コノカ誘拐騒動から一夜明け、本日は修学旅行2日目。
無事朝を迎えられたことをお日様に感謝しつつ、俺はホテルの大広間で朝食を受け取る行列に並んでいる。
修学旅行中の朝飯は、クラス全員は勿論のこと、同じホテルに宿泊している教員達とテーブルを囲んで食すことになっている。
もっとも、テーブルじゃなくて個別のお膳なんだけどね。
不公平なことにメシを受け取る順番は教員優先のため、朝早くから仕事を求めグーグー騒いでいる働き者の胃袋は不満たらたらだ。
昨晩ちょっこし暴れたせいか、いつもより胃酸がヤル気だしてる感じがする。
「「「「「いっただっきむぁーーーすぅっ」」」」」
ようやく順番が廻って来た。和食を絵に描いたような膳を受け取り、班員と共に決まり口上を述べ食事開始。
なんか全員、若干虚ろな感じでモソリモソリと箸を進めている。
寝不足か? 俺が帰って来た時にはもう全員寝てたハズなんだけどな。
「なんかオマエら眠そうだな」
「誰かさんのせいでな……」
「熱く語り合った後にあれだったからね、疲れが残ってるんだよ……」
白熱するほど語り合ったとな? なんだろう? 記憶の確認してないから知らんぞ。
話の整合性が取れなくなると厄介なので、俺の代わりに参加していた分身の記憶から会話の内容をその場でサルベージしてみる。
ええっと何々、昨日の晩は―――――――――?
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「なぁ、オマエ誰が好きなんだよ?」
「オマエから言えよっ」
「いいじゃん、ソッチから言いなよっ」
ふむ、好きな人の話か……。実に中学生の修学旅行らしい会話だ。まさしくテンプレとも言えるだろう。
「じゃあ言うぞ?俺はぁ――――」
やっぱ修学旅行ってのはこんな感じなんだな。恋バナはいつの時代も鉄板――――――
「―――――断然ドゥーエだな!」
…………あれ?
「何言ってんのさ、セインさんには勝てないよ!」
「バッキャロウ!チンク姉こそ至高だっつーの!」
……どうやら“ナンバーズの中で誰が一番好きか”って話だったらしい。
なんて生産性の無い討論してんだコイツら……むなし過ぎるぞ、せめて身近にいる女の話で盛り上がれよ。
「ニノはどうなんだよ!?」
『俺?』
「チンク姉だよな!?」
「ドゥーエだろ!?」
分身は何て答えたんだろう?
『関係無いけど、ナンバーズとバロックワークスって2番目と5番目の能力丸被りだよな』
「「「「……」」」」
………うわぁ。
「やめろおおおおぉッ!!俺のドゥーエを穢すなあああぁッ!!」
「チンク姉のノーズファンシーキャノン…………ヤベェ、ワクワクが止まらねえ!!」
「その理論で行くとセインさんはモグラババアと同列…………イヤだ!考えたくないィ!!」
一瞬で阿鼻叫喚に変わってしまった。ご愁傷様。
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「おかげでドゥーエがオカマ拳法つかう夢見ちまったよ・・・」
「・・・・あー、その、悪かったな」
分身の非礼に詫びを入れる。夢を壊してゴメン、2つの意味で。
まぁそれはともかくとして、とりあえず今日の予定を確認しとくとするか。
修学旅行2日目は班別の自由行動になっている。事前に班ごとに何処に行きたいか決め、担任にその旨を伝えるのだ。
俺らのクラスは大阪での自由行動。道頓堀で女の子を引っ掛けてムフフ、とかダイチが言ってた。そんな上手くいくのかねえ?
当然、俺はそのナンパ計画には参加しない。
あのサル女がいつやって来るかわかんねえからな。遊びは分身君に任せて、コノカの護衛に努めさせてもらうぜ。
コノカ達は、確か奈良公園に行くとか言ってよな。
……早いトコメシ食って、先回りするとしますかね。
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―――――ホテルのトイレで分身と入れ替わり、やってきました奈良公園。噂通りのシカ天国。あっちにシカ、こっちにシカ、どっち向いてもシカシカシカ。
着くのが少し早かったので、暇を持て余している間はシカと戯れることにした。
売店で買ったシカ煎餅をエサに、時に優雅に、時に大胆に、時にふてぶてしく、時に妖艶にシカと交流する。
動物園は嫌いだけど、動物がノビノビと放し飼いにされているこういう場所は、……まぁ嫌いではない。
柵も無いのによく逃げ出さないものだ。不思議でしょうがない。
何故なんだ、すぐそこに自由が待っているというのに。俺なら五秒で逃げるのに。
――――俺がしばらくそんな感じに奈良公園のナゾに挑んでいると、何処からともなく聞き覚えのある姦しい声が耳に届く。
咄嗟に近くに茂みに身を潜め、辺りをキョロキョロ。
入口付近にコノカ、セツナ、他五名の姿を捕捉。気配を殺して茂みの中をソリッドスネーク。
……む、ノドカが髪の毛を後ろでまとめてる?
珍しいな、人と眼ぇ合わすのが苦手でお馴染みのアイツが、あんな目ン玉むき出しのヘアースタイルにするなんて。
その後、ネギがシカに噛みつかれるハプニングもあったが、あの女の姿は見当たらず。今日は攻めてこないんだろうか。
……新しい眼鏡でも買いに行ってんのかもな。
と、いつのまにかコノカを含む図書館部四人の姿がどっかに消えているではないか。何処行ったアイツら?
「アスナアスナー! 一緒に大仏見よーー!!」
「何よ突然ってわぁ!?」
「せっちゃん一緒に団子食べへーんっ!?」
「え、ちょ!?」
と思ったら今度は何処からかノドカ以外の三人がセツナらに強襲、ネギを置き去りにまた消失した。あっというま劇場。
置いてけぼりにされポツンとするネギ。いじめ?
そんなパークアローンな少年の元に、おっかなびっくりな足取りで近づく一人の制服少女。
「あ、あの、ネギ先生……」
「あ、宮崎さん……」
正体は言わずもがな、ガッチガチに緊張したノドカだ。
数度口をパクパクさせ、精一杯の言葉を肺に残るわずかな空気と一緒に絞り出す。
「ハルナ達も、どこかに行っちゃって………よ、よかったら、一緒に廻りませんか…?」
「ええ、喜んで!」
居酒屋の掛け声みたいな返事で申し出を軽く承諾するネギ。同時にノドカの表情がパァっと明るくなる。
……はっはーン? なるほどなるほど、ネギを置き去りにしたのはそういうことか。なかなか友達想いじゃないか。
そういうことなら、これ以上の立ち入りは野暮ってモンだな。ニノマエミサトはクールに去るぜ。
……と思ったら、すぐ近くの茂みでユエ&ハルナが思いっきり出歯亀していた。悪趣味な…。
まぁちょうどいいや、コイツらが別行動とってるうちに一旦セツナ達と合流しよう。
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「まったく……強引に引っ張って来たと思ったら急にいなくなるなんて、パルも夕映ちゃんも何考えてんのかしら?」
「のどかのためなんよ、勘忍や」
「ははーん? いやはや、青春ッスね~」
「? それってどういう……」
ガサガサッ
――――四人の背後の草藪が音を立てる――――
「! だ、誰!? 敵!?」
「オッス、おらミサト!」
茂みからひょっこり顔を出す俺。アスナとカモは目を剥き、コノカとセツナは『知ってるよ』って顔してる。
「な、なんだ兄さんかよ」
「お、脅かさないでよ! 昨日のおサルかと思ったじゃない」
「そっちの二人は気付いてたみたいだぞ?」
「え、嘘!?」
「なんとなくやけどな」
「気配で大体わかります」
公園に入った時から『あ、居るな』って思ってたらしい。ウチの部下は実に優秀だ。
あとカモ、あんまどうどうとしゃべんな。公共の場なんだからな。
それはさておき、その場で臨時の現状報告会をおっぱじめる俺達。
「一通り見回ったけど、敵影は見当たらずだ」
「各班に撒いた式神からも、これといった情報は入ってませんね」
「やっぱり今日は攻めてこない日なのかしらね」
昨日コテンパンにしたからな。体勢の立て直し、作戦の練り直し、人員の補充、その他諸々の事情があるんだろう。
……人員の補充、か。
結局、奴らはどれくらいの規模の集団なんだろうか?
昨日の時点で判ってんのは、サル女とロリ剣士の二人。他のまだ仲間が居るかどうかは不明。
向こうの狙いは間違いなくコノカ。それとネギの持ってる親書だ。コレは決定事項と見ていいだろう。
……誘拐と妨害を同時に行うのに、二人だけというのは少なすぎる人数ではないだろうか。
となると、まだ他に仲間が居ると考えるのが自然だ。
昨晩の二人に加え、妨害に一人以上使うと考えれば、少なく見積もっても敵勢力三人。
いや、もっと多いかもしれない。もしかしたら五人、十人、あるいはそれ以上……。
対してこちらの勢力で戦闘可能なのは、俺・セツナ・ネギ・アスナ。
同行している魔法先生は各クラスの警護に当たるだろうし、エヴァさんは手を貸してくれるかわからない。
それにアスナだって身体強化できるとはいえ、戦闘に関してはド素人。あまり頼りきりにも出来ない。
「……数で攻められたら厄介だな」
「少人数の痛いところですね…」
「無い物ねだりしてもしょうがねえ、足りない分はチームワークでなんとかすっぞ」
「人員、か……」
「? カモ、なんか言った?」
「いや、なんでもねえッス」
「じゃ、俺は見回りに戻るわ」
臨時会議は終了。セツナ達に別れを告げ、再び警護に付く。
………そういや、ネギとノドカはどうなったんだろ?
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・
「アイツも大変ねぇ」
周辺警護に戻ったミサトの背中を眺めながらアスナは呟いた。
自分だって修学旅行中だろうに、護衛とフォローの掛け持ちしながら奔走するのは堪えるだろうと若干心配になったのだ。
その発言を聞いて、少しだが、木乃香が申し訳なさそうに眉をハの字にしてはにかむ。
「フォローはともかく、護衛は私達が好きでやってることですから」
明日菜の発言に刹那が注釈を付けて答える。
暗に『なに、気にすることは無い』と言っているのだろう。おかげで、木乃香の眉が元の位置に戻った。
ガサガサッ
――――と、また背後の藪が葉を鳴らして揺れる。
「ん? ミサトの奴、忘れ物かしら?」
警備のために去っていった少年が戻って来たのかと判断した明日菜が、藪に向かって声を掛ける。
「さっさと出てきなさいよ、もう驚かないわよ」
「……アスナ、コレ総統ちゃうよ」
「へ? じゃあ……」
気配で察したのか、木乃香が否定する。
予想に反して茂みの中から現れたのは――――――――
「ハァ…ハァ……アスナさん…このかさん…刹那さん…?」
―――――何かから逃げてきたかのように息を切らし、涙で顔を濡らしたのどかだった。
「本屋ちゃん! どーしたの!?」
「何かあったんですか!?」
「ネギ君と一緒やったんやないん!?」
その場にへたり込み力無く俯く内気な少女の姿に、口々に何があったのか問いただそうとする少女達。
特に木乃香と刹那は、付き合いの長い図書館部の仲間の一大事に大慌て。てんやわんやで、なんだかんだと、すったもんだの世紀末。
おかげで事態が落ち着くまで、しばらくの時間を要した。
「……わたし、もうどうしていいのか…」
ようやくのどかを含めた全員が落ち着いた所で、場所を変えて休憩所の前にて話を聞くことに。
聴けばコチラにおわすのどか嬢、なんと今日この場を持って、意中の男性―――すなわちネギ少年に告白しようとしたのだという。
だがその意気込みとは対照的に、やることなすこと全て空回り。
『大好き』と言おうとすれば『大仏』だの『大吉』だのおかしなことを口走ってしまう。
オマケに空回りが過ぎて、ネギにいろいろ痴態をさらしてしまうという始末。
そんな自分が情けなくて、恥ずかしくて、ネギを置いて逃げてきてしまったらしいのだ。
「本屋ちゃん、本気だったんだ……」
「せやねん、せやからウチらも応援しとったんよ」
のどかの奮闘ぶりを聞いた明日菜は驚きを隠しきれない。木乃香も、のどかの頭をよしよししながら慰める。
そして明日菜の肩に乗ったカモは目を細めしみじみと若さに賛美を送り、刹那は何か思う所があるのか、黙ってのどかを見つめている。
「でも、なんでネギなの? ハッキリ言ってガキよ? お子ちゃまよ?」
「アスナさん、ハッキリ言いすぎですよ」
身も蓋もない明日菜の問いに、もうちょっと言い方があるだろうと刹那がツッこむ。
「……確かに普段のネギ先生は、皆の言うように……子供っぽくて……可愛いところも、あります」
惚れてる相手を蔑ろにするようなアスナの発言を、のどかはたどたどしい口調で肯定する。
じゃあなんで?と訊き返す前に、のどかはまたゆっくりと口を動かす。
「……でも、時々私達よりも年上のような、頼りがいのある大人びた表情をするときがあるんです」
想いを寄せる年下の少年の表情を想い浮かべ、のどかの頬に紅みが差す。
明日菜は『そうかな?』と首を捻っているが、木乃香と刹那は真剣に耳を傾ける。
「それは多分、私達にはない目標を、ネギ先生が持っているからだと思います。それを目指して、ひたすら前を見ている……」
のどかは、ネギが父親の影を追っていることなど知らない。もちろん魔法のことなど、知るわけがない。
だが、誰よりも少年を見ていた彼女にはわかった。
あの少年は、自分に無い“何か”を持っているということが。
あの少年が、自分には見えない“何か”を見ているということが。
だから、こんなに心惹かれるんだと。
「私はそんなネギ先生を見ているだけで、満足でした。それだけで、私は“勇気”をもらえました」
――――“ユウキ”――――
その短い言葉に、一人の少女の肩がピクリとふるえる。
「……でも、今日は自分の気持ちを伝えてみようと、思いました…………この気持ちは、ウソじゃないから……」
そこまで言い終えると、のどかは再度頬を紅潮させ俯いてしまった。
言葉に表したことで想いの大きさを再確認したと同時に、自分がとても恥ずかしいセリフを吐いたことに気が付いたのだろう。
……だが、紅みはすぐに消え失せ、悲哀の蒼さがその表情に浮かび上がる。
「……でも、やっぱりダメ………私には、そんな“勇気”……持てない…」
声のトーンが落ち、また瞳から涙がこぼれる。
少女達は、なんて声を掛けたらいいか、わからなかった―――――――
「……のどかさん」
―――――少女の一人が、スッと一歩前に出て、膝をついてのどかの肩に手を添える。
「……刹那…さん?」
その少女――刹那は、慈しむようにのどかの瞳を見つめる。
のどかの強い想いを秘めた瞳。哀しくて、どうしようもなく苦しくて、とめどなく溢れ出る涙。
「……私も、同じ思いをしたことがあります」
「え……?」
「のどかさんのような恋の話ではありませんが、私にも経験があるんです」
刹那は、その瞳の想いを知っていた。涙の苦さを知っていた。
「大切な人がすぐ近くに居るのに……嫌われるのが怖くて、何も言えない。
言ってしまったら、今までのようには居られないかもしれない……壊れてしまうのが怖くて、何もできない。
………一歩、たった一歩踏み出すだけで変えることができるのに……その一歩を踏み出すことが、できない。
こんな弱い自分には、そんな“ユウキ”なんて、持てっこないって………ずっと、そう思っていたんです」
弱い自分を噛み締めるかのように、刹那は一言ずつ、ゆっくりと言葉を紡いでいく。
「でも、それは違うって……そうじゃないんだって、教えてくれたヒトが居たんです」
弱いだけじゃない。そう教えてくれたヒトがいた。
「そのヒトは、私と同じでした。嫌われる怖さも、壊れてしまう辛さも知っていた。
それでも、そのヒトは踏み出したんです。
私が持てなかったユウキを、いや、“持てないと思い込んでたユウキ”を持っていたんです」
言葉じゃ無かった。その手で、その瞳で、その心で、それを示してくれたヒトがいた。
「それが、すごくうらやましかった。とても眩しかった。
…………だから、私も決めたんです。逃げないで、一歩だけ前に踏み出してみようって」
臆病な自分が覆い隠してしまった、小さいけど、確かにそこにある“ユウキ”の火。
「私も、一皮むいてしまえばただの臆病者です。
でも、どんなヒトだって、“ユウキ”が持てないなんてことは、絶対に無いんです。だって――――――
―――――だって、こんな臆病者の私でも持っていたんですから」
持てないなんてことは無い。その小さな火は、必ず胸にある。
「それにのどかさんは、もう“ユウキ”を持っているんですよ?」
「え…?」
「“この気持ちはウソじゃない”って、言えたじゃないですか」
「あ……」
「自分の気持ちを否定して抑え込んでいた私なんかよりも、のどかさんは、ずっとずっと“ユウキ”のある人なんですよ?」
そこまで言うと、刹那はのどかの手を取り、ギュッと握りしめ――――
「――――あとは、一歩踏み出すだけ。アナタは、それができるヒトなんですよ」
―――――背中を押す、最後の一言を告げた。
「…私に…出来るでしょうか…?」
「できます。私が保証します」
きっぱりと言い切った。
「……私、もう一度、先生に会ってきます………会って、一歩だけ、踏み出してみます…!」
「ええ、がんばってください」
「……ハイ! ありがとうございました!」
ペコリ、ではなく、ブンッと音が聞こえてきそうなお辞儀をして、恥ずかしがり屋の少女は駆けていった。
自覚した己の弱さと、それに負けない心の強さを胸に抱いて。
「……え、あ、ちょ!? ちょっと、本屋ちゃーーん!?」
完全に話から置いていかれた明日菜が再起動を果たし、なんだかよくわからない衝動に駆られ、カモを肩に乗せたままのどかの後を追いかける。
力尽きた、とまではいかないが、結構な疲労感が話を終えた刹那の肩にのしかかり、ふぅっと息を吐いて休憩所の椅子に腰を下ろす。
その隣を木乃香がひょいっと陣取り、刹那の顔をニッコニコしながら覗きこむ。
「なんか私、偉そうなこと言っちゃいましたね……」
「せっちゃんカッコ良かったえ?」
一般人であるのどかと魔法使いであるネギ。“裏”の人間としては、彼らの接近は止めるべきなのだと思う。
だが、刹那には止められなかった。
気付いた時には、少女の背中を押してしまっていた。
あの瞳に、どれだけの想いが込められているかを知ってしまっているから。
あの涙に、どれほどの苦しみと辛さが含まれているかが解ってしまったから。
「……総統に怒られちゃいますかね?」
「んー……」
顎に指を当てて可愛らしく唸る木乃香嬢。
「でも、総統もおんなじこと言いそうな気ぃするわ」
「……フフッ、だといいですね」
「ん♪」
少女達は、互いに笑いあう。
恋する少女が踏み出す、小さく、大きな一歩を祝して。
そして、純白の少女は静かに決意する。
――――この旅行中に、もう一歩踏み出してみよう。
――――自分のことを親友と言ってくれたあの少女達に、もう一歩近づいてみよう。
――――私の名前は、桜咲刹那。
――――【漆黒の翼】の、戦闘主任。
――――総統の黒き翼は、“勇気の象徴”。
――――このちゃんの明るい笑顔は、“元気の太陽”。
――――そして、私の白き翼は、“決意の証明”なのだから。
「テメェこのやろサイフ返せコラァ! っておいコラやめろ! 樋口さんを喰うなァ!?」
―――――勇気の象徴は、シカと格闘していた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
2日目・昼の部、いかがだったでしょうか?どうも私です。
あんまり動きのない感じで、どうもすいません。
早く3日目に行きたい今日この頃です。
のどかへの励ましは刹那にお願いしました。原作では『のどかの勇気に乾杯』状態でしたが、ウチの刹那は強い子です。
……過去編、そのうち復活させたいなぁ。
P.S おかげ様で30万HIT!! 本当にありがとうございます!!!