<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

SS投稿掲示板


[広告]


No.14347の一覧
[0] ハルケギニアの舞台劇(外伝、設定集、ネタ)[イル=ド=ガリア](2010/02/22 18:09)
[1] 外伝・英雄譚の舞台袖 第一話 魔法の国(前書き追加)[イル=ド=ガリア](2009/12/02 20:37)
[2] 外伝・英雄譚の舞台袖 第二話 ハインツという男[イル=ド=ガリア](2009/12/02 21:02)
[3] 外伝・英雄譚の舞台袖 第三話 東方出身の使い魔[イル=ド=ガリア](2009/12/02 20:42)
[4] 外伝・英雄譚の舞台袖 第四話 決闘[イル=ド=ガリア](2009/12/03 18:04)
[5] 外伝・英雄譚の舞台袖 第五話 使い魔の日々[イル=ド=ガリア](2009/12/06 00:11)
[6] 外伝・英雄譚の舞台袖 第六話 武器屋にて[イル=ド=ガリア](2009/12/06 00:11)
[7] 外伝・英雄譚の舞台袖 第七話 土くれのフーケ[イル=ド=ガリア](2009/12/06 00:13)
[8] 外伝・英雄譚の舞台袖 第八話 破壊の杖[イル=ド=ガリア](2009/12/07 16:32)
[9] 外伝・英雄譚の舞台袖 第九話 平民と貴族 そして悪魔[イル=ド=ガリア](2009/12/08 19:46)
[10] 外伝・英雄譚の舞台袖 第十話 気苦労多き枢機卿[イル=ド=ガリア](2009/12/08 19:44)
[11] 外伝・英雄譚の舞台袖 第十一話 王女様の依頼[イル=ド=ガリア](2009/12/09 16:31)
[12] 外伝・英雄譚の舞台袖 第十二話 港町ラ・ロシェール[イル=ド=ガリア](2009/12/11 21:40)
[13] 外伝・英雄譚の舞台袖 第十三話 虚無の心[イル=ド=ガリア](2009/12/13 15:25)
[14] 外伝・英雄譚の舞台袖 第十四話 ラ・ロシェールの攻防[イル=ド=ガリア](2009/12/14 22:57)
[15] 外伝・英雄譚の舞台袖 第十五話 白の国[イル=ド=ガリア](2009/12/15 21:48)
[16] 外伝・英雄譚の舞台袖 第十六話 戦う理由[イル=ド=ガリア](2009/12/16 16:02)
[17] 外伝・英雄譚の舞台袖 第十七話 ニューカッスルの決戦前夜[イル=ド=ガリア](2009/12/18 12:24)
[18] 外伝・英雄譚の舞台袖 第十八話 ニューカッスルの決戦[イル=ド=ガリア](2009/12/20 19:36)
[19] 外伝・英雄譚の舞台袖 第十九話 軍人達の戦場[イル=ド=ガリア](2009/12/22 22:23)
[20] 外伝・英雄譚の舞台袖 第二十話 トリスタニアの王宮[イル=ド=ガリア](2009/12/23 15:43)
[21] 外伝・英雄譚の舞台袖 第二十一話 神聖アルビオン共和国[イル=ド=ガリア](2010/01/01 00:03)
[22] 外伝・英雄譚の舞台袖 第二十二話 新たなる日常[イル=ド=ガリア](2010/01/01 22:34)
[23] 外伝・英雄譚の舞台袖 第二十三話 始祖の祈祷書[イル=ド=ガリア](2010/01/10 00:43)
[24] 外伝・英雄譚の舞台袖 第二十四話 サイト変態未遂事件[イル=ド=ガリア](2010/01/15 12:32)
[25] 外伝・英雄譚の舞台袖 第二十五話 宝探し[イル=ド=ガリア](2010/01/27 18:31)
[26] 外伝・英雄譚の舞台袖 第二十六話 工廠と王室[イル=ド=ガリア](2010/02/01 16:53)
[27] 外伝・英雄譚の舞台袖 第二十七話 灰色の君と黒の太子[イル=ド=ガリア](2010/02/03 17:07)
[28] 外伝・英雄譚の舞台袖 第二十八話 揺れる天秤[イル=ド=ガリア](2010/02/18 17:11)
[29] 3章外伝 ルイズの夏期休暇[イル=ド=ガリア](2009/12/04 20:37)
[30] 2章外伝  人界の闇と異界の闇 ■■■   起   ■■■[イル=ド=ガリア](2009/11/29 00:51)
[31] 2章外伝  人界の闇と異界の闇 ■■■   承   ■■■[イル=ド=ガリア](2010/03/07 05:15)
[32] 2章外伝  人界の闇と異界の闇 ■■■   転   ■■■[イル=ド=ガリア](2009/11/29 00:53)
[33] 2章外伝  人界の闇と異界の闇 ■■■   結   ■■■[イル=ド=ガリア](2009/11/29 00:54)
[34] 外伝 第0章  闇の産道[イル=ド=ガリア](2009/11/29 00:56)
[35] 小ネタ集 その1[イル=ド=ガリア](2009/11/29 01:00)
[36] 小ネタ集 その2[イル=ド=ガリア](2009/11/29 01:00)
[37] 小ネタ集 その3[イル=ド=ガリア](2009/11/29 01:01)
[38] 独自設定資料(キャラ、組織、その他)[イル=ド=ガリア](2009/11/29 00:57)
[39] 設定集  ガリアの地理[イル=ド=ガリア](2009/11/29 01:04)
[40] 設定集  ガリアの歴史(年表)[イル=ド=ガリア](2009/11/29 01:06)
[41] 設定集  ガリアの国土  前編[イル=ド=ガリア](2009/11/29 01:06)
[42] 設定集  ガリアの国土  後編[イル=ド=ガリア](2009/11/29 01:06)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[14347] 外伝・英雄譚の舞台袖 第三話 東方出身の使い魔
Name: イル=ド=ガリア◆8e496d6a ID:9c94e4c9 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/12/02 20:42
 俺が魔法学院に帰ってくる頃には夜が明けていた。

 早朝ではあったけどまだ正門は開いてなかったから、行く時と同じようにシャルロットの部屋の窓から寮に戻った。

 そして、御主人さまであるルイズの部屋に戻ってきた。




第三話    東方出身の使い魔




■■■   side:才人   ■■■


 俺が部屋に戻ると、扉の鍵は開いていた。

 好都合ではあるけど、不用心ではないだろうか?


 「そういや、『アンロック』なんて魔法もあるんだっけ」

 ハインツさんが魔法で扉を開け閉めしてたな。


 そして、部屋に入ると、ルイズはまだ寝てた。寝顔だけなら超を付けてもいい美少女なんだが、百合なお姉さまが狙いそうなくらい。

 ――なんでそうなる俺、普通は男だろ、なんでお姉さま?  ま、いいか。気の迷いだ。

 シャルロットが言うには朝食まではまだ時間があるそうだが、女の身支度ってのは時間がかかりそうだし、特に貴族のお嬢様ならそれっぽい。


 というわけで起こすことにした。


 「おーい、ルイズ、起きろ」


 反応なし。


 「こらー、朝だー、起きろー」


 反応なし。


 「御主人さまー、お起きになってくださいませー」


 試しに使い魔っぽく言ってみる。しかし反応無し。


 「おーい、性格最悪クソ傲慢生意気女ー」


 バキイ!


 足が飛んできた。


 「いつつ……こいつ、寝たふりしてんじゃねえだろうな?」

 そうとしか思えん程鋭い蹴りだった。


 「おーい、起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ」

 念仏のように繰り返してみる。


 「う、うーん」

 反応あり、ただ、非常に寝苦しそうだが。


 「南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏」

 調子に乗って続けることに。


 「く、ぐぐぐぐぐぐぐぐぐ」

 なんか苦しんでる。実はこいつは悪霊なのか?


 「ガンダーラー♪ガンダーラー♪ガンダーラー♪ガンダーラー♪ガンダーラー♪ガンダーラー♪ガンダーラー♪」

 さらに続けることに。


 「ぐああああああああああ」

 なんか、乙女の寝言とは思えんな、完全に悪役のやられ声だ。


 「はっ!」


 ルイズ起床。


 「よお、起きたか」

 何事もなかったかのように話しかける俺。


 「ううん……、だ、誰よあんた!」


 「平賀才人」

 つーか、お前が呼び出したんだろ。シャルロットとハインツさんに会ってなかったら、今頃どうやったら地球に帰れるんだろうとか途方にくれてたぞ俺は。


 「ああ、使い魔ね、そうね、昨日召喚したんだったわ」


 「おかげでこっちはいい迷惑だ」


 「うっさいわね、朝ごはん抜くわよ」


 「勘弁して下さい」

 “大統領の犬”はお嬢様には逆らえぬのであった。


 「服」


 「は?」


 「だから、制服を取りなさいってこと」


 「やれやれ、わがままお嬢様だな」


 愚痴をいいつつも制服を手渡す。


 「下着」


 「そんくらい自分でとれよ」

 つーかどこにあるか分からん。


 「そこのー、クローゼットのー、一番下の引き出しに入ってる」

 完全に俺を使い潰す気かこいつ、でも、違和感あるんだよな。


 「ほらよ」

 とりあえず投げ渡す。


 「服」

 「さっき渡しただろが」

 「着せて」

 「はあ?」

 耳を疑ったんだが。

 
 「平民のあんたは知らないだろうけど、貴族は下僕がいる時は自分で服なんて着ないのよ」


 「うーん……」

 なんかひっかかるんだよな、それ。


 「何?文句でもあるの?」


 「いや、文句っつうか、違和感っつうか」

 こいつは貴族、間違いない。でも、貴族って………


 「違和感?」


 んんんんんんんん、あ、あれだ!


 「そうだそうだ、平安貴族だ!」


 「へいあん貴族?」

 疑問符を浮かべるルイズ、そりゃこいつには分からんか。


 「ああ、俺が住んでたとこには今は貴族はいないんだけどさ、千年以上昔はいたんだよ」

 泣くよウグイス平安京で、794年だもんな。いや待てよ、太平洋戦争が終わるまではいたっけ?


 「へー」

 空返事のルイズ。


 「それでさ、お前みたいに大貴族のお嬢様とかも当然いて、確かに自分で着替えとかはしてなかったと思う」

 ま、知識源は漫画なんだけど。


 「じゃあいいじゃない」


 「けど、そういう人は女房だったか女官だったか、呼び方はよく覚えてねえけど、全員女だったはずだ。逆に貴族のお嬢様は12~15歳くらいになったらさ、親や兄弟にすら素顔は晒さなかったとかいう感じなんだよ。だったら着替えなんてもってのほかだろ。だから、こっちの貴族もそうなんじゃないかと思ってさ、少なくとも高貴なお嬢様の肌ってのは、下賤な男の目に触れていいもんじゃないと思うんだが」

 自分で下賤というのも悲しいが、お殿様の娘に対したら農民の息子なんてそんなもんだろ、初期の秀吉しかりだ。


 「うーん、言われてみればそうかも、確かにお父様の前では着替えたりなんてしないわね」


 「だろ、自分の父さんにも見せないもんをいくら使い魔とはいえ、男に見せるのはどうかと思うんだが?」


 「だけど、メイジと使い魔は一心同体とか言われてるし」


 そういう考え方もあるか。文化の違いってやつかな?


 「けどよ、もし呼び出した使い魔がクモとかヘビとかカエルだったら、お前自分のベッドに入れたりするか? 一心同体だからって」


 「絶対しないわ! つーかカエルなんて見たくも無いわよ!」

 カエル嫌いなのか。


 「ま、つまりはそういうこと。一心同体とかいっても、心得みたいなもんなんだろ。だったら着替えくらいは自分でやった方がいいと思うぞ。俺が女の侍従とかだったら話は違うだろうけど、大貴族のお嬢様は同じ年頃の男を侍従にはしねえだろ、結婚するときとか邪魔になりそうだし」

 戦国時代のお姫様でもそうだろ。政略結婚ばっかしだったそうだけど、男抱えて嫁ぐ姫様はいないだろうし。侍従つったら女かもしくは年とった爺さんだよな、歴史に詳しいわけじゃないから断言は出来ないけど。


 「うーん、分かったわ、確かに貴族たるものそういう部分はしっかりしなきゃいけないし、衣類関係はこれまで通り学院のメイドに任せるわ。けど、その代り掃除とかその他雑用とか、教科書持つのとかはあんたがやりなさいね」


 「了解、ま、そのくらいはやるよ」

 使い魔としちゃ妥当なとこか。




 そんなわけで部屋を先に出て、ルイズが着替えて出て来るのを待つ。


 昨日逃走したときは暗くてロクに見えなかったが、正面の壁には木製の扉が三つばかり並んでいた。ルイズの部屋のドアを閉めると三つのうち正面にあるドアが開いて、中から炎のように赤い髪の女の子が現れた。

 背丈は俺と同じくらい、むせ返るような色気を放っている。彫りの深い顔に、突き出たバストが実にけしからん。メロン級だ。一番上と二番目のボタンは外され、胸元の谷間を覗かせている。ううむ、やるな。

 褐色の肌も、健康そうでパブリックな色気を振りまいている。背丈、肌の色、まとう雰囲気、胸の大きさ。 シャルロットとは完全に対照的だな。

 や、どちらも魅力的なことに変わりはないんだけどね?

 と、ルイズも部屋から出てきた。


「おはよう。ルイズ」

 話しかけられたルイズは、……何故か嫌そうに顔を顰め、これまた不機嫌な声色で返事を返した。


「おはよう。キュルケ」

 ルイズの返事を聞いたキュルケ、と呼ばれた女の子の顔が嗜虐的に微笑んだ。


「あなたの使い魔って、それ?」

 俺を指差して問うキュルケ嬢。


「そうよ」

 肯定する声で、一気に爆笑した。


「あっはっは! ほんとに人間なのね! すごいじゃない!」

 そういや、ハインツさんが人間の使い魔は滅多にいないって言ってたな。

 で、ルーンは本来なら幻獣とかが話せるようになったり、能力を補助したりするものだそうだが、最近のガリアではルーンを刻んだ人間、“ルーンマスター”ってのがいるらしい。

 なんでもシャルロットの同僚にも数十名いるらしく、その人達の傾向とかから考えると、俺のルーンは“身体強化系”なのだとか。

 他にも“他者感応系”、“解析操作系”のルーンもあり、例の“デンワ”とかはその“解析操作系”のルーンマスター、“テレパスメイジ”が中継するから使用できるそうだ。

 何か、国家機密っぽい話だったけど、ハインツさん曰く。


 『なあに、ばれなきゃいいのさばれなきゃ、それに、後1年くらいすれば一般的になり始める。地球人の君に知られても問題ないさ』

 とのことだった、まあ、シャルロットも頷いてたから別にいいんだろう。


「『サモン・サーヴァント』で平民喚んじゃうなんて、あなたらしいわ。流石はゼロのルイズね」

 ルイズの白い頬がさっと朱に染まる。


「うっさいわね」


「あたしも一昨日、使い魔を召喚したのよ。誰かさんと違って、一発で呪文成功よ」


「あっそ」

 不機嫌かつどうでもよさそうにルイズが口を尖とがらせている。わかりやすいなこいつ。


「どうせ使い魔にするなら、こういうのがいいわよねぇ。フレイムー」

 キュルケは、勝ち誇ほこった声で使い魔、らしき名を呼んだ。

 ほんの少しの間を置いて、キュルケ嬢―いやもうキュルケでいいや―の部屋からのっそりと、真っ赤で巨大なトカゲが姿を現した。


「おお! すごいな!」

 シャルロットのシルフィードよりは小さいけど、虎くらいはありそうだ。

 じりじり。

 でもなんか寄って来るし。


「おっほっほ! あなた、ひょっとしてサラマンダーは初めて?」

 へえ、サラマンダーってのか。

 なるほど確かに、ポケモンのリザードみたいだな、尻尾や口からほとばしっている炎が視覚的にも物理的にも熱いし、成長したらリザードンになるんだろうか?


「いや、これまで見たことも無いな、俺がいた国ではこういうのはいなかったから」

 ええと、俺の出身は東方(ロバ=アル=カリイエ)の“二ヴェン”だったよな。なんでもそこの特産物が“お茶”とかで、実際日本と文化が近いそうだ。この世界は本当に歪んだ鏡で映し合ったような世界らしい。

 その上、エルフが住んでるとかいう土地は“サハラ”で、そこ目指して“聖地回復軍”が送られたこともあるとか。うん、完全に十字軍だよな。


「へえ、じゃあハルケギニア出身じゃないのかしら?」

 キュルケは手をあごに添え、色っぽく首をかしげた。


「ああ、俺はここ出身じゃない。もっと遠いところからルイズに呼び出されてさ」

 流石に地球っつっても信じてもらえないだろうし。


 「あんた? 異世界から来たとか言ってなかった?」

 ルイズに問い詰められる。


 「冷静になってよくよく考えてみたらさ、異世界並に遠くてなかなか帰れそうにないのは確かだけど、多分同じ世界ではありそう。俺の国では“日本”っていうんだけど、こっちでは“二ヴェン”っていうのか?」

 とまあ、そんな感じで答えておく。

 ハインツさん曰く。

 『突拍子もなさすぎると信じてもらえないが、ほとんど関わりないけどほどほどの知識はある、程度のものなら結構人間は受け入れるもんなんだ。例えば、もの凄い変わった奇妙な生物がいたとしてだ、宇宙の生物だって言われても誰も信じないだろうが、ギアナ高地で独自の進化を遂げた生物だって言われたら、それなりに納得するだろ。かなり特殊な環境であることは知識として知っているが、実際にどんな生物がいるかなんて一般人なら知らない』

 とのこと、実に分かりやすい例えだった。

 『だから、東方ってのは便利だ。そういう地方はあるし、ハルケギニアとは異なる文化体系があることくらいは知っているが、実際にどんな国があってどんな文化なのかまでは知られていない。そこ出身ということにしとけば、大抵の人間はそこで納得する。少なくとも嘘だと疑われることはないだろうな』

 という助言に従ってそのように説明することにした、

 「“二ヴェン”ね、聞いたことはないけど、東方(ロバ=アル=カリイエ)には色んな国があるって話だから多分そこのどこかね」

 ルイズが頷く、効果抜群だな。


 「でも、『サモン・サーヴァント』って、ハルケギニアの生物を呼び出すものじゃなかったかしら?」

 キュルケが聞いてくる。


 「いや、俺に聞かれてもこっちが聞きたいくらいなんだけど、ところで、これ、熱くないの?」


 「私にとっては涼しいくらいね」


「ほんとに、サラマンダーなのね……」

 なんか悔しそうに言うルイズ。


「そうよー、サラマンダーよー。見て、この尻尾。ここまで鮮やかで大きい炎を出す尻尾なんて、間違いなく火竜山脈の火蜥蜴サラマンダーよ?ブランドものよー。好事家に見せたら値段なんかつかないわよー?」


「そりゃよかったわね……」

 苦々しさの抽出された声でルイズが言った。


「素敵でしょ。あたしの属性ぴったり」


「あんた『火』属性だもんね」


「ええ。微熱のキュルケですもの。ささやかに燃える情熱は微熱。でも、男の子はそれでイチコロなのですわ。あなたと違ってね?」

 キュルケは得意げに胸を張った。たわわな果実が跳ね揺れる。ルイズも負けじと張り返すが、哀れなるかな、傍目から見ずともそのボリューム差は歴然としていた。

 それでもルイズは、ぐっとキュルケを睨みつけた。

 どうやら、かなりの負けず嫌いの模様、ま、大体予想はついちゃいたけど。


「あんたみたいにいちいち色気振りまくほど、暇じゃないだけよ」

 負け惜しみにしか聞こえないなあ。

 キュルケはにっこりと笑みを浮かべる。余裕の態度だった。どうみても、勝者の笑みだった。


「あなた、お名前は?」


「平賀才人」


「ヒラガ・サイト? ヘンな名前ね」


「やかましいわ」

 シャルロットは分かってたけど、特殊なんだろうな。


「おっほっほ! じゃあ、お先に失礼、ルイズ、サイト」

 そう言って炎のような赤髪をかきあげ、さっそうとキュルケは去っていった。サラマンダーが、後をちょこちょこと追っていく、デカイ図体のわりに仕草が妙に可愛らしいよなぁ。昨日のシルフィードといい、さっきのフレイムといい。

 そんな他愛も無いことを考えながらキュルケを見送っていると、隣のルイズが拳を握りしめていきなりヒスった。


「くやしー! なんなのあの女! 自分が火竜山脈のサラマンダーを召喚したからって! あーもー!」


「いいじゃねえかよ。使い魔なんかなんだって」


「よかないわよ!魔法使いメイジの実力をはかるには使い魔を見ろって言われているぐらいよ! なんであの色ボケ女がサラマンダーで、わたしがあんたなのよ!」

「悪かったな、人間様で。だいたい、お前らだって人間じゃねえかよ」


「魔法使いメイジと平民じゃ、オオカミと犬ほどの違いがあるわよ」

 ルイズは得意げにそう言った。そんなに自分の使い魔をけなして楽しいんだろうかこいつは?


「はいはい。ところであいつ、キュルケだっけ?ゼロのルイズってお前を呼んでたけど、“ゼロ”ってなに? 苗字?」


「違うわよ! わたしはルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。ゼロは、ただのあだ名よ」

 あだ名か、なるほど。しかし長い名前だ。


 「うーん、とりあえず、最後だけ覚えてればいいか?」


 「まあね、ルイズ・ド・ラ・ヴァリエールでも通じるわ。あんたはそこだけ覚えてなさい」


「了解。ところで、キュルケが“微熱”ってのはイメージ的にまあわかる、“情熱”の方があってそうな気はするけど、でも、“ゼロ”ってどういう意味で付けられてるんだ?」

 あれか、“グランド・ゼロ”とかって、かっこいい攻撃魔法を使うとか?

 “ゼロ”って結構かっこいいイメージあるよな、ワンピースのクロコダイルもミスター・ゼロだし。


「……知らなくていいことよ」

 ルイズは、バツが悪そうにしている。

 なんとなく頭の天辺からつま先まで見下ろして、原因っぽいものを見つけた。


 「胸?」

 ルイズの大きく振りかぶった右ストレートが鼻っ面めがけて飛んできた。

 気合で首を傾けてかわす。鼻先を掠かすめた。


「避けるな!」


「殴んな!」

 しかし、ものの見事にゼロなのは確かだろ。








 トリステイン魔法学院の食堂は、学院の敷地内で一番背の高い、中央本塔の中にあった。

 食堂の中にはむやみやたらに縦長いテーブルが三つ並んでる。あれだ、ホグワーツの長テーブル。

 あれは4つの寮だから4つあったけど、ここはどうやら学年ごとらしい。

 だけど、魔法学校は長テーブルっていう法則でもあるのかね?


 机に群がっているメイジたちを見る限りだと、マントの色は学年を区別するためのものらしい。

 食堂奥に向かって左のテーブル、ちょっと落ち着いた雰囲気のするメイジたちは、紫色のマントをつけている。ルイズが言うには、三年生だそうだ。

 同じく向かって右のテーブルに居並んでいる魔法使いメイジたちは、茶色のマントを羽織っている。まあ、こっちが一年生なのだろう。おれたちの世界のジャージみたいなもんなんだろうな。

 学院に所属する全ての魔法使いメイジ――生徒も先生もひっくるめて――は、三食の全てをここで摂るらしい。

 生徒たちの居る一階の上には、ロフトになった中階もある。先生メイジたちが、そこで歓談に興じているのが見えた。その辺もホグワーツと似てるよな。

 すべてのテーブルには緋色のクロスが掛けられ、豪奢な装飾がなされている。いくつもの蝋燭が立てられてて、花が飾られ、フルーツの盛られた籠かごが置かれている。まさしく、貴族っぽい場所だった。


「トリステイン魔法学院で教えるのは、魔法だけじゃないのよ」


「ほおほお」


「メイジはほぼ全員が貴族なの。『貴族は魔法をもってしてその精神となす』の信条のもとに、貴族たるべき教育を存分に受けるのよ。だから食堂も、貴族の食卓にふさわしいものじゃなきゃいけないの。わかった?」


「はぁ」

 なんか無駄遣いがあるような気もする。それに、確かゲルマニアだったよな、その国では平民でも金さえあれば国家公務員になれるし、領地を購入して貴族になれるってハインツさんが言ってた。

 それに、シャルロットとハインツさんのガリアでも最近は平民を国家公務員、ええと、法衣貴族だったかな、それにするようになってきたとか。

 そんなわけで、この国は金がある奴はゲルマニアに、能力がある奴はガリアに行っちゃって、最近ちょっと落ち目だって話だった。この辺にその原因があるとみた。


「ホントならあんたみたいな平民はこの『アルヴィーズの食堂』には一生入れないんだけど、一応入れるように取り計らってもらったのよ。感謝なさい」


「はぁ」

 そりゃそうだけど、一生で一回入れれば十分な気がするな、人間なんて一度慣れると感動も薄れるし。


「ところで、アルヴィーズって何だ?」

 それは知らない。


「小人の名前よ。周りに小さい像がたくさん並んでるでしょ?」

 首を振って辺りを見回すと、確かに壁際には精巧な小人の彫像が並んでいる。ちなみに木彫りだ。


「へえ……、今にも動き出しそうだな、あれ」


「あら、よく知ってるわね」


「へ?」


「夜になったら踊ってるわよ、あれ。それはいいから、椅子を引いてちょうだい。気が利かないわね」


 「はいはい」

 ここは使い魔の役目ってやつか。

 しかし、食卓は凄いことになってる。


「……朝からコレ食うのか?」

 無駄に量のある料理の群れを眺めながら訊いてみる。

 フランスパンみたいな、でも柔らかそうなパンがこれでもかと突き刺さったバスケットが置いてある。

 でかい鳥のローストが威圧してくる。

 鱒ますの形をしたパイが鎮座している。

 柔らかなクリーム色をしたシチューが深皿に並々と湛たたえられている。

 なにやらトゲトゲした、シソみたいな葉っぱのサラダが独特な色彩と気配を放っている気がする……、なんでこれドレッシングが青いんだ?


「こんなに多くて食べ切れるのか、ここの生徒たちって?朝からこんなに食ってたら身体に悪い気がするんだが?」


 「朝は聖餐なのよ」


 「にしても限度ってもんがあると思うぞ、絶対余るだろこれ」

 ファーストフード店ならともかく、大貴族のお坊ちゃんとお嬢様の食堂だ。どうせ高級食材が使われまくってるに決まってる。

 ま、それを余すから貴族なのか、庶民の怒りを知れこの野郎。

 そういや、“光の翼”で、ハインツさんとシャルロットと一緒に食った料理は、すげえ旨かったけど庶民派ぽかったな。あのへんもあの二人が貴族っぽくないとこなんだろうな。


「そういやルイズ、俺ってどこで食事すればいいんだ?」

 まさか、お殿様の子供達と“大統領の犬”が一緒に飯食うわけもないだろう。初期の信長と秀吉が一緒に飯食うくらいあり得ない。

 すると、じっと睨んだまま、床を指差すルイズ。

 視線でソレの先を追うと。


「皿があるね」


「あるわね」

 一枚の皿が置いてある。一応、分類すれば大皿の部類に入るくらいにはでかい皿だ。

 で、その中身はというと。



「……なんか貧しいものが入ってるね」

 うん、犬にももう少しいいもの食わせた方がいいと思うよ、俺。


「あのね? ほんとは使い魔は、外。あんたはわたしの特別な計らいで、床」

 使い魔虐待か? 外の方がましな気がしてきたんだが。

 つーか、わざわざ依頼してこんなもん用意したのかこいつは、意外と勤勉家なのか?


 透明なのは俺の目の錯覚かどうか。澄まし汁か?

 二切れほど、肉のかけらっぽいものが浮かんでる。

 あと、皿の縁には硬そうなパンが二切れぽつんと乗っかってる。


 日本のペットって、いいもの食ってるから生活習慣病になったりしてるそうだよな。

 うん、素晴らしい御主人さまだ。これなら使い魔の健康もばっちりだよね。

 ………泣きたくなってきた。


 テーブルの上をもう一度ながめてみる。豪華だ。

 自分の前に置かれた皿を見る。質素だ。

 惨めになってくるからテーブルの上は見ないことにした。


「偉大なる始祖ブリミルと女王陛下よ。今朝もささやかな糧を我に与えたもうたことを感謝いたします」

 食前の祈りいただきますが唱和される。ルイズの声も混ざっていたようだ。

 しかし、これがささやかであってたまるか、いつか平民に革命起こされるぞこの国。


 ………そういや、アルビオンって隣の国ではまさにその革命の真っ最中だったっけ。

 やっぱ、こんなのを“ささやか”なんていう貴族に平民の怒りが爆発したのかな。“パンがなければお菓子を食べればいいじゃない”って感じで。

 そんだけ豪華でささやかなんだったら、俺の食事はいったいなんなの。

 俺の目の前の皿は何よ。

 ペット以下か、俺は?

 日本のペットでももうちょっと豪華なもん食べてるぞ?

 やっぱし使い魔虐待は我慢ならないなので、ルイズのブラウスの肘辺りをくいくいと引っ張る。


「なによ」


「鳥を分けてくださいませご主人様、使い魔めは身がもちそうにありませぬ」

 ここは下手に。

「ったく……」

 ぶつくさ言いながらも、テーブルの上でごそごそやってくれてるルイズに少し感謝した。

 元が元だからホント少しでしかないけど。


 …………鳥の皮だ。

「……肉は?」

「癖になるからダメ。こっちならいいわよ」

「げ」

 そう言って目の前に下りてきた皿の中身は、スープの縁にあった固そうなパンだった。

 いやまあ、炭水化物ではあるけどさ。

 皿を受け取ってルイズに視線を向けると、既においしそうに豪華な料理を頬張りはじめていた。


 しかし、ものは考えよう、冷たいスープではあるが、固いパンとは相性が良さそうだ。

 スープの方はなかなかいい味をしていた。薄味ではあるけど。

 これに固いパンをひたして食うのは案外うまい。


 「ま、しゃあねえ、秀吉も最初はこんなもんだろ。いつかは関白目指して頑張ろう」

 それに、今はそんなに腹減ってないし、ハインツさんのとこで朝4時くらいに結構食べたからな。


 ……明日からのことは、明日考えよう。









 さて、待つ時間ばっかりが長かった食事の時間も終わり、俺達は教室にやってきた。(当然教科書とかは持たされた)

 教室は石で出来ていて、大学なんかの講義室みたいな造りをしていた。

 講義を行う魔法使いの先生用教壇が一番下、そこから階段状に席が続いていて、部屋としてはなかなか広い。俺達が入ると、皆してくすくすと笑い始めた。

 食事前に遭遇したキュルケも居た。周りを男子に取り囲まれている。なるほど、男の子がイチコロというのは確かだったらしい。周りを囲んだ男子たちに、女王のように祭り上げられている。

 まあ、あの容姿と胸なら仕方がないよな。美貌と巨乳は世界を越える共通言語らしい。



 皆、様々な使い魔を連れていた。

 キュルケのサラマンダーは、椅子の下で眠り込んでいる。

 肩にフクロウを乗せている生徒がいる。

 窓からは巨大なヘビがこちらを覗いている。

 一人の男子が口笛を吹くとそのヘビは頭を隠し、シルフィードも外にいた。


 その他、教室を見回す限りではカラスや猫などの普通の動物たち以外にもファンタジーな生き物がたくさんいた。

 六本足のトカゲ、ふよふよ浮かんでる大目玉、蛸足な人魚(魚?)なんかが目立っていた。

 それぞれバジリスク、バグベアー、スキュラというらしい。

 こいつらの姿や解説が今持ってる“ハインツブック”に載ってたからな。

 ルイズには俺の国の本ということにしておいた。日本語で書かれてるからこいつには読めないし、ノートパソコンのこともあったから疑われることはなかった。東方ってのはホントに便利だ。


 そうこうしている内に、ルイズが席の一つに腰掛けた。隣に座ろうとしたらそこは魔法使いメイジの席だと床に座らされた。

 というわけで、ちょうど大学の講義室みたいな形だから階段に腰掛けることにした。流石に貴族の学校だけあって掃除が万全だ。汚れることもない。


 椅子に座って使い魔を見物している途中、シャルロットも見つけた。


 彼女は一つ下の段の壁際の席に座り、黙々と本を読んでいた。周りの学生魔法使いたちも彼女の方にはまったく関心を向けていない。

 ハインツさんが友達が一人しかいないとか言ってたけど、本当なのかもしれない。

 だけど、その一人って誰だろ?


 なんて考えていると、後ろの扉が開いて誰かが入ってきた。

 中年の女の人だった。紫色のローブに身を包み、つばの広いよく魔法使いのイメージで使われるような黒い帽子を被っている。

 ふくよかな頬や垂れ気味のまなじりが、優しい雰囲気を漂わせている。



「あの人もメイジなのか?」


「当たり前じゃない」

 まあ、そりゃそうだよな。

 教壇についた先生は教室を見回すと、満足そうに微笑んで言った。

「皆さん。春の使い魔召喚は、大成功のようですわね。このシュヴルーズ、こうやって春の新学期に様々な使い魔たちを見るのが、とても楽しみなのですよ」

 なるほど、そりゃ色々楽しめそうではある。


「おやおや、随分変わった使い魔を召喚したものですね。ミス・ヴァリエール」

 シュヴルーズ先生が俺を見てとぼけた顔で言うと、教室中がどっと笑いに包まれた。

 当のルイズは顔をうつむけて真っ赤になっている。


「ゼロのルイズ! 召喚できないからって、その辺歩いてた平民を連れてくるなよ!」

 フクロウを肩に乗せている太った生徒がそんな罵声をあげたとたん、きっと振り向き立ち上がるルイズ。長い髪を揺らし、思いっきり怒鳴る。


「違うわよ! きちんと召喚したもの! こいつが来ちゃっただけよ!」


「嘘つくな! 『サモン・サーヴァント』ができなかったんだろう?」

 ゲラゲラと教室中の殆どの生徒たちが笑う。

 教室で笑っていないのは笑われている本人のルイズと俺、シュヴルーズ先生、あとは読書真っ最中のシャルロットと、これは意外、キュルケも笑ってない。


「ミセス・シュヴルーズ! 侮辱されました! かぜっぴきのマリコルヌがわたしを侮辱しました!」

 握り締めた拳で、ルイズが机を叩いた。


「かぜっぴきだと? ぼくは風上のマリコルヌだ! 風邪なんか引いてないぞ!」


「あんたのガラガラ声は、風邪引いてる時みたいな響きがするのよ!」

 マリコルヌと呼ばれた生徒も立ち上がり、ルイズと真っ向から睨みあった。




 ………………………なぜだろう?もの凄く微笑ましい光景に感じるのは?

 なんか、ルイズがマリコルヌって奴を足蹴にして、靴の裏を舐めさせてる光景が目に浮か…


 っは!

 何だ?白昼夢か?


 “博識の魔女”

 知らない、俺はそんな言葉は知らないはずだ。



 一触即発状態に突入するかと思ったが、シュヴルーズ先生が小振りな杖を一振りすると、すとんと椅子に腰を落とした。


「ミス・ヴァリエール。ミスタ・グランドプレ。みっともない口論はおやめなさい」

 ルイズはしょぼんとうなだれている。さっきまで見せていた生意気な態度はどこかへと吹っ飛んでいた。グランドプレって誰だ……、って一人しかいないか。マリコルヌってヤツのことだろう。


「お友達をゼロだのかぜっぴきだの呼んではいけません。わかりましたか?」


「ミセス・シュヴルーズ。ぼくのかぜっぴきはただの中傷ですが、ルイズのゼロは事実です」

 くすくす笑いが所々から漏れる。

 シュヴルーズ先生は、厳しい顔で教室を見回し、再び杖を一振りした。くすくす笑いをしていた生徒たちの口に、どこからともなく現れた赤土の粘土がぴったりと吸着する。


「あなたたちは、その格好で授業を受けなさい。それでは、授業を始めますよ」

 ぴたりとくすくす笑いは収まった。ほぼ物理的な意味で、すげえな。



 シュヴルーズ先生は、こほん、と仰々しい咳をすると、杖を振った。

 すると、机の上に何個かの石ころが転がった。


「私の二つ名は“赤土”。赤土のシュヴルーズです。「土」系統の魔法をこれから一年、皆さんに講義します。魔法の四大系統はご存知ですね? ミスタ・グランドプレ」


「は、はい。ミセス・シュヴルーズ。「火」「水」「風」「土」の四つです!」

 つーか、5歳児でも覚えれそうだな。


「そうです。それに今は失われた“虚無”の系統を合わせて、五つの系統があることは、皆さんも知ってのとおりです。その五つの系統の中でも「土」はもっとも重要なポジションを占めていると私は考えます。……これは私が「土」系統だから、というわけではありませんよ? 単なる身びいきではないのです」

 シュヴルーズ先生は、再び重々しい咳をした。

 身びいきするのは地球の科学者もこっちの先生も変わんねえようだ。


「「土」系統の魔法は、万物の組成を司ります。この系統が無ければ、金属を作り出すことも、鍛え上げることもできません。大きな石を切り出して建物を建てることも出来なければ、農作物の成長も大きく遅れることでしょう。このように、『土』系統の魔法は皆さんの生活に密接に関係しているのです」

 これも、ハインツさんが言ってたな。だけど、ゲルマ二アは魔法に頼らない冶金技術を発展させ、そこのカノン砲はいまやメイジの魔法の射程を遙かに超えるとか。

 ただ魔法に頼るだけでも駄目ってことだろう。話を聞く限りだと、やはりこちらの世界には、科学技術の類たぐいはまったくないらしい。

 と、そんな話を聞きながら、俺は“ハインツブック”を読み始める。


「今から皆さんには、「土」系統の魔法の基本である『錬金』の魔法を覚えてもらいます。一年生の頃にできるようになった人もいるでしょうが、基本を突き詰めていくことも大事です。よって、もう一度おさらいしてもらうことに致します」

 ≪『錬金』とは、原子配列を組み替えるような魔法で、とんでもない魔法だ。もし地球でこれが出来たら誰でもウランとかプルトニウムを作れるようになるから核兵器も作り放題。ついでに、化学的な毒ガスとかの合成も簡単にできるようになる。地球はあっという間に滅ぶだろうね≫

 と、書かれている。

 うーん、確かにそうなりそうだ。


 なんて思ってると、シュヴルーズ先生は、石ころに向かって杖を振り上げた。短いルーン(だと思う)の詠唱が小さく響くと、石ころが光り始める。

 数秒が経って光が収まると、石ころは黄金色にくすんで光る金属に変化していた。どうやら、これが『錬金』とやらの効果のようだ。前を見れば、なにやらキュルケが身を乗り出していた。

「ゴゴ、ゴールドですか? ミセス・シュヴルーズ!」

「違います。ただの真鍮です。ゴールドを錬金出来るのは『スクウェア』のみです。私はただの『トライアングル』ですから」

 ≪「スクウェア」、「トライアングル」、「ライン」、「ドット」ってのはメイジの位階だ。簡単に言えばレベル1が「ドット」、レベル2が「ライン」、レベル3が「トライアングル」、レベル4が「スクウェア」だ。メイジの中でも「ドット」は見習いから一般のちょっと下まで、同じ位階でも幅はかなりあるのだ。「ライン」なら一般レベルから上級者の一歩手前くらいまで、「トライアングル」なら専門技術者だな、これまたピンキリではあるが、そして、「スクウェア」はかなり希少だ。王族の近衛隊の隊長や、騎士団長とかがそのクラス≫

 うん、わかりやすい。

 ≪例え位階が劣っていても、「ドット」が「スクウェア」に勝つことも不可能じゃない、毒を盛る、背後からナイフで刺す、杖を盗み出しておく、などなど、やり方は無限だ。メイジなんて杖がなけりゃ魔法は使えないから殺すだけなら超楽勝、ちなみに俺は「水のスクウェア」で、その中でも最強クラス、シャルロットは「風のトライアングル」で、あと一歩で「スクウェア」になれるかもってとこだ。ただ、この一歩が難しいのだ≫

 この解説書、どう考えても俺のために作られてるようにしか見えない。まあ、地球語の本だからそうなのかもしれないけど。

 ≪才能だけ無駄にある“宝の持ち腐れ”もかなーりいる。魔法の素養は血統に依存するから、魔法学院にいるのは皆サラブレッドだ。にも関わらず、皆あんましやる気ないんだよね、我がガリアのリュティス魔法学院では、その腐った性根を叩き直す専門カリキュラムを組んでいる。進級試験は厳しいし、単位が足りなければ留年が待っている≫

 なんか、愚痴が入ってきた。

 ≪魔法には属性がある。「火」、「水」、「風」、「土」だ。そして、それぞれの属性を足し合わせることでより強力な魔法を使うことができる。以下に簡単な例を示す≫

「火」           ……… ファイア
「火」・「火」        ……… ファイラ
「火」・「火」・「火」     ……… ファイガ
「火」・「火」・「火」・「火」  ……… フレア
「水」           ……… ブリザド
「水」・「水」        ……… ブリザラ
「水」・「水」・「水」     ……… ブリザガ
「水」・「水」・「水」・「水」  ……… フリーズ
「風」           ……… エアロ
「風」・「風」        ……… エアロラ
「風」・「風」・「風」     ……… エアロガ
「風」・「風」・「風」・「風」  ……… トルネド
「土」           ……… クエイク
「土」・「土」        ……… クエイラ
「土」・「土」・「土」     ……… クエイガ
「土」・「土」・「土」・「土」  ……… ブレイク


 なんとも分かりやすい説明だった。

 しかもこの後。

「火」・「火」・「風」・「風」  ……… メラゾロス
「水」・「水」・「風」・「風」  ……… マヒアロス

 みたいな感じで、異なる系統を足すと合体魔法が使えるのだと書いてあった。

 これらは主に攻撃系魔法で、その他、『フライ』、『レビテーション』みたいに基本的なものから、『クリエイト・ゴーレム』っていってゴーレムを作る魔法、『フェイス・チェンジ』という顔を変える魔法、『拡声』、『遠見』、『サイレント』、『伝心』などなど、色んな魔法があるらしい。

 今は流し読みしか出来ないけど、時間があったらじっくり読もう、それに、シャルロットにこっちの字も習いたいな。



 「それでは、実際にやってもらいましょう、そうですね………ミス・ヴァリエール」

 ざわ……、ざわ……、と教室の空気が揺れた。

 気がした、なんてなまやさしいもんではなく、もっと恐ろしい何かの片鱗を――


”異端魔法その3” 

 そう笑いながら、魔女は呪言を口にした――


 じゃねえ。なんだ、この変な空気。ものすごいどよめいてるんだけど

 「わ、私ですか!」



「そうです。ここにある石ころを、望む金属に変えてごらんなさい」

 と、そこにキュルケが発言。


「先生」


「なんです?」


「やめといた方がいいと思いますけど……」


「どうしてですか?」


「危険です」


 教室中のほとんど全員が一斉に頷いた。


「危険? どうしてですか?」

 うむ。危険ってなんだろうか。


「ルイズを教えるのは初めてですよね?」

 さっきみたいなルイズへの中傷か、とも思ったけど、どうも違う気がする。皆して、妙に真剣なのだ。


「ええ。でも、彼女が努力家ということは聞いています。さぁ、ミス・ヴァリエール。気にしないでやってごらんなさい。失敗を恐れていては、何もできませんよ?」

 悩んでいたルイズが、ゆっくりと立ち上がった。


「ルイズ。やめて」

 キュルケが蒼白な顔で言い、俺の疑念はさらに膨らんだ。ルイズが魔法を使うと……、どうなるんだろう?

「やります」

 うーん、ひょっとして、魔法の実演にみせかけて中傷に対する復讐する趣味でもあるのかあいつ?


 『あ、ごめん、手が滑った』

 って感じで攻撃魔法を叩き込むとか。


 ううむ、ルイズならやりかねん。


「さぁ、ミス・ヴァリエール。錬金したい金属を、強く心に思い浮かべるのです」


 周囲を見ると、最前列の生徒は避難してるな。やっぱ、攻撃魔法をぶちかますつもりかあいつ。

 すると、シャルロットが近くに来てた。


 「そのままじゃ危険」


 「あいつ、やらかす気か?」

 炎とか竜巻とか発生させる気なのか?


 「爆発が来る。“ハインツブック”を退避させないと」


 確かに、これがなくなるとやばいな、俺は“ハインツブック”を抱える。 と思ってたら、シャルロットに机の下に引き込まれた。


 その瞬間。


 教卓が、まばゆい光とともに爆発四散した。


 「『エア・シールド』」

 なんかシャルロットが呟いてる。シールド魔法ってやつか。



 爆発の後、周囲を確認すると、阿鼻叫喚となっていた。


 使い魔たちは急な爆発に驚き、キュルケのサラマンダーは叩き起こされたことに怒って口から炎を噴き、マンティコアはびびったのか窓から飛び出し、大蛇が何事かと破れた窓から侵入し、カラスを飲み込んだ。



 阿鼻叫喚の教室の中、いろんな叫びが聞こえてくる。


「だから言ったのよ! あいつにやらせるなって!」

 と金切り声になったキュルケの声。いや、聲。


「もうヴァリエールは退学にしてくれよ!」

 と怒りと呆れに満ちたさっきの丸っこい……グランドプレだっけ。


「俺のラッキーがヘビに喰われた!ラッキーが!」

 さっき喰われたカラスの主人と思われる生徒が叫んでいる。ううむ、昨日呼び出して今日喰われるとは、運がない奴だ。


 それに対して。


「ちょっと失敗したみたいね」

 なんていうルイズの声。


 すげえ、ここまで壮絶な復讐して平然としてやがる。そりゃ皆ビビるわけだ。

 つーか、こうなることが分かってんなら中傷しなきゃいいだろ、馬鹿かこいつら?触らぬ神に祟りなしだろ。

 クラスに一人はいる不良っぽい奴にからんでぶっ飛ばされても、単なる自業自得だもんな、力がない一般人にはそれなりの処世術ってもんがある。


 ハインツさん曰く。

 『とりあえず、御主人さまの機嫌を損ねそうだったら、「ごもっとも!」って言いながら土下座すればいい、信長に対する秀吉の必殺技だ』

 そう、相手が怖い奴ならそれなりの対応をしないと。

 「ありがとな、シャルロット」

 礼は言っておく。


 「ここではタバサ」

 あ、そうだった。

 「ありがとな、タバサ」


 「気にしない」


 しかし、とんでもない初授業になったなあ。








 で、現在教室の片付けの真っ最中。ま、教室を失敗にかこつけて吹っ飛ばしたんだから当然だ。

 俺も手伝わされる羽目になった。しかも、魔法を使うなと言われたそうで、机とかガラスとかを運んでくるのも全部俺の役目。


 だけど、ここでハインツさんのお助けアイテムが役に立った。

 『“身体強化系”はな、なんらかの武器を持つことが発動条件になる場合がある。“魔銃使い”なんか、肉弾戦が持ち味なのに銃を持ったらルーンが発動するから、銃で殴るっつうとんでもない戦闘スタイルをとってる』

 確かに、銃の意味がまるでない。せめて狙撃とかできなかったんだろうか?


 というわけでいくつか試したところ、俺の“身体強化”は武器全般で発動するらしい。

 『ま、他にも細かい特徴はあるかもな、斧だったら腕力が優先されたり、銃だったら視力が優先されたりとか、何にせよ、暗器も武器だから、これ持っとけば護身具にはなるだろ』

 と言ってくれたのが、“メリケンサック”。何でも、ハインツさんの後輩がこういう暗器の扱いが得意で色々集めてるとか。

 『剣がありゃもっといいかもしれないけど、それはシャルロットが持ってるから。必要になったら、借りるといい。シャルロット、お前、二本くらい持ってたよな』

 と、ハインツさんが問うと、シャルロットはコクコクと頷いてた。

 そういう姿はものすごいラブリーなんだよな。


 ま、とにかく、ルイズの細腕ではどの道無理そうな大きさと重さな机だったので俺が運ぶしかないんだが。


 「軽い、すげえ便利だなこのルーン」

 予想よりも軽いのである。

 とはいえ、ルーンの力も有限だからあまり調子に乗るとどーんと反動が来るって言ったたけど、限界を知るのもいいことだって言ってたな。

 使い魔としてこういう雑用をやらされることは、まあいいんだが。



「ルイズ。いつまでその机やってんだよ?」

 ぶすっとした顔で、煤けた机を満遍なく拭いていたルイズに話しかける。こいつ、なんでこう仕事が遅いんだろう。

 ………お嬢様だからだろうな、何せ徳川御三家クラス。


 「うっさいわね、貴族の私が何でこんなことしなくちゃいけないのかしら……」


 「そりゃ、教室ふっ飛ばしたからだろ」

 復讐の代償だ。やっぱ復讐はいけないよね。


 「むむむむむ」

 うなりながらも一応作業を続けるルイズ、ま、全部任されないだけましか。




 で、片付けもようやく最後にさしかかってきたところで。


「あんた、わたしのこと馬鹿にしてるでしょ。貴族なのに魔法が使えないなんてって」


 「は?」

 何を言い出すんだこいつは?


 「魔法使ってただろお前、あのとんでもない爆発」

 あれはすげえよな、爆心地にいたおばさんは2時間くらいしないと意識を取り戻さなかったけど、ルイズは平然としてた。

 多分あれだ、自分の周囲にだけシールドを張ってたんだろう、シャルロットが使ったように。

 あんだけの爆発とそれを防ぐシールドを同時に発生させるとは、恐ろしい奴だ。

 確か、筆記試験では学年首席だってシャルロットが言ってたっけ。シャルロットは何回か仕事で受けてないから点数は低いとかなんとか。ま、実技がいいから問題ないそうだけど。


 「あれは失敗よ失敗! あんた!馬鹿にしてんの!」


 「だから、失敗に見せかけて、むかつくクラスメートを吹っ飛ばしたんだろ? 罪のない先生も巻き込んだんだからこのくらいは当然の報いだろうが」

 ………なんか会話が噛み合ってない気もする。


 「は?」

 今度はルイズが呆然とする。


 「どういうこと?」

 「だからさ、自分にだけは被害が出ないようにシールドを張りつつ、失敗に見せかけて教室を吹っ飛ばしたんじゃないのか? そうでもなきゃお前がほぼ無傷とかあり得んだろ、何せ爆心地にいたんだし」


 あれは凄かった。まさにイオナズン。多分、爆発系魔法の上位魔法と見た。


 「だから、あれは失敗なのよ!そんなことするはずないでしょ!」


 何! あれで失敗!


 「ってことは、もし成功したら学院ごと吹っ飛ばせるのか!?」

 失敗であの威力、何つう魔法だ、あれでイオってことか。


 「あんた! 馬鹿にしとんのかい! あんな魔法は存在しないのよ!」

 ルイズがキレた。

 って、ちょっと待って。


 「え、爆発系魔法って、ないの?」


 「ないわよ! そりゃあ、「火」と「風」を組み合わせればそんな感じの魔法も出来るけど」


 ないのか、でも、それだったら。


 「じゃあ、お前は悪口言われた腹いせに、教室を吹っ飛ばしたんじゃないのか?」


 「あんた、私を何だと思ってるのかしら?」


 「性悪女」

 やべえ、思ってたことが反射的に出た。


 「ふーん、そう、いい度胸ね……」

 ま、まずい、このままじゃ俺が吹っ飛ばされる。


 「しょ、少々お待ちを、御主人さま。使い魔めには疑問があるのですが」

 卑屈になってみる。


 「へえ、遺言は何かしら?」

 もう死ぬことは決定かよ!


 「あ、あのですね、仮に失敗だったとしても、御主人さまがほぼ無傷なのはなぜでしょうか? 教師のおばさんは目覚めるのに2時間近くかかっていたのですが……」


 「………」

 沈黙するルイズ。


 「あの、シールドを張ってたとか、そういうことではないのですか?」

 ここは下手に、秀吉よ、俺に力を。


 「違うわよ、私は魔法が使えないの、『エア・シールド』を張ろうとしても爆発になるわ」


 「ということは、外側の爆発と、無意識に発生させている内側の爆発が相殺しているということでありましょうか?」

 そんな感じかな?


 「知らないわよ、そもそも原因が分かってたら、私はこんなに苦労してないわ」

 むう、原因不明なのか。


 「それって、誰にも分からないの?」


 「ああそうよ!そのせいで私は魔法が一切使えなくて、それでついたあだ名が“ゼロのルイズ”!魔法の成功確率ゼロだからって!」

 叫ぶルイズ、そりゃあトラウマにもなりそうだ。


 「でも、俺は召喚出来たんだよな?」


 「ええ、初めて成功した魔法なのよ、呼び出されたのはあんたみたいな平民だけど。それでも、ようやく成功したから、今回はいけるかもって思ってたのよ、それなのに……」

 今度は落ち込むルイズ、まあ、期待してた分だけ反動もでかいのか。


 だけど、それって変じゃない?


 「なあルイズ、それって、お前が駄目なことなのか?」

 それは違うと思うんだが。


 「どういうことよ?」

 少し泣きが入ってる、やっぱ年頃の女の子ではあるんだな。


 「いやさ、お前が魔法使えないなら、その原因を解明するのは教師の役目なんじゃないか? そうだろ? 生徒が分からないことがあったら教えるのが教師、それで給料もらってるんだから」

 じゃなきゃ教師じゃねえし。


 「…………」


 「俺が住んでたところにもさ、学校はあったんだよ、それで、弓道部ってのがあった。弓はこっちにもあるよな?」

 中学生時代の話だが。

 「あるわよ、平民の武器だけど」


 「そうそれ、それを習う教室があると思ってくれ。俺の昔の友達がそこに通っててさ、そこにいい先生がいたんだよ。そいつはなかなか矢が的に当たらなくて、散々練習しても全然当たんなくて悩んでた。そしてその先生に聞きに行ったんだ、“どうやったら当たるようになりますか”って、そしたら足をこうやって、体勢はこうしろとか、的確な助言をくれて、そうしたら一発で当たったそうだ。“魔法みたいだ”って喜んでたのを覚えてる」

 あいつとは別の高校にいったから会う機会はほとんどないけどな。


 「それでさ、聞きに行った答えが“うん、先生にもわかりません”だったら手前金返せ、教師やめろこらって話だろ。お前、学年首席っていうくらいなんだから、勉強とか努力はしてんだろ?」

 授業を全部サボって遊びまくって、それで魔法が使えないっていうんなら完全に自業自得だけどさ。


 「ええ、やってるわよ、魔法が使えない分、せめて他では勝とうと思って、それに、なんとか原因を調べようと思って何度も図書館に籠ったわよ」

 うん、こいつは努力家だ。


 「だったら、それでも原因が分からないなら、そりゃ教師の怠慢だろ。生徒が悩んでるのにその原因を見つける努力もしないで“あなた駄目ねえ”なんて言うだけなら誰でも出来る。魔法学院の教師ってのはそんなんばっかしなのか?」

 さっきのおばさんも自信満々ではあったけど、生徒の魔法が使えない原因一つ分からないんじゃ無能だろ。

 教師ってのは魔法を上手く使える人じゃなくて、魔法を出来るように教える人なんだから。


 名選手は必ずしも名コーチや名監督じゃないってことだ。ボクシングの世界チャンピオンでも、名トレーナーになれるかどうかは別もんだしな。


 「それ、考えたこともなかったわ」


 「そっか、じゃあとりあえず、学院長室に殴りこみに行くってのはどうだ?」


 「それなんか違わない?」


 「かなあ?」


 確かにそうかも。


 「でもさ、自分一人でどうにもなんないなら、誰かの力を借りるのもいいんじゃないか? 流石に同級生には頼りにくいかもしんないけど、そのための教師だろ、生徒なんて教師に迷惑かけてなんぼだぜ」

 “ごくせん”とかがいい例か。

 俺だって、ハインツさんの力を借りまくってるから、ここで生きていけそうなんだし。


 「うーん、でも、貴族としては、自分の力を誇りにしないと」


 「ま、その辺は平民なもんでわかんねえけどな、それより、片付け終わったぜ」

 しゃべりながらも作業は進めていたのだ。


 「あ、そうね、じゃあ食堂に行くわよ、鞄は持ちなさいね」


 「了解、マイマスター」


 というわけで、食堂に向かう俺達。

 あの素晴らしい食事が俺を待ってることだろう。





========================================

 あとがき

 三話めにしてようやくあとがきです。

 テンプレものの再構成ですが、よろしければ楽しんでください。見れたモンじゃねぇ、とは言わずにどうか。

 さて、私の作品のタバサは原作とは結構違う点があります(すげえ今更ですが)。どこかといえば、基本的に”タバサ”ではなく”シャルロット”なんですよ。うちのシャルロットは、原作のように孤軍奮闘、復讐にむけ日々精進といった感じではありません。なにしろ陽気な悪魔な兄と、過保護な姉が居ますから、彼女は一人じゃなかったんです。だから原作より8割くらいシャルロット寄りです。いうなれば素直クール(原作もそうかもしれませんが)。一番の違いは、結構しゃべるところかな?

 あと、全くの余談で、やっぱりスゲエ今更ですが、”博識”さんは私の中では原作とビジュアルが違います、というか違うビジュアルイメージで書いてます。今回の外伝で覚醒するまでは原作ビジュアルでイメージしてますが、覚醒後のイメージは”アルクラ”なんですよ。

 アルクラってなんだ? という方は多いかと思います。とあるゲームの占星術師です。髪の感じと色がルイズと同じです。

 はたして分かる人がどれだけ居るか……




前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.029608964920044