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No.14762の一覧
[0] 魔法少女リリカルなのはR(れぷりか) (鬱注意)[社符瑠](2011/04/03 20:17)
[1] Remake01 なくしたものと、えたもの[社符瑠](2010/01/31 12:45)
[2] Remake02 かなしいことと、うれしいこと[社符瑠](2010/01/31 12:46)
[3] Remake03 まっすぐに、ゆがんで[社符瑠](2010/01/31 12:49)
[4] Remake04 きづくこと、わかること[社符瑠](2010/01/31 12:50)
[5] Remake05 しりえること、しりえないこと[社符瑠](2010/01/31 12:52)
[6] Remake06 おさないかしこさ、おとなのみじゅくさ[社符瑠](2010/01/31 12:53)
[7] Remake07 ひげきのうら、きげきのうら(鬱注意)[社符瑠](2010/03/21 23:33)
[8] Remake08 どこかで、なにかを (鬱注意)[社符瑠](2010/01/31 12:55)
[9] Remake あとがきと……[社符瑠](2010/01/31 12:57)
[10] Retry01 あたえるもの、うけとるもの[社符瑠](2010/01/31 12:59)
[11] Retry02 あつめるもの、あつめられるもの[社符瑠](2010/03/21 23:36)
[12] Retry03 しらないひと、しっているひと[社符瑠](2010/02/14 11:55)
[13] Retry04 おもい、なやむ[社符瑠](2010/02/21 12:47)
[14] Retry05 うごける、うごけない[社符瑠](2010/03/21 23:40)
[15] Retry06 こっそりと、だいたんに[社符瑠](2010/03/07 12:47)
[16] Retry07 じぶんのちからと、あいてのちから[社符瑠](2010/03/21 23:43)
[17] Retry08 かくせることと、かくせないこと[社符瑠](2010/03/21 23:49)
[18] Retry09 おわりと、はじまり[社符瑠](2010/03/28 16:00)
[19] Retry あとがきと……[社符瑠](2010/03/28 16:08)
[20] Regret01 慎重な、準備[社符瑠](2010/04/04 13:58)
[21] Regret02 不知な、運命[社符瑠](2010/04/11 13:33)
[22] Regret03 半睡な、浮上[社符瑠](2010/04/18 15:39)
[23] Regret04 意外な、命終[社符瑠](2010/04/25 14:38)
[24] Regret05 存分な、自棄[社符瑠](2010/05/02 14:00)
[25] Regret06 独善な、思慕 (鬱注意)[社符瑠](2010/05/09 14:11)
[26] Regret07 傲慢な、卑屈[社符瑠](2010/05/16 16:14)
[27] Regret あとがきと……[社符瑠](2010/05/16 16:20)
[28] Return01 途惑いと、決断[社符瑠](2010/05/23 14:04)
[29] Return02 予想外と、咄嗟[社符瑠](2010/05/30 14:33)
[30] Return03 可能性と、驚愕[社符瑠](2010/06/06 14:29)
[31] Return04 かつてと、いま[社符瑠](2010/06/13 14:53)
[32] Return05 胸騒ぎと、憶測[社符瑠](2010/06/27 15:01)
[33] Return06 ダイヤと、原石[社符瑠](2010/07/04 14:02)
[34] Return07 いじめと、保護[社符瑠](2010/07/04 15:15)
[35] Return08 違和感と、思索[社符瑠](2010/07/11 16:24)
[36] Return09 不明瞭と、布石[社符瑠](2010/08/01 15:38)
[37] Return10 総力戦と、不覚[社符瑠](2010/08/01 15:35)
[38] Return11 生きてと、願い[社符瑠](2010/08/01 15:51)
[39] Return12 青い石と、理由[社符瑠](2010/08/08 16:54)
[40] Return13 車椅子と、少女[社符瑠](2010/08/22 14:52)
[41] Return14 4人組と、疑問[社符瑠](2010/08/22 16:41)
[42] Return15 不可解と、現状[社符瑠](2010/08/29 15:28)
[43] Return16 歯痒さと、欣躍[社符瑠](2010/09/05 15:34)
[44] Return17 隠し事と、前途[社符瑠](2010/09/12 16:28)
[45] Return18 初接触と、混乱[社符瑠](2010/09/19 15:30)
[46] Return19 見舞いと、反映[社符瑠](2010/09/26 14:44)
[47] Return20 弥縫策と、成敗[社符瑠](2010/10/10 16:39)
[48] Return21 怪我人と、準備[社符瑠](2010/10/10 16:28)
[49] Return22 仕掛けと、獲物[社符瑠](2010/10/17 15:59)
[50] Return23 逸る心と、慮外[社符瑠](2010/10/24 15:03)
[51] Return24 謀り事と、紛糾[社符瑠](2010/11/21 14:41)
[52] Return25 仕上げと、未然[社符瑠](2010/11/21 17:07)
[53] Return26 闇の中と、際会[社符瑠](2010/11/28 14:43)
[54] Return27 助けると、思い[社符瑠](2010/12/05 15:36)
[55] Return28 助けてと、言って欲しかった[社符瑠](2010/12/12 13:11)
[56] Return29 別れ道と、約束[社符瑠](2010/12/19 15:27)
[57] Return30 仲間達と、誓う[社符瑠](2010/12/26 19:57)
[58] Return あとがきと……[社符瑠](2011/01/09 14:18)
[59] Revenge01 再び同じ場所で[社符瑠](2011/01/09 14:59)
[60] Revenge02 見知らぬ空間で[社符瑠](2011/01/23 14:47)
[61] Revenge03 訪問先の世界で[社符瑠](2011/02/06 15:02)
[62] Revenge04 見られる位置で[社符瑠](2011/03/06 14:27)
[63] Revenge05 こどくなにわで[社符瑠](2011/03/06 15:39)
[64] Revenge06 客観的な視点で[社符瑠](2011/03/20 18:13)
[65] Revenge あとがきと……[社符瑠](2011/03/20 18:16)
[66] Replica01 壊れた日常[社符瑠](2011/04/03 21:00)
[67] Replica02 生きるべきか死ぬべきか[社符瑠](2011/05/15 22:06)
[68] Replica03 何ができるか、何をすべきだったか[社符瑠](2011/05/15 23:19)
[69] Replica04 闇に隠れて[社符瑠](2011/05/15 23:43)
[70] Replica05 再会していく姉妹[社符瑠](2011/12/29 22:03)
[71] Replica06 空いた椅子[社符瑠](2012/02/04 20:51)
[72] Replica07 決戦前[社符瑠](2012/03/03 22:30)
[73] Replica08 鐘は鳴らされる[社符瑠](2012/04/18 20:29)
[74] Replica09 振るえぬ力、振るわれる力[社符瑠](2012/05/03 09:55)
[75] Replica10 振るわれた力[社符瑠](2012/05/04 07:48)
[76] Replica11 鐘は鳴り終わるも戦いは続く[社符瑠](2012/05/05 12:56)
[77] Replica12 推測と行動[社符瑠](2012/09/24 17:54)
[78] Replica13 何処かに在る事はわかっている穴を誰が見つける?[社符瑠](2012/12/31 22:35)
[79] Replica14 気づいた時にはいつも遅く[社符瑠](2013/12/31 22:43)
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[14762] Return15 不可解と、現状
Name: 社符瑠◆3455d794 ID:7cee84d2 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/08/29 15:28
(あの人が亡くなる前にも、これと同じ様な事件があった。)

 分厚い窓の向こう側にある、数えきれない星々が光り輝いている景色を見ながら、泣いて暮らしたかつてを想う。

(職務上、魔力を鍛えに鍛えた時空管理局の局員たちはもちろん、ほんの少しの魔力しか持っていない一般人すらも魔力を奪われて殺されると言う事件が、確かにあった。)

 星の輝きは、どの世界でも変わらない。
 変わらないからこそ、ここではない世界の事を想えるのかもしれない。

(後日、闇の――ロストロギアの暴走を防ぐ為にエスティアと共にその命を犠牲にしたクライドさんは英雄として報道されたけれど、ほぼ同時に起こっていた魔力を奪われて死んでいった人々の事件に関連性があったのかどうかは報道される事は無かった。)

 未発見のロストロギアによる事件だと説明された遺族たちが、それは何と言う名前のロストロギアで、何のために魔力を集めているのかなどの問い合わせが来たらしいが――

(『これと同じ様な事件は定期的に起きており、おそらくこのロストロギアは定期的に魔力を集めるものであると推測する事しかできない』か……)

 闇の書についての情報は管理局内で隠された。
 当然だ。
 闇の書についてわかっているのは、素質があると言うだけの人の前に突然現れて、魔力を蒐集して闇の書を完全に覚醒させることができたらあらゆる願いが叶うなどと唆し、言われた通りに魔力を蒐集したらその世界を滅ぼすと言う事と……

(破壊しても、再生し、再び素質のある者の前に現れて同じ事をする……)

 時空管理局に取って最も厄介と言っても過言ではない、世界を1つずつ滅ぼしていく為に作られたとしか思えないロストロギア、闇の書。

(……闇の書がどういう物なのか、管理局が報道したことによって知る事ができ、それによって甘い言葉に騙される事が無かったとしても、時空管理局に通報する事もまた難しい。)

 魔力の蒐集が主の意思とは関係なく行われるのだとしたら、主になった瞬間に殺人を犯してしまっているのだとしたら、その罪は選ばれてしまった自分にあると言う事にされてしまったら……
 もちろん、闇の書がそういう物である可能性を管理局も想定しているが――

(それを証明する事は非常に難しく、それでいて照明する事が出来なければ、主になった者には『自分の私利私欲の為に人を殺した可能性がある』というレッテルが張られてしまう事は避けられない。)

 『魔力を集めれば願いが叶う』という部分が、どうしても疑心暗鬼にさせるからだ。

(自分の意思とは無関係なのに犯罪者扱いされるリスクを背負いたいなんて人はいないだろうから、主になった者は闇の書を管理局に提出するどころか、むしろ隠そうとする可能性の方が高いでしょうね。)

 例えその結果世界が滅ぶ事になると知っていても……
 『自分の意思で人殺しになったわけではないのに――いっそ、こんな世界なんて無くなってしまえばいい
 そんなふうに自棄になる者が必ず出てくるだろう。

(まぁ、自棄になるより先に『もしかしたら世界が滅ぶというのは嘘かもしれない』と考えたり、『世界が滅ばないように願えばいいのでは?』と考える者がでたりするだろうけど。)

 闇の書の情報を公表したら、管理局に持ち込んでくるのはよほどの考えなしかお気楽な者だけだろう。
 ……『何か叶えたい願いを持っている』事が『闇の書の主に選ばれる資質』である可能性もある。 その場合、情報を公開したら公開していない時よりも管理局に出頭してくる可能性は減るだろう。

(それだけじゃなくて…… 闇の書に選ばれた為に『それまでの犠牲者の遺族たち』の憎悪が全てその人に向けられる事になる――かもしれない。)

 時空管理局が創設されるずっと前から存在し、命を奪い世界を滅ぼしてきたロストロギアが闇の書である事を公開したら……

(もしも目の前に闇の書の主が現れたら、私も憎しみをぶつけてしまうかもしれない。)

 だから、闇の書については公表されない。

 それが具体的にどういった物なのかわからなければ、「目の前に突然ロストロギアが現れた。」と通報してくるだろうから。
 主になった者や、その周囲の人がある程度の常識を持っていれば、「本当にこれが魔力を集める事で願いを叶えてくれる便利な物であるならば、前の持ち主が手放すはずが無い。 だというのに自分の目の前に現れたと言う事は、これにはそんな力は無い。」と、気づくだろうから。
 大切な人を奪われた者たちに具体的な憎しみの対象を与えてしまう事で『選ばれてしまった人とその家族や友人たち』の命が危険になってしまいかねないから。

(レティが私に今回の事件について『闇の書』と言う単語を使わないのは、私が犠牲者の遺族だからなのでしょうね。)

 本当は事件に関わらせるのも避けたいはずだが、それができないほど管理局は人材不足なのだろうと――同情してしまう。





 ふと思い出す。

(エイミィやフェイトを怖がらせてしまったわね。)

 今度何か美味しい物でも奢ってあげないといけないかしらと、モニターの向こう側でぶるぶると震えていた2人の様子を思い出してクスリと笑ってしまい――ある事に気付いた。

(あら、さっきまであんなに憤っていたはずなのに……)

 あの2人を怖がらせてしまった事に気づいて、それを反省できるという事は――

(11年と言う時間が、私の中の復讐心をある程度消してくれたのかもしれないわね。)

 ――復讐に心囚われて、それしか見えなくなるような、前しか見えなくなるような激しさはもう無いという事だ。

(不思議ね?
 あなたへの想いは消えるどころか、前よりもっと大きくなっているのに……)

 目を閉じる。
 瞼の裏に浮かんだ夫は、11年前と変わらない姿で自分に微笑んでくれた。



────────────────────



『やっぱり、あの4人はこの国の戸籍を持っていないみたいだね。』

 朝の早いうちからそそくさと出かけて行ったエイミィからの連絡で、八神家にあらわれた謎の4人組がこの世界の人間である可能性が減った――というよりも、グレアム提督によって八神家に送られた存在ではない可能性が高まった。
 グレアム提督があの4人にはやての家族になるように命令したのだとしたら、彼らの戸籍を作っていないなんて事態にはならない――と、考えられるからだ。

(私の時は、シグナムさんたち4人はグレアム提督が後見人だったはず。
 はやてが第97管理外世界で中学校を卒業して本局に正式に移住した時に、「これでやっと4人と正式な家族として認められるようになった。」と言っていたのを憶えている。
 実際、グレアム提督だけではなくて義母さんや義兄さんもあの4人が八神を名乗れる事をとても嬉しそうにしていたし、細かい手続きとかも進んでしていた――と思う。)

 だと言うのに、グレアム提督はこの時点のあの4人の身元保証人にすらなっていない。

(私がこの時代に来て、『ミスト』が現れなかった事でここまで事態が変わ――!?)

 1つの恐ろしい可能性を思い至る。

(シグナムさんたちが『はやての家族になって、なおかつ魔力を集めていた』のを『私が知らなかっただけ』って事は?)

 私の知る世界とこの世界の違い――

(あの時はまだ執務官にはなっていなかったけれど、隣に居る幼い自分と同じ様に嘱託魔導師の資格は持っていた。
 同じ嘱託魔導師であるのに、私は『何者かが魔力を集める事件』を知らなかったのに、このフェイトは『事件』に関わっている……)

 それは、フェイトの境遇ではなく――

(それは、私の時はすでに『魔力を集め終わっていた』って事だとしたら?
 魔力を持った野生動物を大量に襲うまでもなく、必要な量の魔力を集める方法が、私の時にはあったというじゃないか?)

 『未来から私が来た』事ではなく、『ミストが現れなかった』事こそが、私の時と今との決定的な違いだとしたら?

(その一撃で傀儡兵を――それも、母さんが作った特製の傀儡兵2体以上を簡単に破壊できるほどの魔力を持った存在が――野生動物数百匹なんかよりもはるかに多い魔力量を持っている存在が、私の知る第97管理外世界には居た。)

 その違いこそが、八神家の違いに繋がるのだとしたら……

(私の知るシグナムさんたちは、『ミスト』から『魔力を集めた』という事なんじゃ?)





「ミスト? どうしたんだ?」
「あ…… いや、あの4人の事が余計わからなくなったなって思ったんだ。」

 また、考え込んでしまった。
 どうも、戦闘以外でマルチタスクを使う事が下手になっている気がする。

(……子供だったヴィヴィオと1つになってしまったからかな?)

「そうだな。
 彼らが何者なのかわからないけれど、管理外世界で――それも子供を洗脳してまで身を隠しているとしたら、戸籍の偽造すらしていないのは……」

 あまりにもうかつすぎはしないだろうか?

「やっぱり、おかしいよね?
 戸籍を偽造するスキルを持って居ないとしても、洗脳魔法を使えるのなら、そこらの暴力団とかに作らせる事はできるだろうに、それをしていないって言うのは……」

『1人暮らしの車椅子の少女』
 どう考えても目立ってしまう特徴を持つ八神はやてはこの町内ではかなりの有名人であり、そんな所に3人と1匹の家族が――それも、八神はやてと負けず劣らず、むしろ互いをより目立たせてしまうような目立つ人たちが堂々と八神家の一員と名乗ったりするなんて、怪しんでくださいと言わんばかりなのに、だ。

「仮に怪しまれなかったとしても、どうしても噂になっちゃうよね?」

 子供を洗脳してまで管理外世界に身を隠す必要があるとしたら、もう少しこそこそとしていてしかるべきなのではないだろうか?

「そうだな。」

 それに、どんなに慎重に行動しても事故や事件に巻き込まれる可能性は0にはならない。
 病院に運ばれたりした時に保険証――どう見ても日本人ではないので、この場合は身元確認の為のパスポートなどがなければ犯罪者として扱われてしまうだろう。
 そんな、少し考えれば誰にでも想像できる事に――何かあった時の準備をせずに、あんなに目立つ行動をするというのは愚かとしか言いようがないと思う。

「……私が母さんにジュエルシードを集めるように言われて、アジトとして使っていたあのマンションも、母さんが裏で色々して手に入れたんだろうし……」
「あいつはマンションの管理システムにクラッキングでもしたんだろうけど……
 あいつみたいによっぽど腕に自信がなかったら、そんな事はしないだろうからねぇ……」

 事故によって行方不明になったジュエルシードを探しに来た管理局が、海鳴の新聞などのメディアからジュエルシードが海鳴近辺に落ちている可能性に気づく可能性はある。
 その場合、フェイト――ジュエルシードを集めている不審な魔導師が海鳴のどこかに身を隠しているではないかと考えて、不動産関係の会社などのコンピュータを隅から隅まで探る可能性を考えると、よほど自信が無い限りは別の方法を取るだろう。

「母さんは元々研究者だったみたいだから、管理局にばれないようにデータを改ざんする事ができたんだろうけど……」

 フェイトとアルフも、あの4人が何を考えて戸籍などの偽造もせずに居るのか見当がつかない。

「偽造でも戸籍があれば、住処も働く場所も、面倒な事をある程度なんとかできる。
 何かある度にデータを改ざんしたり洗脳魔法をかけたりする手間もかからない――第三者の手によって偽造戸籍を手に入れると金銭的な問題が生じる可能性もあるけど、それこそ洗脳魔法が使えるなら後腐れも無いだろうし……」

 魔導師は、魔法の存在が認められていない世界では犯罪行為をやりたい放題なのだ。

「じゃあ、洗脳魔法が使えないって事は?」
「いや、それはないだろう。」

 自分たちで戸籍の偽造もできず、第三者に作らせる事もしないのはそういう理由からなのではとアルフは考えたが、クロノはそれを否定した。

「八神はやては、自分が独り暮らしの障害者の子供だと言う事を――自分が社会的に弱い立場にあると言う事を理解できるだけの知識と知恵を持っている。」

 八神はやてのこれまでを考えると、防犯意識はそこらの人たちよりも高いはずだ。

「その彼女が身元不明の人間3人とオオカミの様な大型犬1匹を家に上げて、そのうえ家族の様に一緒に暮らすようになると思うか?」

 いくら子供とはいえ、長く一人暮らしをしていた者がそんな事をするだろうか?

「そうか…… そうだよねぇ……」

 あの4人が身元を偽造していれば、それを調べて行く事でどんな『洗脳魔法』が使えるのか、もしくは偽造するのに必要なお金を『どの様にして得たのか』などと言った情報を得る事が出来たかもしれないが……

「なのはちゃんに紹介してもらう時に、洗脳されているかどうか調べないと、だね?」

 やはり、高町なのはの協力は必要不可欠の様だ。

「他に手がかりになりそうな物も無いし……」
「あの家の近所の住人に聞き込みを――駄目か。
 彼女たちは近所に受け入れられているみたいだし、僕たちが聞き込みをしていたと言う事はすぐにばれてしまう。」

 他に打つ手が無――

『あの、さ?』

 エイミィから再び連絡が入る。

「どうした?」
『あの4人の情報は何も手に入らないから、はやてちゃんの事を調べてみたんだけど……』
「ん?」
『あの子、ギル・グレアム提督の関係者みたいだよ。』
「は?」
「え?」
「なんだって?」

 グレアム提督と昔から付き合いのあるクロノはもちろん、彼に保護観察されている事になっているフェイトとアルフもまた驚いた。

「誰?」

 朝早くにエイミィが八神家を調べに言った時点で、はやてとグレアムの間に繋がりがある事はばれるだろうと予測していたミストは、予定通り何も知らない演技ができた。





「じゃあ、あの4人はそのグレアム提督の関係者――ってことはないか。
 仮にも時空管理局の提督が、ちょっと調べただけで身元を証明する物が何もない事がわかっちゃうような状態の魔導師を管理外世界に置いたりはしないだろうから。」

 ギル・グレアム提督について、フェイトからはお世話になった人、クロノからはその輝かしい功績を聞かされたミストはあの4人もグレアム提督の関係者ではないか――と言う事をすぐさま否定した。

「そうだね。」

 フェイトはミストに賛同する。

「一応、かあ――艦長の方からレティ提督に確認を取ってもらおう。
 提督の関係者だとしたら、管理局に届け出が出ているかもしれない。」

 クロノも同じ考えだが、このメンバーの中で一番長く管理局に勤めている事もあってか、念の為に人事部に連絡を取る事を提案した。
 可能性は低いが、あの4人はグレアム提督の部下であり、何らかの任務の為にあんなあからさまに怪しい状態で居るとも考えられるからである。

「グレアム提督に直接確認を取るのは駄目なのかい?」
「……管理局に連絡がついてから、だな。」
「?」

 アルフの疑問にクロノは歯切れの悪い返事をする。

「八神はやて――時空管理局の提督が保護している事になっている少女が洗脳されている可能性があるって事を忘れたのか?」
「あ!」
「そう言う事か……」

 クロノの一言で、フェイトとアルフも八神はやてがギル・グレアム提督に対する人質である可能性に気付いた。

「……管理局の局員である可能性。
 局員では無くても、グレアム提督や他の管理局員の関係者である可能性。
 八神はやてを人質にグレアム提督に害をなそうとしている可能性。
 そもそも管理局とは――管理局すら知らない世界から来た魔導師である可能性。
 どれも可能性でしかない以上、確認できる事から1つずつ確実に潰していかないと、最悪の事態になりかねない――って事だね?」

 未来から来たとはいえ、あの4人の過去について詳しく聞いた事が無い。
 確実な事は、あの4人ははやての家族だと言う事だが、それを知っている事を知られるわけにはいかない以上、面倒だが1つずつ……

「そう言う事だ。 最低でも八神はやての安全を確認、又は確保する必要がある。」

 重要なのは子供の安全だとクロノは言った。

「あの4人が今回の事件に関係があるとして……
 集めた魔力の使い道はグレアム提督を脅す事――かな?」

 フェイトが最悪かもしれない可能性を口に出す。
 使い方によっては大量殺戮だって可能な量の魔力を集めているはずだ。

「それも、可能性の1つだ。」

 クロノは集められた魔力が管理局に対して使われる可能性があると考えてはいた。
 八神はやてとグレアム提督に繋がりがあるとわかった時点で、その可能性が高まった。

(集めた魔力の使い道……)

 だが、今のやり取りを聞いたミストは新たな可能性に気付いた。

(私の時、シグナムさんたちが『ミスト』から魔力を集めていた場合……)

 シグナムたち4人は確かに強い。
 強いが、『ミスト』に勝てる程強かったか?

(『ミスト』が『自ら魔力を提供した』、もしくは『シグナムさんたちが魔力を集めるまでも無く、ミストが全部解決した』可能性がある?)

 少なくとも、自分の知る限り、『時空管理局が莫大な魔力によって被害を受けた』という情報を聞いた事は無い。
 つまり、シグナムたちの目的は管理局を攻撃する事ではない。

 ならば、彼女たちは『集めた魔力』を何に使ったのか……

 考えられる事が1つ!

(そう、この時期、はやては自分の足で歩けていた!

 なのに、この世界のはやては未だに車椅子を使っている。

(集められた魔力は、『はやての足を治す為に使われた』!?)

 まだ、シグナムたちが魔力を集めている――今追っている『事件』と関係があるという証拠は無いけれど、その可能性は十分にある。

(そうだ。 『ミスト』はジュエルシードを集める事でこの世界を守った。
 なら同じ様に、シグナムたちの願いを叶えてあげる事で余計な犠牲者が出ない様にしてあげたって事は考えられるじゃ――ん?)

 魔力があればはやての足が治る?

(シャマルさんは管理局の本局で働けるだけの医療魔法を使えるだけじゃなく、シグナムさんたちのデバイスを借りればカートリッジシステムで魔力をブーストする事もできる。
 そんなシャマルさんがいると言うのに、野生動物や管理局員を襲ってまで魔力を集めないといけないほど、はやての足は悪いのか?)

 いや、『大量の魔力』があれば足が治るとしても、はやてがそれを「良し」とするか?

(はやての性格から考えると、「他人に迷惑をかけるくらいなら足なんて動かなくても構わない。」と言うんじゃないかな?)

 そして、シグナムたちもその言葉に従うだろう。

(管理局への攻撃でも無く、はやての足を治すのでもない。
 『集めた大量の魔力の使い道』を突き止める事こそが、今回の事件を解決する為に必要な事――って、それがわかる頃には事件は解決しているね。)





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