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No.14901の一覧
[0] 聖闘士星矢 『9年前から頑張って』 (オリ主・転生?モノ)[雑兵A](2012/10/01 14:30)
[1] 第1話 此処は聖域! 死ぬって言ってんだろ!![雑兵A](2010/03/22 10:12)
[2] 第2話 昔の話をざっと飛ばして……[雑兵A](2009/12/29 13:24)
[3] 第3話 同期の人?……係わると自分にも死亡フラグが来る[雑兵A](2009/12/29 13:34)
[4] 第4話 修行の一コマ、取りあえず重りから[雑兵A](2010/01/06 00:01)
[5] 第5話 聖闘士候補生のときって……適用される?[雑兵A](2010/01/08 17:25)
[6] 第6話 これ以上は無理……!![雑兵A](2010/01/14 23:20)
[7] 番外編 第1話 少し前の巨蟹宮では[雑兵A](2010/03/12 12:11)
[8] 第7話 必殺技?――――どうだろうね?[雑兵A](2010/01/21 12:44)
[9] 第8話 クライオスの進歩と他所の考え[雑兵A](2010/02/04 13:27)
[10] 第9話 生命の危険が急上昇。[雑兵A](2010/02/25 13:02)
[11] 番外編 第2話前編 黄金会議(?)[雑兵A](2010/03/12 12:17)
[12] 番外編 第2話後編 力を見せろ[雑兵A](2010/03/17 18:02)
[13] 第10話 その素顔の下には[雑兵A](2010/03/31 18:01)
[14] 第11話 シャカの試練(?) 上[雑兵A](2010/04/21 15:06)
[15] 第12話 シャカの試練(中)[雑兵A](2010/04/28 22:50)
[16] 第13話 シャカの試練(下)[雑兵A](2010/07/27 13:00)
[17] 第14話 修行編の終り(?)[雑兵A](2010/09/26 01:10)
[18] 第15話 そろそろ有名な人が登場です。[雑兵A](2011/01/15 08:55)
[19] 第16話 男の行方、クライオスの行方[雑兵A](2011/01/17 19:37)
[21] 第17話 期待を裏切るようで悪いですが……[雑兵A](2011/01/25 19:54)
[22] 第18話 大方の予想通り……大滝です。[雑兵A](2011/11/30 17:18)
[23] 第19話 燃え上がれ小宇宙! 立ちはだかる廬山の大滝……じゃなくて、老師。[雑兵A](2011/11/30 17:20)
[24] 第20話 ムウは常識人? [雑兵A](2012/03/22 19:21)
[25] 第21話 セブンセンシズは必要?[雑兵A](2012/05/29 10:40)
[26] 第22話 アスガルド編01話[雑兵A](2012/06/08 19:43)
[27] 第23話 アスガルド編02話[雑兵A](2012/06/19 19:43)
[28] 第24話 アスガルド編03話[雑兵A](2012/09/26 17:17)
[29] 第25話 アスガルド編04話 [雑兵A](2012/10/02 13:36)
[30] 第26話 アスガルド編05話[雑兵A](2012/10/15 19:17)
[31] 第27話 アスガルド編06話[雑兵A](2013/02/18 10:02)
[32] 第28話 アスガルド編07話[雑兵A](2013/11/30 08:53)
[33] 第29話 アスガルド編08話[雑兵A](2014/05/28 19:11)
[34] 第30話 アスガルド編09話[雑兵A](2014/05/28 19:11)
[35] 第31話 アスガルド編10話[雑兵A](2014/06/16 17:48)
[36] 第32話 アスガルド編11話[雑兵A](2014/06/16 17:49)
[37] 第33話 アスガルド編12話[雑兵A](2015/01/14 09:03)
[38] 第34話 アスガルド編13話[雑兵A](2015/01/14 09:01)
[39] 第35話 アスガルド編14話[雑兵A](2015/01/14 09:02)
[40] 第36話 アスガルド編15話[雑兵A](2015/01/14 09:02)
[41] 第37話 アスガルド編最終話[雑兵A](2015/01/14 09:04)
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[14901] 第14話 修行編の終り(?)
Name: 雑兵A◆fa2f7502 ID:b1d6ba1a 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/09/26 01:10




 前回のあらすじ~

 ギリシアの聖域で修行に励んでいた我等が主人公クライオス。
 どういう訳か師匠である乙女座・ヴァルゴのシャカに連れられて、ニューギニアへと向うことに成った。
 『聖闘士の仕事に、非聖闘士を連れてくるな』とも思ったクライオスだが、そんな常識はシャカには通用しない。
 その上シャカは、自分の仕事をクライオスに丸投げしてさっさと街へと引き返す始末……。
 だがそこは主人公(?)クライオス、見事に件の原因を突き止めるとそれらを一気に解決へと導き、
 しかも聖闘士の証である白銀聖衣までちゃっかりと手に入れてしまうのであった。

 ……細かく知りたい人は、前前前回の話から纏めて読もう。

 で、現在――

 簡単な事後処理を終えた俺は、生き残りであるテアを連れて島への入り口兼出口である、港街へと戻ってきた。
 そして修行によって自身に搭載された小宇宙センサーを駆使し、シャカが止まっているホテル――では無く、
 シャカが説法を行っている広場を特定したのだった。

 ひらけた空き地のような場所で、シャカは数十人の現地人に囲まれながら話をしている。

 いつも思うのだが、アレをもっとこう……聖域の広報方面に活用できないものだろうか?
 まぁその事は、後で機会があれば白サガに上申してみよう。

 今はそんな事よりも――

「シャカーーーッ!!」

 辺り一体に響き渡るような大きな声を張り上げて、俺は自身の師匠の名を呼びつけた。
 突然の大声に驚いたのか、シャカ以外の者達は瞬間的に『ビクリッ』と身体を震わせた。

 ザワザワとざわめきが広がって行き、周囲に集まっていた者達の視線が声を出した人物――
 詰まりは、俺に集中する。

「後味の悪いこと……ヤラセやがって!!」

 シャカの前に群がっていた連中を一足で飛び越し、俺は振り上げた拳をシャカへと向かって下ろしたのだが――

 ガシィッ!!

「クライオス……帰ってくるなり行儀が悪いな?」
「な……な?」

 俺の全力で放った拳は、アッサリとシャカに受け止められたのだ。
 しかもシャカは手をかざしては居るものの、その掌は俺の拳に触れてはいない。

 何かしらの空気の圧力のような物が邪魔をして、俺の拳を押し返しているのだった。

「全く……少しは成長するのかと思えば――」

 ドガァアアン!!

 それが、その時俺が最後に聞いた言葉だった。

 ・
 ・
 ・
 ・

 え?
 どうしたのかって?

 そりゃ、盛大にぶっ飛ばされたんですよ……。

 シャカを殴ることに失敗した俺は、強制的に意識を戻されて事の顛末をシャカに報告した。
 正座をさせられて。
 まぁ『例の男』に関しては報告しなかったが。

「――ほう、白銀聖衣か」

 説明するのに邪魔だからと、地面に置いていた聖衣箱を見つめてシャカは唸るように言った。
 ……まぁ、相変わらず眼を開けてはいないのだが。

「はい。戦闘中に飛んできてそのまま……。
 近くの洞窟に封印されていたらしく、恐らく現地の誰かがアテナの呪符を破ってしまったのではないかと(ぶっ飛ばされたことで言葉使いが戻った)」
「ふむ……」

 シャカは吟味をするように頷くと、次いでその顔をテアの方へと向けた。
 あぁ……そう言えば、まだテアの事を説明していなかったな。

「そいつは、あの村の生き残りで……本人の意志で聖域に行きたいって話です」

 俺が言うと、テアは「お、お願いします」と大きな声で言って頭を下げた。
 シャカはそんなテアに見てるのか見てないのか解らない、閉じた視線を向け続けると――

「この小僧を聖域にか? …………むぅ、まぁ好きにしたまえ」
「あれ? 反対しないんですか?」

 と、予想に反した答えが返ってくるのであった。
 俺はてっきりシャカは「駄目だ……」とでも言うのかと思っていたのだが、
 当のシャカからの返答は意外なことに了承の言葉だった。

「理由はどうあれ、自分で決めたのだろう? ならば私がそれを拒否することはない。
 自分のこれからの道だ、精一杯に生きるといい」
「あの、えっと……シャカ――」
「ありがとうございます! シャカ『様』!!」

 マトモな事を言っているシャカに顔を引き攣らせ、俺がちょっとしたツッコミを入れようかとしたのだが、
 それを遮る形でテアがシャカに感謝の言葉を言ってきた。

 ……しかも『様』付けで。

「シャカ様……俺、この御恩は絶対に――(チョン、チョン)」
「なぁなぁ、テアよ」
「なんだよクライオス。俺は今、シャカ様に挨拶してんだぞ」

 肩を軽く指で突つき名前を読んだ俺に対して、
 まるで噛み付かんばかりの勢いで睨んでくるテア。

 俺はそんなテアに小さな溜息を一つ吐いた。

「――その……なんだ。シャカ『様』って……ってなんでだ?
 お前なんで俺の事は呼び捨てなのに、どうしてシャカのことは『様』付けなんだよ?」

 俺自身、別に『シャカのことを軽んじている――』とかいったことは無いのだが、
 だがこんな差別的な態度はいただけないと思うのだ。

 一応ではあるけれど、あの村で戦ったのは俺なのですよ?

 だが、そんな俺のちょっとした疑問に対して、テアがとった行動は深い溜息だった。

「……クライオス、この全身から溢れる存在感の違いがわかんないの?」
「そ、存在感? ……まぁ、確かにシャカは存在感があるけど――」
「キラキラと輝くような、眩い光を放つその姿! それに、『確実にクライオスよりは強そう』だし」

 遠慮無く言ってくるテアの言葉に、俺は若干ではあるが口の端を『ひく』と釣り上げた。
 そりゃ、確かにシャカは俺よりも強いだろうさ。
 今の今まで攻撃を加えることが出来た試しが無いし、さっき同様ぶっ飛ばされるのがオチだろうからな。

 でもなテア。
 光ってるのは、シャカの着ている黄金聖衣だからな?

 だが何故かうっとりしたような表情で、目の前のシャカを見つめるテア。
 その様子に、俺は自身の眉間に皺を寄せ『なんかムカつく……』と、内心思うのであった。

 まぁいいさ。
 こんな小さいことで激怒するほど、俺は精神修養を怠けたりはしていない。
 というか、この程度の事で怒りを爆発させているようでは、『普段の生活』の中で首を吊ってしまうだろう。

「まぁ言いや。聖域では、黄金聖闘士の事を『様』付けで呼ぶ奴等も多いからな。……同期の連中とか」

 ブツブツと呟くように言う俺でした。
 しかし、何だってシリウスとかアルゲティとかカペラなんかは、黄金聖闘士達の事を様付けで呼ぶのかね?
 あれか? むしろ俺がそう呼ばないのが異常だったりするのだろうか?

 ……でも、作中で星矢達が様付けで読んでるのを見たことは無いしな……。
 良く解らん。

「クライオス、何を呆けている? そろそろ聖域に戻るぞ」
「了~解です」

 名前を呼ばれた俺は、地面に置いていた聖衣箱×2(シャカの分も含む)を担ぎ、手にはシャカの私物を持つ。
 来た時よりも荷物が増えてるんだよな……少しくらいはシャカが持てばいいのに。

 なんてことを思っていると、

「クライオス、その子供を聖域に運ぶのはお前の役目だぞ」
「は? ……運ぶ?」

 シャカの言葉にテアは( ゜Д゜ )ハァ?
 なんて顔で聞き返した。
 逆に俺は 工エエェェ(´д`)ェェエエ工って感じだ。

「シャカ……俺は今の段階でも、既にこれだけの荷物を持ってるんですよ?
 それくらいやってくれても良いでしょう?(黄金聖闘士なんだから)」
「え、ちょ……クライオ――」
「――馬鹿を言うなクライオス、それもコレも全てが修行。……お前は、そんな私の気持ちが解からんと言うのかね?」
「修行云々じゃなくて、今回のは物理的に無理だと言ってるんです」
「物理だなどと下らない。そういったモノを遥かに超越した存在こそが、我々聖闘士だと言っているだろう」
「俺は、常識まで超越する気はないので」

 無茶を言っているシャカに、俺は詰め寄るようにしながら拒否を示す。
 途中にテアが何かを言おうとしていたが、そんな事は後回しだ。

「大体、聖衣箱を二つ担いでるだけでも背中の荷物の高さが頭の上に成るんですよ?
 そのうえ両手まで塞がってるこの状況で、どうやって運べと言うんですか?」
「テレキネシスでも使えばよかろう? その修業もさせたはずだぞ」
「無理ですから。そんなの使えませんから」
「デスマスクやアイオリアでさえ使えるというのに……」

 あの二人は一応、貴方と同じ黄金ですよ?
 俺とは違ってね。

「ならば仕方がないな、私の聖衣箱を自分で運ぶとしよう。
 それならば何ら問題はあるまい?」
「まぁそれなら……。――テア、コッチ来い」

 俺は担いでいた聖衣箱のうち、シャカの分だけ下ろすと困惑顔のテアを手招きして呼び寄せた。
 しかし、何だって困惑顔なんだ?
 話の流れからすれば、俺がテアを運ぼうとしてると理解できそうなものだが。

「ね、ねぇクライオス。一体何を――ッ!?」
「よいっしょ」

 質問を口にしようとしたのか? だがそれを遮るように、俺はテアのことを抱え上げた……脇に。

「ちょ、ちょっと、クライオス!?」
「準備できましたよ、シャカ」
「うむ、では聖域に帰るとするかね」

 シャカの言葉に俺は頷くと、瞬間――

「にッ――にゃーーーーーーッ!!」

 テアの奇妙な声を聞きながら、全力で駈け出していくのだった。




 第14話 修行編の終り(?)




 聖域に戻った後、脇に抱えられた状態で目を回してノビていたテアを見た、俺とシャカは――

「きゅ~~……」
「しまった」「む?」

 と、それぞれ言葉を口にした。

 自分達が非一般人で、テアは一般人だということを失念していた事での悲劇だった。
 まぁ、聖闘士と言うものに慣れすぎたからな、今後はこういう事のないように気をつければ良いさ。

 さて、失神しているテアの事を処女宮に寝かせ(正確には置き去り)、俺はシャカに連れられる形で教皇の間へと行くことになった。
 シャカの話では、今回の任務に関する報告を行うとのこと。
 直接に問題を解決した俺に、その説明をする義務が有るとか。

 正直なところ、教皇の間には近づきたくないのだが……とは言え、それで理由を聞かれでもしたら、
 それはそれで面倒だしな……。
 まぁ、普通にしていれば滅多なことなど起きないだろうし、イザとなったらシャカが助けて……くれる訳が無いか。
 「ふむ……」とか言って見てるか、または率先して攻撃をしてきそうな感じだ。
 とは言え、そんな状況にはそうそう成りはしないのだろうが。……まぁ、腹を括るか。

 で――――……

「――成程、そういう事だったか」
「はい」

 場所は一気に跳んで教皇の間。
 現在この場所にいるのは俺、シャカ、教皇(サガ)の三人だけだ。
 シャカと一緒に教皇の間に入っていくと、教皇が何故か人払いをしたのだった。
 何だか、他の人間が居ないと妙に萎縮してしまう。

 とは言え、それで何か有るということは特に無く、俺のニューギニアでの顛末説明会は問題なく終了した。
 まぁ、幾分真実をぼかして話した上に、『例の男』の事は隠しての説明だったが。
 逆に今の段階でこんな事を話せば、教皇(サガ)の奴がプッツンするかも知れないからな。

「ふむ、分かった。……今回の働き、御苦労だったな。シャカ、そしてクライオスも暫くの間は休むといい」
「休む? いえ、流石にそんな訳には……。それに俺は、また聖闘士に成るための修行を続けなければいけませんし」
「クライオス?」

 今まで休みなく(と言うより、睡眠時間もほとんど無く)修行をしていた俺に対して、教皇は何故か『休め』等と言ってきた。
 休むと言うのは正直嬉しいのだが、とは言えそれは無理、不可能に近いだろう。
 今までの経験上、喩え俺が休みだとして周りがそうしてはくれないのだ。
 だったら、初めから修行だと思っていたほうが、精神的にも楽でいい。

 ……あれ? 俺が最後にまともに休んだのって何時なんだろうか?
 そんな事を思うと、どんどん欝な気持ちになっていく。

 俺が若干に微妙な表情を作っていると、何故か教皇もシャカも微妙そうな顔をしている。

「……クライオス、お前は何を言っているのだね?」
「は? 何をって?」

 内心は兎も角、マトモな事を言ったはずの俺に、シャカは不可思議そうな表情を向けてくる。
 俺はその意味が解らず首を傾げた。
 そんな俺に、一段高い場所にいる教皇が口を開く。

「クライオス、今やお前はアテナの聖闘士なのだよ」
「…………は? 聖闘士? 誰が?」
「お前がだ、クライオスよ。お前は偶然とは言え、その場に居合わせた白銀聖衣に認められ、そしてそれを身に纏った。
 神話の時代より受け継がれる神秘――聖衣が、その自らの意志で己の所有者を決めたのだ。
 聖衣に認められたお前が、聖闘士の資格を手にするのは当然ことだ」
「……聖闘士。しかも白銀」

 シャカや教皇の言葉に、俺は再度同じように呟くと、
 報告のためにこの場へと運んできた『風鳥座』の聖衣箱に眼を移した。
 教皇の間に据え置かれた光が反射して、聖衣箱はその長い年月を感じさせない程の輝きを放っている。
 だが――

「あの……教皇。俺はまだ、シャカや周りにいる聖闘士と同じレベルになったとは思えませんが?」

 そうなのだ。
 俺は確かに聖衣を身に付けたとは言え、とてもではないが近くに居る他の聖闘士と同じレベルになったとは思えない。
 そんなざまで、幾ら何でも聖闘士を名乗ってしまっていいのだろうか?

「――クライオス。お前が基準にしている聖闘士とは……まさかシャカ達の事ではないだろうな?」
「え? そうですよ。他に近くに聖闘士なんて居ませんから」

 さも当然なことを、何故に教皇は聞いてくるのだろうか?
 俺は不思議そうな表情を作りつつ、目の前の教皇へと視線を向ける。

「良いかねクライオス、聖闘士とは大まかに分けて『黄金』『白銀』『青銅』の三種が存在するのは知っているな?」
「それは勿論。上から12、24、48と、どれにも入らない4つが有るのでしょう?」
「そうだ。これは一概には言えないことだが、黄金聖闘士を頂点として次が白銀、そして青銅と強さのランクは下がっていく」
「……はぁ」
「詰まりだクライオス。お前は、黄金聖闘士と肩を並べるまで聖闘士ではないとでも思っていたのかね?」
「あっ!?」

 教皇の丁寧な説明と、補足するように言ったシャカの言葉で合点がいった。

 ――そうだよな、幾要ら何でもそれはあり得ないよな。
 聖闘士の最低ランクは音速越えで、その次がマッハ2以上。
 頭では解っていたつもりだったんだが、どうやら原作の星矢達の働きがインパクトありすぎたらしい。

 だが言われてみれば確かにそうだ。
 前に修行をしていた時も、俺は音速の壁は超えていたように思える。
 ……確か1年以上前に。

 あれ? と言うことは、俺は一年以上を苛められるために過ごしてたのか?

 あー……何だかこれまでの出来事を思い出すと涙が……。
 ヤバイ……欝になりそうだ。

「そういう訳でだ、正式な任は後日に言い渡すが……クライオス、胸を張るといい。
 お前は今日から……『アテナの聖闘士』なのだから」
「あ…………はいッ!」

 ガラにもなく大きな声で返事を返してしまった俺は、ほんの少しだが気恥ずかしい気分になってしまった。
 だが、それも仕方が無いだろう?
 聖闘士星矢をリアルで知ってる人達ならば、誰だってごっこ遊びをしたことが有る筈だ。
 そんな聖闘士に俺は成ることが出来たのだから。

 ……まぁ、その分いつ生命を散らすことに成るのか解らない――といった、危険な仕事がついて回ることにも成るのだが。
 だが、今くらいはそんな事を忘れて喜んでもいいだろう?

「――ところで教皇、じつは今回の事でお話があります」
「む? どうしたのだシャカよ」

 俺が一人で喜びを噛み締めていると、不意にシャカが教皇に声を掛けていた。
 その事で、俺は一瞬『あっ』と口を開いた。……まぁ声は出していないが。

「今回の任で、現地の子供を一人保護しました。
 唯一の生き残りのため身寄りが無く、また本人の意志により聖域に来たいとのことでしたので」
「ほう……子供の保護か」
「はい。連れてきたのはクライオスですので、奴の従者にしてはどうかと」
「……そうだな、下手に聖闘士候補生などにして生命を落としでもしては、何のために保護したのか解らぬからな」

 シャカの言葉にツッコミ1、教皇の言葉にもツッコミ1。
 俺は二人の黄金聖闘士に、大声で文句を言いたい気分に成った。

 先ずはシャカの方だが、
 これは俺の我侭に成るのだが、正直従者とか要らない。
 そんなのは黄金聖闘士にいれば良いだろう?
 中身は兎も角、見た目10歳程度の子供に……その上なりたての聖闘士の俺にそんなの付けるなんて絶対おかしい。
 それにだ、アイツ(テア)は絶対に聖闘士に成りたいとか言い出すに決まってる。
 ……まぁ、なれるかどうかは別問題だけど。

 次~教皇。
 『下手に聖闘士候補生などにして生命を落としでもしては~』って、どの口が言うのか?
 俺が今の状況になる切っ掛けを作ったのは、紛れもなく自分ではないか。
 よもや俺を村から連れ去った経緯(2話参照)を、ものの見事に忘れたのではあるまいな?

 俺がそんなこんなで渋い顔をしていると、何やらシャカと教皇が其々視線を向けていることに気が付いた。

「……なんですか?」
「クライオス、お前はどう思う? 数年間この聖域で過ごしたお前なら解っていると思うが、
 この聖域には子供を育てるような施設など存在しない。居るのは聖闘士を目指している候補生だけだ。
 だが、かと言って聖闘士候補生になれば、ほぼ間違いなく無事では済まないだろう」
「……ま、そうですね」

 教皇の言葉に、俺は気のない返事を返した。

 とは言え、教皇の言っていることは本当だ。
 基本的に俺と面識の有る連中は、それなりに優秀(というか、原作キャラの方々)な奴らが多いが、
 それ以外にも当然候補生というのは大勢いる。
 下手をしたら、聖域だけでも1000人を超える者達がいるかも知れない。
 ちゃんと数えたことがないから、正確なところは解らないがね。

 だが、その中でも聖闘士になれるのは極々わずか。
 数にしてたったの88人(既に聖闘士となっている者も多数居るため、本当はもっと少ない)なのだ。

 その88の聖闘士の座を手にしようと、皆がそれぞれ言葉にするのも酷いような修行を行っている。

 その中には強くなるための修行で生命を落とす者達も居れば、
 模擬戦、試合などで生命を落とす者も決して少なくはないのだ。

(こうして考えてみると、聖闘士っての随分とデンジャーな道のりだな)

 既に成ってしまったから人事みたいに考える俺だが、
 『こうしてる間にも人死が出てるのかも』と考えると若干表情が硬くなる。

「クライオス。話を聞けば、その子供はお前が連れてきたと言うではないか?
 ……どうする? 白銀聖闘士としては異例ではあるが、従者として――」
「いえ、お断りします」

 瞬間、教皇の間が水を打ったように静かに成ったのを感じた。
 横に居るシャカなどは、眉間に皺を寄せてこちらを伺っている。

 だがまぁ……仕方がないさ。
 ハッキリ言って、従者なんてのは今の俺には邪魔以外の何でもない。
 従者ってことは、どこ行くにもついて回るってことだろ? ハッキリ言って、今回みたいな仕事をやらされる任務で、
 自分以外の奴を気にしながら試合をするなんてのはカナリ厳しい。

 連れて行くなら、せめて聖闘士かそれに近い実力を持っているヤツのほうが良い。
 俺はそんなに――強くないのだから。

「ハッキリ言って、俺には無理です。聖闘士に成ったとは言っても、たかだか10歳の子供ですよ?
 人を一人養うなんてのは絶対に無理です」
「別に養うという訳では――」
「どうせなら、もっとまともな人の元に置いた方がいいと思いますよ? 例えばアルデバランとか」

 教皇に言葉を挟ませず、俺は一気に畳み掛ける。
 反撃の糸口を与えてしまうと教皇(サガ)の事だ、きっと『あぁ成程』と納得してしまうように、言いくるめられてしまうだろう。

 アルデバランの名前を出したのは、俺の周りに居る他の聖闘士の中で一番まともだと思ったからだ。
 まぁなんだ、俺の周りに居る聖闘士は黄金ばかりだし、それにそういった連中は……ほら、わかるだろ?

「む……アルデバランか?」
「そうですよ。俺自身何度か世話になりましたが、正直知り合いの中では一番『マトモ』ですし……」

 言いながら、俺はシャカから視線を逸らすようにあさっての方向を見る。
 だが教皇も俺の意見に半ば理解を示しているのか、「それを言われればそうなのだが……」と、
 まるでそれを認めているような意見を口にした。

「それに聖闘士候補生にするかしないかも、ようは本人に決めさせるのが一番ではないですか?
 モチベーションにも影響しますし……それにアイツ、直接戦ってた俺じゃなくて、
 その後に会ったシャカのことを尊敬の眼差しで見てましたよ」
「そうなのか?」

 チラリ……と、横目でシャカの事を盗み見るようにして言うと、
 教皇はシャカに問いかけた。

「さて……あの手の視線を向けられるのは『いつものコト』なので、正直判断に困りますが……。
 とは言え、クライオスが言うのならそうなのでしょう」

 このシャカの発言に、俺は少しだけ『お?』となった。
 聞き様によっては、シャカが俺の事を認めているようにも取れる発言だったからだ。
 今まで、どんな些細なことでも認められるような発言は無いに等しかった。
 そんなシャカが、今回初めてその類の言葉を口にしたのだから、反応もしようというもの。

 まぁ、それ以前に『あの手の視線を~』等と言っているため、顔が引き攣るほうが強いのだが。
 ――どんだけ信者が居るのだろうか?

 俺はわざとらしく、『ゴホン』と軽く咳き込んでみせた。

「……と、兎に角ですよ。何をどうするにしても、先ずは本人の意向も聞いたほうが良いでしょう?
 まぁ、最悪の場合は記憶を消して国に帰すという方法もあるし」
「それもまぁ、ひとつの手ではあるが――」
「――クライオス、君はそれでも良いのかね?」

 不意に、シャカは俺に問い掛けるように聞いてきた。
 だが俺は、それに対してそのままコクリと頷いて返す。

「俺がアイツに約束したのは、『これからどうするのか?』の選択肢を与えることと、
 その為に手を差し伸べてやることです。
 聖闘士にする為に連れてきた訳では有りませんし、元々本人の意向を聞くつもりでしたから。
 まぁ、それでも折り合いがつかない時は、先程言った方法もやむ無し……ですがね」

 酷いって? いや、それでも俺は嘘をついては居ないのだがね。
 俺は沈黙の続く教皇の間で、ニコッと微笑みを向けながら教皇からの言葉を待った。
 すると数秒ほどの間を置いて、教皇は咳払いを一つするとゆっくりとした口調で口を開く。

「よかろう。では今回の事は本人の言葉を優先することにする。
 その子供が従者を望むのであれば従者に、候補生を望むのであれば候補生にするとしよう」
「有難う御座います。教皇」

 教皇の言葉に頭を下げると、俺は取り敢えず自分の意見が通った事に内心『ニヤリ』と喜ぶのであった。





 おまけ 処女宮にて。

「そういう訳で……だ、テアとか言ったな小僧。お前は今日から数日間の猶予が与えられる。
 その間に聖域を見て周り、自身の今後を決めるがいい」
「はぁ?」

 処女宮へ戻るなり、シャカは気絶していたテアを叩き起すとそんな事を言っていた。
 意識の覚醒から間を置かず、急にそんな事を言われたテアからすれば理解不能な事だろう。
 まぁ、それついては後で俺の方から説明でもしてやれば良いか。

 さて、俺はさっさと飯の支度を――

「――待て、クライオス」
「はい?」

 飯の支度をしようと台所へと移動を開始したのだが、それを何故かシャカに止められてしまった。
 なんだろうか?
 まさか俺が聖闘士になったお祝いに、『今日は食事の支度はしなくて良い。私がやろう』とか言うのだろうか?

 ……いやいや、無いよなそれは。

 どうせ何か、面倒なことでも言うのだろう。
 あまり期待せずに聞いておいたほうが良いだろうな。

「今日からお前は、食事の支度をしなくても良い」
「へ?」
「食事の支度をしなくても良いと、そう言ったのだ」
「うそーーッ!?」

 恥ずかしげもなく、大声を出してしまった。
 だが、だがしかしだ。
 コレはある意味、聖闘士になったこと以上に驚くべきことだ。
 あのシャカが、あのシャカがよもやこんな事を行ってくる日が来ようとは!?

 原作ではあの魔鈴でさえ、星矢の事をたいして祝うようなことも無かったのに。
 よもやあのシャカがそんな行動に出ようとは……。

「そんな暇があるのなら、早々に荷物を纏めておきたまえ」
「――……え?」

 固まった。
 あぁ、固まったさ。

 予想外の言葉に俺の思考はフリーズしてしまった。

 まさかよりにもよって、『出て行け』と言われるとは思いもしなかったのだ。

「今のお前は私の弟子ではなく、一人の聖闘士だ。何時までも処女宮で寝泊りをするの可笑しかろう?」
「いや、確かにそうかも知れませんが……」
「何だね?」
「……いえ、別に」

 俺はこの日、聖闘士の称号と聖衣を手に入れ……そして寝床を失ったのだった。




 あとがき
 修行編の仮終了。



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