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No.14434の一覧
[0] 【ネタ・習作・処女作】原作知識持ちチート主人公で多重クロスなトリップを【とりあえず完結】[ここち](2016/12/07 00:03)
[1] 第一話「田舎暮らしと姉弟」[ここち](2009/12/02 07:07)
[2] 第二話「異世界と魔法使い」[ここち](2009/12/07 01:05)
[3] 第三話「未来独逸と悪魔憑き」[ここち](2009/12/18 10:52)
[4] 第四話「独逸の休日と姉もどき」[ここち](2009/12/18 12:36)
[5] 第五話「帰還までの日々と諸々」[ここち](2009/12/25 06:08)
[6] 第六話「故郷と姉弟」[ここち](2009/12/29 22:45)
[7] 第七話「トリップ再開と日記帳」[ここち](2010/01/15 17:49)
[8] 第八話「宇宙戦艦と雇われロボット軍団」[ここち](2010/01/29 06:07)
[9] 第九話「地上と悪魔の細胞」[ここち](2010/02/03 06:54)
[10] 第十話「悪魔の機械と格闘技」[ここち](2011/02/04 20:31)
[11] 第十一話「人質と電子レンジ」[ここち](2010/02/26 13:00)
[12] 第十二話「月の騎士と予知能力」[ここち](2010/03/12 06:51)
[13] 第十三話「アンチボディと黄色軍」[ここち](2010/03/22 12:28)
[14] 第十四話「時間移動と暗躍」[ここち](2010/04/02 08:01)
[15] 第十五話「C武器とマップ兵器」[ここち](2010/04/16 06:28)
[16] 第十六話「雪山と人情」[ここち](2010/04/23 17:06)
[17] 第十七話「凶兆と休養」[ここち](2010/04/23 17:05)
[18] 第十八話「月の軍勢とお別れ」[ここち](2010/05/01 04:41)
[19] 第十九話「フューリーと影」[ここち](2010/05/11 08:55)
[20] 第二十話「操り人形と準備期間」[ここち](2010/05/24 01:13)
[21] 第二十一話「月の悪魔と死者の軍団」[ここち](2011/02/04 20:38)
[22] 第二十二話「正義のロボット軍団と外道無双」[ここち](2010/06/25 00:53)
[23] 第二十三話「私達の平穏と何処かに居るあなた」[ここち](2011/02/04 20:43)
[24] 付録「第二部までのオリキャラとオリ機体設定まとめ」[ここち](2010/08/14 03:06)
[25] 付録「第二部で設定に変更のある原作キャラと機体設定まとめ」[ここち](2010/07/03 13:06)
[26] 第二十四話「正道では無い物と邪道の者」[ここち](2010/07/02 09:14)
[27] 第二十五話「鍛冶と剣の術」[ここち](2010/07/09 18:06)
[28] 第二十六話「火星と外道」[ここち](2010/07/09 18:08)
[29] 第二十七話「遺跡とパンツ」[ここち](2010/07/19 14:03)
[30] 第二十八話「補正とお土産」[ここち](2011/02/04 20:44)
[31] 第二十九話「京の都と大鬼神」[ここち](2013/09/21 14:28)
[32] 第三十話「新たなトリップと救済計画」[ここち](2010/08/27 11:36)
[33] 第三十一話「装甲教師と鉄仮面生徒」[ここち](2010/09/03 19:22)
[34] 第三十二話「現状確認と超善行」[ここち](2010/09/25 09:51)
[35] 第三十三話「早朝電波とがっかりレース」[ここち](2010/09/25 11:06)
[36] 第三十四話「蜘蛛の御尻と魔改造」[ここち](2011/02/04 21:28)
[37] 第三十五話「救済と善悪相殺」[ここち](2010/10/22 11:14)
[38] 第三十六話「古本屋の邪神と長旅の始まり」[ここち](2010/11/18 05:27)
[39] 第三十七話「大混沌時代と大学生」[ここち](2012/12/08 21:22)
[40] 第三十八話「鉄屑の人形と未到達の英雄」[ここち](2011/01/23 15:38)
[41] 第三十九話「ドーナツ屋と魔導書」[ここち](2012/12/08 21:22)
[42] 第四十話「魔を断ちきれない剣と南極大決戦」[ここち](2012/12/08 21:25)
[43] 第四十一話「初逆行と既読スキップ」[ここち](2011/01/21 01:00)
[44] 第四十二話「研究と停滞」[ここち](2011/02/04 23:48)
[45] 第四十三話「息抜きと非生産的な日常」[ここち](2012/12/08 21:25)
[46] 第四十四話「機械の神と地球が燃え尽きる日」[ここち](2011/03/04 01:14)
[47] 第四十五話「続くループと増える回数」[ここち](2012/12/08 21:26)
[48] 第四十六話「拾い者と外来者」[ここち](2012/12/08 21:27)
[49] 第四十七話「居候と一週間」[ここち](2011/04/19 20:16)
[50] 第四十八話「暴君と新しい日常」[ここち](2013/09/21 14:30)
[51] 第四十九話「日ノ本と臍魔術師」[ここち](2011/05/18 22:20)
[52] 第五十話「大導師とはじめて物語」[ここち](2011/06/04 12:39)
[53] 第五十一話「入社と足踏みな時間」[ここち](2012/12/08 21:29)
[54] 第五十二話「策謀と姉弟ポーカー」[ここち](2012/12/08 21:31)
[55] 第五十三話「恋慕と凌辱」[ここち](2012/12/08 21:31)
[56] 第五十四話「進化と馴れ」[ここち](2011/07/31 02:35)
[57] 第五十五話「看病と休業」[ここち](2011/07/30 09:05)
[58] 第五十六話「ラーメンと風神少女」[ここち](2012/12/08 21:33)
[59] 第五十七話「空腹と後輩」[ここち](2012/12/08 21:35)
[60] 第五十八話「カバディと栄養」[ここち](2012/12/08 21:36)
[61] 第五十九話「女学生と魔導書」[ここち](2012/12/08 21:37)
[62] 第六十話「定期収入と修行」[ここち](2011/10/30 00:25)
[63] 第六十一話「蜘蛛男と作為的ご都合主義」[ここち](2012/12/08 21:39)
[64] 第六十二話「ゼリー祭りと蝙蝠野郎」[ここち](2011/11/18 01:17)
[65] 第六十三話「二刀流と恥女」[ここち](2012/12/08 21:41)
[66] 第六十四話「リゾートと酔っ払い」[ここち](2011/12/29 04:21)
[67] 第六十五話「デートと八百長」[ここち](2012/01/19 22:39)
[68] 第六十六話「メランコリックとステージエフェクト」[ここち](2012/03/25 10:11)
[69] 第六十七話「説得と迎撃」[ここち](2012/04/17 22:19)
[70] 第六十八話「さよならとおやすみ」[ここち](2013/09/21 14:32)
[71] 第六十九話「パーティーと急変」[ここち](2013/09/21 14:33)
[72] 第七十話「見えない混沌とそこにある混沌」[ここち](2012/05/26 23:24)
[73] 第七十一話「邪神と裏切り」[ここち](2012/06/23 05:36)
[74] 第七十二話「地球誕生と海産邪神上陸」[ここち](2012/08/15 02:52)
[75] 第七十三話「古代地球史と狩猟生活」[ここち](2012/09/06 23:07)
[76] 第七十四話「覇道鋼造と空打ちマッチポンプ」[ここち](2012/09/27 00:11)
[77] 第七十五話「内心の疑問と自己完結」[ここち](2012/10/29 19:42)
[78] 第七十六話「告白とわたしとあなたの関係性」[ここち](2012/10/29 19:51)
[79] 第七十七話「馴染みのあなたとわたしの故郷」[ここち](2012/11/05 03:02)
[80] 四方山話「転生と拳法と育てゲー」[ここち](2012/12/20 02:07)
[81] 第七十八話「模型と正しい科学技術」[ここち](2012/12/20 02:10)
[82] 第七十九話「基礎学習と仮想敵」[ここち](2013/02/17 09:37)
[83] 第八十話「目覚めの兆しと遭遇戦」[ここち](2013/02/17 11:09)
[84] 第八十一話「押し付けの好意と真の異能」[ここち](2013/05/06 03:59)
[85] 第八十二話「結婚式と恋愛の才能」[ここち](2013/06/20 02:26)
[86] 第八十三話「改竄強化と後悔の先の道」[ここち](2013/09/21 14:40)
[87] 第八十四話「真のスペシャルとおとめ座の流星」[ここち](2014/02/27 03:09)
[88] 第八十五話「先を行く者と未来の話」[ここち](2015/10/31 04:50)
[89] 第八十六話「新たな地平とそれでも続く小旅行」[ここち](2016/12/06 23:57)
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[14434] 第十四話「時間移動と暗躍」
Name: ここち◆92520f4f ID:c5c488de 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/04/02 08:01
さてさて、そんなこんなでノヴィス・ノアからアークエンジェルに戻ってきたあたし達だけど、そこから予期せぬ仕事が舞い込んできた。
原因はもちろんあれ、オルファンのグランチャー部隊を大量虐乙した謎の三体のことについて。
現場を見た人間の中ではそれなりに冷静で年長、かつ機体改造などでメカ関係に詳しいだろうという判断でお兄さん、ついでにあたし。
そしてアンチボディに詳しいということで元オルファンの伊佐美勇が呼び出され意見を求められた。
しかもナデシコからも通信があって、今回現れたテッカマンもどき、ナナフシ討伐の際にカオシュンに現れたテッカマン軍団とも関係があるかもしれないということでレポートの作成も行わなければならない。

真相を知っている立場からすれば滑稽だけど、実際に敵として現れたらこういう対応が正しいんだろうとは思う。
思うんだけど、そこはそれ正直な話、ここまで面倒なことになるならあたしらに目撃される前にプレートだけ奪って逃げて欲しかったかも。
でもそうもいかない事情があるんだろうことは想像に難くない。なにしろあの三体はそういう事を承知でクインシー達も相手にしたんだろうし、あたし達もそれに倣うのが正しいんだろう。

さて、意識を現実に戻すと、伊佐美勇がなんとも微妙な表情で推論を話していた。

「……あれがオルファンに対して友好的な存在じゃない、ってことだけは確かだ。でも言っておくが、間違ってもあんたら、いや、俺達の味方につけることができるような存在じゃない」

「どういうことだ? 他の報告を聞く限りではブレンパワードに近い形状だった、とあるが」

「確かにグランチャーよりはブレンに近いさ。でもあれはブレンともまったく違う。なんていうか、オルファンも人間も鼻にもかけていない、そんな気がするんだ」

副艦長の疑問に伊佐美勇が眉間にしわを寄せたしかめっ面で答える。
ここからしばし伊佐美勇の推論タイムスタート。でもどうにも的外れで面白みに欠ける答えばっかりだし、ここは他のことでも考えてようかな。

例えばそう、この世界でお兄さんの食指が万が一にもお姉さんかあたし以外に向くとしたら誰か、とか。
引き継いだお兄さんの記憶の一部だと、あたしが生まれる少し前にエレアにキュンときてるんだよなぁ。黒髪がキーになってるのかな? 露出がキーならメメメのアタックが多少なりとも実を結ぶ筈だし。
黒髪、例えばこの副艦長もエロいデザイン、髪伸ばして姉っぽい言動をとったらお兄さんが反応しそうな。
いや、でもなんか違うな。お姉さんはもっとこう、ねぇ?
ここまで表面堅く無いし、地元ならそれなりに人当たりもいいし、表情の作り方とかまるっきり違う。注意する必要は無いかなぁ。

「宇都宮さんにも聞いてみるべきかしらね……」

うおぉん、艦長さんおっぱいすげぇ。おっぱいすげぇ、このエロ同人の中の人め! 羨ましい!
いいなぁおっぱい、あれだけあれば絶対挟めるよなぁ。
いや、挟んで舐めるとかそこまで高度なテクは無いけど、無いけどその努力はしたい。
あー、あたしも『絞っちゃらめぇ(訳:もっと絞ってほしいよぉ)』とか『やだ、そんなに吸わないでぇ(訳:ああぁ、お兄さんがあたしのミルク飲んでるうぅ)』とか言いてぇ!
あたしも前よりは膨らんでるけど、それでもさきっちょをちろちろ舐められるとか、前歯でコリコリクニクニされるとか、控え目にフニフニされるとかそんなのがメインだし。
グニグニと欲望の趣くまま真っ赤に腫れあがるぐらい揉みしだいて欲しいのに、このサイズだと迫力無いのかなぁ。

「――で、鳴無、あの機体についてなんだが」

「どっちも専門家ほど詳しく無いんですが、あれ、MSってより間違いなくスーパーロボット系の機体がベースだと思いますよ」

「ああ、マードックの親父さんもそんなこと言ってたな」

まぁ艦長さんは栗毛だし、お兄さんのストライクゾーンからは外れている。
でもおぱいは素直に羨ましい妬ましい欲しい。あたしも無理やり増量するかなぁ。

「ていうか、あれは意見を求めるまでも無いと思いますが。見れば分かる! これでどうだ! みたいな単純な機体ですし。MSって普通アンチボディのチャクラ光喰らって無傷とか無いでしょう、な?」

「わひゃい!」

お兄さんに唐突に肩を叩かれ思わず変な声を上げてしまった。
視線が集まる、艦長も副艦長も死亡フラグも非シスコンもお兄さんもみんなこっちを見てる。
さりげなく他のブリッジクルーも振り向いてあたしを見てる。あ、あたし、見られてる、今すっごい見られてるよ! ンッギモヂイ、じゃなくて。
全く話を聞いていなかった。いや聞いていたけど右から左にすり抜けていったというか。仕方ないので会話の音声ログを辿って……、よし、大体わかった。
こほんとわざとらしく咳をして仕切り直し。

「うん、フェイズシフトでも全部防ぎきれるような単純な攻撃じゃないしね。あれはデザインだけがMSの、多分マジンガーとかと似たコンセプトの機体だと思う。でもマジンガーより単純に頑丈さ、力強さだけを追求した感じだあね」

「武装は殆ど内蔵せずに後付けにして強度を上げているってのもあるが、ゼオライマーみたいな特殊な装置を搭載してるから、余計な武装が必要無いって可能性もあるな」

あたしのセリフに頷き、お兄さんが補足する。

「なるほど、しかし、どこがそんなものを開発したのか……」

考え込む艦長ら三人、とりあえずさっきの叫び声はスルーしてくれるらしい。
しかし、考えた所で結論が出るような話じゃ無いのによくやるもんだ。あーあ、はやく終わらないかなぁ。

―――――――――――――――――――

……………………

…………

……

「お、終わったぁ……」

肉体的な疲労が無くとも、こういう地味でなおかつ自分たちへのリターンが少ない仕事を延々とこなすと精神的な疲労が溜まるのだろう。
ノート型の端末をバタンと閉じ、美鳥が盛大にベッドに倒れこんだ。

結局、あの後更にブリッジでの意味の無い話し合いに時間を費やし、そこから更にスケールライダーとボウライダーのセンサー類でとらえた謎の機体のデータをレポートにまとめ、
そのデータを別行動中のナデシコに転送し終えるのに消灯時間寸前まで端末とにらめっこするはめになった。

ナデシコに居た時はそもそもナデシコのセンサー類でより詳しい情報を集めて解析していたのでこういった作業を俺達がやる必要が無かった。
しかしここは連合の船アークエンジェル、連合が手に入れたデータを秘匿することも考えて、俺達にありのままの情報を送ってくるようにと追加で依頼を入れてきたのだ。
今から考えてみれば、アークエンジェル側に金を払って雇った自分たちの目と耳を送り込んでおくという意図もあったのが分かる。
この抜け目の無さ、流石はプロスさんだと言わざるを得ない。

が、しかしだ。あの機体がまるきり同じ状態で再び現れるかと言えば、それは間違いなく有り得ないことだと言い切れる。
つまりこのデータは間違いなく役に立たない、いかにもそれっぽいのに最終回終わっても回収されない複線のようなものだ。
これほどやりがいの無い仕事はなかなか無いだろう。

「無駄になると分かっている作業に時間を割く、ってのは、なぁ?」

備え付けの端末から離れ、冷蔵庫からジュースを取り出し、ベッドにうつ伏せに倒れこむ美鳥に放る。
空中に美しい放物線を描いて飛ぶ500ミリ缶。
ごつ、という鈍い音を立て見事に美鳥の後頭部に直撃し、ベッドの上に転がった。

「あてっ!」

枕に顔を埋めて突っ伏していた美鳥が、顔を起こして少し恨めしそうな眼で俺を見る。
が、特に何か言い返すでもなく再びのろのろと枕に顔を埋め直した。
どうやら精神的に相当疲れているらしい。帰って来た直後はもう、今すぐに暗躍しに行こうよ!とでも言いだしそうなほどだったのだが。

「おい、暗躍はどうするんだよ」

ベッドに寝転がる美鳥の横に座り、軽く肩をゆすりながら声をかける。

「うー、明日でもいいんじゃない? まだナデシコも合流できる位置に居ないし、超電磁組も呼び出されてない、じかんてきよゆうはほひれふあぁぁ~……」

「日本語で、いや、いいか。寝るならせめて着替えてからにしな」

「あー、い」

こんな状態で出ても上手いこと暗躍は出来ない、今日のところは休みを取って、明日の自由時間にでも改めて暗躍しよう。
のそのそと起き上がり、スケールライダー用のぴっちりとしたパイロットスーツを脱ぎ捨て下着姿になった美鳥を脇目に、適当にネットで本筋にかかわらない情報収集を開始した。

―――――――――――――――――――

元の世界から持ち込んだ音楽を聴きながら、ネット上の情報を検索する。
情報収集を始めて数時間、そろそろ起床を知らせるラッパが鳴り響く時間だが特に眠くは無い。
そもそもこの肉体は睡眠を必要とすることはあまりなく、今ベッドで眠りこけ、にらにらにやけながら奇怪な寝言を口走っている美鳥が例外なのだ。
まぁ、それだけレポートをまとめる作業が苦痛だったのだろう。
俺に取り込んだ技術の情報を移譲する時の手順を考えれば、わざわざ文章化してそれを身体を操って端末を操作して定型の文章にまとめるというのは面倒にも程があるというものだからな。

「ふむ」

とりあえずJ本編に関わりの無い部分、裏で進行していそうな作品の情報を集めてみた。
やはりというかなんというか、アストレイ関連はかなりの変化が見られる。

まず、デルタアストレイの設定が生きていそうな火星のコロニーが見つかった。
なんでもナチュラルもコーディネイターも遺伝子上の適性を調べられ、それぞれに最適な役割に割り振られていたらしい。
火星のテラフォーミングがまだ不完全だった頃のそういった生活様式を、効率がいいからと続けていた都市が存在したのだそうだ。
技術的にも他のコロニーとは一線を画していたようなのだが、木星蜥蜴、そしてグラドス軍の物量に対抗できず壊滅。
無限に加速できるあれとかが開発された可能性を考えれば、とても我慢ならん話だ。

次に無印アストレイ。これはオーブ関連の情報を追って行けばそれらしい影が見つかった。
グレイブヤードの騒ぎ、ギガフロート防衛戦、それらしい事件の情報はあちこちに流れている。
情報屋のルキーニにでも金を握らせればもうチョイ明確な情報が手に入ると思うのだが、今の段階でそこまで気にかけることも無い。
ここから手に入る情報だけでも既にレッドフレームにはディストーションフィールドが搭載されていることが分かった。
色々な世界観がごちゃまぜになってダイレクトに影響を受けたのは間違いなくジャンク屋連中だろう。自重率はこの世界で二番目位に低いかもしれない。
それでもENの問題だけはどうにもならなかったらしいが、木製の無人兵器から小型の相転移炉を取り出して搭載しようとしていたなんて噂もある。
他にもMSが振るサイズの日本刀とか、実用性はこの際置いておくにしても少し面白そうだし、とりあえずアストレイ原作がどの時点まで進行しているか度々チェックしておくだけでも十分実りがあるだろう。

Xアストレイは、まぁ、ぶっちゃけた話、取り込むべきものが無いので追っていない。
光波防御帯はビームコーティングされたナイフでもあれば貫けるし、そもそも木星蜥蜴のグラビティブラストを防ぐ事も出来ないから無敵の傘足り得ない。
そうでなくともこの世界観だとあの防御はいくらでも抜きようがある。
次元連結しかりボソン砲しかりラムダドライバしかりバイタルジャンプからのゼロ距離攻撃しかり……。
ただ単に、ビームも実弾も防げるよ! なんて単純な機能で勝ちを掴める世界では無いのだ。
ファンネル、じゃなくてドラグーンは適正があるか分からない上にそれほど必要でも無ければ魅力的でもない。
高位ブラスレイターの下級デモニアック使役能力を使えば一足飛びにGビットもどきも作れるのだ、態々盗りに行こうという気にもならない。
……Gビット、Gビットかぁ。なるほどなるほど、そういうのもありだな。スーパー系ビットとか、ううむ。

最後にディスティニーアストレイ。これは、MSコレクターの傭兵もジャーナリストも簡単に所在は割れた。
割れたが、この作品に登場する機体はそもそもまだ開発すらされていない。
量子コンピューターを侵すウイルスとかかなり魅力的だが、これの完成を待っていたらスパロボJのエンディング後にかなり長期間待たされることになってしまう。
探しに行くなら元の世界に帰ってから、改めて原作の世界に取りに行った方が早いだろう。

「ん、っくあぁぁ」

背筋を伸ばし、次いで肩を回す。ぽきぽきと体中の関節が音を立てた。
疲労は無いが、それでも身体は表面上人間の擬態をしている為に新陳代謝で垢のようなものも出れば顔色だって変わる。
意識してそこら辺を無くすこともできるが、姉さんが言うにはそういった無駄に見える部分も人間的なメンタリティを保つのには重要なのだとか。
なにより、身体が汚れている状態で身体を洗ってシャワーで石鹸を流したり、冷え切った身体で熱い湯に満たされた浴槽に身を浸すのは気持ちいい。
これぞまさに人生における至福の時。空腹があるからこそ満腹に価値があるのだ。

そんな訳で、さっそくシャワーを浴びてさっぱりしよう。
タオルと着替えを持ってシャワールームへ移動しようとすると、美鳥がもぞもぞとベッドから起き出して来た。
掛けてあった毛布を乱暴に蹴り飛ばし、ベッドの上でしばし目と口をしばしばさせ、ぼうっと俺と美鳥の間の虚空を眺めること数秒。

「……あ、おにーさん、おあよぉ」

あふ、と大きく欠伸をし、にへら、と笑顔であいさつをする美鳥。
最近の美鳥は極々稀に寝起きが悪くなる。
あくまでも人間の姿形、生理現象その他は擬態に過ぎないのだが、どうにも肉体を構成している姉さんの因子から寝起きの悪さというマイナスの因子も再現してしまうことがあるのだとか。
肉体年齢の成長にともない、そういったものまで再現されることは以前から予測していたらしい。
まぁ、どうしても早起きしなければならないような状況なら、眠らずに貫徹すれば寝起きの悪さも関係無くなるから問題無いとは言っていたが……。

「おはよう。俺はシャワー浴びに行くけど、どうする? まだ起床ラッパまで多少寝てられるが」

「んぅ……」

目をこすりながらタオルと着替えを持っていない方の手を掴んできた。
一緒に行きたいという端的な意思表示。明らかに幼児退行しているというか、いや、幼児期が存在しないから少し違う、電詞都市の高機能化のようなものか。
SD美鳥、つまり走狗だな。役割的にもぴったりだ。こいつに元の世界との通信機能とかあればなぁ。こっちとの時間の流れの違いとかあるけど、姉さんなら数百倍数千倍の加速会話くらい軽いだろうし。
そんなことを考えつつ、美鳥と一緒にシャワーを浴びに向かった。

―――――――――――――――――――

×月○日(暗躍ー!)

『明日でいいだろうとか言いつつ、俺も美鳥もすっかりその事を忘れて数日が経った』

『この数日の間、アークエンジェル側では何事も無く哨戒任務を済ますだけの日々が続いたが、どうやら向こう、ナデシコ側では色々と自体が進行していたらしい』

『木星蜥蜴の正体が人間型の宇宙人だということが分かったりテンカワが好戦的になってレイナードに振られたり、スパロボ換算にして二話分くらいだ』

『なにやらレイナードは相手も同じ人間なんだから戦わなくていいじゃないですかとか言っていたらしいが、そうなると同じではない生き物の類なら争っても特に問題は無いのだろう』

『きっとネンジ君やウッキー君とは死ぬまで理解し合えない人種なのだろう。恐ろしい話だ。非人間代表を気取るつもりはないが、そういった好戦的な態度ばっかり取っているからガイゾックや文明監察官が、いや、この作品には出ないけど』

『しかし、メメメとの通信でこれだけの情報を引き出すのに数回の通信を使用してしまった。あいつは最近露骨に話が横道に逸れまくるから困る』

『木星蜥蜴、いや、木連の連中が元地球人であるかどうか、木連の歴史とかについてまで暴露されたかどうかについては結局分からなかった』

『もう少し他の連中からも話を聞きたいのだが、なにやらメメメがやたらと通信機を放したがらず、他の連中が最初に通信機を取っても後ろでやたら換わってください換わってくださいとうるさいらしく、統夜やカティアやテニアと長時間の会話ができない』

『通信機を複数用意するなりなんなりすればよかったのだろうが、最初はこういう事態になること自体想定していなかったのだから仕方ない。閑話休題』

『そんな訳で今日という今日こそキッチリと暗躍を済ませて、と、ここまで書いて思ったが、暗躍はすでに成されているのに今から暗躍しに行き、しかも今日開始するにも関わらず実行日は数日前、これはかなりややこしい』

『まぁ、本当にそう思っただけで特にオチは無い訳だが。どうしてもオチが欲しければ軍曹辺りに頼めばいいんじゃないかなぁ、爆発オチとか』

―――――――――――――――――――

さて、起床ラッパなどといういかにも軍隊らしいものが存在しているから、当然アークエンジェルに搭乗しているパイロット各位も規則正しい生活をしているのか。
結論から言えばそうではない。一部の職業軍人を除けばほぼ全員が民間協力者、元が学生などならばまだ眠っているし、研究所からやってきた連中だってこの時間は大体いつも寝ているのが普通だ。
しかし、逆に起床ラッパが鳴る数時間前に起きてトレーニングをする武術家も居る。
目の前の連中がまさにそれだ。アークエンジェルを降りて基地の中にある、グラウンドのような場所でひたすら超人アクションに精を出している新生シャッフル同盟。
若い血潮が真っ赤に燃えて、燃えたは良いがその情熱をぶつける相手が居ないのでひたすら身体を動かして気を紛らわしているのだ。

「朝から元気だな、無駄に」

グラウンドで組手をしているのはドモンとアルゴ、チボデーとジョルジュ、一人余りでサイサイシーが少林寺の型の稽古をしている。

(ローゼスビットの修業とか生身でどうやるのだろうか……)

チボデーと対峙するジョルジュは珍しくサーベルを使っている。
というか、ガンダムローズ、接近戦では普通にシュバリエサーベルを使っていたんだったな。
余りにも印象が薄い。そもこいつは格闘系メインの大会で空気読まずにビット兵器使ってくるあたりで半ばキャラが定まってしまっているというか。
正直、今更騎士キャラとして剣使って個性出してみようとか違和感しか無い。あざとい。

「あ、タクヤのアニキ、ちょっと組手の相手してく――」

「貴様にお義兄さんと呼ばれる筋合いは無い!」

「う、うわぁあぁあああっ!!」

型稽古を中断してこちらに近寄って来たサイサイシーに思わず反射的に拳を放ってしまったが無害です。
戦闘シーンみたいなマジ声の叫びをあげながら大分派手に吹き飛んで頭から車田落ちしたけど当然無害です。ガンダムファイター頑丈でマジでいいサンドバック。

そのままなし崩し的に組手を開始、パワーとスピードでごり押しだと簡単に勝ててしまうので平均的なガンダムファイターの身体能力に合わせ、使うのはもちろん流派東方不敗のコピー。
更に美鳥が姉さんの因子から取り出して教えてくれた十七条の拳法も試してみたいのだが、以外と習得にコツが要るようなのでとりあえず今のところは保留としている。

シャッフル同盟の修業風景を見学にくると、必ずと言っていいほどこういった流れで俺まで修行に付き合わされる。
こいつらの人数が奇数なのもあって必ず一人余るのだ。
しかも身体能力があれなのでこいつらに付き合える人材が中々居ない。そこで似たようなレベルの身体能力を持つ(ということになっている)俺が度々付き合わされる。
御蔭で流派東方不敗の動作慣熟訓練も完了し、あとはモビルトレース形式の機体で実践するだけ……ああ、なるほど。

「……あれ、どしたん?」

突然こちらの攻撃が止んだ事に戸惑うサイサイシー。
ここで隙ありと突っ込むとカウンター決められる事を身体が覚えているからか、あちらも動きを止めてこちらを窺ってくる。
考え事をしつつも身体はサイサイシーとの組手を続けていたのだが、それも止めて必要なものとシチュエーションに考えを巡らせる。
よし、とりあえずは図に起こしてみよう。そうと決まれば人気のない場所に移動だ。

「悪い、ちと用事があったことを思い出した。今回はそっちの勝ちでいいから、じゃ」

「えぇ、そりゃないぜぇっ! オイラまだまともに当てれてないのにぃ!」

不満げなサイサイシーを完全放置で、俺は急ぎ足でアークエンジェルへと戻っていった。

―――――――――――――――――――

念入りに人払いの結界を張った自室内で、自らの脳内麻薬を大量に分泌させながらガリガリと絵を仕上げていく。
口ずさむBGMは適当にここ数年のスーパー系主題歌を即興で。まっかなーふーふふんいまー、がれきのーふーふふんたつー。といった感じでうろ覚えの歌詞は適当に誤魔化す。

あ、マジンガーがベースなのに歌のせいでシルエットがまるでアレみたいに! いや、ここは攻める時だな、肘とか膝に刺々しいエッジとかも付けちゃったりしてまぁ。
なるほど人型のシルエットが崩れるからスクランダーはいらんのだな、書き直し書き直し。
あれ? なんで設計図なのに決めポーズとらせてるんだ。また書き直、いいや、これに上書きしていこう。
素手だけってのも寂しいし、サーベルでも持たせるか。剣術もあるしな。
マスタークロス代わりにビーム布、そう、マフラーとかいいね。展開式で、戦闘モードでぶわわっと出てくる感じで。

ぬ、内臓武器全部捨てたから中身のパーツが足りなくてスカスカに。
ここはこうで、スーパー系よりMFっぽくすれば、しなやかになりそうな気がするが試してみないとわからんか。
ついでにこれをこうして、頭は、イケメンのバーザム君にしよう。センサーはモノアイの方が良く見えるザム。ちなみに腰は付いてるザムよ。
む、頭のデザインだけ浮いてる。頭部に合わせて首から下はMSぽく外側を弄って、操縦方式が東方不敗式モビルトレースだし、MFっぽさも出す為にやや角張りを少なくして……。
最後に動力は、俺、と。

「できた……!」

適当にその辺からチョッパってきたチラシの裏に鉛筆で書かれた簡単な設計図。
それはもう妄想満載の代物でとても人様には見せられないような恥ずかしい内容に、思わずクラッときてしまう。
ああ、自分の才能が恨めしい。とりあえずこれは書いた内容だけ画像データで保存して、このチラシはささっと焼いてしまおう。
プラズマ発生装置で一瞬にして焼き尽そうとしたところで通信機に着信が。
着信といってもこの通信機は特別製、ナデシコに乗せてあるもう一つの通信機としか繋がらないようになっている為、どこから掛かってきたかはすぐわかる。
居留守というのもあれだし、通信を繋ぐ。

「はいはい?」

「あ、卓也さん。お久しぶりです」

「おお、統夜か」

通信機に映ったのは相変わらずワンアクション毎に前髪がゆらゆらと揺れるヅラ疑惑の好青年、紫雲統夜だ。
まだナデシコとアークエンジェルがルート分岐して何週間も経っていないのに、こうやって会話するのは随分と久しぶりな気がする。

「お前が無事通信を繋いで来るなんて珍しいな」

日記にも書いたが、何時もは統夜が通信をいれても数分経たずにメメメに通信機を奪われて会話が中断されてしまうのだ。
因みに奪われるまでも後ろでメメメを抑えようとするカティアとテニアの怒声が聞こえてくるので、今回のように普通の声の大きさで喋れるというのは稀だったりする。
統夜は俺の言葉に苦笑いを浮かべた。無事に通信を入れられるのが珍しいなんて確かに苦笑ものだろう。

「ははは……、メルア達は出かけてますから」

「半舷上陸か。いいねぇ休暇、俺も偶には意味も無く市街地をぶらぶらしたいぜ」

基本的に基地に居る間はやることやってれば空いた時間は殆ど自由時間のようなものだが、何時スクランブルが掛かるか分からないので基本的に基地の外への外出は許可されないのだ。
そんなこんなでどうでもいい会話をだらだらと開始。
近況だのなんだのはメメメから一応聞いてはいるのだが、やはり他の人間の視点からだと同じ話でも違って聞こえてくる。
というか、聞いた感じではどうにもメメメ視点からの語りは偏った情報が多い気がするのだ。
やはりより多くの情報源を持ち、そこから情報の取捨選択を――

「あれ、なんですか? それ」

と、通信機の画面の統夜が俺がいろいろ書きなぐったチラシを指差した。
一応裏返しにしてあるし、通信機越しじゃ小さくて何か書いてあるなんて分からない筈だ。
変にはぐらかしても怪しまれるし、内容は知らせずに端的に答えてやろう。

「良いもの、かな」

「良いもの?」

「ちょっとしたお遊びのようなもんだ」

「?」

疑問符を浮かべる統夜に笑いかけ、その後は何事も無く会話を再開した。

―――――――――――――――――――

……………………

…………

……

そんなこんなで今日も今日とて例によって例の如く俺と美鳥で哨戒任務。
俺達が出る直前はドモンとチボデーが出ていて、チボデーはデビルガンダムが現れないことに不満を感じているらしい。
ドモンは対照的に落ち着いている様子だった。どうせいつかは表に現れて行動を再開する筈だから、今は確実にデビルガンダムを仕留める為に力をつける事に集中するのが大事なのだとか。
そういう割には多少身体のあちこちに平時では感じられない負荷が掛かっているのが見え見え、やはり自分の感情を抑える努力をしているのだろう。なにしろ自分の身内のことなのだ。

しかし、デビルガンダムが出てこない、か。
確か原作でもそんな話があった気がするが、ここでは他の原因も思いついてしまう。
一つ一つの肉のサイズがやたらデカイ鳥の唐揚げ定食をつつきながら、目の前の美鳥に問いかけた。

「やっぱりあれか、前回の自爆テッカマン一斉特攻が利きすぎたのか?」

四体も突っ込ませればカオシュン基地を更地にできる威力の自爆をその身に数えきれないほど喰らっているのだ、デビルガンダムの自己再生能力がいかに優れているとしても無事では済まない。
せめてバリアの一つも搭載していれば話は違ってきたのだろうが、再生能力とあの巨体を考えればバリアが必要になると考える方が難しいのだろう。
俺の疑問に、やたら大蒜の入ったレバー炒め定食をつつきながら美鳥が首をひねって何かを思い出すポーズをとった。

「そういえばあたし、デビルガンダムを攻撃しろ、とは言ったけど、生体コアについてはなんも言ってないなぁ」

「つまりキョウジ・カッシュはすでに消滅している可能性もある訳か」

「まーだからどうしたって話だけどねー。あ、でもそうなると逆にシュバルツとか生き残りそうじゃない?」

「乗換用にGの影忍でも用意しておくか?」

現在哨戒任務を終え、機体をアークエンジェルに戻し、基地近くの商店街の小さな食堂で美鳥と飯を食いながら雑談中。
昼の時間は少し過ぎている為俺たち以外の客は少ないが、念のため認識阻害の魔法は使っている。

戦時下ということで店を閉め疎開しているところも多い中、基地で働く軍人さんの為、あるいはこの土地に愛着を持っていて離れようとしない連中の為に営業を続けているとか。
経営している人たちはスパロボオリキャラ的なスペックを兼ね備えており、なんというか、そう、服装も髪型も独特過ぎて逆に引くレベルだ。
しかし、主人公適正があるのかどうなのか、料理全般を担当しているおかみさんも美人ならウェイトレス(本人に言うと照れる。響きが何となくこの小さな食堂で使うには不釣り合いな気がするのだとか)をしている一人娘もやたら美人。

髪が緑だったり青かったりするもご愛敬、思わず基地襲撃があったら適当な機体を複製して乗り込める形で近所に放置しておきたくなるような女主人公向けの親子だ。
娘ならよくある巻き込まれ主人公女バージョンが、母親が乗りこめば美人未亡人主人公という新ジャンルを立ち上げる事が出来て商業的に凄く美味しい。
現在のスパロボ関連の商法を考えれば路線としてはあながち間違いでは無いだろう。

ナデシコがヨコハマ基地にやってきてから何回かこの店で昼食を取っているが、ここの食堂の娘さん(他の客の話を聞くに評判の看板娘らしい)が唐突に会話に加わってきたり、客がはけてくると一緒にご飯を食べていいですかと聞きながら返事を待たずに同席してくるのだ。
まぁ、幾らなんでも認識阻害の魔法をガンガンにきかせているから内容は理解できないので話に加わろうとはしない筈だが油断は禁物。
ここはスパロボの世界、実はサイコドライバーで魔法が利きませんでしたなんて超展開、十分にあり得る。

「んで、どこから行く? 二人で入るのが不自然でなくて、人目が無くてっていうと、ラブホ?」

「兄妹でラブホは怪しまれるとかそういうレベルを超越してるから。隠しカメラも怖いし、適当な公衆便所とかでいいんじゃないか?」

「だねぇ。じゃ、店員さーん、おかんじょー!」

―――――――――――――――――――

……………………

…………

……

元の世界には数多くのナデシコSSが存在するが、公衆トイレの中から過去にボソンジャンプする話はなかなか存在しないだろう。
公衆便所からボソンジャンプでオルファン対策会議が行われた日に跳んだ。場所はどことも知れない山奥、少なくともスパロボJの中では登場しない。
元の世界では少し行ったところにピクニックに最適な広場がある為に道路も通ってきちんと舗装されているが、ここでは色々と辿った歴史が違うのか道路どころかまともな獣道すら殆ど存在しない。
スパロボ世界の日本にありがちな不思議エネルギーによって、開発出来ないような奇怪な山になっている可能性も無いではないが、少なくとも俺と美鳥のセンサー類ではそういったものは検出されていない。

「ふう、ん? ここを集合場所にするなんて、お兄さんも中々、なんていうんだろ、ねぇ?」

生い茂る草木を掻き分けながらきょろきょろとあたりを見回し、俺か姉さんか、そのどちらかの記憶から察したかは分からないが美鳥が複雑そうな顔をしている。

「ただの偶然だからそんな顔すんな、いくつかの候補地から偶然ここが選ばれただけだろ」

うちの連中にも軍の連中にも見つからないような場所で、近くに人が済んでおらず、この日付では特に事件も事故も起こっていない場所をいくつかピックアップし、その内のどこかに跳ぶようにイメージを遺跡に伝えただけ。
まあ、俺の内心というか自分でも自覚できないような意識の深いところまで伝わったと考えれば、偶然とは言えないのだろうが……。

草木をかき分け進むと、少しだけ木々が少なく日の光が射す開けた場所に出た。
そこに居たのは――

「遅かったじゃないか……」

「すまん。でも、遅れるのはわかってたんだろ?」

遅れてきた俺に文句を言う『俺』そして、

「こんな山奥にこんな美少女がお兄さんと二人っきりでいったい何を! こ、この泥棒猫……!」

「見事な疑似的嫉妬表現だと感心するがなにもおかしくはないなー」

美鳥がもう一人。さりげなく自画自賛しているけっこう大蒜臭い方が俺の連れてきた美鳥で、さりげなく香水の類で臭いを誤魔化しつつもほんのり大蒜の香りがとれていないのが目の前の俺が連れてきた美鳥だろう。
目の前の俺が分裂した俺では無いことはよく分かる。空気が違うとでも言えばいいのか、多分これがオーガニック的な何かというものだろう。
恐らくは今の俺がアンチボディを取り込んだらこんな感じになるのではないか。

「ナデシコ合流後の俺でいいんだよな?」

「ん、大体あってる」

こういう時未来人は話が早くて助かる。だいぶ投げやりな感じだが、もうプレートの奪取に成功することは知っているので特に不安は無い。

今回こうして時間をさかのぼってまで主人公チームと別行動をとっているのは、リバイバルしていないプレートを手に入れて、産まれたてで力の強いアンチボディを手に入れる為だ。
アンチボディは生き物のようなもので、俺は生きたモノを複製することができない。
万が一複製できたとしても、アンチボディは科学寄りのものでは無いため強化の度合いも低い。
そこで取り込む前に一旦DG細胞に侵させて無理やり科学寄りの存在にしてしまおうというのが今回の狙いで、それをやるにはやはり元からある程度の強さを持ち、なおかつ生まれたてでそういう浸食に対抗しきれない幼い個体であることが重要なのだ。

生まれたてでも強力なアンチボディといえば、エッガ・グランチャーが一番に思いつく、というかそれ以外に該当するアンチボディが存在しない。
エッガの悪の思念に簡単に影響されるほど純真無垢なグランチャーである為に浸食はかなりやり易いはずだ。
が、近くに居るものの影響を受けてリバイバルするのがアンチボディの特性、原作では見事にエッガのグランチャーが生まれたが、リバイバルの瞬間に居あわせるのが俺達だったがためにグランチャーもブレンパワードも生まれない可能性もある。
念のための保険としてオルファンのグランチャーも取り込んでおきたいのだ。
しかし、アンチボディにはバイタルネットに乗って一瞬にしてその場を離脱することが可能だ。こちらも次元連結式のワープやボソンジャンプがあるが、そもそも跳ぶ先が分からないことには追尾のしようもない。

目の前にいる未来の俺は、それを防ぐ為に助太刀にきたのだろう。
DGグランチャーかDGブレンパワードかは知らないが、アンチボディの持つ力を増幅して使えるようになれば、バイタルネットの結界を張ることができる。
ネリー・キムが山小屋周りの土地に張っていたモノの強化版のようなものでプレートの回収部隊のグランチャーを閉じ込めるのだ。

「さ、機体出して準備しな」

さっきからやたらと言い方が端的で簡潔なのは、下手な事を言ってタイムパラドックスを起こさないためだろう。
あまり知られてはいないが、ボソンジャンプによるタイムトラベルはかなりの危険を伴うらしい。
ナデシコのゲームで、過去に戻る実験をしたジャンパーがタイムパラドックスによって閉じた時間の中に閉じ込められて、歴史から消滅したことがあるとかないとか。

「え? あたしがあたしに乗るの?」

「いいからいいから」

向こうでは未来美鳥が現在美鳥を唆しているがあれはいいんだろうか。
視線を未来の俺に向けると、肩を竦めてやれやれと首を横に振った。

「俺が今のお前の位置に居た時も同じ展開だったよ。何を考えているのやら……」

つまり流れ通りだからパラドックスの心配は無い、ということか?
まぁ、俺もあまり頭が良い方ではないから見落としはあるかもだが、未来俺が何事も無く過ごしているということは少なくとも大きな問題にはならなかったのだろう。
まぁそれは考えてもあまり意味がないので置いておくとして、

「そのグラサン、似合ってねぇな」

目の前にいる未来の俺は何故か、レンズの丸い、怪しげな中国人商人辺りが付けていそうなサングラスを掛けている。
目元が吊りあがり気味でやや人相が悪く見える時がある俺の顔だが、逆に目元を隠すとやたらと胡散臭い顔つきに見える。
高校時代のクラスメイトが言うには、目元がきつい感じに見えるせいで普段は目元以外のパーツが優しげな作りに見えるだけで、実際は目元以外のパーツはかなり胡散臭い詐欺師みたいな感じなのだとか。

「知ってる。けどまぁ、なんだ、お土産ってのは微妙なものでもとりあえずは喜んで使ってみせるのが礼儀だろ? これなら見分けも付き易いしな」

口端を吊り上げ、肩をすくめて皮肉っぽく笑う未来俺。けっしてニヒルなキャラ気どりではない筈なのに、何時も通りのアクションが一々胡散臭く見えてしまう。
しかし、グラサンしたくないけどしなきゃいけないような空気になるイベントがこれからすぐ発生するってことか……。

微妙に憂鬱な気分になりながら手を空中に掲げる。
機体は既に完成している。強化次元連結システムのちょっとした応用により、他の連中では干渉できない異次元に格納してあるのだ。あとは召喚の為の合言葉とキーアクションを行うだけ。
目の前のグラサン俺もグラサンを外しポケットにしまい、懐からテッククリスタルを取り出し、天に向けて突き上げた。
二人同時に、叫ぶ。

「出ろおおぉぉぉぉぉぉっ! シャイニング、バーザァァァァァァッム!」
「テックセッターッ!」



続く
―――――――――――――――――――

短い上に話がまったく進んでいない、サポAIがエロ夢想をしたり主人公がサイサイシー相手に片手間に修行したりトイレからホイホイ過去にボソンジャンプしたりの十四話をお届けしました。ぶっちゃけ繋ぎ回というやつです。
しかも前の話の主人公が伊佐美勇相手に話してるあたりの時間まで逆行する始末。
でも次か次の次の話辺りで盛大にキングクリムゾンする予定ですので、それまでは分かりにくい時系列でお送りします。

あ、冒頭のサポAIのエロ思考ですが、前回のバージンアップ以来エロいことはしていません。
ただ単にその時の情景を欠片も余さず思い出すことが可能なだけです。思いだして何をするかなんてそんなことを考えるくらいなら、XXXにならない程度のいやらしいシーンを書くべきだと思います。

今回は戦闘シーン直前で一旦カット。種キャラ三人とサイサイシーしか原作キャラのセリフがありませんでしたね、とか言おうと思ってたけど、それって何時ものことなんですよね。
そんな原作キャラの出番が少ないこの作品ですが、これからもご愛読いただければ幸いです。

なんだか久しぶりのセルフ突っ込みタイム。シンプル版。
・アストレイ連中の扱いについて。
滅亡したり放置だったりとあれな扱いですが、主人公達がJ主人公チームから脱退した後の展開次第では登場の可能性があったりします。
因みにデルタアストレイチームは当然のように火星地下に潜伏していたりします。我慢ならん!
・主人公がサイサイシーに兄貴呼ばわりな件。
シャッフル同盟合流後に最初に組手をした時に叩きのめして以来そんな感じという、以後使われそうにない裏設定。流派東方不敗補正的なもので弟分生成フラグ。
サイサイシーがサポAIの事を若干意識していたりという無駄設定も。
・食堂の美人親子とか。
J次回作主人公とかそんな妄想。セリフすらないモブだが母親は若い頃は軍人で、娘はバイトの為にIFSのナノマシンを注射済みとかそんなどうでもいい設定がある。
親子共に宇宙人の襲撃とかあると運命的に近くに軍の試作機が落ちてきたりする体質。


次回予告に変わりオリキャラ辞典的な。脇役からー。

【烏頭】
第一話と第二話に登場。主人公の初陣の相手。
天狗系妖怪のお偉いさんの二代目。才能はそれなりにあるが先代と比べられて微妙な評価しか貰えない。こっそり苦悩する若僧。
魔法、符術などの扱いが苦手だが、見よう見まねと巨腕悪魔の指導で神鳴流もどきを習得できる程度には戦闘適正がある。
普段は人間に化け、動き易い洋服で過ごしている。
人間形体の時に、神鳴流の道場近くで虐められている烏族と人間のハーフでアルビノの女の子を何度か助けたことがある。
そこから交友を重ねて仲良くなり、ハーフの子から兄のように慕われるとともに妹の様に可愛がっている。
おっきくなったらお嫁さんになったげるな!みたいな死亡フラグを建立されていた。
仕事は割り切って行うタイプ。

【巨腕悪魔】
第一話と第二話に登場。主人公の初陣の相手。
海外出身のかなり偉い悪魔の貴族。息子に家督を譲ってご隠居生活。ロートル。
日本で余生をゆっくり過ごしていたが、天狗のお偉いさんに頼まれて烏頭の家庭教師的な事をしていた。
実はかなり強いが、若いころの無理が祟って一部魔法が使えなくなっている。
現在でも気まぐれに召喚に応じたりしているが、ヘルマンがまだオムツを穿いていた頃が最盛期だった。
老いて力は衰えているが、それでも一般的な魔法使いでは太刀打ちできない程度には強い。若い悪魔にはそれなりに慕われている。
仕事は楽しむタイプ。

両者とも少しだけ再登場の可能性がある。


次回はそれなりに早めに投稿できたらいいなぁという熱い思いをこの胸に秘めています。まぁ最終的にいつも通りの更新速度だと思いますが。
それでは、諸々の誤字脱字の指摘、この文分かりづらいからこうしたらいいよ、一行は何文字くらいで改行したほうがいいよなどといったアドバイス全般や、作品を読んでみての感想、心からお待ちしております。


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