「…………」
皿に載った料理をフォークで弄ぶ。グチャグチャに潰されたジャガイモの料理とウインナー、いやここではヴルストと呼ぶのがお洒落だ。それっぽいし。
近未来の独逸でもジャガイモを矢鱈と目の敵の如く潰しに掛かることだけは変り無いらしいが、料理の種類自体は豊富だから飽きることは無い、たぶん。
正直にいえばジャガイモ料理とかはどうでもいい。どんなに美味くても同じような料理なら家族愛補正で姉さんの料理を美味く感じてしまうのだから。
ではヴルストはどうか。美味い、確かに美味いが、だからどうしたといった所だ。土産にしてもいい程美味いがまだ帰還までかなり時間が余って、というか本編すら始まっていない。今買ったら帰るころには間違いなく腐る。
別にジャガイモとヴルストだけが独逸料理ではない。が、そればかりが目立っているように思えてしまうのは偏見からの錯覚だけでは無い筈だ。
ああそうだ、お酒もあった。ことにビールで有名な国でもあったかな? ――アルコールはいくら摂取しても毒素として即座に分解、排除されてしまうから酔うに酔えない訳だが。
ちらりと後ろの席を見る。やたらガタイの良い連中が集まって飲んでいる。いや飲んでいた、かな。なんだかもうグダグダ気味に終焉に近づいているようで。
白い短髪を逆立てた男が酔い潰れ、それを前髪で目が隠れるほど髪を伸ばした鷲鼻の男が介抱し、その対面で桃髪の長身の女が不敵にグラスを煽り、
赤髪で垂れ目の男がそれを見て肩を竦め、メガネの丸っこい髪型の女性はマイペースにカクテルを味わい、口髭を生やしたムキムキの黒人が天を仰いでいる。
――今の私と勝負してみる?
――やめとくさ、お前に勝てるヴィジョンが見えてこない
耳を澄ませるまでもなく会話は筒抜け。聞かれて困る内容でも無いだろうし当然か。外見的な特徴、口調もほぼ一致している。
「実写にするとあんな感じなんだなぁ……」
声も元の声優の特徴を残しながら自然な声になっている。アニメ的では無いというかなんというか。声優さんが素で喋ったらこんな感じになるかもしれない。
酔いつぶれた白髪の男――アルはもうぐでんぐでんだ。声にタイトルをつけるなら『とろける盟主』または『勇者王の煮込み』といったところか。蒟蒻みたいな奴どころか煮込み過ぎて煮崩れた大根みたいになっている。しかし彼を責めてはいけない。
彼の目の前に座る桃髪の女性――アマンダの周りには大量の空きビン。しかも極めてアルコール度数の高い酒のものばかり。流石のエヴォリュダ―もこんな相手では勇気で奇跡も起こせなかったようだ。
ちなみに彼女のこのオリハルコンのような肝臓が今後活躍する機会は無い。なんという無駄技能。酒を飲む場面はヘルマンより彼女に与えるべきではなかろうか。
そしてマイペースにカクテルを飲む、メガネの愛らしいメイフォン女史。あれはどの辺りをサイボーグ化しているのだろう。ぜひ入念にチェックしたいものだ。
髪型を変えたら加速装置を使いだしそうな鼻のブラッドに、どうしても資料集のパン1セクシーウインクを思い出してしまいそうになる隊長。
ミーハー丸出しだが見れて良かった。これからのスケジュールを考えるとこれ以降に遭遇できる可能性はかなり低い。……写メでも撮っておくか?
思い立ったが吉日、それ以降は全て凶日という名言に従って携帯を構え、酔いつぶれたXATの面々を一枚、次いでテーブルを挟んで対面に座る男を一枚。
「……」
許可無く唐突に写真を撮ったにも関わらずなんのリアクションも無し。黙々と食事を続ける血色の悪い男――ジョセフ。
「…………」
「…………」
会話が無い……。周りの連中はそれなりに騒がしく喋りながらの食事を楽しんでいるのにこれだ。せっかくの原作主人公だからと突発的に食事に誘ったのは失敗だったかもしれない。
嗚呼、なぜ神は遠い異国の地にてこんな珍奇な試練を俺に与えるのか! そんな罰を受ける理由は――有るか。シスコンでリアルに近親相姦願望があるのはかなりアウトかもしれない。
割と神話だと近親相姦多いらしいが、その辺は神には神の理屈があるのだろう。しかし納得は出来ないのでそのうち金神さまを取り込んで対抗する。
神の摂理に挑む俺、理由は姉さんとチュッチュしたいから。宇宙の中心でシスコンカミングアウト余裕でした。
しかし油断は禁物、実は金神さまも外なる神々の一種で、昔はアイオーンとかデモンべインとかアンブロシウスあたりと異次元でガチバトルした仲ですとか言いだす可能性もある。
なにせ新聞の連載小説でデウスマキナが出てくるような世界、油断は禁物だろう。もしかしたらあの世界すら邪神の掌の上とか有り得ない話ではない。グラマーな古本屋店主より褐色巨乳アイス売りメイドの方がデザイン的には興奮する。関係無いが。
旧神化したロリコンとロリに文字通りの神頼みというのもありかもしれないが、その展開だとこちらは神を取り込もうとする邪悪な魔術師とかそんな扱いを受けかねない。邪神の眷属の珍種みたいなものだと判断されたらそれこそ終わりだ。
まだ発売して間もない作品である。これからそんな設定の小説が公式サイトに載せられては目も当てられない。挑むならせめてスパロボ補正とかを手に入れて、ついでに精神コマンドを覚えてからでも遅くは無い筈だ。
――現実逃避はここまでにしておこう。何故こんな状況になったのか、時間はトリップ直後にまで遡る――。
―――――――――――――――――――
天より躍りかかる。狙うはバイクで走り出したジョセフから最も遠い後方の一体、気づかれる前に一気に仕留める!
硬化した皮膚の上、肘から指先までに雷光を纏う。ネギま世界にて最初に潰した烏頭の必殺技のアレンジ。下位デモニアックが電流に対する対抗手段を持たないのはパラディンの装甲が証明済み。
自由落下の加速を威力に加えて振り抜いた渾身の手刀がデモニアックの肩口に直撃、硬化したこちらの腕がひしゃげる程の衝撃、全身を貫く電撃で怯むデモニアックを残った片手で細い路地に引きずり込む。
ジョセフは――行った。バイクの走る音が遠ざかる、認識阻害の魔法は上手く働いてくれたらしい。
目の前には攫ったデモニアック。どうやら上位ブラスレイターに支配されているわけではないらしく、目前の獲物つまり俺に注意を向けている。
こちらに向かって突撃してくる。動物的というか馬鹿というか、一直線で分かりやすい。弾丸より早く動いても今の俺にはスロー過ぎるというのに、欠伸が出るほどスロウリィだ。
獲物に跳びかかる肉食獣の如きデモニアックを余裕で迎撃――しない。デモニアックの爪は過たず俺の心臓を貫く。
「ハズレ。まぁ、どこを突いてもハズレだけどな」
余裕すぎる。正に『絶対勝てる相討ち』だ。こうなればこちらのもの、しかも今回はすこぶる相性が良い。
「――――!」
心の無い筈の屍が驚愕する。獲物を貫いた腕が抜けず、自らの意に反して融合を初めていることに気付いたからか。
当然だ、これは俺主体の融合。俺の体内でペイルホース――デモニアックやブラスレイターを生み出すナノマシン――が俺の身体を構成するナノマシンに取り込まれ支配されようとしている。
このデモニアックの身体が生きていればまだ融合に手こずったかもしれない。生物は取り込み難い、しかし死体であれば時間はかかるが問題無く取り込める。
そして、意思を持たない器物は尚のこと。ナノマシンは須らく俺の支配下に置かれる。
元の姿を失った下位デモニアックは人の姿を取り戻さず、そして塵にならず、俺の身体に引きずりこまれていく。
大分形の崩れたデモニアックが、無い脳味噌で危機を察知し必死に逃げ出そうと足掻く。こちらの首を落とそうと残った片腕を振るってくる。
こちらの首を正確に狙ってくるその腕をやんわりと受け止め、プラズマクローでゆっくり丁寧に切り落とす。
「く、くふふ。やめろよ、こそばゆいじゃあないか」
知らず、嗤い声が漏れる。こそばゆく、あたたかい。胎に子を宿した女はこのような気分になるのだろうかと益体も無いことを思う。
間違いなく全国の妊婦の皆様に怒られてしまいそうな感想。しかし、この取り込まれつつあるデモニアックに――見知らぬ人間の死骸と微小機械に、俺は少なからぬ愛情のようなものを抱いていた。
生まれる。ペイルホースの要素を、俺の身体を構成する無数のナノマシンが解体し解析し改造し改正し、自らと掛け合わせ新生する。今の俺は母であり、この取り込まれたデモニアックと合わせて子でもある。
死を迎えずして新生する。俺が俺を宿し俺を食い破り俺が生まれる。子を産む喜び誕生の痛み死の恍惚に親を子を殺し犯す背徳に浸る。見ず知らずの人間の残骸をカロリーに変換しそれを行う。
「あっ、は――」
仰向けに倒れる。人も通らないような裏路地で、盛大に身を投げ出す。どうしてか鞄はうまいこと頭の下に収まった。丁度いい枕代わり。
デモニアックはもう動かない、とりあえずの吸収が完了したようだ。もう不自然に腹部が隆起している程度にしか見えない。数分経たずに完璧に元通りだろう。しかし、
「……服が……」
身体が元に戻っても盛大に穴の開いた服はどうにもならない。起きて着替えなければ……。いや、一眠りしてからでいいか。この感覚なら一時間もしないうちに目が覚める。
ナノマシンの最適化も済んでいないせいか、ひしゃげた腕の再生も済んでいない。一旦休憩をはさむべきだろう。
こんな時間にこんな路地を通るモノ好きも居ないとは思うが、物盗りなどの害意ある犯罪者が出たら身体が勝手に起きる筈だ。
なんだかんだで開始数分にして初期の目標を達成したのだし、多少怠けても罰は当たるまい。
「明日からは、市街探索かなぁ……」
さっそく暇になってしまった。もう何日かすれば独逸東部でデモニアックの大量発生事件が起こる。そこで死んでしまった人達の家から小金をちょろまかして路銀の足しにする。予定らしい予定はそれだけ。いや、もう一つあるがそれは保留。
ついでに相討ちを狙わないまともな戦闘の練習もしてみるか。ペイルホースからどれだけのものが取り込めたかも確かめておきたいし。
「か、ふぁ……zz」
欠伸を一つ、意識が薄れてきた。寝て起きたらまず宿を探さねばならない。いや、夜中に駆け込みで泊まれる宿もそうそう無いだろうし、時間を潰せる何かを探すのもいいな……。
―――――――――――――――――――
……………………
…………
……
結局三十分も眠れなかった。チンピラ臭い連中が旅行鞄を漁ろうとしたのに反応し起床、不快な目覚め。
しかし適当におとなしくして貰った上で懐から勝手に駄賃も貰って結果オーライ。これが早起きは三文の徳というものか。
適当におとなしくして貰ったというか、チンピラに身体が勝手に反応、盛大に放電して撃退、後には電極差したカエルの筋肉みたいにピクピク痙攣する集団が倒れていただけだったりする。
腹部に大穴の開いた服を着替え、チンピラの懐から財布を奪って颯爽とその場を去った。しょっ引かれる前に逃走したとも言う。
貰った財布の中身を合計するとそれなりの金額になったが、よくよく考えたら最初に持っていた路銀と併せても帰還までホテル暮らしができるほどではない。とりあえずは移民の皆様に習って適当な廃墟を拠点に据えようと郊外の森林地帯に移動を開始。
徒歩での移動中に見た街並みはまさに異国の地といった風情だ。というか、実際に独逸に行ったことは無いのだがここまで徹底してレンガ造りの家だけが建ち並んでいるものなのだろうか。
書店にて独逸の地図、古道具屋にて小型のラジオとテレビを購入。ここまで現地の人との会話が無かったから気付かなかったが、何故か独逸語も読めて会話できるようだ。
これがストⅡ四コマ昇竜拳現象……!戦慄せざるを得ない。日本人アメリカ人中国人が一堂に会してなんら不都合無く会話できてしまうご都合主義には少々気味悪さを感じるが、まぁ便利なので良しとする。
路地裏でこっそりラジオとテレビを身体に取り込み終え移動を再開すると、さっそく怪しげなゲームショップ発見。オーラが違うぜ……。
こういう店に来そうな原作キャラに心当たりがあったが、この小説版の時点では彼は孤児なのでエロゲには手を出していない。探すだけ無駄か。
躊躇なく入店し独逸語版のニトロ作品を幾つかお土産として購入、ついでに店長さんと世間話。現在アルバイトを募集しようか悩んでいるとのこと。募集が始まったら時間つぶしの為に申し込んでみるのもありかもしれない。
店を出た後、購入したソフトをこちらでプレイするために安いノーパソ一式も電気屋で購入、最後にスーパーで適当な缶詰やら日持ちする野菜や果物などを購入して市街地を脱出した。
―――――――――――――――――――
さて、何事も無く市街から脱出しさまようこと数日、そして活動拠点を確保して更に数日が経過した。
場所は独逸東部の森の中、都合よく存在した教会の廃墟。少し離れた場所には農場や牧場があり、都市部ではあまり見えなかった緑に覆われているのどかな地域。
人目に付かないように認識阻害と人払いの結界を張り、取り込んだテレビとラジオとパソコンの複製を作り出して配置済み。電源はR田中方式で俺から取っている。
ネット環境があればなおのこと便利だが、まだ情報収集もラジオとテレビで事足りてしまうので気にしない。
そんな雄大な自然に囲まれたこの土地で、俺は果物を齧りながらテレビを見ている。
今さっきまでは購入したニトロ作品をプレイしていたが、封印されていた世界中の怪異が解き放たれ、主人公とヒロインが『俺たちの戦いはこれからだ!』をする熱いエンディングを迎えたので一旦終了したところだ。
この終わり方ならアフター物が書けそうな気がするのだが塵骸のSSはついぞ見たことが無い。本篇だけで満足できてしまうので態々蛇足を作ろうという気が起きないのが原因か。
しかし毎回毎回エンディング曲が無駄に力強いというか壮大というか。そしてしっとり系の曲は聞くとエンディングに至るまでのストーリーを思い出して泣けてくるので携帯には入れられない。
いや話が逸れっぱなしだ。端的に言ってここは小説版でデモニアックが大量発生してしまう土地の近く。
まぁ場所的に間違いは無かったようだ。イベントを避けようとしない限りトリッパーはイベントに吸い寄せられるというジンクス通り。
テレビのニュースでは融合体大量発生が報道されている。さっきから彼方此方をXATの派手なボディスーツが駆けていると思ってみればこれだ。
タイミングが良いのか悪いのか、テレビを付けた瞬間にこのニュースが流れていた時は運命を感じてしまった。ご都合主義的なものかとも思ったが緊急で知らせておくべきニュースなのだから当然と言えば当然か。
テレビの電源を消して身体からコンセントを引っこ抜く。ラジオとテレビとパソコンを体内に取り込み、旅行鞄をあらかじめ穴を掘って作っておいた隠し部屋に突っ込んで準備は完了。
教会から出て辺りを見渡す。……高台から遠くを眺める男発見、血色極めて悪し、更に幸も薄けりゃ影も薄いこの『ブラスレイター』世界の主人公?であるジョセフ・荒巻・スカルチノフさん。
変態変形バイクことガルム(繰り返して言うが日本車ではない)に跨り遠くを睨んでいる。
「いいなぁ……」
変態バイクだのなんだの散々言ってはいるがああいう面白ギミック搭載の面白デザインのバイクは男の子のあこがれだ。
「…………」
虎視眈眈、初日にあっさりペイルホースを取り込んでしまった俺の次の狙いはあれ。
とはいえ、ジョセフにこれから助言を与えるであろうエレアさんがこれを使う為、完全に取り込んで『はいそれまでよ』とはいかないのである。
一度形を崩さないように取り込みオリジナルを返却、俺は多少弄った複製を作り出して使うという形になるだろう。
ジョセフに接触した時点でこちらの存在はばれるわけで、俺が複製を使うにしても、間違いなく搭載されているであろう発信機や自爆装置などの危険ギミックをそのままにはしておけないのである。
問題はタイミングだ。といっても、何時やるかは決めている。ほぼ強奪のような形になってしまうが……。
「手口として美しいものではないよなぁ」
ああいうマスコットキャラは嫌いでは無い。例えばエテコウは最高の相棒だし、アルは九朗が他の女とくっ付いても良い相棒でいてくれる。
そんなニトロ系列の粋なマスコットの親戚にあたるエレアさんとはできる限り友好的に、などと考えないではないが、これからすることを考えれば警戒ばかり買ってしまうだろう。
――なにより自分の強化が最優先、後に残らない交友関係は二の次三の次か。
そんな訳で初志貫徹、あっさりとお友達計画破棄。残念無念、巡りあわせの悪さはどうにもならない。気を取り直してジョセフが目を向けていた方向を見る。
「ふぅむ、ふむ」
なるほど、さして目の強化をしているわけでも無いのにこんな遠くからでもはっきりと血だまりが見える、あの一か所で数十人がまとめて殺されてしまったわけだ。
そして、その死体の皆様は晴れて全員デモニアックになりました、と。ブラスレイターになる確率は低くてもデモニアックには簡単になれるみたいだな。
その中でマシュー・デモニアックみたいに人間時の意識を残す珍しい個体はどれだけの数なのか、少なくとも小説版の描写を参考にするならこの事件ではそういう珍しい個体は出てこないようではあるが……。
「この一帯の反応は……」
あちこちに先日取り込んだペイルホースと同じ反応がある。ペイルホースは生き物の血液中でしか長期間の生存は出来ないみたいだし、これを追っていけばよし、と。
ふと手のひらを見る。じっと見ていると悪魔の紋章――のようで微妙に違うものが浮かび上がる。そのまま地図記号一覧に紛れ込ませても分からないほどシンプルな模様。
魔術の要素を含んでそうな他のブラスレイターの印とは大分違う。多分、72種類のデザインのうちどれにも当て嵌まらないオリジナル。ペイルホースをそのまま使用している訳では無い証。
「試し撃ち程度はしておかないとなぁ」
一番近くのデモニアックの反応を探す……、見つけた。ここから歩いても数分かからない。待っていても勝手に寄ってくるだろうが、新機能を試すならより人目に付かない場所が望ましい。
教会を離れ、薄暗い森の中を歩く。何とはなしに身体からラジオを取り出し電源を入れる。熊避けではない、本能のみで動くデモニアックは人や機械の出す音に誘われる習性があるとか無いとか。つまりこうすると――
「お、釣れた」
眼前には何の変哲もないデモニアック。いや、片手がチェーンソーと、もう片方の手が短銃と融合している。
確かこんな奴が小説版でジョセフと戯れていたな。ブラスレイターの装甲を破れるかとなると疑問だが、俺の身体なら硬質化していても余裕で切断できるだろう。
練習相手には丁度いい、俺はペイルホースの能力を開放した。
―――――――――――――――――――
「お、おぉおおおおおぉぉぉ!」
変身。今までの身体の中身を組み替えるだけの変身とはまた違う、外見の明らかな変化を伴う変身。しかしそれにも構わずデモニアックはチェーンソーを振いこちらに襲いかかってくる。
俺の首を斬り飛ばさんと迫る横薙ぎの一撃、それを片手で無造作に受け止める。金属質の装甲に覆われた掌とチェーンソーの間で火花が散り耳障りな音が響く。
「変身完了。似合う?」
誰にともなく問いかける。鏡が無いのでどんな姿かは確認できないのが惜しい。しかし今までの強化とは全く違う、荒れ狂うような激しい力を身体に感じる。
受け止めていたチェーンソーの刃を握り潰し残骸ごと此方に引き寄せ、そのまま手刀で一閃。デモニアックを肩口から斜めに切断した。
切り離された下半身側は既に塵になっているが、頭と心臓の付いている上半身の側はまだ抵抗しようとしている。せっかくなので武器も試してみよう。
体内のナノマシンを紋章から大気中に放出、結合させ武器を具現化せしめる、あらゆる融合体が行使できる異能の一つ。
と言う触れ込みだが、現在進行形で事件を起こしているだろうマルコ・ブラスレイターは背中から直接羽根を具現化している。
あくまでも紋章からだとナノマシンの放出と具現化が容易というだけで、ナノマシンの放出は身体のどこからでも可能なのかもしれない。
さらに言えば、『あれ?ペイルホースって空気に触れると分解されるってマグロが言ってなかったっけ?』とかつっこんでもいけない。メディアミックスではよくあることなのだ。
まぁ、『空気に触れて一分もしない内にタンパク質が分解』という説明なので、ナノマシンだけを放出すれば分解されないとも解釈できる。
あるいは武器の形で結合しているが、ナノマシンとしての力は失っている。いわば瘡蓋の固まり様なものなのかもしれないが、それだとマルコの翼が説明できない。ナノマシンは不思議がいっぱいだ。
さて、特にこれといったイメージはしなかったが上手いこと長柄の武器が出る、大鎌だ。とりあえず何事も無く武器の具現化ができることは分かった。次は切れ味を試そう。
瀕死のデモニアックの残った片方の手の短銃から連続で弾丸が放たれるが、こちらの装甲にかすり傷一つつけられない。短銃と融合した腕を踏み千切り、デモニアックの腹を踏み押さえつける。
そして首に大鎌の刃を引っ掛け、切り落とす。刃を入れた感覚さえ無く、すっ、と刃は通り抜け、一切の抵抗無く静かに首が落ちた。
「……弱いし、鈍いし、脆い。これじゃ試し斬りにもならないな」
大鎌を消し、塵になったデモニアックの残骸を踏み躙りながら呟く。相手が下級デモニアック一体きりではいまいち自分の性能が分かり難い。
というより、下級のデモニアックに苦戦するブラスレイターとか聞いたことも無い。本当に変身と武器の具現化を試しただけになってしまった。
このまま探索を続けるべきか……?少し遠くに都合の良いことに一まとまりになって移動するデモニアックの集団の反応があるし。
うん?なんで一まとまりになっているんだ?上位のブラスレイターが統率している訳でもなかろうに。
現段階でそれができそうな人も近くに居るのだろうが、今はそれをやる理由が無い。デモニアックはたまたま群れるなんてありえない生き物だし……。
まぁ実際に見てみれば分かるか。数がそろえばそれなりに練習になるだろう。俺はデモニアックの集団の反応に向かって走り出した。
―――――――――――――――――――
移動中に山道で立ち往生する、車と融合したデモニアックを数体発見するも、大鎌の一振りで発生したカマイタチで始末。が、車と融合したデモニアック達を切断した揚句にその後ろの地面まで深々と切り裂いてしまった。
XATあたりに発見されたら面倒なことになるかもしれないがとりあえず今は放置。ついでに内一体はこちらの攻撃に対してバリアのようなものを張っていたがあっさりバリアごと真っ二つ。
そういえばアニメ本編でも車と融合したデモニアック、そしてジル・デモニアックが自力でバリア風の何かを展開していたのを思い出していたが、いったいどうやって張っているのかわからない。
というか、自力でバリアを張るのは極々一部のデモニアック、そしてブラスレイターでは変身前のザーギン以外誰も自力で張っていなかった気がする。
バリア機能はガルムから取り込めばいいかと思っていたが、頑張れば自力でなんとかできるのかもしれない。森の中をカッ飛ぶように走り抜けながらそんなことをつらつらと考える。
ペイルホースを取り込んで解析した俺の身体は理屈の上ではデモニアック、ブラスレイター双方の能力は全て使用可能なのだが、なんとなくで使える能力は意外と少ない。
今も空を飛べばより早く目的地にたどり着けるのだろうが、飛べない。生身で空を飛ぶというのがどのような感覚なのかわからないので飛び立ちようがないのだ。
案外崖から飛び降りてみたらあっさり飛べたりするのかもしれないが、今はそこまでする必要性も感じない。手ごろな崖も見当たらないし。元の世界に帰るまでに飛べなかったら、ハンググライダーでも試してみようか。
とはいえ、今の状態でも新幹線と駆けっこして余裕で勝利できる速度を出しているのだが。おかげで走った後は土や草が爆発したかのようにはじけ飛び、地面も抉れ続けている。
この足跡も、後々XATに見つかって新種の融合体かと思われるんだろうなぁ。いや、当たらずとも遠からずなんだけど。
と、前方にデモニアックの集団を発見。バイクで逃げる獲物に十数体のデモニアックが纏わりつき団子状態、バイクの人絶体絶命。
減速せずに集団に突撃。追い抜き様に一体の頭部を掴み、捩じるように引きちぎる。未だにバイクの人にはりついている残った胴体を蹴り飛ばしひっぺがす。
バイクの前で立ち止まる。改めて見ればバイクに半ば融合しているデモニアックが居る。融合されると面倒なので力任せに引き抜こうとすると、融合している面から千切れ、次いでバイクから融合していた部分がなぜか吐き出された。
バイクはどうやらガルムだったようだ。デモニアックが多すぎて見えなかったが、多分ここでエレアさん初登場、ガルム融合ジョセフ無双が始まるところだったのだろう。
しかしまぁ別に遠慮する必要も無し、とりあえず怯んでガルムから離れたデモニアックから片付けるとしよう。
掌の紋章から武器を具現化する。大鎌ではなく通常サイズの鎌を二本、バイクの人――ジョセフ・ブラスレイターの両脇にいたデモニアックに投擲、頭部にスコンと小気味いい音をたてて突き刺さった。
呆然としているジョセフを跳び越え、空中から後方に居た数体のデモニアックに掌を向け、衝撃波発射。ザーギンが使うものと同種、かつ変身済みである分威力は段違いのそれが周りの木々ごとデモニアックを押しつぶし吹き飛ばす。
更に木々の向こうに潜んでこちらに突撃しようとするデモニアック、逆に逃げようとしていたデモニアックを纏めて無数の触手で貫く。ブラスレイター化した時に基本能力も強化済み、戦闘にも使える特別仕様だ。金属質の装甲に守られたデモニアックも楽々串刺しである。
正直ザーギンの触手とだって打ち合って負けない自信がある。あちらは本数に制限があるがこちらはわりと融通がきく。そもそもザーギンに会う可能性は無いに等しいので張り合う必要は無いのだが。
更に今ならプラズマ発生装置も強化済み、クロー以外の使い方もできるのだが森林地帯での火遊びはいけない。大火災になってせっかく手に入れた隠れ家まで焼けてしまったら元も子もない。
デモニアックの死体から触手を引き抜き格納すると同時にジョセフの背後に着地。嗚呼、今すっごい無双してるなぁ。今なら誰にも負ける気がしない、当然思い込みだという自覚はある。俺はまだ登り始めたばかりだからな、このチート坂を……!
「お前は……」
ここでようやくジョセフが口を開く、反応が遅いような気もするが俺がバイクに取りついていたデモニアックの首を引きちぎってから二秒も経過していないからそれほど遅くもない。
むしろエレアさんが無言なのが気になる。怪しいだろうしなぁ今の俺。警戒されてる警戒されてる。
「あ、休んでいてください。すぐに片付けますので。そんな状態では満足な戦闘行動もできないでしょう?」
ジョセフ・ブラスレイターは全身の装甲を削り取られ無残な姿を曝している。ブラスレイターの装甲はデモニアックよりよほど強靭だが、あそこまで集られるとそれなりにダメージが通るようだ。
実際はあんな状態でもガルムと融合すれば余裕で戦えるのだが、それではこちらの都合が悪いので言わないでおく。
「バイクの方は少し手伝って貰えますか?」
「……?」
疑問符を浮かべるジョセフはひとまず置いておき、ガルムを見つめる。動きもせず喋りもしないまま数秒が経過するが、しばらくすると訝しげな返答が帰ってきた。
「貴方……、何者なの?」
「戦場には似つかわしく無い、なかなかに哲学的な質問ですね。俺は何の変哲も無い、通りすがりの怪しいものですよ」
「……」
微妙な雰囲気の沈黙、呆れているのか怒っているのか訝しんでいるのか。
「……まぁいいわ。ついでに、ジョセフに魅せてあげてくださらない? 猛々しく美しい、ブラスレイターの戦いを」
「言われなくとも。はい、ちょっと退いてくださいね」
上手く行った! 本当はもう少し手荒に捕獲して無理やり融合する手筈だったのだが、思いもよらずスムーズに話が運んだ。これも普段の行いが良いからか。
ジョセフに一先ず退いてもらい、ガルムに跨り融合を開始する。そして外見だけでは構造的にどうなってるのか分からない変形開始。
「それは……!」
ビックリドッキリメカの変形に驚くジョセフ。少し意地悪をしてみるか。
「これがガルムの真の姿って訳ですよ。なんで十年も乗ってて気付かないんですか?」
「あら、ジョセフは一度も融合したことが無いもの、気付かないのも当然だわ。人間離れするのが、悪魔になるのが恐ろしかったのでしょう。でもジョセフ、そんな覚悟ではザーギンには到底追いつけなくてよ?」
エレアさんの容赦の無い追い打ちが続く。人間離れするのが、悪魔になるのが怖い?変身してから鏡を見てもう一度よく考えて気付くべきだろう、ブラスレイターになった時点で充分アウトだと。
十年の間、ほぼブラスレイターの身体能力だけで戦ってきたのは称賛に値すると思うが、そもそも大きな売りである融合や具現化などの各種特殊能力を一切使わないというのも間抜けな話だ。
まぁ、本能を押さえつけて戦えるのがジョセフが暴走しない原因である以上難しい注文なのかもしれない。だが、せっかくなのでここで本能のままに戦うブラスレイターの一例を見て貰っておこう。
大鎌を具現化、融合し半身と化したガルムを駆り、俺は周囲のデモニアックの掃討を始めた。
―――――――――――――――――――
数分後、苦戦とかそういうドラマ一切無しに俺は勝ってしまった。周辺のペイルホースの反応は俺とジョセフの物しか存在しない。掃討完了だ。
「甘味(笑)」
「?」
「何を言っているの貴方は……」
変身を解除し、『ガッシ、ボカ!』といった表現すら超越して省略した消化試合を一言で表現した俺に、不思議そうな顔を向ける変身を解いたジョセフと、呆れた声をかけるエレアさん。
「いや、『美しくありませんわぁ』とか言うべきかな、と思いまして」
「そうね、戦いというよりは掃除とでも表現するべきなのかしら。戦い方の参考にはならなかったわね、ジョセフ?」
話の矛先を向けられたジョセフは、俺のことを訝しげに見つめている。男に見つめられて喜ぶ趣味は無いのだが。
そしてエレアさんの問いかけを無視してこちらに声をかけてきた。
「お前は、堕ちていないのか?」
警戒心バリバリである。一回助けただけではそう簡単に信用して貰えないらしい。
「さぁ? その『堕ちる』という言葉の意味がいまいち分からないので、見たままです。としか言いようがありませんね」
大げさに肩を竦めてとぼけてみる。相手は年上なので敬語とか丁寧語っぽく喋っているが、間違いなく正しくないという自信がある。
しかも自動翻訳のような状態なのでどこまで正しいニュアンスで伝わっているか分からない。総合的に見て今の俺、かなりムカつくキャラじゃなかろうか。
更に言うなら『堕ちる』の意味も正確には把握していないというのも本音。設定集に書いてあった『初期設定だとゲルトは速攻で悪堕ちして化け物っぽい姿になるはずだった』の名残りかもしれないが、とりあえずここでは正気かそうでないかを問われていると考えればいいのだろう。
そんな俺のセリフに黙り込むジョセフ。そして未だ立体映像すら出していないエレアさんがクスクスと笑いながら茶々を入れた。
「堕ちているかはともかく、ジョセフよりは力を使いこなしているようね」
「楽しいか? さっきから姿も見せずにそうやって他人を見下して……」
なんだか険悪なムードだ。ジョセフが一方的に険悪になっているだけなのだが。
「と、言うかですねエレアさん。バイクに向かって話しかける成人男性二人、という図はかなり間抜けなんで、とりあえずそれっぽい姿を現しちゃくれませんか?」
下手に出てお願いしてみる。ぎりぎり片手で数えられない程度の人数しか居ない貴重な本編登場名有り女性の一人だ、できる限り円滑な人間関係の構築とかも目指したい。
「そうね――これで良くて?」
言い、ガルムの車体前部に存在する端末から立体映像を投影するエレアさん。誰がデザインしたのか、それとも自分から勝手にこの姿になったのかは知らないが、偉く趣味的な姿である。
仮にも世界の裏で暗躍を続けていた組織のメインコンピューターに住まうAIプログラムが、何故にこんなおっきいお友達受けしやすい見た目をしているのか。ブラスレイター本編で明かされなかった大きな謎の一つだ。
「ねぇ貴方、少し聞きたいのだけれど。」
ようやく妖精のような小悪魔のような愛らしい姿を見せたエレアさんであったが、こちらに向かって首を傾げてみせる。
「名乗って、なかったわよね?何故貴方は私の名前を知っているのかしら?」
「…………あ」
立体映像のエレアさんがこちらを見つめる。なんという凡ミス。この時点でエレアさんの名前知ってるとか今さらながら不審人物過ぎる。
小首を傾げながら微笑んでいるエレアさん。微笑んでいるのに眼だけが笑っていないから余計に視線が痛い。そんな細かい表現もできるとか、器用な立体映像である。
「……」
こちらの会話を聞きながら胡散臭げな顔をするジョセフ。彼にとっては俺もエレアさんも不審過ぎることに変わりは無いのだろう。
「ああもう、とりあえず話を進めますよ。こちらがエレアさん。明らかに仮の姿だけどそこは勘弁してあげてください。そのガルムにはエレアさんの真の姿を見せるだけの機能は搭載されて無いんです。」
エレアさんの追及もジョセフの視線も無視して話を進める。いや、何もかも無視して帰るってのもありだけど、融合時にガルムのコピーも出来たからしばらくやることが無い。
暇つぶしにもなるし、せっかくなのでここは開き直って解説役をやってみよう。
「これといった目的は、しいて言えばジョセフさんの戦いを見届けたいとか。所属はツヴェルフ――っても分かりませんよね。ガルムをくれた組織って言えば分かりますか?すべての元凶と言ってもいいですけど」
「あぁ、まだ存在していたのか……」
どうでもよさそうな返答。そういえばそんなのいたなとでも言いだしてしまいそうなほど眼中に無かったようだ。
まぁ仕方ないと言えば仕方ない。ジョセフが行動しているのは姉の死を無駄にしない為、そしてザーギンを止める為だ。組織の思惑とかは心底どうでもいいのだろう。
実際、本篇でもジョセフの目的のためにツヴェルフが役に立ったことは少ない。せいぜいイシスの開発ぐらいか。それも半ば以上姉の手柄。
バーサーカーモードとか速攻で負けたし、なんだったんだろうあれは。位階を上げる為に必要な工程だったとかそんな説明も無かったし。
ついでに言えば最終回、これはジョセフの話だが、あそこで凌駕する意味もあまり無かった。死体を残して死んだ時点でイシスの発動には巻き込めた訳で、つまりあれは時間を稼いだゲルトとヘルマンの手柄だ。
本当にツヴェルフは何がしたかったのか。というか自分で蒔いた種を刈ろうとして失敗しかしていないっていう。
「支部の一部が壊滅した程度で潰れるほど軟な組織じゃありませんからね。今でも元気に対融合体兵器の開発でもしてるんじゃないですか?」
「……ずいぶんと色々知っているのね」
「しかも、自分のことは話そうともしない」
あ、今凄い勢いで不信感が増してる!顔を合わせたばかりの二人がいら立ちのあまり微妙に息が合い始めているし。
「あ、申し遅れました。俺は――」
と、いったいどう名乗ればいいのか。分類的には旅人とでも言うべきなのかもしれないが、職業旅人とか初対面の人に言うには少しチャレンジ要素が多すぎる。
じゃあ正直に農家とか?……畑放置でなにやってるんだろうこの人みたいな眼で見られるのもなぁ。
もうちょっとこう、捻りが効いてて追及が少なくなりそうな。托鉢の旅を続ける修行僧とかそんな感じの。
でもキリスト教の人に私はブッディストですとか喧嘩売ってるように聞こえるかもしれない。もう面倒だし、名前だけでいいかな。
「鳴無 卓也と申します。職業とか旅の目的とかは秘密ということで一つ。」
「名前だけじゃないの……」
呆れられてしまった。しかしツヴェルフほど秘密があるわけでも無い、詳しく説明しようが無いのだから仕方ない。
「いや、特に話しておくべきこともありませんからね。まあ名前を知っておいて貰えれば会話も多少スムーズになるでしょうし」
「美しくない言い訳だわ。せめて、どうやってあの美しく堕ちた身体になったのかくらいは説明して欲しいものだけれど」
「御尤もで。しかし、ペイルホースの製法が失われている今、融合体を増やせる存在なんて限られてると思いますがね」
漫画版は知らないが、小説版とアニメ本編ではそれっぽいことをしているのはザーギン一派のみ。
野良デモニアックに合って感染というのもありだが、その野良デモニアックにしてもザーギンだのベアトリスだのが感染源だろうし。
まぁ、カルト思想に囚われた秘密結社とかがひそかに融合体を増やしているとか、展開的にはありそうな気もする。謎の魔術結社だ!復活したナチ残党だ!とか、舞台が独逸ならやり易い題材だろう、偏見だが。
「じゃあ、やっぱりザーギンから?」
「ザーギンだと!」
「さぁ?どこから感染したかなんてどうでもいいでしょう? ああ、聞かれる前に言っておきますが、ザーギンのことは多少知っています。でも今何処にいるかとか、何をしようとしているかなんてのは欠片も知りませんよ」
返答とともに、エレアさんの推測に腰を浮かせて反応しようとしたジョセフに釘を刺す。というか凄い超反応だ。外国人のリアクション四コマのオチ張りに立ち上がりかけている。
「……そうか」
手がかりを見つけられたと思いきや即座に途絶えたからか、ガックリとうなだれながら元から暗い表情が輪をかけて暗くなるジョセフ。
「ま、そんなに焦る必要はありませんよ。今まで通りデモニアックを殺し続けて強くなれば、そのうちあっちから勝手に接触してきますから」
「それしか無いのか……」
「つまり、貴方が強く美しくならない限り、被害者は余計に増える一方という訳よ」
エレアさんのセリフに一層暗く、それでいて苦虫を五、六匹纏めて噛み潰して丹念に咀嚼して思いっきり飲み込んだような苦い顔をするジョセフ。
別にジョセフを鍛えるためだけにデモニアックが増やされている訳では無いが、それでも多少はジョセフ強化の為に多めに作られているのだろう。
「人間がどうとか悪魔がどうとかいう変な拘りは捨てて、さっさと位階を上り詰めろ。ということですね。よろしければ強くなる方法、力の使い方というものをお教えしますが」
俺が教えなくてもエレアさんが教えてくれるだろうけどねー、とは言わない。というか俺、大分ムカつく言動だな。すっごい上から目線だし。
まあ正直な話、ジョセフからの印象が悪くなっても今後の予定に影響は一切無いからこんな態度ができているのだ。普段は初対面の相手にはもう少しまともな会話を心がけている。
下手をすると――というか、下手なアクシデントが無ければこれ以降原作登場人物と顔を合わせることは無い。こんなことを考えていること自体がアクシデント発生フラグなのかもしれないが。
「……じゃあ、教えてみろよ、力の使い方ってやつを」
「ジョセフ、それは人に教えを請う人間の態度としては美しくなくてよ?」
「ま、ま。エレアさんも細かいことはお気になさらず」
上から目線で会話をし続けたせいかジョセフがイラついている。口調が乱暴で本編よりややワイルドな感じになってしまった。セリフ少ないからいまいちどんな口調だったか覚えてないが。
しかし、こうして見るとエレアの発言はどことなくジョセフの保護者風だ。十年間も観察し続けていたから愛情的なものがあるのか。しかし首輪で強化のプランは実行する。隠れSかもしれない。
「じゃ、こんなところで立ち話もなんですし、飯でも食いながら説明しましょうか」
そう締めに言い、人に係わりたがらないジョセフを無理やり引っ張って適当な飯屋に連れていくことになったのだった。
―――――――――――――――――――
回想終了。長かった……。
お分かりいただけたであろうか。そう、実は最初から最後まで俺の自業自得なのだ。
「だはー……」
机に突っ伏して脱力する俺。自分の間抜けぶりに思わず奇声を発してしまう。
「自分から食事に誘っておいてそれは、あまり美しいとは言えないわよ?」
そんな俺に容赦なく追い打ちをかけるエレアさん。といっても別に店内にバイクで乗り付けている訳では無い。
今現在のエレアさんは、俺が部分的に複製してみたガルムの通信端末(小さめの弁当箱程度のサイズに改修済み)で会話に参加。
テーブルの上に美少女の立体映像を浮かべているのにも関わらず、周りから何のリアクションも無いのは当然強力な認識阻害の魔法のおかげ。この魔法だけは意外と重宝している。
「いや、まさか口に物を入れたままだと喋らないタイプの人だとは……」
そんな今時誰も守っていないような理由でひたすら会話も無しに黙々と食事を続けるはめになるとは思わなかった。流石は教会育ちの生粋のクリスチャン、礼儀正しい。
突っ伏しながらもフォークで料理を突き刺し口に運ぶ。ヴルスト、おいしいです。ジャガイモ、おいしいです。でも贅沢をいえばもう少し食事時の愉快な会話とか欲しい。切実に。
まぁ、十年もの間、ずっと人との関わりを避けてきたのだからこんな感じにもなるのかもしれない。彼にとって食事時の団らんは遠い過去の話となってしまったのだろう。
エレアさんが携帯用通信端末に取り付けられたカメラをくるくると動かして辺りを見渡し、偶に話を振ってきてくれるのが救いか。
「今撮ったのは、軍が組織した対融合体の組織の連中?」
「そうですよー。Xenogenesis Assault Team(異種発生突撃隊)、通称XAT。軍や警察から厳しい訓練の末に選抜されたエリート集団です」
「その割には美しくない連中ね」
「酷いこと言うなぁ……」
聞こえないからって言いたい放題だ。最初は認識阻害の魔法を不審がっていたが、なんだかんだで順応してしまうあたり、やはり見た目通りの少女では無いことがうかがえる。
まぁ仕事帰りとはいえ見事に酔いつぶれているのだから弁護のしようが無い。非常招集とかかかったらどうするんだろう本当に。一班(笑)に任せるつもりだろうか。
「言わなくても知ってると思いますけど、メガネでマイペースに呑んでるのはツヴェルフ所属のパイロットですよー。搭乗する機体は戦闘機っぽいスケールライダー」
「メイフォンね。ヴィクターの過保護にも困ったものだわ」
肩を竦め、やれやれと首を振るエレアさん。あっさり現時点では機密情報っぽいアポカリプスナイツの機体情報を口にしても突っ込みが無いのは寂しい。
店に入る前、おもむろに懐から通信端末を取り出した(服の下で複製を作り出し、襟元から取り出したかのように見せた)時に呆れた顔をしていたが、すでにあの時点でこちらの行動へのツッコミは諦めたのかもしれない。
しかし過保護?過保護かなぁ。サイボーグ化は延命のために必要だとしても、
「孫が最新鋭機のパイロットになることを許可するのは過保護なんですかねぇ?」
「だからXATなんて組織でアナライザーをさせている、とも取れない?」
「あー……なるほ、ど?」
それもなんか違うような気がするが、祖父の役に立ちたい孫と孫を大事にしたい祖父との間で生まれた妥協点なのだろう。ヴィクターにとっても一番信用できる人物だし。
「エレアさん的にはどうです?家族愛って」
「美しいんじゃなくて?人間の感性で言えば」
「それ、自分の感想では無いですよね」
「ふふっ」
笑顔ではぐらかされた。やはり化け物其の物なブラスレイターを美しいと表現するだけあってかなり尖った感性をお持ちのようだ。
心に病を負った家族の精神安定の為に行われる近親相姦とか、先祖代々伝わる武術の奥儀を伝える為に親殺しが必要とか、そんな感じの家族愛は本気で美しいと感じるのかもしれない。
よくよく考えたら唯の変態じゃないか。立体映像とはいえこんな美少女が変態とか……素晴らしいぞ。なんだか臍の下あたりにグッとくるものがある。
「……そろそろ教えて貰えないか?」
「何をです?」
「戦い方に、力の使い方って奴をだ」
俺が料理をつつきながらエレアさんと談笑している間に食事を終えたらしいジョセフが声をかけてきた。正直、これから話す内容はこんな場所で喋って良い内容では無い気もするが、認識阻害の効力は既に理解してもらえたようで、特に文句は言ってこない。
「ではジョセフさん、貴方の掌に刻まれている紋章が何を示しているか――ってのは知ってますよね?」
「……悪魔の印」
「あら、それくらいは知っているのね」
俺の問いに簡潔に答えるジョセフとそれに感嘆の声を上げるエレアさん。
「では、何故そんなものが刻まれているかは?因みにこの紋章は全てのブラスレイターに刻まれています」
「……お前達は悪魔だ。とでも言いたいんだろう」
「はいお見事、正解です」
「ちょ、違うわよ!そんなくだらない理由な訳が無いでしょう!?」
ジョセフの回答とこちらの返答に食ってかかるエレアさん。別に怒るべきところでも無いと思うんだが。
「いえ、そんな程度の認識でいいんですよ。どうせ数が同じだったからというこじつけ、大した意味も無いんですから」
「……そんな理屈、美しくありませんわぁ」
俺の投げやりな意見に微妙にしょんぼりされてしまったが話が進まないので放置。
「まず、すべての人間がブラスレイターになれるわけではありません。血液中に侵入したナノマシンは遺伝子や何やらの様々な情報を得て、必要条件を満たした者だけをブラスレイターにし、満たせなかったものをデモニアックにします。ここまでは知っていますね?」
「ああ、大体は知ってる」
「それは良かった。人間をブラスレイターに進化させるナノマシンの構成パターンは72種類。ナノマシンは遺伝子などの様々な情報からその人間に適した構成に自分を組み替えていきます」
ジョセフは自分の掌の紋章に目を落としている。紋章の中にはローマ数字で七十二と刻まれている筈だ。
「まぁ、研究者が考える分かりやすい理想の構成パターンを1として、少しづつ少しづつ新たな構成を見つけ出していって、その構成の数が72だったから、外見の凶悪さとかも加味してゴエティアの72の悪魔にこじつけたというわけですね」
美しき奇跡の顕現だの選ばれた人類だのはどうでもいいので省略。遺伝子が適合してブラスレイターになれるかどうかはほぼ運によるところだしね。選ばれし者もくそも無い。
「そしてザーギンのナノマシンの構成パターンは、ツヴェルフが考えるもっとも理想的なもの。通常のブラスレイターでは逆立ちしたって敵いません」
「……」
絶望的な事実を突き付けられたような、それでいてどこか納得しているような微妙な表情で黙り込むジョセフ。ザーギンにどこか圧倒されていたところもあるらしいので仕方がない。
しかし正直な話、ザーギンはそこまで優秀だったろうか?高潔さとか頭脳面や肉体面ですぐれているかとかで強いパターンと適合するなら、まずペイルホースを開発した彼の姉とか凄いブラスレイターになりそうなもんだと思うのだが。
「はいそこ落ち込まない!大事なのはここからなので落ち込まずにちゃんと聞いて下さいね?」
「あ、あぁ……」
落ち込むジョセフに向かって冷めたヴルストの刺さったフォークを突き付け注意し、説明を再開する。
「まだ絶望するほどではありません。ザーギンは単純なスペックで言えば最強のブラスレイターですが、最後に発見された構成パターンを持つ貴方はその裏をかくような能力を唯一持ち得ている可能性があります。」
「……そうね、最後に発見されたパターン――アンドロマリウスは未だ未知の部分が存在するわ」
ここで今まで黙って俺の説明を聞いていたエレアさんが初めて口を開いた。
割と設定部分があいまいなブラスレイターでは、結局ジョセフの能力が何なのかはっきりと明言されてはいない。
しかし、最終回の描写から『今まで戦ったブラスレイターのナノマシンを保存し、そのブラスレイターの特殊能力を行使できる』というのが割と有力な説となっているらしい。
ゆえにデモニアックやブラスレイターと戦い続けていればザーギンにたどり着く、ザーギンを止められるというのもあながち間違った考えでも無い。ザーギンが突っかかってくるジョセフを殺さなければという前提があってこそだが。
「そんな訳で、取りあえずは基礎を固めることから始めましょう。基礎なくして応用無し。ヴィジョンの具現化です」
「具現化?」
「ジョセフ、細かい理屈はあなたには必要ないのではなくて?」
「下手に原理を理解して固定観念に縛られるのもいけませんしね。とりあえずそういうものなのだと理解しておいてください。で、ジョセフさんのようなタイプですと、具現化には明確なヴィジョンを思い浮かべることが必要になります」
これが本能や衝動に任せて力を振るうタイプのブラスレイターなら最初から具現化が可能(マレクやヘルマンなどが例)なのだが、感情を制御して戦うジョセフはその辺が不便になっている。
「まぁ具現化するのは大体の場合において何かしらの武器ですから、悪魔の辞典でも調べてそれらしい武器を連想してみるのが近道じゃないですか?」
そう締めくくり、フォークに突き刺したままだった最後のヴルストをパクリと一口。
力の使い方を教えるだのなんだの言っておいて結局具体的な方法は武器の具現化しか教えてないあたりはお粗末だが、現時点でジョセフが即座に手に入れられる力と言えばこれしか無いのだから仕方ない。
「省略しすぎて美しくは無いけれど、それなりに分かりやすい講義だったわ」
「それはそれは、一番詳しい組織の方にお褒めに預かれるとは、光栄です。俺ではなくエレアさんから説明していただいてもよろしかったのですが……」
「構わないわ。あなたの説明は美しくは無いけれど、必要なことは全て網羅していたのだし、ね」
俺が説明しても必要なことは全て網羅していたということは、ツヴェルフもその程度の情報しか持ちえていないということだ。
ペイルホースの完成から十年。ナノマシンの構成パターンが72あってそれに名前を付けて……、というのが既に十年前には完了していたのだと考えると、未だに最後のアンドロマリウスのパターンだけ解析が済んでいないというのも間抜けな話である。
とりあえずジョセフにガルムを渡してザーギンを追わせるより、協力して貰って最後のパターンがどんな能力を持っているかを解析、ジョセフの遺伝子やら脳波やらを調べてブラスレイターになる可能性の高い人間を探すとかするべきだったのではと思えてならないのだ。
行き当たりばったり過ぎる行動方針をどうにかしていくべきだという意見は出ないのだろうか。それとも宗教組織だからそれでも構わないと思っているのか、疑問は尽きない。
「ま、さんざん説明しといてなんですがジョセフさんは座学より実戦向きですし。エレアさんに頼めば次のデモニアックの出現予想地も分かるでしょう」
「……そんな事までできるのか?」
話を向けられたエレアさんが指で四角を形作ると、そこの空間だけが切り取られたように歪み、やがてこの地点を中心とした地図を表示し、次いで地図上に赤い点をいくつかと矢印付きのラインを表示した。
「これが今までのデモニアック発生現場と、それに基づいて予測された次の予測地点よ。もっとも、この程度ならXATにも分析可能よ。」
「ザーギンの痕跡を辿る為にもXATより早く捕捉してデモニアックを殲滅しなければならないし、被害者を少なくするためにも急がなければいけない。どちらにしても急ぐことは確定。大変ですね」
まるっきり人事な態度で気楽に言いながらオレンジジュースをちびちび飲む。
「貴方はどうするの?」
「ツヴェルフの関係者――エレアさんに見つかっちゃいましたからね。身を隠しますよ、多分」
まぁ、エレアさんに顔を見られているベアトリスが普通にあちこちうろついているのだからそこまで心配する必要はないのかもしれない。派手に事件を起こさなければ問題はないだろうし、バイトでも探してみよう。
「ま、無理しない程度にがんばってくださいな。死んだらなんの意味もありませんからね」
自分の食事代をテーブルに置き席を立って歩き出したジョセフの背に向かい別れの声をかける。返事は期待していなかったが、以外にも返事が帰って来た。呟く程度の声量だが。
「問題はないさ、ヴィジョンは見えてる」
呟くような声なのに内容的には力強いセリフを言い残し、ジョセフは店から出て行った。頼りになりそうな気がする、多分気のせいだろうけども。
外に出たジョセフから視線を外し、テーブルの上を見る。空き皿、空のコップにナイフとフォーク、そして、通信端末。
「で、まだ何か聞きたいことが?」
そこにはいまだ通信端末から姿を投影しているエレアさん。真顔でこちらを見つめる立体映像を映しながら、
「結局、貴方は何者なの?」
こちらの掌の紋章をチラリと見、問うてくる。
なるほど、悪魔の印が後付けなら、どのブラスレイターに適合したとしてもその紋章はデータベースに残っているということか。
更に言えばガルムに融合した時にこちらの肉体が普通の人間のものでは無いことがばれたのかもしれない。可能性は低いが。
「……まぁ、いいわ。ジョセフを助けてくれてありがとう。縁があったら――」
「そんな縁いりません。ツヴェルフに捕まりたくはありませんので」
「つれないのね。私は貴方にとても興味があるのだけど。あの美しい姿も含めてね?」
「ツヴェルフとか関係無しの個人的なおしゃべりなら大歓迎ですよ?」
「ふふっ、機会があればそうさせてもらうわ。また逢いましょう、タクヤ」
最後に妖しく微笑んで立体映像のエレアは消えた。外からバイクの発進する音が聞こえるから、さっそくデモニアック狩りにでも行ったのだろう。
通信端末を懐に入れ身体に取り込む。これで再び作り出さない限りは端末から所在を探られるなんてことは無い。
席を立ち会計を済ませ店を出る。夜も更けてきたし普段はあまり使わない口調で喋ったから精神的に疲れた、帰ってさっさと寝よう。
「あ、空き巣やんの忘れた」
まぁ仕方ない。デモニアックになった人間の家から金品を拝借すると言っても元からかなり無計画な計画だったのだし、換わりにガルムのコピーまで完了したのだから差し引きでプラスだ。
しばらくは暇つぶしにバイト先でも探したり崖から飛び降りて空を飛ぶ練習をしたりの繰り返しかな。バイクも手に入ったから怪しまれずに教会から市街地に通えるのも大きい。
因みに走った方が速いんじゃね?という疑問はいささか的外れ。そこら中に監視カメラが仕込まれている未来独逸でそれは危険すぎる。都市伝説になる程度なら可愛いもので、XATによって融合体との関連性ありと見なされたら面倒にも程がある。
「ヴルスト美味かったなー、明日は肉屋でも巡ってみるかー」
ともあれ、小説版で取り込める物は取り込んでしまったのだし、しばらくのんびりできる。明日からの無駄に長い休日に思いを馳せながら、俺は隠れ家の教会へと帰っていった。
次回へ続く
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以上、ジョセフとエレアさんを率いて飯屋に突入の巻でした。DVD見直したり小説読み直したりしているけどエレアさんの口調がいまいち分からない。お嬢様風のようでそうでないような……。
ジョセフのセリフも小説版とほとんど変わらないですがそこは勘弁していただきたく。
あ、主人公は肉体に取り込んだものの複製を質量保存の法則ガン無視で無限に作り出したりできます。それでも姉が旅行鞄を持たせたのは多少なりとも主人公に人間らしさを忘れないでいて欲しかったからという理由。
この能力を活用すれば十分過ぎるほどお金は稼げるんですが、そんな事をすると時間が余って暇で仕方がないのでやりません。
生きた動物とかは無理ですが頑張れば取り込んだデモニアックの複製が作れたり。死体からデモニアックになった物限定ですけどね。生きたままデモニアックやブラスレイターになったものは取り込んでも複製できません。
でも仮に今の段階で作っても、まだ主人公がどうやって下級デモニアックを支配すればいいか分かってないので脱走して勝手に暴れ出しちゃいます。
主人公の設定をあとがきでだらだら書き綴るのも変だし、ブラスレ編が終わって一区切りついたらこっそり設定とか纏めて書くべきでしょうかね。どう思います?
そんなわけで次回、マスコット的なオリキャラ登場。アルとかエレアとか村正とか好きですか?自分は大好物です。かけあいさせるためだけの便利マスコットは食傷気味だと言われても好きなんです。
言い訳ですがマスコットというかお供というか相棒的なキャラは最初から出すと決めてました。美少女の皮を被ったウインドウズのイルカとかの同類、あるいはダッチ。
それでも構わない、むしろ「機械語写本とか可愛いよね!」とか「村正より正宗のがノリが好み」とか「適当に読んでやるから、暇は潰せるから」という愉快で寛大なお方は、作品を読んでみての感想、諸々の誤字脱字の指摘、この文分かりづらいからこうしたらどうよ、一行は何文字くらいで改行したほうがいいよ、みたいなアドバイスとかよろしくお願いします。