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No.14064の一覧
[0] 完結 復活の時(鋼殻のレギオスif)[粒子案](2016/01/21 09:22)
[1] 第一話 一頁目[粒子案](2013/05/08 21:06)
[2] 第一話 二頁目[粒子案](2013/05/08 21:06)
[3] 第一話 三頁目[粒子案](2013/05/08 21:07)
[4] 第一話 四頁目[粒子案](2013/05/08 21:07)
[5] 第一話 五頁目[粒子案](2013/05/08 21:07)
[6] 第一話 六頁目[粒子案](2013/05/08 21:08)
[7] 第一話 七頁目[粒子案](2013/05/08 21:08)
[8] 第一話 八頁目[粒子案](2013/05/08 21:08)
[9] 第一話 九頁目[粒子案](2013/05/08 21:09)
[10] 第一話 十頁目[粒子案](2013/05/08 21:09)
[11] 第一話 十一頁目[粒子案](2013/05/08 21:10)
[12] 第一話 十二頁目[粒子案](2013/05/08 21:10)
[13] 閑話 一頁目[粒子案](2013/05/09 22:03)
[14] 閑話 二頁目[粒子案](2013/05/09 22:03)
[15] 閑話 三頁目[粒子案](2013/05/09 22:04)
[16] 閑話 四頁目[粒子案](2013/05/09 22:04)
[17] 第二話 一頁目[粒子案](2013/05/10 20:48)
[18] 第二話 二頁目[粒子案](2013/05/10 20:48)
[19] 第二話 三頁目[粒子案](2013/05/10 20:49)
[24] 第二話 四頁目[粒子案](2013/05/10 20:49)
[34] 第二話 五頁目[粒子案](2013/05/10 20:49)
[35] 第二話 六頁目[粒子案](2013/05/10 20:50)
[36] 第二話 七頁目[粒子案](2013/05/10 20:50)
[38] 第二話 八頁目[粒子案](2013/05/10 20:50)
[39] 第二話 九頁目[粒子案](2013/05/10 20:51)
[40] 第二話 十頁目[粒子案](2013/05/10 20:51)
[41] 第二話 十一頁目[粒子案](2013/05/10 20:51)
[42] 閑話 赤毛猫の一日[粒子案](2013/05/11 22:13)
[43] 第三話 一頁目[粒子案](2013/05/11 22:13)
[44] 第三話 二頁目[粒子案](2013/05/11 22:13)
[45] 第三話 三頁目[粒子案](2013/05/11 22:14)
[46] 第三話 四頁目[粒子案](2013/05/11 22:14)
[47] 第三話 五頁目[粒子案](2013/05/11 22:14)
[48] 第三話 六頁目[粒子案](2013/05/11 22:15)
[49] 第三話 七頁目[粒子案](2013/05/11 22:15)
[50] 第三話 八頁目[粒子案](2013/05/11 22:15)
[51] 第三話 九頁目[粒子案](2013/05/11 22:16)
[52] 第三話 十頁目[粒子案](2013/05/11 22:16)
[53] 第三話 十一頁目[粒子案](2013/05/11 22:16)
[54] 第三話 蛇足[粒子案](2013/05/11 22:17)
[55] 閑話 乙女と野獣[粒子案](2013/05/11 22:17)
[56] 第四話 一頁目[粒子案](2013/05/12 21:10)
[57] 第四話 二頁目[粒子案](2013/05/12 21:11)
[58] 第四話 三頁目[粒子案](2013/05/12 21:11)
[59] 第四話 四頁目[粒子案](2013/05/12 21:11)
[60] 第四話 五頁目[粒子案](2013/05/12 21:12)
[61] 第四話 六頁目[粒子案](2013/05/12 21:12)
[62] 第四話 七頁目[粒子案](2013/05/12 21:12)
[63] 第四話 八頁目[粒子案](2013/05/12 21:13)
[64] 第四話 九頁目[粒子案](2013/05/12 21:13)
[65] 第四話 十頁目[粒子案](2013/05/12 21:13)
[66] 第四話 十一頁目[粒子案](2013/05/12 21:14)
[67] 閑話 ツェルニに死す![粒子案](2013/05/13 20:47)
[68] 閑話 ニーナの勉強会その一[粒子案](2013/05/13 20:48)
[69] 閑話 ニーナの勉強会その二[粒子案](2013/05/13 20:48)
[70] 戦慄! 女子寮の朝[粒子案](2013/05/13 20:48)
[71] 第五話 一頁目[粒子案](2013/05/14 22:07)
[72] 第五話 二頁目[粒子案](2013/05/14 22:07)
[73] 第五話 三頁目[粒子案](2013/05/14 22:07)
[74] 第五話 四頁目[粒子案](2013/05/14 22:08)
[75] 第五話 五頁目[粒子案](2013/05/14 22:08)
[76] 第五話 六頁目[粒子案](2013/05/14 22:08)
[77] 第五話 七頁目[粒子案](2013/05/14 22:09)
[78] 第五話 八頁目[粒子案](2013/05/14 22:09)
[79] 第五話 九頁目[粒子案](2013/05/14 22:09)
[80] 閑話 第五話の後始末[粒子案](2013/05/14 22:10)
[81] 閑話 第一次食料大戦[粒子案](2013/05/15 22:17)
[82] 第六話 一頁目[粒子案](2013/05/15 22:18)
[83] 第六話 二頁目[粒子案](2013/05/15 22:18)
[84] 第六話 三頁目[粒子案](2013/05/15 22:19)
[85] 閑話 第二次食料大戦[粒子案](2013/05/15 22:19)
[86] 第六話 四頁目[粒子案](2013/05/15 22:19)
[87] 第六話 五頁目[粒子案](2013/05/15 22:20)
[88] 第六話 六頁目[粒子案](2013/05/15 22:20)
[89] 大惨事食べ物大戦[粒子案](2013/05/15 22:21)
[90] 閑話 サイハーデンの戦士達[粒子案](2013/05/16 20:13)
[91] 第七話 一頁目[粒子案](2013/05/16 20:14)
[92] 第七話 二頁目[粒子案](2013/05/16 20:14)
[93] 第七話 三頁目[粒子案](2013/05/16 20:14)
[94] 第七話 四頁目[粒子案](2013/05/16 20:15)
[95] 第七話 五頁目[粒子案](2013/05/16 20:15)
[96] 第八話 一頁目[粒子案](2013/05/17 22:06)
[97] 第八話 二頁目 [粒子案](2013/05/17 22:07)
[98] 第八話 三頁目[粒子案](2013/05/17 22:07)
[99] 第八話 四頁目[粒子案](2013/05/17 22:07)
[100] 第八話 五頁目[粒子案](2013/05/17 22:07)
[101] 第八話 六頁目[粒子案](2013/05/17 22:08)
[102] 第八話 七頁目[粒子案](2013/05/17 22:08)
[103] 第九話 一頁目[粒子案](2013/08/01 21:49)
[104] 第九話 二頁目[粒子案](2013/08/07 19:43)
[105] 第九話 三頁目[粒子案](2013/08/14 21:09)
[106] 第九話 四頁目[粒子案](2013/08/28 19:06)
[107] 第九話 五頁目[粒子案](2013/09/04 20:10)
[108] 第九話 六頁目[粒子案](2013/09/11 18:37)
[109] 第九話 七頁目[粒子案](2013/09/11 18:38)
[110] 閑話 槍衾がやってくる 前編[粒子案](2013/10/02 21:14)
[111] 閑話 槍衾がやってくる 後編[粒子案](2013/10/02 21:15)
[112] 閑話 ヴァーサス[粒子案](2014/02/05 16:12)
[113] 閑話 最悪の日[粒子案](2014/02/05 16:13)
[114] 第十話 一頁目[粒子案](2014/04/30 13:59)
[115] 第十話 二頁目[粒子案](2014/05/07 21:52)
[116] 第十話 三頁目[粒子案](2014/05/14 12:50)
[117] 閑話 ヴァーサスその2[粒子案](2014/05/28 22:30)
[118] 閑話 渚のエトセトラ[粒子案](2014/07/23 13:53)
[119] 第十話 四頁目[粒子案](2014/12/03 13:57)
[120] 第十話 五頁目[粒子案](2014/12/10 16:40)
[121] 第十話 六頁目[粒子案](2014/12/17 14:04)
[122] 第十話 七頁目[粒子案](2014/12/24 14:04)
[123] 第十話 八頁目[粒子案](2014/12/31 15:37)
[124] 第十話 九頁目[粒子案](2015/01/07 13:14)
[125] 第十話 十頁目[粒子案](2015/01/14 15:44)
[126] 第十話 十一頁目[粒子案](2015/01/21 18:13)
[127] 第十一話 一頁目[粒子案](2015/12/23 14:54)
[128] 第十一話 二頁目[粒子案](2015/12/23 14:54)
[129] 第十一話 三頁目[粒子案](2015/12/23 14:55)
[130] 第十一話 四頁目[粒子案](2015/12/23 14:55)
[131] 第十一話 五頁目[粒子案](2015/12/23 14:55)
[132] 第十一話 六頁目[粒子案](2015/12/23 14:56)
[133] エピローグなど[粒子案](2015/12/30 21:36)
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[14064] 第五話 二頁目
Name: 粒子案◆a2a463f2 ID:ec6509b1 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/05/14 22:07


 第十七小隊、勝利を祝う会という建前の宴会が開かれている店の一角で、レイフォンは少々困っていた。
 いや。実際にはかなり困っているのだ。
 祝勝・第十七小隊と書かれた大壇膜が、店の迷惑顧みずに張られた店内は、既に酒池肉林の宴の真っ最中だったりする。
 実際に酒池肉林かどうかは分からないけれど、取り敢えずレイフォンの認識としてはそうなのだ。
 ちなみにでは有るのだが、祝勝・第十七小隊と書かれた大壇膜の裏側には、祝勝・第五小隊と書かれていたりする。
 どっちが勝っても裏返せば良いだけだという事実を取ってみても、この宴会が開かれなかったという確率は全く存在していない。
 そこまでは良いだろうが、この宴会の凄まじさは、少々レイフォンにとって苦手とするところだ。
 こう言う時にブレーキをかけてくれるはずのリーリンは、何故か用事があるとかでこの場を欠席している。
 ナルキはニーナに引っかかっているし、自力で何とかしなければならないようだ。
 私の歌を聴けと絶叫してからこちら、延々二十分以上熱唱しているミィフィの声をBGMに、事態の打開策を検討するレイフォンは声をかける。

「イージェ?」
「なんだ?」

 レイフォンの疑問の声に応えつつ、せっせと紅茶の葉を加工した煙茶を入れている箱に、煙草を詰めるという作業を続ける。
 既に半分ほど煙草に入れ替わってしまっている。

「僕まだ喫煙許可年齢じゃないですよ?」
「それがどうした?」
「ど、どうしたって」

 法律である。
 取り敢えず守っておいて問題無いはずである。
 だが、イージェは完璧にそんなことお構いなしに、せっせと煙草と入れ替え続けている。

「良いかレイフォン?」
「はい?」
「煙草とは大人の嗜好品だ。いや。大人のみが許される嗜好品だ」

 なにやら力説を始めるイージェ。
 周りの人間がどんどん遠ざかって行くのを感じているが、それは決して不利益ではない。
 なぜならば、ニーナの同級生達から散々色々な質問をされていたからである。
 自分の努力ではないにせよ、あの状況から逃げ出せるのだったら何の問題も無い。
 問題無いはずなのだが、なにやら納得が行かない。

「かつて俺は都市全てが禁煙という恐ろしいところに行ったことがある」
「それはまた珍しいですね」

 全面禁煙の都市がでは無い。
 そんなところにイージェが行こうと思ったことが珍しいのだ。
 しかも、禁煙を破って吸っていたというオチではないはずだ。
 規制を守って吸うことこそイージェが尊重しているのだから。
 レイフォンに煙草を勧めているが、きっとイージェの中では矛盾していない行為なのだろう。

「お陰で俺は都市外で喫煙をする羽目になった」
「・・・・・・。死にますよ?」

 普通に考えて、都市外でフィルター無しで呼吸すれば五分で肺が腐って死ぬ。
 煙草一本三分だとしても、入院は間違いない。
 喫煙する度に入院していたと言う事も、イージェならばあり得る。
 だが、出てきたのはそんな常識を覆す言葉だった。

「安心しろ! 汚染物質など煙草の火で浄化できる!!」
「ほ、本当ですか!!」

 驚きである。
 もし煙草の火で汚染物質が浄化できるのならば、武芸者にとって喫煙の習慣こそ絶望的な状況を打開する、画期的な手段となるはずだ。
 思い返せばリンテンスは、常に煙草を銜えつつ戦っていた。
 もしかしたら、こっそりと自分だけ煙草で楽をしていたのではないかという疑惑まで出てきてしまう。
 だが、自信満々のイージェの、次の発言で全ては決定してしまった。

「嘘だ!!」
「どわ!」

 思わずテーブルに突っ込む。
 周り中で似たような反応が続出しているところを見ると、結構真剣に聞いていたようだ。
 エッヘン! と、偉そうに胸を張るイージェを軽く睨み付けてみる。

「実際問題として、煙草とは自分を律することが出来る人間にのみ許された、崇高でいて神聖な行為なんだ」
「だからって、全部入れ替えないで下さいと言っているんです!」

 レイフォンが体勢を立て直す前に、イージェは全ての煙茶を煙草へと入れ替えてしまっていた。
 これも戦術の一環なのだろうかと思ってしまうほど、見事な手並みだった。

「それにだな」
「はい?」
「俺はお前を大人として、いや、男として認めているんだ。と言う事で一緒に吸おうじゃないか」
「それが狙いですね」

 どうもレイフォンの周りには、癖の強い人間ばかり集まってくるようだ。
 その癖の強い人間の中には、当然メイシェンも混ざっている。
 普段はそうでもないのだが、絶叫マシーンを見ると途端に人格が入れ替わってしまうのだ。
 あれは恐ろしい。

「ゴルゥゥゥ」
「お預け」

 そんなレイフォンの聴覚は、今日の対戦相手である第五小隊の、隊長と副隊長の会話を捉えていた。
 どちらかと言うと、飼い主とペットの会話に近いような気がするが。
 当然であるのだが、ゴルネオはあちこち焦げたままこの場に来ている。
 元々あまり激しい火傷はしていなかったのだが、それでも髪の毛が焦げてしまった跡は、伸びるまでどうしようもない。

「お腹すいたぁぁ」

 だだをこねるシャンテの前では、他の第五小隊員達が、猛烈な勢いで料理を消滅させている。
 空腹だというのもあるのかも知れないが、もしかしたらシャンテが暴走する前に、全てを食べ終えようとしているのかも知れない。
 そして、その食事の手を一端止めた人物がシャンテを見る。

「副長」
「お、おう?」

 その隊員の中には、当然オスカーも居るのだ。
 そして、珍しく怖い表情でシャンテを睨んでいる。

「アルセイフ君と隊長の戦いは時間稼ぎだ、と隊長が言ったのは聞いているね?」
「おう」
「だと言うのに、肉弾戦をしているところに、あんな破壊力のある技をぶち込んでどうするつもりだったのだね?」
「う、うわぁぁん」

 泣きが入るシャンテというのは、非常に珍しいかも知れない。
 だが、シャンテの暴走がなければ第十七小隊は敗北していたのだから、幸運だったと言って良いのだろうと思う。
 そして、もう一人の隊長はナルキが遠くに行ってしまったためだろうが、何か考え込んでしまっているようだ。
 そう。シャンテの暴走がなければ、間違いなく敗北していたのだと言う事を知っているからこそ、何か考え込んでいるのだろう。
 話としてしか聞いていないが、第十四小隊との試合後、外縁部で無茶な特訓をして身体を壊しかけたと聞いた。
 同じ事をするとは思えないのだが、この次にどう言う行動を取るか全く予測できないという一点において、レイフォンは胃の痛みを覚えても不思議ではない精神状態になる。
 だが、シリアスな考えはそこまでだった。
 何を思ったのか、近くを通りかかったメイシェンを見つけたシャンテが立ち上がり。

「ちゅ」
「ひゃ?」

 いきなりメイシェンの頬を舐めた。
 いや。これ以上ないくらいに何の脈絡もなく、唐突な展開で凍り付くメイシェンと宴会に集まっていた殆ど全員。
 ミィフィの歌声もかき消え、軽快な音楽だけが無駄に流れているという凄まじさだ。
 唯一何か感じることがあったのか、驚きの表情をしているシャンテだけが、決定的に凍り付いていなかった。

「ゴルゴルゴルゴルゴルゴル」
「な、なんだ? どうしたというのだ?」

 あまりにもあまりな展開に、どういう反応をして良いのか分からないメイシェンが凍り付いている間に、ゴルネオの元へと小走りに近付くシャンテ。
 そしてそのシャンテは何か重大な発見をしたように、かなり激しく興奮しているようだ。
 鼻息が荒く頬が紅く、そして何よりもその瞳に驚きと感動の色を宿している。
 そしてその興奮をそのままに、重大な一言を放ってしまった。

「メイシェンがとっても甘かったぞ!!」
「な、なにぃぃぃ!!」

 店の中を同じ言葉が支配した。
 そして何故か、シャンテとメイシェンを除く、全ての人の視線がレイフォンを捉えている。
 そしてほぼ全ての視線が、本当にメイシェンは甘いのかとレイフォンに問いただしているのだ。

「え、えっと。何故僕に聞くんでしょうか? 本人に確認すべきではないかと愚考する次第ですが」

 少々取り乱し気味に、難しい言葉を使ってみる。
 かなり真剣に取り乱しているのだ。
 だが、他の人達は全く違う反応をしているのだ。

「自分が甘いかしょっぱいかなんて、分かるわけ無ぇだろうに」

 イージェがそう言うと、みんなして頷いて同意であることを示している。
 そして更に質問の視線が厳しくなってきた。
 答えろと言うのだ。
 この場で。

「え、えっと。何で僕に聞くんでしょうか?」
「お前が一番メイシェンを味わっていそうだからだ」

 とてつもない一言をイージェが口にした。
 そして、その意見も正しいと店中に居る全員が肯定している。
 ように思える。
 そしてそれはあながち間違った予測ではない。
 ヨルテムを出る時のあの一件を始め、メイシェンが甘いらしいと言う事は十分に知っているのだ。
 だが、このまま突き進むわけには行かない。
 何とか穏便にことを進めなければならない。
 どう答えたら穏便にことが進むだろうかと考える。
 結論として、全く思いつかなかった。
 一種異様というか、何かの切っ掛けで爆発してしまいそうな空気が店中を支配する。
 だが、世界はレイフォンが考える時間などくれなかったようだ。

「シャンテ。何をしようとしている?」
「うん! アルセイフに食べられる前に、メイシェンを食べるんだ!!」

 その会話で、やっとシャンテが何時の間にかテーブルに近付き、そしてあろう事かホークを二本逆手に持っていることに気が付いた。
 ここで疑問である。
 店にいる人の大半が考えている、味わうとか言う行為と、シャンテがこれからメイシェンに対してやろうとしている行為は、同じ物であろうか?
 恐らく違う。
 いや。絶対に違う。
 どう考えても、実際にメイシェンはシャンテのお腹の中に消えてしまいそうだ。
 更に救いがたいのは、食べようとしている本人には全くこれっぽっちも害意なんて物はない。
 おそらくだが、悪気もなければ殺意さえない。
 有るのは単に食欲だけ。

「シャンテ」
「おう?」
「こっちの料理を食って良いから、トリンデンを食うのは止めろ」
「? おう。そっちを食べて良いんだったらメイシェンは後でも良いけど」

 どうあってもメイシェンを食べると主張するシャンテ。
 よほどレイフォンに取られるのが気にくわないらしい。
 教育係に批難の視線を向ける。
 ばつが悪そうに、あるいは泣き出しそうな表情で明後日の方向を向くゴルネオ。
 まさかここまでとは思っていなかったようだ。
 最近こんな展開ばかりだと思うのだが、これもある意味レイフォンに定められた運命かも知れない。

「それでレイフォンよ」
「な、なんでしょうか?」

 そんな現実逃避をしていられたのは、しかしほんの一瞬。
 イージェのこれ以上ないくらいに真剣な瞳が、レイフォンを捕らえている。

「メイシェンは甘かったのか? かなり甘かったのか? もの凄く甘かったのか? 濃厚な甘さだったのか? それとも爽やかな甘さだったのか?」

 全て甘いという前提に立った言葉の連続攻撃に、下がる場所が無いにもかかわらずじりじりと後退してしまうレイフォン。
 気が付けば、料理に戦いを挑んでいるシャンテ以外の、全員の視線がレイフォンを捉えていた。
 そして。

「ささ。赤毛猫が他のご飯に夢中になっている間に、是非ともお召し上がり下さいませ。甘くて柔らかくて、とっても美味しいで御座いますよ」

 そう言いつつ、茶髪猫がメイシェンをレイフォンの横に座らせる。
 更に信じられないことに、レイフォンの周りは全て女性陣で包囲されていた。
 全く気が付かなかった。
 つい一瞬前まで、ここまでの重囲はしかれていなかったはずだというのに。
 見ればイージェも店の隅に寄りかかり、カメラを構えつつこちらを観察するに留めている。
 いったいいつ移動したのか、こちらも全く分からなかった。
 そして視線を横に向ければ、メイシェンの頭上になにやら陽炎が立ち上っているのに気が付いた。
 蒸気を吹き上げるまで、それ程時間が無い。

「取り敢えず」
「ひゃ?」

 何故か用意されていた、氷水の入ったビニール袋をメイシェンの頭に乗せる。
 何よりも頭を冷やさなければならないのだ。

「いきなり冷やしたな」
「これはきっと、冷やして固めてから揉んで柔らかくするためだ」
「成る程。流石アルセイフ君だ。ゆっくりと楽しむつもりだね」
「いやいや。きっと冷え切ったメイシェンちゃんに向かって、お互いの身体で暖め合おうと言うつもりだ。間違いない」

 等々と、遠くからそんな男どもの声が聞こえてくる。
 そして、目の前にいる女生徒達は現実問題として、そう言う展開になって欲しいと願っているように、レイフォンからは見えてしまう。
 男共がたむろしているのとは違う壁により掛かり、ナルキは大きく溜息をつきつつ片手で顔を押さえているし、ニーナはあまりの展開に全く付いて行けない様子で、なにやら呆然とレイフォンを見ているだけだ。
 援軍は期待できない。
 絶望的な戦いには慣れているはずだというのに、それでもこれほどの絶望を味わったことは始めてかも知れない。
 そう思いつつ、事態の打開策がないかと無駄な思考を進めたりしているのだ。
 
 
 
 第十七小隊の祝勝会が開かれている、まさにその瞬間、リーリンは憂鬱な気分で目の前の少年をにらみ据えていた。
 いや。憂鬱なのはリーリンの個人的な都合であって、目の前でなにやら資料を読みあさっているウォリアスには、全くもって関係のない話なのではあるのだが、それでも延々一時間以上ほったらかしにされては多少苛立とうという物だ。
 別段ウォリアスがリーリンを呼び出したというわけではないし、どちらかと言うと押しかけたので文句を言える立場にはないのだが。

「で? 何やってるの?」

 向こう側からの事態解決が望めない以上、自分で動いて何とか改善するしかないのだ。
 と言う事で声をかけてみた物の、この行為に意味があるのかどうかかなり疑問だ。
 もしかしたら、声が聞こえないほど熱中しているかも知れないし、最悪の場合リーリンがここに居ることにさえ気が付いていないかも知れないからだ。
 だが、その最悪の予測は見事に裏切られて、ウォリアスの視線がリーリンを捉える。

「うん? ツェルニについて調べている」
「それって、どういう意味かな?」

 ツェルニについて調べていると言われても、具体的に何をやっているのかさっぱり分からないのだ。
 電子精霊について調べているのではないことは、おおよそ理解しているつもりだが。

「ツェルニは組織戦が苦手だ」
「? えっと」

 組織戦と言われて、ウォリアスが見ている画面を覗き込んでみる。
 なにやら文字の羅列が、猛烈な速度で流れているわけではない。
 むしろ全くもって動いていない。
 だから、その文字列を上から順々に読んで行く。

「十年ほど前に、汚染獣の接近を感知したことがあったんだけれど」
「それは知っているわ。レイフォンがそんな事言っていたから」

 老性体戦の少し後に、レイフォンがこれで安心だとか言っていた記憶がある。
 聞いてみると、学園都市が汚染獣と遭遇する確率は極めて低く、ここ十年ほど交戦記録がないから、卒業するまで戦わずに済むというようなことを言っていた。
 ウォリアスが見ているのも、そのときの資料のようであると見当が付く。
 断定できないのは、意味不明の専門用語が頻繁に出現していて、細部を把握する事が出来ないからだ。

「その時の汚染獣は、雄性体二期か三期だったらしいんだけれど」
「うん」
「当時最強と言われた武芸者が一人で殲滅に出かけていった」
「何処のグレンダンよ?」

 汚染獣に単独で挑むような、そんな恐ろしいことをするのは、グレンダンだけだと思っていた。
 だが、残念なことにツェルニでも似たようなことが起こっていたようだ。
 もしかしたらリーリンが知らないだけで、汚染獣戦とは単独戦闘が基本なのかも知れない。
 ならば、天剣授受者が一人で出撃するのも納得が行くという物だ。

「・・・・・・・」

 いや。納得が行かない。
 養父であるデルクは、戦闘集団の隊長を務めていたと聞いたことがある。
 そして、レイフォンも最初の頃は集団の中の一人として戦っていたと聞いたことがある。
 ならば、やはり汚染獣と戦うと言う事は、おおよそ集団戦になるはずだ。
 ツェルニだけがやはり違うと言うことかも知れない。

「少数精鋭は間違った判断じゃない。相手が単独で強力な場合、下手に数を出しても被害が増えるだけだからね」
「・・・・。つまり、全体的には質が低かった?」

 数を出して被害が増えると言う事は、つまり傑出した能力を持つ少数と、言い方は悪いが大多数の落ちこぼれが混在していたと言う事になる。
 それは別段珍しいことではない。
 グレンダンでさえ、一般武芸者よりも遙かに能力の低い武芸者はいた。
 そう言う、能力の低い武芸者にとって、グレンダンは非常に居心地の悪い都市だったことは間違いない。
 去年までツェルニにグレンダンからの留学生がいたが、ツェルニ基準でも成績が悪く今年になる前に辞めてしまったらしい。

「そう言う評価も出来るね。でも、僕は集団戦とは言っていないよ」
「? えっと。組織戦」
「そ」

 組織戦と集団戦と何処が違うのだろうかと考える。
 だが、答えが出ようはずが無いのだ。
 リーリンは一般人であり、経済については少しだけ囓ったことがあるが、武芸者や戦いについては完璧に素人なのだ。

「そうだね。老性体戦ではレイフォンが主に戦ったでしょう?」
「まあ、そう言うことになったわね」

 老性体となれば、グレンダンでも天剣授受者が戦っていた。
 いや。老性体と戦える武芸者は天剣授受者しかいなかったのだ。
 レイフォンが戦うのが当然だと言うつもりはないが、それでも他の人が戦場に出るよりは正しい判断だと思う。
 納得は出来ないのだが。

「で、生徒会長や武芸長が色々と悪事を働いたでしょう?」
「メイを出汁にしたりとか?」

 ニーナを失敗させるためにメイシェンを出汁にしたとウォリアスから聞かされた時には、思わず本格的にカリアンを殺しに行こうかと思ってしまった。
 フェリとナルキの気持ちが十分に分かった瞬間だったが、今はその殺意を何とか押さえる。
 このまま進むと拙いことになると判断したのか、思考を破棄するように手をスライドさせるウォリアス。

「そうだね」

 小首をかしげつつ、左手を握り人差し指だけをそこから伸ばす。
 そして左手をクルクルと回す。
 最近知ったのだが、これはウォリアスがなにやら高速で頭を回転させる時に現れる癖だ。

「たとえば」

 何か思いついたのか、口を開きかけたところで、再び閉じられる。
 例えが上手くなかったようだ。

「今回の老性体戦を例に取るとだね」
「先に思いついたのは良いの?」
「それは危険だから却下」

 折角考えて思いついた物は、なにやらリーリンを怒らせる内容だったようだ。
 まあ、これ以上殺意の対象が増えても困るので、聞かなかったことにする。

「都市外作業指揮車を使ったり、罠を用意したりと、色々とレイフォンの助けになるような行動をみんなで取ったでしょう?」
「そうね。それがなかったら危なかったかも知れないって、レイフォンが言っていたわね」

 天剣授受者は、グレンダン最強の武芸者ではあるのだが、それは無敵ではないし不死身でもない。
 極めて危険な戦いだったことを、後から知った。

「生徒会長があれやれこれやれって指示を出して、それをそれぞれの責任者が細かい指示に変えて、最終的に下っ端が実際の作業をする」
「下っ端は何時も肉体労働よね」

 特にレイフォンは常に肉体労働だ。
 ここまで考えて、何か何時ものリーリンと違うことに気が付いた。
 自分の事ながら、少々認識が甘すぎる気がする。
 だが、ウォリアスの言う組織的に動くという意味はおおよそ理解できた。
 と思う。
 要するに、トップダウン方式で仕事をこなして行き結果を出すと言う事だ。

「それが組織的に何かをするって事」
「それって、当然じゃない?」

 老性体に襲われたなんて事は、通常の都市にとっては危険すぎる事態だ。
 それに対応するために全力を尽くすのは当然だと思うのだが。

「じゃあ、グレンダンを考えてみよう」
「対象が悪すぎない?」

 グレンダンは、老性体と戦ってもたいてい都市に被害らしい被害は出ない。
 殆ど戦死者さえ出ないという異常な都市である。

「老性体とグレンダンが戦う時、天剣授受者の支援はどうなっているか知っている?」
「それは、デルボネ様が念威を使って?」

 そこでふと、ツェルニの取った行動とグレンダンの行動の違いに気が付いた。
 天剣授受者が複数いるという、信じられない戦力の充実ぶりを無視してしまえば、その対応には凄まじい違いがある。

「そ。グレンダンではデルボネ・キュアンティス・ミューラという天剣授受者が、個人的な能力で天剣授受者を支援しているだけ。都市外戦装備の開発や錬金鋼の調節と言った、下準備は違うと思うけれどね」

 ウォリアスがやったように、罠の準備をしたり送り迎えをしたりと言った、当然の支援が全く存在していない。
 いや。全く無いと断言することは出来ないが、レイフォンからそんな話を聞いたことがない。
 グレンダンの異常さがはっきりとしてきたが、実はまだ話の途中だった。

「ツェルニでも同じ事が出来る」
「無理よ」

 ツェルニは学園都市である。
 レイフォンはいるが、デルボネに匹敵する念威繰者などいない。
 いや。

「・・・・。フェリ先輩?」
「そ」

 何故かいた。
 それもすぐ身近に。
 フェリの念威繰者としての能力は驚くべき物で、それこそデルボネに匹敵してしまうのだという話を、やはりレイフォンから聞いた。

「フェリ先輩の念威で支援を受けつつ、レイフォンが単独で戦うことが出来た」

 それはつまり、ツェルニでも個人的な支援だけで戦えると言う事になる。
 これが問題なのだと言う事に気が付いた。

「で、十年前の汚染獣戦なんだけれど」
「やっぱり念威繰者が一人だけ協力したの?」
「うんにゃ。念威繰者じゃなくて機械科の一生徒が、ナビゲーション装置を作って、単独出撃した武芸者の帰還の手伝いをしただけ」

 驚くべき事態が過去のツェルニで起こっていたことがはっきりした。
 個人的な技量に頼るという行為が、ツェルニの十八番なのかも知れないと思えてしまう。

「英雄型の戦い方だね。傑出した人物がいればそれで問題無いけれど、いなければ全く戦力として役に立たない」

 その欠点が現れたのが、前回までの武芸大会なのだという事が分かった。
 もしかしたら、今年の武芸大会でも同じ事が起こるかも知れない。
 レイフォンと言う傑出した戦力を最大限生かした、英雄を必要としている戦い方をすることによって。

「僕が前に言ったこと覚えている?」
「レイフォンが勝利に全く関係ないことこそが、報いることだ」

 入学式の後に、ウォリアスが言った言葉だ。
 まさか、これほどの意味があったとは思いもよらなかった。
 だが、小さく欠伸をしたウォリアスは気分を入れ替えるのか、リーリンに視線を向けた。

「まあ、難しい話はここまでにしてだね」
「なによ?」

 端末の電源を落としつつ、ウォリアスの視線がリーリンを捉える。
 いや。捉えていたのは暫く前からなのだが、はっきりと標的として認識されたようだ。
 短い沈黙の後、とうとうその言葉は発せられた。

「祝勝会には行かないの?」
「ああ。それね」

 何故今まで難しい話をしていたのかと疑問だったのだが、どうやらこの質問をするための前振りだったようだ。
 リーリンは自分が思っているよりも、よほど怖いことになっていたようだ。

「だってさ」
「うん?」
「宴会となったら、酔いたいじゃない」
「・・・・・・。メイシェンと言う肴でレイフォンと言う酒を呑んで騒ぐ訳ね」

 確実にそうなるとは限らないが、だがしかし、ミィフィがいる以上危険性は極めつけに高い。
 今頃どんな悲惨なことになっているか、予測するだけで殺意が沸き上がってきてしまうほどだ。
 レイフォンに向かって。

「あまりにも良くできたらさ」
「頭撫でてあげるのは良いけれどね」
「首がもげたら嫌じゃない」
「いくら飾りだっていっても、必要だからね」

 おおむねウォリアスとの会話は成功しているようだ。
 これは非常に嬉しいことだと言って良いのかもしれない。

「それじゃあ、取り敢えず」
「なによ? ひやかしには行かないわよ?」

 ゆっくりと椅子から立ち上がる、ウォリアスの細い眼がなにやら思案の色を浮かべる。
 そして一言。

「夕飯おごるよ。リクエストはある?」

 何の脈絡もないが、このまま寮に帰るのは少々厳しい。
 セリナは生徒会の仕事とか言って、帰りが遅いことは確定している。
 ニーナとレウは祝勝会で、当分帰ってこない。
 そうなるとあの女子寮にはリーリン一人と言う事になる。
 あの巨大な寮に一人でいるのは、どう控えめに表現しても心地よいという状況ではない。
 なので。

「低カロリーで美味しい物」
「・・・・」

 扉に向かいかけたウォリアスの顔が、一瞬リーリンにむきかけた。
 正確に言うならば、リーリンのお腹付近に視線を向けようとして、強引に扉の取っ手を凝視する。
 レイフォンだったら、間違いなく視線はリーリンを捉えていたはずだ。
 デリカシーのある男性で良かったと思う。
 ウォリアスのために。

「じゃあ、最近見つけた定食屋にしよう」
「安いところを選んだのね」
「貧乏じゃないけれど、お金は大切だからね」

 そんなどうでも言い会話をしつつ、資料室を出たウォリアスについて歩きつつ、男友達という物とは縁がなかったのだと、ふと気が付いた。
 これはこれで新鮮な感覚である。
 この珍しい状況が、少しでも長く続けばいいと思うのだが、そのためにはリーリンとウォリアス双方の努力が必要である事は、きちんと認識しておかなければならない。
 今日のように片方にだけ負担を強いる関係は、長く続かないのだから。


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