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No.14901の一覧
[0] 聖闘士星矢 『9年前から頑張って』 (オリ主・転生?モノ)[雑兵A](2012/10/01 14:30)
[1] 第1話 此処は聖域! 死ぬって言ってんだろ!![雑兵A](2010/03/22 10:12)
[2] 第2話 昔の話をざっと飛ばして……[雑兵A](2009/12/29 13:24)
[3] 第3話 同期の人?……係わると自分にも死亡フラグが来る[雑兵A](2009/12/29 13:34)
[4] 第4話 修行の一コマ、取りあえず重りから[雑兵A](2010/01/06 00:01)
[5] 第5話 聖闘士候補生のときって……適用される?[雑兵A](2010/01/08 17:25)
[6] 第6話 これ以上は無理……!![雑兵A](2010/01/14 23:20)
[7] 番外編 第1話 少し前の巨蟹宮では[雑兵A](2010/03/12 12:11)
[8] 第7話 必殺技?――――どうだろうね?[雑兵A](2010/01/21 12:44)
[9] 第8話 クライオスの進歩と他所の考え[雑兵A](2010/02/04 13:27)
[10] 第9話 生命の危険が急上昇。[雑兵A](2010/02/25 13:02)
[11] 番外編 第2話前編 黄金会議(?)[雑兵A](2010/03/12 12:17)
[12] 番外編 第2話後編 力を見せろ[雑兵A](2010/03/17 18:02)
[13] 第10話 その素顔の下には[雑兵A](2010/03/31 18:01)
[14] 第11話 シャカの試練(?) 上[雑兵A](2010/04/21 15:06)
[15] 第12話 シャカの試練(中)[雑兵A](2010/04/28 22:50)
[16] 第13話 シャカの試練(下)[雑兵A](2010/07/27 13:00)
[17] 第14話 修行編の終り(?)[雑兵A](2010/09/26 01:10)
[18] 第15話 そろそろ有名な人が登場です。[雑兵A](2011/01/15 08:55)
[19] 第16話 男の行方、クライオスの行方[雑兵A](2011/01/17 19:37)
[21] 第17話 期待を裏切るようで悪いですが……[雑兵A](2011/01/25 19:54)
[22] 第18話 大方の予想通り……大滝です。[雑兵A](2011/11/30 17:18)
[23] 第19話 燃え上がれ小宇宙! 立ちはだかる廬山の大滝……じゃなくて、老師。[雑兵A](2011/11/30 17:20)
[24] 第20話 ムウは常識人? [雑兵A](2012/03/22 19:21)
[25] 第21話 セブンセンシズは必要?[雑兵A](2012/05/29 10:40)
[26] 第22話 アスガルド編01話[雑兵A](2012/06/08 19:43)
[27] 第23話 アスガルド編02話[雑兵A](2012/06/19 19:43)
[28] 第24話 アスガルド編03話[雑兵A](2012/09/26 17:17)
[29] 第25話 アスガルド編04話 [雑兵A](2012/10/02 13:36)
[30] 第26話 アスガルド編05話[雑兵A](2012/10/15 19:17)
[31] 第27話 アスガルド編06話[雑兵A](2013/02/18 10:02)
[32] 第28話 アスガルド編07話[雑兵A](2013/11/30 08:53)
[33] 第29話 アスガルド編08話[雑兵A](2014/05/28 19:11)
[34] 第30話 アスガルド編09話[雑兵A](2014/05/28 19:11)
[35] 第31話 アスガルド編10話[雑兵A](2014/06/16 17:48)
[36] 第32話 アスガルド編11話[雑兵A](2014/06/16 17:49)
[37] 第33話 アスガルド編12話[雑兵A](2015/01/14 09:03)
[38] 第34話 アスガルド編13話[雑兵A](2015/01/14 09:01)
[39] 第35話 アスガルド編14話[雑兵A](2015/01/14 09:02)
[40] 第36話 アスガルド編15話[雑兵A](2015/01/14 09:02)
[41] 第37話 アスガルド編最終話[雑兵A](2015/01/14 09:04)
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[14901] 第13話 シャカの試練(下)
Name: 雑兵A◆fa2f7502 ID:619d3229 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/07/27 13:00






『詰まらん情などに流されるな』

 前にそう言ったのは誰だったか?
 シャカ? それともデスマスクか?
 カミュ辺りも似たような事は言いそうだよな? 『クールになれ』って。
 まぁカミュの場合はあの普段の壊れっぷりを見てると、『先ずはお前がクールになれ!』と言ってやりたいが……。

 とは言えだ、『詰まらん情などに流されるな』や『クールになれ』等の考えには賛同したい。
 それらを採用していれば、俺はこんな状態にはなっていない筈だ。
 こんな、全身が焼けるような状態になんか……。

 あーしかしだ、……なんでまぁ俺はこんな怪我をしているのやら。
 いや、『何にやられたのか?』って事じゃない。
 それよりも、もっと前の段階の話だ。
 詰まりは、『どうしてこんな怪我をする様な状況に自分が置かれているのか?』ってこと。

 第二の人生――――かは正確には解らないが、少なくとも初めてではない人生をただ平和に過ごしたいと思っていた。
 静かに幸せに生きて行きたいと思っていたんだが……。いつの間にこんな事になったのか。

 始まりは……多分、知らずにとは言え教皇――――要はサガに対して妙な事を言ってしまったのが原因だろうな。
 『弟~~』って奴だ。あの時正確に何と言ったのか自分でも良くは覚えていないが、確かに暗にカノンの事を聞いてしまったのだった。
 当時の俺は教皇の事を、『ジャパニメーション好きな変な人』だと思ってたからな。
 だが、それが失敗というか下手を打ったというか……。
 兎も角、それからあれよあれよと言う間に聖域に連れられて(身売りされて)、
 気がつけば俺は、黄金聖闘士・乙女座ヴァルゴのシャカの弟子に成っていたのだった。

 最初の内は『聖闘士に成れる』なんていう興味も手伝って修業を乗り切っていたが、
 それが何時からか修行という名の虐めに変わり、気がつけば死なないように努力をするように成っていた。

 シャカに五感を奪われるなど日常茶飯事、
 アイオリアにはぶっ飛ばされ、
 カミュには氷漬けにされ、
 シュラには聖剣でナマスにされそうになり、
 アフロディーテには薔薇を放たれ、
 ミロにはスカーレットニードルをくらい、
 デスマスクには黄泉比良坂へと送られ、
 アルデバランにはグレートホーンで吹き飛ばされる。

 来る日来る日もアホのような修業を続け、黄金聖闘士に囲まれてぶっ飛ばされ、つい先日などは黒サガにロックオンされもした。

 ……なんで生きてるんだろうか?

 …………まぁ、取り敢えずそれはおいておくとしよう。

 兎に角だ。
 俺はただ普通に生きようとしていた筈なのに、いつの間にかこんな事に首を突っ込んでいると言うのが問題なのだ。

 あぁしかしだ……何と言うかだ。

 こんな普通とは違うような状況に今現在の俺は居ると言うのに、

 この状況を自分で嫌だと思ってるはずなのに、

 そんな事を自分でどうにかして遣りたいと思ってしまっている。

 何時から俺はこんなにも良い人になってしまったのだろうか?

「――……ハハハ、全く……本当に馬鹿みたいだな」

 火傷で引きつる身体に力を込めて、俺はゆくりと体を起こしていく。

 大丈夫だ……それ程の怪我じゃない。

 自分にそう言い聞かせながら俺は目の前に居る相手に、

 一人の女性だった人物に視線を向ける。

「フフ……フフフ。良かった……本当に良かったわ。これならもうすぐに殺せそう」

 何とも物騒な事を言っているが……実際に俺の体のダメージはそれなりに深刻だったりする。
 今までにも死にそうな怪我をした事くらいは掃いて捨てるほどの回数を経験しているが、
 それらの時は必ず、何らかの治療によって事なきを得ているのだ。

 だからほら、俺の身体もミスティの如く傷一つ無いような真っ更なボディなんだよ。

 まぁ、今は少し火傷が目立つがね。

「ク、クライオス……?」

 全身を焼かれて倒れ込んだ俺を見て、テアは驚いたような、呆然としたような、気の抜けたような声を挙げる。
 そしてその視線を自身の姉へと向けて

「姉さん……!? どうして!!」

 と、大きな声で叫んだ。
 それに大して相手は少しばかりの間を置くと、慈愛、哀しみ、怒りと、コロコロと表情を変化させて行く。
 そして

「ありがとう、テア。……貴方のお陰で邪魔な奴を殺すことが出来るの。お姉ちゃん、助かっちゃった」

 笑みを浮かべて云う相手の異様さが、ようやっとテアにも感じられたのだろう。
 その仕草や言葉に、テアはビクっと身体を震わせた。

「……どう云う積りなんだよ?」

 俺は相手への視線を弱めずに、ただそれだけを口にした。
 最初は俺が何を言ってるのか理解出来ていないようだったが、直ぐに合点がいったのか「そういう事」と呟くとニヤリと笑ってきた。

「どう云うつもりも何も……私に取って邪魔な存在でしか無い『貴方を』攻撃しただけじゃない? それが――――」
「何でテアを巻き込むようなことしたんだ? 弟だろ?」

 咎めるようにしていった俺の台詞だったが、俺の容姿や現在の状況(片膝付いて蹲っている)では大した効果は無かったようだ。
 相手はニコッと微笑んで返してくる。

「弟よ。でもね、だったら私の事を助けてくれても良いじゃない!!
 テアが傷つくのは嫌よ。でもね、死んだら死んだで大丈夫よ。
 だって、それならそれで、他の奴等みたいにタウゴウにすれば良いんだもの――――構わないわ」

 その言葉に一瞬一気に力を込めて立ち上がろうとするが

「――――動くな!!」

 ゴッ!!

 と、爪先からの蹴り上げを顎に受け、俺は身体を跳ね上げた。
 そして続け様に腕の振り下ろしを叩き込まれ、再び地面に陥没する。

「クライオスッ!?」
「テア、動かないで!!」

 俺の元へと駆け出そうとしたテアを一睨みすると、何らかの作用が有ったのかテアの動きが止まり身体を硬直させる。

「思いのほか……傷が大きいみたいね。さっきまでよりもずっと手応えを感じるわ」

 耳に届く相手の声を聞きながら、『成程な』と自分で自分の事を理解した。
 確かに身体の調子は芳しく無いようだ。
 絶好調には程遠い状態だろう。

 だが――――

「どう? もし貴方が改心して私の為に動くというのなら、特別に綺麗なタウゴウにしてあげるわよ?」
 昼間に来ていたもう一人の男……あれもきっと貴方みたいな奴なんでしょ?
 アイツの始末もしなくちゃいけ無いから、それを手伝ってくれるのなら――――」
「――無理だ」

 相手の言葉を遮るような形で、俺は口を挟んだ。
 一瞬、俺が口を挟んだことに苛立を覚えたのか眉をしかめるが、俺はそれを気にすることも無く言葉を続ける。

「俺如きを倒そうとするのに、こんな体たらくな状態じゃ……喩え俺が全力で手伝ったとしても、即座に揃ってあの世行きだよ……」

 相手はあのシャカだぞ?
 もし俺が何かしらのことを考えていたとしても、それらを全部引っ括めて木っ端微塵に粉砕するに決まってる。
 あの人は自分の考えにブレが無いからな。
 よく言えば一直線、悪く言えば融通の聞かない馬鹿――みたいに真面目な人だな……うん。

 まぁ、そんな人にこんな事で喧嘩を売る積りなんて全く無い。
 それに 

「それに……俺はまだ負けてないからな!!」

 口にして小宇宙を高め、再び身体を起こして立ち上がる。
 全力に、俺に出来うる限界にまで小宇宙を高めて解放する。

「――……無理だって言うのなら。そうだって言うなら! 先に死んじゃいなさい!!」

 小宇宙を高めて立ち上がった俺に向かって、相手は手を挙げて振り下ろしてくる。
 そこから放たれる炎の塊。
 成程、さっきのはこうして出した訳か。
 感じとしては、バベルの使う予定の『フォーティアルフィフトゥラ』に近いのかもな。

 俺は迫り来る炎を迎え撃つべく構えをとったが、

 其の瞬間、

 俺と炎の間に滑り込むようにして『人ではない何か』が入り込んできたのだった。

 炎は其の『何か』に直撃し、少しばかりの爆発と火柱を上げる中で俺はその『何か』を目の当たりにした。

「なッ何で……?」
「そんなッ!? なんで此処に……『ヌグ』がッ?」

 『何か』の突然の乱入に、テア達は驚きの声を挙げる。

 そこには炎に焼かれ、また自身も炎を纏っている鳥型が居たのだ。
 ――いや、果たしてそれを鳥と呼んで良いのだろうか?
 俺にはそれが何であるのか、感覚として理解することが出来たのだ。

 とは言え……よく見れば誰だって、コレが『ヌグ』とかいうモンスターとは違うことくらい解りそうだけどな。

 俺は現れたそれに視線を向けて、口の片側を釣り上げた。

「……ハハ、これがヌグだって? 冗談やめてくれよな。コレの……コレの何処が生き物だよ。
 コレは……コレは――聖衣だッ!!」

 鳥の形を模した、白銀に輝くオブジェ。
 しかし、それ自身が蒼い小宇宙を炎のように纏わせながらそこに存在している。
 大きく広げた翼と、長く美しい羽を持ち合わせた姿。

 まるで生きているように……いや、事実自らの意思が有るかのように『動く』その姿は、
 紛れも無く

「……風鳥座・エイパスの白銀聖衣!!」




 第13話 シャカの試練(下)




 俺の目の前に突如として現れ、そして敵の攻撃を防いだ白銀の『ソレ』は間違いなく。
 神話の時代より受け継がれながらも、今尚その輝きを失わない……世界で最も尊い芸術品にして至高の遺物。

 『聖衣』

 眼前に在るソレは、本来ならば有り得ない事だが、風鳥座の聖衣はその羽根を羽ばたかせ、
 俺にとっての敵である相手を威嚇するような行動をとっていた。

「……ヌグ」

 ふと、テアがそう呟いた声が俺の耳に届く。
 だがコレはヌグでは無い。
 それは間違いなくそう言える。だがこれがテア達の見たヌグだと言うのなら、俺には合点がいくのだ。

 以前、シャカに聞いたことが有る。

 聖闘士の証である聖衣は、その数全部で88。
 黄金聖衣12、白銀聖衣24、青銅聖衣48、そしてそのどの枠に捕らわれない4つの聖衣。
 これらを合わせて88の数と成る。

 黄金聖衣はその強靭さと不変性を持ち合わせ、白銀や青銅はそれに劣りはするものの黄金聖衣には備わっていないような、
 何らかの能力を持つ場合が有ると。

 例えば龍座の聖衣ならば皆が知ってる『最強の盾』。
 アンドロメダ座の聖衣は『最高の防衛本能をもつ鎖』
 白鳥座の聖衣は『永久氷壁のような強靭な硬度』
 不死鳥座の聖衣は他の聖衣を遥かに超える『自己修復能力』

 他にも数え上げればキリがないが、青銅や白銀の聖衣にはそういった何らかの能力が付いている場合が多いのだ。
 ……まぁ天馬座の聖衣とか、一角獣の聖衣とかにどんな能力が有るのかは知らないが。

 そして、このエイパスの白銀聖衣が持ち合わせている能力は――

「自動迎撃能力……!」

 俺がそう口にするや否や、オブジェ形態の聖衣は相手に向かって飛び込んで行った。
 ゲスゲスはそれを押しとどめようと両手を前に突き出すと、正面でぶつかり合う。
 そして其の侭、双方は相手との押し合いに発展した。

 攻撃的小宇宙に反応し、ソレを討ち滅ぼすために動き出してしまう……ある意味での『意志』を持つ聖衣。
 神話の時代、嘗て軍神アーレスとの聖戦に於いて、もっとも多くの狂闘士(ベルセルク)を打ち倒したと言う曰くつき。
 戦いの神であるアテナだが、その『装着者を省みない迎撃能力』に心を痛め、それ以降は禁忌とされていたモノだ。

 それが、今こうして目の前に……

「……そうか」

 俺はその聖衣を理解し、幾つかの疑問が解けて行くのを感じた。

 それはこうだ。

 この地に眠っていたエイパスの聖衣だが、それが何らかの理由――何者かの攻撃的小宇宙により目覚めてしまった。
 恐らく、テアやペテナが見たと言うヌグとはこのエイパスの聖衣の事なのだろう。
 そしてペテナは今と同じ様に、エイパスの聖衣とテアの姉……要は、ゲスゲスが争ってる場面に直面したのだ。

 だからその時の事も、ゲスゲスがヌグから守ったのではなく。
 本当は目撃者を始末しようとしたゲスゲスを追って、聖衣が飛んできたのだろう。
 だがそれも適わずペテナは死ぬことになったが……。

 ならあの洞窟の中に『ある』のは、先ず間違いなく聖衣の――

「――――『あの時から』ずっと……ッ! 何なのよコレは!?」

 ゲスゲスが大声を挙げて腕を振り回している。
 俺はその声に反応して視線をそちらへと向けた。

 エイパスの聖衣がこの場所に現れた理由……それは自動迎撃能力に関係するのは確実だろう。
 だが、それとは別にもう一つ。
 それがあるからこそ此処へ来たんだと……俺は確信して言える。

 正直、もしかしたらこう成る事を、シャカは見越していたのではないか?
 と、一種の脅迫観念に似た感想を持ってしまうが……。

 とは言え――――

「来いッ! 『エイパス』!!」

 周囲には俺の声が大きく響く。
 テアも、ゲスゲスも、そして聖衣さえも。
 どれもが俺の声に反応してその視線を向けてきた。

「エイパスの白銀聖衣! ここに来た役目を果たせ!! ――俺は、此処だ!!」

 俺が小宇宙を燃やし、爆発させて言うと、
 エイパスの聖衣は瞬間、オブジェの形をしていた聖衣が分解させた。
 そして飛来する各部のパーツが俺の身体へと装着されて行く。

 腕、脚、胸、腰、頭。

 順次装着される其の聖衣は、神話の時代から続くモノであるにも関わらず。
 初めから俺の為に造られたかのような、そんな装着感を与えてくれる。

 全身を包むその鎧は、動きの制限になるような事は全くなく、
 だというのに全身を強固に覆い隠しているようだ。

 夜の闇の中でも、なお白く輝く白銀の聖衣。

「これが……」

 俺は自身の身体を包むソレを見ながら、感嘆の言葉を漏らしていた。
 そしてこの時、初めて聖衣というモノを知ったような気がする。

 絶対の安心感と高揚感、
 そして確実の勝利を信じられる充足感。

 それら全てが、この聖衣を身に付けた瞬間から俺の身体を満たしているのだ。

「これが……聖衣!」

 全身に感じていた、火傷、裂傷、擦過傷、打撲等の痛みは消え失せ、
 今では身体を動かすことに何ら支障を感じない。

 否、違う。

 恐らく、今なら普段以上に……絶好調の状態を遥かに超えた動きさえも可能に成っているだろう。

 現に――――

「ソレを『返しなさい』ッ!!」

 『奇妙な事』を言いながら駆け込んでくるゲスゲスを見つめながら、俺は溜息を一つ。
 そして瞬間、相手から回りこむように時計回りに動いた。

 身体が軽い、脚が駆ける、まるで普段の俺は足枷や手枷を嵌めているのでは? と、そう思ってしまうような身軽さだ。

 大きく回り込む俺の動きに合わせてその視線と身体を動かしてくるゲスゲスだが、
 ただそれだけの動きさえも今の俺には遅すぎる。

 相手が視線を向けた先には既に俺は居らず、
 その真後ろ――――詰まりは、ゲスゲスの背後を取るような位置に俺は立っていた。

「――――……速…い」

 驚くような声を出すゲスゲスだが、ソレは当事者で有る俺にも言えたこと。

 自分でも驚くほどに身体が動く。

 俺達のような小宇宙を駆使して戦う者達にとって、其の強さは聖衣の種類では決まらないらしい。
 だが、少なくとも聖衣の有る無しでは決まると思う。

 十二宮編で、デスマスクが紫龍に対して『小宇宙だけでの勝負なら、黄金聖闘士の俺の方が上だ!!』といった事を言っていた。
 ソレは詰まり、聖衣と言うのは単純な防具として以外の何かが有るのではないだろうか?

 現にこうして、今現在の俺はソレを実感出来ているのだから。

「正直、アンタの動きはさっき迄と変わらない――同じ程度には動いているよ。
 ……でも、今の俺にはそれがどうしようもなくスローに感じる」

 偽りの無い正直な感想。
 今なら、何にでも勝てそうな気さえする。

「巫山戯るなッ!!」

 俺の言葉が感に触ったのか?
 ゲスゲスは腕を振り上げ、再度、炎を放ってきた。

 だが、今度は避けるまでもない。

「!?」

 俺は襲いかかってきた炎に手をかざすと、そのまま差し込むようにして腕を突き、
 そして炎を左右に割り開いた。

 裂かれた炎の塊が飛び散って周囲を焼くが、それをした俺には火傷一つ、熱一つ伝わってはいない。

 ここまで変わるものなのか? 聖衣の有る無しと言うのは?

 俺は自分で遣ったことだと言うのに、半ば感動に近い感覚を感じていた。

「――ちょっとだけ、原作のやられキャラ達の気持ちが解った気がするな」

 主に、自分の力を過大評価し、星矢達に負けていった連中の事だ(デスマスクも含む)。
 これだけの力を手にすれば、そして相手が自分よりも格下だとなれば、どうしても舐めてかかってしまうだろう。

 俺は……俺もそうだろうか?

 いや、そう思えるうちは大丈夫だ。

 目の前の敵に、今度は気を抜いたりはしない。

「それじゃあ今度こそ、これで終りだ――ディバイン・ストライクッ!!」

 相手を強く睨みつけ、
 身体を捻るようにして振るった俺の腕からは、前回を優に超える数の閃光が放たれた。
 腕から放たれた光の帯は、ゲスゲス……俺との間に在ったモノも含めて一切合切を吹き飛ばしていった。

 ディバイン・ストライクに撃ちぬかれ、空高く舞い上がり、そしてそのまま落下してくるゲスゲス。
 落下の衝撃で大地が割れ、罅が入る。

 今まで以上の威力と速度を持った攻撃だ、攻撃を加えた俺自身が震えてしまう。

 だが

「ク、あぁ……ガ」
「まだ……生きてるんだ」

 相手は、まだ生きていた。
 身体を撃ちぬかれ、傷を作り、力の入らない腕でその身を起こそうとしている。

「たったの、一撃で……こんな、さっきとは……全然」
「俺も、驚いてるよッ!」

 再び周囲に響く轟音。
 言いながら放った拳が、再びゲスゲスを空高く跳ね上げた。

 元々が負けるような相手ではなかった。
 それに加え、今の俺は聖衣を身に纏っている。
 詰まりは、確実に勝てる戦いだ。

 だが……気分は悪い。

 のたうつ力も既になく、ゆっくりと這って逃げようとしている相手を見ていると、
 俺はどうしようもなく『嫌な気分』になってしまう。

 デスマスクの奴は大したものだよ。

 だが何でだ?
 何で、こんなになってまで生きようとするんだろうか?

 辛くはないのか?
 こうして生き足掻いてる方がツラそうじゃないか?

「――なんで、そんな風に頑張るんだ?」

 気付いた時、俺はゲスゲスにそう質問をしていた。
 突然の俺のその問に、聞かれたゲスゲスは目を丸くして驚いている。
 まぁ、聞いた俺も驚いているのだが。

 ゲスゲスは崩れ落ちそうになる身体を、その両手で支え起こすと

「……わ、私は、人間に戻るんだ」

 と、そう言った。

 だが、そんな事は無理だろう。
 こんな事をしていて、それで人に戻るなんて聞いたことがない。
 そんな奇跡は、それこそアテナやポセイドン等のオリンポスの神々でもなければ不可能な筈だ。

「人間に戻る……か。それはさっきも聞いた。
 だが、死んだ人間は生き返らない。神話の時代にも、化物になった人間は死ぬまで化物だ」

 俺はゲスゲスの言葉に疑問を持った。

 何故、目の前のコイツはそんな有り得ないことを信じているのだろうか?

 と。

 今の状態なら間違いなく、なんの問題も無く相手を倒す事が出来るだろう。
 だが、俺はそれだけではいけない様な気がする。

 聖闘士の闘いを否定するつもりは更々無いが、だからと言って目の前の相手の言った台詞を、
 一切合切無視をして良い事には成らないだろう?

「……何で、アンタはそんな事を信じてるんだ? 誰がそんな事を?」

 一息の間を置いて尋ねた俺に、ゲスゲスは「フフ……」と泣きそうな顔で小さく笑ってきた。

「私は……私だってね、好きでこんな化物に成ったんじゃない……。
 普通に生活して、普通に好きな人を作って、普通に結婚して、
 普通に子供を産んで、普通に年をとって、普通に死んでいくって……。
 …………そう、思ってた!」

 強く言い放つゲスゲスはその感情をぶつけるかの様に、俺へと睨みを利かせてくる。

「だけど、そうは成らなかった……。――私は殺されたのよ」
「ニンフの――この山の精霊から大体の事は聞いたよ。大方、誰かに犯されて殺されたって所だろ?」
「……子供のくせに、随分と嫌な言い方をするのね。でも……そうよ、知ってるんじゃないかしら? ペテナのことを」

 確か、最初にゲスゲスを見つけたってことになってる奴だったか?
 とは言え、元々入ってくる情報自体が色々と曖昧だったから、どこまで本当なのか解りかねけどな。

 ゲスゲスは周囲をグルッと見渡すようすると、その視線をテアに合わせて表情をより曇らせた。

「あの時もそう……丁度この辺りだった。話しが有るって言って私を呼び出してきて……そして―――
 私は、ただ普通に生きたかっただけなのに、そんな簡単な願いも私には叶えられなかったのよ。
 気が付いたら、こんな人とは違う化物に成っていたわ」

 怒りをぶつけるでも無く、ただ淡々と、『そんな事が有りましたよ』とでも言うように、
 ゲスゲスは説明をした。
 とは言え、強い感情をそのままぶつけられても、俺にはどうしようもないのだが。

「死んでから数日は、特に何もする気になれなくてこの場所でぼーっとしていたわ。
 でもそんな時、一人の男がこの場所にやって来たの」
「一人の男?」

 俺は聞き返すようにして同じ言葉口にした。
 少なくともコレは、今まで出てこなかった新しい情報だからだ。

「あの人は言ってたわ
 『無念の内に死を迎えた女よ。悔しいか? 憎いか?
 もしお前が再び輝かしい生を手にしたいと思うのなら……一つ俺と取引をするが良い。
 ――――今お前が居る場所に、特にあの洞窟に一人も人を近づけるな。そうすればしかる時、
 必ずや神がお前の願いを聞き入れてくださるだろう』って」

 俺はその言葉に表情を歪めた。
 マトモに考えれば『なんてアホらしい事を……』と、一蹴してもいい内容だ。
 だが、この世界ではそうも言えない所がある。

 聖闘士と言うものが存在し、神と呼ばれるものが存在する世界では。

 だが、だからこそだ、その男が言った言葉が気になる。

 一つは『神』と言ったこと。
 これは普通だったら頭のおかしい奴とも考えられるが、だが男はその他に『洞窟』と言っている。
 洞窟のことは気になる二つ目にも成ることなのだが、だが少なくとも男は、『洞窟に何が有るのか解っていた』事になる。
 その上で『神』と言う言葉を使ったのだとしたら?

 これはかなり怪しい人物だろう。

「馬鹿みたいな話し――と、思うかも知れないわね……でも、私にはそれが本物に聞こえたわ。
 私にはその男の力が解った、そしてその男が言うことならばそうなのだろうと思える何かを感じていた。
 要はそれからよ……私が此処で、村の人間達を殺し始めたのは……」
「婚約者が居たって……テアが言っていた。何で殺した?」
「話があるって私を呼び出したのはね……その婚約者よ!!
 私が居なくなった村で騒ぎが何も起きなかったのはね、其の婚約者が皆を言いくるめてたってだけ!!
 こんなのが……こんなのが許せる訳ないでしょう!?」
「詰まりは『恨みはらさでおくべきか』って事か」

 俺は小さく口にしながら、涙を流し、怒りを込めた形相で睨みつけてくるゲスゲスに、小さくそう言った。

 もっとも、俺はそんな事よりも先程の会話に出てきた『男』の事が気になっていた。

 洞窟の中……今更隠し立てしても仕方がないが、恐らくは俺が身につけているエイパスの聖衣が在ったのだろう。
 詰まり、男は『聖衣』の事が解る人物。
 そして、神の名を使って事をなし、相応の実力を持ち合わせてもいる悪党。

 俺は、其の人物に心当たりがあるのだ。
 そして、その内容を聞けば恐らく教皇にも……。

 とは言え、その人物が誰だか解ったとしても、それで何かが変わる訳ではないのだが……。
 それに――

「――俺の役目は、この辺りで起きている事件を終息させることだ」

 言って、俺はゆっくりと相手に向かって歩いて行った。
 一歩一歩と俺が近づくごとに、ゲスゲスは何とか離れようと力を込めるが、腕にも上手く力が入らないのか?
 それらは空回りをして地面を掻く程度の役にしか立ってはいない。

 十分な距離に到達すると、俺は身体を捻って小宇宙を燃やす。
 今度はしくじらないように、全力で。

 だが、そうすると何故だろうか?
 今まで逃げようとしていたゲスゲスが、不意にその動きを止めて俺のことを凝視している。
 視線の先は俺の顔? 一体どういう訳だろうか?

「……て…いる」
「何だって?」
「貴方、泣いているの?」

 言われたことで、凝視されている理由が解った。
 成程、確かに変に思われても仕方がない。

 俺は泣いていたのだ。

 悲しいのか、怒っているのか、哀れんでいるのかは解らないが。
 それでも俺は泣いているようだ。

「――……に、人間は、絶えず涙腺から涙を流してるんだ。
 これは、その量がほんのちょっとだけ増えただけだ」
「…………」
「………………ねぇ、クライオス。その言い訳はちょっと無理があるよ」

 と、今まで空気になっていたテアからのツッコミを受けたが、俺はそれに睨みを利かせて黙らせた(泣きながら)。
 気を取り直して、俺は視線ゲスゲスへと戻す。

「泣いてるから何だって言うんだ? だからって俺のやることは変わらないんだよ」

 俺はそのまま、本気で睨み付けたまま、
 涙を流したままにゲスゲスを睨み付けた。

「……アンタの苦しさ、共感は出来ないけど理解はした。
 辛かったってのも、そして幸せに成りたかったってのも解った。
 でも――だからって、それで殺された方も堪ったもんじゃないんだ」
「………そうでしょうね」

 スッと、
 今までの必死だった顔つきが変化をした。
 表情から強張りが消え、穏やかなものに変わっていった。
 身体の方からも力が抜け、逃げよう――といった雰囲気も無くなっている。

「本当は、シャカみたいに出来れば良かったんだけどな。今の俺には、そう言うのは出来そうにない。
 ――……くそ、生の感情に触れたせいだ。
 どんな内容なのかは、理解していたってのに」

 不幸話の一つを聞いただけで、こんな風に泣き出すなんて。
 自分のことながら、情けないにも程がある。

「なんだかなぁ……泣いちゃうなんて。
 嫌な子供って思ってたのに、他人の事で泣いちゃうんだ?」

 俺が自分のことで自己嫌悪に成っていると、ゲスゲスはそんな俺に礼の言葉を言ってきた。
 そして大きく溜息を吐くと、俺やテアへと視線を向ける。

 その瞳には――

「本当は、解ってたのにね。
 こんな事しても、誰も『幸せには成れない』って。
 でも…………幸せに、成りたかったんだぁ」

 その瞳には、涙が浮かんでいた。
 どう言う心境の変化か、ゲスゲスは涙を流して泣いているのだった。

「――テア、ごめんね。
 私は、良いお姉ちゃんじゃなかったね」
「姉……さん?」
「死んだ後に。こうして泣いてくれる家族と、そして見知らぬ他人が居るんだから……。
 私は幸せな方かも、だよね?」
「そうかもな」

 ニコッと、涙を流しながら笑う『相手』に、俺はそう言って返すことしか出来なかった。
 だが、少なくとも一つだけは伝えておこうと思う。

「テアの事は心配要らない。
 俺が責任をもって『聖域』に連れて行き、悪いようにはさせない」

 本当ならば、テアは現地の政府に預けて終わりにすべき事柄だ。
 それに、喩え『聖域』に連れて行ったとしても、それでテアが幸せに成れる保証は何処にも無い。
 精々が何処か……養子に貰ってくれる家族を見つけるのが関の山だろう。

 だが――

「ありがとう」

 そう言って笑う顔を見た俺は、そうしてやった方が良いと思うのだった。
 そして

「――バイバイね、テア……」

 そうやって名前を読んだ瞬間、
 俺の放った『ディバイン・ストライク』の光がその身体を貫いていった。




 ※




 ゲスゲスに止めを差してから半日……要は朝になった。
 騒動が一段落した後、俺は洞窟の中に入ってある物――聖衣箱を発見した。
 どうやら思ったとおり、この場所には聖衣が封印されていたらしい。

 そう、封印だ。

 その証拠に、洞窟内には破られた『アテナの封印』がうち捨てられていたのだ。
 コレは恐らく、聖衣箱を……PANDORA BOXを開けることの無いようにとの事だったのだろう。

 それを何者かが――まぁ、目星は付いているが、『例の男』が破ったのだろう。

 で、たまたまその頃にゲスゲスになってしまったテアの姉に甘言を吹きこんで、
 こうしてここで寝ずの番をさせていた。

 彼女は男の言葉を信じて……いや、信じる事しか出来ずに、
 ここで洞窟に近づく者達を殺し、誤魔化すために街のような物を見せていたのだ。

 誰が悪かったのか?

 まぁ、確実に悪いのはペテナとか言う村人と、そして彼女の婚約者だろうが。
 彼女は被害者で加害者。
 『例の男』はただ言葉を吹き込んだだけで、絶対に悪いとも言えない。
 もっとも、こうなる事を見越していなかった……とは言えないが。

 俺は洞窟に置かれていたPANDORA BOXに、自身の装着していた聖衣をしまうとそれを担いでテアの元に向かった。
 ゲスゲスが死んだ後(既に死体であるのに死んだ後というのは変だが)、テアはその場大泣きをし、
 俺が声を掛けるのも聞かずに泣き続けていた。
 そして今は――

「どうする? テア」

 地面に座り込み、膝に顔を埋めているテアに、俺はそう問いかけた。
 テアは流石に泣き止んだものの、未だショックは抜けきっていないようだ。
 俺の言葉に反応する素振りも見せない。

「――……俺はこれから街に戻って、取り敢えずシャカの事を一発殴ってやろうと思う。
 ほら、俺と一緒に来てたもう一人の奴。……殴れるかどうかは兎も角な。
 その後はまた聖域だな、お前は――」

 俺はそこで言葉を区切ると、相変わらず俯いたままのテアに顔を向けて息を吐いた。
 聞いているのか居ないのか、テアはピクリとも動こうとはしない。

「お前のことは、あの『姉さん』に任せろって言ったからな……。だから」
「ッ!?」

 グイッとテアの首根っこを掴み、俺は無理矢理に立ち上がらせた。
 泣きはらした顔は腫れぼったく浮腫んでいて、目元は赤く成っている。

 俺はテアの顔を正面か見るように向けさせると、

「選べ。自分でこれからどうしたいのか、どうやって行きたいのかを」
「……え、選ぶ?」
「そうだ。このままこの国に残って施設に行くか、それとも全く違う道を自分で選んで行くか……。
 最後に言った言葉だからな、可能な限り……俺はその手伝いをしてやるよ。
 まぁ、自分で選べって……成り行きで今の状態に成った、俺に言えたことじゃないんだけどな」

 俺は当時の――聖域に連れていかれた時の事を思い出して、口元を少しだけ釣り上げた。

「それでも選べる事の中から、そういった選択をするのは自分だ。
 テア……お前は、これからどうしたいんだ?」

 ジッと見て言う俺に、テアは言葉を詰まらせた。
 そして何度か視線をさ迷わせるて、震えるように口を開く。

「ねぇ、クライオス。姉さんは……どうして俺を……」

 そこまで言ったところで、テアは言葉尻をすぼめてしまった。

「さぁな……俺は本人じゃないから解らないけど。
 目的のために動いたのも、闘いの最中にお前を巻き込むような攻撃をしたのも。
 そして――お前だけ生かしておいたのも、全部が全部人間らしい行動だったんじゃないか?」

 人間って言うのは、大抵が深く物事を考えないものだ……と、俺は思っている。
 まぁ、これは言葉通りの意味じゃなくて――『良いと思えるものが有ると、どうしてもそれに流されやすい』って意味だ。
 正常な判断の出来るような状態じゃなかったし、
 最後にあそこ迄ボロボロにやられて、それで考える余裕も出てきたって事じゃないか?

「俺はな……最後に迷惑を掛けても良いのは家族だって思ってる。
 ――まぁ、お前の場合は洒落に成らないような掛け方だった訳だけど。
 とは言えだ……家族だったからって事じゃないのか?」
「家族……か。何だか、すごく辛いね」
「楽しいだけの事なんて、そうは無いんだよ。
 ……俺なんか親に売り飛ばされて、そのうえ毎日殺されかけてるんだぞ」

 一瞬、キョトンとした顔をするテア。
 だが数瞬後に「……それってツマラナイ冗談?」等と言ってきた。
 俺は恐らく、かなり渋い顔をしていたことだろう。

「冗談じゃなくて本当の事だ……。
 毎日、毎日、地獄と言う表現が生ぬるい様な特訓をさせられ、生きてるのが不思議なくらいにぶっ飛ばされる。
 知ってるか? あの世ってのは、変な坂を登るところから始まるんだぜ」

 積尸気冥界波で飛ばされた時とか、リアルに向こうに逝った時の事を思い出しながら、
 俺は本気で身体を震わせた。

「普通の人間には、光速なんて無理なんだよ!!」
「…………何言ってんのさクライオス?」

 普段の修行風景を思い出して一人ガクブルしている俺に、テアは優しくない一言を掛けてきた。
 だがその御陰(?)で平静を取り戻すことが出来たようだ。
 こんな事で、俺は成長していったときに大丈夫なのだろうか?

「――まぁ何だ、俺のことはどうでも良い。
 で、だ……決められそうか?」

 真面目な表情を作ってそう聞いた俺に、テアは

 『コクリ』

 と、ゆっくり頷いてみせた。

「そっか……じゃあ、行くか?」
「うん」

 テアに向かって笑顔を向けてそう言うと、テアも笑って返事を返してくる。
 さて、これからが大変だな。
 やることが一杯ありそうで……なんとも。 
 しかし、だ。
 兎にも角にも先ず最初は――

「シャカの事を絶対に殴る」

 これだろうな。

 呟くように言った俺の言葉に、テアは不思議そうに首を傾げるのだった。










 あとがき

 なんかもー……いっぱい時間を掛けたな。
 最初の半分位を書いてから続きを書くまでの間が、約3ヶ月って……。
 時間かけ過ぎだわ。
 しかしまぁ何と言うか、やっとこさ聖衣が出てきてこれからって所かな?
 原作の聖闘士星矢なんか、最初の方で聖衣が出てるのにね。

 まぁ兎も角、コレで暫くはこんなシリアスっぽい話じゃなくて、
 普通のまったりした(?)話を書いていけそうですよん。

 今度が何時の投稿に成るのかは、解らないですがね。







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