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No.1482の一覧
[0] 君ヲ思フ言ノ葉[パンダクッキー](2007/06/23 09:08)
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[1482] 君ヲ思フ言ノ葉
Name: パンダクッキー◆2bb48222
Date: 2007/06/23 09:08
Act.1 / 始まりの日。

明治時代。
人類は進化し、それなりに発展し始めた頃。
貴族の血筋が深く宿る一族は、ある日山奥に一人の美しい少女を発見した。
名を沙良と言う。
当時世継ぎに困っていたその一族は、その少女を養子とし、分家の長男と結婚させた。
その間に生まれた子供は男の子だった。

時は進み、その子供は立派な世継ぎになった。
威厳に満ちた背格好は母親に似ていた。
しかし、彼はただの人ではなかった。

山奥に住んでいたのは、一匹の龍。
人の形をした龍と交わった貴族の一族はその時から人ではなくなったのだ。
その罪は重く、
神と呼ばれる者達はその一族を滅ぼそうとしていた。
しかし、それを沙良が身代わりになった事で、一族は生き残る事ができた。
沙良は自分が腹を痛んで産んだ子にこういい残した。

「その力はいつか必要になってくる。どうかそれまで貴方はこの血を守り続けて。」

それが皇家の始まり、神と交わった唯一の一族。

しかし、後にこの一族は禁忌を起こす。


そして年月は過ぎて、その一族は滅びる。
ある少女の手によって。
     ◆

ここはどこ?
私は誰?
どうして私はこんなにも暗い所にいるの?
誰か、私を助けて。
誰か私をここから出して。
私はいけない事をしたからここにいるの?
謝るから、だからこんな所から出してお母さん!
久しぶりに夢を見た。
言いようも無い暗い夢、そこで私はもがいていた。
そこで私はようやく自分がどこに居るのか気がついた。
「なんで、私、病院にいるんだっけっか?」
そこは病院の一室。何故此処にいるのかは分からない。
ただ、記憶の端に泣き叫ぶ少女が、ごめんなさいって叫んでいるのがあるだけ。
「それにしても」
改めて周りを見渡す。
そこは病院の個室。
最新の医療技術をつぎ込んだ一室だった。
「私、どのくらい寝てた?」


「六ヶ月ですよ。夏季様」
いつの間に居たのか、メイド服を着た黒髪の長身の女性が私の隣に居た。
そういえば私の名前は夏季だったっけ。
「ふぅん、ありがと美鈴。その間何か変わったことでも?」
自分の名前を思い出すと、女性の名前も思い出す。

私は皇家夏季。
ここら辺の土地を仕切る、言わば財閥の令嬢。
それほどこの町、東谷町にとって皇家財閥の存在は重い
「いいえ、何も。平穏な日々です」
そして、この女性は私付きの使用人、漣美鈴。

「そう、私はいつ頃に退院できるのかしら?」
「望むのなら今日にでも。」
とても気が利く。
そう、感心していた。
「んにゃ、もうちょっとゆっくりして行くわ。」
「……お嬢様、貴方は皇家の跡取りです。もう少し行儀よく。そのお姿を御党首様が見たら。」
御党首?あぁ、お父さんの事ね。
「そういえば元気?お父さんと、お母さん。」
「………まさか、覚えていないのですか?」
「へ?」
「夏季様は、そのショックで。」
「何の事よ、はっきり言いなさい。私が何のせいで?」
「夏季様は、ご両親を目の前で殺されたのです」

記憶が走馬灯のように戻ってきた。
泣き叫ぶ少女。
そして幾つもの死体の中で虚ろな目を輝かせ微笑む少女。
「……様、な……様、夏季様っ!」

「んあ、っああ、大丈夫だから。」
「ほんとうですか?」
新鮮な空気を吸うために、窓を開ける。
既に日は沈んでいた。
結構高い病院から見る景色は、心が落ち着くような感じだった。
ふ、と下を見ると誰かと目が合った気がした。
「誰だろう?」
「夏季様?」 
「ううん、なんでもない。今日はもう帰ってもいいよ。」
「はい、ではまた明日来ます。」

「……ねぇ、誰が殺したの?」
先程は少し話題がずれてしまったが、それは聞かなくてはならないような気がした。
なぜなら、私の唯一の血縁が同時に二人も死んだのだから
それに、犯人が捕まっているのなら確証できる。

自分がこの手で実の両親を殺していないという―――――。

「………です。」
その時、美鈴は重い口を開いた。
しかし、あまりにも小さかったため私の耳には届かなかった。
「だれ?」
しかし、美鈴はにっこりと笑って
「私は、その場に居合わせなかったので知りません。」
そう答えた。
「そう、じゃあまた明日」
素っ気なく返事を返し私は再び窓のほうを向く。

しばらくして部屋から人の気配がなくなった。
「じゃあ、あれは何だったの?」
さっき不意に見てしまった、あの景色。
死体の中、真ん中で嗤う少女。その両手は真っ赤にぬれていた。
あれは確かに
「私だった、よね。」
もし、本当にそうだったら私は一体……。
犯人がいたらどんなに心が楽になったか……。
眼下に広がる夜の街景色。
さっき誰かと目が合ったような気がした私は再びそこを見下ろした。

ドクン
「ぅっ、あぁ」
早鐘のようになる心臓。
のどは水分を求めてからからになり、背中には鈍い痛みが走る。
全身が壁に強打した感じで、バラバラに引き裂かれた錯覚がする。
私が見たのは、一人の少女。
さっき見た幻に出てきた泣き叫ぶ少女がそこに居た。

此処は少なくとも、十階以上の高さのはず。
こんな所から目が合うわけないのに……なんで。

「それは先輩もでしょ?」
「え?」
脳に直接届いた言葉。誰かが喋っている訳ではなく脳に響いたその言葉に私は
意識を手放した。

    ◆
夏季はすぐに気を取り戻し、そのままの落下は免れた。しかし、彼女は先程の彼女ではなかった。

「ふん、弱いやつだ。こんな奴が私の跡継ぎと思うと反吐が出る。」
私は、眼下で殺気を直接ぶつけている奴を一瞥する。
先程と打って変わって、こちらの殺気が違う事を悟ったのか、目をそらした。
「しかし、こいつが覚醒すれば………化けるな。その時まで眠っているとするか。」
なに、そんなに遠くない。


破滅の足音はすぐそばまで聞こえている。
惨劇はまだ、始まったばかり。
 ◆
物陰に隠れて私は何をやっているのか。
「だって、まさか目が合うとは思わなかったんだもん。」
そうだ、最初は先輩の、夏季先輩の病室はどこだろうと思って上を見上げたのに、
なぜか、元気そうな清々しい顔をしているから腹が立って、睨んでいたら……
あの、あの時私を見たときと同じ風な目を向けるから!

あの目を思い出すと同時に体が熱くなっていく。
そう思えば、私は先輩に恋をしているのかもしれない。
「その程度だったか」
逃げ込んだとき、そう呟かれたような気がする。
その声ならぬ声にも私は、敏感だ。

優しい先輩。
学校でも色々と世話してくれた先輩。
そんな先輩に羨望の瞳で見ていた私。
威厳と自信と誇りに満ちた先輩の顔。

つまるところ、長田菜々恵は皇家夏季に憧れていた。
後輩にも先輩にも同級生にも人気があった夏季は、一人の少年に恋をして、同時に愛されていた。
しかし、お互い恋人とはいわない、微妙な関係だった。
その少年の名前は、長田始。
この少女の兄に当たる人物だった。
菜々恵はその関係をひどく喜んだ。
兄を誇りに思い、先輩が近くに居る事を喜んだ。

どうして此処まで菜々恵は先輩に憧れていたのか、それは暮れの日。
少し人とは違う体質のせいで友達に嫌われ、いじめられていた。
在らざるものを現界させてしまう、生まれながらにして突発的な召喚者の体質。
手をかざせばそこには如何なる生物も呼ぶ事ができた。
それを中学の友達は畏怖の目で見るようになってしまった。
日が沈んでもずっと教室で泣いていた私に優しく微笑んでくれたのが夏季先輩だった。

一生懸命先輩の後を追いかけた。
どんなに虐められても、先輩の笑顔を思い出して頑張ってきた、のに。

すべてを台無しにしたあの夜。
すべてはあの夜から始まったのだ。
惨劇の夜を私は忘れない。
結局、あの日の夏季先輩が何であったのかも分からずじまいだったが、
もしあれが夏季先輩に眠る一つの人格だとしたら、私はそいつを許さない。

「そうだ、君の考えはすばらしい。」

「!」
私以外誰も居なかったはずなのに、いつの間にか男は目の前に立っていた。
「あなた」
「誰、何て低能な質問は受け付けないからね、長田君。」
何故私の名字を、こいつ……

日が沈み、月が昇り始めた頃。
若き召喚術師は一人の死神に出会う。
あとがき
初のオリジナルです。
ノベルスで応募したいと思い、まずはここで連載してみる事にしました。まだまだ補足中ですので、見苦しいですが楽しんでもらえると嬉しいです。

今回の登場人物
皇家夏季…長髪長身の容姿端麗。憧れてる人間が多い。
     しかし、暗い過去を持っているが昏睡したことですっかり忘れている。

長田菜々恵…夏季の後輩、レズではない。ある事がきっかけで夏季と出会い以来とても仲が良かった。

漣美鈴…使用人兼親代わりのしっかりした正確のメイドさん。

それでわ、このぐらいで。


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