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No.15039の一覧
[0] 短編 ハロウィンの悲劇[社符瑠](2010/10/31 22:31)
[1] クリスマス短編 サンタク○ー○[社符瑠](2010/03/03 21:53)
[2] 雛祭り短編 声に出せない素直な気持ち[社符瑠](2010/05/30 15:08)
[3] 短編 雨の日[社符瑠](2010/07/04 21:02)
[4] 短編 止まない雨が無いように……[社符瑠](2010/10/31 22:10)
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[15039] 短編 ハロウィンの悲劇
Name: 社符瑠◆5a28e14e ID:5aa505be 次を表示する
Date: 2010/10/31 22:31

 今日は地球でハロウィンという行事が行われる日である。

「今頃、地球に行ったエリオやキャロ、ヴィヴィオはあのお祭りを楽しんでいるのかな?」

 無限書庫で何時もの様に自分の周囲に無数の本を浮かべながら仕事をしているユーノは子供たちがあちらの架空のモンスターたちに変装してお菓子を貰っているのを想像して思わず微笑みを浮かべ――すぐに眉間に皺を刻んだ。

「『お菓子くれなきゃいたずらするで?』か……」

 遠い目をしてかつてを思い出す。



────────────────────



「みんな帰っちゃったな」

 その日、ユーノは広い無限書庫で1人だけ残業していた。

「まぁ、無限書庫に馬鹿みたいに資料請求してくるのはあいつだけだしなぁ……」

 全身黒尽くめの悪友の顔を思い出して溜息をつく。
 なぜなら今日の残業はその悪友の為であり、いつもならなんやかんやで手伝ってくれる他の司書たちは司書たちで「今日は特別な用事があるから残業は勘弁して下さい」と口を揃えて言いにきて、中には土下座までしてくる者がいるほどだったのだから。

「揃えなきゃいけない資料はまだまだあるし、今日は泊まりこみだな」

 そう言って覚悟を決めて再び作業に戻――ろうとしたユーノを

「とりっく おあ とりぃいいいとぉおおおお!!!」

 聞き覚えのある3人の大声が襲った。





「はぁ…… それで、今日は何なの?」

 3人の大声のせいでズキズキする頭でユーノは考えて、全てを悟った。
 いつもなら、よっぽどの事が無い限り、どんなに遅くてもユーノの勤務時間終了の3時間前くらいに資料請求してくるクロノが、時間ギリギリに大量の資料請求をしてきた理由。
 緊急事態に備えてシフトを組んでいるにもかかわらず、他の司書たちがさっさと帰ってしまったのは何故なのかと言う疑問の答え。
 土下座までした司書に対する罪悪感――これは少し違うか。

 とにかく、ユーノは色々と悟ってしまった。

「ありゃ、思ったよりも冷静やね」
「もう少し驚いてくれると思ったのに」
「……」

 はやてが今日のユーノ君のリアクションはイマイチやねと愚痴り、なのはが少しつまらないと頬を膨らませ、そんな2人の後ろでフェイトだけが止められなくて本当に申し訳ないと言う顔をしている――が、ユーノはすぐに目を逸らした。

「この寒い時期に、なんだってそんな薄着――今日は祭りか何かなの?」

 3人とも別々の格好をしているが、その服装は依然地球に行った時にはやてに引っ張られるようにして連れて行かれた『OTAKUの祭典』とかいう場所で見た『こすぷれ』と呼ばれていたのと良く似ている様に思えた。

「流石ユーノ君、この格好を見てすぐにわかってくれるやなんて、やっぱり私が見込んだだけの事はある」

 そう言ったはやては嬉しそうに笑いながらユーノの左側に移動し、3人の薄着に顔を赤くしている彼の左腕に自分の右腕を絡ませた。

「む」

 それを見たなのはは眉間にしわを寄せると同時にユーノの右側に移動してはやてがしている様に――いや、それよりも過激に、彼の右腕を自分の両腕抱え込むようにした。

「あの、2人とも?」
「ユーノ君は知らないかもしれないけど、今日は私たちの世界でハロウィンって呼ばれている日でね?」

 はやてとなのは、2人の少女に挟まれて顔を赤くしているユーノがどぎまぎしているのに気付いているのか気付いていないのか――計算づくなのか天然なのか――なのはは淡々とハロウィンについての説明を続ける。





「2人とも、抜け駆け…… ずるい……」

 その様子をフェイトは指をくわえながら見ていた。



────────────────────



「あの時は大変だったな……」

 つまるところ、あの3人の目的はハロウィンという行事にかこつけて、書庫内にお菓子を持ちこんだりしないユーノをからかって遊ぶ事だった。

「確か、なのははすずかが用意したとかいう猫の衣装で、はやては女吸血鬼とか言ってマントの下は――今やったら痴女としか言いようのない格好で、フェイトは――魔女とか言っていたけど、戦闘の時とどう違うのか良くわからない格好だったな」

 とにかく、3人ともすごく寒そうな格好だったなと思った事を覚えている。

「確か、エリオとキャロとヴィヴィオの3人の仮装の画像データを送ってくれるって話だったけど…… 大丈夫かなぁ?」

 あの時は温度調節がばっちりなされた無限書庫の中だったが、子供たちが今居るのは時期的に雪が降っている可能性のある海鳴である。

「あの時みたいな薄着をさせられて、風邪をひいたりしなければいいけど……」

 なのはもフェイトもかなりの親馬鹿になっているけれど、こういう行事の時はよくハメを外してしまうから心配だ。
 あの時も急な資料請求をしに来た人にあの趣味性癖を疑われる薄着姿を見られて――

「あの時来たのが女性だったからあの程度の被害で済んだけど、もしも男が来ていたら、無限書庫は崩壊していただろうからなぁ……」

 あれから今まで、ハロウィンの話題は厳禁になった。

「まぁ、キャロとヴィヴィオはともかく、エリオは男の子だから、あんな無意味な露出をさせられたりはしていないだろうけど……」

 あの時の自分の様に、キャロの薄着を見て顔を赤くしているであろうエリオを想像すると思わず苦笑してしまう。





ヴヴヴヴヴヴ

「うん? なのはから?」

 2時間ほど前に数分、ハロウィンの事を考えていた事すら忘れて仕事に没頭していたユーノに1通の画像付きメールが届いた。

「えーと、『ハッピーハロウィン』?
 ……! ああ、ヴィヴィオたちの仮装のだな。」

 しかしすぐさまハロウィンの事を思い出した彼は少しわくわくしながら、それでいて他の司書たちにばれないようにこっそりとその画像を見――

「ぶっ!」





 突然吹き出した司書長の事を心配した部下たちに「大丈夫、ちょっと思い出し笑いをしただけだよ」と言った彼の手に握られている端末を見る事ができた者は誰もいなかった。



 そう、ユーノの努力によって、涙目でこちらを見ている猫耳メイドな少年の姿が世間にさらされる事態にならずに済んだのだ。





 ……たぶん。





ハロウィンの悲劇 了?


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