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No.14064の一覧
[0] 完結 復活の時(鋼殻のレギオスif)[粒子案](2016/01/21 09:22)
[1] 第一話 一頁目[粒子案](2013/05/08 21:06)
[2] 第一話 二頁目[粒子案](2013/05/08 21:06)
[3] 第一話 三頁目[粒子案](2013/05/08 21:07)
[4] 第一話 四頁目[粒子案](2013/05/08 21:07)
[5] 第一話 五頁目[粒子案](2013/05/08 21:07)
[6] 第一話 六頁目[粒子案](2013/05/08 21:08)
[7] 第一話 七頁目[粒子案](2013/05/08 21:08)
[8] 第一話 八頁目[粒子案](2013/05/08 21:08)
[9] 第一話 九頁目[粒子案](2013/05/08 21:09)
[10] 第一話 十頁目[粒子案](2013/05/08 21:09)
[11] 第一話 十一頁目[粒子案](2013/05/08 21:10)
[12] 第一話 十二頁目[粒子案](2013/05/08 21:10)
[13] 閑話 一頁目[粒子案](2013/05/09 22:03)
[14] 閑話 二頁目[粒子案](2013/05/09 22:03)
[15] 閑話 三頁目[粒子案](2013/05/09 22:04)
[16] 閑話 四頁目[粒子案](2013/05/09 22:04)
[17] 第二話 一頁目[粒子案](2013/05/10 20:48)
[18] 第二話 二頁目[粒子案](2013/05/10 20:48)
[19] 第二話 三頁目[粒子案](2013/05/10 20:49)
[24] 第二話 四頁目[粒子案](2013/05/10 20:49)
[34] 第二話 五頁目[粒子案](2013/05/10 20:49)
[35] 第二話 六頁目[粒子案](2013/05/10 20:50)
[36] 第二話 七頁目[粒子案](2013/05/10 20:50)
[38] 第二話 八頁目[粒子案](2013/05/10 20:50)
[39] 第二話 九頁目[粒子案](2013/05/10 20:51)
[40] 第二話 十頁目[粒子案](2013/05/10 20:51)
[41] 第二話 十一頁目[粒子案](2013/05/10 20:51)
[42] 閑話 赤毛猫の一日[粒子案](2013/05/11 22:13)
[43] 第三話 一頁目[粒子案](2013/05/11 22:13)
[44] 第三話 二頁目[粒子案](2013/05/11 22:13)
[45] 第三話 三頁目[粒子案](2013/05/11 22:14)
[46] 第三話 四頁目[粒子案](2013/05/11 22:14)
[47] 第三話 五頁目[粒子案](2013/05/11 22:14)
[48] 第三話 六頁目[粒子案](2013/05/11 22:15)
[49] 第三話 七頁目[粒子案](2013/05/11 22:15)
[50] 第三話 八頁目[粒子案](2013/05/11 22:15)
[51] 第三話 九頁目[粒子案](2013/05/11 22:16)
[52] 第三話 十頁目[粒子案](2013/05/11 22:16)
[53] 第三話 十一頁目[粒子案](2013/05/11 22:16)
[54] 第三話 蛇足[粒子案](2013/05/11 22:17)
[55] 閑話 乙女と野獣[粒子案](2013/05/11 22:17)
[56] 第四話 一頁目[粒子案](2013/05/12 21:10)
[57] 第四話 二頁目[粒子案](2013/05/12 21:11)
[58] 第四話 三頁目[粒子案](2013/05/12 21:11)
[59] 第四話 四頁目[粒子案](2013/05/12 21:11)
[60] 第四話 五頁目[粒子案](2013/05/12 21:12)
[61] 第四話 六頁目[粒子案](2013/05/12 21:12)
[62] 第四話 七頁目[粒子案](2013/05/12 21:12)
[63] 第四話 八頁目[粒子案](2013/05/12 21:13)
[64] 第四話 九頁目[粒子案](2013/05/12 21:13)
[65] 第四話 十頁目[粒子案](2013/05/12 21:13)
[66] 第四話 十一頁目[粒子案](2013/05/12 21:14)
[67] 閑話 ツェルニに死す![粒子案](2013/05/13 20:47)
[68] 閑話 ニーナの勉強会その一[粒子案](2013/05/13 20:48)
[69] 閑話 ニーナの勉強会その二[粒子案](2013/05/13 20:48)
[70] 戦慄! 女子寮の朝[粒子案](2013/05/13 20:48)
[71] 第五話 一頁目[粒子案](2013/05/14 22:07)
[72] 第五話 二頁目[粒子案](2013/05/14 22:07)
[73] 第五話 三頁目[粒子案](2013/05/14 22:07)
[74] 第五話 四頁目[粒子案](2013/05/14 22:08)
[75] 第五話 五頁目[粒子案](2013/05/14 22:08)
[76] 第五話 六頁目[粒子案](2013/05/14 22:08)
[77] 第五話 七頁目[粒子案](2013/05/14 22:09)
[78] 第五話 八頁目[粒子案](2013/05/14 22:09)
[79] 第五話 九頁目[粒子案](2013/05/14 22:09)
[80] 閑話 第五話の後始末[粒子案](2013/05/14 22:10)
[81] 閑話 第一次食料大戦[粒子案](2013/05/15 22:17)
[82] 第六話 一頁目[粒子案](2013/05/15 22:18)
[83] 第六話 二頁目[粒子案](2013/05/15 22:18)
[84] 第六話 三頁目[粒子案](2013/05/15 22:19)
[85] 閑話 第二次食料大戦[粒子案](2013/05/15 22:19)
[86] 第六話 四頁目[粒子案](2013/05/15 22:19)
[87] 第六話 五頁目[粒子案](2013/05/15 22:20)
[88] 第六話 六頁目[粒子案](2013/05/15 22:20)
[89] 大惨事食べ物大戦[粒子案](2013/05/15 22:21)
[90] 閑話 サイハーデンの戦士達[粒子案](2013/05/16 20:13)
[91] 第七話 一頁目[粒子案](2013/05/16 20:14)
[92] 第七話 二頁目[粒子案](2013/05/16 20:14)
[93] 第七話 三頁目[粒子案](2013/05/16 20:14)
[94] 第七話 四頁目[粒子案](2013/05/16 20:15)
[95] 第七話 五頁目[粒子案](2013/05/16 20:15)
[96] 第八話 一頁目[粒子案](2013/05/17 22:06)
[97] 第八話 二頁目 [粒子案](2013/05/17 22:07)
[98] 第八話 三頁目[粒子案](2013/05/17 22:07)
[99] 第八話 四頁目[粒子案](2013/05/17 22:07)
[100] 第八話 五頁目[粒子案](2013/05/17 22:07)
[101] 第八話 六頁目[粒子案](2013/05/17 22:08)
[102] 第八話 七頁目[粒子案](2013/05/17 22:08)
[103] 第九話 一頁目[粒子案](2013/08/01 21:49)
[104] 第九話 二頁目[粒子案](2013/08/07 19:43)
[105] 第九話 三頁目[粒子案](2013/08/14 21:09)
[106] 第九話 四頁目[粒子案](2013/08/28 19:06)
[107] 第九話 五頁目[粒子案](2013/09/04 20:10)
[108] 第九話 六頁目[粒子案](2013/09/11 18:37)
[109] 第九話 七頁目[粒子案](2013/09/11 18:38)
[110] 閑話 槍衾がやってくる 前編[粒子案](2013/10/02 21:14)
[111] 閑話 槍衾がやってくる 後編[粒子案](2013/10/02 21:15)
[112] 閑話 ヴァーサス[粒子案](2014/02/05 16:12)
[113] 閑話 最悪の日[粒子案](2014/02/05 16:13)
[114] 第十話 一頁目[粒子案](2014/04/30 13:59)
[115] 第十話 二頁目[粒子案](2014/05/07 21:52)
[116] 第十話 三頁目[粒子案](2014/05/14 12:50)
[117] 閑話 ヴァーサスその2[粒子案](2014/05/28 22:30)
[118] 閑話 渚のエトセトラ[粒子案](2014/07/23 13:53)
[119] 第十話 四頁目[粒子案](2014/12/03 13:57)
[120] 第十話 五頁目[粒子案](2014/12/10 16:40)
[121] 第十話 六頁目[粒子案](2014/12/17 14:04)
[122] 第十話 七頁目[粒子案](2014/12/24 14:04)
[123] 第十話 八頁目[粒子案](2014/12/31 15:37)
[124] 第十話 九頁目[粒子案](2015/01/07 13:14)
[125] 第十話 十頁目[粒子案](2015/01/14 15:44)
[126] 第十話 十一頁目[粒子案](2015/01/21 18:13)
[127] 第十一話 一頁目[粒子案](2015/12/23 14:54)
[128] 第十一話 二頁目[粒子案](2015/12/23 14:54)
[129] 第十一話 三頁目[粒子案](2015/12/23 14:55)
[130] 第十一話 四頁目[粒子案](2015/12/23 14:55)
[131] 第十一話 五頁目[粒子案](2015/12/23 14:55)
[132] 第十一話 六頁目[粒子案](2015/12/23 14:56)
[133] エピローグなど[粒子案](2015/12/30 21:36)
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[14064] 閑話 三頁目
Name: 粒子案◆a2a463f2 ID:eb9f205d 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/05/09 22:04


 引っ越し作業を終了させたウォリアスは、当面の目的としてでっち上げていた作業を終了させるべく、中央図書館へと向かう。
 まだ涼しい空気を吸い込みつつ、地図を眺めつつ目的地へと向かって歩く。
 古文都市レノスの本分はと聞かれれば、それはもう情報を収集する事以外にはない。
 都市自体が、そのためだけに異常なほどの行動半径を持ち、そのためだけに色々な都市に喧嘩を売っているのだ。
 どういう都市と当たるか分からないので、武芸者の質もそれなり以上には高かった。
 まあ、グレンダンのような異常者の集団と渡り合ったのは、運がなかったと諦める事にして。
 だが、ウォリアス自身は極めて無能な武芸者である。
 剄脈の発達に異常があるのか、それともこれが限界なのか、一般人よりはましと言った身体能力しか持ち合わせていない。
 衝剄のたぐいも使えるのだがその出力は極めて低く、ある意味レイフォンの対極にいるような人間だ。
 そんなウォリアスは、情報収集という物にかなり血道を上げる人間だ。
 だからこそ、実際にその目で他の都市を見てみたいと思っていた。実はもう一つ理由があるのだが、それはあまり人には言えないたぐいのものだ。
 半分追放されたような形だが、それは別段気にしていない。
 計画ではもう少し色々と下調べをしてから、レノスを去るつもりだったのだが、それは少し早まったと言った程度である。
 問題なのは。

「あ、あのぉぉ。何かご用でしょうか?」

 上級生と思われる、かなり怖い金髪の女性が値踏みするかのようにウォリアスを見ているのだ。
 剣帯に入っているラインの色からして三年生らしい事が分かる。
 その剣帯に刺さっている錬金鋼二本が更に怖さを増幅させている。
 そんな怖い女性が見ているのだ。
 たっぷりと五分ほど。

「・・・・・・。いや。済まない。お前が即戦力になれるかどうかと考えていたんだ」
「はあ」

 胸ポケットに耀く十七と書かれたバッジ。
 第十七小隊の人らしい事は分かるのだが、その立ち姿には、何か鬼気迫る物があるような気がしてならない。
 ツェルニの鉱山があと一つなのは知っている。
 そのせいで入学試験の際に、武芸科には特別な配慮がなされていたくらいだ。
 目の前の女性が小隊員だったのならば、その危機感も焦る気持ちも分かるのだが。

「あのぉ。もう行って良いでしょうか?」

 当面の問題として、ウォリアスはやらなければならない事があるので、そろそろ解放して欲しいのだ。
 急ぐかと聞かれればそうでもないのだが、目の前の女性と対峙する事を考えると急ぎの仕事だ。

「あ? ああ。済まないな」

 納得したのかしないのか、なにやら難しい顔をした女性は踵を返して立ち去ってしまった。

「やれやれ」

 その後ろ姿を見送り、ふと思う。
 彼女がレイフォンの実力を知ったのならと。
 ガハルドとの試合の映像は見た。
 相手の実力を知らないが、それでも天剣授受者という生き物が常軌を逸した存在であることは理解できているつもりだ。
 二年前の戦争には参加していないが、映像は見たし体験談も聞いた。
 そんな異常者である天剣授受者の一人が、ツェルニにやってきているのだ。
 彼女がそれを知ってなお、レイフォンの協力を仰ぐかどうかは不明だが、追い詰められれば何でもやるのが人間だ。レイフォンを使わない事の方が考えられない。
 そして、レイフォンの過去については確かに同情しているし、やろうとした事が全面的に間違っているとは思わない。
 だが、試合終了直後にグレンダンが取った行動も、やはり間違っていないと思う。
 それほど危機的状況だったと、ウォリアスは認識しているのだ。
 レイフォンにウォリアスほどの危機感が有るのかは、今ひとつ分からないが。
 高速でそんな思考を働かせつつ、更に独りごちる。

「どうにも出来ないか」

 レイフォンは武芸科ではないのだ。
 一般教養科の人間を、武芸大会に出場させる事は出来ないはずだ。
 当然小隊に入れる事も不可能。
 もし転科させるにしても、定員一杯まで入学させているはずだから、誰かを辞めさせなければならないし、そんな事が出来る人間がツェルニに大勢いるとは思えない。
 権限上出来たとしても、やれるだけの行動力があるか疑問だ。

「・・・・・・・・・・・・・・。まさかね」

 もし、いたのなら?
 もし、レイフォンの事を知っていたのなら?
 この二つを兼ね備えた人間が居たのならば、レイフォンの目的は果たされない危険性が高い。
 レイフォンがツェルニに留学する事になった経緯は聞かされている。
 ならば、もし、レイフォンが転科しなければならない状況になったのなら。

「学園都市が、その役目を果たせなくなるか」

 考えすぎだと思うのだが、偶然とは言えウォリアスはレイフォンの事を知っているのだ。
 他には誰も知らないなどと言う事は、考えない方が良いだろう。

「やれやれ」

 思考を一時棚上げして、踵を返して、図書館へと向かおうとしたのだが。

「あ、あのぉぉ?」

 目の前にいる人物。
 先ほどウォリアスを値踏みしていた女性からは見えない位置にいた、長い銀髪と整いすぎた顔の、年下に見えるのだが剣帯に入っているラインの色から二年生と判断できる少女へと声をかける。
 武芸科の制服の胸には、先ほどと同じ十七と書かれたバッジがある事からすると、もしかしたら金髪の女性から逃げているのかもしれない。

「問題有りません」

 白銀の髪と瞳を持った、超絶美少女と呼ばれる珍獣の一匹だと判断する。
 取り敢えずウォリアスには縁のない生き物のはずなのだが、何故かこちらを見て微動だにしない。

「何が問題無いんですか?」

 無表情にそう言う少女だが、なんだか非常に不機嫌そうに見えるのは、気のせいであって欲しい。

「いいえ。貴方には当面関係のない事です」

 ちらりと、金髪の女性が立ち去った方を気にした少女は、彼女と反対の方向へと歩み去った。
 その行動から考えると、逃げているというのが一番納得の行く結末に思える。
 金髪の女性は、探しているという雰囲気ではなかったが。

「・・・・・・。変な人達ばかりが居るような気がする」

 昨日会ったシャーニッドという四年生は、今年の一年は変な連中ばかりだと言っていたが、二年生にも三年生にも、変な人が非常に多いような気がする。

「まあいいか」

 取り敢えずウォリアスにはやる事があるのだ。
 中央図書館に行き、グレンダン出身者をリストアップする。
 レイフォンの事を知っていておかしくない人間を知っておけば、接触する確率をかなり少なくできるはずだと考えての行動だ。
 荷物を部屋のベッドの上に放り出しただけで、引っ越しを終わらせた気になっているウォリアス自身が、情報を集めるための立前でしかないが。

「あれ?」

 ふとそこで違和感に気が付いた。
 さっきの金髪女性はウォリアスの事を、武芸者だという前提の元で話を勧めていた。
 入学式前なので、制服を着ている訳ではないのに、何故武芸者だと分かったのか非常に疑問だ。
 願書のたぐいを見れば分かるだろうが、彼女にそれだけの用意周到さがあるとは思えない。

「まあ、いいか」

 再び疑問を先送りしたウォリアスは、今度こそ本当に図書館へ向かって歩き出した。
 
 
 
 黒い長髪を後ろで縛った新入生らしい少年から離れ、暫く歩き、周りに誰もいない事を確認してから、猛烈な勢いで落ち込んだ。
 まだ、かなり長い日陰に身を隠し、壁に身体を預けて、それはもう今までにないほど真剣に深刻に、猛烈に落ち込んだ。
 その無表情のおかげで周りからはそう見えないかも知れないが、本人的には猛烈に落ち込んでいるのだ。

「不愉快です」

 フェリ・ロスはそう独りごちる。
 普段通りならば、ニーナが多少怒っていようが切れていようが関係ないと、マイペースで話を進めるくらいの事は出来る。
 だが、今日のニーナは一味も二味も違った。
 さしものフェリでさえ恐怖を感じるほどに、何かに追い詰められているのか、それとも焦っているのかしている彼女からは、危険極まりない雰囲気が流れ出ていたのだ。
 しかも、本人に自覚があるかどうか非常に怪しいが、殺剄を使って歩いていた。
 そのせいで気配に気が付いた時にはすぐそばにいた。
 念威端子で警戒でもしていれば防げたのだが、年中そんな物を展開している程には、流石に暇ではないのだ。
 偶然、新入生を盾に出来る位置にいたから良いような物の、少し運が悪ければ捕まっていた事は間違いない。
 それから先を想像しようとしたところで、フェリは止めた。

「見つからなかったので問題有りません」

 起こったかも知れない事態を予測して怖がるのは、あまりにも無駄な行為に思えたのだ。
 取り敢えず、ニーナは他の場所へと行ってしまった。
 ならばフェリは何時も通りに、念威端子を飛ばして町の様子を眺めつつ、暇な時間をつぶそうと思う。
 兄であり生徒会長であるカリアンの不祥事でも見つけられたら、もうけ物だと思いつつ積極的には探さない。
 念威繰者としての才能に恵まれすぎたせいで、いらないやっかいごとに巻き込まれるのはごめんなのだ。
 そうでなくても、今年から武芸科に転科させられたのだ。
 去年は何も無い良い一年だった。
 今年武芸大会があるらしいので、そのせいでカリアンは何か画策し、陰謀を巡らせているようだ。
 三ヶ月ほど前に、なにやら書類を眺めつつ、暗い部屋で笑うカリアンと遭遇した事がある。
 その姿はあまりにも恐ろしく、暫く悪夢を見たほどだ。
 ツェルニを救う方法でも見つかったのかも知れないと、その時は漠然と思っていたが、そんな生やさしい事態でなかった事を今は認識している。
 極めて強力で具体的な方法が見つかったのだ。
 強引に転科させられた事からも、それは間違いない。
 ならば、どんな光明を見いだしたのかと聞かれると、それは不明のままだが、それでもフェリが無関係だと言う事は考えられない。
 だから精一杯の抵抗をしているのだ。
 無駄に熱いニーナや、何を考えているのか分からないシャーニッドと一緒にはやっていけない。
 取り敢えず、落ち込んだ気持ちを立て直すべく、見晴らしの良い場所にでも行こう。
 そう考えたフェリは景色の良いレストランへと足を向けた。
 ニーナのポケットの一つに、念威端子を忍ばせてある。
 これで同じ過ちを繰り返さずに済むと安心して、フェリはレストランへの道を歩く。
 
 
 
 昼下がりの公園のベンチに座った男女が、お互い見つめ合い何事かささやき会っている光景を眺めつつ接近する。
 その二人に気が付かれないように細心の注意を払いつつ、殺剄を最大展開して後ろから接近する。
 風が向こうから吹いているから、匂いで気が付かれる危険性もない。

「にひひひひひ」
「きししししし」

 耳に飛び込んでくるのは、なにやら意味不明で下品な笑い。
 本来、男性の方にそんな習慣はなかったはずなのだが、やはり急激な変化が起こっているようだ。
 非常に不愉快な展開ではあるのだが、今は自分を抑える時だと言う事は理解している。

「やっと趣味の悪い笑いを体得したようだね」
「ああ。これもお前のおかげだ」

 更に、携帯端末の画面を覗き込みつつささやき会っているが、恋仲という訳ではなさそうな事は分かった。
 射程距離まで後五メルトル。
 草を踏みしめる足音にも細心の注意を払い、日差しと影の位置にも気をつけつつ、更に接近する。

「でだね。これが傑作」
「おお! 空前にして絶後の豪傑だとは思っていたが、まさかこれほどとは!」

 なにやら盛り上がっているようだが、注意がそちらに行ってしまっている今こそが最大のチャンス。
 三メルトルになっていた距離を一気に詰め、男の襟首を力任せに掴む。

「ぐえ」

 なにやら悲鳴らしき物が聞こえたが、そんな物にかまっていてはいつまで経っても訓練など出来ない。
 最低限生きていればそれで良い。

「さあ捕まえたぞシャーニッド!」

 後ろを取り、その襟を掴んでいる以上、もはや遠慮する必要はないし殺剄も意味がない。
 と言う事で、今までの苛立ちを晴らすかのように締め上げる。

「ニ、ニーナ?」

 半分ほど首を絞められた状態にもかかわらず、飄々とした口調と共にこちらを認識するシャーニッド。
 これなら、少しくらい殺しても良いかもしれない。

「さあ。五日分の鍛錬をまとめてやるぞ!! 寝る時間を削れ! 食事時間を切り詰めろ! 死ぬ気で訓練をするんだ!!」

 欠席が五日目に突入しそうな隊員を捜し出し、強制的に鍛えるためにニーナは散々あちこち歩き回ったのだ。
 その途中、黒髪で目の細い新入生と遭遇した。
 数日前に偶然、彼が錬金鋼を預けるところを目撃したので、即戦力になるかと期待をして観察したのだが、どうもあまり優秀ではなさそうだった。
 更に鬱憤が募ったところで発見したのがシャーニッド。
 逃がす訳には行かないので、ニーナの持てる最大の技術を総動員して、今ここにその成果がある。

「い、いや。落ち着けよな。俺は今デートの途中なんだからさ」
「にひひひひひひ。訓練をサボっちゃいけませんよ? 強い男の子になれないですからね」

 茶髪ツインテールの相方の方が話が分かるようだ。
 不気味な笑いには目を瞑って、話を進めることにした。

「レイとんみたいに強くならないと」
「あいつの強さは天然だろ? まあ、勇者で豪傑であると思うがぁぁ!」

 なにやらまだ喋りそうだったので、襟首を掴んだ手に力を込めそのまま持ち上げた。
 多少ならば死んでも問題無いはずだ。

「さあ。武芸大会目指して一瞬たりとも気を抜くな。負けたらその場で貴様を殺すからな!!」

 ニーナの手を叩いて何か訴えかけてくるシャーニッドを無視しつつ、一応連れに挨拶をしておく。
 恋仲ではないとしても、この辺は最低限の礼儀として必要だ。

「第十七小隊長のニーナ・アントークだ。こいつは連れて行くが悪くは思わないでくれ」
「気にしないでください。でも、話で聞いたままですね」

 にこやかにカメラを操作しつつそう言われた。
 シャーニッドからどんな話が行ったかについては、気にならないと言えば嘘になるのだが、今は兎に角訓練の方が重要だ。

「ぐ、ぐぐぐぐ」

 なにやら痙攣しているが気にしてはいられない。
 いざとなったら、蘇生すればいい。

「では失礼する」

 そう言うと、シャーニッドを文字通りに引きづりつつ練武間を目指す。
 フェリを補足しそびれた事は痛恨の極みだが、それは明日の楽しみにとっておいても問題はないと考え直した。
 何よりもまずは、この軽薄な男を鍛え直す事から始めるべきだと判断して。
 
 
 
 ツェルニで最も高い建物の、その一番上にある部屋で軽く傾いた日差しを浴びつつ、ゆっくりとティーカップを傾ける。
 書類や本を並べた本棚に壁を占領されているが、上質な絨毯を引いた生徒会長室は、極めて静かだ。
 激務の間の午後のお茶を飲みつつ、思わず口元がゆるむのを自覚していた。
 爽やかな香りと甘い口当たりのお茶は、カリアン・ロスの大好物の一つだ。
 だが、それが無くてもツェルニを救うために画策してきたカリアンの、長年の努力が報われようとしているのだ。
 多少浮かれても誰からも文句は出ないはずだ。
 だが。

「なあ。カリアン」

 向かいの席で、同じようにお茶をしているごつい身体の友人が、心持ち表情を引きつらせつつこちらを見ている事に気が付く。

「なんだいヴァンゼ?」

 一年の時に知り合い、そのまま交友を続けている武芸長へと注意を向ける。
 カリアンのこの嬉しさを分かち合える人物は、ヴァンゼただ一人だと確信しつつ。

「怖いから笑わないでくれ」

 溜息と共にそう言われた。
 場所はカリアンの執務室。
 思惑など関係なく、無慈悲で無遠慮な一言と共に。
 誰にはばかる事もなく悪事の計画を練る事が出来るここに、ヴァンゼを招待したのは当然カリアンだ。

「酷いねヴァンゼ。私は君を心底から友だと思っているのだよ?」
「ああ。友である事に違いはないが、お前が笑うとろくな事が無いんだ。頼むから笑わないでくれ。特にニヤリとは」

 今ひとつカリアンとヴァンゼの間では、認識の相違があるらしい。
 これはあまり良い状況ではないので、それを改善するために行動する事にする。

「君も私の持つ情報を知ったのならば、思わず笑ってしまう事請け合いだよ?」

 今年行われる武芸大会。
 ここで負けたのならツェルニは滅んでしまう。
 それが分かっているからこそ、目の前のヴァンゼもカリアンも色々と努力を重ねてきたのだ。
 そして先日、待ちかねた最強の手札が手に入った。
 レイフォン・アルセイフ。
 かつて訪れた槍殻都市グレンダン。
 そこで十二名のみに与えられる天剣を、わずか十歳で与えられた天才児。
 その彼が不祥事を起こし都市を追放され、途中いろいろな経緯は有ったがツェルニにやって来たのだ。
 これはもう運命と言って良いのだとカリアンは思っている。
 本人には辛い出来事だったのは分かっているが、レイフォンの事情を考慮している余裕はツェルニとカリアンにはないのだ。

「今年の武芸科生徒に優秀な人材がいるのだよ」
「! ほう。誰だ?」

 ヴァンゼが勢い良く食いついてきた。
 まだ武芸科には転科していないが、それは時間の問題だと確信しているのだ。

「うむ。この人物だ」

 この一週間肌身離さず持ち歩いていたレイフォンの願書を取り出し、皺だらけになっていても尚光り輝くそれをヴァンゼに指し出す。
 その一連の動作を終了させ、ヴァンゼに渡ったところでふと思う。
 これではまるで、愛しい人からの恋文を大事にしている乙女のようではないかと。
 だが更に思う。
 実際問題としてあまり変わらないのだと。
 レイフォンが救世主となるのならば、いくらでも乙女チックな事をしようと、改めて心に誓う。
 カリアンがそんな事を考えている間にヴァンゼの視線が何度も上下する。

「・・・・・・・。一般教養科と書いてあるんだが?」

 隅々まで目を通し、更に見間違いではないかと何度も読み返したヴァンゼの台詞は、カリアンの予測の範囲から一歩も出なかった。
 計画通りという奴だ。

「問題無いさ。転科させる」

 グレンダン時代のレイフォンについては、すでに調べ尽くしてある。
 三ヶ月しか時間がなかったが、グレンダンでの有名人の調査には十分な時間だった。
 何故かヨルテムでの調査は難航を極め、何が有ったかは伝わっていないがそれでも説得するには十分だと判断している。

「お前。妹さんを転科させて憎まれているだろう? その内刺されるぞ?」
「かまわないよ。私の命でツェルニが助かるのならば、収支は著しい黒字だ」

 レイフォンの願書を発見したがために、フェリを武芸科に転科させたのだ。
 そして、ニーナに第十七小隊を設立させた。
 全ては、レイフォン・ヴォルフシュテイン・アルセイフと言う最強の手札を最大限有効に使うために。

「まあ、出来れば卒業まで待って欲しいとは思うのだがね」

 嘘偽らざる思いが、思わず口から出てしまった。
 だが、そのカリアンをしげしげと眺め、ヴァンゼが重い口を開いた。

「・・・・・・・・・・・・・。前から不思議だったのだが、どうやって妹さんを転科させた? 説得が通用するようには見えないのだが?」

 多くの人が疑問に思いつつも、聞く事が出来なかった質問をするヴァンゼを見てカリアンは確信した。
 これは非常に嬉しいことだ。
 なぜならば。

「その質問が出来ると言う事は、やはりヴァンゼは私の友だね」
「いや。それはどうでも良いから、どうやって説得したかを教えろ」

 折角カリアンが友情を再確認しているというのに、ヴァンゼの視線が非常に冷たく厳しい物になっているところを見ると、弱みを握って脅したとでも思っているのかも知れない。
 非常に不本意だ。

「やましい事はしていないよ。誠心誠意話し合っただけさ、一週間程ね」

 最後には根負けしたフェリが折れてくれたのだ。
 そして、その説得を続けた一時はカリアンにとって心の宝物となっている。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。法に触れるような事をしているわけではないのだな」
「法に触れるって、どんな事をしていると思ったんだね?」

 あまりにも真剣に見つめられたので、その瞳の圧力に屈して、思わずいらない質問をしてしまった。

「いやな。妹さんを手籠めにしたとか言う噂が、まことしやかに流れていてな」
「・・・・・・・・・・・・・・・・。私をなんだと思っているのだね?」

 今度はカリアンが沈黙でヴァンゼを威圧する番だった。
 だが、ヴァンゼは全く怯むことをせずに、カリアンの質問に答えた。

「愛した物が死に瀕している時に、あらゆる手段を講じようとするのは当然の事だ。そんな事を何時も言っているだろう?」
「・・。いくらあらゆる手段と言っても、限度という物があるだろうに?」

 いくら何でもそんな鬼畜なまねをしたのでは、武芸大会以前に色々な問題が出てしまう。
 刺される事はかまわないのだが、政治生命が絶たれる事は避けねばならない。
 その観点からも、腹黒い事は出来ても鬼畜なまねは出来ないのだ。

「ならば、武芸科は定員一杯まで採用しているのに、どうして転科させられるか答えて貰おうか?」
「ああ。そう言う事か」

 いきなりフェリの事に話が飛んでしまったので訝しんではいたのだが、ヴァンゼにとってはそれなりに根拠のある疑問だったようだ。
 その心配が無駄だと言う事は、ヴァンゼも理解しているのかも知れないが、直接カリアンから聞きたいのかも知れないと思い軽い笑みと共に言ってみる。

「毎年入学式前後にもめ事を起こして退学になる武芸者がいるだろう」
「ああ。あれは腹立たしいが、今年もそれがあると?」
「無い方がおかしいよ」

 記録をさかのぼれば、この五十年間毎年のように起こっている。
 無かったのはただの一回のみ。
 確率的には、二パーセント。
 今年がその二パーセントだとしたのならば、カリアンに運がなかったと諦める事も出来るが、確率を更に下げる手立ては講じてある。
 具体的には、敵対関係にある都市の武芸者を入学式会場で近い列に配置するとか。

「すでに手は打ってある。全てはシナリオ通りだ」

 再び口元が歪むのを実感した。
 快心の笑みという奴だ。

「だから、頼むから笑うな。それから、他の生徒に被害が出るような事は避けろ」
「分かっているよ。私を誰だと思っているのだね?」

 考え得る全ての事態を予測し、それに対処できるように手配は全て終わっている。
 だからこそカリアンは笑うのだ。
 ニヤリと。


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