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No.14434の一覧
[0] 【ネタ・習作・処女作】原作知識持ちチート主人公で多重クロスなトリップを【とりあえず完結】[ここち](2016/12/07 00:03)
[1] 第一話「田舎暮らしと姉弟」[ここち](2009/12/02 07:07)
[2] 第二話「異世界と魔法使い」[ここち](2009/12/07 01:05)
[3] 第三話「未来独逸と悪魔憑き」[ここち](2009/12/18 10:52)
[4] 第四話「独逸の休日と姉もどき」[ここち](2009/12/18 12:36)
[5] 第五話「帰還までの日々と諸々」[ここち](2009/12/25 06:08)
[6] 第六話「故郷と姉弟」[ここち](2009/12/29 22:45)
[7] 第七話「トリップ再開と日記帳」[ここち](2010/01/15 17:49)
[8] 第八話「宇宙戦艦と雇われロボット軍団」[ここち](2010/01/29 06:07)
[9] 第九話「地上と悪魔の細胞」[ここち](2010/02/03 06:54)
[10] 第十話「悪魔の機械と格闘技」[ここち](2011/02/04 20:31)
[11] 第十一話「人質と電子レンジ」[ここち](2010/02/26 13:00)
[12] 第十二話「月の騎士と予知能力」[ここち](2010/03/12 06:51)
[13] 第十三話「アンチボディと黄色軍」[ここち](2010/03/22 12:28)
[14] 第十四話「時間移動と暗躍」[ここち](2010/04/02 08:01)
[15] 第十五話「C武器とマップ兵器」[ここち](2010/04/16 06:28)
[16] 第十六話「雪山と人情」[ここち](2010/04/23 17:06)
[17] 第十七話「凶兆と休養」[ここち](2010/04/23 17:05)
[18] 第十八話「月の軍勢とお別れ」[ここち](2010/05/01 04:41)
[19] 第十九話「フューリーと影」[ここち](2010/05/11 08:55)
[20] 第二十話「操り人形と準備期間」[ここち](2010/05/24 01:13)
[21] 第二十一話「月の悪魔と死者の軍団」[ここち](2011/02/04 20:38)
[22] 第二十二話「正義のロボット軍団と外道無双」[ここち](2010/06/25 00:53)
[23] 第二十三話「私達の平穏と何処かに居るあなた」[ここち](2011/02/04 20:43)
[24] 付録「第二部までのオリキャラとオリ機体設定まとめ」[ここち](2010/08/14 03:06)
[25] 付録「第二部で設定に変更のある原作キャラと機体設定まとめ」[ここち](2010/07/03 13:06)
[26] 第二十四話「正道では無い物と邪道の者」[ここち](2010/07/02 09:14)
[27] 第二十五話「鍛冶と剣の術」[ここち](2010/07/09 18:06)
[28] 第二十六話「火星と外道」[ここち](2010/07/09 18:08)
[29] 第二十七話「遺跡とパンツ」[ここち](2010/07/19 14:03)
[30] 第二十八話「補正とお土産」[ここち](2011/02/04 20:44)
[31] 第二十九話「京の都と大鬼神」[ここち](2013/09/21 14:28)
[32] 第三十話「新たなトリップと救済計画」[ここち](2010/08/27 11:36)
[33] 第三十一話「装甲教師と鉄仮面生徒」[ここち](2010/09/03 19:22)
[34] 第三十二話「現状確認と超善行」[ここち](2010/09/25 09:51)
[35] 第三十三話「早朝電波とがっかりレース」[ここち](2010/09/25 11:06)
[36] 第三十四話「蜘蛛の御尻と魔改造」[ここち](2011/02/04 21:28)
[37] 第三十五話「救済と善悪相殺」[ここち](2010/10/22 11:14)
[38] 第三十六話「古本屋の邪神と長旅の始まり」[ここち](2010/11/18 05:27)
[39] 第三十七話「大混沌時代と大学生」[ここち](2012/12/08 21:22)
[40] 第三十八話「鉄屑の人形と未到達の英雄」[ここち](2011/01/23 15:38)
[41] 第三十九話「ドーナツ屋と魔導書」[ここち](2012/12/08 21:22)
[42] 第四十話「魔を断ちきれない剣と南極大決戦」[ここち](2012/12/08 21:25)
[43] 第四十一話「初逆行と既読スキップ」[ここち](2011/01/21 01:00)
[44] 第四十二話「研究と停滞」[ここち](2011/02/04 23:48)
[45] 第四十三話「息抜きと非生産的な日常」[ここち](2012/12/08 21:25)
[46] 第四十四話「機械の神と地球が燃え尽きる日」[ここち](2011/03/04 01:14)
[47] 第四十五話「続くループと増える回数」[ここち](2012/12/08 21:26)
[48] 第四十六話「拾い者と外来者」[ここち](2012/12/08 21:27)
[49] 第四十七話「居候と一週間」[ここち](2011/04/19 20:16)
[50] 第四十八話「暴君と新しい日常」[ここち](2013/09/21 14:30)
[51] 第四十九話「日ノ本と臍魔術師」[ここち](2011/05/18 22:20)
[52] 第五十話「大導師とはじめて物語」[ここち](2011/06/04 12:39)
[53] 第五十一話「入社と足踏みな時間」[ここち](2012/12/08 21:29)
[54] 第五十二話「策謀と姉弟ポーカー」[ここち](2012/12/08 21:31)
[55] 第五十三話「恋慕と凌辱」[ここち](2012/12/08 21:31)
[56] 第五十四話「進化と馴れ」[ここち](2011/07/31 02:35)
[57] 第五十五話「看病と休業」[ここち](2011/07/30 09:05)
[58] 第五十六話「ラーメンと風神少女」[ここち](2012/12/08 21:33)
[59] 第五十七話「空腹と後輩」[ここち](2012/12/08 21:35)
[60] 第五十八話「カバディと栄養」[ここち](2012/12/08 21:36)
[61] 第五十九話「女学生と魔導書」[ここち](2012/12/08 21:37)
[62] 第六十話「定期収入と修行」[ここち](2011/10/30 00:25)
[63] 第六十一話「蜘蛛男と作為的ご都合主義」[ここち](2012/12/08 21:39)
[64] 第六十二話「ゼリー祭りと蝙蝠野郎」[ここち](2011/11/18 01:17)
[65] 第六十三話「二刀流と恥女」[ここち](2012/12/08 21:41)
[66] 第六十四話「リゾートと酔っ払い」[ここち](2011/12/29 04:21)
[67] 第六十五話「デートと八百長」[ここち](2012/01/19 22:39)
[68] 第六十六話「メランコリックとステージエフェクト」[ここち](2012/03/25 10:11)
[69] 第六十七話「説得と迎撃」[ここち](2012/04/17 22:19)
[70] 第六十八話「さよならとおやすみ」[ここち](2013/09/21 14:32)
[71] 第六十九話「パーティーと急変」[ここち](2013/09/21 14:33)
[72] 第七十話「見えない混沌とそこにある混沌」[ここち](2012/05/26 23:24)
[73] 第七十一話「邪神と裏切り」[ここち](2012/06/23 05:36)
[74] 第七十二話「地球誕生と海産邪神上陸」[ここち](2012/08/15 02:52)
[75] 第七十三話「古代地球史と狩猟生活」[ここち](2012/09/06 23:07)
[76] 第七十四話「覇道鋼造と空打ちマッチポンプ」[ここち](2012/09/27 00:11)
[77] 第七十五話「内心の疑問と自己完結」[ここち](2012/10/29 19:42)
[78] 第七十六話「告白とわたしとあなたの関係性」[ここち](2012/10/29 19:51)
[79] 第七十七話「馴染みのあなたとわたしの故郷」[ここち](2012/11/05 03:02)
[80] 四方山話「転生と拳法と育てゲー」[ここち](2012/12/20 02:07)
[81] 第七十八話「模型と正しい科学技術」[ここち](2012/12/20 02:10)
[82] 第七十九話「基礎学習と仮想敵」[ここち](2013/02/17 09:37)
[83] 第八十話「目覚めの兆しと遭遇戦」[ここち](2013/02/17 11:09)
[84] 第八十一話「押し付けの好意と真の異能」[ここち](2013/05/06 03:59)
[85] 第八十二話「結婚式と恋愛の才能」[ここち](2013/06/20 02:26)
[86] 第八十三話「改竄強化と後悔の先の道」[ここち](2013/09/21 14:40)
[87] 第八十四話「真のスペシャルとおとめ座の流星」[ここち](2014/02/27 03:09)
[88] 第八十五話「先を行く者と未来の話」[ここち](2015/10/31 04:50)
[89] 第八十六話「新たな地平とそれでも続く小旅行」[ここち](2016/12/06 23:57)
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[14434] 第十二話「月の騎士と予知能力」
Name: ここち◆92520f4f ID:0d2f3432 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/03/12 06:51
辺り一面、砂、砂、砂。月の光に照らされ、光と影に色分けされた砂漠の中に立って居ると、自分がまるで影絵の世界にでも迷い込んでしまったように錯覚する。

唐突にごう、と風が吹き砂を巻き上げる。今日は嵐も来ない穏やかな夜、この風は意図的に生み出されたモノ。

振り向くと、空に一体の異形が飛んでいる。鋭角的で、しかし随所に女性的な曲線を多く含み、紫の体色に白と青のラインが走った全身鎧の様な外殻。背には飛行の役に立つのか疑問に思えるほどの小さな光の翼。

宙で方向転換する度、宙返りをする度、身をくねらせる度に風が吹く。月と星で彩られた空を舞い、風を操り遊んでいる。

ゆったりと気ままに飛んでいたそれが、目の前に降りてくる。その鎧姿が一瞬光の粒子に包まれ──次の瞬間にはゆったりとした長袖の服を身に纏った少女の姿に変わった。

着ている服自体はターバンに始まる砂漠ではフォーマルなものばかり。しかし着崩し、所々肌の露出しているその着こなしからは砂漠の民のように熱さ寒さから身を守るとか砂を防ぐとかそういった意図は一切感じられない。

もっとも、宇宙空間に生身で飛びだせる目の前の少女はそういった機能性を服に求めていないのだからこちらが気にする必要も無い。どんな服を着ていてもあくまでもお洒落の一種に過ぎないのだから。

「もう写真はいいの?」

少女──美鳥が問いかける。

「ああ、やっぱりああいう写真はプロだから撮れるんだってことがよく判った」

散々撮って一枚も納得のいく写真が撮れなかった。これなら美鳥のように空でも飛んでいた方がまだ有意義な時間を過ごせたかもしれない。

秋津マサトが拉致され、それを救出してから暫く時間が経過し、一部の機体やパイロットを除いて全員が平常通りの任務に付いている。

一部の機体とは例えばゼオライマー。戦意を喪失したマサトの代わりにゼオライマーにインプットされていたマサキの人格が表に現れて、そして何事も無く元のマサトに戻った。原因が解明されるまでは余計な任務には出られない。

次にレイズナー。コルベットとかいう軍の偉い人の命令で解体、解析されそうになりこれまた暴走。まぁこれはやるなと言われた事をやった軍の連中の不手際なのでそこまであれこれ言われている訳では無いが、パイロットのエイジがなにやら考え込んでいるようなので哨戒任務にも出ていない。

そんな中で、特に何の異常も問題も無く、かつ雇われた傭兵というシンプルで使いやすい立場に居る俺と美鳥は二人で哨戒任務と称して敵地見学に向かったのだ。

現在地タクラマカン砂漠、鉄甲龍要塞のある辺りからは少し離れているものの砂漠のど真ん中。と、いっても機体に乗ったままここまでやってきた訳ではもちろん無い。

哨戒任務ということで人気の無い山奥に向かった俺達はそこにボウライダーとスケールライダーを置き、チューリップクリスタルを複製しボソンジャンプで数日前に跳び、更にそこから次元連結システムのワープ機能で直接鉄甲龍要塞の中に侵入したのだ。

こうすることにより、元の時間でスケールライダーとボウライダーを放置する時間は殆ど無し、時間を気にせず要塞内部の見学を行い、帰る前に砂漠で寄り道している。

つまり今現在は俺達の時間軸から見て数日前の俺達が同時に存在していて、いや、むしろ今の俺達がこの時間だと未来人ということになるな。禁則事項です。

そんな訳で俺は砂漠の風景写真を適当に撮影し、美鳥は俺の撮影が終わるまでの間、久しぶりに生身での空中遊泳を楽しんでいた。

飛行形態はブラスレイター方式。テッカマンの飛行法だと速いけど強引で飛び心地が良くないのだとか。まぁテッカマンはブースター使ってるしそこら辺はしょうがない。

総合的な戦闘能力ではテッカマンに劣るものの、ブースター無しで超音速飛行できるブラスレイターの謎の飛行能力は一見の価値がある。超能力(ザーギンの念動力とか)や風を操る力(ゲルトのあれ)といった不思議能力も見どころの一つだろう。

DG細胞もナノマシンだが、本当にフィクション世界のナノマシンは便利過ぎる。もうナノマシンの仕業と言っておけば全部まかり通るとでも思っているのではなかろうか。

まぁ、俺も他のナノマシンについて文句を言えるような身体では無い訳だが……。

「ま、砂漠の写真はともかく、鉄甲龍要塞の中は見れたんだから良しとしようよ。建造中の幽羅帝専用機も見れたんだしさ」

「むぅ、まぁそうなんだけどな……」

鉄甲龍要塞の中では様々な物を見ることが出来た。八卦衆専用の大浴場に、各八卦衆の私室、ルラーン老の研究室、世界中に張り巡らされた国際電脳のネットワークを使い世界を破滅させるためのスイッチ、葎の仮面コレクション……。

八卦ロボの残り六機も当然見て触って複製した。あんなものをホイホイ格納庫に放置しているから俺みたいなのに複製を作られてしまうというのに、侵入者に対する警備が礼に寄って例の如くザルだった。

侵入者が云々以前に要塞を発見されるという事を考えて居ないので仕方無いのかもしれないが、仮にも悪の秘密結社のアジトの癖に、認識阻害とそこら辺の警備システムに少し融通を利かせただけであっさりどこにでも入れてしまうのだからもうどうしようもない。

いや、敵要塞の警備状況などどうでもいい。美鳥が言ったように、まだ外装も作り終えて居ないような骨組同然の姿で格納庫にその身を晒していた幽羅帝専用機も見つけたのだ。現時点ではハウドラゴンになるんじゃないかな、という予測がかろうじて立てられるような感じの作りになっている。

おそらく、これからゼオライマーが残りの八卦ロボを倒すと、やっぱり次元連結システムを組み込みたくなってゼオライマー風のフォルムになって行き、そうでなければルラーン自らの持てる技術だけを全てつぎ込んだハウドラゴンがこのまま完成するのだろう。

そして一通り見て回ったので鉄甲龍要塞の見学は終了。俺の写真撮影も美鳥の空中遊泳も終ったことだし、一旦次元連結システムのちょっとした応用である瞬間移動で機体を置いてきた位置まで飛んで、それからボソンジャンプで元の時間に帰還する、という形になるだろう。

と、そこまで考えた処で美鳥に手を握られている事に気付いた。目を期待にキラキラさせながら見つめてくる。

「帰る前にもうちょい寄り道してこうぜ。ケバブが食べたいケバブが!砂漠っぽい名物が必要だと思うんだ!」

「寄り道って、全然位置違うじゃねぇか」

「いいじゃん、一回食べてみたかったんだって。ほら、早く早く!」

手を掴まれそのまま瞬間移動、北アフリカでケバブを食べてから帰ることに。

途中で砂漠の虎に抵抗していたゲリラっぽい人たちとすれ違うこともあったが、俺達の顔は知られていないので特に怪しまれることも無し。

何だかんだ言って本場のケバブは中々に美味だった。店の人に聞いて作り方をメモして、材料もついすべて衝動買いして揃えてしまった。後で食堂に持って行こう、言い訳はどうするかな……。

―――――――――――――――――――

×月▲日(特に書く事が無いーと思ったらゲキガンタイプの兵器が初登場みたい)

『ナデシコの所属が連合軍に協力する特務分艦隊に変わったのでまたまた契約更新。なんでこうも短期間にちょくちょくこんな手続きが必要なんだ。かなり面倒臭い書類の束を始末始末始末、正直敵を始末する方が何倍も気が楽だ』

『とかなんとか書類を前に美鳥と一緒に愚痴を言い合っていたらプロスさんに謝られた。プロスさんはあくまで中間管理職だから悪くは無いんだけどなぁ。あそこまで低姿勢で居られると逆に居心地が悪い』

『あ、契約更新と言えばテンカワがナデシコから降ろされる事になるのか。これは原作通りなので気にしないが、今更わざわざ有人ボソンジャンプの実験とか欠伸が出るほど遅すぎる』

『まぁ、事前に回答見て材料を集めている俺が言えたセリフでは無いのだが。あっちは文字通りの手探りでやっている訳だし、進展しないのは仕方ないことだ』

『今回やってくるゲキガンタイプ(マジンだかテツジンだかデンジンだかは忘れた)もそうだ。もっと、もっと俺が取り込みたくなるような画期的な何かを持ってきてくれ!』

『まぁ、ここまでで殆ど必要な物を取り込んでしまった俺が悪いと言えば悪いのだが、ここからは悪く言えばほとんど消化試合となってしまうのかと思うと少し憂鬱になるのも仕方がないことではないか』

『あー、あとなんだったか、このステージで何か他の敵も出てくると記憶していたんだけど、これは出てから確認すればいいや。思いだせないならそれほど大した連中でも無いだろう』

『これから一旦艦を降りるテンカワの見送りなので今日の日記はここまで。その後はどうするかなぁ』

―――――――――――――――――――

ナデシコ艦内、居住区の廊下でテンカワアキトとメグミレイナードにばったり出くわした。

テンカワは自転車を引き、背中には大量の荷物。レイナードは手に大きめの鞄を持っている。

部屋を出たのはギリギリ間に合うかどうかという時間だったが、タイミング良くナデシコを出る直前、他の連中と別れた後だったらしい。

「よう」

「……おう」

「どうも」

仏頂面でも一応返事を返してくるテンカワと、そのテンカワの腕をギュっと掴みつつ返事をするレイナード。どうにもこの通信士の人からは好き好んで戦争を仕事にする人ということで結構警戒されていたりする。

そのままなにも言わずにいると、テンカワの方から先に口を開いた。

「ルリちゃんにジャンクフード勧めるの、止めておけよ」

「そりゃ俺の配慮する所じゃ無いね、俺が勧めてる訳じゃ無いし。お前がなんとかするべき事だろ? コックとしての腕の見せ所じゃないか」

無性にジャンクフードの味が恋しくなってハンバーガーの自販機に行くと、しまじろう──ナデシコのオペレーターであるホシノルリと出くわすことがある。

同年代の同性である美鳥(あくまでも見た目の話だ。実年齢は一歳未満だし、設定上の外見年齢はホシノルリよりも数歳上。それもバージンアップ後の今の外見ではそれなりに離れている)との付き合いとかで偶に食堂ではなくジャンクフードを食べに来たりする。

まあ、このスパロボ版ナデシコには様々な年代の様々な人種の人間が乗っかっているだけあって、身体に悪いからとジャンクフードを食べさせないなんて、今どきそうそう無い考えを推奨する人もそれほど多くはない。

そんな訳で、原作であるアニメ版ほどラーメンにハマっているという状態にはなっていないのである。

そんな状態に、ジャンクフードは健康に悪いという常識を持っているコック見習いであるテンカワは軽い危機感を持っていたりするのであった。

「無理だよ。だって俺、ナデシコ降りるから」

「ふーん。まぁ、一応言っておくよ、聞くかどうかは本人次第だけど」

「悪い、じゃあな」

言い、再び歩き出すテンカワとそれに付いて行くレイナード。

「おう、またな」

テンカワとレイナードの後ろ姿を見送った。これで一応テンカワ達の見送りも済んだので適当にぶらついて、いや、せっかくだから外の空気でも吸いに行こう。

俺は今さっき別れたテンカワと合流しないよう、遠周りでナデシコの外へと歩き出した。

―――――――――――――――――――

そういえばさっきのやり取り、なんか統夜とも似たようなやり取りをした気がするなぁなどと考えつつ暫く歩き、ナデシコの外、ヨコスカ基地の格納庫に出た。

ナデシコが入れるだけあってかなり広い格納庫は、ナデシコの中の格納庫に比べ格段に違和感無く巨大ロボを並べることができている。軍に正式に協力するということで色々とチェックがあり、エステ以外の機体はナデシコの外に一回運び出されているのだ。

その巨大ロボの足もとに居るブレンパワードが、何かから逃げるようにゆっくりと後ずさりしている。そういえばあれ、一応生き物のようなものだから自律行動が可能なんだったか。

それにしてもあの逃げ方は露骨すぎる。一体何をそんなに恐れているんだ? ブレンパワードの前に居るのは──デッキブラシを両手で槍のように構えた美鳥だ。

美鳥が一歩前に足を踏み出す、ブレンが後ろに一歩下がる。一歩踏み出す、一歩下がる。踏み出す、下がる。

真剣な表情でブレンににじり寄る美鳥、一方のブレンもかなり真剣、いや必死だ。今の俺にはブレンパワードの声もグランチャーの声も聞こえなければ理解も出来ないが、それでもこの強い恐れの感情は肌で感じる事ができる。

なんというか、お腹は減っていないけど運動の一環として鳥に跳びかかろうとする猫と、逃げたいけど脚を紐で括られているせいで飛んで逃げることの出来ない鳥、そんな感じの雰囲気だ。

周囲のパイロットや整備士やその他スタッフの大半が、一人と一機(一体?一匹?)の緊張感溢れるやり取りを固唾をのんで見守っている。

「何やってんだあいつは……」

「あ、卓也さん!」

その場に居たほぼ全員が美鳥とブレンから目を離せないでいる中、俺の呟きに素早く反応してメメメが満面の笑顔で駆け寄って来た。

まるでペティグリーチャムを皿に出された犬のようだ。俺に下心があれば間違いなくR元服な展開に持ち込まれてエロいことしながら統夜や他の2人に電話実況とかのありがちなネタの材料になっていたところだ。

まぁ、こいつらができる範囲のサイトロンコントロールのデータは収集済み、つまり端的に言ってデータ収集用のモルモットとしては用済みなので、特に危害を加えるつもりは無い。

危害を加えるつもりは無いのだが……、

「卓也さん、カメラマンさんが来てるんです、一緒に撮って貰いませんか?」

駆け寄ってきたメメメが俺の手を掴んでグイグイ引っ張りながらそんな事を聞いてくる。手を引く力は意外過ぎる程に力強い。

撮って貰いませんか? などと疑問形で聞いてはいるが、これは間違いなく強制イベントではなかろうか。特に断る理由も無いので構わないと言えば構わないのだが、こいつ原作でこういう性格だったか?

後半でいきなりお嬢様言葉になるヒロインも居るから気にするだけ無駄なのかもしれないが、なんだろう、こういう変化だと元気キャラである残り一名の立場がどこかへ行ってしまうのではいないかという不安が。まぁ元から三人の中では個性薄いからどうでもいいか。

ちなみに俺とメメメがこんなやり取りをしている後ろでは未だに美鳥とブレンの静かな追い駆けっこが続いていたが、やっと状況が変化したようだ。

「こら! ブレンを苛めないのーっ!」

通りがかったヒメちゃん(苗字は知らない)が美鳥に注意し、逃げていたブレンとも何事か話をする。美鳥の方もヒメちゃんに何か、身ぶり手ぶりを交えつつ説明しているようだが、どちらの声もここからでは聞こえない。耳の感度を上げれば余裕で聞こえるだろうが、わざわざそんな事をする程の事でも無いだろう。

ヒメちゃんはその説明を受けまたブレンに何か話しかける。と、逃げていたブレンがその場で足を止め、美鳥が近づいても逃げなくなった。それに向けゆっくりとブラシを近づける美鳥、ブラシがブレンの表面に当てられ、一擦り。

一瞬ビクゥッ! と身を震わせるブレンだが、逃げずにそのままフルフルと震えながらもブラシで成すがままに洗われていく。周囲のギャラリーから歓声が上がった。

「結局あれはなんだったんだ?」

「えーっと、美鳥ちゃんがブレンの掃除をしてあげようとしたんですけど、何でか美鳥ちゃんが近づこうとするとブレンがみんな逃げちゃったんです。それで美鳥ちゃんが逃げ遅れたブレンを追い詰めようと……」

なんであんなに逃げてたんでしょうね。と顎に人差し指を当てて小首を傾げるメメメ。

爪を出して目をキラキラさせる猫を前に逃げたがらない鳥は居ない、ということか……。まぁ本気でどうこうしようという気は無いにしても詰め寄られる方としては溜まったものでは無いだろう。

「そんなことよりほら、写真です! カメラマンさーん!」

こちらの手を掴んでいない方の手を振り、わざとらしい髭を生やした金髪の男を呼ぶメメメ。周囲の騒ぎを気にせずDボウイに纏わりついて話を聞き出そうとしていたそいつが振り返ったその時、格納庫の中に警報が鳴り響いた。

周囲の浮かれていた連中の表情が緊張した面持ちに切り替わる。あれだけ馬鹿なことで盛り上がっていてもやる時はやる連中なのだ。

「アークエンジェル、および全ナデシコクルーへ。緊急事態です。カワサキシティにグラドス軍が出現しました」

その言葉と共に一斉に出撃の準備を始めるクルー一同。気になる新型も出てこないような消化試合ステージで気が乗らないが、一応俺も出撃の準備をしておこう。

メメメに手を離して貰いボウライダーに向かおうと口を開こうとすると、ぎゅ、と手を強く握りしめられた。こちらをジッと見つめるメメメの瞳は常には無い真剣な色に溢れている。

「あの、気を付けて下さい。今日は、何時もと違う事が起きそうな気がするんです」

サイトロンの未来予知、か? あれは機体に乗っていなければ滅多なことでは発生しない筈、パイロットとしてすら満足にサイトロンをコントロールできない実験体であるメメメにそんなことができるのか。

サイトロンとの親和性が上がった? 騎士の息子である統夜ですらそこまでは行っていないのに、元はただの地球人であるメメメにそんなことが起こり得るのか?カルビさんもそんな感じだっただろうか。

いや、メメメのサブパイとしての性能アップから考えてもあり得ない話ではない。注意しておくに越したことは無いだろう。

「分かった、気を付けておく。メルアちゃんも気を付けてな」

「はい! って言っても、私が出るかは分からないんですけどね」

俺の答えを聞きようやく掴んでいた手を放し、舌を出し苦笑しながら答えるメメメ。

手を振り互いに互いの持ち場に戻る。メメメは統夜と他の2人が居るベルゼルートの元に、俺は降着しているボウライダーに。

座り込むような体勢でも六メートルほどの高さに位置するボウライダーの頭部に一跳びで飛び乗る。ハッチを開けコックピットへ滑り込むと同時にスケールライダーから通信が繋がった。

「お兄さん、メルアと何話してたん?」

微妙に拗ねているような表情の美鳥。嫉妬、だろうか。馬鹿馬鹿しい、確かに金髪巨乳は資産価値だが、俺はもっと大人で艶やかな長い黒髪で包容力のある姉さんにしか興味は無い。美鳥は次点で。

「ああ、多分敵増援の話なんだろうな。サイトロンがどうこうしてるんだろ」

言いつつ、身体の中のフューリー関係の技術に意識を集中する。サイトロンが収束し、頭の中に朧げなヴィジョンが浮かび上がる。

カワサキシティの外れに突如として出現する、今まで相手にしてきたどの敵とも異なる機体群。フューリーの騎士団の機体だ。

「──なる、確かに感じる」

モニターの向こうで美鳥も同じように予知をしていたのだろう、表情を真剣なものに改め、そこからニィと口の端を釣り上げて妖しく嗤う美鳥。新しい獲物の予感に心躍らせてるとかそんな顔をしている。

でもなぁ、ベルゼルートで必要な技術は全て取り込み済みだし、そこまで興奮するような要素も無いと思うんだがどうだろうか。

しいて必要なモノを挙げるとするなら、サイトロンに深くリンクできる純度の高い騎士の肉た――、ああ、

「なるほど」

「んふ、楽しみだね?」

「逸るな。先ずは先に木星蜥蜴どもを片付けてからだ」

なにより先ずは出撃命令が来てから、それまでは機体の調整でもしておこうか。

―――――――――――――――――――

……………………

…………

……

カワサキシティに現れた木星蜥蜴のジンシリーズと無人兵器、そしてグラドス軍を退けた俺達の前に、というか後ろの方に新たな敵が出現した。お待ちかねのスパロボJオリジナルの敵、月に拠点を構えるフューリー聖騎士団。

正直、自分たちで自分たちの事を『聖』とか名乗っている時点でかなり痛いのだがそこは宗教関係みたいなものだと割り切って気にしない方向で真面目にやろう。

「あれはグラドス軍じゃない。ボソン反応が無い」

「おい、あれは……」

「ああ、アフリカで見た奴だ」

そんな他の連中のやり取りの間、相手は棒立ち同然。とはいえ警戒はしているだろうから空気を読まずに攻撃を仕掛けても見事に回避されそうなのでやめておく。

それよりも、この場で確認しておきたいことがある。敵のリーダー機、ラフトクランズにオルゴンエネルギーが収束していくのが見える。

「くるよ」

美鳥が短く告げると同時、こちら側の機体だけが時を止められたように唐突にその場でピタリと動きを止めた。

各機のステータスチェック、正常。しかし、空を飛ぶ機体のブースターから出る熱による空気の揺らめきすらもが止まっている。

その場で滞空出来ない筈の戦闘機の類までその場で動きを止めているのだ、これは敵の時間兵器、ラースエイレムが確実に起動したと見て間違いないだろう

俺は──動ける。何の問題も無い。モニタの向こうで美鳥も腕で大きな○を作って成功を知らせて来た。肉体に組み込んだオルゴンエクストラクターその他のフューリーの技術が時止めに対する耐性をちゃんと持たせてくれた、と考えていいだろう。

レバーを握る。今回は実験を兼ねているため融合していない、現時点でネルガルにも晒しているボウライダーの仮スペックそのままで、当然フューリーの技術は組み込んでいない。

握ったレバーを動かす、──反応しない。首に繋げているプラグから融合開始、もう一度外からは見えない内部の機構を動かす──動いた。

「こっちはだいじょぶ。そっちは?」

「完璧だ」

そこまで美鳥と確認した処でベルゼルートがラースエイレムキャンセラーを起動、他の機体も動き出した。

これで俺達がラースエイレムを機動されても問題無く動けることが証明された。ここからはもう何の遠慮もいらない、あとは戦闘のどさくさでこいつらに肉体提供をして貰って、さらにサイトロンとの親和性を高めるだけ、と?

「うん……?」

何かが見える、いや、見えそうな気がする。ここまで意識的にサイトロンだのオルゴンだのを扱ったのは初めてだからか? 頼んでも居ないのに未来のヴィジョンが頭に──

浮かびそうで浮かばない、そういえばサイトロンによる未来予知には何かしらのきっかけが必要なんだったな。

この場合は恐らく、というか間違いなくフューリーとの接触がキーになっていると見て間違いない。特にあのリーダー機、隠し主人公機でもあるラフトクランズを見ると何かが頭に浮かんできそうな──ええい、戦って確かめるのが一番てっとり早いか。

荷電粒子砲のチャージを開始、まずは障害物でもある取り込むに値しないレベルの雑魚を散らしてしまおう。

狙いを定めトリガーを引く。荷電粒子砲が火を噴き、海の上を飛んでいた接近戦特化型と思われる機体が爆発。その向こうのバランスの取れた没個性な量産機も巻き込まれて中破。

この位置からだとラフトクランズに近づくには、壊れかけの没個性機と無傷の砲撃戦特化型を潰してしまわないといけないか?

いや、今の一撃で散開した。大体がベルゼルートを狙っているが、それ以外の足止めに回っている機体がこちらに接近してくる。オルゴンを結晶化させたエネルギーブレードを構えた没個性が一機。

さっきまで邪魔だった砲撃戦特化型は他の機体の足止めに回ったらしく援護攻撃や隙を狙う機影も無しと。これは、久々にボウライダーが小兵ということで侮られたかな?

「ふむ、ふむ」

荷電粒子砲を分解して二門の速射砲に戻し、クローアームの代わりに取り付けた肩部ウェポンラックにマウント、空いた腕の片方からレーザーダガーを展開、没個性の振るうエネルギーブレードを切り払う。

反動で少し距離が開いた。エネルギーソードを納めビームライフルを放とうとする没個性に向け、ウェポンラックにマウントしたままの速射砲で牽制、するつもりが牽制の砲弾が直撃しそのまま撃墜、没個性はライフルを構えたまま空中で派手に爆発した。

最終的に撃墜するにしても、あれくらいは避けると思ったんだけどなぁ。兵隊の質が低すぎないか? 騎士団なんて名乗るくらいだからそれなりに戦える連中が居るべきだろうに。

レーダーの反応を見る限りではラフトクランズはまだ様子見の最中なのかその場から動いてすらいない、ヴォルレントはベルゼルートに向かって吶喊中、近づくなら今がチャンスか。

遠距離からネチネチ攻めるのも悪くはないが、さっきの見えそうで見えなかったヴィジョンが気になる。ここはより近い位置で接触する為に接近戦をしてみよう。

と、ここで最初に撃墜した接近戦特化型の同型機が俺のボウライダーとラフトクランズの間に割って入ってきた。

その手にはオルゴンを結晶化させたクローを構えている。これも足止めのつもりなのだろうが──

「雑兵はお呼びじゃない。お呼びじゃないのだよなぁ、これが」

速射砲を単発で数回発射。結晶化したクローの刃の部分に連続で当てて砕け散らせると、撃たれた衝撃で接近戦特化型のクロー発生装置を持った腕がかち上がる。どうせなら両手に持たせてれば時間を稼ぐぐらいは出来ただろうに。

レーザーダガーを展開していない方の腕で電動鋸型ブレードを起動、強化パーツのメガブースターを全力で吹かして突撃し、がら空きになった接近戦特化型の胴体を切りつけた。

上下真っ二つになった機体が爆発、その爆炎の横を通り抜け、ブレードを構えたままラフトクランズに肉薄、殺さない程度に斬りかかる。

それをオルゴンブレードを展開したソードライフルで切り払われ、無い。そのままジリジリと鍔迫り合いの形に移行。

押さば引き、引かば押し。拮抗した状態で機体越しに睨みあう。俺のサイトロンに対する適正はまだ低いが、これだけ対象と接触すれば──

「ラースエイレムが使えぬとはいえ、このラフトクランズ、そうそうに止められは……ッ!?」

気付いた、いや見えたか? 俺も今まさに強いサイトロンの収束を感じる。朧げだったヴィジョンがハッキリと像を結んで行くのを感じている!

「ん、んんんぅ? ……くふ、くふふ」

見得た、視得た! これは面白い、いったいどのような経緯でこの未来へと辿り着くのか分からないが、未来に楽しみが増えて少しテンションが上がってきそうだ。

俺のテンションに合わせて半ば融合しているボウライダーの出力が一時的に上昇、鍔迫り合っていたラフトクランズのオルゴンブレードを無理矢理出力に任せて弾き飛ばし粉砕する。

ラフトクランズは弾き飛ばされながらもソードライフルからビームを発射、即座に転位して反対側からもう一撃。極太ビームによる挟み打ち、落ちるように下に逃げる。

着地寸前でボウライダーを180度回転させ振り向きブーストダッシュ、ラフトクランズの足下へと滑り込み通り過ぎる瞬間真上に向かって速射砲を放つ。回避された。

そのまま距離を取り、元の高さまで上昇。位置関係は振り出しに戻ったがラフトクランズの様子がおかしい。つい先ほどまで様子見をしていたとは思えないほどの気迫、真剣にこちらを仕留めに掛かっている。

そのまま油断なく睨み合う。ソードライフルからオルゴンブレードを再び展開し俺に猛烈な敵意、いや、殺意を向けるラフトクランズ。

今さっき視えた未来はこいつにとっては刺激が強すぎたのか? 地球人拉致って人体実験なんてしているから耐性はあると思ったが見当違いだったか。

いや、相手はサイトロンへの適性が非常に高い騎士クラスのパイロット、俺が見たヴィジョン以上の内容を見たのかもしれない。その方が楽しみも増える。

「敵さん、あんたには何が見えた?」

「悪鬼に語る義理は無い。我らが民の為に、貴様のその身の一片まで滅ぼし尽くす」

嗚呼、なんてすばらしいお言葉、良い感じに反吐が出そう。あれを見ても民の為、などと嘯くことのできるこいつの感性に万歳。

狙いを定めずに速射砲の砲弾をばら撒く。電磁加速された砲弾がラフトクランズをその周囲の空間ごとまとめて薙ぎ払う。途切れることのない飽和攻撃。

オルゴンクラウドの転移機能で一時的に回避し、それでも降り注ぐ砲弾の嵐をバリアでなんとか防いでいる。海を背にしたのが貴様の敗因だ、市街地に被害が出ないならどれだけ撃っても文句は出ない。

「あはははははっ! あんたあれか、自分個人の本音より身分の上での建前を重視するタイプか。……後悔するぜ?」

砲弾をまき散らしながら距離を詰める。いっそここで撃墜してこいつを取り込んでしまうのも一興かもしれない。どうせこいつ一人程度、居ても居なくてもストーリー展開が少し早くなるか遅くなるか程度の違いしか出ない。

まずはこのまま接近してダルマにしてコックピットから引きずり出し──と、興奮しすぎだな。今回は適当にリリースしてやろう。

ブレードに超電磁フィールドを展開、速射砲から放たれる弾幕はそのままに一気に距離を詰め、ソードライフルのオルゴンの結晶に覆われていない部分にブレードを叩きこみ破壊。真っ二つになったソードライフルの残骸と切り落とされた手指の一部が地上に落下していく。

他から見たら偶然武器だけ破壊したように見えるだろう。他の連中の目に『敵のリーダー機を撃墜しようと思ったら予想外に手強く、武器を破壊するので精いっぱいだった』という風に写ればいいのだが。

今の会話にしても、事前にオモイカネに命令して他との通信を妨害しているから少なくともナデシコとアークエンジェルの連中には聞こえていない。筈だ。

そのまま無手のラフトクランズの腹に蹴りをぶち込み距離を取る。ソードライフルが無くてもシールドクローとキャノンが残っているので油断はできないが、そんな不完全な状態で戦いを挑むほど馬鹿でもないだろう。

蹴り飛ばされ空中で姿勢を崩したラフトクランズは瞬時にオルゴンクラウドを発動、更に離れた位置に転位し姿勢を立て直した。注意深くこちらの様子を窺うラフトクランズ。

「……どういうつもりだ」

悔しげな震える声が通信から聞こえてくる。この数瞬の攻防で俺の戦闘力を少なからず感じているこいつは、今ならいくらでも仕留め放題だということも察している。屈辱だろう。

自然、唇の端が吊りあがる。この一方的な状況、たまらない。

「こっちもそろそろ燃料切れ、になりそうな気がするから無理をしないだけ。ほら、アンタの付き人も今にもやられそうだ。どうする、このまま意地張って戦うか?」

ブレードを軽く振り、遠くで戦っているベルゼルートとヴォルレントを指し示す。味方の援護を受けながらじわじわヴォルレントにダメージを与え続けてきたベルゼルート。

ダメージの蓄積で動きが鈍ってきたヴォルレントにオルゴンライフルAモードが叩きこまれた。大破までは至って居ないがこのままでは貴重なオリジナルのヴォルレントがお釈迦になってしまうだろう。

「俺にばっか構ってないで、ベルゼルートの方にも何か言っておくべきじゃないかねぇ」

俺の言葉に一瞬考え込むように動きを止め、そのままこちらに背を向けるラフトクランズ。去り際に短く捨て台詞を吐いて行く。

「次にまみえる時こそ、確実に貴様をヴォーダの闇に沈めてくれよう。我らが民の安寧の為に」

転位。ダメージを負い過ぎて戦える状態ではないヴォルレントの傍らに現れるラフトクランズ。撤退の準備に入ったか、懸命だな。

「地球の文化じゃそういうの、負け惜しみって言うんだぜ」

言い、オモイカネに命じて通信の妨害を止めさせる。この行動のログも残さないように命じ、証拠は当然の如く残さない。何やらオープン回線でラフトクランズがベルゼルートに何事か言っているが、俺に関することは特に言っていないので聞き流す。

雑魚も綺麗に片付き、撃墜されたヴォルレントも何かアイテムを落としていった。今日はこんなものか。あ、予知が面白くてフューリーのパイロット取り込むの忘れた。

多分美鳥も取り込んでないだろうなぁ。まぁ、いいか。どうせ月の中には腐るほど居るんだ。今すぐ急いで取り込む必要も無い。

ラフトクランズの中の人と統夜のやり取りが終わり、残ったラフトクランズとヴォルレントが転位して消えた。

ラフトクランズは武器破壊されただけだからいいとしても、ヴォルレントは殆どスクラップ寸前みたいな壊され方してるのに転位できるんだな。

ふむ、サイトロンとかラースエイレムとか以外の技術は未熟どころか微妙なものばかりと思っていたが、以外と機動兵器の性能も悪くないのかもしれない。

大体の量産機は地球の企業に作らせたものだから、フューリーのオリジナルの機体よりも未熟な作りになってしまっている可能性もある訳だし。

「待てよッ! 答えろ、俺がなんだっていうんだ!! くそぉぉぉぉっ!!」

通信から統夜のやり場のない感情のこもった叫びが聞こえる。そうだこいつの脳みそ穿ったら幼少の頃の記憶からフューリーが月の地下のどの辺りに居るか分からないかな。

いや無理か、ものごころもついてないような子供に自分がどの程度の深さに住んでるか教えるとか無いだろうし。今からフューリーの本部に突撃とか先の楽しみを消費しきってどうするつもりだ俺は。

ああ、なんか今回の戦闘は本気で楽しみしか追及出来なかったっていうか、一応新勢力が本格的に顔見せしたのに一切パワーアップが出来て無いってのはどうなんだろう。

進めて無い、消化試合だっていうのは分かっていたつもりなんだが、ひたすら足踏みだけを続けているみたいでなんとも煮え切らない気分になる。

せめてさっきラフトクランズが落としてったソードライフルの残骸でも拾っておこう。超電磁斬りしちゃったから修復できるかわからんが、何も拾わずに帰るよりは精神的にマシになる。

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……………………

…………

……

「そのような訳で、お二人にはアークエンジェルに乗艦して頂きたいのです、はい。あ、これはもちろん一時的な措置でして、あくまでもお二人はナデシコ、というかネルガル雇われという契約のままになりますのでご安心を」

「はぁ。雇い主の要望ですし、一時的なものなら構いませんが……」

戦闘が終了し、地面への激突の衝撃で更に歪んでいたソードライフルのジャンクを回収してナデシコに戻った後、俺と美鳥はプロスさんに呼ばれ、次の分岐での行き先を告げられた。

今現在のナデシコが連合との共同部隊の一員である、という体裁上、アークエンジェルにもネルガルからの戦力を組み込んでおかないと義理が立たないらしい。

まぁ、雇われの傭兵という身分上、純粋なネルガルの自社戦力とは言い切れない部分があるという突っ込みは当然あるにしても、よその組織や研究所からの協力者達よりは扱い易い戦力だという事からの抜擢だろう。

あとはアークエンジェルにエステバリス乗せても使いものにならないという致命的な問題もあるが、傭兵だからアークエンジェル側のあれやこれやで失っても自分たちの懐は痛まない、という計算もある可能性が高い。

まぁ傭兵の扱いなんてそんなもんなんだろうけど、スパロボ世界でもしれっとそういう計算ができるあたり、この人も中々にビジネスマンだよな。

そんな感じで談話室で机を挟んで話をまとめている俺とプロスさんの隣で、美鳥がぐでーっと机にへたり込んで脱力している。どうもこいつはアークエンジェル乗艦に乗り気ではないらしい。

「地上に残れるのはいいんだけどさぁ、アークエンジェルって飯不味いんだよねぇ。部屋も個室じゃないし、音漏れどころの騒ぎじゃなくね?」

「仕方ないだろ、むしろあっちの方が一般的な戦艦の設備なんだ。どうせすぐ合流できるんだから我慢しろ。ていうか、パイロットは一応個室だろ?」

「あれ、そうだっけ?」

俺と美鳥のやり取りに苦笑いを浮かべるプロスさん。

「いやはは、ま、ナデシコのお二人の部屋は当然そのままですのでご安心ください」

「いやそれは残しておくのが契約上の義務だから当然じゃん。あ、じゃあついでにあたしらの機体のチェックを緩くするようにしてもらえない? 特にアークエンジェルではチェックして欲しくないし」

向こうさんに聞かれたら舌うちされそうなセリフを平気で言うなぁ、でも、向こうにはマッドエンジニア的なキャラが居ないからなぁ。

満足にクルーの補充も行われていないし、それこそ新規で追加パーツを組むにしても自力でやった方が早そうな気すらする。

一々帰艦する時に機体の中身を作り替えるのも面倒臭い、向こうに居る間くらいはその手間を省いてもいいんじゃなかろうか。

「確かに、連合の技術じゃチェックして貰うメリットも無いな。プロスさん、お願いできますか?」

「そうですねぇ、元の契約では機体の扱いに関してはお二人の意思を尊重する、というものでしたし。分かりました、先方にはこちらから伝えておきましょう」

お任せ下さい、とばかりに膝を叩いて承諾して貰えた。これでひとまず話は終わり、三人で談話室を出る。

──正直な要求を言えば、ナデシコに乗っている間も整備だのデータ採取だのは自重して欲しいところではあるのだが、そこら辺は火星から帰って来た時にサインした新しい契約書に書かれているから諦めるしかないだろう。

もうこうなると統夜達のルート選択を誘導とか間に合わないよなぁ。そもそも時を止めて一方的にこちらを殺せる未知の敵が出てきて、しかもそいつに対抗する手段がベルゼルートにしか無い状況で部隊を分割とか訳分からん。

わざわざナデシコで迎えに行かなくても、月のネルガル支社にテンカワ一人分のシャトルのチケットを手配させてこっちに来させるのが一番安全な手だと思うのだが誰も突っ込みは入れないのだろうか。

スパロボ世界の不思議にいちいち突っ込みを入れてもきりがないにしても、艦長にはせめてこういう少し考えれば分かるようなところは考えて動いて貰いたい。

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×月◇日(今日もひたすら哨戒任務に出る日々が始まる……)

『日々というか、ゲーム内で描写されて無い時間なんて九割そんなもんだとつくづく思い知らされている』

『それはそれで気が楽というか、どうせ美鳥とコンビで行く事になるから気を使わなくていいから面倒が無くていいのだが、やっぱりもう少ししっかりとした纏め役が必要だよなぁ』

『UC系ガンダムが参戦していないからブライトさんが不在というのが割と致命的な欠点になってしまっている気がするのだがどうだろうか』

『なんというか、おっさん成分が廃され過ぎて熟練の指揮官が居ないというのは不安感を煽るばかりで頂けない』

『せめてアークエンジェルの艦長を正規の人員にする程度のことはするべきじゃなかろうか、元整備員が艦長っていったいどういうことなの……?』

『ええい、ここで種批判なぞしても碌な事にならない。前向きに現状の記録をしていこうと思うのでこの話はここまでとする』

『では気を取り直して、ナデシコが月にテンカワを迎えに行っている間、当然派手な動きは出来ない。自然とアークエンジェル側は哨戒に出たり各々の機体の整備をしたりといった地味な仕事が多くなるのだ』

『かく言う俺も今さっき哨戒任務を終えたばかりで、そのままボウライダーの整備を済ませて自室に戻ってこの日記を書いている』

『が、不思議な事が一つある。何時も通りに過ごしている筈なのに時間が少し余るのだ。哨戒任務を早く切り上げたとかも無い、むしろ途中でコンビニに寄り道してサンデーの立ち読みまでしてきたほどなのだが、それでも三十分以上時間が余っているのはどういうことなのか』

『基本的な日課はすべてこなしているし、その時の気分で違う事をする自由時間ということでもない、いったい何を見過ごしているのか』

『仕方がないので艦内を適当にぶらついて時間を潰してみようと思う。いやしかし、見るところが少ないからすぐ終わってしまいそうだなぁ……』

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「……とまぁ、そういう訳で。なんか弄っていい機体無いですか?」

「いきなりやってきて整備の手伝い始めたと思ったら無茶苦茶言うねぇお前さんも」

暇つぶしと言えば格納庫。目新しい機体も無いので自身の強化には繋がらないが、これでもかと機体の積み込まれた格納庫は適当にぶらついてあちこち整備の手伝いをするだけでも時間を潰せるのだ。

潰せるのだが、そこはやはりロボがあればとりあえず弄って改造しておきたくなるのが人情というものではあるまいか。

忙しそう、というか明らかに手が足りて無い整備の人達の手伝いとしてあれやこれやと整備をしていたのだが、この時点でストライクにコンバトラーから取り込んで小型化した原子力エンジンとか搭載したらフリーダム要らなくなるんじゃないだろうか。やらないけどな。

ボウライダーもこの機会に何か新装備を追加したい今日この頃でもあるが、ぶっちゃけ主人公チームで戦う分には今のままでも十分だと最近ようやく気付いたので後廻しにしている。

贅沢を言えば、どうせ弄るなら何の変哲も無い量産機とかがあるとすごく弄りがいがあって素晴らしいのだが、主人公勢力にそんなことを求めても意味は無い。そのうち機会があればジンの魔改造とかやってみたいものだ。

アークエンジェルの格納庫で整備全般を一手に任されているコジロー・マードックにそんな熱い情熱をスパナ片手に語って聞かせてみたのだが返事は芳しくない。

「きっちり整備の手伝いさせておいてなんだけどな、元から積んである機体は機密に触れるようなもんだし、それ以外となるとそもそも連合の機体ですらねぇんだよ」

その機密の塊らしいストライクの整備とかを今まさに手伝ってたんだけどそこら辺はスルーらしい。何事にも本音と建前が存在するのだ。

「ぬぅ、ある意味予想通りの回答。じゃああれだ、現地調達したザフトのジンのスクラップとかは?」

「無い。ストライクは装甲があれな上に独自開発だからパーツの流用とかも殆ど利かんし、それ以外はMS自体が存在せんから拾うだけ無駄になっちまうんだよ」

操縦できるパイロットも一人しか居ないしな、と肩を竦めるマードックのおっさん。まぁ複数MSがあってそれに乗れるちゃんとしたパイロットが居ても、周りがこんな超兵器だらけじゃ出撃させる回数も少ないだろうしな。

でも、敵のパーツ拾って急造のストライカーパックとか作るとかすれば面白そうなのに。ブリッツのパーツ流用でミラージュパックとか普通なら誰でも妄想するものじゃないか?

ああいや、ブリッツ以外の機体からだと何も作れる気がしないな。イージスの変形機構はパックには組み込み用がないし、バスターも既にランチャーパックがある、デュエルも特徴が無いのが特徴みたいな機体だし。

そういうMSメカニック関係の小細工はアストレイが担当だから本編組は手を出しちゃいけないという暗黙の了解があるのかもしれない。時系列的に考えるともうレッドフレームはガーベラを手に入れてるしブルーフレームも海戦用のオプションとかを作成済みだろうし。

よくよく考えるとミラージュパックというかミラージュアストレイとかは実際に出てきてる訳だし、もうアストレイが本篇でいいんじゃなかろうか。いや、種と種死が外伝ってのも旨味が一切無くなってしまうか……。

「じゃ、他のところを当たってみるんで俺はこれで。あ、聞いてると思うけど俺と美鳥の機体には手をつけないようお願いしますね」

「おう、自分の機体の整備もしっかりやっておけよ!」

「もう終わってるよー」

マードックのおっさんに後ろ手でひらひらと適当に返しながらその場を離れた。一応話は通っている筈だが、ちゃんとやっておかないと職人気質の人は勝手に手をつけそうで困る。

ナデシコの方で追加武装作る過程で簡単な整備の仕方とかも習っておいて良かった。形だけでも分かりやすく手を付けておかないと、コックピット入って数分してはい終わりじゃ納得しそうにないもんなここの人は。

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格納庫から出て通路を歩く。見て回って面白い施設が少ないから、だれか暇そうにしてる奴を捕まえる方が面白いのだろうが、アークエンジェル側は人員がやや少なめというか足りないので暇な人間はあまり居ない。

しいて暇そうな連中と言えばシャッフル同盟の連中だが、こいつらは基本特訓で時間を潰しているので、合流すると格闘戦の訓練ルートに強制移行してしまうのが難点だ。

光子力研究所チームは統夜達の付添でナデシコに乗って月へ向かった。まぁ金貰って雇われている訳では無いから割と自由に行く先を決められるのだから、好き好んで連合の船に乗りたがる奴も居ない、ということか。

マサトと氷室のラストガーディアンからの出向組も基地に居る事が多いが、今は空気が悪すぎて積極的に近寄りたく無いんだよなぁ。

コンバトラーチームは今さっき哨戒任務で分離してあちこちに散らばっていったし、ボルテスチームは空気がマジ過ぎて近寄りがたい。

種連中はブリッジクルー以外は昼ドラやってるからボルテスチームとは別の意味で近寄りがたい。ノイマンさんとバジルールさんがくっ付いたら生存フラグ立って隠し戦艦でドミニオン入手とかあればいいのに。

ブレン乗りの連中は生き物系、あいつら的に言えばオーガニック的なあれに日常的に触れているからなんか見抜かれそうで嫌だ。機体越しならそういうのが無いことが分かっているから安心できるのだが生身だとそうもいくまい。

フルメタの連中が一番害が少ないが、変にコメディパートの途中で乱入しても話がややこしくなっていけない。相良軍曹にも微妙に警戒されているし。

ああ、つまりどこの誰に当たってもダメなんですね分かります。せめてまともな調理設備があればサイサイシーあたりから中華料理のコツを聞き出せるのだが、ここはもう本当にガチガチの軍隊系っていうか、食料もヴァンドレッドの男軍みたいなやつだし。

自衛隊とかだと飯関係やたら豪勢だって聞いたんだけどなぁ。いや、出撃の時じゃなけりゃ艦の外に食いに行くから別にいいけど。基地の食堂ならまだまともな飯が出るし基地周辺の食堂も中々良い店が多い。

いやいや飯もいいが次に朝一で哨戒任務が終わる日があったら基地周辺で土産物を売ってる店を巡ってみよう。そんなことを考えながら歩き、結局誰にも会わずに自室へと到着した。

もういいや、今日は自室で本でも読んで時間を潰そう。

―――――――――――――――――――

自室に戻ると、まだ使い始めたばかりでいまいち生活臭足りない空間と、そこで際限なくだらける美鳥が俺を出迎えた。

「そうそう、お兄さんまたミスリルのワンころとはしゃいでさー、銃弾をデコピンで正確に撃ち返すコツの研究だーとかやってたら他のクルーが賭けを――あ、おかえりぃ」

コミュニケとは違うゴツめの通信機を手に、ラフな格好でベッドの上に寝転んでいた美鳥が軽く手を振った。多分月に向かうナデシコに乗っている誰かと連絡でも取り合っているのだろう。

アークエンジェルに一時的に乗り込む上で、俺と美鳥にはそれぞれ個室が宛てられるものと思っていたのだが何故か二人で一部屋を使う事になっていた。

超電磁の二機やダンクーガがアークエンジェルに残る上で、まぁ当然と言えば当然なのだが、スーパー系の扱いに慣れている専属に近い整備員もアークエンジェルに乗艦することになるのだ。

当然、元から空いていた居住スペースにはそれなりの人員が収まる事となり、後から来たパイロットは優先的に個室を使うことができなくなったらしい。

まぁ、それでも他の連中と同室にならなかっただけこちらのことが考慮されていると考えられるし、俺と美鳥の他の連中には話せないプライベートな相談事とかが気兼ねなくできるからこれはこれでいいのかもしれない。

「ん、ただいま」

美鳥に挨拶を返しつつベッドの下に置いた旅行鞄を開けて中身を探る。持ってきた本、というかアルバムの類はどこに入れておいたかなっと。

「え、あーうん帰ってきた帰ってきた。なんかあたしとお兄さんの今のやり取り新婚過ぎてちょっと馴れちゃった夫婦みたいでよくね? 近親とかエロスな――いや冗談冗談、いきなりマジ声に切り替わるの無しだろー?」

自軍で手に入るものを殆ど手に入れてしまったからか、最近の美鳥は少し自らの異常性癖についてオープン過ぎるのではないか。

現在の肉体の外見年齢だと意外と冗談にならない場合があるのだが、いざとなれば切りのいいところで契約切って出て行けばいいとか普通に考えてそうで困る。

まぁ、残りの機体についてもモルゲンレーテにて建造中とかそういうはっきりとした情報があるから最悪本気でここから出て行くという選択肢もありなのだが。

「わかった、わかったから、換わるから落ち着こうぜ? お兄さん、御指名だよぉ」

通信機をこちらに差し出しながらベッドから起き上がる美鳥。

「誰の?」

「金髪巨乳ぅ」

にゅぅ、と語尾を伸ばすと只でさえエロい四文字熟語が余計にエロくなっていけない雰囲気が漂ってきそうだ。きょにゅぅぅ、とか書くと途端に卑猥な擬音表現のようではないか、けしからん。

しかし金髪巨乳か、三人ほど居た気がするが、俺と美鳥に関係があってわざわざ通信機まで使って喋る相手となればメメメぐらいだが――

「ああそうか、なるほどなぁ」

メメメだ。何か微妙な時間の余り方だと思ったら、メメメへの餌付けタイムの一時間が浮いているのだ。

結局月にフューリーの情報を探しに行った統夜と三人娘達、そのお陰で冥王強化フラグが早々に立ち消え、いかん、なんか今少しだけイラっとした。

まぁGゼオライマーじゃなくてもゼオライマーは十分強いから良いけど、良いけどね! ぜ、全然悔しくなんかないんだからね! と、ついつい素直になれなくて損をするタイプ風に錯乱してしまう程度にしか悔しくない。ハウドラゴンだってカッコいいもの。

しかし狙っていたものが取れないのは悔しいので、帰ったら何かしらの罰ゲームをメメメに課すことに決めた。お菓子の山とそれを食べ尽くす美鳥の前にステイ指示でお預けとかそんな感じの罰。

三人娘の他二人と統夜にも食わせるといい感じかもしれないが、どうせ身内だから遠慮したりで罰にならない。いや、罰がどうこうの辺りが完璧に八当たりだからその対応が当然ではあるのだが、ここはコミュニケーションの一環ということで押し通していきたい。

そんな訳で、その旨を伝えるメメメに直接伝える為、俺は美鳥から通信機を受け取った。今からどんなリアクションが見れるか楽しみだ。




続く
―――――――――――――――――――

二話連続でオリサブキャラであるサポAIが開幕持って行くとかどういうことなの……? あ、サブキャラであってサブヒロインでないところがキモです。

しかしスパロボ編が長くなりそうです。処女作だから複線這ってもささっと回収して綺麗に纏め安いようにという意味を込めていた三話以内縛りがあっという間に崩壊しました。

偶に、主人公を原作部隊から除隊させて何事も無く帰らせてしまおうかという誘惑に囚われそうになりますが、スパロボ編のラストシーンとかで色々書きたい部分の事を考えるとそういう訳にもいきませんね。

前話と今話の間でさりげなくキンクリしてるのもそうですが、この話の中で一話しか進んで無い上に、会話した原作キャラがメメメとマードックだけというのもどうなんでしょうか。微妙に短いし。

あ、でもやや短めなのには理由があります。ひとつの話の中に上手くも無い戦闘シーンを二回も入れると前話のようにくどさが倍増してしまうからです。これも戦闘を省略すればどうにかなるのですが、原作だとこの辺の話は重要臭いのでなかなか飛ばし難いので困っています。

でもまぁもしかしたら次回頭でまたささっと省略されているかもしれません。そんなこんなで、必要な部分は書きますが不要な話はどんどん飛ばして行こうと思います。

そういえばこの作品、原作ファンの方々が怖かったりで実際には書けませんが東方にトリップする案もあったりしました。どこに向かうかは当然お分かりですよね? そう、東方非想天則の早苗さんルートのラスト付近です。

それはもうとてつもない原作キャラに対する虐待が一つあるというのも書けない理由だったりします。

具体的には早苗さんの前に巨大ロボで降臨して、憧れの人型巨大ロボットに乗せて欲しそうにする早苗さんに『悪いな巫女さん、このロボット三人乗りなんだ』とかやるだけのどうしようもない話なのですが、三人乗りの機体を主人公が持っていないことと、ここに落ちを書いてしまったことで書く可能性は今まさに完全消滅致しました。

あと、巨大ロボットといってもリアル系かスーパー系かでも好みが分かれるんですよね。J主人公のベルゼルートみたいなリアル系がありなら三人乗りなんだを二人乗りなんだに改変して行けそうな気もするのですが。リアル世界換算なら早苗さん年代的にビーストウォーズとかデジモンとか直撃世代だと思うので。

今回は特にセルフ突っ込みどころが思いつかないのでここまでです。次回更新は色々忙しいのでまた遅れると思いますが、ゆっくりと菩薩のような心でゆっくり悟りでも開きつつお待ち下さい。

諸々の誤字脱字の指摘、この文分かりづらいからこうしたらいいよ、一行は何文字くらいで改行したほうがいいよなどといったアドバイス全般や、作品を読んでみての感想、心からお待ちしております。


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