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No.14762の一覧
[0] 魔法少女リリカルなのはR(れぷりか) (鬱注意)[社符瑠](2011/04/03 20:17)
[1] Remake01 なくしたものと、えたもの[社符瑠](2010/01/31 12:45)
[2] Remake02 かなしいことと、うれしいこと[社符瑠](2010/01/31 12:46)
[3] Remake03 まっすぐに、ゆがんで[社符瑠](2010/01/31 12:49)
[4] Remake04 きづくこと、わかること[社符瑠](2010/01/31 12:50)
[5] Remake05 しりえること、しりえないこと[社符瑠](2010/01/31 12:52)
[6] Remake06 おさないかしこさ、おとなのみじゅくさ[社符瑠](2010/01/31 12:53)
[7] Remake07 ひげきのうら、きげきのうら(鬱注意)[社符瑠](2010/03/21 23:33)
[8] Remake08 どこかで、なにかを (鬱注意)[社符瑠](2010/01/31 12:55)
[9] Remake あとがきと……[社符瑠](2010/01/31 12:57)
[10] Retry01 あたえるもの、うけとるもの[社符瑠](2010/01/31 12:59)
[11] Retry02 あつめるもの、あつめられるもの[社符瑠](2010/03/21 23:36)
[12] Retry03 しらないひと、しっているひと[社符瑠](2010/02/14 11:55)
[13] Retry04 おもい、なやむ[社符瑠](2010/02/21 12:47)
[14] Retry05 うごける、うごけない[社符瑠](2010/03/21 23:40)
[15] Retry06 こっそりと、だいたんに[社符瑠](2010/03/07 12:47)
[16] Retry07 じぶんのちからと、あいてのちから[社符瑠](2010/03/21 23:43)
[17] Retry08 かくせることと、かくせないこと[社符瑠](2010/03/21 23:49)
[18] Retry09 おわりと、はじまり[社符瑠](2010/03/28 16:00)
[19] Retry あとがきと……[社符瑠](2010/03/28 16:08)
[20] Regret01 慎重な、準備[社符瑠](2010/04/04 13:58)
[21] Regret02 不知な、運命[社符瑠](2010/04/11 13:33)
[22] Regret03 半睡な、浮上[社符瑠](2010/04/18 15:39)
[23] Regret04 意外な、命終[社符瑠](2010/04/25 14:38)
[24] Regret05 存分な、自棄[社符瑠](2010/05/02 14:00)
[25] Regret06 独善な、思慕 (鬱注意)[社符瑠](2010/05/09 14:11)
[26] Regret07 傲慢な、卑屈[社符瑠](2010/05/16 16:14)
[27] Regret あとがきと……[社符瑠](2010/05/16 16:20)
[28] Return01 途惑いと、決断[社符瑠](2010/05/23 14:04)
[29] Return02 予想外と、咄嗟[社符瑠](2010/05/30 14:33)
[30] Return03 可能性と、驚愕[社符瑠](2010/06/06 14:29)
[31] Return04 かつてと、いま[社符瑠](2010/06/13 14:53)
[32] Return05 胸騒ぎと、憶測[社符瑠](2010/06/27 15:01)
[33] Return06 ダイヤと、原石[社符瑠](2010/07/04 14:02)
[34] Return07 いじめと、保護[社符瑠](2010/07/04 15:15)
[35] Return08 違和感と、思索[社符瑠](2010/07/11 16:24)
[36] Return09 不明瞭と、布石[社符瑠](2010/08/01 15:38)
[37] Return10 総力戦と、不覚[社符瑠](2010/08/01 15:35)
[38] Return11 生きてと、願い[社符瑠](2010/08/01 15:51)
[39] Return12 青い石と、理由[社符瑠](2010/08/08 16:54)
[40] Return13 車椅子と、少女[社符瑠](2010/08/22 14:52)
[41] Return14 4人組と、疑問[社符瑠](2010/08/22 16:41)
[42] Return15 不可解と、現状[社符瑠](2010/08/29 15:28)
[43] Return16 歯痒さと、欣躍[社符瑠](2010/09/05 15:34)
[44] Return17 隠し事と、前途[社符瑠](2010/09/12 16:28)
[45] Return18 初接触と、混乱[社符瑠](2010/09/19 15:30)
[46] Return19 見舞いと、反映[社符瑠](2010/09/26 14:44)
[47] Return20 弥縫策と、成敗[社符瑠](2010/10/10 16:39)
[48] Return21 怪我人と、準備[社符瑠](2010/10/10 16:28)
[49] Return22 仕掛けと、獲物[社符瑠](2010/10/17 15:59)
[50] Return23 逸る心と、慮外[社符瑠](2010/10/24 15:03)
[51] Return24 謀り事と、紛糾[社符瑠](2010/11/21 14:41)
[52] Return25 仕上げと、未然[社符瑠](2010/11/21 17:07)
[53] Return26 闇の中と、際会[社符瑠](2010/11/28 14:43)
[54] Return27 助けると、思い[社符瑠](2010/12/05 15:36)
[55] Return28 助けてと、言って欲しかった[社符瑠](2010/12/12 13:11)
[56] Return29 別れ道と、約束[社符瑠](2010/12/19 15:27)
[57] Return30 仲間達と、誓う[社符瑠](2010/12/26 19:57)
[58] Return あとがきと……[社符瑠](2011/01/09 14:18)
[59] Revenge01 再び同じ場所で[社符瑠](2011/01/09 14:59)
[60] Revenge02 見知らぬ空間で[社符瑠](2011/01/23 14:47)
[61] Revenge03 訪問先の世界で[社符瑠](2011/02/06 15:02)
[62] Revenge04 見られる位置で[社符瑠](2011/03/06 14:27)
[63] Revenge05 こどくなにわで[社符瑠](2011/03/06 15:39)
[64] Revenge06 客観的な視点で[社符瑠](2011/03/20 18:13)
[65] Revenge あとがきと……[社符瑠](2011/03/20 18:16)
[66] Replica01 壊れた日常[社符瑠](2011/04/03 21:00)
[67] Replica02 生きるべきか死ぬべきか[社符瑠](2011/05/15 22:06)
[68] Replica03 何ができるか、何をすべきだったか[社符瑠](2011/05/15 23:19)
[69] Replica04 闇に隠れて[社符瑠](2011/05/15 23:43)
[70] Replica05 再会していく姉妹[社符瑠](2011/12/29 22:03)
[71] Replica06 空いた椅子[社符瑠](2012/02/04 20:51)
[72] Replica07 決戦前[社符瑠](2012/03/03 22:30)
[73] Replica08 鐘は鳴らされる[社符瑠](2012/04/18 20:29)
[74] Replica09 振るえぬ力、振るわれる力[社符瑠](2012/05/03 09:55)
[75] Replica10 振るわれた力[社符瑠](2012/05/04 07:48)
[76] Replica11 鐘は鳴り終わるも戦いは続く[社符瑠](2012/05/05 12:56)
[77] Replica12 推測と行動[社符瑠](2012/09/24 17:54)
[78] Replica13 何処かに在る事はわかっている穴を誰が見つける?[社符瑠](2012/12/31 22:35)
[79] Replica14 気づいた時にはいつも遅く[社符瑠](2013/12/31 22:43)
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[14762] Retry08 かくせることと、かくせないこと
Name: 社符瑠◆5a28e14e ID:5aa505be 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/03/21 23:49
ピンポーン♪

 なのはが海上で派手に暴れた翌日、約束の時間の少し前に呼び鈴が鳴った。

「はーい。」

 呼び鈴に答えた車椅子の少女は「5分前行動とはなかなかやるな。」などと思いながら玄関で客人を迎え入れる。

「お邪魔します。」
「お邪魔します。」
「いらっしゃい。 飲み物持って行くから、先に客間に行っててな?」
「え?」
「へ?」
「この家の事は隅から隅まで知っとるやろうから、今さら案内はいらんやろ?」

 そう言って少女は台所に向かう。
 玄関に残された客は暫しの間呆然としたが、確かに今さら案内される必要はないなという結論に至り、とりあえず言われた通り客間に移動した。





「はい、どうぞ。」

 大親友のなのはと友人のアリサやすずかの他には主治医である石田幸恵くらいしか来た事がない八神家にやって来た2匹の――2人の客にジュースを出す。
 熱いお茶を出さないのは2人が人型であっても猫舌である可能性があるからだ。

「あ、どうも。」
「どうも。」
「いえいえ。 お客様を持て成すんは当たり前のことやから。」

 そう言ってはやては2人に向き合う形で席に着く。

「ほな、これについての話をしましょうか。」
「なっ!?」

 夜天の書――目の前の2人が闇の書と呼び、つい数秒前にはジュースの入ったコップを運ぶ時にトレイ代わりに使っていた物を机の上に置いた。

「見間違いであって欲しかったけど、やっぱり闇の書だったんだ……」

 暴走したら次元世界に多大な被害を与えるロストロギアをそんなふうに扱っているとは思いたくなかったと、リーゼ姉妹は後に語る。

「空に突然現れたあのロボットたちを見てもあまり騒がなかったり、リーゼアリアさんが魔法を目撃した私の記憶を弄るべきかどうか悩んでいたりするのを言い当てた理由が、コレに関係ないほうがありえないと思いませんか?」

 あの公園でたくさんの人の記憶を弄ったリーゼアリアが自分の記憶を魔法で弄る事で闇の書に何らかの影響が出たらどうしようと悩んでいると気づいたはやては、管理局に保護されているフェイトがヴォルケンリッターを恨む事はないのだからと判断し、なのはには悪いと思いつつも計画を早める事にしたのだ。

「闇の書を知っているという事は、私たちがあなたとどういう関係になりた――」
「氷漬けにしたいんやろ?」
「!!」
「!?」

 てっきり自分たちの事を『闇の書を寄こせ』とか『収集を手伝ってやる代わりにその力を少し使わせろ』というような考えを持った奴ら程度に考えていると思っていた2人は、はやてが当たり前のように――それも図星を即答してきて驚愕した。

「ど、どうしてその事」
「ジュエルシードが私に予知夢を見せてくれたんよ。」

 ここでまさかのジュエルシード!

「ジュエルシードにそんな力があるなんて……」
「でも、納得のいく答えだわ。」

 ジュエルシードは万分の一の力が暴走しただけで世界を滅ぼしかねない魔力の塊だ。
 闇の書に選ばれたはやてには魔法の素質が少なからずあったのだろうし、両者が揃えば予知夢を見る事くらいあり得る。

「私が見た予知夢は2種類や。」
「?」
「2種類?」
「そうや。」

 世界が滅ぶか氷漬けになるかの2択か……

「1つは私があんたらに氷漬けにされる夢で、もう1つは闇の書を完全に消滅させる夢や。」
「な!?」
「そんな事ができるの!?」

 予想外の2択に驚愕するリーゼ姉妹に、はやては不敵な笑顔で言葉を続ける。

「その為にはアルカンシェルっていう管理局の兵器と――」

 管理局の事まで知っているのか。

「ジュエルシードにも選ばれた最高の砲撃魔導師で、さらに私の大親友でもある高町なのはちゃんの助力が必要不可欠や!」

 驚きすぎると何も言えなくなるのは人間も使い魔も同じらしい。



────────────────────



 八神家で軽く話し合った日からさらに3日後の午後4時、はやてはリーゼ姉妹と一緒に翠屋でなのはとこれからについて話し合っていた。

「足の具合はどうなの?」
「前と同じ状態になっただけ、全然平気や。」

 これから家族になる人たちは、自分と出会って一緒に暮らした記憶も経験も持たないと知っているけれど、それでも会いたいという気持ちを抑える事ができない。

「フェイトさんが管理局に保護されたからと言っても、プレシアさんが管理局に捕縛されない限り、はやてちゃんが“ああなる”可能性はまだまだあるんだよ?」
「わかってる。 でも、それでも……」

 会いたい。

「……本当に仕方ないな、はやてちゃんは。」
「勝手に決めてごめん。」
「こうなったら、アースラの人たちに一刻も早くプレシアさんを捕まえてもらわないといけないんだけど……」

 本当ならプレシアさんが捕まった後で闇の書の事を暴露するはずだったのに、フェイトさんが保護されたと聞いた事と、あの海の見える公園で海の上に突然現れたロボットをリーゼさんたちの前で目撃してしまった事が……

「あのフェイトって子は母親の事を何も言っていないみたいなんだ。」
「そのせいでアルフも黙秘を続けているし……」

 アリアさんとロッテさんはデバイスではなく普通のメモ帳に私たちが知っている限りのプレシアさんの情報を書いている。

「大魔導師とまで言われた人が犯罪者になったんだから、上手い事やればアースラに――それができなくてもアルカンシェル搭載済みの艦が来る可能は十分あるよ。」
「父様もはやてを犠牲にしないで済むのならそれが一番良いって言って、できうる限りの協力をするんだから、もしかしたら『闇の書は前回で完全に消滅した事にできる』かもしれないよ?」

 グレアムおじさんの頑固な頭を柔らかくできるのはハラオウン親子くらいだと師匠は言っていたけど、なのはちゃんの砲撃でも十分に柔らかくできたんやな。

「ヴォルケンリッターが出てきたら闇の書が溜めこんだ魔力はほぼ0になるから、その間に管制人格を起こして暴走している部分を放出、アルカンシェルで消滅させた後、管制人格に闇の書の完全消滅――ジュエルシードを使えばこんな事ができるんだねぇ……」
「はい。 できます。」

 もう何度目になるか分からないロッテさんの確認作業に大きく頷くなのはちゃん。

「本当は管制人格も助けてあげたいんやけどな……」
「それができた予知夢を見た事がないのよね?」
「残念ながら……」
「夜天の書をいじくりまわした奴をぶん殴ってやりたいよ。」

 ヴォルケンリッターと使い魔の“在り方”は少し似ているからか、ロッテさんは本当に怒っている事が――その握りしめた拳を見るまでもなくわかってしまう。

「とにかく、シグナムさん達が出てくるまではやてちゃんと一緒に暮らしてくださいね。」
「わかってるよ。」
「私たちの存在が知られてしまっているし、何よりこれから“共犯者”になるんだものね。」

 なのはちゃんの命令を快く受け入れてくれるリーゼさんたち。

「ほな、私たちの計画が上手くいく事を願って乾杯しよか。」

 そう言って私はジュースの入ったコップを3人の前に掲げる。

「うん。」
「ああ。」
「ええ。」

 3人も私と同じようにコップを掲げて

カチャン!

「あら、何かのお祝い事だったの?」
「え?」

 なのはちゃんの都合を優先して翠屋で話し合いをしたのは失敗だったのかもしれない。

「り、りんでぃ……」
「僕もいるぞ?」
「くろすけ……」

 こんな事になるなんて……





「リンディ・ハラオウンです。」
「クロノ・ハラオウンです。」
「エイミィ・リミエッタです。」

 丁寧に名乗る管理局組に、どう対応していいのか分からない。

「た、高町なのはです。」

 え?
 あ!
 そうやね、名乗られたら名乗り返さなあかんよね。

「八神はやてです。」

 ぅぅぅ……

「それで、リーゼたちとはどういう知り合いなのかな?」
「ぅ、ぇ、ぇえっと……」

 なんて言えばええの?

「あ、ああ、その、こっちの子、八神はやてちゃんの亡くなったご両親が父様の友人でね?」
「私たちは時々この子の様子を見に来ているのよ。」
「へぇ……」

 リーゼさん達が冷や汗をかきながら説明するんやけど、リンディさんは何故か冷やかな言葉を返すだけやった。

「それで今日ははやてちゃんの親友のなのはちゃんを紹介してくれてね?」
「なのはちゃんのお家が喫茶店だったから、それならおやつはここで食べようかって……」
「それで、今はこの出会いを大切にしましょうって乾杯していただけなのよ?」

 説明に嘘はないんやけど……
 なんか、リンディさんとクロノさんの様子がどんどん『黒く』なっている様な気がするのは私の気の――

「そうだったの?」
「そうだったんだよ。」
「そういうわけだから、部外者は」
「それで、『闇の書』は何処にあるのかしら?」

 気のせいじゃなかっただけでなく、話しを聞かれていた……

「はやてちゃん、なんだか難しい話をしているみたいだから、私たちは邪魔にならないようにあっちのほうに行っておこうか?」

 ! なのはちゃん、ぐっどあいであや!

「そ、そうやね、大人の話に子供は」
「それなら、僕と話し合おうか? 子供同士でね?」



 子供たちは逃げ出した。 しかし回りこまれた。



────────────────────



 ジュエルシードを諦める。

「アリシア……」

 ずっと眠ったままの愛しい娘の目の前で、彼女はそう決断した。

「あなたをなかなか起こす事の出来ない駄目なお母さんで、ごめんなさいね。」

 第97管理外世界にフェイトとアルフを送り込んだものの、帰って来たのはジュエルシードどころかフェイトが管理局に捕まったという情報を持ったアルフだけ。
 使えない駒に用は無いので殺そうとしたアルフに逃げられたのは、怒りを抑えられなかった為に隙が出来てしまったからだろう。

「ジュエルシードの代わりを必ず見つけるから、それまでもう少し待っていてね?」

 フェイトとアルフからの報告で知った管理局とは別口でジュエルシードを集めているという謎の『白いもやもや』が、海に落ちているジュエルシードを回収する為に展開したと思われる結界を発見した時は漁夫の利を狙うつもりだった。
 しかし初めて見るタイプの結界だった事と、フェイトとアルフから隠れ続ける事ができるだけの実力を持った相手だという事を考えて結果、少し危険だが時の庭園のセキュリティを犠牲にしてまで40体の傀儡兵を送り込んだというのに……

「あの化け物がいなければ、私たちはあの場所へ行く事ができたのに。」

 管理局に破壊される事も考えた上での戦力の投入だったというのに、半分以上、23体を殆ど一瞬で片付けられたのは計算外であった。
 仮に、この時の庭園のセキュリティを全て捨てて、次元跳躍攻撃や全傀儡兵を送り込んでいたとしても、あの『白いもやもや』に効果が無かっただろうと考えられる。
 その上、管理局の執務官と思われる黒づくめの子供の実力もこちらの予想以上だったのだから、ジュエルシードの回収を諦めてさっさと退散するべきだ。
 逃げ出したアルフが管理局に司法取引を――フェイトの安全を保障してもらうかわりにこちらの情報を流してしまっている可能性もあるのだから。

「第97管理外世界に時の庭園を近づけたのは失敗だったわね……」

 ジュエルシードの回収を素早く行う――ジュエルシードの暴走によって体規模な次元震が発生した時にそれを利用するという事も考えた上での移動だったのだけれど。

「おそらく、次元震はもう起きない。」

 あの次元震は『白いもやもや』が生まれる瞬間に起こったのだろうと彼女は考える。
 ジュエルシードがバラバラになった際に、一か所に集まる為のシステムを持っていた可能性は十分にあり、そのシステムが起動した瞬間に次元震が発生したのだと……

「アリシア…… 私のアリシア……」

 三十分ほど泣いた後、最愛の娘に背を向けて彼女は歩きだす。
 フェイトとアルフがそのくだらぬ口を割る前に、一刻も――一秒でも早く時の庭園を移動しなくてはならないから……



────────────────────



「なるほどね……」
「……」

 結局ロッテが少しだけ口を滑らせかけて、それをフォローしようとしたはやてが墓穴を掘り、アリアとなのはが目をそむけた事が『無言の肯定』となり、もうどうしようもなくなったので仕方なくジュエルシードや闇の書について話してしまった。

「あの、ジュエルシードを管理局に渡すのは」
「わかっています。 信じたくないけれど、ジュエルシードが次元犯罪者に『横流し』される未来を予知夢で見たのでしょう?」
「はい。」

 本当はそんな夢を見てはいないのだが、師匠の事は本当にどうしようもない時にだけ話すようにと言われているので、そういう事にする。

「実を言うと、エイミィが気絶させられた時の報告からレティ――私の友人で信頼できる管理局員にそういう事実が在り得るか確認して欲しいと頼んだのよ。」
「リンディ?」
「それはちょっと危険じゃないかい?」

 リーゼ姉妹がリンディの行動に驚くが、それを無視してリンディは言葉を続けた。

「地方の研究所に運ばれて行方不明になったロストロギアがいくつかあったらしいわ。
 そしてその内の幾つかが――捜索班が組まれる事もないままになっているそうよ。」
「それって……」
「ええ、限りなく黒に近い――いいえ、事実“そう”なんでしょうね。」

 リンディは左手で頭を押さえた。
 クロノとエイミィも同じようなしぐさをした。
 ……2人とも右手にはケーキを食べる為のフォークを持っていた。

「ジェルシードについてはこちらで何とか誤魔化すわ。」
「情けない上に不本意だが、ジュエルシードの危険性を考えるとそれしかないでしょうね。」

 ジュエルシードは『ミスト』が所持している事にして、八神はやてやその友人の高町なのはは一切関与していない事にする。
 リンディとクロノからの提案をなのはとはやては受けいれた。
 真相を知っているのはこの場にいる7人だけなのは幸いだった。

「闇の書については父様の独断と言う事にしてくれていいよ。」
「私たちが無限書庫を利用していたのは隠しようのない事実だしね。」
「そう言ってもらえると助かるわ。」
「こちらでもできるだけの事はするつもりだが、物がモノだけにな……」

 アルカンシェルを使うのだから、フォローするにも限界があるのだが……
 ロストロギアを行方不明にしている一味を突き止めるには事情を知っていてなおかつ無限書庫を利用していたリーゼ姉妹の協力があった方が良い――できる限り罪を軽くする方向で動くからその見返りに協力しろと言外に告げていた。

 ……なのはとはやてには伝わらなかったが。

「さて、闇の書について話がいい感じにまとまった処で、ジュエルシード回収を邪魔したフェイト・テスタロッサの母親――プレシア・テスタロッサを捕まえに行こうか。」
「あの傀儡兵たちがどこから送られてきたのかって事に関しては、私たちが突き止めた事にするから、逃げ出す前に今すぐアースラに行こうか。」

 フェイトは犯罪者だが、その出生や家庭環境を考えると情状酌量の余地が十二分にあり、プレシアを捕まえる事ができれば確実に無罪にする事ができるだろう。

「できればフェイトの口から聞きたかったが、早く行動しないと逃げられるのも事実。」
「アルフさんの為にもすぐに行動した方がいいわね。」

 そう言って5人は席を立つ。

「ほな、今日はこれでお開きやね。」
「プレシアさんを捕まえたお祝いのケーキは翠屋で買ってくださいね。」

 空になった皿を片づけながら、なのははそう言って結界を解除した。
 リンディとクロノが参加した時に、これ以上誰かの耳に会話が入らないようにする為に展開していたのだ。

「ええ、その時にはここで買わせてもらうわ。」
「それでは、失礼する。」
「はやてちゃん、なのはちゃん、またね!」
「はやてちゃん、私たちの部屋を掃除して待っててね。」
「なるべく早く片付けるから。」





「一体何の話をしていたの?」

 娘の親友の家に住む事になった人たちだけでなく、最近お得意様になった親子も交じってのミニパーティーに、母親である桃子が興味を持たないはずがなかったのだが……

「あの人たちはリーゼさん達とお友達だったの。」
「ほんで、今度リーゼさん達の引っ越しパーティーを私の家でするから、参加しますかって事になってな? なのはちゃんが営業をしたんよ。」

 本当の事を言えない子供たちの『ごまかし能力』は素晴らしかった。





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