――【 新暦68年/地球暦11月 】――「盾の守護獣、ザフィーラ。砲撃なんぞ、撃たせん!」突き上げた軛が、しかし生体レンズを貫けない。「!?」まるでお返しとばかりに放たれた砲撃が、ザフィーラをローストにする。ザフィーラ!?と駆け寄ろうとしたはやては、しかし足を止めた。「ざふぃーらにぃさま」はやてのデザインした騎士服で身を固めたあゆが、ザフィーラを挟んで向い側にいたのだ。「え?あゆ?なんで?」【闇の書】攻略にあたって、あゆは置いて来たはずなのに。「いきますよ!まりょくのもと、なのです」ザフィーラ目掛けて投げられた物体に、はやての目が点になる。「なんでビーフジャーキーなん?」狙い過たず口元に飛んできたビーフジャーキーを咥え、ザフィーラが狼形態で仁王立ち。「わお~ん!」 『説明しよう。ザフィーラはあゆ特製ビーフジャーキーを食べるとパワーアップするのだ』「ちょ!?今の声、誰!?え?ダイスケさん?」なるほど、ハーケンダック海鳴店店長の宇門ダイスケさんの声にそっくりだ。でも、惜しい。ダイスケさんは山ちゃんのスタンドインだ。「縛れ、鋼の軛。でぇぃえ やっ!」ぽこり。とザフィーラの足元に生えてきたのは、白い二等辺三角形だ。随分と小さい。その二等辺三角形の前に、やはり二等辺三角形が生えてくる。その二等辺三角形の前に、やはり二等辺三角形。その二等辺三角形の前に、やはり二等辺三角形。その二等辺三角形の前に、やはり二等辺三角形。その二等辺三角形の前に、やはり二等辺三角形。その二等辺三角形の前に、やはり二等辺三角形。その二等辺三角形の前に、やはり二等辺三角形。その二等辺三角形の前に、やはり二等辺三角形。その二等辺三角形の前に、やはり二等辺三角形。その二等辺三角形の前に、やはり二等辺三角形。その二等辺三角形の前に、やはり二等辺三角形。その二等辺三角形の前に、やはり二等辺三角形。その二等辺三角形の前に、やはり二等辺三角形……ええい、うっとおしい!小さく前習えをするようにずらりと並んだ二等辺三角形たちが、「クビキ、クビキ、クビキ、クビキ、クビキ、クビキ、クビキ、クビキ」と、怪物化した【闇の書】に向けて行進を始めた。たちまち取り付いて、その先端を突き刺し始める。「はっ!?」と、はやてが目を覚ましたのは、【闇の書】が爆発してドクロな感じの爆炎を上げた直後であった。「なんや、夢か」上半身を起こし、寝汗で貼りついた前髪を掻き上げる。あゆとクロノが珍妙なポーズで勝利を祝うのを見ずに済んだのは、不幸中の幸いだったか。はやての精神衛生的に。それにしても変な夢を見たものだ。いや、ああして夢ででも茶化してしまえる程度には、はやても【闇の書】のことへの整理がつき始めているのかもしれない。「それはそれとして」まずはやては、左隣で眠るあゆの額を突付いた。頭蓋骨だの、心臓の干物だのと言い出したあゆが一番悪い。主犯格につき、有罪だ。次に、右隣で眠るヴィータの額も突付いた。ことの終わりかけにリビングにやってきて、「そのビーフジャーキー食べたら、魔力が回復するか?」などと言い出したのはヴィータである。もちろん、ビーフジャーキーなどを引き合いに出したザフィーラにも、あとでお仕置きするつもりだ。「なんや、目が冴えてしもうたなぁ」見やれば、時計の針はいつも起きている時間よりいくらか早い程度。今から寝なおすのも却って疲れるだろう。しゃあない。とベッドを出たはやては、早速ザフィーラを突付くべくリビングへと向かうのであった。 おわり