―――拠点を東に移して数日、今日はいよいよ初仕事です。金もらえるから文句ないよ。
今夜の相手は異形が数十体、それに術者が1人ってトコか。いっちょ気合い入れていきますか。
「セツナ前衛、俺遊撃、マナは後方で援護、術者は見つけ次第デストロイ、異論は?」
「OKさ」
「了解です」
さぁ、パーリィの始まりだ!!
―――――ここ数日でもそれなりにいろいろあった。
この学園は男子区域と女子区域に分かれている。当然俺は男子区域、コノセツは女子区域。
女子校に編入するのかも、とか一瞬考えたが別にそんなことは無かったぜ。なったらなったで地獄だ。
家から通う生徒もいるが、基本的に全寮制、一部屋につき大体2~3人が住んでいる。
男子寮の俺の部屋には俺の荷物しかいない。偶々余ってたのか、気を利かしてくれたのか。どちらにしろありがたい。悠々自適に暮らせそうだ。
コノカとセツナはもちろん相部屋、と思ったら別の部屋でした。交友関係を広げてほしいとの学園長の計らいだそうな。護衛だっつってんのに、まあ隣部屋だし許容範囲か?
あと、女子寮は男子禁制なんだって。ホイホイ遊びに行けないじゃないか。男子寮は女子ウェルカムなのに。・・・街で会えばいっか。
もうすぐ仕事始めとなる俺たちにチーム編成について言い渡された。ここの仕事は約3人のチームで行うらしい。
コンビネーションも考えて、セツナと俺は当然同チーム、今日はもう1人との顔合わせだ。
オープンカフェでコーヒーを啜りながら待っていると、人混みの中から現れる長身の美人が1人。
褐色の肌を持つこのナイスバディが俺たちの仲間となるらしい。やっぱデカさが売りなんだよココは。
とりあえず挨拶を―――――
「龍宮?」
「新チームと聴いていたが、オマエだったか、刹那」
――――お知り合いですか?
聴けばこの美人さん、『龍宮真名』っていうんだけど、セツナの同居人なんだってさ。・・・てことは、同い年?マジかよ、大学生くらいかと思った。
格差社会の波を感じながら、俺も自己紹介。龍宮・・・もうマナでいいや、彼女も報酬を受けて仕事をこなす傭兵なんだとさ。気が合いそうだ。
「とりあえず、オマエ達がどんなことができるかを確認しておきたいんだが」
ふむ、尤もだ。戦力を正しく把握できなければ戦術は組めない。さすがは先輩傭兵。
「私は銃を使った戦闘が主だ。後方射撃、ショートレンジ、長距離スナイプ、なんでもござれだ。苦手な距離はナイ」
この人パねえな。オールレンジOKのガンナーってヤバいっすよ。
「それと、『眼』だ」
なんでも、『魔眼』という特殊な眼を持っているらしい。・・・・・・・・邪気眼か?
「夏に向けて脳天を肉抜きするかい?涼しくなるぞ」
ゴメンナサイ。
「それで、オマエ達は?」
「剣と斧、体術に、槍と弓を少々、あと魔法をたしなむ程度に」
「総統、お見合いじゃないんですから。私は前にも云ったが神鳴流の剣士だ、武器は選ばない」
「『総統』?」
「ああ、それは――――」
そんな感じで顔合わせ終了。結果、前衛にセツナと俺、後衛にマナという配置になった。状況に合わせて俺が下がったり突っ込んだりするんだ。
ニヒルでビジネスライクな感じだけど、イイ人っぽいし、仲良くできそうだ。こうして、チーム『傭兵ソルジャーズ』が誕生した。
―――――――そして冒頭へ。
マナは俺たちの動きが分かっているかのように的確に弾をぶち込んでいく。邪気眼スゲェ。
前衛を一旦セツナに任せ一歩後退、手の中のトマホークをミスリルロッドに変更。魔力を練り上げる。・・・やっぱり時間かかるな、・・・3、2、1、ハイッ!
「雷雲よ!我が刃となりて敵を貫け!【サンダーブレード】!!」
「「「「「「「ギャオオオオオオオォ!!!」」」」」」」
異形の集団が固まっている場所に稲妻の剣が突き刺さる。セツナがうまいこと誘導してくれたようだ。
こんな調子で蜘蛛の子を散らすように粉砕していく、悪く思うなよ。
と、マナの魔眼が術者の位置をとらえたようだ、俺とセツナに指示が飛ぶ。
セツナが瞬時に回り込み【斬空閃】で牽制、俺から意識がそれたところをすかさず狙う!
「【ピコハン】!!」
脳天クリーンヒット、ピヨピヨ云いながら気絶した。コイツを引き渡して任務完了だ。
みんな、お疲れさん。
「――――息ピッタリだな、オマエ達」
「私たちは相棒みたいなモノだからな」
「オシドリなのだよ」
マナの感嘆の声に応える。長いこと一緒にいると、こうなるのさ。
「結婚でもする気かい?」
「するか?」
「考えときます」
にべも無く返された。つれないなあ。
「俺たち、2人でトリキュアだろ?ネガティブなんかブッ飛ばそうぜ」
「片割れが男の時点でキュア要素が崩壊してますよ」
「俺がオオトリブラック、オマエがコトリホワイト」
「お嬢様はどうなるんです?」
「新メンバーのオットリルージュとして迎え入れる予定」
「化粧品に興味が出てきたみたいですね」
セツナは使わんのか?いや私は、などと雑談しながら帰路につく。後ろから付いてくるマナの邪気眼が生温かく感じた。
―――――ふむ、やはり広大だなこの街は。場所確認のために歩き回ってみたが、終わりが見えないよ。しかしなんでもあるなココ。
映画館に商店街、少し歩けば森や山もある。あとアレ、図書館島だっけ?ビックリだよあんなの、まだ中に入ったこと無いけどさ。
関東地方のド真ん中にこんな土地があろうとは。・・・探せば遺跡なんかも見つかったりしてな。
・・・・そういえば東に行くってわかった後、ココのコトいろいろ調べたんだよ。そしたら気になる単語がヒットしたんだ。
――――【闇の福音】――――
かつて600万ドルの賞金が懸けられた伝説の極悪人で、真祖の吸血鬼。【不死の魔法使い】、【悪しき音信】、【禍音の使徒】等の二つ名を持つ強大な魔法使い。
女子供は殺さないが、彼女を退治せんとする魔法使いは残らず帰らぬ人となる、などの噂が絶えない、一種のなまはげのような存在らしい。名前は、・・・・エヴァンなんとか、だったかな?
10年くらい前までは活動していたみたいなんだけど、アノ『サウザンなんとか』がこの地に封印したとかで、今は音沙汰なし。
・・・・逢ってみたい。どんなヒトなんだろう。それほど強いのなら何か深いアドバイスをくれるのでは?
・・・・楽観的すぎるかな?退治しに行きたいってワケじゃないから、逢っていきなり首チョンパなんてことにはならないと思うんだけど。
―――――そんなことを、ベンチに腰掛けネコに餌をあげている少女を眺めながら、俺は考えていた。・・・・・・・アノ娘、ロボット?すごいな麻帆良の科学力、しかも絵になってる。
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チラシの裏は回転速いっす。
・・・赤松健板に載せてもいいレベルでしょうか、この話。