プロローグ
戦争があった、人間と魔物による戦争。
舞台は広い、ただ広い平原、
そこには人間の兵士たち、数百の魔物。
人間は数では勝利、ただ強さでいえば魔物の勝利。
人間は魔物の強さにおびえ、戦うものはみな死んでいく。
一人の少年がいた、まだまだ幼く十歳ほどだろうか
少年は死んでいく仲間を見、撤退する仲間を見た。
そして少年はただ一人、人間とは違う魔物へと向かっていく、
一人の兵士が少年に向かって云う。
「何をしている!早く撤退だ!」
少年には何も聞こえない、いや聞いていない
少年はただ魔物の方へと向かっていく。
どれほど経ったろうか?魔物は兵士たちを追ってこない。
兵士たちは戦場に戻る、そこで見たのは、
ただの赤、見渡す限りの赤、平原は赤く染まっている。
平原を埋め尽くすものは魔物の死体、その中央に佇む一人の少年、
赤い海にて闇夜のような漆黒の髪が少しばかり揺れる。
少年は兵士たちに気づき何も云わずにその場を去った。
その戦争は人間の勝利で終わった、たった一人の人間によって
後に少年を見たものはいない。
漆黒の髪に金色の目をした少年は、歴史にも残っていない。
ただうわさだけが一人歩きしている。
「金色夜叉」この名だけが。
数年後、少年は、また表の舞台へ姿を表す。