ガガッ!ギギイィ!!
シュイン!シュババァ!!!ズバッシュアアァ!!
ゴガガガガ!!ギャルルウゥ!!!グアッキイィィン!!!
ガンガン!!ギギイイン!!ギンガマアァン!!!
ギギギィィ!グアシャアアァ!!!
―――あ!?なに!!?今戦闘中だから!!!しゃべってる暇ないっての!!!!
「【斬空閃】!」
「【蒼破刃】!」
バシュアアア!!
飛来する斬撃が空中衝突!
「【弧月閃】!!」
「【斬岩剣】!!」
ガギイィン!!
弧を描く剣閃と岩をも断ち斬る一撃が火花を散らす!!
「【斬鉄閃】!!」
「【空破特攻弾】!!」
ガガガガッ!!
斬撃の螺旋を弾く特攻の旋風!!
「【岩斬滅砕陣】!!!」
「【斬空掌・散】!!!」
ドゴガゴガガガゴッ!!
迫り来る岩礫を迎撃する氣弾の掌!!!
―――――――視線が交差する――――――
―――これで――――――決める―――!!!
「駆けろ地の牙!【魔王!地顎陣】!!!!」
「神鳴流秘剣!【百花繚乱】!!!!」
ドガラガシャアアアァ!!!!!!
「―――腕、あげたなぁ」
「総統こそ」
息も絶え絶え、お互いを褒めたたえる俺とセツナ。――――そう、模擬戦です。【京都神鳴流】剣士・桜咲刹那と、【幻魔天翔流】戦士・一海里との恒例行事だ。
今回の観客はコノカ他数名、ウチの組員以外は金払えコノ野郎。
しかし俺らも随分成長したなあ、技にしても身体にしても。
ここで新事実、実は俺たちはもう中学生だ。ためになったね。
ちみっこかった2人はすっかり女らしさが表れてきちゃってまあ、嬉しいやら感慨深いやら。
コノカは相も変わらずおっとりだが、そこに大和撫子風味がでてきた。料理も上手いときているから、将来は引く手数多だろう。
だがまず『総統』の俺に許しを得ることだ野郎ども。
こちとら詠春さんからいろいろ任されてんだ、見極めさせてもらうぞ。今のトコ該当者無し、俺の査定は難易度[アンノウン]よりキビシいのだ。
一方セツナ、コッチもきれーになっちゃってまあ。切れ長の眼にスラリとした手足、日本美人の素養バッチリである。着物とか着てくんないかなぁ。
こちらは俺の査定もないというのに男っ気が無い。人気はあるらしいが近寄ってはこないんだそうな。コノカ大好きっ子は相変わらず、とっても仲良し。
百合の人なのかとの質問してみたが、本人は一貫して否定、断固否定。「そうゆうのじゃないんですよ私たちの絆は」とのこと。
ああ、俺も成長したよ、それなりに。自分じゃよくわかんないけど。「男っぽさが出てきとる」とはコノカの談。
鍛練のおかげで技の方はかなりのもんじゃないかな?剣技と斧技はほぼ習得、体術もなかなかだし、槍と弓も、まぁそれなりだ。やっぱ剣と斧だな、得意なのは。
ただ、魔法の方はあまり自信が無い。いや訓練は続けてたけどさ、使い難いのよ。
基本的なことだけど、上級の術になるほど詠唱、正確には詠唱に入るまでに魔力を練り上げる時間が長くなる。俺はバリバリの前衛気質なもんだから、使う暇が無いんだよ。
おかげで使えはするけど使わないというペーパードライバーみたいな感じになってしまった。見た目も西洋魔術っぽいから、西だとおおっぴらに使えなかったしね。
ぶっつけ本番というのはかなり不安だ、苦手意識もある。ちょこちょこ試運転しないと。
―――――あ、まだ休憩じゃないよ、2人とも相対したままです。
「・・・さて、もう疲れてきたんで俺の奥義を受けて堕ちてもらおうか」
「奥義?」
怪訝そうな顔をするセツナ、「聴いてませんよそんなこと」って広めのデコに書いてある。
ふっふっふっ、ゲーム内じゃ日の目を見ることのなかった伝説の奥義を受けるがいい!
「いくぞセツナ! これぞ秘奥義!!」
「!!」
セツナが身構える、だがもう遅い!!コレで堕ちろ!!!
「【電光石火 流し目】エェ!!!!」
キラッ!!
「・・・・・・・・・・」
――――かつかつかつかつかつ・・・、がっし――――
「アレ?」
「【浮雲・旋一閃】!!!!」
「ほべぇ!!?」
お気に召さなかったようだ、やっぱりソノ手の才能は無いのか。・・・駄目だったよロニ。
何がいけなかったのか?解説のコノカさん、いかがでしょう?
「ただ睨んでるようにしか見えへんよ?」
しょうがないじゃん、眼付きのを悪さは生まれつきだもの。三白眼がうらめしいぜ。
プリプリ憤慨するセツナにハッ倒された俺は、混濁する意識の中、この広場に聳え立つ規格外の大樹、通称『世界樹』を逆さ眼になりながら見上げていた。
―――――そう、ここは東。関東魔法協会本部・『麻帆良学園都市』―――――
―――――我ら【漆黒の翼】の新天地―――――
――――それは、小学校卒業も差し迫ったある冬のこと。
いつものように3人で遊んで、もとい活動していた俺たちを詠春さんが呼び出した。何用かと速やかに馳せ参じる―――――
「俺たちが東に?」
「お父様、ホンマなん?」
「そうなんですか、長?」
異口同音とまではいかないが、ほぼ同義の質問をぶつける俺たち。
それというのも、詠春さんがこの春から俺たちを東の本部、麻帆良の中学校に編入させると言ってきたからだ。なんでまた。
「どうも下の者の中に良くない動きをしている輩がいるようなんですよ」
曰く、西の治安が少しずつ雲行きの怪しい方向に向かっている。西の長の娘であり極東一の魔力を持つコノカは、その輩に狙われる危険性が出てきたというのだ。
確かにそれだけの好物件なら利用価値は計り知れないだろう。言いたかないけど、胸糞悪くなる使い道だってたくさんある、なんとなくわかる。
でも、態々敵地のド真ん中に行かなくても。何か理由があるんですか?
「アソコは都市を覆うように強力な結界が張られてありますから、危険な輩から護ってくれますよ。少なくともここよりは安全なハズです」
東のお偉いさん方がなんていうかわかりませんよ?
「それなら大丈夫、東の長は私の義父、木乃香の祖父だからね」
・・・内輪でなにやってんだアンタら。
西と東は、敵対してるというよりイガミ合ってるというのが正しいらしく、イガミ具合は西の方が強いんだって。
だから俺たちがノコノコ出向いたところをいきなりグサリッ、ということはないとのこと。
ちなみに長同士の関係は良好なんだと。下を抑えられるかは2人の手腕にかかっている。
腕の立つ神鳴流剣士も1人同行させると言っているし・・・それなら、まぁ、大丈夫か?
3人一緒ならオールOKなコノカ、「我が人生このちゃんと共に」なセツナ、その2人の上官たる俺、断る理由はもう無い。【漆黒の翼】は遠征いたします!
了承の返事をした俺たちは退室、だがコノカが出たところで呼び止められる俺とセツナ。まだなにか?
「・・・君たちのことを、東に寝返った裏切り者と呼ぶ者もいるかもしれません。・・・それでもこの任、引き受けてもらえますか?」
顔を見合わせる俺たち。多分2人とも同じような表情だったと思う。
――――何を今更、と―――
「言わせときゃいいんですよ。その程度で揺らぐ程、俺たち3人は脆くないです」
「お嬢様の安全は、私たちの『ツバサ』が約束します」
淀みもなく応えた。
「・・・・・・木乃香のこと、よろしくお願いします――――」
そういえばセツナ、立場的なことを考えてかコノカを「お嬢様」と呼ぶようになった。コノカは不満気だ。まぁ油断するとすぐ「このちゃん」に戻るから別に構わないけどね。
―――やってきました麻帆良学園、なんだこの広さは、東京ドーム何個分だ。それにアノ樹、デカ過ぎじゃないのか?あれだけデカけりゃ観光地にでもなってそうなもんだが。
驚きもそこそこに、この学園を、ひいては関東魔法協会を統べるコノカのじいちゃんが居る学園長室へ向かう【漆黒の翼】+1。・・・なんで女子校の中にあるんだよ、奇異の目で見られたわっ。
学園の女教師の案内の下、学園長室前に連れてこられた。胸デカいなこの人。デカさが売りなのかココは。
ノックしてモシモシした後、中から入室許可が下りる。入る、ガチャリと。
―――――ぬらりひょんが鎮座していた。
・・・ここまで大っぴらにしていいのか、“裏”の秘匿を。
と思ったら、この方が東の長にしてコノカの祖父『近衛 近右衛門』その人。列記とした人間だそうな。
ビックリしたよ、危うくコノカを主人公にしたマンガを描くところだった。だって孫だもの。
それにしても、ちっとも似てないな。・・・・・・優性遺伝万歳!!
そしてその傍らに、柔和な笑みを浮かべ、側近のように佇んでいる眼鏡のダンディズムが1人。
この人は『高畑・T・タカミチ』さん、この学校の教員だって。“裏”の関係者でもあるんだと。・・・・タダモノじゃなさそうだ、そう思う、なんとなく、あと「T」って何の略だ。
「おじいちゃん、久しぶりや」
「フォフォ、よく来たのう木乃香、それにキミらも」
「お初にお目に掛かります、一海里です」
「同じく、桜咲刹那と申します」
セツナ共々挨拶を済ませる俺。一緒に来た神鳴流剣士「葛葉刀子」さんは、さっきのムネの人に連れられて何処かへ。後で聞いてみたら、ここで教師やるんだとさ。
「木乃香と仲良くしてくれてるそうじゃな、礼を言うぞい」
「友達で、総統ですから」
「親友で、主任ですので」
「♪」
「「?」」
そんなこんなで、東の長といろいろ話を進める【漆黒の翼】一同。
コチラの“裏”のことや各関係者――魔法先生とか魔法生徒とか云うんだって――の役割、あとは俺たちの仕事なんかの話だ。
俺とセツナには、この都市に現れる魑魅魍魎やアブナイ連中を撃退する仕事があるんだそうだ、しかも無償で。
セツナは承諾しかけたが、遮って異を唱える。この辺ハッキリさせないと後で面倒だ。
「俺たちの仕事はコノカの守護です、街の治安維持にまで気は回せませんよ」
「ふむ、しかしじゃね、コチラ側にいる以上協力してもらわんと困るんじゃよ」
「いえ、協力はします。関係無い人たちにまで理不尽な思いはさせたくないですから。でもさすがに無償で働くのは嫌ですよ、慈善事業じゃあるまいし」
「いや、割と慈善事業なんじゃけど、『立派な魔法使い』ってそういうモノじゃし」
「なら、傭兵扱いでお願いできませんか?依頼された仕事を引き受けて報酬を貰うっていう感じの」
「ふぅむ・・・」
コノカはニコニコ、セツナはオロオロ、俺と学園長で喧々諤々、高畑さん置いてけ堀。
心象悪くなるかもしれないが、ココは譲れない。俺たちは『立派な魔法使い』を目指して東に来たんじゃないんだ。コノカを護ることが大前提、そんで楽しく暮らせればいいんだから。
話し合いの結果、俺たちの実力を見てから判断することになった。
そりゃ腕の悪い傭兵なんか雇っても金の無駄、その辺で募金した方がよっぽど為になる。アチラの提案は当然のことだろう。
なので俺はそれに応じる。セツナも困惑しながらも、説明して納得させた。
――――それで俺とセツナで模擬戦をすることに、冒頭に戻るワケだ。途中から興が乗ってきたんでスッカリ忘れてたけどね。
結果、最後はポカーンだったが腕は認めてくれたらしく、俺たちは晴れて傭兵職に就いたのだった。定期的にシフトに入るんだとさ。
さあ、いよいよ新天地だ。用意はいいか?
「もちろんや!」
「抜かりなく!」
【漆黒の翼】、関東編のスタートだ!!
―――――少年たちの『物語』は加速していく―――――
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ネタ盛り込むって難しい。
だれか海里のカードの絵柄描いてくれないかなぁ。