・Sceane 21-2・
さて、とアマギリは盤上を見る。
ラシャラから引き受けた自軍は、キングとナイトを残すのみ。対してフローラが操る敵軍は、ポーン一駒を除いて全て健在。直ぐにこちらにチェックを掛けられそうな完全な包囲網を強いている。
正直な所、どうやったらこんな器用な負け方を出来るのかが、アマギリには一番の疑問だった。
そして、ラシャラとフローラは、アマギリにこの状況から勝利を収めろと言う。
無茶な相談、そう言う他なかった。
アマギリのチェスの実力は自己申告の通り、頑張ってもダグマイアに勝てない程度の腕しかない。
それは、指し手として名の通ったダグマイアを追い詰めるだけの実力がある―――と、言う訳ではなく、アマギリの性格の駄目な部分、つまりは勝ち気に欠けると言う欠点が最大限発揮された結果なのだった。
恐らく、それなりに指せる人間と対戦した場合、十中八九アマギリは負けるだろう。守勢に秀でて勝負を引き伸ばすのは得意だが、積極的に攻めるのは得意ではないのだ。
たまに決定的な勝ちを求めて積極的な行動をとってみると―――あの、森の一件のような顛末を迎える。
あの時も、求めていた完全な勝利と言うには程遠い、何とも微妙な結末だった。
とは言え、アマギリは決定的な敗北をしないのも事実―――明らかに敗北だったあの日のダグマイアとの勝負ですら、アマギリは”負けていなかった”。
つまり、今求められているのはそう言う事だ。
「……フム」
「あら」
コン、と盤を鳴らしてアマギリが動かしたのは、自軍のナイトだった。
平凡な一手。追い詰められた状況から考えると、苦し紛れにも言える。ナイト一駒でどれだけ頑張っても、最早戦況は動かしようが無いのだから。
フローラは考える素振りも見せずに自軍のナイトの駒を動かした。
それを囮として、次の自身の手番でアマギリの唯一のナイトを仕留める算段だろう。自軍に余裕があるからこそ出来る指し方だった。
やはり戦局は、どう足掻いても覆しようも無いのか。最早観客に徹していたラシャラがそう思っていたとき、アマギリが盤上に指を伸ばした。
「おおう?」
アマギリの指した返しの一手に、ラシャラが首を捻る。
アマギリは、躊躇う事無く囮のナイトを自身のナイトで仕留めて、敵中で孤立させてしまう。
このままでは、次のフローラの一手でナイトを仕留められて、逃げ場のなくなったキングを取られて負け。そうなってしまう。
つまりはアマギリの負け。
だがやはり、そう誰かが考えたとおりに事を運ばないのがアマギリ・ナナダンだった。
「この盤上、何かに似ていると思いませんか?」
唐突に―――フローラが次の一手に進む暇を与えずに、アマギリはそんな風に言った。
「何か?」
「―――あら、何かしら?」
フローラは、予想はついているだろうに小首をかしげて疑問を口にしている。アマギリがこの状況から”勝つ”方法は一つしかなかったから、やはり予想通りの方法をとってきた事におかしみを覚えているのだろう。
フローラの態度からそれを感じる所があったのだろう、アマギリは微苦笑をしながら肩を竦めた。
―――まるで、授業参観でも受けているみたいだ。
「自軍には、聖機師が一人のみ。対して敵軍は有り余るほどの戦力でこちらに迫ってくる。―――そうだな、こうすればもっと解りやすいかな」
そう言って、アマギリは盤から取り除かれていた自軍のルークを拾い上げ、キングの前に配置した。
聖機師、と言う言葉の段階でラシャラにも気づく事が有ったらしい。ルークが再配置された盤面を憎憎しげに眺める。
「コレは……」
「まぁ、フネの一隻くらいは、流石に持ち出せるでしょう?」
「あらあら、あからさまなお言葉。―――減点一点」
ニヤリと笑ってラシャラに問いかけるアマギリに、フローラが茶々を入れる。冗談に聞こえるが、まるっきり本音だった。
アマギリは、どうせ僕には色気が足りませんからと肩を竦めた後で、話を進めた。
「なんでしたら、このキングをクイーンに取り替えるのがいいかも知れませんね」
コン、とアマギリは自軍のキングを退けて、クイーンの駒に置き換えてみせる。
「女王には聖機師が一人。領土は船一隻か……そうじゃの。直轄領とて危うかろう」
ラシャラが、盤上を睨んで呻くように呟く。
船に乗って逃げる女王。そしてたった一人の聖機師。敵は、全軍を掌握してこちらを包囲。
悩む必要も無いほどに、あからさまな状況だった。
「早ければ一年後、と言った所かしら」
「流石にそんなに早くは無いんじゃないですか。僕の好みだと、七年後くらいが妥当かと思うんですけど」
「あら、貴方ったら意外とのんびりしているのね」
「そうでもないでしょう。僕がこれから準備してこの状況を作るとしたら、最低七年は掛かるって事ですし。現実には、二年後辺りが妥当じゃないんですか」
「そうね、きっかけもある事だし。一年半後、辺りが丁度じゃないかしら」
ラシャラが呻いている横で、アマギリとフローラが盤上を眺めて談笑している。
―――何かの事を、何時かの事を。
「のう、従兄殿」
それまで、二人の話を聞き流して盤上を睨んでいたラシャラが、ぽつりと呟いた。
「何です、従妹殿?」
アマギリは何を聞かれるか予想はついていると言う風に、気楽な声で尋ね返した。ラシャラは、重い言葉で先を続けた。
「決定的な事態への布石は、やはり……キングがクイーンと交換されること、かの?」
「―――ああ」
アマギリは頷いた。
「些か、余興で語るには不謹慎すぎましたか?」
当事者の前だからこその例え話だったが、だからこそ当事者の前で語ることでもなかったかと、アマギリは今更ながらに思った。だが、ラシャラは苦いものを飲み込むように微笑んだ後で首を横に振った。
「いや、良い。―――避けては通れぬ話じゃしの。元々妾が此処に居るのも、それを話すためじゃ。ただ、いざとなっても覚悟が出来ておらぬ自分に呆れておったに過ぎん」
いずれそうなる、と常から考えざるを得なかったラシャラではあったが、そうであるが故に漠然とそれを遠いものとして考えていた部分があった。
しかしそれは、彼女の年齢からも、置かれた状況からも仕方が無いといえるだろう。
「現実には、まだ始まってもいない問題だから、仕方ないと思いますけど」
「そうよねぇ、自分の親と近いうちに死別するなんて話を、笑顔で語るような子に王様になられてもきっと困っちゃうし」
「……だから、直接言わない様にしてたのに」
避けていた言葉を朗らかに語ってしまうフローラに、アマギリは苦笑しか出来なかった。
この人なりの優しさなんだろうなと、無理やり思うことにして話を進める。
「まぁ、ようするにそういう話ですね。敵は国の全てを手中に納めた宰相閣下。対して、我らが女皇陛下―――今は、皇女殿下ですが―――が動かせる手勢は、僅かに聖機師一人」
「しかもぉ、内通の危険がある爆弾を抱えた駒だけどねぇ」
アマギリの語る言葉に、フローラが毒のある言葉を繋げる。それは、流石にラシャラにも聞き逃せないものだった。
「内通、じゃと?」
「あら、信じられない? でも、恋に生きる女の子って、結構予想外の行動を取ったりする者よ」
「どうしてアレに惚れてるんですかね、あの人……」
フローラの言葉に、アマギリが場末の酒場でグラスを傾けているかのようなぶすくれた態度で呟いた。
別にアマギリも、話題に上がった誰かの想いが自分に向いていたらとは思わないのだが、話題に上がった誰かが誰かから想いを向けられているという事実は、何とも理解しがたい現実だった。
「貴方と違って、可愛げがあるからじゃないかしら? 多少隙のある人のほうが、女から見たら好印象に映るもの」
「いや、叔母上。あの二人の場合はそう言う物でも無いぞ。アレは……そうじゃの、お互いがお互いを見ておらぬ。いや、見ているのに見ていないフリをしていると言うべきか。どちらにせよ、真っ当な関係とは言いがたい。―――ついでに、件の男は既に、可愛さ余ってと言う段階まで来てしまっておる」
「まぁ、成績は彼より良いですからね、彼女。諸々有って飛び級するって話もでてるんでしょ? あのプライドの高い男が、女の下につく事なんて納得する筈無いですもんね」
「お主、微妙に僻みが入っておらんか?」
「ダメよラシャラちゃん、本当の事言っちゃ。男なんてプライドが高いだけの生き物なんだから」
「―――うるさいよ、そこ」
微妙に図星を突いていたらしいラシャラとフローラの言葉に、アマギリは頬を引き攣らせる。
どうもやはり、この手の話題は自分には分が悪いと思い、話を戻す事にした。
「で、どうします。女王陛下は僕にこの辺の話をさせるために呼んだんでしょうけど―――まぁ、当事者はラシャラ皇女ですから。ここで終わらせても……」
「いや、良い。続けよ。アレコレと理由をつけて思考放棄をしていられるほど、妾には余裕が無いからな。」
「あらご立派」
「ええい、茶化す出ない叔母上。現状、妾は突破口があるかもしれぬのなら、例え僅かな蜘蛛の糸でも掴んでいかねばならぬのじゃからな」
「蜘蛛の糸、ですか」
歯を覗かせて叔母の戯言に言葉を荒げるラシャラを見て、アマギリは苦笑した。
「どちらかと言うと、その場合蛇の尾をつかむ事になりそうなもんだけどねぇ。―――まぁ、良いか。さて、じゃあ話を戻しましょうか。予測されうる事態、その対処法について」
「そうね、考える時間はたっぷり上げたもの。もう充分でしょう?」
少し気取った風に口火を切ったアマギリに、フローラが楚々とした態度で注釈を入れた。
話す内容を考えるために、アマギリが微妙に話題を脱線させて時間を稼いでいたのにも気付いていたらしい。
そうなのか、と言う視線を向けるラシャラに、アマギリは微妙な表情で頷いた。
「まぁ……うん。ようするにそれが僕のやり方だし」
「時間を稼ぐ事が?」
「機を伺う事、ですかね。正確には」
勢いで踏み出して良い目に合ったことが余り無いのでと、フローラの問いにアマギリは答えた。
「ですからラシャラ皇女。それを踏まえて僕の私見を告げると―――」
「うむ」
盤上を指し示すアマギリに、ラシャラも釣られて視線を向ける。
そこには、絶体絶命、完全に敵軍に包囲された自軍の姿があった。
「機を伺うにしろ、その間に包囲が完了して殲滅されそうな有様じゃが、どうするのじゃ」
どんな詐欺的手法で脱出するのか。ラシャラは楽しみだった。しかし、アマギリの言葉は以外なものだった。
「どうにもなりません」
「……何?」
「そりゃそうよねぇ。こんな状況が完成された後に機を伺っても遅いわよぉ」
目が点になるラシャラに対し、フローラは当然とばかりに頷いた。アマギリも、あっさりと肩を竦めた。
「そもそも、どの駒を動かしても速攻で取られるような配置ですしね。で、壁を除けられてチェックされて投了ですよ」
「それはつまり……妾に未来は無いと?」
自身の駒―――クイーン、ナイト、ルーク。その三つ。どれも有用に使えば戦局を覆す事すら可能な力を秘めているが―――最早、駒単体の能力でどうにかなる状況ではないと、アマギリは言った。
「この状況から、こちらがチェックを掛けるのは不可能です」
「―――そうねぇ。チェスとしては投了するしかないわね」
狡賢い従兄にも、戦略眼の高い叔母にもはっきりと”勝ち目が無い”と断言されてしまい、流石のラシャラも目の前が真っ黒になる。
つまるところ、自身を待ち受けている将来は。覚悟は、きっと頭では理解できていた筈なのに、心がまるで追いついてこない。
体が震えて崩れ落ちそうになるラシャラを、しかし気楽な声が押し留めた。
「だからまぁ、戦略の一つとして盤から降りるってのもありですね」
ひょい、と。
アマギリはラシャラの側の三つの駒を、盤から退けてしまった。
「な、……なんじゃとぉ?」
「そんなに驚く事でもないでしょ。そもそも、お互い求めているものが違うんだから、同じ土俵で勝負する方がおかしい。そもそも、既にキングが無い以上相手はチェックを掛けられませんしね」
「いや、確かにそうと言えばそう、なのじゃが……」
だからと言って、勝手に盤から降りて勝負を流すなど、詐欺もいいところである。
「だいたいにして、あの者が妾が勝負を降りるのを認めるか?」
盤を降りても放置しておく筈が無いと、ラシャラは敵の駒を弄って、テーブルの上で再び包囲陣を完成させる。
しかも今度は、盤の区切りが無い故にきっちりと円周上に囲まれてしまっている。
「あの者が事を起こせば、蟻の這い出る隙間もなかろうよ。包囲がしかれたとあらば、袋のねずみは確実。逃げ場などあるまい」
「そうよねぇ。囲んだ後は、こうかしら」
ラシャラの重々しい言葉に頷いて、フローラは包囲陣からナイトと二駒のポーンを抽出して囲いの中のクイーンに向けて接近させた。
さあ、こうなったらどうすると、アマギリに目で問いかける。
「そういう時は、こうですね」
コン、と。語り始めたときから手に持ちっぱなしだった黒のナイトでポーンの一駒を倒した。
「こっそりと傭兵でも雇っておくのが一番ですね」
駒は黒でも、白の味方らしい。
「でも船の中に隠しておける伏兵なんて、それ一騎くらいでしょう。そうしたら、数の不利で……こう」
フローラは攻めてる側の黒のナイトで、アマギリが伏兵だと言い張る新しく登場したナイトを払う。
「それでついでに、こう。……駄目押しは絶対有ると思うのよ」
更に包囲の中からビショップの駒をクイーンに接近させる。
「そう来ますか。じゃあ、こうしましょう。まずはこっちのナイトでポーンを撃破。―――それから」
コン、と。白のナイトで黒のポーンを倒したアマギリは、何と倒したポーンを起き上がらせて攻め手の黒のナイトの前を遮った。
「懐柔するつもりか。……また、無茶な事を」
「そんな事は無いでしょう。駄目押しの伏兵を忍ばせておくような配慮の出来る人は、いざ失敗した場合の可能性も当然考えています。―――であるなら、主殺しに参加させるような兵隊は何も知らされていない、失敗した場合背後を探られない人間である可能性が高い。上手くやれば、懐柔は不可能じゃないかと。後はその間に、伏兵のナイトに復活してもらえば、と。―――ほら、何しろこっちは守る側。城にこもってますから補修の準備くらい完璧でしょう?」
相手の駒を自陣に引き入れるなど、最早将棋のルールも混じり始めているアマギリの無茶な言葉に、しかしフローラは肯定の意を示した。
「そうねぇ、聖機師さえ生きていれば、スワンの積載可能数はそれなりだものね。実際に登録された聖機師が一人だけだったとしても、王家座乗艦ともなれば、予備機としてあと二機はある筈よ」
「ああ、オデットも五、六機積んでありましたっけね」
アマギリは自身の借りている船の事を思い出して、頷いた。その後で苦笑してしまう。
「でも、懐柔しようとして、逆にこっちの聖機師が懐柔される可能性もあるんですよね。こういう裏方仕事の指揮を取るような便利使い出来る手駒って、向こうも限られるでしょうし」
「そうねぇ。―――そういえば、貴方も四月に襲われたものね」
「あ、報告書読みましたか? 多分本人だと思うんですけど。―――そういえば、先月末にも爆殺されかけましたしね。まぁ、証拠は無いですが」
お陰で慰謝料も請求できませんでしたと朗らかに語るアマギリに、それは残念ねとフローラも応じる。
ラシャラは礼儀正しく二人と視線を合わせないようにしていた。
盤面、と言うか今や卓上一杯に広がった戦域図に目を落とす。
味方は敵が攻めてきたお陰で包囲に隙間が出来ている。そして、伏兵や寝返った者も含めれば、味方は三体。
逃げ切れない事も無い―――か。しかしやはり、ネックとなる事が一つある。
「……裏切ってくれるなよ、としか言えぬのが情けないわ。聖機師一人すら満足に忠誠を得られないとあらば、国ごと奪われて当然といえるかもしれぬの」
ラシャラは、白のナイトの駒を撫でながら、自嘲気味に笑った。
フローラは涙を流さずに泣いている様にも見える姪をチラリと見た後で、アマギリに視線を送ってきた。
「それで、この後はどう動くのかしら?」
アマギリは肩を竦めて応じた。
「特にどうも―――って感じですかね。一度攻勢を防ぎきれば―――特に、女王陛下が指定する一年半後辺りに仕掛けてきたものを防げたのであれば、向こう暫くは安全の確保は出来ますから。その間に、状況の再設定って所じゃないですか」
これ以上この場で考えても行動を固めすぎて制限してしまうだけ出しと語るアマギリに、フローラもゆっくりと頷いた。
「そうねぇ。―――少し、ファクターが少なすぎるものね」
「現実だったら、こんな風に敵と味方だけにははっきり別れませんからね。見えないところに第三勢力が居ないとも限りませんし」
そう言いながら、アマギリはテーブルに広がった駒を、整理していく。
その後で、考え込むラシャラに、言った。
「そう言う訳なんで、納得していただけましたか?」
アマギリの問いに、ラシャラは考え込んでいたままの顔を上げて、疲れたように笑って頷いた。
「うむ―――まぁ、の。状況を利用して、妾が上手くやって見せればよいという事じゃろうな」
諦め混じりのその言葉に、しかしアマギリは首を振った。
「いえ、その事じゃなくて」
チェスの駒を、盤上にゲームを開始するための初期の位置に配置しなおしながら、アマギリは笑った。
「あの状況から、”僕のやり方で勝利する”方法、理解できましたか?」
問われて、ラシャラは盤上を見返す。
そこには、最早先ほどまでの投了状態の盤面の姿は何処にも無くなっていた。
駒は全て初期は位置に戻されており、次のゲームを何時でも始められる状況―――つまり、以前のゲームを取り戻す事は不可能な状況。
ラシャラの目が、点になる。それに対して、フローラの言葉はあっさりしたものだった。
「私は勝ちを奪われた―――って感じかしらねぇ」
「まぁ、僕としては乗ってくれて助かりましたって所ですけど。―――気付いてましたよね、女王陛下」
アマギリの問いに、さてどうでしょうとフローラは微笑むばかりだった。
ラシャラは、漸くアマギリがやっていた事を理解した。
つまり、わざとチェスの勝負から逸脱させていき、勝負の結末を両者の思考から追い払ってしまうという、それがアマギリのやり方だった。
「―――なるほど、ダグマイア・メストが嫌う訳じゃ。お主、あくど過ぎていかん」
「そんな事は無いわよねぇ。今のは、目の前の状況に捉われ過ぎたラシャラちゃんの負けよ」
ねぇ、と楽しげに微笑む視線。よくも嵌めてくれたなと忌々しげに睨む視線。
その二つを同時に受けながらも、アマギリは肩を竦めるだけだった。
「まぁ、大事なのは―――自分の勝利条件を忘れない事、ですね」
後日に至るまで、ラシャラの思考の片隅には常にその言葉が残っていた。
・Sceane 21:End・
※ 超☆未来予知タイム。
……と、思わせてオチは天丼的なノリで。