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No.1446の一覧
[0] オリジナル逆行 祖国の華[中の人](2006/03/25 00:12)
[1] Re:オリジナル逆行 祖国の華[中の人](2006/03/25 00:14)
[2] Re[2]:オリジナル逆行 祖国の華[中の人](2006/03/25 00:16)
[3] Re[3]:オリジナル逆行 祖国の華[中の人](2006/03/25 00:20)
[4] Re[4]:オリジナル逆行 祖国の華[中の人](2006/03/30 21:13)
[5] Re[5]:オリジナル逆行 祖国の華[中の人](2006/04/08 14:21)
[6] Re[6]:オリジナル逆行 祖国の華[中の人](2006/04/09 02:27)
[7] Re[7]:オリジナル逆行 祖国の華[中の人](2006/04/13 22:13)
[8] Re[8]:オリジナル逆行 祖国の華[中の人](2006/04/17 22:52)
[9] Re[9]:オリジナル逆行 祖国の華[中の人](2006/04/18 23:17)
[10] Re[10]:オリジナル逆行 祖国の華[中の人](2006/04/29 21:32)
[11] Re[11]:オリジナル逆行 祖国の華[中の人](2006/05/03 21:31)
[12] Re[12]:オリジナル逆行 祖国の華[中の人](2006/05/04 18:47)
[13] Re[13]:オリジナル逆行 祖国の華[中の人](2006/05/11 08:07)
[14] Re[14]:オリジナル逆行 祖国の華[中の人](2006/05/21 01:49)
[15] Re[15]:オリジナル逆行 祖国の華[中の人β](2006/06/21 00:47)
[16] Re[16]:オリジナル逆行 祖国の華[中の人β](2006/07/08 23:33)
[17] Re[17]:オリジナル逆行 祖国の華[中の人β](2006/07/17 22:54)
[18] Re[18]オリジナル逆行 祖国の華[中の人β](2006/07/29 21:25)
[19] Re:[19]オリジナル逆行 祖国の華[中の人β](2006/08/11 21:03)
[20] Re:[ 20]オリジナル逆行 祖国の華[中の人β](2006/08/11 21:19)
[21] Re:[21]オリジナル逆行 祖国の華[中の人β](2006/08/30 22:56)
[22] Re:[22]オリジナル逆行 祖国の華[中の人β](2006/09/11 07:51)
[23] Re:[23]オリジナル逆行 祖国の華[中の人β](2006/09/18 20:52)
[24] Re[24]:オリジナル逆行 祖国の華[中の人β](2006/09/28 19:38)
[25] Re[25]:オリジナル逆行 祖国の華[中の人β](2006/10/22 11:55)
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[1446] Re:オリジナル逆行 祖国の華
Name: 中の人 前を表示する / 次を表示する
Date: 2006/03/25 00:14
 …ドロアは、元々貧民の捨て子だった。ドロアの子供の頃と言えば、ユイカは争いの全く無い国でそれなりに栄えても居り、貧民など本当に珍しい類の民だ。ドロアは、それに産まれた

 成長の早い子供だったと、ドロアは自分でも思う。膂力、体力の類は同年代の子供達より何倍も速く成長したし、背丈も同様だ。実年齢より3~4歳大人びて見られるような事が、極普通にあった。それは当時のドロアに取って、有利に働きこそすれ、不利になる事は少しも無かった。庇護を受けられぬ子供は、か弱いからである


 兎にも角にも、ドロアは発達した身体を用いて、勝手気ままに生きていた。ユイカは小国ながらに裕福だったので、素性も知れない子供を雇ってくれるような所も無いでは無く、生きていく事は出来た

住む場所が無い者を保護するような施設は確かに在ったが、ドロアは其処が大嫌いだった。碌な所では無かった


 そんな風にして生きていたドロアは、十四の時に、一人の女性と出会ったのだ。その人は偉く肝っ玉母ちゃんで、偉く傑物で、偉く嘘を吐くのが下手糞な人だった

 要点だけ言ってしまえば、まだ青二才も良い所であった幼き日のドロアは、その人の子になった


 「入るぞ、ランさん」


 朝の光がツヤで反射する扉を押し、開いた隙間から顔を覗き込ませる。そして一言。冷えた空気が漂う其処は、ステンドグラスが朝の光に色彩を加えている

 教会だった。厳粛な空気が漂う其処は、それ以外には見えない。最も、見た目はかなりみすぼらしいが


 何の宗教の舎なのかドロアには解らない。元々、宗教に興味は無い。だから、何を崇め奉っていても特に関係は無い

 ドロアをそんな感じに開き直らせる教会の中では、ステンドグラスの窓から差し込む朝日を受けながら、祈りを捧げる妙齢の美女の姿があった


 「ランさん」


 ドロアは彼女の事を、名前で呼ぶ。素直にそのまま、ランと呼ぶ。それが、何と無く習慣になっている

 ランは腰まであるドロアと同じ赤い髪を、蒼いゆったりした服に隠している。思えば記憶の中の義母は何時もこの格好で、何かの制服かも知れないなと、ドロアは思った


 ランは振り向き絶叫する。少し唐突過ぎるだろうが、兎に角絶叫したのだ


 「わ、わぁぁぁぁ!! ドロアが! ドロアが教会に来た! しかもこんな朝早くに!! て、天変地異の前触れだぁぁ!!」


 大きな目がクリクリと忙しく四方を見渡して、如何にも動転してますと言いたげになる。ドロアは自分でも訳が解らない、胸を締め付けられる感覚に、俯く


 「ランさん」

 「何だよ、そんな哀しそうな顔したって駄目だ。何時も寄り付きもしないじゃないか。コレは何かあったんだって思う方が普通だ」


 違う、そういう事を言いたいのでは、無いのだ


 この人が母。行き倒れ、死に掛けたドロアを救ってくれた人。この人こそが、実父と実母を知らぬドロアの、唯一の母

 この人はそう遠く無い未来に、病で呆気なく死ぬ。その悲報を聞いた時ドロアは二十二歳。従軍中の事だった


 オリジナル逆行2


 ランが椅子に座りながら、真っ二つに断ち割った林檎の片割れを差し出してくる


 「でも本当に珍しいなぁ~、ドロアが教会に来るなんて。いっつも、陰気だ何だとか言って寄り付かないで、家で御飯の催促しながら待ってる癖に。とうとうドロアも、神様の偉大さが解るくらいに成長したのかな?」


 ――腹空かして倒れてた洟垂れ小僧も早十八歳。寂しい気もするけど、そろそろ大人かな…

 ――ランさんの前じゃ、何時まで経っても俺は子供だ。神に向かって祈る気にはならんがな


 「……どうした? ランさん。変な顔してるぞ」

 「い、いやぁ、この馬鹿息子はいい加減大人になろうかって言うのに、一体どこ遊びまわってるんだろうとか思ってたんだけど……。今回の旅は、良い旅だったみたいだ。見違えた、半年前と」


 良い旅か、終幕はとんでもない形の、凄まじい旅であったような気もするが


 林檎を齧った。ドロアはその甘さを口の中で転がして、ランを見る。旅と、ランは言った。本当に、旅だったのかも知れない

 この時期のドロアは良く旅をしていた。あちらこちらを行って回り、金を稼いでランの教会がある山村に戻る。何度も繰り返した慣れっこの習慣だ。だがしかし、今回の物は特に……

 特に、長い旅だった。ランと言う母が死んで後から、簡単に時間に換算して約六年になろう


 もう言わずとも解る筈だ。今ドロアが居る世界は、元ドロアが居た世界では無かった。十年。首を切られたその瞬間から、十年も昔。その曖昧な記憶の中の光景が、今日の朝目覚めたドロアの目の前には広がっていた

 時を遡る。こんな異常な事態に直面して、ドロアは何の実感も湧かなかった。ただ、恐ろしくはある

 もし、あの世界が、『若き赤毛の勇将ドロア』が居た世界が、ただの夢であったとすれば

 本当に、何の意味も無い、勝手な妄想であったならば。そう思うと、恐ろしかった。それくらい、現実感が無かった


 「……半年か」ボソリ、と呟くように言う


 「違う。半年なんて騒ぎでは無かった。色んな事をして、色んな物を見た。六年分くらいの価値はある。きっと」

 「あは、……ハイハイ、六年分か。確かに六年分旅すれば、ドロアにだって落ち着きも出るかな」


 断ち割られた林檎を見て、ドロアは思う。自分もコレだ。我武者羅に生きた“以前”の自分は、訳の解らない愛国心と使命感を傍らに置いていた

 それが、切り捨てられた。半分になった林檎のように。リバンテ王国の若き王に落とされた首と共に、奇麗さっぱりと。今更ユイカ国で何かしよう等と考えられない。それは侮辱だと感じる。“以前”の世界で、正に命と身体と、持てる物全てを駆使してユイカ国を守ろうとし、死んでいった者達への


 踏みにじれない。どうしても、出来ない。今更ユイカ国の為に何かしよう、等と考えてしまえば、それは“以前”の全てを否定する事だ。何もかも無かった事にしてしまうと、そう言う事だ


 だから林檎にもう一度齧りついて、それきりユイカの事は考えないようにしようと思った。幸いにもドロアには、別の道があった。まだ、やるべきだと思える事があった


 「それで、今日にでも出るんじゃ無かったかな? 正規軍立て直しの為の募兵に志願するんだろ?」


 時期は、そうだった。平和だったユイカ王国は、ドロアが十八の時突如戦火を被る。直接ユイカの領土で戦争が起きた訳ではない。盟友である隣国の要請に応じて、国王自ら軍を率いて遠征したのだ

 そして、大敗した。王は戦死し、その権威が次代に移り変わると共に、軍の改革が始まるのである。五年後、ドロア二十三歳の時、一時的な平和が訪れるまで


 王が戦死したその時の戦争で戦果を残したのは、“以前”最後の戦いでドロアが率いていた鉄頭の騎馬隊と、極一部だけだ。言ってしまえば、その極一部が目を見張るような戦いぶりを示したからこそ、ユイカには早期に体制を立て直せるだけの余力が残った


 ランの言う募兵とは、その軍改革の一環として行われた物。ドロアはそれに志願し、将軍への道を駆け上り始めたのである


 以前は


 「―――行かん」


 短く切り返したドロアの言葉に、ランはポカンとする


 「良いんだ。行かない」

 「え? でも、半年前は偉く息巻いてたじゃ無いか。『祖国の為に、武量を示す良い機会だー』とか何とか言って」

 「そんな事は問題では無い。ランさん、………本当は、体が悪いんじゃないのか。…胸が」


 ランが息を呑んだ。何故知っている、そんな風に。ドロアの口が堅く引き結ばれる。真一文字に、悲しみを堪えるように

 本当に嘘が吐けない人だ。隠し事なんて、少しも出来ない人なのに

 なのに、自分は母の苦しみに気付いてやれなかった。自分の事ばかりで、甘えていただけだ


 今の自分は、どうなのだろうか


 「俺の栄達など如何でも良いのです。孝行させてくれないか」


 この世界に舞い戻ってきて、母を一目見て決めた。拾ったのか、それとも夢を見ているだけなのか、それすらも解りはしないがこの命、今はこの人の為に使おうと


……………………………………………………

……………………………………………………


 ――あの時陣中で受けた悲報は、ドロアを愕然とさせて有り余る物だった

 ラン、病死。その報を聞いて戦いが終わり後、それこそ馬を何頭も使い潰す勢いでランの教会へと急いだドロアは、ランが己の病を隠していた事を知った


 死の何年も前からランは病に冒されていた。心を弱らせる病で、それの進行には激痛が伴う。体力の低下は当然で、死の一年前から殆ど歩く事も困難だったと言う


 なのに、隠していた。ランは、ドロアの前に居る時だけは、まるで平気を装った

 血を吐くほど苦しかったろうに、辛かったろうに、ドロアに隠していた。ドロアも、気付けなかった


 だが、今はどうだ。ドロアの手の届く所にランが居る。今ならば、色んな事が出来る。話せる、手を握れる、笑い合う事も

 血を分けた関係では無い。が、命を救われ、子とまでなったのだ。一生を幾つ重ねても返しきれない恩と、血の絆にも劣らない親子の情がある


 尽くしてやりたいと思うのは、普通ではないか


 ……これも同じ事なのでは無いのかとも思った。“以前”の歴史で死んでいった者達を否定するのと同じで、心配を掛けぬように、とひた隠しにしたランの誇りを、踏みにじっているのでは無いかと

 自分勝手な話だと、ドロアはそう思う。だがそれを恥じ、感傷に浸る心算は、毛頭無かった


……………………………………………………


 パチパチと小さな暖炉に火が灯る小屋で、安楽椅子に座ったランがノビをする。蒼の制服は着ていない。ドロアと同じ赤い髪を、素直に晒していた

 安楽椅子は、ドロアが買い付けた物だった


 「何で解った? 半年前までは、全然気付いた感じしてなかったんだけど…。やっぱり、男の子って旅をすれば変わる物?」


 ドロアは、そんなランの肩を揉んでいた。ドロアは歴戦の勇士ではあったが、何せ産まれてこの方親孝行と言う物に縁が無かった不器用な男。だから、孝行させてくれとは言った物の、こんな稚拙な事しか思い浮かばなかったのである


 だが、ランは笑って、そして喜んだ。ランの目じりに浮かんだ小粒の嬉し涙が、その本心だった


 「そうだ。自分の事で手一杯だった俺は、どうやら回りに気を使えるくらいには、成長できたらしい」

 「私に世話焼けるくらいに?」

 「あぁ、ランさんの肩を揉めるくらいに」

 「あはっ、はは、何だか小さい子供が、お母さんの肩揉んでるみたいだ」

 「やってる事は、詰まり同じだ。俺は貴女の子です」


 教会を閉めるよ、とランは言った。意地張って続けてみようと思ってたけど、ドロアにバレちゃったんじゃ、もう駄目だ。きっともう自慢の息子に甘えちゃって、踏ん張れない。そう笑った


 ドロアはそれで構わなかった。元々宗教家では無いし、教会への寄付金など無くてもランを養っていく自信はある

 久しく無かった戦争に首を突っ込み、しかも大敗の上に国王が戦死までしたユイカは、混乱からか他国ほどでは無い物のかなり治安が乱れている。争い事に乗じて荒稼ぎするには良い頃合だ。寧ろ、長く軍職に勤めていたドロアは、それ以外の稼ぎ方が出来ない


 詰まる所殺人職業の類。人を殺して人を養う、皮肉の効いた欺瞞だが、それの是非を悩む程ドロアは道徳観念の強い男では無かった

 とは言っても、ランの方が五月蝿い為、進んでその職の話をしようとは思わないが


 「あぁ…良いなぁ~、こう言うの。病気は嫌だけど、幸せだなぁ……」

 「婆臭いぞ、ランさん」

 「うっさい! ホレホレ、しっかり腰を入れて揉まんかい!」

 「良いのか、俺が本気で力を入れたら、ランさんの肩が粉々になってしまうぞ」

 「そ、それは嫌だ」


 些か本気で焦りながら首を振るラン。ドロアはその時少しだけ、本当に少しだけ、口を緩めて微笑んだ。戻ってきてから、最初の笑みだった

 ランがこのまま病没せずに、ずっと笑っていてくれるような、そんな夢のような事まで考えていた。何処まで行っても、現実感が湧かなかった故かも知れない


 翌日からドロアは荒稼ぎを開始する。武の才只人より並外れた男は、戦の場にてとんでもなく強い。受けるのは専ら野盗、山賊相手の仕事だったが、その力は遺憾なくなく発揮された

 ユイカの混乱の最中に現れたドロアは、その混乱の中で暴れまわった。それが親孝行の為、なんて聞いたら、ドロアに斬られた者達は死んでも死にきれまい。だが兎に角、ドロアはとんでもなく強かった


 抜きん出た武量を持つ赤毛の傭兵は、あっと言う間にその存在をユイカの隅々にまで知らしめる程になったのである


――ランク「敗軍の将」→「マザコン戦士」


・・・・・・・・・・・・・・・・

度を過ぎると宜しくないかも


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