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No.14434の一覧
[0] 【ネタ・習作・処女作】原作知識持ちチート主人公で多重クロスなトリップを【とりあえず完結】[ここち](2016/12/07 00:03)
[1] 第一話「田舎暮らしと姉弟」[ここち](2009/12/02 07:07)
[2] 第二話「異世界と魔法使い」[ここち](2009/12/07 01:05)
[3] 第三話「未来独逸と悪魔憑き」[ここち](2009/12/18 10:52)
[4] 第四話「独逸の休日と姉もどき」[ここち](2009/12/18 12:36)
[5] 第五話「帰還までの日々と諸々」[ここち](2009/12/25 06:08)
[6] 第六話「故郷と姉弟」[ここち](2009/12/29 22:45)
[7] 第七話「トリップ再開と日記帳」[ここち](2010/01/15 17:49)
[8] 第八話「宇宙戦艦と雇われロボット軍団」[ここち](2010/01/29 06:07)
[9] 第九話「地上と悪魔の細胞」[ここち](2010/02/03 06:54)
[10] 第十話「悪魔の機械と格闘技」[ここち](2011/02/04 20:31)
[11] 第十一話「人質と電子レンジ」[ここち](2010/02/26 13:00)
[12] 第十二話「月の騎士と予知能力」[ここち](2010/03/12 06:51)
[13] 第十三話「アンチボディと黄色軍」[ここち](2010/03/22 12:28)
[14] 第十四話「時間移動と暗躍」[ここち](2010/04/02 08:01)
[15] 第十五話「C武器とマップ兵器」[ここち](2010/04/16 06:28)
[16] 第十六話「雪山と人情」[ここち](2010/04/23 17:06)
[17] 第十七話「凶兆と休養」[ここち](2010/04/23 17:05)
[18] 第十八話「月の軍勢とお別れ」[ここち](2010/05/01 04:41)
[19] 第十九話「フューリーと影」[ここち](2010/05/11 08:55)
[20] 第二十話「操り人形と準備期間」[ここち](2010/05/24 01:13)
[21] 第二十一話「月の悪魔と死者の軍団」[ここち](2011/02/04 20:38)
[22] 第二十二話「正義のロボット軍団と外道無双」[ここち](2010/06/25 00:53)
[23] 第二十三話「私達の平穏と何処かに居るあなた」[ここち](2011/02/04 20:43)
[24] 付録「第二部までのオリキャラとオリ機体設定まとめ」[ここち](2010/08/14 03:06)
[25] 付録「第二部で設定に変更のある原作キャラと機体設定まとめ」[ここち](2010/07/03 13:06)
[26] 第二十四話「正道では無い物と邪道の者」[ここち](2010/07/02 09:14)
[27] 第二十五話「鍛冶と剣の術」[ここち](2010/07/09 18:06)
[28] 第二十六話「火星と外道」[ここち](2010/07/09 18:08)
[29] 第二十七話「遺跡とパンツ」[ここち](2010/07/19 14:03)
[30] 第二十八話「補正とお土産」[ここち](2011/02/04 20:44)
[31] 第二十九話「京の都と大鬼神」[ここち](2013/09/21 14:28)
[32] 第三十話「新たなトリップと救済計画」[ここち](2010/08/27 11:36)
[33] 第三十一話「装甲教師と鉄仮面生徒」[ここち](2010/09/03 19:22)
[34] 第三十二話「現状確認と超善行」[ここち](2010/09/25 09:51)
[35] 第三十三話「早朝電波とがっかりレース」[ここち](2010/09/25 11:06)
[36] 第三十四話「蜘蛛の御尻と魔改造」[ここち](2011/02/04 21:28)
[37] 第三十五話「救済と善悪相殺」[ここち](2010/10/22 11:14)
[38] 第三十六話「古本屋の邪神と長旅の始まり」[ここち](2010/11/18 05:27)
[39] 第三十七話「大混沌時代と大学生」[ここち](2012/12/08 21:22)
[40] 第三十八話「鉄屑の人形と未到達の英雄」[ここち](2011/01/23 15:38)
[41] 第三十九話「ドーナツ屋と魔導書」[ここち](2012/12/08 21:22)
[42] 第四十話「魔を断ちきれない剣と南極大決戦」[ここち](2012/12/08 21:25)
[43] 第四十一話「初逆行と既読スキップ」[ここち](2011/01/21 01:00)
[44] 第四十二話「研究と停滞」[ここち](2011/02/04 23:48)
[45] 第四十三話「息抜きと非生産的な日常」[ここち](2012/12/08 21:25)
[46] 第四十四話「機械の神と地球が燃え尽きる日」[ここち](2011/03/04 01:14)
[47] 第四十五話「続くループと増える回数」[ここち](2012/12/08 21:26)
[48] 第四十六話「拾い者と外来者」[ここち](2012/12/08 21:27)
[49] 第四十七話「居候と一週間」[ここち](2011/04/19 20:16)
[50] 第四十八話「暴君と新しい日常」[ここち](2013/09/21 14:30)
[51] 第四十九話「日ノ本と臍魔術師」[ここち](2011/05/18 22:20)
[52] 第五十話「大導師とはじめて物語」[ここち](2011/06/04 12:39)
[53] 第五十一話「入社と足踏みな時間」[ここち](2012/12/08 21:29)
[54] 第五十二話「策謀と姉弟ポーカー」[ここち](2012/12/08 21:31)
[55] 第五十三話「恋慕と凌辱」[ここち](2012/12/08 21:31)
[56] 第五十四話「進化と馴れ」[ここち](2011/07/31 02:35)
[57] 第五十五話「看病と休業」[ここち](2011/07/30 09:05)
[58] 第五十六話「ラーメンと風神少女」[ここち](2012/12/08 21:33)
[59] 第五十七話「空腹と後輩」[ここち](2012/12/08 21:35)
[60] 第五十八話「カバディと栄養」[ここち](2012/12/08 21:36)
[61] 第五十九話「女学生と魔導書」[ここち](2012/12/08 21:37)
[62] 第六十話「定期収入と修行」[ここち](2011/10/30 00:25)
[63] 第六十一話「蜘蛛男と作為的ご都合主義」[ここち](2012/12/08 21:39)
[64] 第六十二話「ゼリー祭りと蝙蝠野郎」[ここち](2011/11/18 01:17)
[65] 第六十三話「二刀流と恥女」[ここち](2012/12/08 21:41)
[66] 第六十四話「リゾートと酔っ払い」[ここち](2011/12/29 04:21)
[67] 第六十五話「デートと八百長」[ここち](2012/01/19 22:39)
[68] 第六十六話「メランコリックとステージエフェクト」[ここち](2012/03/25 10:11)
[69] 第六十七話「説得と迎撃」[ここち](2012/04/17 22:19)
[70] 第六十八話「さよならとおやすみ」[ここち](2013/09/21 14:32)
[71] 第六十九話「パーティーと急変」[ここち](2013/09/21 14:33)
[72] 第七十話「見えない混沌とそこにある混沌」[ここち](2012/05/26 23:24)
[73] 第七十一話「邪神と裏切り」[ここち](2012/06/23 05:36)
[74] 第七十二話「地球誕生と海産邪神上陸」[ここち](2012/08/15 02:52)
[75] 第七十三話「古代地球史と狩猟生活」[ここち](2012/09/06 23:07)
[76] 第七十四話「覇道鋼造と空打ちマッチポンプ」[ここち](2012/09/27 00:11)
[77] 第七十五話「内心の疑問と自己完結」[ここち](2012/10/29 19:42)
[78] 第七十六話「告白とわたしとあなたの関係性」[ここち](2012/10/29 19:51)
[79] 第七十七話「馴染みのあなたとわたしの故郷」[ここち](2012/11/05 03:02)
[80] 四方山話「転生と拳法と育てゲー」[ここち](2012/12/20 02:07)
[81] 第七十八話「模型と正しい科学技術」[ここち](2012/12/20 02:10)
[82] 第七十九話「基礎学習と仮想敵」[ここち](2013/02/17 09:37)
[83] 第八十話「目覚めの兆しと遭遇戦」[ここち](2013/02/17 11:09)
[84] 第八十一話「押し付けの好意と真の異能」[ここち](2013/05/06 03:59)
[85] 第八十二話「結婚式と恋愛の才能」[ここち](2013/06/20 02:26)
[86] 第八十三話「改竄強化と後悔の先の道」[ここち](2013/09/21 14:40)
[87] 第八十四話「真のスペシャルとおとめ座の流星」[ここち](2014/02/27 03:09)
[88] 第八十五話「先を行く者と未来の話」[ここち](2015/10/31 04:50)
[89] 第八十六話「新たな地平とそれでも続く小旅行」[ここち](2016/12/06 23:57)
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[14434] 第七十九話「基礎学習と仮想敵」
Name: ここち◆92520f4f ID:b6e2479d 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/02/17 09:37
○月○日(いおりんの技術が世に出回り始めて)

『ゆっくりとしたものではあるが、確実に進化を続けているように思える』
『軌道エレベータ構想発表当初にセットで初期型のワークローダーが発表されたのも今は昔のお話』
『軌道エレベータを効率的に建造するためにマニピュレーターは複雑かつ精密な動作を求めて人の動きを正確にトレースできるように進化していったし』
『整備頻度を下げる為に機体の素材に軌道エレベータの建材と同じEカーボン(現実のカーボン・ナノチューブよりも遥かに強度があるステキ素材だ)を採用し始めたりもした』
『いきなりとんでも技術が生み出されたり思いついたりするスーパー系やマジキチ系技術ではない、ゆっくりとした技術の発展だからこそ感じられる進化の軌跡はやはり美しい』
『急速に発展したこの優れた工作機械が、物を壊し人を殺す機械へと進化を始めたのは当然の結果と言えるだろう』
『建造中の軌道エレベータの防衛用に武装が施されたのが始まりとはいえ、中々に感慨深いものがある』
『俺も何だかんだで地球上に栄えた知的生命体を何種も見てきたが、やはり人類は物事を暴力に上手く繋げられる種族的な才能を持ち合わせているのだろう』

『さて、ここ数十年の間で、武装化されたワークローダーがようやく俺のよく知るMS群に良く似た姿へと進化を始めた』
『それというのも、最初から軌道エレベータと太陽光発電施設の建造にチャチャを入れていた石油関連企業と石油産出国のお陰だ』
『地球規模の大掛かりな太陽光発電の普及が現実的なものとなり、石油の流通が規制され始めた事に反発し、周辺国と小競り合いを始めてくれたのである』
『そういった中で多発した紛争で、武装したワークローダー──MS(モビルスーツ)の兵器としての優位性が証明されたのだ』

『よく「人型兵器とか戦車と戦闘機の的(まと)にしかなりませんからwww」などという話を聞くが、少なくともこの世界ではそうはならない』
『なにせ初期のMSは極めて小型(後のMSに比べればという前提付きだが)で、かつ、Eカーボンによって軽量かつ重装甲で生存性が高く、手先が器用で重量物も軽々持ち運べるとあって大型の銃砲火器を使用可能』
『戦車や戦闘機の装甲をEカーボンにすればいいではないか、などという言い訳は通用しない。それら既存兵器は装甲部分を除いても重すぎる。少なくともこの世界では重い。断じて重いのだ。反論はスルー』
『ともかく、少なくともこの世界の技術は、既に戦車や戦闘機の構造を効率的に作り変えるよりも、MSに戦車の代わりを務めさせ、戦闘機としての機能を追加した方が早い程にMSに偏重したのである』

『戦場を提供してくれた中東、後の貧乏姫の領土の偉い人たちには感謝してもしきれない』
『仮に彼等が軌道エレベータの建造を妨害したり、太陽光発電に積極的に手を貸そうとした周辺国に喧嘩を売ったりしなければ、MSの開発は数十年は遅れていただろう』
『時代的には貧乏姫の祖父さんか親父さん世代という事になる筈なのだが、うむ、流石はゴロゴロ死体などという鬼畜な歌を歌う姫の親世代である。きっと戦争とか大好きだったんだろう』

『因みにこの太陽光紛争の際、人型のワークローダーの進化系であるMSではカバーしきれない部分を補う為に、新たに人型ではないMA(モビルアーマー)という形式の兵器が生み出されていく事になった』
『ここらへんの流れは他のガンダム世界とは少し異なるひねった部分なのだろう』
『非人型兵器から進化して人型になるのではなく、人型作業機械を兵器化し通常兵器を脇に押しやり、その後にMSとは別口で非人型兵器であるMAを作ったのである』
『なお、戦車や戦闘機などもこの世界では広義の意味でのMAに分類されるらしく、現時点ではMSの脇を固める兵器もそれらの発展系のようなものばかり』
『まだそれほどゲテモノ臭いMAが登場していないのが残念でならない。精々がアグリッサくらいとなのだから、俺の寂しさも推して知るべし』

『さてさて、話は戻りMSのお話だ』
『紛争開始当初は似たような設計思想だったものの、ここ数年の間に国の風土や用途に合った独自の路線が確立され始め、それぞれの国の特色が出始めている』
『人類革新連盟は、太陽光発電紛争初期に作り上げたファントンの系譜である陸戦主体のティエレンへと移行を始めた』
『これは隣国へ喧嘩ふっかけたり、内部での紛争を収めたりするのがメインの目的として設定されていたというのと、人革の領地内にある軌道エレベーターの立地などが関係しているのだが』
『この人革の選択は正しかったと見ていいだろう。頭打ちになっているファントン(TVやゲームではアンフと呼ばれている、ファーストシーズン冒頭でせっちゃん他少年兵を蹂躙していた化石燃料式MS)はともかく、ティエレンの拡張性の高さは、同年代の他国のMSと比べて群を抜いている』
『当時の技術でも無理をすれば飛行型のMSを研究できないでも無かったのだろうが、先の未来よりもまずは手元の問題を解決する為に、余裕のある手堅い技術研究を続けてきたのは評価に値する、と思う』
『もちろん、ユニオンだって負けてはいない』
『重装甲型、地上型へと進化を始めた人革とは違い、ユニオンのMSは高機動型、もしくは飛行型へと進化を始めた』
『これは本来陸地に存在する軌道エレベーターの防衛には飛行型のMSが有利、というのもあるのだが、細かい理屈はいいだろう』

『少なくとも、世界中のあっちこっちからとりあえず完成された最新技術を取り込みまくってキメラっているCB(ソレスタルビーイング)のMS開発史よりは、真っ当な技術開発の流れを学ぶ参考資料として優れている』
『CBはヴェーダの力によってある程度完成した理論をパクってきて、複数国の最先端技術をまとめあげ研究開発していく訳だが、完成した理論を使っているだけあって、その技術が生まれるまでの過程などは持っていない』
『しっかりとした技術の進化の流れを追うのであれば、最先端技術パクリまくりのCBから学ぶよりも、パクリ元の人革やユニオンで根本の技術を学んだほうがいいのである』
『CBも最近ではようやく第二世代型ガンダムのマイスターを集め始めたようだが、まだまだメインの学習資料にするにはパクリ部分が多すぎるし、しばらくは人革とユニオンメインで、冷戦を続ける三国のMSを眺め続ける事にしよう』

―――――――――――――――――――

「しよう、と」

日記に〆の言葉を書き、閉じて亜空間に放り込む。
もう少し長めに書くことも出来たのだが、今は見ておきたい映像があるので少しだけ時間が押している。
時計をちらと確認し、予定の時刻になったのを確認すると、勝手にテレビの電源がONになった。
画面に映し出されるのは、少しだけ有名なワークローダーの操縦技術大会。
ワークローダーの高度な操縦技術は、この時代ではそれだけで無視できないレベルの武器になる……らしい。
いや、そりゃ、ワークローダーを武装させて建造中の軌道エレベータの防衛に宛てたり、そのままMSのパイロットになるとかならまだわかるんだけど、建設作業でそこまで複雑な操縦技術が必要とされるのは如何なものだろう。
ぶっちゃけ、建設作業に従事するだけなら一定レベルの技術があれば十分というか、素晴らしい技術とかあっても活かす場所がないと思うのだが。

「……ふーん」

あれこれ疑問を頭に浮かべつつも、ワークローダーの試合を観戦する。
思ったよりもレベルが高いが、飛び抜けて素晴らしい技術を持っている人間は居ないように見える。
単純に未熟なだけかもしれないが、伸び代を考慮に淹れたとしてもこの大会に出場する連中から学ぶ部分は少ない。

「こいつか」

ただ、ヴェーダが目を付けているという栗毛の少女の動きだけは、他の選手に比べて幾分『まし』なようにも見える。
彼女が優れている点は、繊細な操縦技術が云々というよりも、もっと本能的な部分にある。
いいセンスだ。という評価が一番当てはまるだろう。
しいて不満点を挙げるなら、やはり機体への慣熟が済んでいないという点か。
確か、彼女が大会直前まで使用していた人革の宇宙開発用MA『シャオショウ』がもう一人の優勝候補の申し立てで使用不可になったのが原因だった筈だが……。
当然、このMAの使用禁止への流れにはヴェーダも一枚噛んでいる。
仮に対戦相手が積極的に少女の得意なMAを封じるために活動をしなくても、何らかの形でこのMAは使用禁止になり、少女を不利な状況で大会に出場させる事になっただろう。
彼女はMSの操縦者としての素質だけではなく、ある特別な資質をも所持している。

それはガンダムマイスターとしての、いや、ソレスタルビーイングの一員になるための資質であり、ヴェーダはそれを持つ優秀な人材を常に求め続けていると言っていい。
一見して聡明そうで、しかし年頃の少女然とした夢見がちなところの見えるこの少女。
人間として、文明人として、人類の一般的な社会で生きていく上でとても大事なファクターが欠落していることの証明の様な資質を抱えている。

彼女は、『自らの目的を実現するのに必要であれば、如何なる形での他人への被害も最終的には許容できる』のだろう。

この一点は、ソレスタルビーイングの構成員として大切な要素だ。
結局のところ、重視されるのは宛てがわれた役割を果たすために必要な能力を備えている事と、その能力をコンスタントに発揮できる安定性の高さ。
紛争根絶のための武力介入、その前段階であるガンダムの開発中に生まれた目撃者の処理などで殺人を犯す場面は多くある。
殺人を犯すことで生まれたストレスによって大きく性能を損なうような構成員では勤まらない。殺人以外でも、他人の人生を損なうような活動も多く存在するだろう。
それによってストレスを感じない、とまではいかないまでも、生じたストレスを早期に発散できる素質が必要になるのだ。

更に言えば、紛争根絶という当面の目的に対して強い執着を持っている必要も薄い。
ヴェーダが、というか、ソレスタルビーイングがその気になれば、対象となる人物に紛争への憎しみや忌避感を植え付ける事も難しい事ではない。
特に、この少女の精神は殺人に対するストレスの少なさを除けば年頃の少女と同じ程度のものでしかない。
この大会が終わり、観客や視聴者の記憶から『惜しくも優勝できなかった』『未だ高校生で、会社にスカウトするには時期尚早な』少女の記憶が薄れた頃、ヴェーダ直下のスカウトマンが現れる筈だ。
その接触タイミングは、スカウトマンに自覚が無くとも、少女が最もスカウトを受け入れやすくなるタイミングを見計らって行われるだろう。
そうすれば、この少女の未来は決まったようなものだ。

「ハッピバースディ! 新しいガンダムマイスターの誕生だよ!」

椅子から立ち上がりながらテレビ画面を指さし叫ぶ。
しばし待つが、突っ込みも合いの手も無い。
ここが壁の薄い部屋であれば近隣住民の影のリアクションに期待できないでもないが、残念な事にこの部屋は完全防音だ。
これがトリッパーに訪れる真の孤独か。
本気で耐えられなければ頑張って美鳥を起こせばいいだけなんだけど。

さて、収穫は少なかったけど、ヴェーダに直接持ってこさせた情報ではわからない部分も見えてきた。
実戦に出るかどうかわからない開発チーム所属のようなガンダムマイスターとはいえ、『あの程度』の実力でいいのなら、なるほど、無理に優れた技術で作らなくてもいいのかもしれない。
人間もしくは進化系であるイノベイターの性能で扱いきれる機体、それがこの世界の技術者が目指す理想ということか。
目指す頂きは遠いが、それでも『最低限必要な分の性能』に設定されている
なら、

「あの導入で成功だった、という訳だ」

流石俺の姉さんの弟である俺、美鳥のサポートが無くても、最適解にたどり着いていたか。
そうとなれば、少しくらい遊んでみるのもいいかもしれない。
ここ最近はペーパーと電子情報での技術収集ばかりだったから、手持ちのまっとうな科学技術を組み合わせて、適当な玩具でも組んでみるか。

椅子に再び座り直し、始まった決勝戦を見ること無くテレビの電源を切る。
端末を起動し、先日ロールアウトされたばかりのAEUヘリオンの設計図と仕様書を開く。

「ああ、やっぱAEUのパクリ方はエロいなぁ」

こうしてフレーム構造などを改めてしっかり見るに、計算なのがバレた似非天然キャラの、テンパッて逆切れしながらの素出しに似ているというか。
完全なパクリではなく、前身であるAEU-04で得たデータを上手く継承しているのがわかる。
コンセプトが似ていても、ユニオンのリアルドとはまた違ったセンスをしているのだ。
パクリはパクリだが、それはあくまでも方向性を真似ているだけというのが正しいんだよな。
あくまでも自分とこの技術で似たものを作る辺りに最低限の誇りが見えるというか、露骨な技術盗用してないだけCBよりは真っ当だし。
さて、お遊びの前に、区切りのいいところまで学習を済ませてしまう事にしよう。

―――――――――――――――――――

……………………

…………

……

「ようこそ、ソレスタルビーイングへ」

この言葉と共に、新しいガンダムマイスターである少女の、『シャル・アクスティカ』としての活動は始まった。
彼女のガンダムマイスターとしての主な活動の場は、直径一キロ、長さ五百メートルの円筒型の先端に傘のように広げられたミラーを持つ、人が済むのに最低限の規模のごく小規模なコロニー。
ラグランジュ3に浮かぶスペースコロニー『クルンテープ』
タイ語で天使宮の意味を持つその名を与えられたそのスペースコロニーで彼女に与えられた最初の任務は、第二世代ガンダムの開発。

本格的な宇宙開発が始まったばかりのこの時代、スペースコロニーは数えるほどしか存在しない。
更に言うならば、数えるほどしか存在しないスペースコロニーも地球に程近いラグランジュ1に構えられているのが殆ど、秘密組織であるソレスタルビーイングが計画の要となるガンダムを秘密裏に開発するにあたって、このスペースコロニーの立地は極めて理想的だ。

クルンテープは人が済むのに最低限の規模とはいえ、ガンダムの開発を行うのに必要なスペースを余裕を持って確保している。
当然、開発チーム──ガンダムマイスターにとっても、ストレスを感じにくい環境となっており、職場環境は極めて良好と言って良いだろう。
本来の名を捨て『シャル・アクスティカ』として、ガンダムマイスターとしての仕事を始めた少女にとっても、このコロニーは仕事のしやすい環境だった。
紛争を無くしたいというこの時代の人間にはありふれた思いと、スカウトに来たエージェントがカッコ良かったという年頃の少女らしい軽い理由で始めたとは考えられない程に、伸び伸びと開発を行えている。
シャルのこの適応力の高さもまた、ヴェーダによってスカウトされた理由の一つと言えるだろう。

そんなシャルが、クルンテープでの開発任務に慣れた、ある日の事。

「あれ……?」

場所はクルンテープの工業区。
未だ自らの担当するガンダムであるプルトーネの完成していないシャルは、格納庫近くの待機室の中で端末から今後建造予定のガンダムのデータを参照し、ある項目を目にして首を傾げていた。
全ての数値の脇に、何かと比較した結果が載せられている。
それ自体は別段おかしな事ではない。武力介入の予定のない第二世代ガンダムにすら、現状、非GNドライブ搭載型MSとの性能比較は行われている。
当然、三大国家の最新技術を全て取りいれ独自に発展、GNドライブ搭載型として進歩させているガンダムと通常のMSでは、当然のようにガンダムに軍配が上がる。
各機が分断され、数百のMSによる途切れることのない波状攻撃でも受けない限り、追い詰められる事すら無いだろうということは、実戦経験の無いシャルにだって理解できる、そんな数値だ。
だが、

(なにこれ、太陽とでも比較してるの?)

この、全てのガンダムと比較されている数値は、そんなレベルのものではない。
星一つから出るエネルギーとでも比較しているかのような、桁外れの数値。
これは一体、何と、何の為に比較しているのか。

「あれ、どうかしたか、シャル」

浮かび上がった疑問に、ああでもないこうでもないと仮説を立てている間に、控え室にパイロットスーツ姿の赤毛の男が入ってきた。
男の名は『ルイード・レゾナンス』、シャル・アクスティカにとって、先任のガンダムマイスターの一人だ。
MSパイロットとしての腕も確かながら、そのメカニックとしての卓越した才能をも買われてソレスタルビーイングにスカウトされたらしい。
シャル自身も、自分では分からないようなメカニックの知識を持ち、ガンダムの整備も任されるルイードの腕前を尊敬していた。

「あの、このデータ、えと、スペックの比較部分なんですけど」

だから、自分にアクセスできる範囲内では答えの出ない謎の比較対象に対して、ルイードに聞いてみる、というのは当然の帰結だった。
このクルンテープには先任のガンダムマイスターがルイードの他に二人居る。
が、片方は何を考えているか分からない元重犯罪人歳の離れた女性、もう片方はモニター越しでしか人と合わない偏屈な年下の少女。
頼りにしたいと少なからず思える相手は、他の二人に比べてまだまともな人間であるルイードしか居ないのだ。

「ああ、それか。確かに気になるよな、そんな数値見せられたら」

ヘルメットを外しながらうんうんと頷くルイードは、シャルが今抱いている感情に対して共感しているようでもある。

「これって、いったい何と比較してるんですか? 何のために?」

考えても考えても答えの出せなかったシャルは興味津々に質問を重ねる。
まさか本当に惑星や恒星とエネルギーの比較をしている訳ではない事は、流石にシャルでも察しがついている。
単純にエネルギーを比較しているだけなら、MSとしての性能総てに比較値を出せる訳がない。
これは間違いなく、MSやMAに似た構造を持つ何かと比較しているのだ。
そしてそれがメカであるならば、メカに対して並々ならぬ好奇心と愛情を注ぐルイードが知らない、興味を持たない筈がない。

「んー、なんて言えば良いのかな。ソレスタルビーイングはさ、紛争の根絶を目的としていて、その為にガンダムを作ってるだろ?」

はい、と、ルイードの確認するような問いに素直に頷く。
自分が、そして目の前の人の良さそうなメカマンが騙されているのでなければ、ソレスタルビーイングの目的は戦争根絶で間違いない筈だ。
たった数機のガンダムと変わり者のパイロット数人の実働部隊でそれを成せるかは未だに少なからぬ疑問を抱きこそすれど、シャルはその点に関しては特に深く疑うつもりも無かった。

「でも、その数値……比較している相手っていうのは、その目的に関わる事は一切無いんだ。だから、俺も君も、特にそれに関して深く考える必要はない……らしい」

「なんですか、それ」

「深く考える必要は無く、しかし、心の隅には留めて置くべきもの、です」

曖昧な言い方で言葉を濁したルイードを問い質そうとするシャルの手元の端末、そのモニターの中に小さなウインドウを新たに作って、幼い少女が割り込んできた。
銀の髪を短く刈り揃えられた、十六歳のシャルよりも更に幼い、十代になったばかりに見える小さな少女。
ガンダムマイスター874。
シャルやルイードと違い、コードネームすら名乗らず番号で呼ばれている、シャルが苦手とする先任ガンダムマイスターの一人だ。
パイロットとしての腕は確かで、ガンダムを用いたハードな任務やテストにも耐えられる優秀なマイスター。
しかし、モニター越しにしか対面せず、話す言葉も事務的な冷たい表情の少女。
それがシャルの持つマイスター874の情報の全て。
如何に外見が可憐な少女であったとしても、未だ人生経験の浅いシャルが好意的に受け入れるには難しいタイプの人物だと言える。

だからこそ意外だった。
ガンダムと任務に関する話しかしたことの無い様な無機質な少女が、謎の比較対象に関するルイードとの会話に割り込んできた事──ではなく。
いや、それ自体も珍しいことではあるのだが。

「それは、ガンダムマイスターとして任務を遂行していくのであれば、知っておくべきものです」

あの無機質な、無愛想な少女が、まるで父親と話す幼い娘の様に穏やかな表情を浮かべ、そんな事を口にしているのだ。
シャルには訳が分からなかった。
何故、ガンダムとの比較対象になるような存在を語るのに、あんな表情を浮かべる必要があるのか。
困り果て、助け舟を求めてルイードに視線を向けると、ルイードは諦めるように首を振ってみせた。

―――――――――――――――――――

……………………

…………

……

何処を目指して、どの程度の速度で発展するか。
弄っておきたかったのはそこだ。
何時か、人類が互いに分かり合い、大きく統一された思想、統一された一つの文明として宇宙に進出した時。
話し合い、理解し合った上で、それでも矛を交えなければならなくなった時に必要な分の武力。
それを低く見積もって貰っては困る。
確かにこの世界に来たのは、真っ当な科学技術の系統図とその進化に纏わる人間の思考の流れを学習する為ではある。
しかし、真っ当な科学技術だからといって、まったく使い物にならないほど弱くてはお話にならない。
それなら、既に持っている知識でも十分なのだ。

態々OOの世界が選ばれた理由の中では、
『ガンダム系列の技術でありながら最終的には宇宙怪獣との戦いすら想定している』
という一点がとても大きな比重を占めていると言っていい。
だからこそ、最初の最初、始まりも始まりのあの地点からのスタートなのだ。

可能な限り解り合い、誤解からくる争いを避けるための対話能力。
対話による和解が不可能となった時の為の、相手を退ける為の武力。
この二つに強烈な執着を与えてやる為に、現在の人類にのみ悲観していたいおりんに『外宇宙の脅威』としての俺の姿を見せた。
俺の持つギリギリ科学技術に含まれる既知外技術で作り上げた『この世界の人類が血も吐き出せなくなるまで気合入れて技術発展させて、再現できる可能性があるレベル』の人型機動兵器。
真っ当なリアル系ロボ世界の人間が見れば正気度を削られかねないこのデータを、一足早い『対話の成果』として与えてやった。
脅威と可能性を同時に見せてやることで、目指すレベルを高い位置に設定させる事にしたのである。

「『手は手でなければ洗えない、得ようと思ったらまず与えよ』ってね」

晩年は、それこそ発狂死しかねない程の必死さで技術の下地を用意していたが、ヴェーダという恐怖の感情を持たない機械に運営が移された時点で、目的地点を目指す速度は遅くなってしまっているらしい。
それは別に構わない。
元から絶対に到達できる技術だと断言できるようなものではない、『この程度の技術があれば十分だろう』なんていう甘えを与えない事が重要なのだ。
CBはなまじGNドライブなんて技術を持って、世界中の最新技術をノーリスクで盗み見る事ができる位置にいるばっかりに、アクセルを踏み込まないところがあるからな。

「さて」

コックピットの中で切り替えるように呟き、レーダーを確認。
流石は激戦区だけあって、彼方此方でMS戦が行われているらしい。
時代的にまだ自称ガンダムは少年兵にすらなっていないから、うっかりガンダム認定されることもない。
俺、ガンダムにもなれるけど、ガンダム率低いから認定されたくは無いんだよなぁ。

「ここから近いのは、人革かAEU。どちらにしようかな、かみさまの……って、俺か」

この世界、土着の神様居ないらしいし。
仕方が無い、選べないなら、どっちもイッてしまうしかないだろう。
CB程では無いにせよ、他のところにも、もう少し必死になってもらわないといかんし。

「じゃあ行こう、『Gダガー』」

生かさず殺さず、大声で歌ってくれる奴らを作りに。

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……………………

…………

……

別の任務の為に通信を終了したマイスター874から教えられたのは、ガンダムマイスターならば誰もが参照できたらしい、比較対象のデータ。
出自も何もかもがヴェーダの中にすら記録されていない、ヴェーダが作られる以前の記録の中に、それは存在していた。

「なに……これ」

ルイードが言うには、マイスター874自身に自覚は無いらしいが、これを語る時には何時もああなるらしい。
874本人に問いただしても理由は分からず、ただこの機体データの事を考える度に、不可思議な感覚を覚えるのだとか。
でも、

「あの……このデータも、ガンダム、ですか?」

シャルにはその感覚がどうしても理解できなかった。
二百年も昔、CBという組織が生まれてすらいない様な時代から存在していたオーパーツ。
詳細な、何一つ包み隠すこと無く記録された謎の人型機動兵器の性能は、とても穏やかな気分になれるような代物では無かった。
メカニックとしての知識は殆ど無いシャルですら、畏怖の感情を向けてしまう程の、圧倒的な武力。
そして、部品の一つ一つまで詳細に記録が取られているにも関わらず、螺子一本すら再現できないほどに逸脱したその製造に必要な技術力の高さ。
ルイードに問いながらも、シャル自身もそれがガンダムであるなどとは思えなかった。
とても『今の人類に作れる機械』ではない。
もしも、かつてソレスタルビーイングがかつてこの機体を作り上げる程の技術を持っていたとすれば、態々ガンダムを作る必要すら無いだろう。
事実上、この機体一機で、地球上全てを制圧することが可能なのだから。

この機体を見て、温かい感情を抱くことはほぼ不可能と断言できる。
圧倒的な武力、科学力。
そこには自分たちを一方的に嬲殺しにできる暴力への畏怖と、理解の及ばない高度な科学への畏怖しか存在しない。
シャル自身、詳細な機体のデータと実物が稼働している時の映像を見ながら、自らの身体が雨に濡れた子犬の様に震えているという自覚を得ていた。

「んー……、それが魔法とかそういうのじゃなくて、間違いなく人類の科学の延長線上に有るってのは言えるけど、ガンダムかって聞かれたら、絶対に違うかな」

パイロットスーツからツナギに着替えたルイードは、シャルの問いに難しい顔で言葉を濁す。

「一応、GNドライブを何十個か同調させれば出力は近づけるらしいけど、GNドライブは、ソレスタルビーイングにはまだ五つしか無いんだ。だから、少なくともガンダムじゃありえない」

メカを語る時には常に子供のような笑顔を浮かべているルイードにしては珍しく、この機体に対して良い感情を持っていないらしい。
だがシャルにはなんとなく分かる気がした。
これは、ルイードが普段喜んでいじっているMSなどの延長線上に存在するが──逆に言えば、延長線上の遥か先にしか存在していない。
そして、それは余りにも武力としての質が違いすぎる。

「定義が難しいんだ。一応、MSに似た思想の兵器ではあるんだけど、しいて言うなら」

ガンダムの性能に心奪われ、人殺しの兵器は作りたくないという主張を引っ込める事になったルイードの目の前に置かれた、あくまでも破壊兵器であるという主張の体現。
だからこそ焦(こ)がれるのではなく、焦(あせ)りの対象となる。
早く、ガンダムをこの延長線上の先に届かせなければならない、と。

「手が届かなくても、追いつかないといけない物。たぶん、昔にこれを見せられた人もそう感じたんだと思う。だから、こんな名前を付けたんだろうし」

ソレスタルビーイングが、紛争根絶の先、来るべき対話の為に目指すべき指標。
異邦人から齎された、人類の先にある技術。
並ばなければ、対話すらさせて貰えないだろうという恐れ。
並びさえすれば、更に先に進めるだろうという希望。

「理想(アイディール)……」

近づく事はできても、それそのものは掴めない。
決して触れられず、常に伸ばした手の先に有るもの。
そんな皮肉の込められた名前を口にしながら、シャルは一際大きく身を震わせた。
自分が何か、恐ろしい流れに組み込まれてしまったのではないか。
そして、自分が望もうと望むまいと、決してその流れから逃れる事はできないのだろうと、確信めいた予感を抱くのであった。

―――――――――――――――――――

……………………

…………

……

砂塵の荒野に、静寂が訪れていた。
ほんの数刻前までその場所は、無数のMSとMAが激戦を繰り広げ、足元には生身の兵士すら溢れかえっていた戦場だった。
音だけでは誰一人として納得せずとも、この静まり返った荒地を目にすれば誰もが納得するだろう。
溢れかえる無数の鉄くず、機械の骸。
土の色が見えぬほどに大地を赤く染め上げるのは、打ち捨てられた兵士の死骸から溢れだした生命の残滓。
そして、そこにはこの場の静寂を証明するものが存在した。
生存者。
打ち捨てられたMSのコックピットの中に、弾痕の穿たれた廃墟の影に、未だ生命を取り留めている兵士たちの姿があった。

だが、その場で静寂を崩す生存者は、誰一人として居ない。
皆が皆、一人残らず、怪我の有る無しに関わらず、息を潜めて身を丸めている。
風の音を除けば、彼らが固く閉じようとしている口から僅かに響く、カチカチと恐怖に打ち鳴らされる歯の鳴る音のみ。
死の荒野に残され、しかし生き残った幸運に喜びの声を上げる者は居ない。
何故か。
それは、彼らが生き残ったのが決して幸運からの結果では無いからだ。

ごう、と、一際大きな風が吹く。
舞い上がる砂埃に晒されて、廃墟の影に隠れていた幼子が咳き込み、目の端から涙を流しながら瞼を開き……見た。

「あ……ぅぁ」

影。
肌を焼く日の光を遮る、身の丈15メートルはあろうかという巨体。
AEUのヘリオンとも、人革のファントンやティエレンとも異なる、極めて人に近いシルエット。
白い手足に青い胴、片方だけのアンテナが付いた頭部。
手に下げた武器は、シールドと一体化したブレードに大型ライフルが一丁。
見慣れないデザインであることを除けば、一見して何の変哲もないMS。

それが『音もなく宙に浮かんで』いる。
ジェット噴射を行うわけでもなく、プロペラを回すわけでもなく、輝く粒子を噴き散らす訳でもなく。
そこにそう有ることこそが自然であると言わんばかりに、堂々と、何をするでもなく浮かんでいる。
まるで今まさにロールアウトしたかのように傷ひとつ無い姿で。

誰が知ろう。
この戦場、この惨状を作り上げたのが、この無傷のMSであると。
AEU、人革、中東のMS全てを相手取り、一方的に蹂躙し尽くしたなどと。
言われ信じる者が居るだろうか。
破壊されたMSは、全て『運悪く』戦闘記録が破損している。

この事実を知る者、この現実を信じる者。
それは確かに存在している。
踏み躙られた戦場で、息を潜めて隠れる者達が。
踏み躙られ、しかし、生命は奪われず、残りの人生から安堵を奪われた者達が、この惨状を証明するだろう。
他の誰が信じずとも、瞼を閉じる度に、眠る度に、恐怖と共に思い出す。

そうして生き残った者達を通じて、ゆっくりと拡散する。
生き残らされた者達の怯える姿を証として、脅威は確かに認識されていく。
紛争の影に潜み、音もなく戦場を食い荒らす『怪物』の存在は、紛争の只中にあって、各国の戦意を強めていくだろう。
その『怪物』の目論見通りに。

―――――――――――――――――――

────怪物にとっての誤算があるとすれば、

「……」

数々の惨状から、怪物の噂を辿り、真実に辿り着く者が居たという事だろう。
確かに怪物はヴェーダを掌握していた。
ヴェーダから接触を図り、自発的に怪物に従い始めただけの話だが、確かに怪物はヴェーダを掌握していた。
如何なる害意を持った存在も怪物の正体に近づけない様に、脅威のみを感じさせるように仕向けていた。
戦争による技術の発展を、脅威への対策の為の技術の発展を助長するために、ヴェーダからの妨害を禁止していた。
だが────

「見つけた」

それが、害意を持たず、悪意を抱かずに怪物を認識したとしたら。
怪物の所業を全肯定し、純粋に善意と好意を持って認識していたとしたら。
そして、怪物が妨害の禁止のみを禁じて、『助成を禁じていない』としたら。

「それが、今の貴方の姿か」

人ならざるものは、歓喜の感情から裂けんばかりに口角を釣り上げ、

「HDT(High Dimension Tripper)……!」

歌うように、焦がれる相手の名を呼んだ。






続く
―――――――――――――――――――

※注意!
この物語には、ストーリー序盤で手早くHDT(非童貞)となったリア充主人公が他所様の世界を我が物顔で家探しして荒らし回る、HDT(非道徳的)な描写が多分に含まれております。
ご覧になる際は、気分を明るくし、道徳と常識から心を離してお楽しみください。

……という、プロローグラストのSAN値直葬な第三種接近遭遇の言い訳に終始した第七十九話をお届けしました。

いや、言いたいことは解りますよ?
シャルとかルイードとか誰だよとか、外伝キャラならせめて外見の説明くらいしろよとか。
でも話の本筋ではないので仕方が無い。
彼らの詳しい外見とかキャラ設定とかは彼らにスポットが当たった時にでも。
ググれば速攻でみつかりますけどね。

以下、自問自答。
Q,突っ込みとか合いの手役のサポAIが居ないんだけど……。
A,書いておいてなんですけどサポAIに注意を向けてこういう疑問を持つ人っているんですかね。
しかし例によって例のごとく姉の課題とか目論見とかで出撃回数に制限が。
話の展開によっては制限が解除される可能性も。
Q,ふふふ……このSS、つくづくチート主人公してんだな。
(訳・結局最初の降臨は何が目的だったのよさ)
A,そんなことはない! このSSは主人公をラスボスに据えてチートの言い訳をたてようとしてるんだぞ!
(訳・架空の超科学文明の機動兵器を見せて外宇宙からの危機に備えさせたいスレ)
(訳・能動的トリップなので修正力とか働くけど、少しでもいいから原作より技術をハッテンさせたかったみたいです)
Q,寝取りは無いって言ったじゃないですかぁー!
A,安心なされよ。依然変わりなく寝取りは無い。
そもそもカップルかって言われると怪しいし、いざとなれば増やせる。
Q,Gダガー?
A, 正式名グロキシニア・ダガー。
人革やAEUへのカンフル剤として、そして何より蹂躙して遊ぶために主人公がぱぱっと作ったストライクダガーベースのホビーMS。
MS以外にもMFにSPT、エステバリスなどのリアル系技術が大量に導入されているが、現状では重力制御であっさりと空を飛ぶ以外は装甲含めて割とまともな機体。
ナデシコの重力制御技術があまりにチート過ぎたので、ネルガルのネーミング方式に則って名前に花の名前を入れてある。
Q,主人公に敵意を抱いていない謎の人ならざるもの……いったい何ムロ・レイに声が似てる期待の新人声優が担当するラスボスなんだ……。
A,多分OO編では全編に渡って出張ってくる。やったね!
Q,短い上にシリアスでネタ極少とか誰得さん?
A,実は作者得でも無いです。説明回さんですので。
というか、主人公のモノローグじゃないとネタはさみにくいから、原作キャラ達視点多めだとネタを入れようがないというか。
あと第五部は長さにあまり拘らず行く感じになると思われます。


こんな感じですかね。
因みに原作キャラとの接触は多分次回から。
その次の八十一話でOOP前半戦終了って感じかもです。
あれ、意外とOO本編が遠い……?
こりゃエタるかもわかりませんね。
エタるくらいならほっぽり出して帰還エンドになるのですが。

それでは今回もここまで。
当SSでは引き続き、誤字脱字の指摘、文章の改善案、矛盾した設定への突っ込み、話や文章を作る上でのアドバイス全般、
そしてなによりこのSSを読んで得た感想、長くても短くても全裸空間トークでもいいので、心からお待ちしております。

―――――――――――――――――――
使わなかったセリフがあっても怒らないで欲しい、次回の内容が透けて見える、
次回予告

「どうだ、ひさびさの地球は」
「データ該当無し……排除開始」
「ビーム兵器だって!?」
「ここにサインか印鑑をお願いします……はい、ありがとうございましたー」
「まさか当たるとは、これも日頃の行いだな。さ、ご開帳──」

機動戦士ガンダムOO・P編第二話
『パッケージの中の小間使い』


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