・Scene43-6・
「あああああああああああアアアアアアアアアアアァァァァァぁぁぁぁぁぁああああっっっっ!!!!」
頭が割れそうで。
体が燃えそうで。
そして、心が壊れてしまいそうだった。
「あっ、ぎっ、がっぁあぁああああああぁあアアアアアアアアっっ!!」
「剣士! しっかりしなさい剣士! アンタ、よくもっ!!」
誰かの声。近づいて離れていく、誰か大切な人の声。
守らなきゃ行けない人の―――何を守るべきなのかが、もう、解らなくなりそうで。
行かないで欲しいと手を伸ばしたつもりで、その実、剥げた石畳の上をのた打ち回って呻いているだけだったのかもしれない。
最早自分の状態すら、考えられないほどに、―――体も、心も、壊れて崩れ落ちてしまいそうだった。
「フン。ナウア・フランの娘か。目障りな。―――ドール」
「―――……っ」
「ドールッ!」
躊躇い、怒り、それから、砂利を踏みしめる音と、空を切る―――。
「っ、こんのぉっ!?」
「―――じっとしてなさい」
「誰がっ!」
「お願いよ、キャイア」
「―――え? ……あ、なん、で―――? っ、がぁっ!?」
一瞬の空白、ぶれるリズム。
躊躇いと戸惑い―――それから、打撃音。地に叩き伏せられ、大切な筈の人の、うめき声。
起き上がらなくちゃいけないと思って、それから、何故起き上がらなければいけないのかが、解らなかった。
大切な人が打ち倒されたのに?
「な、ん―――ぇさ、……が」
「良いから、もう休みなさい」
―――でも、大切な人を打ち倒した人も、大切な人だったから。
解らない。
何も解らない。何も解らなくなっていく。
頭がぐらぐらして、心はさっきからずっとグチャグチャで、空気が肺に届かず、荒い息が喉を焼く。
おぞましい程の寒気と焦がすほどの熱が混ざり合い、おかしくなりそうだった。
「中々に粘る。―――粘った所で、救いなど何処にも無いというのに」
その声は、聞いては駄目だ。
壊れそうな心が、そう叫んだ。
その後で、その声以外の音は、聞く必要は無いのだと理解した。いや、理解したくなかった。どっちが正しいのか、もう解らなかった。
いや、解っている、解っている筈だと、きっと歯を食いしばりながら、たぶん、拳を地に打ちつけながら、出来れば体を起こしている事を願い、睨みつける。
―――紅く、暗い、その目を。
――――――見てはいけないと知っていただろう?
「命令されれば逆らえないのだよ。―――我等は、そのように作られているのだから」
―――なぁ、と。誰かを侮蔑するかのように問いかけている。
地を踏む音。床を叩く音。ゆっくりとゆっくりと、近づいてくる音。
もう、目の前。しゃがみ込むのが、見えたのか―――音で聞いたのか。
最早それすら解らないほどに、心が追い詰められていたのだろう。
「大丈夫よ、剣士」
だから。
「剣士には私がついているわ。―――ううん」
こんな簡単な。
「私には、剣士がついていてくれる―――そうでしょ?」
罠に絡め取られる―――。
”勿論だよ。メザイア姉”。
だからそんな、無機質な色の無い自分の言葉に、安堵を覚えるほどに恐怖した。
恐怖して、そしてそのまま、心は凍りついていく。
もう、戻れないのかな。
「何処にも戻る必要なんて無いのよ。私がここに居るのだから」
ああ、そうか。そう、だよね―――。
「……どんな、状況だよこれは……」
「剣士に、メザイア先生、キャイアさん……それ、に」
「ちょっと待って、あれ、ババルン・メストなんじゃ!?」
悲鳴が聞こえたのだ。本来、苦痛を面に出さないはずの少年の、悲鳴が。
だから、従者と親友の女性二人に支えられて、最早ボロボロに崩れ落ちて坂に成り果てた長い階段を、可能な限り急いで降りてきた。
階段の中腹辺りで漸く見えた、アマギリが目撃した桟橋の光景は、想像を遥かに飛び越えた異質な光景だった。
うつ伏せに倒れたまま、背中を真っ赤に染めた剣士。
その背中に両手を当てて、回復亜法を使用しているメザイア・フラン。
その二人から少し離れた位置で崩れ落ちているキャイア・フラン。
そして―――。
「ほぅ、異世界の龍か。 ―――役者は揃ったと言った所か?」
階段の上に呆然と立つアマギリたちを嘲笑と共に出迎えた、ババルン・メストの姿があった。
彼等の傍には、四肢をもがれた聖機人の残骸。コアユニットは外側から打ち壊されたような有様で、中には、聖機師の姿は無かった。
「どんな状況だ……? 剣士殿が、ババルンに負けた?」
呟きながら、そんな馬鹿な話ある訳無いと自らの考えを否定する。
確かにあそこに居るババルン・メストの気配は異様の一言だったが、しかしそれでも、完成された樹雷の闘士である剣士が負ける姿は思い浮かばない。
だが事実として剣士は臥せっている。そしてそれを癒しているのがメザイア・フラン。倒れ気を失っているらしいのがキャイア・フラン。
―――キャイアは誰に倒された?
何度か剣を打ち合わせた事があるが、キャイアもまた優秀な聖機師であり、そして武芸者としての腕も良い。王族の護衛聖機師の地位は伊達ではないだけの力量はある。
それが、見える限り外傷一つ受けないまま倒されるなど―――一体相手は、どれほどの力量か。それとも、どれほどの罠を講じたのか。
剣士が倒れていると言う異常事態に、更にどのような力を働かせてババルン・メストが居るのか。混乱以外しようの無い状況に、アマギリが呆然としている傍で、アウラがやはり、戸惑いを多分に含んだ声で呟いた。
「―――メザイア先生は何故ここに居る? 剣士を追い抜いて中庭に上がった時までは、桟橋には誰も居なかった筈だ。桟橋へ続く階段は此処しかない筈……いや、それを言ったら」
ババルン・メストもそうか。
全く訳がわからないと、アウラは苦々しく表情を歪めた。
「とりあえず……殿下」
「なに?」
背を支えてくれていた従者が、半身前へと踏み込みながら、アマギリの耳元で囁いた。
「―――この状況、この位置、良く解らないんですけど、凄く拙くないですか?」
桟橋に続く階段は一つ。階段の下では倒れた剣士とそれを―――アマギリ達に一瞥すら送らずに―――治療しているメザイア。その奥に、ババルン。
その、更に奥に。
「スワンまで突破するのは、この位置だと……」
敵が邪魔をして難しいだろう。ワウアンリーは、間違いなく主を自らの身で隠すようにしながら、苦しそうに呟く。
言われて、アマギリは一瞬考えた。
ババルン・メスト一人を”抜く”くらいなら、それほど難しくないのでは?
「なに寝ぼけてるんですか、殿下」
表情から主の考えを瞬時に理解したのか、ワウアンリーは酷く慌てた調子で囁いてきた。
「メザイア・フランは貴方の”敵”でしょう!?」
ガツンと、頭をハンマーで殴られたような衝撃で持って、その言葉は届いた。
重い体に、覚束無い足取りの中で、ぼやけていた思考が急速に冷えていく。
そう、メザイア・フランは―――少なくとも確実に、ユライト・メストとの繋がりだけはある筈。
そしてそうであるならば、確かにアマギリ・ナナダンの敵と証するに相応しい。
「ユライトは……」
「気配は無いぞ。少なくともこの近くには。―――スワンの中の生徒達が慌てて動き出したようだが」
ババルン以上に最優先排除目標である男の影を探して視線を彷徨わせたアマギリに、アウラがそっと告げる。
彼女の気配察知能力は、種族的な意味もあって非常に信用の置けるものだったから、アマギリはソレにすぐさま納得の頷きを返し―――そしてそれから、折角スワンに乗船済みだったらしい生徒達が動き出そうとしている事に焦燥を覚えた。専用の稼動桟橋を用いねば簡単に乗り降りできない筈だから、迂闊に外に出るような真似はしないでくれると信じたいが―――とにかく、少しの焦燥を覚えるには充分な情報だ。
でもそれは、此処を何とかすればどうとでもなる話だ。
少し首を払った後で、今は気分を切り替える。従者の忠言の意味をかみ締めるために。
メザイアは敵。
そう、当然の話だ。
居なかった筈の人間が突然現れれば―――メザイアが姿を消していた事は、アマギリは聖地襲撃の第一報を聞いた段階から聞き届けていた。元々不信感を持っていたから、人を貼り付けておいたのだ。
ユライト・メストともども、バベルの登場とともに何処かへと消えたと、そういう情報だった。
そこに、意味が無いとは思わない。彼らは、言動行動共にアマギリにとっては怪しすぎたから。
そして、唐突にこの場に現れたと言う事にも、同様に意味はある筈だ。
ババルン。傷ついた剣士。倒れたキャイア。癒すメザイア。
何がおかしい?
何かが欠けている気がする。メザイアとババルンがここに居る理由―――いや、そうじゃない。
眉根を寄せて、目を細めた時―――視界の片隅に、入るものがあった。
”中身が空”の、聖機人。
聖機師。聖機師。聖機師。そして、聖機師ではない人間。
剣士とキャイアである筈が、無い。
人間。人造人間のハーフ。人造人間。それから――― ユライト・メストは人造人間で、そしてナウア・フランは聖機工。
ありえない話では、無い。
「―――メザイア・フランも人造人間」
え?
目を丸くする周りの少女達とは裏腹に、どのような聴力でアマギリの呟きを聞き届けたのか、ババルン・メストが呵呵と哂った。
「相変わらず良く見る。―――ユライトが警戒するのも当然か」
「死んだロンゲの話なんかどうでも良い―――っ、クソ、思いつかなかった僕が馬鹿だったか。アンタとユライトの存在があれば、解ってもおかしく無かったってのに」
歯軋りせんとばかりに唸るアマギリとは対照的に、ババルンは威風堂々とした余裕のある笑みを浮かべていた。
そのまま、肩に掛かったマントを払い、下ろしていた手を掲げ持つように持ち上げる。
その動作に従うかのように、フラリと機械的な仕草で、剣士を治療していたメザイアが立ち上がる。
伏せた顔で、表情を見せぬまま―――それが、不気味に歪み、変化を見せる。
黒いドレス、長い髪。浮世離れした、白い肌。
「―――なに、何なのよこれ。メザイア先生……?」
最早理解が限度を超したとばかりに、リチアが震える声で言う。
彼女達の眼前で、彼女達の良く知るグラマラスな肢体の女性が、彼女達のまるで知らぬ、ドレス姿の小柄な少女へと姿を変えたのだ。
混乱する少女達の狭間で、アマギリだけが大きく舌打ちした。
「―――お前が、”ドール”か」
「その通りよ、異世界の龍。お前にお前呼ばわりされ言われも無いのだけどね」
「僕も人形風情にお前なんて呼ばれるのを許した覚えは無いな」
無機質な、混線状態の通信機越しに聞いた、そのままの声で、少女はアマギリを見据えて応じた。
ユライトが隠匿し、ダグマイアから洩れた名前。由来のわからぬ、人造人間。
「姿の偽装まで可能なんて、聞いてないぞあのロンゲめ……」
「ユライトは貴方を嫌っているからね。必要以上の情報を漏らす筈が無いでしょう?」
その正体が、メザイア・フラン―――いや、メザイア・フランの正体が、目の前のこの”人形”なのだろうか。
そのあたりの事情は詳しいものに聞かねば解らないだろうが、ともかく、これでキャイアが目立った傷一つ無く昏倒している理由も解った。剣士が傷を負った理由も。
突然親しい人間に攻撃されれば、予測し得ない事態であれば、いかな剣士とて、容易に致命傷を負うだろう。
キャイアは―――肉親が目の前に突然現れれば、当然。
「待て。―――何故剣士殿を治した」
一つの状況が理解できた瞬間に湧き上がった次の疑問。
そしてその疑問の答えは、どうしようもなくおぞましいものに思えて、アマギリの顔は焦燥に囚われていた。
不意打ちで剣士を倒す―――それは良い。おそらくユライトにでも聞いたか、それ以前に元々剣士はババルン側に使われていたから、その能力が敵側に存在していれば、排除を思いつくのは当然だ。
だが、何故癒す。傷つけたのは自身等だろうに、なぜ、ババルンに従う人造人間が、敵である剣士を癒す。
―――そんなこと決まっていると、彼が思いつくのと。
ニヤリと彼が唇を歪ませながら腕を掲げるのと。
そして、フラリと機械的な動作で彼が立ち上がったのは。
全てが、同時の事だった。
そして彼は理解する。
これがそうだと。
立ち上がった彼の、無機質な瞳を、暗く沈んだ眼に見据えられて。
これが恐れていたものの正体なのだと。
フラリと揺れる、彼の体。
「けん、し……?」
従者の呟き。咄嗟の思考に、動かない筈の身体は、反応してくれた。
「ワウっ、下がれ!!」
怒鳴る声と共に、自身を支えてくれていたワウアンリーを背後に突き飛ばす。
「アマギ、―――っ!?」
超越的な反射神経を有するダークエルフの少女の理解よりも早く。
眼前、視界一杯に、飛び上がり、腕を振り上げた剣士の姿が―――!
振り下ろされる鍛え上げられた拳。未熟な闘士であるアマギリに防げる筈もなく、だから―――防ぐには、それ以外の方法を使う他無い。
動作など必要ない。必要なのは唯一つ―――望む事。
其処に、在れ。
三枚花弁の光の翼よ―――!
「―――っ!?」
巻き上がる激しい衝撃波。吹き散らされた紫電は、ただの拳の一撃によるものとは考えがたい威力。
樹雷の皇子。頂神の加護。或いは、鍛え磨き上げた彼自身の才気故か。
ガイアの放つ粒子砲すら苦もなく防ぎきった光鷹翼が、剣士の振り下ろした”ただの拳”に震えて弾けた。
「づぁ―――っ!?」
「っく、アマギリ!」
接触のコンマゼロ以下の数瞬しか保てなかった光鷹翼のいなし切れなかった衝撃を一身に受け、アマギリは大きく足を取られて背後にたたきつけられそうになる。
肩を貸していたアウラが、背後に居たリチアが、瞬間的に巻き起こった突風の中で足を踏ん張り押し留める。
だが、衝突により発生した威力を受けたのは剣士も同様だったらしい。
空中に跳ね上げられた剣士は、くるりと器用に身を捻りながら、先ほどまで居た位置―――ババルンたちの前へと、着地した。
「何をするんだ、剣士!?」
アマギリの肩を抱きなおしたアウラが、纏まらぬ思考そのままの焦燥をぶるけるように、叫ぶ。
しかし、言葉を叩きつけられた剣士は無反応のまま。少し伏せたままアマギリたちを見上げる視線は余りにも無機質なそれだ。
「けん、……?」
アウラは射竦められたように、たじろいて、言葉を失う。その横で、アマギリが怒りもあらわに形相を歪めて、吐き捨てた。
「人形どもがっ……剣士殿を、巻き込んだな!?」
「巻き、込んだ……?」
突き飛ばされて尻餅をついて、漸く恐る恐ると立ち上がったワウアンリーが、眉根を寄せる。
未だかつて無いほどの怒りに満ちたアマギリの顔。無機質に沈んだ剣士。
訳の解らない状況に、少女達が答えを出すよりも先に、ババルンが哂った。
「巻き込む……? 異なことを。元よりこの少年は、異世界の龍よ。お前が言う所の、生まれついての”人形”だぞ? 元より使われるために産み落とされた存在だ。―――ゆえに、今のこの状況こそが、正しい」
「ざけんなコラ! 堕とし、辱めるだけでも万死に値すると言うのに、壊れた人形風情が、樹雷の血脈に連なる皇子を侮辱するか!?」
千殺しても収まらない程の怒気を込めて、ババルン・メストに叩きつける。
だがババルンは、アマギリの周りに居た少女達が、自身等が言われた訳ではないと言うのに恐れを示すほどの怒気を受けても、不敵に哂うのみだ。
「怒るか。―――フン。さしずめ龍の逆鱗と言った所か? ―――だがだからと言ってどうすると言うのだ、地に堕した龍よ。最早翼も手折れ、動く事もままならぬほど消耗していると言うのに―――それともまさか、貴様は自身が此処で死なないとでも思っているのか? ―――やれ」
「―――っ!!」
顎で指図する姿に、憤怒を覚えている暇すらない。
ぞんざいな命令の言葉が階上に居るアマギリたちに届くよりも先に、剣士は低い体勢で突進してきた。
想像を絶する速度。かつて樹雷の修練場に於いて幾度なりと味わったそれよりも尚早く。
ゼロコンマ以下の間隙に、思考を走らせる。まるで走馬灯の如く、突かれ、蹴られ、抉られ、ねじ切られる自分の―――いや、大切な少女達の姿が思い浮かぶ。
絶望的なほど真実味の帯びたその幻想を―――アマギリには、止める術が。
「剣士―――っっ!!」
止める術が、あるのに。
無謀にも、彼が行動するよりも先に、動いている少女達が、彼の視界から柾木剣士の姿を隠す。
小さな背中、細い体。―――僅かな隙間、抱きとめられる自分の身体、酩酊する思考、展開位置の再設定が―――間に、合わない!?
だが、都合よく奇跡が起こるものなのか―――それとも、予定調和のことか。
いやさ、それこそ彼が彼である所以なのだろう。
超速の踏み込みから突き上げられた拳は、咄嗟に迎撃しようと前へ踏み込んだアウラの鼻筋に突き刺さる寸前のところで、静止していた。
「なっ―――?」
「……けん、し?」
引き攣った声で、眼前の拳を凝視するしかないアウラ。アマギリを抱きしめたまま、呆然と声を漏らすワウアンリー。
拳を寸前の所で止めた剣士の瞳は、相変わらずの光を持たぬ無機質な―――否、僅かに、震えている。
視線がぶれる、瞳が揺れる、痙攣するように瞼がゆれ、脂汗が頬を伝うと共に、それは全身の痙攣へと繋がっていった。
「―――ぁ、あぁ」
うめき声が、ガチガチと震え噛合わない歯と歯の間から洩れる。
ゆらりと、拳を突き出した姿勢が崩れる、蹈鞴を踏むように、破砕した階段を、転げ落ちるように、落ちていく。
坂を転げ落ちる刹那。突き出した拳が解けて、それが救いを求める手のように、少女達には見えた。
「けんっ―――!?」
思わずと、手をさし伸ばそうとするアウラ。
「剣士!」
しかしそれより一歩も二歩も早く、いっそ解りやすいほど取り乱した姿勢のドールが、剣士の体を抱きとめ、奪い取った。
「うぁ、あっ、ああああぁあああアアアアぁあっ!!?」
ババルンの元まで一気に引き下がったドールの腕の中で、我を失ったかのように剣士がもがき悲鳴を上げる。
「剣士、剣士! しっかりして!」
「あぁああああああああっ!!? あぁ、アアアアアアアアアぁぁあああ!!」
自身を抱きとめる細い腕を振り解かないとばかりに腕を、体を振り回す剣士を、ドールは必死の形相で抱きとめ、声を掛ける。
その姿に、本物の”情”以外のものを感じるのは不可能だった。
「フン。まだ束縛が緩いか」
戸惑うアマギリと少女達も、必死の顔のドールの姿にも、一念の情も浮かべる事無く、ババルンはつまらなそうに鼻を鳴らした。もがき苦しむ剣士の姿すら、冷静な観察対象の一つにもならないほどに、興味が沸かないものなのかもしれない。
「まぁ、良い。折角の拾物がこれで壊れてしまっても些か面白みが足りん。―――、一旦、退くか」
呟くが早い、踵を返し、手を振り上げて肩に掛かったマントを跳ね上げる様な仕草を取ったその瞬間―――消えた。
「な、に―――っ!?」
ババルン・メストが、ドールと、そして彼女が抱きとめる剣士と共に、この場所から、消えていなくなった。
「消えた……?」
「逃げられ、いや……助かった? 見逃された……?」
「……剣士、操られたって考えれば良いんですよね?」
「あの変身したメザイア先生は、ようするに敵―――で、良いのよね? それに、野生動物が……」
「ババルン・メストは……そもそもアレは、生き物なのか? 気配が……」
ふらつくアマギリの体を支えながら、状況を整理するために鋭い声で言葉を交わす少女達。
その中でアマギリが一人、愕然とした顔で、剣士達が消えていなくなった、皹だらけの石畳を凝視していた。
まるで力が入らない筈なのに、拳を皮が破けるほどに握り締めなければ気が済まないほどの、絶望的な焦燥と怒りが心を焦がす。
「ふっざ、けんなぁ……っ!!」
激情に駆られる。力の入らぬ体を、無理やり突き動かしても納まらないほどの。
「おい、アマギリ……っ!?」
ギリギリと体を軋ませるアマギリの姿に、少女の一人が心配の声をかけても、無茶に無茶を重ねていると解っていても行動を止められなかった。
「逃がすか、よぉっ!」
亜空間航法システム、起動。座標指定。データフォルダ内の特定人物を追跡捕捉。
探査開始。探査実行中。実行中―――実行中―――実行中―――探査終了。
探査機能の実行中に妨害処理を確認。妨害解除機能の発動に失敗。妨害解除機能に深刻な障害を確認。至急、航行機能の自己保守的検査を―――。
「こんな時にバグんなっ……ってか、ジャミングされた―――だと?」
三次元を超えた視界から、柾木剣士の姿を完全に見失っていた。視界を、認識を切り替えた瞬間までは見えていたのに、捕捉しようとした瞬間、アマギリの見える範囲から剣士達の姿が消失した。
「人形がっ、ふざけやがって!!」
「アマギリ、おい、どうしたっていうんだ!」
怒りに肩を震わせるアマギリを、アウラが必死で呼びかける。彼女達には見えない”何処か”を見ようとしているその瞳は、明らかに普通ではなかった。
「地下だ……っ!」
「なに!?」
「ヤツは地下に逃げた、直ぐに、追う……!」
呼びかけられた事にも果たして気付いているのか、アマギリは気力のみで体を動かし、立ち上がり、そして這いずる様に歩を進めようとする。
当然、一歩目から崩れ落ちそうになって、それをリチアが無理やり抱きとめる形となった。
「ちょっと、アマギリ何を言って……!」
「離せっ…・・・! 早く、剣士殿を」
心配の面持ちで言うリチアの言葉を、振り切るように一方的に言い放つ。
いっそ錯乱しているようにしか見えない程、他人の話をまるで聞かない、それが、本質的な彼に一番近かったから―――誰かが何かを言う前に、動く少女が居た。
パァンッ!
乾いた音には為り切らない、少し、湿った響き。
熱、振動、ぶれる視界。叩かれたのだと、気付いた。
「いい加減にしてください! 今がどういう状況で、自分がどういう状態なのか、ちゃんと認識して!」
「―――あ、ワウ?」
驚きは、頬を叩かれたアマギリだけではなかった。
涙目で頭を振って叫び、言葉をたたきつけるワウアンリーの姿に、誰もが一瞬、状況を見失った。
ワウアンリーは叩き振り切った手を引き戻す事無く、そのまま、アマギリに向けて伸ばし、叩いた頬と、反対の頬を、なぜるように、震える手で。
「あたし達のためにカッコつけたんだったら、最後まで、あたし達のためにカッコつけきって下さいよぉ……っ! 貴方は、アマギリ・ナナダンなんですから、最後まで、ちゃんとっ……!」
他の世界の何処かの誰かとしてではなく、此処に居る、この世界のアマギリ・ナナダンとして。
「また、酷い顔、してるな……」
目の前で泣く少女の事か。それとも、その少女の瞳に映った自分自身のことだろうか。
「誰のせいだと思ってるんですかっ……!」
悲しいんだか嬉しいんだか、死にそうなんだか生きてるんだかよく解らない、表現しがたい顔をしていた。
「僕か―――そりゃ、光栄だ……本当に、光栄だよ」
それで気力が尽きた。手を伸ばして頬に触れられたら幸運だろうに、主従のどうしようもないほど無様な会話を黙って見守っていてくれた少女達に微笑み振り向ければ幸いだったろうに、今のアマギリにはそれが限界だった。
「―――っと、おい、本当に大丈夫か!?」
「しっか―――ホントにしっかりしてよ、もう!」
アウラとリチアが、崩れ落ちるアマギリを慌てて引き起こす。それに、無理やりにでも気力を尽くして、”自分”らしく冗談交じりの礼を言わないとと―――そう、思ったとき。
「声が聞こえたっ! ―――近いぞ!」
「ドールは既に回収済みだ! 敵は捕える必要は無い!! 見つけ次第全員射殺だ!!」
ザッザッザッ―――。軍靴が、かつて聖地だった場所を踏みにじる音。学院だった筈の場所には似つかわしくない、粗野で暴力的な声。
それが、彼等の居る桟橋にまで、近づいてくるのが解った。
「ウソ、敵―――っ!?」
「まずいぞ、スワンまで急いでっ、ワウ、キャイアを―――!」
「任せてください、―――よぉっ、とぉ!!」
おそらくは、バベルの崩壊と言う異常事態を確認して地下の遺跡から上がってきた敵兵達だろう。
逃げなければ拙い。ろくな武器も持たず、軍人に狙われれば―――しかも、身動き取れない状態の人間が、二人も居るのだから。
「居たぞ! こっちだ!!」
その声と、銃撃の音はほぼ同時だった。
罅割れた石畳、一歩前までアマギリたちが居た場所を、銃弾が叩く音が響く。
「くそっ!?」
「急がないと―――っ」
ぞっとするような音から、少しでも離れようと少女達はアマギリと、そしてキャイアを抱えてスワンへと走る。
だが、いかにも遅すぎる。
階段の上から、続々と降りてくる、軍服に小銃を構えた兵士達。指は引き金に掛かっており、それを引く事を躊躇いはしまい。
そして当たれば。一発なら平気でも、敵は沢山。弾も、沢山で、滅多矢鱈に撃っても―――当たったら。
死ぬ。
なら光鷹翼で―――駄目だ、まだ”早い”。最後の力を振り絞るのは、後だ。
いやでも、他に方法が無いなら、死を覚悟してでも―――いいや、それは駄目だ。そうしたら今度は、きっと泣かれる。泣かれてしまうのだ。
情けなくも、助けなければ行けない少女達に抱えられていたアマギリは、それを理解してしまった。
泣かせてはならないけど、それでも、守らなくてはならない。翼は使わずに。
どうやって?
―――逃げれば、良い。
勝てないなら、守りきる自身が無いなら―――尻尾を巻いて、無様に逃げ出してしまえば良い。
幸いそれを成す力程度なら、まだ残っているのだから。
ギリ、と奥歯をかみ締める。血の味の混じる口の中に、痛みを感じるほどに。
剣士は奪われ、ガイアは無事、ユライトの死も確認できず―――なんて、無様な。
幾ら自分を罵っても足りないほどの悔しさが身を焦がしながらも、体は動かず、出来る事は限られる。
そして選択肢を思いつく時間すら、足りないのだ。
「畜生っ……っ!」
限界はとっくの昔に超えている。進む先には崖しか―――否、最早崖から踏み出して、足場が無いことに気付いていないだけか。
それでも、覚悟を決めて。
「畜生が……っ! ―――必ず、必ず殺してやるから、首を洗って待ってろってんだっ!」
地面―――その”下”に居る筈の誰かを見据えて、吐き捨てるように呟き、それまで以上にきつく歯を食いしばる。
亜空間航法システム、起動。座標指定。データフォルダ内の特定人物を対象。
―――跳躍、開始。
「―――っ!? なんだ!?」
「ちょっと、は? 何―――?」
突然切り替わった視界に、少女達が悲鳴を上げる。
何処かの宮殿の中のような―――そこは、スワンのブリッジの中。
「ここは―――!?」
「スワンの? 何、今のは……?」
「貴方達、一体……キャイアさん!? ―――アマギリ王子まで!」
転位に混乱する少女達の姿を見て、その場に居た老婆がやはり、戸惑ったような声を上げた。
否、老婆だけではない、スワンのブリッジ内に居た全ての人間が、混乱の面持ちで突然出現したアマギリ達を見ていた。
アマギリは、ぼやける視界を強引に焦点を整えながら、近くにいる筈の老人に向かって叫ぶ。
「家令長! 手筈は整っているだろうな!」
「は? あ、アマギリ殿下、それよりも―――」
「家令長!」
「―――はっ! 万事抜かりなく、殿下のご采配のまま!」
数日振りのそして突然の再会に一瞬の混乱を見せたハヴォニワ王家に仕える老執事は、主の怒鳴る言葉に直立の姿勢で肯定を示した。
「……スワンの出港準備は?」
「出せます。―――ですな、マーヤ殿」
「ええ……それは、勿論。バベルの崩落を確認した後に、生徒達も全てスワンに退避させてありますから」
「おい、アマギリ一体何を」
有無を言わさぬ口調で尋ねるアマギリに、混乱交じりに応じる老人達。アウラの疑問にも応じてやる事無く、アマギリはそれを聞いて覚悟を決めた。
「よし、スワンを出せ―――港を離れ次第、……家令長」
「ちょっと、アマギリ説明を・・・…」
「後でしますから、今は頼みます。リチア―――……生徒会長」
「―――っ。……解ったわ。出航ね?」
突き放すように行動だけを求めるアマギリに、リチアは一瞬泣きそうな顔をした後で、頷いた。そしてそのまま、空いているコンソールに向かい、スワン艦内に出航を知らせる放送を流す。
「……逃げる、と言うことか」
「ええ。逃げますよ、尻尾を巻いて」
簡潔に尋ねるアウラに、顔も合わせずに一言で応じるアマギリ。
「そうか。―――……そうか」
アウラはそれだけ言って、それだけだった。批難も肯定も、一片も示さない。
もしアマギリが横目にでも彼女の表情を伺っていれば、ただ己の不甲斐なさを恥じるのみの遣る瀬無い顔を、見る事が出来ただろう。
「アレを使うって事は……殿、下」
「キミが気にする事じゃない。この後で迎撃をしろって言われても無理だ。―――なら、今やるしかないだろ?」
従者の労わりに満ちた声に、いっそ淡々とした口調で返す。独りで決めて、独りで行う。大切な女性の言葉であっても、曲げる気は無かった。
従者は、頑なな主の意を汲むしかなく、無力な自分に失望を感じた。
「お待ちなさいアマギリ王子。突然出航とは―――」
突然の出現、そして命令―――それに従い動く、少女達。
だが、この空中宮殿スワンを預かる身として、理解も出来ぬ情況のまま、他国の王子に従うわけにも行かないのが、マーヤの立場だった。
この船はマーヤの幼い主と、そして主と共に歩く少年の、大切なホームなのである。
その二人が、どちらも居ない。その二人の、どちらの無事も―――解らないまま。
そんな状況で出航など認められる筈が無かった。
マーヤの放つ空気が伝わったのだろう、シトレイユに所属するブリッジクルー達の間にも戸惑うような空気が満ちる。腕が止まり、様子を伺うような姿勢。
配下の老人が、艦内の制圧に動くべきかとの視線を送ってきているのに、アマギリは気付いた。
時間が惜しい、剣士の束縛があっさりと完了し、そして再び攻めて来たとしたら。その超人的な身体能力をもってすれば、あっさりと此処にまで攻めてくる可能性もあったから―――老人の誘いに、乗るべきか。
一瞬だけそう考えて、首を振った。
「―――ラシャラ女王なら」
それで贖いに何てなるわけが無いというのに、そうしない訳にはいかなかった。
「ラシャラ女王なら無事脱出してハヴォニワ領内に既に入っている筈です。聖地から脱出に成功したら、迎えに行ってくれて構いません。―――剣士殿は」
そこまで言って、意図せず言葉が途切れた。なんと言えば良いのか、自分でも解らず―――結局、何も思いつかないままに直感に任すしかなかった。
「剣士殿は―――剣士殿は、必ず取り戻します。だから」
―――ああ、そうなのかと。
周りの誰よりも、まず彼自身がその言葉に衝撃をうけていた。
自分にそんな気が合った事など、アマギリ自身、今の今まで知らなかった。
だがそうか。取り戻すのか。
―――取り戻して、くれるのか。
そいつはありがたい。そいつは大変だぞと。言った我が身を笑ってしまう。
「―――解りました。出航ですね」
知らず浮かんでいた微笑が、どう捉えられたのか。老婆は静かに頷いて、やり取りを見守っていたブリッジクルー達に手で示した。
突然の切り替えに戸惑いつつも、クルー達は出航のための手順を進めていく。
繋留柵切り離し。亜法結界炉始動。船体を微細動が揺らし、船がゆっくりと、港を離れ行く。
静かに水門を抜け―――エナの海に潜り加速していくスワンに、安堵の息を漏らしながら、アマギリは老執事に視線を来る。
「―――やれ」
「距離が近すぎませんか?」
背後、漸く港から離れたばかりだと言う事を不安に思い、訪ねてくる老執事に、アマギリはしかし切り捨てるように言った。
「平気だ、”防ぐ”。―――やるんだ」
重ねて命じられる主の言葉に、老執事は今度は問い返さずに頷いた。
何処から用意したのか、掌に収まる、小さな突起付きの箱を取り出しながら。
―――かしこまりました。
「おい、アマギリ、何を―――?」
この期に及んで今度はどんなと、アウラが恐れと共に問いかけるも、アマギリは肩を竦めて―――竦めようとして、一ミリも体を動かす事も出来ず、従者に体重を預けるのみだった。
正直、もう顔を上げて瞼を開いている事すら苦痛だったのだ。
そして。
アウラの疑問は一瞬で氷解する。
出航して、漸く船体の後部が全て抜け切った港湾施設の中から。
凄まじい閃光と、轟音が鳴り響いたのだから。
光は港湾施設全てを破壊しながらスワンに迫り―――そして、不可視の力場に遮られ、スワンだけを避けるようにしながら、球状に、大きく、大きく、鳴り止まぬ轟音と共に、聖地を塵に返してゆく。
「―――っっぐ、オォェッ!?」
「殿下!?」
自身たちのみをすり抜けたまま広がっていく滅びの光と言う常識の範疇を超えた光景にアウラが目を奪われていると、アマギリの漏らしたくぐもった音と、ワウアンリーの悲鳴がブリッジを満たす。
「殿下!? 殿下、しっかりしてください!」
「アマギリ、お前―――」
「ちょっと、アマギ―――何よ、何してるの!?」
少女達の悲鳴―――吐き出した血反吐を拭おうともせず、アマギリは手を振って平気だと示そうとして、そもそも、手なんかあがるはずも無いと、笑顔も作れぬまま微苦笑を作った気分で、自らを哂った。
オデットに搭載してあった、核分裂反応を用いた反応兵器の生み出す凄まじいエネルギーを、光鷹翼を展開して防いでいるのだ。
血を吐いて当然。辛くて当然で―――止める訳にもいかないのが、当然。意地を張り通せ、全力で。
少女達に支えられ、意識も朦朧のまま―――それでも、壊れ行く聖地から目を離さない。
渓谷の狭間、孤島のように隔絶され切り立った台地として存在する聖地。
今や、異世界の超技術たる大量破壊兵器の威力によって、その固い岩盤は見る見る削り取られていく。
―――だが、壊しきれないだろう。
上層を幾ら削った所で、強固な岩盤に守られた大地下深度の遺跡は無事のままだろう。ババルンたちには傷一つ、つけられまい。
凝縮されたエナの集合体たる、ガイアのコアユニットもまた、破壊不可能だろう。
剣士。樹雷の皇子。必ず、取り戻す。
忌々しい人造人間どもは、必ず滅ぼしつくす。
今やはっきりとした覚悟を決めて―――しかし今は、もう眠ろう。
羽根をたたみ、体を丸め。翼を休め。
爆発の中から無傷のまま抜けたスワンの中で、光が収まりおぞましいきのこ雲を立ち上らせる聖地だった筈の場所を視界の端にとどめながら―――アマギリは、ゆっくりと、瞳を閉じた。
・Scene 43:End・
※ 長い……。
いや、長かった。一気に見せないと拙い部分だったので全部詰め込みましたが、いやはや、長いの何の。
通常の3話分くらいになっちゃいましたね。
まぁ、聖地決戦編、つまり『原作八巻編』のラストですし、仕方ないといえば仕方ないですか。
結局八巻の内容やるだけで24話も使ってますけど、コレを当初全五話くらいで纏めようと思ってたんだから見積もりの甘さに笑えると言うか。
先に説明突っ込んだり、雑談タイムに尺取りすぎたりで、何時の間にやらこんなでした。で、最後はこれだもんなぁ……。
さておき。
八巻が終わったという事は次回からは九巻編になります。
何か『終わる』『そろそろ終わる』『ラスボスキタ』とかの感想が一杯ありましたけど、ぶっちゃけまだ暫く続きます。
多少後半の説明を前に突っ込んだとは言え、残り五巻も残ってますし、ね。
ちゃんと原作最後まで付き合うって書いた様な気もするんですが、ここで終わるって思ってた人の多さといったら。
思わずここで終わらせる展開も考えてしまいました。多分ハヴォニワ勢が突然やってきて上手い事何とか……。
なんて、冗談はさておき。
次回から九巻。舞台は勿論、活躍する人も勿論、といった具合。
―――ただ、奪還対象がキャイアさんから剣士君に替わっていると言う何その無理ゲー状態ですが。
こうご期待、と言うことで。
……まぁ、200話までには終わるよね、きっと。もう150超えますけど。