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No.1438の一覧
[0] 魔女ヘクセの面倒ごと[ラオ](2006/09/23 12:59)
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[1438] 魔女ヘクセの面倒ごと
Name: ラオ
Date: 2006/09/23 12:59
「助けて下さい!!」
私は悲痛な男の叫びを聞いて「なにを」と思うことしか出来なかった。




「とりあえずこれでも飲んで落ち着いてください」
「あ、ありがとうございます」
叫びながら家のドアをブチ壊した男をとりあえず座らせて薬草茶を出した。ヴァリアリアン100%で入れたお茶で緊張緩和作用・鎮静作用がある。ただし
「う・・・・・独特ですね・・・・・・・・・」
ヴァリアリアンは独特な匂いがありそのまま飲むのは難しく普通は他の薬草とともにお茶にするものだ。私自身もそうしている。わざわざ100%で入れたのは一種の嫌がらせだ。
私はちらりと蝶番が外れたドアを見てにっこりと笑って言ってやった。
「あなたの登場方法より常識的よ」
「す、すいません」
私のわかりやすい嫌がらせにドア壊し男は申し訳なさそうに頭を下げた。男は農民なのだろう。陽に焼けた肌、程よく肉付いた腕、手のひらにはたこが出来ている。髪と瞳は茶色で顔立ちは平凡としており記憶に残り難いというのが第一印象といえるだろう。
「でも、あれくらいなら直ぐに直せるんでしょ?」
「は?」
「え?だって、あなたは魔女なんですよね?」
「・・・・・・・・・・・・・・」
確かに私は魔女だ。だがこの目の前にいるドア壊し平凡男は多大な勘違いをしている。
「ちょっと聞くけど、あなたから見た私、魔女ってどんなことをする存在?」
「え~と。ほうきで空が飛べて、サバト(黒ミサ)を開いていて、悪魔と契約をしていて、子供を堕胎させて、魔女の大鍋で【騒ぎ】を起こして、魔法が使えて、呪が使えるんですよね」
「ふーん」
ドア壊し阿呆男は少しビクつきながらも私の問いに答えてくれた。
「お願いがあるんです!!」
「どんなよ。というか無理よ」
「そんなことおっしゃらずに!魔女にしか無理なんです。僕の婚約者のマリーナを助けて下さい」
「やだ。というか無理だって言ってるでしょ」
「どんなことでもします。マリーナを助けてくださるのでしたら、心臓だろうが、魂だろうが、寿命だろうが差し出します。覚悟は出来てます!」
なんだかよくわからないうちにドア壊し勘違い男は婚約者を助けるために対価を押し付けようとしている。私は非常に面倒くさかったが立ち上がった男を座らせて対面になるようにテーブルに腰掛けた。
「まず初めに言っておくわ。あんた、勘違いしてる」
「・・・・・へ?」
「私が魔女、というのは合ってるわ。ほうきで空が飛べる、と言うのは間違ってる。サバトを開いていると言うのも間違ってる、参加者でしかないから。魔女の大鍋は使ってはいるけど【騒ぎ】なんて起こしてない。魔法は使えないし、呪(じゅ)だって無理。呪(まじな)い程度だったらギリギリできる。悪魔との契約なんて冗談じゃない、命がいくつあっても足りないわよ」
「・・・・・」
「意味わかる?つまり私はあんたが求めてきた【魔女】じゃなくて【薬草魔女】や【賢い女】に分類されるほうなのよ」
「それじゃぁ、マリーナを助けてくれないんですか・・・?」
「そのマリーナさんって人がいったいどういう状態でそこからどういうふうにしたいのかがわからないとなんとも言えないわ」
私の言葉にドア壊し勘違い男は明らかな絶望色をまとって下を向いてしまった。別段、私が悪いわけでは無いのだがどうも罪悪感がこみ上げてくる。この男がどこと無く犬属性で下を向いている様が飼い主に怒られた犬そのものに見えるからだろうか?
なんてくだらないことを考えているとドア壊し犬属性男はいきなり頭を上げて、テーブルの上においていた私の手を掴んだ。
「助けてくれるんですね!」
どこをどう勘違いしやがった。



私は再びドア壊し犬属性勘違い男に自らの分類を懇切丁寧に教えてあげ、話を再開するにいたった。その際に男が若干、私に対して恐怖心を覚えたとしてもそれは仕方の無いことだと言えるだろう。
「実は・・・」
男の話は割愛させていただく。他人様の惚気話が8割を占める説明なんぞ馬鹿らしくて行数の無駄と言うものだ。
要点だけで説明すると、ドア壊し犬属性勘違い平凡男は農民で名はクロックという。結婚が3ヶ月後に迫っているというのに隣町に住む婚約者マリーナとの連絡が取れなくなったというのだ。不審に思いマリーナの実家に行くと婚約者であるクロックのところへ行くと手紙を残して出て行ったという。勤め先のパン屋に行くと置手紙のあった日から店には来ておらず連絡もないという。しかしクロックのもとになど着てはいない。
クロックはマリーナの住む町で聞き込みを行っていると、よからぬ噂を耳にしてしまったらしい。
「領主様が見目のよい若娘を集めているらしい」
それだけなら妾を増やすのだろうと思えるのだがそこにはさらに続きがつく。
「しかも、それを提案しているのは魔女らしい」
酒場で流れている噂、酔っ払いからの情報であるがクロックは直感的にそれだと思ったらしい。まぁ火のないところに煙はたたない、ということなんだろう。
思い立ったが吉日と領主のいる街まで行ってきたのだがそこで聞き込みをするうちに魔女と領主に関わるよくない噂のオンパレードが待っていたらしい。どうしたものかと悩みながら街を散策していたら突然、憲兵が声を掛けてきた。なんでも
「領主様に関して色々と聞きまわっているそうじゃないか。話を聞かしてもらおう」
逃げたそうだ。本人曰く、とてつもないトップスピードだと。
走り続けて、足を止めてみたらそこは森の中。ふと森に住まう魔女の話を思い出した彼は駄目もとで私を訪ね、冒頭に戻るというわけだ。




「つまり、私は物のついでなわけね」
「いや、その、まぁ知恵袋的に知識を貸して頂いて、あわよくば領主様についている魔女を倒してくれたらいいなぁと」
「ふーん」
私の冷ややかな視線に媚びうるようにクロックはへーこら頭を下げる。
「まぁ、いいわ」
「ありがとうございます!」
「ただし、条件があるわ」
「心臓ですか?命ですか?魂ですか?」
どれをとってもクロックがこの世から儚んでしまうモノばかりである。それがこの男の望みなんだろうか?
「そうして欲しいの?」
「とんでもない!ただ、死んだばあさんが魔女が出す条件はどれも難題ばかりだって」
「そうね」
私が感情のこもらない声で言うとクロックは泳がせていた目を真っ直ぐに向けて力強く言った。
「マリーナの為だったら、僕はどんなことでもします」
「わかったわ。一つ、私のやることに余計な詮索をしない。一つ、魔女に関してはこちらに一任すること。一つ、この件が解決した後に私の協力があったことを漏らさない。一つ、最後の条件は全てが終わったときに求める。以上よ」
「つまり貴女の邪魔をしなければいいってことですよね。最後のが気になりますけど、いまはそれよりマリーナのことです」
そういうとクロックは右手を出して微笑んだ。
「よろしくお願いします」
「ええ」
私は右手で握り返した。ゴツゴツした手が懐かしかった。






「そういえば、なんて呼べばいいんですか?」
「ヘクセ」





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どうも初めまして。ラオと申します。魔法も呪も使えない”ただ”の魔女ヘクセの物語、よければご感想のほどをお願いいたします。


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