<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

SS投稿掲示板


[広告]


No.14434の一覧
[0] 【ネタ・習作・処女作】原作知識持ちチート主人公で多重クロスなトリップを【とりあえず完結】[ここち](2016/12/07 00:03)
[1] 第一話「田舎暮らしと姉弟」[ここち](2009/12/02 07:07)
[2] 第二話「異世界と魔法使い」[ここち](2009/12/07 01:05)
[3] 第三話「未来独逸と悪魔憑き」[ここち](2009/12/18 10:52)
[4] 第四話「独逸の休日と姉もどき」[ここち](2009/12/18 12:36)
[5] 第五話「帰還までの日々と諸々」[ここち](2009/12/25 06:08)
[6] 第六話「故郷と姉弟」[ここち](2009/12/29 22:45)
[7] 第七話「トリップ再開と日記帳」[ここち](2010/01/15 17:49)
[8] 第八話「宇宙戦艦と雇われロボット軍団」[ここち](2010/01/29 06:07)
[9] 第九話「地上と悪魔の細胞」[ここち](2010/02/03 06:54)
[10] 第十話「悪魔の機械と格闘技」[ここち](2011/02/04 20:31)
[11] 第十一話「人質と電子レンジ」[ここち](2010/02/26 13:00)
[12] 第十二話「月の騎士と予知能力」[ここち](2010/03/12 06:51)
[13] 第十三話「アンチボディと黄色軍」[ここち](2010/03/22 12:28)
[14] 第十四話「時間移動と暗躍」[ここち](2010/04/02 08:01)
[15] 第十五話「C武器とマップ兵器」[ここち](2010/04/16 06:28)
[16] 第十六話「雪山と人情」[ここち](2010/04/23 17:06)
[17] 第十七話「凶兆と休養」[ここち](2010/04/23 17:05)
[18] 第十八話「月の軍勢とお別れ」[ここち](2010/05/01 04:41)
[19] 第十九話「フューリーと影」[ここち](2010/05/11 08:55)
[20] 第二十話「操り人形と準備期間」[ここち](2010/05/24 01:13)
[21] 第二十一話「月の悪魔と死者の軍団」[ここち](2011/02/04 20:38)
[22] 第二十二話「正義のロボット軍団と外道無双」[ここち](2010/06/25 00:53)
[23] 第二十三話「私達の平穏と何処かに居るあなた」[ここち](2011/02/04 20:43)
[24] 付録「第二部までのオリキャラとオリ機体設定まとめ」[ここち](2010/08/14 03:06)
[25] 付録「第二部で設定に変更のある原作キャラと機体設定まとめ」[ここち](2010/07/03 13:06)
[26] 第二十四話「正道では無い物と邪道の者」[ここち](2010/07/02 09:14)
[27] 第二十五話「鍛冶と剣の術」[ここち](2010/07/09 18:06)
[28] 第二十六話「火星と外道」[ここち](2010/07/09 18:08)
[29] 第二十七話「遺跡とパンツ」[ここち](2010/07/19 14:03)
[30] 第二十八話「補正とお土産」[ここち](2011/02/04 20:44)
[31] 第二十九話「京の都と大鬼神」[ここち](2013/09/21 14:28)
[32] 第三十話「新たなトリップと救済計画」[ここち](2010/08/27 11:36)
[33] 第三十一話「装甲教師と鉄仮面生徒」[ここち](2010/09/03 19:22)
[34] 第三十二話「現状確認と超善行」[ここち](2010/09/25 09:51)
[35] 第三十三話「早朝電波とがっかりレース」[ここち](2010/09/25 11:06)
[36] 第三十四話「蜘蛛の御尻と魔改造」[ここち](2011/02/04 21:28)
[37] 第三十五話「救済と善悪相殺」[ここち](2010/10/22 11:14)
[38] 第三十六話「古本屋の邪神と長旅の始まり」[ここち](2010/11/18 05:27)
[39] 第三十七話「大混沌時代と大学生」[ここち](2012/12/08 21:22)
[40] 第三十八話「鉄屑の人形と未到達の英雄」[ここち](2011/01/23 15:38)
[41] 第三十九話「ドーナツ屋と魔導書」[ここち](2012/12/08 21:22)
[42] 第四十話「魔を断ちきれない剣と南極大決戦」[ここち](2012/12/08 21:25)
[43] 第四十一話「初逆行と既読スキップ」[ここち](2011/01/21 01:00)
[44] 第四十二話「研究と停滞」[ここち](2011/02/04 23:48)
[45] 第四十三話「息抜きと非生産的な日常」[ここち](2012/12/08 21:25)
[46] 第四十四話「機械の神と地球が燃え尽きる日」[ここち](2011/03/04 01:14)
[47] 第四十五話「続くループと増える回数」[ここち](2012/12/08 21:26)
[48] 第四十六話「拾い者と外来者」[ここち](2012/12/08 21:27)
[49] 第四十七話「居候と一週間」[ここち](2011/04/19 20:16)
[50] 第四十八話「暴君と新しい日常」[ここち](2013/09/21 14:30)
[51] 第四十九話「日ノ本と臍魔術師」[ここち](2011/05/18 22:20)
[52] 第五十話「大導師とはじめて物語」[ここち](2011/06/04 12:39)
[53] 第五十一話「入社と足踏みな時間」[ここち](2012/12/08 21:29)
[54] 第五十二話「策謀と姉弟ポーカー」[ここち](2012/12/08 21:31)
[55] 第五十三話「恋慕と凌辱」[ここち](2012/12/08 21:31)
[56] 第五十四話「進化と馴れ」[ここち](2011/07/31 02:35)
[57] 第五十五話「看病と休業」[ここち](2011/07/30 09:05)
[58] 第五十六話「ラーメンと風神少女」[ここち](2012/12/08 21:33)
[59] 第五十七話「空腹と後輩」[ここち](2012/12/08 21:35)
[60] 第五十八話「カバディと栄養」[ここち](2012/12/08 21:36)
[61] 第五十九話「女学生と魔導書」[ここち](2012/12/08 21:37)
[62] 第六十話「定期収入と修行」[ここち](2011/10/30 00:25)
[63] 第六十一話「蜘蛛男と作為的ご都合主義」[ここち](2012/12/08 21:39)
[64] 第六十二話「ゼリー祭りと蝙蝠野郎」[ここち](2011/11/18 01:17)
[65] 第六十三話「二刀流と恥女」[ここち](2012/12/08 21:41)
[66] 第六十四話「リゾートと酔っ払い」[ここち](2011/12/29 04:21)
[67] 第六十五話「デートと八百長」[ここち](2012/01/19 22:39)
[68] 第六十六話「メランコリックとステージエフェクト」[ここち](2012/03/25 10:11)
[69] 第六十七話「説得と迎撃」[ここち](2012/04/17 22:19)
[70] 第六十八話「さよならとおやすみ」[ここち](2013/09/21 14:32)
[71] 第六十九話「パーティーと急変」[ここち](2013/09/21 14:33)
[72] 第七十話「見えない混沌とそこにある混沌」[ここち](2012/05/26 23:24)
[73] 第七十一話「邪神と裏切り」[ここち](2012/06/23 05:36)
[74] 第七十二話「地球誕生と海産邪神上陸」[ここち](2012/08/15 02:52)
[75] 第七十三話「古代地球史と狩猟生活」[ここち](2012/09/06 23:07)
[76] 第七十四話「覇道鋼造と空打ちマッチポンプ」[ここち](2012/09/27 00:11)
[77] 第七十五話「内心の疑問と自己完結」[ここち](2012/10/29 19:42)
[78] 第七十六話「告白とわたしとあなたの関係性」[ここち](2012/10/29 19:51)
[79] 第七十七話「馴染みのあなたとわたしの故郷」[ここち](2012/11/05 03:02)
[80] 四方山話「転生と拳法と育てゲー」[ここち](2012/12/20 02:07)
[81] 第七十八話「模型と正しい科学技術」[ここち](2012/12/20 02:10)
[82] 第七十九話「基礎学習と仮想敵」[ここち](2013/02/17 09:37)
[83] 第八十話「目覚めの兆しと遭遇戦」[ここち](2013/02/17 11:09)
[84] 第八十一話「押し付けの好意と真の異能」[ここち](2013/05/06 03:59)
[85] 第八十二話「結婚式と恋愛の才能」[ここち](2013/06/20 02:26)
[86] 第八十三話「改竄強化と後悔の先の道」[ここち](2013/09/21 14:40)
[87] 第八十四話「真のスペシャルとおとめ座の流星」[ここち](2014/02/27 03:09)
[88] 第八十五話「先を行く者と未来の話」[ここち](2015/10/31 04:50)
[89] 第八十六話「新たな地平とそれでも続く小旅行」[ここち](2016/12/06 23:57)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[14434] 第八十四話「真のスペシャルとおとめ座の流星」
Name: ここち◆92520f4f ID:e98270e7 前を表示する / 次を表示する
Date: 2014/02/27 03:09
何処までも続く赤く焼けた大地を歩く一つの影があった。
黒髪に浅黒い肌の、未だ青年には遠い、幼さの残る少年。
足元まで裾が届いてしまう薄汚れた大人用のジャケットに身を包み、背には布袋と紐を組み合わせて作った簡素なリュックと、何処にでも出回っているような簡素な小銃を背負っている。

少年──後に『刹那・F・セイエイ』を名乗る事となるソラン・イブラヒムは、速成の少年兵といった出で立ちを隠すこと無く、無人の荒野を行く。
行く宛がある訳ではない。
何処を目指しているのかと聞かれれば、恐らく彼自身答えに窮するだろう。
だが、彼の足取りに迷いはない。
彼には目指すモノがあった。

両親と共に殺した過去の自分、信仰への絶望と共に死んだ狂信者としての自分。
殺すために、死ぬために、生きること無く死なずに居た自分を蘇らせたモノ。
光の粒を、煌めく星屑を纏った機械の巨人。
自らを死へと追いやろうとした地獄を塗りつぶした光。
今の彼に自己確信を与え、歩み続ける原動力を与えている、心の大半を占める、彼独自の信仰。
神に似て、しかし居るかどうかも分からず、何も成すことのない神とは異なる、力ある存在。
彼は、それを崇める事をしなかった。
新たな信仰の対象とも言えるその存在に、近づく事を選んだのだ。

神にも等しい存在に近づく。
何をどうすればいいのか、そんな事は分からない。
そもそも、『アレ』が如何なる存在なのかすら理解できていない以上、何をどうするか大まかな方針を決めることすらできないのだ。
だが、彼の心に不安は無かった。

ふと立ち止まり、空を見上げる。
足元には赤い大地、そして天に広がるのは満天の星空。
そして、空に見える輝きは星の光だけではない。
月のない空に、満月ですら霞ませる程の光が見えた。

巨大な箒星。
『あの機体』が纏っていた光の粒に良く似た光が、まるで流星の如く空を切り裂いている。
天の光が遍く降り注ぐ大地に自らの存在を知らしめるように、刻みこむように飛ぶ流星。
あの星を見る度に、その輝きが強く膨れ上がる度、彼の中に奇妙な感覚が生まれるのだ。
まるで、遠くの、見たこともない誰かと心を通わせているような。

空を見上げる顔に笑みはなく、視線は天から再び枯れた大地へ、前へ向けられた。
彼の心には、確かな確信があった。
その確信に任せるまま、足を進める。
空を裂く翠の星の輝きが導く、彼の求める信仰、その入口へと。
彼は、そう遠くない未来に、確実に辿り着く事になるだろう。

既にこの地に空を裂く光を見る者は居ない。
だが────世界中で、この光を見つめる者達が居た。
哨戒中の飛行MSの軍パイロットが。
今尚続く内紛の最中、敵を撃ち殺したばかりのゲリラが。
定住の地を持たず、当て所無く彷徨う旅人が。
学校の試験を前に、詰め込むように勉強中の学生が。
国籍も年齢も性別も思想も関係なく、世界中で空を見上げた者達が、皆一様に空の光に一瞬目を奪われ、各々の生活へと帰っていく。
彼等に降り注いだ光が、何かしらの変革を齎すのか。
それを知る者は、この星には一人も居ない。

―――――――――――――――――――
スティ月ジョブ日(そう、GNドライブならね)

『まぁ、俺は未だ持ってガラケーなのだが、それは実家の予算の都合、としか言い様がない』
『iPhoneでなくiaPhoneなら持っているが、元の世界で使うには色々と問題のある機能も搭載されており、使用には少し躊躇う部分がある』
『因みに姉さんも未だガラケーだが、多分ポイポン5を使わないのは問題が有る機能云々ではなく、絶対に完全破壊されてしまう運命力を気にしてのことだろう』
『あと、スマホ使うまでもなく、通信関連は脳直で契約とか抜きで好き勝手やれるから……』

『つまり、MSの技術も似たようなものだと俺は考えている』
『GNドライブは確かに優れた動力機関ではあるが、GNドライブが出てくる前に、GNドライブと比べても見劣りしない技術が各国で造られていれば、GNドライブにどっぷりにはならない』
『……正確には、ならないだろう、もしくは、ならないといいなぁ、という淡い期待でしかない訳だが』
『だが、これだけは言える』
『世間の技術は、もはやただガンダムに蹂躙されるだけの劣った存在ではない』

『もう少しで、ソレスタルビーイングが武力介入を開始し、世界にその名を轟かせる事になる』
『その時、彼等はようやく気付くだろう』
『世界は、自分達の想像を遥かに上回る速度で進歩しているのだと』

―――――――――――――――――――

……………………

…………

……

抜けるような青空の下、薄緑色の歪な人型がその細い手足を振り回しながら縦横無尽に飛び回っている。
衆目を集めている人型の正体は、AEU(Advanced European Union)が誇るMS技術を導入して建造された新型MS、AEU-09イナクトだ。
パーツ組換なしの可変機という点に加え、MS形態でもある程度の飛行能力を持つこの機体の真のコンセプトは扱いやすさにある。
あらゆる面でユニオンのフラッグのパクリ、模倣品でしかないこの機体は、機動力、火力の面で少しずつ遅れを取っているが、その分パイロットの安全性においてはカタログスペックでも作中の実績でも大きく上回っていると言って良いだろう。
長めに設定されたディフェンスロッドを始めとして、設定資料集には登場しない細やかなスペック面から見てもそれは間違いない。
もちろん、フラッグと比べて出番が少なかったからこそ生存率が高いという面もあるが。

何が言いたいのかと聞かれれば、こう答えるしかない。
イナクトの真価は静止目標に対する射的(射撃、という言葉を使うのは憚られる)や、固定砲台から放たれるまばらな弾幕に対する回避運動だけで見極める事は難しい。
だから、まぁ、

「どうもこうも、ウチのフラッグの猿マネだよ。独創的なのはデザインだけだね」

目の前の前後未使用男の嘲るような言葉も、現段階では受け入れざるを得ないのだ。
基本的な設計思想をフラッグから丸パクリしているのは事実ではあるし、軍事スパイ的なモノを使って情報を仕入れてもいるだろう。
故に、一瞬だけこちらに向いた、何処か不満がありそうなイナクトのカメラアイに対して、俺は肩を竦めて首を振る。
言いたい奴には言わせておけばいい。相手が油断して過小評価してくれるのであれば、それは実戦では大きなアドバンテージになる。
そういう意図を感じ取ったのか、デモンストレーション用の塗装を施されたイナクトは演習を再開する。
その一瞬のやりとりに気付けた者は、この会場には殆ど居ない。
実際、こちらにイナクトが視線を向けたのはほんの一瞬だけだ。

「ふむ、だが、パイロットの腕は悪くないらしい」

未使用と内緒話をしていた空フェチが感心したようにそんな事を口にしたのが耳に届いた。
恐らく、空フェチにはイナクトが一瞬こちらに向けた視線が、戦闘中にカメラ目線を決めるパフォーマンスの一種に見えたのだろう。
当然それは勘違いなのだが、脇から口を出して訂正する程の勘違いではないので放置しておく。
いや、腕がいい、という点だけで見ればあながち勘違いでもない。
操縦しているのは掛け値なしのエースで間違いないし、集音性能に優れているとはいえギャラリーの中から自分の機体に向けられた悪口を聞き洩らさず、なおかつ反応するべきかどうかをこちらに視線で問うて細かなジェスチャーでの返答を見逃さない動体視力と反応速度を兼ね備えている。
これを完全に戦闘に活かせれば更にワンランク上のパイロットに成れるはずだが……少なくとも今現在使用している機体では不可能だ。
もっとも、イナクトの性能を引き出してデモンストレーションを行う上では十分過ぎる程なのだが。

パイロットが不満を飲み下し、ユニオンのスタッフに苦笑されながら、なおもイナクトのお披露目は続く。
静止目標への射撃に固定砲台からの射撃に対する回避運動その他、カタログ眺めてれば解るような当たり前の性能しか証明できない退屈なイベント。

「なんだ、あれは」

そんな退屈な時間は、観客の一言で終わりを迎える。
AEUの予定していたイベントスケジュールには存在しない、不測の事態。
輝く粒子を纏った、何処の国の主力MSともデザインラインの異なる独特なフォルムを持ったMSが降下してきている。
初めはAEUのもう一機の新型かと騒いでいた連中も、その特異な機体形状から異変に気が付きだした。
降下してきたMSは、現行のMSとは比べ物にならないほど人型で、現状のMS技術から考えうる効率的な形状からはかけ離れたシルエットを持っている。
変形機構を備えるためにひょろ長いフラッグやイナクトとも、如何にも兵器然としたいかつい角ばった形状のティエレンとも異なる、人に近い心なしかふっくらと柔らかな曲線。
丸みを帯びた頭部には鋭角なV字のアンテナらしき飾りに、黒く縁取りされた左右一対の碧眼、人であれば口から顎に当たる部分を覆う赤い突起物。
鎖骨に当たる部分から生えたアンテナ風の黄色く細長い飾り。
これまでこの世界に存在していたMSに比べ、嫌味な程にヒロイックなデザインの機体だ。
最も、GNドライブを利用して機体を作ろうとした場合、やはりある程度のヒロイックさ、いや、善や悪にはっきりと分類されてしまうだろう視覚的影響力を備えてしまうものなのだが。

空から、正しく舞い降りるという表現が相応しい航空力学を無視したなめらかかつ緩やかな軌道と速度で降下を続ける謎の機体。
会場の観客、そして主催者側であるAEUの面々が予定表にない闖入者に困惑する中、謎のMSに対して初めて明確な意思が向けられた。
向けられた意思の形は、電磁力で加速され大気を引き裂く弾丸。
イナクトの持つリニアライフルから放たれた特殊合金製の塊が、敵対者へ迷いなき攻撃の意思を乗せて疾駆する。
謎の機体の降下とイナクトの射撃タイミングから考えて、イナクトのパイロットが謎のMSに対して如何なる対応をするかを考えた時間は僅かに一秒にも満たないだろう。

並のMS、並のパイロットであれば反応すら出来ずに撃墜されるその弾丸を、謎のMSはひらりと身を翻して回避。
これも通常の航空力学に縛られた一般的MSの飛行形態には不可能な動き。
その一瞬のやりとりで、両機体の性能差を感じ取った観客は少なくない。
AEUの新型など目ではない、常識を覆す機動力を持つ謎のMSへの驚嘆に支配される目敏い観客達。

そんな彼等の目の前で、謎のMSが不意に仰け反った。
性能を見せつけるパフォーマンス、ではない。
次いで謎のMSが取った動きは、戸惑いを滲ませる大振りな回避運動。
やはり航空力学を無視し、まるで無重力状態の中を事由に動きまわるかのようなその動きから、更に連続して姿勢を変えていく。
謎のMS自身が望んだ動きではない。
それ証明するのは、会場から響く独特の銃声、いや、砲撃音。
リニアガンが放つ独特の弾体加速音が続けざまに数度放たれる度、空を行く謎のMSが不自然に仰け反っている。
動きに一切の迷いも油断もない。
イナクトとそのパイロットは、突如出現した謎のMSを、冷静に、冷徹なまでに敵として排除しようとしている。

数回の射撃と回避を挟みながら、謎のMSが仰け反るタイミングは変わらない。
それは取りも直さず、謎のMSに向けられたイナクトの射撃の正確さを証明している。
回避運動をさせるための牽制射撃に、回避後の未来位置に置くように放たれた当てるための本命。
避けさせる事で当てる為の弾丸は外れながらにしてその役目を十全に果たし、イナクトの射撃は確実に謎のMSを捉えて離さない。
未だ発揮されない謎のMSのパイロットの技量が如何程のものか、この場に知るものは居ない。
だが、確実に言えることがある。

「強いな、あのパイロット」

目の前の席で空フェチ金髪が若干嬉しそうにそんな事を呟く。
そう、多少人格面で問題があったとしても、イナクトのパイロットは掛け値なしのエースパイロットだ。
以前までMSの操縦技能を除けば一般的な兵士の適性しか持っていなかったが、今の奴にはそれに加えて戦場を見渡す広い視野があり、油断も少ない。
突然に闖入者に対する対応も見事だ。
確かに、イナクトに備え付けられたカメラならば、あの高さに居る謎のMSの大まかな武装を見ぬく事ができる。
奴の目にはブレード収納中のGNソードがきちんと近接武器に見えたのだろう。
それだけで判断するのは早急過ぎるかもしれないが、少なくともAEU側のスケジュールに存在しない新たなMSとなれば、早めに対処するに越したことはない。
性能を発揮させる前に、寄らせる前に遠距離から叩き潰そうというのは間違いではない。
しいて問題点を上げるとすれば……、

「そんな、無傷なのか?」

未使用が目を見開く。
謎のMSは少なくとも五発、それも機体が空中で派手に仰け反るような直撃弾を食らっていた。
だが、動きに陰りはない。
それどころか直撃を受けたはずの箇所には僅かに溶けた元弾丸の欠片を残すのみで、装甲の歪みすら見て取れない。

「MSの性能の差が、戦力の決定的な差ではない、か」

名言を口の中で転がす。
どれほど優れた機械であろうとも、操作する人間の性能に左右されてしまうという、最初に口にした人物にとっては後にブーメランとなった名言だ。
だが残念な事に、この言葉もまた完全ではない。
例えば三本の矢が予期せぬ強い力によって折れるように、機体性能を覆すパイロットの技量の高さも、やはり予期せぬ機体の性能差によって押し潰されてしまう。

謎のMS──ガンダムエクシアが動きを変えた。
舞い降りるような緩やかな動きから、地面にぶつかりに行くような下に向けての急激な加速。
動きが更に単調になり、牽制の射撃すら直撃している。
にも関わらず、エクシアは多少のブレは見せても減速すらしない。
GN粒子の持つ質量操作能力により、今のエクシアは大質量の砲弾も同然。
分子レベルのスピンすら整え、更にGN粒子を塗布することにより格段に強度を増したエクシアの装甲が、向かい来るリニアライフルの弾丸を真っ向から弾き飛ばす。
イナクトの武装が実戦仕様の弾丸とリニアライフルだったなら多少の傷を与える事はできたかもしれないが、残念な事にリニアライフルの出力も弾丸もデモンストレーション使用のものであり、実際のMS戦を想定したものではない。
デモンストレーションに使用されるドローンを撃ち落とし、それでいて万が一の時に観客への被害を最低限に抑えるための低出力使用では、飛び抜けた性能を持つガンダムを相手取るのは難しい。
いや、不可能と言って良い。
そもそも、あそこまでエクシアがイナクトの射撃に翻弄されて降下に手間取ったのは、エクシアが近距離戦重視の機体であるという点も大きかった。
ガンダムに使用された優れた技術は、なにも新型のリニアライフルによる連続射撃を受けて無傷な装甲だけではない。

エクシアが、とうとうイナクトの正面に降り立つ。
余裕を見せつける為のゆったりとした動きではない。
地面を砕くような荒々しい着地、衝撃を吸収するためではなく踏み込みのために膝をそして足首を曲げ即座に伸ばし地を蹴り、息をつく暇もない加速。
着地直後の硬直すら無く、イナクトへ向けて地を這う獣の如くに跳ぶエクシア。
腕には既にGNソードが展開し、その長大な刀身の質量を感じさせないような軽やかな動きで振りかぶっている。
イナクトも反応できていない訳ではなく、エクシアの着地寸前でソニックブレイドを構え、既に迎撃の態勢を整え終えている。

高周波による耳障りな音を鳴らしながら、逆手に構えたソニックブレイドでエクシアのGNソードの軌道を逸らそうと受け流す構え。
だが、傾斜を作るようにして受けた筈のソニックブレイドの刀身は、振り下ろされたGNソードによって斜めにスライスするように切り裂かれてしまう。
同じ性能の機体であれば、せめて対抗出来るだけの武装であったなら、結果は違っていただろう。
だが、今は目の前に有る結果だけが現実だ。
懐に入られてしまえば、機動面ですら存在する圧倒的な技術格差が技量差を覆す事すら許さない。

GNソードが振り下ろされる。
イナクトのパイロットはその動きを正確に捉え、振り下ろされる刃ではなく腕を取り押さえようと動き出す。
しかし、遅い。
正確にはパイロットの反応が遅かった訳ではなく、イナクトの反応が遅かった訳でもない。
エクシアの余りにも速すぎる上段からの振り下ろしが、イナクトの反応を相対的に遅く見せている。

ほぼ抵抗なくソニックブレイドを切り裂いたGNソードによる上段の一撃。
更に分厚い刀身の重みを感じさせない素早い切り返しの振り上げ。
一閃。
金属を削る音というよりも、鈴を打ち鳴らす様な涼やかな音と共に、ソニックブレイドを持っていた腕が切り飛ばされる。
腕を切り飛ばされた反動を活かしバックステップで距離を取ろうとするイナクト。
先に距離を取ろうとしたイナクトに、しかし後から反応したエクシアが肉薄。
残された武器であるリニアライフルを構えるイナクト。
反応も判断も早く、しかし、エクシアの持つ技術力の高さがそれら全てのハンデを打ち消し塗りつぶす。

GNソードの刀身が折りたたまれ、エクシアが手を伸ばした先にあるのは刀身の無い円筒状の柄、ビームサーベル。
肩口から引きぬかれたビームサーベルがライフル諸共残った腕を焼き切り、遂にイナクトの武装を完全に封じ込める。
打つ手なしと見てその場から逃れようとするイナクトに対し無造作にビームサーベルが放つ光の刃が振るわれる。
一、二、三と振りぬかれた頃には、既にイナクトは原型を留めておらず、戦闘継続は不可能な状態に持ち込まれてしまった。
頭部と腕を失い、脚部も半ばスクラップと化し、それでもなおここまで倒れなかったのはイナクトの備えるオートバランサーの優秀さかパイロットの意地によるものか。
手足を完全に失いほぼ胴体だけとなったイナクトは、ゆっくりと背後に倒れこんだ。

「あちゃぁ……」

額を抑えて天を仰ぐ。
ソレスタルビーイングが原作一期であそこまでであそこまで無双できたのは、ソレスタルビーイングと三大国家の持つMSに存在する圧倒的な技術格差が原因だ。
もちろんソレスタルビーイングも優れた操縦技術を持つマイスターを集めてはいる。
いるが、探したからといって、三大国家の軍に所属し、数々の実戦経験を積んだ歴戦のパイロット達に勝るような操縦技術を持っている訳ではない。
そこの所は、それまでほぼ一方的に嬲られていた三大国家のエース達が、GN-Xに乗り換えてからの逆転劇で理解できるだろう。
純粋にパイロットとしての技量、性能が高いのは、精々が超兵であるハレルヤとアレルヤ、イノベイドであるティエリア程度。
リボンズの情報操作でマイスターになった刹那などは当然、ロックオン(兄)の優れた狙撃能力にしても、結局は操縦をサポートするハロという優れた技術の結晶が在ってこそ。

故に、原作よりもパイロットの性能が上がっていたからといって、イナクトが真っ向勝負でイナクトに勝てるようになるわけではない。
イナクトがエクシアに突っかかってあのような姿になるもの、言ってしまえば予定調和でしかなく、別段驚くことも嘆くこともない。
だからこそ、やってしまったと言わざるを得ない。
今の一連の攻防を見れば、イナクトとエクシアに用いられた技術の水準に大きな水が開けられているのはひと目で分かる。
……今さっきイナクトが行った攻防は並のパイロットにできる芸当ではないのだ。
エクシアの、ひいてはGNドライブを持つ機体特有の独特な空中姿勢制御能力を計算に入れなければ、普通はあれだけ正確に射撃を当てていく事はできない。
しかも単純に当てただけではなく、途中からは姿勢を崩すことを目的にして、機体のバランスを崩しやすい手足や頭部の末端部分だけを狙い撃ちにしていたのを見せてしまった。

あのイナクトのパイロットは、掛け値なしにAEUの誇るスペシャルと言って良い。
AEUで並ぶものの殆ど居ないスペシャルで、しかし、彼に準ずる実力を持つものならばそれなりに居る。
他国に彼に並ぶほどのスペシャルが居ない、とは言わないが、少なくともパイロットの質の高さが他国に比べて異常に高い、という事は知られてしまった。
人革辺りは超兵製造技術の流出を疑うだろうか。
政治面での軋轢が強くなるかもしれない。
俺自身に影響はないが、MS、そしてMAの技術発展の余計な障害が生まれるのは望ましくない。

「まったく」

余計な事をしてくれたものだ。
パイロットには『乱入者が来ても、可能な限り手を出すな』と口を酸っぱくして言い含めておいたというのに。
どうせ後で顔を合わせる事になるだろうし、聞くかどうかは知らないが一応文句を言っておいてやろう。

―――――――――――――――――――

……………………

…………

……

その後、ガンダムを迎撃しようとしたAEU軍のMSが、宇宙ではAEUのMSを使ったテロリストがぽんぽん破壊され、最終的にイオリア・シュヘンベルグの演説が流れるところまではほぼ原作通りの流れで話は進んだ。
何の変哲も無いし面白みもない、当たり前の敗北。
三本の矢は折れにくいが、予期せぬ強い力にはやはり折れる。
パイロットの性能が底上げされたからといって、それだけで対抗できるほどGN粒子関連技術は甘くない。

「なので、ひとまず落ち着いてくだサーイ」

インチキ外国人風の口調で、控室でロッカーを蹴りつけていたイナクトのパイロットを宥める。
癖の強い赤髪に、整ってはいるがやや軽薄そうな顔立ちのイナクトのパイロット、パトリック・コーラサワーは、声を掛けられて初めて俺の存在に気付いたらしい。
サワーは俺の存在に気付くやいなや、直ぐ様眉根を寄せた顰めっ面で、両手の平を上に向け、ワナワナと指を蠢かせながら詰め寄ってきた。

「これが落ち着いてられるか! 何なんだよあのちょっと格好良いMSは! 俺の見せ場を奪いやがってぇ……!」

侵入された事よりも撃墜されたことよりも、何よりイナクトのお披露目を邪魔された事が気に食わないらしい。

「『僧正の白玉掬い』という言葉もありマース。君の真の実力は、また次の機会に思い知らせてやるのデース」

「その次ってのは何時なんだよ」

「今はその時ではアリマセーン、今回はなるべく抵抗しないでおきましょう、デモンストレーション始まる前、ワターシそう言いましたヨー? 見せ場奪われた件はともかく、衆人環視の前で無様を晒したのは、あくまでも君のmistakeのせいネー」

「ぐ……わかってるっての! ジョーブ博士も、次にあのガンダムとかいうのと戦うまでに『何時もの』機体、万全にしておいてくれよ!」

「オー、科学に犠牲はつきものデース……。君達が全力を発揮できる機体、完全に仕上げておきマース」

「ふんっ!」

鼻息を鳴らしながらロッカールームへと向かっていくサワー。
興奮のし過ぎで金色に輝いていた瞳孔は元に戻り、ある程度の冷静さを取り戻した事が良く分かる。
半端に目覚めているからか、それとも元からの性格なのかは判然としないが、兎角戦闘に関してはプライドが妙に高い。
だが、最終的に軍の命令には忠実に従う真っ当な兵士タイプだから扱い易くもある。
このAEUでガンダムを一番早く仕留めるのは、やはりサワーになるだろうか。

「しかし」

人の居なくなった控室で独り言ちる。
AEUでガンダムを最初に仕留めるのはサワーだろうが、それは今ではない。
AEUはAEUで、先のデモンストレーションと、その後のガンダムとの戦闘から得られたデータをフィードバックするのに忙しく、現時点で捕獲できるかが怪しい未確認機そのものへの追跡は後回しにされると見ていい。

あの最初の襲撃の直後、ガンダムの迎撃に向かわなかった軌道エレベータの主力警備部隊を出す事もできないではないだろうが……。
あの軌道エレベータに駐留している主戦力は、あくまでも軌道エレベータの防衛の為だけに配置された部隊だ。
機体性能も『軌道エレベータの防衛と敵機の早期殲滅』を主眼に置いており、捕獲任務には余りにも向かない。
機体性能の問題だけでなく機体構造の関係から、エレベータを離れてガンダムの鹵獲や殲滅に向かうのも難しいだろう。

残る普通の駐留部隊は、まず出ない。出さない。間違いない。
エクシア、デュナメスとの戦闘で得たデータ、更に宇宙でテロリストを相手に戦ったヴァーチェとキュリオスのデータ。
これらを得ていながら、先走ってガンダム鹵獲に乗り出しはしないだろう。
AEUの上層部も馬鹿ではない、いや、それどころか人類から半歩踏み外し初めた連中が混ざっているのだから、もう少し勝算を得てから動くはずだ。

となれば次にガンダムに手を出せるのは、人革か、ユニオンか。
どちらの国も、先ほどのAEU軍やテロリストとの戦闘を観てガンダムの性能は思い知っただろう。
現行機で対応するのは難しく、しかし『手段を選ばなければ』対抗可能かもしれない、ガンダムという名の超兵器。
性能もさることながら、その出自から鹵獲して研究してもどこかに恨みを買う事もない。
この格好の餌を逃す馬鹿な国は、俺の知る限りこの世界には一国も無い。

「真っ先に鞘走りそうなのは、何処か、誰か」

組織としては、人革。
だが個人として見た場合は……。

―――――――――――――――――――

……………………

…………

……

──見つけた。
──見つけたぞ!

MSのカメラ越し、スクリーンを経由して自らの肉眼に写る光景に、グラハムは己の中に抑えきれない強い興奮を感じていた。
常に『あの』粒子を撒き散らしているガンダムという機体は、レーダーで捉えることはできない。
故に肉眼での視認のみで確認するしか見つける方法がない。
それは砂漠の中から一粒の小石を探り当てるのと変わらない程に困難だ。
真っ当な神経を、至極当たり前の常識を備えた者であれば、何らかの対策を立ててから捜索に挑むだろう。
だが見つけた。
幸運か悪運か、神の御業か悪魔の罠か、グラハムは自国ユニオンを含む三大国家の軍隊全てに先んじて、ソレスタルビーイングのガンダムとの接敵に成功してしまったのだ。

輸送機のレーダーが映した未確認機の反応、そこに最大望遠でピントを合わせた先にガンダムの姿は在った。
カタギリの静止を振り切り、フラッグに乗り込み輸送機から飛び出したグラハム。
彼の胸中に在ったのは如何なる思いであろうか。
確実に言えるのは、胸中に何を抱えていようとも、この瞬間の彼の脳内が人として異様なまでに純粋で澄み渡った状態であったという事だけだろう。
明鏡止水、クリア・マインド、鏡のごとく澄んだ水面に似て────つまり、複雑な事は何一つ考えていない。
無我にあらず無心にあらず、胸の高鳴りだけに従う知性と対極にある本能に程近い思考で持って、彼はガンダムに挑みかかる。
理由は分からない、いや、よくよく考えれば幾つかのはっきりとした心当たりを見つけることができる事はわかっていたが……彼はそこに思考を裂くつもりは(少なくともこの時点では)毛頭無い。

命令も無しにフラッグを動かしガンダムに挑む。
途中でカタギリや他のスタッフからの静止があったにも関わらず、躊躇うこと無くそんな真似をしている。
ともすれば軍法会議に掛けられて重い罰を受けねばならない程の独断専行。
しかし、罰せられたとして、その後に後悔を得ることはない。
組織人として守るべきルール、軍人として守るべき規律、それら全てを置き去りにグラハムは、フラッグは飛ぶ。

追いかけてくるフラッグに気が付いたガンダムが振り返る。
慣性を無視した急停止からの方向転換。
フラッグと向き合ったガンダムは、イナクトを破壊した大型の実体剣を展開し、フラッグに向かってくる。
航空力学を無視した完全なる人型での飛翔はしかし、飛行型MSの機動力に劣らず速い。
互いが相手に向けて加速し、両者の距離はあっという間にゼロへと近づいてく。
戦闘機形態のフラッグに近接戦闘能力は無く、ガンダムは目撃者の排除を容易く完了させる。筈だった。

「一曲踊ってくれるというのか。ならば──活目してもらおう!」

交戦距離に到達した瞬間、グラハムはフラッグをMS形態へと変形させ、再加速。
腕の付け根から抜き出したソニックブレイドを構え体当たり気味に接近するフラッグに、ガンダムの反応が僅かに揺らぐ。
さもありなん。フラッグは空戦陸戦にフレキシブルに対応し、オプションパーツさえ装着すれば宇宙での活動すら可能とする全領域対応型のMSだが、変形機構は地上でのみ使用可能であり、空中での使用は想定されていない。
空中で、しかもある程度の速度を維持したまま変形などしようものなら空気抵抗を受けて減速からの墜落は免れられず、変形時の速度によっては墜落前に可変部のパーツが破損してしまう可能性すらある。
だが、目の前のフラッグはいとも容易く空中変形をこなしてみせた。
本来のスペックであれば有り得ないことだ。
そう、『フラッグ本来のスペック』であれば。

「我が友とその師が作り上げた機体、君にもそう劣る物ではない」

既にガンダムのパイロットは気が付いているだろうか。
グラハムの駆るフラッグ、その細かな意匠が、ヴェーダから与えられたフラッグのデータと異なる事に。
軌道エレベータ建設時、各地の戦場で度々目撃されたアンノウンの残骸を解析して得られたデータを元に開発された新機軸の機構を搭載され、その性能は通常のフラッグを大きく上回る。
これこそユニオンの誇る真の最新鋭機、試作型全領域対応高機動可変MS、その名はアンノウンの残骸からサルベージされた機体の機種名に肖り──

「人呼んで、フラッグ・G・SPT(グラハム・スペシャルタイプ)! 推して参る!」

SPT──Super Powered Tracer(スーパー・パワード・トレーサー)
最早地球の、ユニオンの技術として取り込まれた地球外技術。
それはフラッグにガンダムを凌駕する加速力を与え、一つの流星を生み出す。
空気抵抗を軽減し耐熱性と放熱性を高める効果もある特殊な塗料で海のように空のように深い青に染め抜かれたその姿は風に靡く旗(フラッグ)か、いや、残像の尾を引き飛ぶ姿は正に青い流星と表現するに相応しい。

衝突、異音と共に輝く粒子が両機を照らし上げる。
プラズマ刀身と大型実体剣の鍔迫り合いは、徐々に基部であるソニックブレイド部分が融解を初め、武装に使用される技術差を、そして、押しも引きもせずただ押し合う両機の推力に差がない事を証明した。
この場で拮抗を崩すのはどちらか。
鍔迫り合いに時間制限を設けられているフラッグと時間無制限のガンダムでは余りにも条件が違う。
ガンダムは相手の挙動に注意しながら鍔迫り合いを続けるだけで敵の武装を一つ取り除く事が可能であり、フラッグはソニックブレイドが融解するよりも早く現状を打破しなければならない。
そしてその条件すら、この競り合いが互いの限界の上で成り立っているという前提が合って初めて成り立つ。

拮抗はあっさりと崩された。
ガンダムの背から緑色の粒子が更に溢れだしたかと思えば、不自然に剣の重みが増し、ソニックブレイドを力任せに弾き飛ばしたのだ。
拮抗を崩され武装の一つを失い、しかしグラハムの表情には濃く笑みが浮かんでいる。

「やはり圧倒されるか、だが!」

ガンダムが剣を振り翳し迫る。
厚みのある大きな刀身を持つガンダムの剣は、先の拮抗を崩した時とは打って変わって重さをまるで感じさせない速度。
大型剣のリーチにナイフのような軽やかな取り回し、慣性を無視したガンダムの機動。
近接戦に特化しているだろうこのガンダムにとっての必殺の間合いに必殺の状況。
フラッグの性能であれば、ソニックブレイドを弾き飛ばされた反動を利用して距離を取るのが得策だろう。
しかし、このフラッグはフラッグであってフラッグではない。

「一曲ならずとも、一手付き合って頂こう。そして──!」

あろうことか、グラハムは距離を取り剣の射程から出るどころか、逆に剣の軌道の中に飛び込んでみせた。
ガンダムのパイロットは困惑しつつも、それを操縦には表さず冷徹にフラッグとそのパイロットの生命を刈り取らんと剣を振り抜く。
パイロットの知識の中にあるユニオンのフラッグであれば、確実に避けることが出来ない、筈だった。
現実として現れた結果は、ウイングの先端を僅かに削られただけのフラッグという形で、剣の軌道の射程外、斬撃の内側に存在した。
流星の如く一直線に、拳闘のインファイターにも似た姿勢で。

──回避された原因は何か。
考えるまでもなく、ユニオンのデータベースに記されているフラッグのカタログスペックを凌駕する異常な推力だろう。
特殊なカスタマイズが施されたワンオフ機にのみ許された機動性こそが避けられた原因であると、一瞬の攻防の内にガンダムのパイロットは当たりをつけた。
間違いではない。だが、完全な正解とは言い難い。
ガンダムのパイロットがこの瞬間、振り下ろした剣の軌道を改めて確認していれば気付けただろうか。
フラッグのマニピュレーターを覆う、紫電迸る金属の塊──ナックルショットに。

破砕音。
それは双方の機体から同時に発せられた。
如何にソレスタルビーイングですら知り得ない技術で製造された装備とはいえ、その基礎に有るのはユニオンが元から持つ技術でしかなく、完全再現には程遠い。
ガンダムの装甲を強かに殴りつけたフラッグの腕はひしゃげ、マニピュレーターとしての機能を完全に失った。
片側だけとはいえマニピュレーターを失ったフラッグの火力は激減し、頼みの綱のガンダムに対抗できる可能性のある特殊兵装は破壊され、最早完膚なきまでにグラハムの勝機は消え失せたと言って良い。
貴重な極秘開発の試作機を破壊し、しかしグラハムの顔には僅かに苦く、しかし濃く深い笑みが浮かんでいる。
何故か。

その理由は『フラッグのマニピュレーターの中』にあった。
白い装甲の破片。
一瞬の交錯、マニピュレーターが自壊する程の激しい激突によって生まれた衝撃を物ともせず、グラハムはナックルショットによって破壊され剥がれ落ちた装甲の一部を、無傷のまま温存しておいた片腕で掴み取ってみせたのだ。

勝ちに行く、撃墜する、捕獲するという選択肢を自ら捨て去って掴んだ、現状最良最優の結果。
ソニックブレイドを失い、虎の子であるナックルショットはマニピュレーターごと大破。
更に言えば、SPTの残骸を元に開発中のレーザードライフルを搭載予定のこの機体は、通常のフラッグであれば搭載されていたはずのリニアライフルを搭載していない。
そう、これが、ユニオンでも指折りのエースと、最高機密と言って言いレベルの試作機を用いて得られる、最大の戦果。
各地に配備されていた各国のMSを圧倒したガンダムを相手に、終始自分のペースでグラハムは戦ってみせた。
そして、ここまででどの勢力も手に入れていないガンダムの装甲を、その秘密の一端を手にした。
だが、そこが限界であるとも言える。
ソニックブレイド、片腕、ナックルショット。
これらを駆使し、酷使し、失って、ユニオン最優に近いエースパイロットであるグラハムが全力で戦い、一掴み程度の装甲を手に入れる事しか出来ない。
数合のやり取りの中で得た、グラハムの戦士としての結論がそれであった。
これ以上を求めるとして、この機体だけでなく自らの命全てを掛けて尚、ガンダムの首級を上げるには至らない。

機体性能で上回る相手に対し、攻撃を通させず、自らは相手の手掛かりを掴み取る。
それは表面上の交戦記録からは察することが出来ない程の危うい綱渡りの末に成し得たことであり、そこには確かなスリルがあった。
テストパイロットとして、命を燃やすギリギリのフライトを行っていたあの時代に通じる感覚を、グラハムは確かに感じていただろう。
だが、だがしかし、そこまでだ。
グラハムには押し留まるに足る理由が、自らの感情に蓋をするだけの経験があった。

こちらを侮る相手を出し抜き、しかし決定的な反撃を行うには確かに力が足りない。
故にグラハムは笑う。
自らを、そして相対したガンダムを、ソレスタルビーイングを。
それは自嘲の笑みであると同時に、歯を剥き出しにした原始的な、攻撃の意思を含んだ笑み。

「覚えておいて貰おう。『次は勝つ』と!」

命のやりとりを行う戦場にて『次』に賭けなければいけない自分の無力さを嘲笑い、だからこそ、その有り得るべきでない『次』にこそ、必ず喉元に喰らい付く、と、歯(きば)を剥き出して笑い掛ける。
そしてグラハムの、フラッグの次の一手はこれまでのどの攻撃よりも鋭く、迅速に。
逃げた。
転身、戦略的撤退。
未確認機──SPTの解析により、より余裕を持った構造へと進化したフラッグの変形機構は、斬りかかる時より尚疾くその身を変じさせる。
装甲片を掴んだ手はそのままに、機体の一部破損などに一切影響を受けず、加速。
ガンダムに背を向け、脇目も振らぬ一目散の大逃走。
追うか追わざるか、一瞬の逡巡を見せたガンダムの姿を確認する事もなく、グラハムの駆るフラッグは既存の戦闘機を凌駕する速度で持って、戦闘領域から離脱した。

―――――――――――――――――――

輸送機に戻ったグラハムを、嘆息を吐きながらカタギリは出迎えた。

「いやはやまったく、本当に予測不可能な人だよ、キミは」

カタギリの呆れとも感嘆とも付かない感情の込められた言葉に、グラハムは僅かに悔しさを滲ませた表情で返す。

「試作機をあそこまで破壊してしまった。始末書で済めばいいが」

ヘルメットを手に下げたグラハムが振り向いた先には、正しく満身創痍という表現が相応しいフラッグに、無数の整備員が取り付いている。
彼等はフラッグG・SPTの調整の為に同道していた専属の整備班だ。
ユニオンにとっては新しい技術の塊であるこのフラッグは、一度出撃したが最後、仮に無傷で帰還したとしてもオーバーホールが必要になる。
更に言えば通常のフラッグとは共用できない部品も多くあり、機体構造もフラッグとは異なる点が多く整備ノウハウも未だ確立していない。
そんな機体が、大破寸前と言って良いレベルの損傷を抱えて戻ってきたのだ。
しかもそれが誰の許可も得ていない、テストパイロットの独断による出撃の結果ともなれば、下される処分は如何なるものになるだろうか。

「その点については安心していいよ。今回の戦闘で得られたガンダムのデータに、グラハムスペシャルの貴重な実戦での稼働データ、これだけでもお釣りが来る。それに加えて持ち帰った装甲の一部、これからガンダムの足取りを追えるかもしれないし、当然、あの強固な耐久性の秘密も明らかにできるかもしれない」

もしかしたら、昇進だって有り得るかもしれないよ?
そう愉快そうに笑うカタギリに、グラハムは苦笑を返すしか無い。
フラッグのトライアル以来の付き合いで、最早友と言って差し支えない彼が何を考えてそんな事を言っているかは大体予想が付く。
グラハムを安心させる意図もあるだろうが、既に彼の興味の大半はグラハムが持ち帰った各種データとガンダムの装甲片に向けられている。

太陽光紛争以来、各国で秘密裏に出所不明の新技術を導入したMSが開発されているのは、MS開発者の間では周知の事実。
そんな時代に現役でMS開発、しかも大国ユニオンの主力MS開発において舵取りを任されている彼のモチベーションは常人では計り知れない程に高い。
学ぶべき知識は多く、ガンダムという形で未知の技術がカタギリに学ばれたがっている(少なくともカタギリの頭の中では)現状、新技術を使いこなせる優秀なパイロットは一人として失うべきではない。
友への慰め三割、優秀なパイロットのモチベーション維持が七割というのが、カタギリの感情の内訳だろう。

「それにしても、いいパイロットだった」

心ここにあらずといった表情で呟く。

「解るのかい?」

「匂いでな。歴戦の戦士、という訳ではないが、落ち着きもあり思い切りもいい」

機体の動きからでも、パイロットの鍛え方が解る。
プロファイリングが出来るわけでもないが、一目で戦士と解る逞しい姿をしているのだろうと確信できた。

『ガンダム、ロストしました』

索敵班からの通信。
特殊粒子を使っての逃走だろう。
グラハムの機体と違い、この輸送機は特別な技術の搭載されていない標準的な機体でしかなく、レーダーで捉えることができなくなってしまった時点でガンダムを追い続けることは不可能。

「フラれたな」

肩を竦めて言うグラハムの表情に憂いはない。
仕掛けたのはこちらからだが、余程のことがない限りあちらから追撃を受けることはないだろうという予感はあった。
未知の粒子による撹乱を行わず移動にのみ専念していたかのガンダムは、恐らくこちらに構っている暇など無いのだろう。
武力介入に向かう途中か、それとも秘密の基地に整備に向かう途中か。
機密保持の為に戦う事もあるだろうが、恐らく今回奪い取った装甲は、ソレスタルビーイングにとって解析されてもそれほど問題には成らない程度のものでしかないのだろう。

だが、軍も何時までもソレスタルビーイングを、ガンダムを放置しておくことは無い。
彼等の行為が悪質なテロ行為である事には変わりなく、彼等の持つガンダムに利用されている技術も魅力的だ。
各国の軍が対ソレスタルビーイング用の部隊を結成するのは時間の問題だろう。
そうなれば、ガンダムとの交戦経験を持ち、なおかつ撃墜されずに手傷を追わせての離脱に成功したグラハムも招集される可能性が高い。

「いや」

違う。
そんな細かな理屈で図れる物ではない。
あのガンダムと自分の間には、赤い糸にも似た運命の結びつきとも言える『何か』がある。
根拠はない。そう感じた。むしろ、そう感じたいからそう感じたと無理矢理に確信を得た事にしたのだ。
そして、自らがそう心の中で強く確信を抱き続けている以上、それは決して絵空事では終わらない。
そう遠くない未来での再会の予感に、口の端を不敵に釣り上げた。

―――――――――――――――――――

……………………

…………

……

AEUの何処か、軍人でも一部の特殊な連中しか知らない、某米の国のエリア何十何的な秘密の区画。
地下に広がる広大な敷地には、ズラリと並ぶ異形の数々。
異形の正体は、MS全盛のこの時代では考えられない大量のMA。
そのどれもが、AEUに回収させた断片技術を組み合わせ、AEUの技術者に学ばせながら造らせたり造ったりした最新技術の塊だ。
勿論、つい先日お披露目を行ったイナクトが最新鋭機で無いという訳ではない。
実際、イナクトも最新鋭機であることに変わりはない。
純粋にAEUが積み上げてきた技術の集大成として考えれば、紛れも無くAEUが現在望める最高の性能を持っていると言って良い。
だが、AEUの最新鋭『MS』という肩書は、各国が、それこそAEUそのものが想像するよりも遥かに意味も価値も薄い。

目の前に広がる無数のMA、これこそ、AEUが真の実力を発揮できる分野なのだ。
非GNドライブ搭載兵器によるタイマンでガンダムを追い詰めたという実績は、パイロットがこの世界でもトップクラスの実力の持ち主であった事を加味しても十分に評価に値する。
そして、AEUの技術者達が心血を、魂を注ぎ込んで作り上げたこのMA軍団は、決してガンダムに引けを取るものではない。
少なくとも、AEUの技術者達はそう信じて疑わないだろう。

蒔いた種は続々と芽吹きの時を迎えつつある。
AEUの様に俺が直々にテコ入れを行った訳ではないが……だからこそ、彼等の発展は有意義なものになる。
ユニオンはSPTの技術を着実に解析しつつ、再現不能な部分は既存技術を応用することで補填し、総合的にはユニオン独自のカラーを残しながら発展しているように見える。
現状ではエースを乗せた最新鋭機であの程度の戦果しか挙げられなかったが、未来に目を向ければその展望は決して暗くない。

「さっさとAEUの本領を見せてやりたいけど……順番待ちか」

テコ入れした手前、多少なりとも活躍させてやりたいのが親心というもの。
しかし、物事にはタイミングというものがある。
ソレスタの作戦スケジュールから考えるに、次にガンダムに対して隠し球をぶつけられるのは、間違いなく人革だ。
こちらからあれこれ干渉してAEUの順番を先にする事も出来ないではないだろうが、それはフェアではない。
切磋琢磨していくのであれば、正々堂々とは言わずとも、最低限守るべきルールというものがあってしかるべきだろう。

「さて、それじゃあ次は」

ユニオンに続き、今度は人革のターン。
超兵の養成機関はあっさりと破壊されてガンダムにも逃げられてしまったが、今度の接触ではそうは行くまい。
人革領に近づくガンダムのマイスターは、間違いなく現在の人革が誇る最新鋭機に度肝を抜かれるだろう。
今の彼等はそう、ある意味では三国の中で最も先を行く者達なのだから。

―――――――――――――――――――

……………………

…………

……

人革領セイロン島にて、セルゲイ・スミルノフは部下からの報告を受けていた。

「三機目がこのセイロン島に現れただと?」

「は、第七駐屯地です」

その報告に周囲に居た兵士たちがこぞって動揺の声をあげ、ざわめき始める。
セルゲイは彼等に対して僅かに掌を向けてみせるだけで制し、兵士の一人に告げた。

「新型は出せるな? 私が出る」

「中佐ご自身が、ですか」

一度収まった筈の兵士達のざわめきが、より激しさを増して蘇った。
しかし、ざわめきに含まれる感情は先の様に動揺ばかりではなく、期待が多く含まれていた。

「私は自分の目で見たものしか信じん。ガンダムという機体の性能、ここで見極めてみせよう」

視線の先にあるのは格納庫の奥行きを覆い隠す薄い闇。
ティエレンや、回収したガンダムのミサイルコンテナなどが収められている格納庫の中に、ここ数年で彼の愛機と言って良い程に慣れ親しんだMSが存在している。
新型と呼べるほど完成度の高くなかった試験機時代から何かと関わってきたそのMSは、彼にとっては現行機であるティエレンよりも信頼のおける機体だと言えた。

「戦争根絶とやらの覚悟が嘘であれ真であれ、武力介入で多くの同胞の命を奪った償いはして貰うとしよう。この私と──」

照明が点灯し、闇のヴェールが剥がされた。
浮かび上がるシルエットは、MSと言うには明らかな異形。
MAの様に人型を逸脱した形状を備えている訳ではなく、しかし、どうしようもない程にMSのイメージから離れてしまっている。
喩えるならば、死した巨人の躯。
喩えるならば、生まれる前の胎児
不完全で未完成な姿は、死と生の両方を見る者に想起させる不安定さをも内包し。
装甲も無く剥き出しの人に近い骨格(フレーム)、内部機構を内蔵に例えるのならば、やはりそれは死神にも見える。

「先行者(シャンシンジェ)の力で、な」

セルゲイの重苦しい宣言に答えるように、赤い頭部センサーが不気味に輝いた。




続く
―――――――――――――――――――

葛藤する姿が可愛い女の子の出番を生贄に捧げてインテル入ってるコーラサワーと確変入った三大国家MS開発チームを召喚した第八十四話をお届けしました。

今回ほぼ戦闘しかありませんでしたね。
花がないというかなんというか、コメディ色が無いというか、シリアスとメカしか無いというか。
しかもこれ、あれこれ展開とか修正していたらソレスタ側の場面が殆ど消えて今後も花とか殆ど無い可能性があるっていう。
まぁプロットどころか大まかな展開のメモでしかないから女性キャラの出番が多少増える可能性も無いでは無いのです。
シリアスなのは、たぶん主人公視点が殆ど無いから、かなぁ……。

数カ月ぶりの自問自答コーナー。
Q,ソレスタ活動開始前からGN粒子の目撃者が存在してるけど、ソレスタって機密保持にはガチ対応で割りと人殺しも辞さない構えじゃ……。
A,太陽光発電紛争時、出撃予定が把握されている可能性を考慮せざるを得ない程に謎のアンノウンに襲撃を受ける時期が存在した為、各国の防諜技術が上がってます。
回収した異世界技術を解析して作り上げられた機体は完全にオフライン環境下で開発が進められ、ソレスタの諜報員は同じ場所に居たイノベイドに処分されたり。
Q,ガンダムの癖にコーラサワー搭乗イナクト程度に苦戦するなんて幻滅しました。那加ちゃんのファン辞めます。
A,舞チンアンソロ二巻は女性提督多めな気が。レズはホモ、はっきりわかんだね。
というか原作からして普通にエース級でしたし、事前に襲撃を予告されていて、なおかつ原作よりもスペックが高ければこうもなります。
Q,ジョーブ博士? オリキャラ?
A,確率で被験体に革新を齎す手術を施すのが趣味の謎の天才科学者、ジョーブ・マサル(丈夫・大)博士です。
AEUの科学を発展させるために犠牲をコンスタントに出し続けるAEUの犠牲担当(出す方)でもあります。
要約すると、主人公が息抜きとしてAEUで好き勝手MA作るためのアバターです。
それでも一応アグリッサという割と輝かしい戦果を持ったMAが存在するため、AEU出身の技術者にちょっとした技術指導を行ったりも。
Q, ガンダムと互角、このフラッグG・SPT凄いぞ……5倍以上のエネルギーゲインがある。
A,ありません。動力源は水素エンジンそのままです。
でも多分原作よりも軌道エレベータからの無線電力供給アンテナは強化されてる筈。
この場合、主に強化されてるのはユニオンの電力供給ネットワークであってフラッグ自体の強化はおまけですね。
Q,ていうか真っ当な技術を学ぶ為のトリップで、各国に異世界技術を学ばせるのは悪手なんじゃないの?
A,現行技術全てを塗り替えて過去のものにする程大量の技術が取り込まれてる訳ではないのでセーフです。
ガンダム、というかGN粒子関係の技術に圧倒されない程度に全体の技術を底上げし、なおかつ技術発展を加速させる程度の技術だけが意図的に残るように仕掛けてあります。
更に言うなら、GNドライブというトンデモ技術が存在しない真っ当な系統樹は
あと、OO本編の時間軸に到達した時点でGNドライブに対抗できる技術がないと、結局GNドライブ関連技術に押し潰されてしまうので、手を出さないのも問題が有りました。
なので原作SPTの様な無茶な機動性と頑強さをそのまま再現できるようにはなりません。
精々がブレイブに準ずる機体が数年前倒しで登場する程度です。
Q,女の子出ないの? 次の話辺りで王留美とか。
A,次話……そんな先の事はわからない。
いや実際問題、全体の流れとして必要な部分だけを見ていくと、多分ギリギリでプトレマイオスの女性陣とかは出せるかなぁ、程度の見通しがあるような無いような。
たぶんあれです、次の話書いてて、女性を描写したくなったら書きます。
Q,逞しい……?
A,そう、逞しい……。あ、刹那さんはあんまり逞しくないです。
むしろ少年兵時代のあの顔つき体つきだと間違いなく後ろ非処女ですよねせっさん。
Q,セルゲイさんって信頼の置ける兵器にしか乗らないイメージがあるけど、謎技術使った新型で迎撃に出るとか有り得るの?
A,そもそも出処が超絶怪しいGN-Xとかに平気で乗っちゃいますし。
シャンシンジェに関しては、実戦配備はまだでも開発の過程と実際の性能を知っているから信頼している的なあれです。


だいたいこんな感じでー。
一ヶ月で投稿とか言っておいて遅れたのはあれです、転職して引っ越して生活環境が激変したのが原因でありまして。
SS書く時間が無いとは言いませんが、実家暮らしの時と比べるとどうしても……。
ちょっと間が開きすぎてSS書く感覚も少し鈍っていると言いますか。
書いててなんだか違和感を感じますし。
最終手段として、適当にこのSSと関係ない新しいSSを一、二話くらい書いて慣らすという手も有るにはありますが、これはエタを誘発するのでなるべく避けようと思います。
EX!転生原作主人公双子モノとか用意があります。書いても間違いなくオリジナルの原作プレストーリーで頑張りすぎて原作一巻目に到達前のエタを確約できるレベルですが。
ああいうのって、素直に原作に突入した時点で『俺達の戦いは続く……!』みたいにすれば打ち切りであってもエタらないで済むと思うんですけどなんでエタるんですかね?

では今回もここまで。
誤字脱字の指摘、文章の簡単な改善方法、矛盾している設定への突っ込み、文章に対する違和感、その他諸々のアドバイス、そしてなにより、このSSを読んでみての感想、心よりお待ちしております。



―――――――――――――――――――

踏み出した先、世界は既に動き始めていた。
彼等の歩みよりも遥かに早く、歯車を軋ませながら世界は回る。
待ち受けるは未知の機体、未知の技術、未知の動き。
異端を形作る物はやはりその全てが異端。
しかし変わらず曲がらぬ信念を芯に据え、異貌の機兵は立ち塞がる。
変えようとするもの、変わりつつあるもの。
二つの意思は必ずしも噛み合うものではない。

次回、第八十五話
『先行者(ネクスト)の脅威』


前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.032925128936768