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No.14901の一覧
[0] 聖闘士星矢 『9年前から頑張って』 (オリ主・転生?モノ)[雑兵A](2012/10/01 14:30)
[1] 第1話 此処は聖域! 死ぬって言ってんだろ!![雑兵A](2010/03/22 10:12)
[2] 第2話 昔の話をざっと飛ばして……[雑兵A](2009/12/29 13:24)
[3] 第3話 同期の人?……係わると自分にも死亡フラグが来る[雑兵A](2009/12/29 13:34)
[4] 第4話 修行の一コマ、取りあえず重りから[雑兵A](2010/01/06 00:01)
[5] 第5話 聖闘士候補生のときって……適用される?[雑兵A](2010/01/08 17:25)
[6] 第6話 これ以上は無理……!![雑兵A](2010/01/14 23:20)
[7] 番外編 第1話 少し前の巨蟹宮では[雑兵A](2010/03/12 12:11)
[8] 第7話 必殺技?――――どうだろうね?[雑兵A](2010/01/21 12:44)
[9] 第8話 クライオスの進歩と他所の考え[雑兵A](2010/02/04 13:27)
[10] 第9話 生命の危険が急上昇。[雑兵A](2010/02/25 13:02)
[11] 番外編 第2話前編 黄金会議(?)[雑兵A](2010/03/12 12:17)
[12] 番外編 第2話後編 力を見せろ[雑兵A](2010/03/17 18:02)
[13] 第10話 その素顔の下には[雑兵A](2010/03/31 18:01)
[14] 第11話 シャカの試練(?) 上[雑兵A](2010/04/21 15:06)
[15] 第12話 シャカの試練(中)[雑兵A](2010/04/28 22:50)
[16] 第13話 シャカの試練(下)[雑兵A](2010/07/27 13:00)
[17] 第14話 修行編の終り(?)[雑兵A](2010/09/26 01:10)
[18] 第15話 そろそろ有名な人が登場です。[雑兵A](2011/01/15 08:55)
[19] 第16話 男の行方、クライオスの行方[雑兵A](2011/01/17 19:37)
[21] 第17話 期待を裏切るようで悪いですが……[雑兵A](2011/01/25 19:54)
[22] 第18話 大方の予想通り……大滝です。[雑兵A](2011/11/30 17:18)
[23] 第19話 燃え上がれ小宇宙! 立ちはだかる廬山の大滝……じゃなくて、老師。[雑兵A](2011/11/30 17:20)
[24] 第20話 ムウは常識人? [雑兵A](2012/03/22 19:21)
[25] 第21話 セブンセンシズは必要?[雑兵A](2012/05/29 10:40)
[26] 第22話 アスガルド編01話[雑兵A](2012/06/08 19:43)
[27] 第23話 アスガルド編02話[雑兵A](2012/06/19 19:43)
[28] 第24話 アスガルド編03話[雑兵A](2012/09/26 17:17)
[29] 第25話 アスガルド編04話 [雑兵A](2012/10/02 13:36)
[30] 第26話 アスガルド編05話[雑兵A](2012/10/15 19:17)
[31] 第27話 アスガルド編06話[雑兵A](2013/02/18 10:02)
[32] 第28話 アスガルド編07話[雑兵A](2013/11/30 08:53)
[33] 第29話 アスガルド編08話[雑兵A](2014/05/28 19:11)
[34] 第30話 アスガルド編09話[雑兵A](2014/05/28 19:11)
[35] 第31話 アスガルド編10話[雑兵A](2014/06/16 17:48)
[36] 第32話 アスガルド編11話[雑兵A](2014/06/16 17:49)
[37] 第33話 アスガルド編12話[雑兵A](2015/01/14 09:03)
[38] 第34話 アスガルド編13話[雑兵A](2015/01/14 09:01)
[39] 第35話 アスガルド編14話[雑兵A](2015/01/14 09:02)
[40] 第36話 アスガルド編15話[雑兵A](2015/01/14 09:02)
[41] 第37話 アスガルド編最終話[雑兵A](2015/01/14 09:04)
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[14901] 第16話 男の行方、クライオスの行方
Name: 雑兵A◆fa2f7502 ID:10846e00 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/01/17 19:37




「たのもー!! たのもー!!」

 深夜に差し掛かろうかという夜の聖域。
 その中でもアテナ神殿へと続く12宮の4番目……巨蟹宮。
 俺はその入口で大きな声を上げていた。

 背中には奇妙な表情を浮かべて気絶している、魔鈴の師匠なる人物がいる。

 話せば長くなるが、『ちょっとドツいたら』動かなくなったのだ。
 で、この状況を打破するために俺は巨蟹宮の主に協力を要請に来たのだった。

 しかし、いくら呼んでも返事が来ない。

「たのもー……って言ってるだろうが! デスマスクーッ!」

 真夜中に大声で呼び出すのが非常識だとは理解しているが、今はそうも言ってはいられない。
 俺はなりふり構わず大声をあげるとと、必死になってデスマスクへと呼びかけた。

「デースーマースークーッ!!」
「うるせェッ!!」

 ゴギンッ!

 瞬間、突如目の前に現れたデスマスクは、登場と同時に俺の頭を小突くのだった。
 まぁ所謂ゲンコツだ。

 俺は小突かれた頭を摩すりながらも、こうして出てきてくれたデスマスクに感謝の気持ちを持った。
 だが――

「クライオス! お前一体何考えてんだ!? 今が何時だか言ってみやがれ」

 デスマスクが何かを言っているが、俺はその彼の格好を見て少しばかり思考が停止してしまった。
 若草色のマタニティタイプのパジャマに、同じ色の帽子を被った姿。

 ……とてもではないが、一般の雑兵の方々には見せられない。

「……聞いてんのかクライオス?」
「あ、いやぁその前に……何時もその格好?」
「あん?」

 俺に言われて、改めて自分の姿を見直すデスマスク。
 一頻り視線を動かして見渡したあと

「なんか文句でもあんのか?」

 と、何やら凄まれてしまった。

 『文句は無いが、イメージが……』と思わないでもない。

 まぁ、それを口に出したりはしないがね。

「……取り敢えずその事は置いといて。――デスマスク」
「あん? ……なんだよ急に改まって」

 真面目な顔をしながら視線を向ける俺に、デスマスクは欠伸をしながら気怠そうに返事を返してくる。
 俺は一瞬、そんなデスマスクの態度に『らしいな……』なんて思っていた。

「実はお願いが……コレを何とかしてくれ」
「うん?」

 言いながら、俺は背中に背負っていた男をドサっと地面に降ろす。
 少しばかり降ろし方が乱暴だったのか、その瞬間に男が『ゲフッ……』等と声を漏らした。

「…………何だコリャ? 俺に止めをさせってのか?」
「は?」
「悪ぃけど、俺は仕事以外では殺しはしねぇんだよ。そういう事ならシャカにでも――」
「違いますからッ!」

 思わず、少しだけ思考が停止してしまった。
 何を言ってるんだこの男は? 普通、怪我をしたヤバめな人間を見て『止め――』なんて発想をするか?

 ……いや、シャカとかは普通にしそうだけどさ。

「止めが必要な奴なら、わざわざ此処まで持ってこないで俺が自分でやってるよ。
 そうじゃなくて……コイツが冥界の穴に飛び込む前に、コッチに呼び戻して欲しいんだ」
「何でだよメンドくせぇ……。大体、そんな見るからに怪しげな格好した奴、放っておいたって良いじゃねーか」

 まぁ、怪しい格好と言うのは俺自身も激しく同意するところなのだが、
 貴方も今から数年後に、ハーデスの手先になって同じような格好をするんですよ?

「俺としても放っておきたいのは山々なんだけど……これでもし死んだら、俺はいきなり不祥事を起こした駄目な奴に――」
「話が見えねぇな……そもそも、どんな経緯でこんな状況になった?」

 クイッと指さしながら訪ねてくるデスマスク。
 俺はそんなデスマスクに、少しだけ救われた様な気持ちになる。

「デスマスク、聞いてくれるのか?」
「聞かなきゃ解らねーし、どうせ聞かせるつもりなんだろ?」

 おぉ……何という事だろうか。
 俺は今まで、黄金聖闘士というのを誤解していたのかもしれない。

 連中のことを、俺は『ちょっとばかり強大過ぎる力を持った、人の話を聞かない変な奴ら』程度のにしか思っていなかったが、
 此処に居るデスマスクは別格、全くの別格だ。
 このデスマスクとという黄金聖闘士からは、人間らしい温かみを感じることが出来る。

 顰めっ面をしながらも人の言葉に耳を傾ける――シャカに決して出来ない行為だ。

 だが――

「まぁ……殺す殺さねぇは、話を聞いてからでも良いだろうからな」
「…………」

 大丈夫だよな?




 第16話 男の行方、クライオスの行方




「詰まり何だ? この怪しい奴が難癖付けてきて、お前が返り討ちにしたってことか?」
「え? ……えーと、そうなのかな?」

 魔鈴と出会ってからの事を軽くデスマスク説明したのだが、アレ? 前回の出来事って、そんな感じだったっけか?
 ……思い返してみると、そうだったような。

「なぁクライオス、だったら放っておいても良いんじゃねーか? どう考えても、コレはコイツの自業自得だろ?」
「えっ!?」

 デスマスクの言い分に驚きの声を上げる俺だったが、デスマスクはそんな事は無視するように地面でのたうつ男に近づいていった。
 そして男に『ゴッ!』と軽く蹴りを入れながら、続きを口にする。

「相手の実力も解らずに勝手に突っ掛って、その挙句に勝手にやられたんだ。
 そもそも聖闘士としちゃ失格だろ」
「それは、些か乱暴な論法では……」

 デスマスクの言い分は『成るほど』と思ってしまうところがある。
 だが、幾ら何でもその言いようはあんまりではないのだろうか?

「――あのなぁクライオス、お前もいい加減に俺たち聖闘士ってもんが『何なのか』……よく考えたほうがいい」
「聖闘士が何なのか?」

 なんだろうか? 説教モードか?
 取り敢えず話を聞きやすい姿勢(正座)をするか。

「こう言うのは俺のキャラじゃねーんだが、俺たち聖闘士は何のために存在してる?」
「女神アテナの名のもとに、地上に恒久的な平和をもたらすため?」
「……まぁ、一応はそうだな」

 一瞬、言葉を返してきたデスマスクの表情が崩れた気がしたが……どうしたんだ?
 まぁそれを追求しても仕方が無いのかもしれないので、取り敢えず放っておくが……。

「こう言っちゃ何だが、聖闘士ってのは強引なもんなんだ。
 話し合いで物事が解決出来ればそれが良い、だが世の中はそれだけじゃ上手く行かないことが多すぎる」
「それは、まぁ理解してる」

 言葉だけでは上手く行かないことはよく解ってる。
 大体、言葉だけで物事がうまく進むのなら、俺は地獄の用の修業を課せられたりしなかった筈だ。

「言っても解らない相手がいるならどうするか? それは、最終的にはコレしかねーだろう」

 言うと、デスマスクは『パンッ!』と拳を手の平に叩きつけた。
 でもまぁ、言わんとしてることは非常によく解る。
 一応は聖域で修業を続けていた俺だ、その事は嫌というほどに理解しているしある程度は共感も出来る。
 だが、それがどうしてこの男を放っておくことに繋がるのだろうか?

「俺たち聖闘士はアレだ、基本的に訳の解んねー様な化物とかと戦うのが仕事なわけだ。
 神話の化物だったり、変なその場限りの奴だったりとか色々だがよ。
 だけどな、その場合に一番重要なのは何か? 解るかクライオス。
 それは相手の力を推し量るってことだ」
「相手の力を推し量る?」
「そうだ、俺たち聖闘士には敗北は許されねー。それは何故か? 地上の平和ってのに絡んでくるからだ。
 さっきも俺は言ったな、最終的にはコレしか無いって。
 だが最終手段だからこそ、俺達は負けちゃ成らねぇんだ」

 力強く言うデスマスクの瞳は一つの濁りもない、まるで心からそう信じているようなそんな瞳だ。

 …………こう言ってはなんだが、誰だコイツ?
 俺の記憶にあるデスマスクは、もっとこう……変な奴? だと思ったのに。
 まさかこんな尤もらしい事を口にするなんて。

 俺はきっと、自分でも思うほどに不可思議そうな表情を浮かべていると思う。
 だが、そんな俺の変化になど気が付かず、デスマスクは言葉を続けるのだった。

「――そういう意味では、この男は失格だ。
 お前の話を聞くと聖闘士のようだが、相手の力も解らずに突っかかる犬コロと変わらねぇ」
「だから、自業自得?」
「そうだ」

 デスマスクの言っていることは理解は出来る。
 出来るのだが、どうにも受け入れがたい。
 マトモな事を言ってるし、俺自身その通りだと理解も出来ているはずなんだけどな……。

「それにだ、仮にも聖闘士をぶっ殺したなんてのは箔がついて良いんじゃねーの?」
「冗談はやめてくれよ……」

 ニカッと笑って言ってくるデスマスクに、俺は表情を歪めた。
 コレは一応、気を効かせているつもりなのだろうか?

 だが俺の雰囲気を察してか、

「……わーったよ。その代わり、今度からは気を付けろよ」

 と、溜息と一緒にデスマスクは言うのだった。

「メンドくせぇが……」

 デスマスクが小宇宙を高め、その指に妖しい光を灯らせて男へと向ける。
 するとその光が広がり、男の身体を包みこんでいった。

「これでコイツは、向こう側から帰って来るだろう。
 もっとも、その後の事はしらねーがな。……まぁ、仮にも聖闘士だろうから多分平気だろ」
「コレで戻ってくる?」
「あぁ」

 デスマスクに言われて男を見ると、未だ幻術の影響か苦悶の表情を浮かべているが、
 顔色は土気色から血色の良いものに変化してきている。
 どうやら一先ずの峠は超えたようだ。

「有難うデスマスク。
 今まで料理が上手いだけの変な人だと思ってたけど、
 これからはちゃんと『黄金聖闘士デスマスク』として記憶するよ!」
「お前の中での俺の扱いってなんだよ」

 感謝のあまりに言った言葉だったのだが、どうやらデスマスクには何か思うところがあったようだ。
 そんなに変なことを口にしただろうか?

 しかし本当によかった。
 いきなり不祥事を起こして抹殺されるとかだったら嫌だし、それに仮にも魔鈴の師匠だからな。
 これで再起不能とかになって魔鈴の今後が潰れてしまったら、星矢の修業を付ける人間が変わってしまう――なんてことも有るかもしれない。
 そればかりは少し問題だしな。

「いやぁ、でも良かった。聖闘士になって直ぐに不祥事を起こしたかと思って、正直ヒヤヒヤもの――」
「は?」
「ん?」

 急にへんな顔をして横槍を入れてくるデスマスクに、俺は首を傾げた。

「……聖闘士になった?」
「あー……そういう事か。うん、今の俺は白銀聖闘士なのだよ!」

 デスマスクの問いかけに、俺は胸を張って言い返した。
 しかし魔鈴もそうだが、やはりデスマスクもその事を知らなかったか。
 てっきりシャカ辺りが黄金聖闘士たちには教えているとばかり思ってた。

「お前よ~クライオス、いつの間になったんだ?」
「え? 数時間前だけど」

 と、首をかしげて言った俺に、デスマスクは顰めっ面を返すと

「そういう事は早く言えってんだ!」

 と言って軽く小突いてくるのだった。
 そして――

《――――全員よく聞け! クライオスがいつの間にか聖闘士になってやがった!!》

 と、12宮中に響くような大きなテレパス(言ってて変だが)を放ったのだ。

《なッ!?》
《なんだと!?》
《まさかっ?》
《何と……》
《本当か!?》

 デスマスクの念話に反応して、多種多様な返事か返ってきた。
 声の感じからすると、アフロディーテ、シュラ、カミュ、ミロ、アルデバランだろう。
 ……アイオリアが居なかったな。

 まぁいい。
 それにしても、皆してこんな時間まで起きてるのか?

 さて……そこから先はあっという間だった。
 先ずはこの場にアルデバランが現れ、

「聖闘士に成ったそうだなクライオス。
 いや目出度い、そういう事なら祝をせん訳にはいかんな。
 しかし水くさいぞ、そういう事ならば金牛宮を通るときに言えば良いものを」

 なんて俺の肩をバンバンと叩きながら、まるで自分のことのように喜んでくれた。
 ちょっとだけ叩かれた肩が痛いが、まぁ良いだろう。

「チッ、シャカの野郎……俺達に黙っていやがるとは」
「まぁそう言ってやるな、きっと明るくなったら伝えようとしていたのだろう」
「どうだかな」

 フンと鼻を鳴らすデスマスク。
 しかしシャカがどう考えていたか……よく考えればアルデバランと同意見だけど、
 客観的に見ると伝える気がなかったのでは? とも思えてくる。
 どっちが正しいかは解らないね。

「オイ何やってんだクライオス、速く来い」
「はい?」

 頬を掻きながらデスマスクとアルデバランを眺めていた俺だが、
 そんな俺にデスマスクは妙なことを言ってくる。
 速く来いって……何処に?

「これから処女宮に行くんだ。夜遅かろうが関係ねぇ……シャカには一言いってやらなくちゃな」
「俺は文句を言うつもりは無いが、祝い事をするならやはりシャカのところが良いだろう」

 なんて事を二人は言うのだった。
 祝い事……嬉しいことではあるが、こんな時間に?
 因みに今現在の時刻は、大体午前1時を回った頃。

「オラ! 早くしろクライオス!!」
「……うぃっす」

 まぁ俺には拒否権なんて無いのだがね。
 急かすように言うデスマスクの言葉に短く反し、俺は地面に転がる男を担ぎ上げると処女宮を目指して歩き出すのだった。

 処女宮へと向かう道すがら、デスマスクはアルデバランに向かってシャカの悪口を言い、
 アルデバランはそれを苦笑いと一緒に聴いていた。

 そして何故か無人であった獅子宮を抜けて処女宮へと到着、するとそこには

「遅かったな」

 何故か黄金聖衣を見にまとったアイオリアが仁王立ちして待ち構えていたのだ。

「……何やってんだお前は?」

 デスマスクのこの反応は、俺やアルデバランの心の声を代弁したとも言えるだろう。
 何故なら、当のアイオリアの手には蓋の開けられたワインの瓶が握られていたのだから。

「随分と妙なことを聞いてくるな、デスマスク。貴様等がこの処女宮に現れたのは何のためだ?」
「あん? ……そりゃ、シャカに一言文句を言いにだ」
「詰まりは、俺もその一人と言うことだ」

 アイオリアの言い分は成程と、思わないでもない……普段以上に赤く染まった顔をしていなければ。
 そして、蓋の開いたワインの瓶を持っていなければ。

「お前……酒を飲んでんのか?」

 呆れた風に言うデスマスク。
 まぁ、別に俺も酒とか飲むのとは言わないけどさ……何で既に出来上がってるの? と思わずにはいられない。

「馬鹿を言うな! このアイオリア、酒など一滴も飲まん! これはジュースだ……アフロディーテがそう言って」
「騙されてる」
「騙されてるな」
「絶対に、騙されてる」

 デスマスクだけでなく、俺やアルデバランにも言われたことで、アイオリアは若干の思考タイムに入った。
 そして数秒間程沈黙をすると、「この妙な苦味や酸味はジュースのそれでは無かったのか!?」と言うのだった。

 一人落ち込むようにしているアイオリアを尻目に、俺達は処女宮の中に入っていった。
 するとそこには何故か他の黄金聖闘士達が既に居て……

「宴会中?」

 皆が勝手に床に座り込み、チビリチビリとワインを煽っているのだった。
 アフロディーテ、シュラ、カミュ、ミロ、それとシャカも。

 この不思議な現象に、俺はどうにも妙な感覚を憶えている。
 黄金聖闘士の連中って、果たしてこんなに仲が良かっただろうか?

 すると輪の中の一人――まぁカミュだが、俺達が処女宮に入ってきたことを見つけたらしく、
 飲む手を休めて此方へと近づいてきた。
 それに釣られるように、他の皆も揃って此方へとやってくる。
 俺はそそくさと、背中に担いでいる男を地面に置いた。

「聞いたぞクライオス、聖闘士に成ったそうだな」

 最初はカミュ。
 ニコッと微笑みながら言ってくるその笑顔は、とても普段のカミュとは同じに見えない。
 無理矢理に氷漬けにされそうに成ったことは数えきれず、修行中のこの人は正に鬼そのものだった。
 まぁ、少なからず凍結拳の真似事が出来るように成ったのはいい事だったと思う。

「それもコレも俺のお陰だ」

 こちらはミロ。
 この人は……ハッキリ言ってかなり厄介な人物だった。
 まともそうに見えてもカミュが絡むとズレた人間になるし、修業を付けるとか言ってリアルで殺そうとしてくるし……。

「クライオス、聖闘士に成ったからには今まで以上に人の視線には気をつけることだ。
 いつ何処で誰に見られているのか解からんからな」

 アフロディーテ……。
 頼んでも居ないのに無理矢理に俺に礼儀作法を教えようとしてきた人物。
 ただまぁ、そのお陰でできなくても良さそうなダンスは覚えたし、上手いお茶も飲めたからプラスマイナスゼロかな?
 何度かブラッディローズの香りで逝ってしまいそうにもなったがね。

「良くやったな」

 シュラ。
 俺の面倒な願い事を、真っ直ぐ聞いてくれた良い人だ。
 恐らく、聖域屈指の常識人ではないかと思う。
 まぁ……時折に暴走することが有るようだが、とばっちりを受けないようにしてれば問題はない。

「追い出して直ぐにまた此処に戻ってくるとはな」
「シャカ」

 最後にシャカが俺に向かってそう言った。
 他の黄金聖闘士たちにも勿論世話になってきたが、その中でもやはりシャカには一番世話になった。
 俺を殺そうとした回数が、一番多いからな。

 俺はジッとシャカの事を見つめ、

 ペコッと頭を下げた。

「すいませんシャカ。俺のせいでこんな事に成って」

 コレが原因でシャカの怒りに触れ、結果『天魔降伏』なんて事になったら目も当てられない。
 俺としては、少しでもシャカの気持ちを軟化させるために頭を下げたのだが――

「確かに……こんな時間に来られるのは困りものだが。
 とは言え、今回のコレは私が早々に伝えていれば済んだこと、他の黄金聖闘士たちの言い分ももっともだ。
 素直に自らの否を認めよう」

 シャカから帰ってきた答えは、俺の予想を遥かに超えるものだった。
 まさか、まさかあのシャカがこんな、睡眠不足に繋がることを許した上に自らの否を認めるなんて。

 ……もしかして、俺は一生分の運を此処で使っているのではないだろうか?

「今……何やら失礼なことを考えなかったかね?」
「いいえ、決して」

 不機嫌そうに眉間に皺を寄せたシャカに、俺は勢い良く首を左右に振った。
 時折、妙に勘の鋭い時があるから困る。

 俺は何か違う話題は無いだろうかと周囲を見渡した。
 そして「あれ?」と思う。

「ところで、テアはどうしたんです? 流石に寝てるんですか?」

 周りをグルッと見渡してみても、何故かテアの姿が見えないのだ。
 時間が時間なだけに、もう寝てしまっているのだろうか?

「あぁ、あの小僧ならば――」
「――おつまみ出来ましたよ!」

 と、不意に宮内に声が響いた。
 聞こえてきた方へと視線を向けると、そこには小さい体で大皿を運ぶテアの姿がある。

 俺はシャカの方へと視線を向けると、シャカは小さく笑みを浮かべた。

「あぁして、給仕の役をかってでて貰っている」
「なんか変な言い回しじゃありませんか? それ」
「そうかね?」

 『普通はかってでてくれた』であって『貰った』では無理やり臭いところが見え隠れ……。
 俺は一生懸命に動き回っているテアに近づいていった。

「テア」
「あ、クライオス」

 動きながらも、俺の事を確認したテアは元気に返事をしてくる。
 とは言え、急にこんな作業をさせられては大変じゃないのだろうか?

「聖域について早々に大変だな?」
「別に大変なんかじゃないよ。家じゃコレくらいのことは当たり前だし」
「そうなのか? でもこのオツマミ、結構美味そうだぞ?」
「料理は得意なんだよ」

 笑いながら言うテアに、俺は「そっか」と軽く微笑んで返した。
 それは少しばかり、テアがいい笑い方をしているように感じたからだ。

「おーいクライオス、コッチに来い!」
「あの人達は……。すまんテア、俺は向こうに行ってくるから」

 手を振ってから黄金聖闘士の方々の元へと向かう俺だが、テアはそんな俺の裾を掴むようにしてくる。
 クイッと引いてくるテアに、俺は『何だろうか?』と顔を向けた。

「――ねぇクライオス」
「うん?」

 小さく漏らすように口を開くテア。
 だがその顔は暗いモノでは無く、何やら照れているような表情だ。
 少しばかりの間を作るテアに、俺は続きを促すようにして問い掛ける。

「聖域に居る人達って、なんだか良いね?」
「……そうかぁ?」

 俺の返事の意味は、正にそのままの意味。
 此処に居る連中って……そんなに良いか?
 皆が皆、ぶっ飛んだ連中ばっかりだぞ?

 俺は……違うと信じたいが。

 だがそんな俺の気持ちなど知らず、テアは笑顔のままに

「そうだよ。俺さ、どうなるのか解らないけど……『此処』で頑張って行こうって思うよ」

 なんて言うのだった。
 まぁ、そう言われては仕方がない。
 本人がそう思って、そう決めたのなら仕方がないさ。

 精々――

「死なない程度に頑張れよ」
「うん!」

 力強く返事をしたテアから視線を逸らし、俺は若干緩んだ表情で黄金聖闘士達の元へと向かうのだった。

 この時の俺は、実際心から喜んでいたのだと思う。
 死ぬような眼にもあってきたが、それでもこうして結果が出て祝ってくれる人たちが居ることに。
 まぁ、それも長くは続かなかったがね。

 それはおよそ30分後……

「さて……皆もいい具合に出来上がったところで一つ訪ねたいことが有るのだが」
「どうしたんだシャカ? お前らしくもないな、そんな畏まった言い方」

 言葉のとおりにいい具合に出来上がっている面々を見渡すようにして、不意にシャカが口を開いた。
 集まっていた者は一様に、何事かと視線をシャカへと向けている。

 かくいう俺もシャカの方へと顔を向けていた。

 で……だ、次にシャカが口にした言葉は何かと言うと。

「そこに転がっている男は誰だね?」

 だった。
 シャカの指差す方角へと視線を向けていく皆。
 そして

「え?」
「ん?」
「は?」
「男?」
「何処に?」
「おぉ、そういえば」
「居たな、そんなのが」
「…………」

 皆の視線の先には、息も絶え絶えな魔鈴の師匠がいたのだった。
 俺はこの時、心の奥で『忘れてたーー!!』と大絶叫をしていた。

 ・
 ・
 ・
 ・

「――話は解った。お前の言い分は概ね理解した」

 現在の俺は正座をさせられ、周囲を黄金聖闘士達に囲まれるといった地獄に身を置いていた。
 魔鈴の師匠の存在が明らかに成ったところで、それを担いできた俺に説明をするように言われたからだ。

 で、説明がひと通り終わったところで今のような状況に成っている。
 説明を終えたところでの皆の反応は、大体がデスマスクの反応と同じようなものだった。

 要は――『コイツが悪い』ということだ。

 だが

「デスマスクの言いようも尤もだろうが……だからと言ってそれで良いとも言えない」

 とはカミュの言葉である。
 コレにも半数以上の黄金聖闘士が賛同をしたのだ。
 『いくら自業自得とは言え、相手の力量を見極める必要が在るのはクライオスも同様』との事。

 全くもってその通り。

 俺を囲んでいた内の数人――シャカ、アフロディーテ、アイオリア、アルデバランは男の方へと向かっていった

「この男はどうする?」
「ギリシア市内の病院の放りこんで於けば良いのではないか?
 ついでに聖闘士の資格を剥奪するように、教皇には連絡しておこう」
「そうだな。いくら白銀とは言え、成り立てのクライオスに一方的にやられるような奴は聖闘士として認められん」
「名前は……ジャンゴ?」

 何やら可哀想なことが、あの男とは関係の無いところで勝手に決められている。
 名前も、シャカの手に掛かれば簡単に解ってしまうらしい。
 しかし……この男がジャンゴなのか。
 この後にデスクィーン島にでも行くのだろうか?

 まぁ、これも良い方に考えれば冥界の冥闘士と戦わずにすんでラッキーだったと思えばいいだろう。
 もっともその代わり、一輝にぶっ飛ばされるのだが。

「この男の後任はどうするんだ? 一応は候補生を預っていたのだろう?」

 4人の会話に割って入るようにしてミロが言った。
 あぁ、それは俺も気になるところだ。
 魔鈴が聖闘士に成れないとあっては色々と困る。
 一番いい方法は、ここに居る誰かに師匠に成ってもらうことだろうか?
 この中だと一番の適任は――

「それならば、俺が代わりに面倒を見よう」
「アイオリア?」

 俺の中では、不適任なのでは? と思える人物が立候補をしてきた。
 シュラとかアルデバランの方が、人にモノを教えるのに適している気がするのだが?

「クライオスを通して、大体の加減というものは掴んだ。
 後は、別の人間でそれを試せば良いだけだからな」

 なんとも不安で一杯な言い様……。
 俺のやったことのせいで、魔鈴が変な聖闘士に成らなければ良いのだが。

「アイオリア」
「うん?」
「魔鈴のこと……頼むよ」

 結構真面目な顔をしながら、俺はアイオリアに言った。
 アイオリアは「任せておけ」と力強く言うと、自身の胸を叩いて返した。

 さて、そこまでの話が纏まった所で皆の視線は再び俺へと向けられる。
 お叱りを受けるのでしょうか?

「さて、クライオスには何らかの罰が必要だと思うが?」
「今回のことは事故として処理してもいい事だが、とは言え何も無しでは問題もある」

 アフロディーテの言葉に、シャカが合わせるようにしてそう言った。

 あぁ……やっぱり俺にも罰が下るのか。
 とは言え、流石に俺だけ無罪放免なんて事になったら後味が悪いからな。
 この流れはむしろ望むところだ。

 もっとも、俺はこの時の『罰』と言う事に対してかなり簡単に考えていたと思う。

「ならば暫くの間、禁固刑として『あそこ』に入っていてもらえば良かろう。教皇への許可は後ほど頂くとして」

 禁固刑は解るとして、俺はシャカの言う『あそこ』に非常に嫌な予感を感じた。
 だがいつだって俺の感じる嫌な予感ってのは、本当にマズイものを感じたときには本当に良く当たるんだ。
 そしてそれは今回も

「スニオン岬の岩牢だ」

 大当たりだった。





 かなりやっつけな感じで書き上げてしまった……。





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