああああっ!」
そのまま、ブラックウォーグレイモンは左手のドラモンキラーを突き出す。
「ぐああっ!!」
ユウは咄嗟に飛び退いて、直撃は避けたが、ドラモンキラーが繰り出された時に衝撃波が起こり、それによって吹き飛ばされる。
更に、ブラックウォーグレイモンはユウに追撃をかけていた。
吹き飛ばされている最中のユウの目の前に一瞬で移動し、
「うぉおおおおおっ!!」
渾身の蹴りが叩き込まれる。
「がはぁっ!!」
ユウは地面が陥没するほどの威力で、地面に叩き付けられた。
「ユウ君!!」
「いやぁ!」
なのはとフェイトが悲鳴を上げる。
ブラックウォーグレイモンは、更に追撃をかけようとした所で、
――ザンッ!
「ぐあっ!?」
一筋の閃光が走り、ブラックウォーグレイモンの胸当てを破り、ブラックウォーグレイモンの身体に傷を付けた。
ブラックウォーグレイモンは、胸に手を当てながら飛び退く。
ユウが立ち上がる。
その姿は、白き長剣を持ったパラディンモード。
「はぁ……はぁ……」
ユウは肩で息をしている。
「ったくよぉ……こうなったら! とことんやってやらぁ!!!」
ユウはヤケクソ気味にそう叫んだ。
ユウはオメガソードを振りかぶり、ブラックウォーグレイモンに突っ込み、
「そうだ! かかって来い!!」
ブラックウォーグレイモンも嬉しそうに叫びながらユウを迎え撃った。
【Side Out】
あれから暫く戦い続け、現在は、なのは達からかなりはなれた場所で、俺達は仲良くぶっ倒れていた。
「フフフ……まさか人間相手にここまで楽しめるとはな……」
ブラックウォーグレイモンはそう呟く。
「そうかよ……俺は死ぬかと思ったぞ……」
俺はそう呟き、今更ながら究極体に喧嘩を売るという、とんでもなく恐ろしい事をしていたという事を実感していた。
いや、マジで如何してたんだろうな俺は?
俺がそう思っていると、
「1つ聞きたい」
ブラックウォーグレイモンがそう聞いてくる。
「何だ?」
俺がそう聞き返すと、
「お前は、この俺の存在に意味が有ると思うか?」
そう問いかけてきた。
だから俺は、
「さあな。 俺に聞かないでくれ。 存在に意味があるかどうかは自分自身が決める事だ」
そう答える。
「お前もそう思うか……」
ブラックウォーグレイモンはそう呟く。
「ま、後は、お前を生み出した存在ぐらいだろう。 その問いに答えられるのは」
俺はそう付け足した。
「俺を生み出した存在……奴は……」
「アルケニモンとマミーモンか?」
ブラックウォーグレイモンの言葉の途中でそう尋ねる。
「そこまで知っているのか?」
ブラックウォーグレイモンは、軽く驚いた口調でそう漏らす。
「何で知っているのかは聞くなよ。 ともかく、アルケニモンとマミーモンだが、そいつらも、とある人間によって人工的に生み出されたデジモンだ」
「なんだと!?」
流石のブラックウォーグレイモンも、その事実には驚いたようだ。
「それが本当なら!」
「ああ、お前を生み出した本当の黒幕って事になるな」
ブラックウォーグレイモンの言葉に、俺はそう答える。
すると、ブラックウォーグレイモンは立ち上がる。
「礼を言うぞ……」
ブラックウォーグレイモンはそう呟き、空を見上げる。
「行くのか?」
俺はそう問いかけた。
「ああ。 俺はあの世界へ戻る。 そして確認しなければならない。 その人間に俺を生み出した本当の理由を……」
「そうか………」
すると、ブラックウォーグレイモンは飛び立つ。
そして、ブラックウォーグレイモンの周りの空間が歪んでいき、ブラックウォーグレイモンはこの世界から消えた。
「………がんばれよ」
俺は、ブラックウォーグレイモンが消えた空に向かってそう呟いた。
そして俺は、この後にクロノに突っ込まれる事を予想しながら、どうやって説明するかを考えるのだった。
あとがき
やりたい放題やった三十一話の完成です。
いや~書き始めたら筆が進む進む。
気付いたら、2話分に匹敵する文章量になってました。
しかも、クロノ達への説明もまだだし。
返信で、空白期は10話以内で終わるだろうと書きましたが、このペースでは終わりません。
申し訳ない。
とりあえず、ブラックウォーグレイモンとユウのバトルはこんなもんで如何ですかね。
あと、最後にブラックウォーグレイモンにアルケニモンとマミーモンの事を話しましたが、デジアド02で再登場した際、何故かブラックウォーグレイモンは及川の事を知っているような口振りだったので、ここで教えておけば02のストーリーにも矛盾が出ないと思ったので………
ユウは試行錯誤の上全力を出し切って何とか究極体と渡り合える位です。
最強主人公をも上回るデジモン究極体。
自分のデジモン至上主義がここまでとは。
とりあえず、本物のデジモンが出るのはここだけの予定です。
では、次回も頑張ります。