やんでれ×ユウナっ!
そのに。
俺はあの時、人一人の命の価値をもっと軽視すべきだったのだ。
ぼーっとたき火を見つめながら俺は自分の愚行を責めた。自分の生来の人の良さが憎い。
____
ドガンッ!
でかい化け物を鮮やかに倒した後、突然ザナルカンドが揺れた。上空に突然怪物が現れて台風みたいに周囲の物を巻き上げだした。
俺は地面に伏せる。しかし、アーロンは格好をつけてスカして立った状態のままだった。
いやな。もちろん俺も「危ないぞ」とか注意しようと思ったんだよ。格好付けるのと命を大事にするのどっちが大事なのって。
それでもさ。あのオッサン俺の前でスカしてて人を見下したような笑いを浮かべてたのよ。あの目は腹立ったよなあ。
そりゃあTPOもわきまえずそんな事してたら、なんかいきなり大きな石の塊が飛んできてて、あのオッサンを横殴りにされるのも「ぐはっ!」必然の出来事だったんだよな。
しかも・・・その後はもうひどかった。
なんかあの怪物色々吸い込んでるみたいだから、早く逃げないといけないのに、アーロンはなかなか這いあがってこないどころか「先に行くぞ!」って俺が走り出すと「待て!ティーダ!」と来たもんだ。
「俺の屍を越えていけ」位の事言えないのかね。俺別に最初から置いてこうなんて考えなかったじゃん。
状況はこうだ。さっきあまりの哀れさからつい俺はアーロンに手を差し伸べてしまったんだ。隣人に手を差し伸べよ。とか言うけど博愛主義者でもここまでできないだろう。
それなのに「・・・自分で上がれる」って言って手取らなかったんスよ?
素直じゃなさすぎる。将来場末の老人ホームにぶちこんでやろうと思ってたけど、あのコミュニケーション能力じゃ孤老になりかねない。将棋の輪にすら入れてもらえないだろう。やはり俺が一生保護するしかないのか。くそっ!世間体さえ無かったら!
「はあ・・・」
パチッ。パチッ。
俺はため息と共に焚き火を憂いた瞳で見つめる。ちなみに今は半裸だ。濡れた服を乾かしている。セクシーな裸体と定評のある俺の体も見せる人間がいなければ意味がない。
ちょっと寂しかった。
「くそう・・・アーロンめ・・・」
あの時。変な化け物に目のようなものが現れた後、俺の意識は途切れた。その一瞬、アーロンが何か言ってた気がするけど無視したから覚えていない。夢の中では自分はお魚さんになるような絵を見た気がする。どうせなるなら深海魚より熱帯魚になりたかった。イルカさんと超音波でにお喋りしたい。
「・・・・」
暇だ。今更だけど一体どこだ、ここ。
なんかの遺跡みたいだし、人のいる気配が全くしない。
「まさか一生このままなんて事無いよな」
そう呟いた瞬間背筋に寒気が走った。さすがに・・・自分がいわゆる漂流者になってしまったのを実感してしまったんだと思う。いかん。正直弱気になる。
やっぱりこれからSOSのサインを出したり、狩りや釣りをする技術を学んだりしなくてはいけないんだろうか。サバイバルとかやった事がないし、できる自信もない。ありえない。そんなの___
「ありえないっすよ・・・」
さすがに悪い想像しか浮かばなくて、思わず上を仰ぎみた瞬間だった。
「ぐぐgふぉdsj!」
「うおっ!」
突然背後で声がしたっ。
俺は慌てて振り返る。状況は分からない。よく分からないけど、きっと誰かが助けに来てくれたに違いない。そう思った。だから期待を込めて俺は自然と笑顔を作っていた。
けど駄目だった。コンマ二秒で顔が崩れた。
「うhgbfrjg!gj!」
だってその先にはガスマスク。見慣れないガスマスク集団がいたんだよ。しかも全身タイツ・・・変態さんかよ、くそが!お呼びじゃねえよ!
「hsぐgvf!」
「なんだこらあ!ざけんじゃねえぞ!・・・ざけんじゃねえぞ!」
なんか二回言ってしまった。ポキャブラリーが無い訳ではないが俺の頭も大概にオーバーヒートしているみたいだ。
いかん!COOLになれ俺!とにかくこれはチャンスだ!この機を逃すな!人類を発展させてきたコミュニケーションの文化を信じるんだ!
「ふhsじゅい!ぐわっ!」
「え?え?なに言ってんの!?わかんないって!」
「ybvcyfぶj!」
どうやら外人らしい。言葉がチンプンカンプンだ。とりあえず大声を出して身振り手振りで俺は意志を何とか伝えようとしてみた。
「のrhj!」
駄目だ。なんか怒ってるっぽいっすよ!この遺跡がなんかの部族の聖地で入ったら怒られるとかのアレな流れも一瞬想像している内に
「gcdふfstsyr!」男達の中の一人が突然倒れた。なんだと思った瞬間には既に____突然現れたモンスターが目の前がいた。
キシャ!
____飛びかかってきた!
「っ!」
瞬間、ガイン!と俺の剣が鳴った。いきなり襲ってきたもんだから受けきれなくて、ふらついた。
「のやろっ!」
とりあえず攻撃をしかけ、また攻撃を受ける。周りの男達も火炎放射機っぽいのを構える。でも狙いを合わせられないように見えた。ちくしょう!はやく打てよ!数打ちゃ当たるって偉い人が言ってたよ!
「調子のんなよ!化け物!」
振るった剣はガチンと良いところに入った。カタルシスの崩壊を俺の下のジョイスティックでビクンと感じながら、虫みたいな化け物を追う。斬る。突く。蹴りとばした所で、化け物は動きを止めて倒れた。
天に召されたようだ。ちょっと欲求不満だ。このいきりたったモノをどうしてくれると言うんだ。オラ、舐めろよ。そのイヤラシイ触覚は飾りか?
「ぼsbjgj!」
俺はテンションそのまま男達の方は振り返った。
今宵は血に飢えるぜと言わんばかりに脅してやろうかとも思ったけど、すぐさま剣を捨てて抵抗の意志が無い事を見せた。
文明の利器に立ち向かう気が無い以前に、争いは憎しみを産み憎しみは連鎖するからだ。俺はあやうく過ちを犯してしまうところだった。
「(そこまで!)」
男達が火炎放射機っぽいのを俺に構えなおした瞬間、女の声がした。何言ってるかサッパリだったけど男達が銃を下ろした事で助かったと悟った。助かった・・・。
カツカツ・・・
女が近づいてきて、俺の周りをぐるっと一周回る。その間俺もハンズアップしたまま娘を見つめる。安産型だね。
「ふーん」
じろじろ。と言った感じに見られる。
「・・・・名前は?」
「え?」
訪ねたのは俺だ。ゴーグルをしたまま、口を半開きに開けた顔を金髪の女は浮かべた。そそる。
訪ねた理由は何となくいたたまれなくなったのもあるが、用する所は名前を交換する事で俺の存在を認めてもらう為だ。
相手の事を日常的なプロセスを持って知る事でそいつを無碍にしづらくなる。この技術は違法駐車をめぐる家主の騒動の話から来ている。警官みたいに一方的に注意するより顔見知りになって「お願い」をする方が効果があると聞く。
こんな状況で変なロマンスを求めるほど俺は馬鹿じゃない。悪ふざけももってのほかだ。ああ、教えてくれた近所のおばさん、ありがとう。今度の井戸端会議ではそのちじれたパンチパーマを優しく撫でてやるよ。
・・・・・・あ、言葉通じないんだっけ。
「リュッーク!」
「jfうぐごgw!(兄貴は黙ってて!)」
「リュック?」
モヒカンの男の叫んだ単語を、とりあえず反復してみた。
「そう、リュック」
金髪の女は「絶対絶命のピーンッチから君を助けてあげちゃう・・・」ゴーグルをスチャっと勢いよく上げると「良い女の名前だよっ!」と笑った。
_________やばい。テンション上がってきたよ。俺。
あとがき
まだユウナ出ない。うーん。