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No.14064の一覧
[0] 完結 復活の時(鋼殻のレギオスif)[粒子案](2016/01/21 09:22)
[1] 第一話 一頁目[粒子案](2013/05/08 21:06)
[2] 第一話 二頁目[粒子案](2013/05/08 21:06)
[3] 第一話 三頁目[粒子案](2013/05/08 21:07)
[4] 第一話 四頁目[粒子案](2013/05/08 21:07)
[5] 第一話 五頁目[粒子案](2013/05/08 21:07)
[6] 第一話 六頁目[粒子案](2013/05/08 21:08)
[7] 第一話 七頁目[粒子案](2013/05/08 21:08)
[8] 第一話 八頁目[粒子案](2013/05/08 21:08)
[9] 第一話 九頁目[粒子案](2013/05/08 21:09)
[10] 第一話 十頁目[粒子案](2013/05/08 21:09)
[11] 第一話 十一頁目[粒子案](2013/05/08 21:10)
[12] 第一話 十二頁目[粒子案](2013/05/08 21:10)
[13] 閑話 一頁目[粒子案](2013/05/09 22:03)
[14] 閑話 二頁目[粒子案](2013/05/09 22:03)
[15] 閑話 三頁目[粒子案](2013/05/09 22:04)
[16] 閑話 四頁目[粒子案](2013/05/09 22:04)
[17] 第二話 一頁目[粒子案](2013/05/10 20:48)
[18] 第二話 二頁目[粒子案](2013/05/10 20:48)
[19] 第二話 三頁目[粒子案](2013/05/10 20:49)
[24] 第二話 四頁目[粒子案](2013/05/10 20:49)
[34] 第二話 五頁目[粒子案](2013/05/10 20:49)
[35] 第二話 六頁目[粒子案](2013/05/10 20:50)
[36] 第二話 七頁目[粒子案](2013/05/10 20:50)
[38] 第二話 八頁目[粒子案](2013/05/10 20:50)
[39] 第二話 九頁目[粒子案](2013/05/10 20:51)
[40] 第二話 十頁目[粒子案](2013/05/10 20:51)
[41] 第二話 十一頁目[粒子案](2013/05/10 20:51)
[42] 閑話 赤毛猫の一日[粒子案](2013/05/11 22:13)
[43] 第三話 一頁目[粒子案](2013/05/11 22:13)
[44] 第三話 二頁目[粒子案](2013/05/11 22:13)
[45] 第三話 三頁目[粒子案](2013/05/11 22:14)
[46] 第三話 四頁目[粒子案](2013/05/11 22:14)
[47] 第三話 五頁目[粒子案](2013/05/11 22:14)
[48] 第三話 六頁目[粒子案](2013/05/11 22:15)
[49] 第三話 七頁目[粒子案](2013/05/11 22:15)
[50] 第三話 八頁目[粒子案](2013/05/11 22:15)
[51] 第三話 九頁目[粒子案](2013/05/11 22:16)
[52] 第三話 十頁目[粒子案](2013/05/11 22:16)
[53] 第三話 十一頁目[粒子案](2013/05/11 22:16)
[54] 第三話 蛇足[粒子案](2013/05/11 22:17)
[55] 閑話 乙女と野獣[粒子案](2013/05/11 22:17)
[56] 第四話 一頁目[粒子案](2013/05/12 21:10)
[57] 第四話 二頁目[粒子案](2013/05/12 21:11)
[58] 第四話 三頁目[粒子案](2013/05/12 21:11)
[59] 第四話 四頁目[粒子案](2013/05/12 21:11)
[60] 第四話 五頁目[粒子案](2013/05/12 21:12)
[61] 第四話 六頁目[粒子案](2013/05/12 21:12)
[62] 第四話 七頁目[粒子案](2013/05/12 21:12)
[63] 第四話 八頁目[粒子案](2013/05/12 21:13)
[64] 第四話 九頁目[粒子案](2013/05/12 21:13)
[65] 第四話 十頁目[粒子案](2013/05/12 21:13)
[66] 第四話 十一頁目[粒子案](2013/05/12 21:14)
[67] 閑話 ツェルニに死す![粒子案](2013/05/13 20:47)
[68] 閑話 ニーナの勉強会その一[粒子案](2013/05/13 20:48)
[69] 閑話 ニーナの勉強会その二[粒子案](2013/05/13 20:48)
[70] 戦慄! 女子寮の朝[粒子案](2013/05/13 20:48)
[71] 第五話 一頁目[粒子案](2013/05/14 22:07)
[72] 第五話 二頁目[粒子案](2013/05/14 22:07)
[73] 第五話 三頁目[粒子案](2013/05/14 22:07)
[74] 第五話 四頁目[粒子案](2013/05/14 22:08)
[75] 第五話 五頁目[粒子案](2013/05/14 22:08)
[76] 第五話 六頁目[粒子案](2013/05/14 22:08)
[77] 第五話 七頁目[粒子案](2013/05/14 22:09)
[78] 第五話 八頁目[粒子案](2013/05/14 22:09)
[79] 第五話 九頁目[粒子案](2013/05/14 22:09)
[80] 閑話 第五話の後始末[粒子案](2013/05/14 22:10)
[81] 閑話 第一次食料大戦[粒子案](2013/05/15 22:17)
[82] 第六話 一頁目[粒子案](2013/05/15 22:18)
[83] 第六話 二頁目[粒子案](2013/05/15 22:18)
[84] 第六話 三頁目[粒子案](2013/05/15 22:19)
[85] 閑話 第二次食料大戦[粒子案](2013/05/15 22:19)
[86] 第六話 四頁目[粒子案](2013/05/15 22:19)
[87] 第六話 五頁目[粒子案](2013/05/15 22:20)
[88] 第六話 六頁目[粒子案](2013/05/15 22:20)
[89] 大惨事食べ物大戦[粒子案](2013/05/15 22:21)
[90] 閑話 サイハーデンの戦士達[粒子案](2013/05/16 20:13)
[91] 第七話 一頁目[粒子案](2013/05/16 20:14)
[92] 第七話 二頁目[粒子案](2013/05/16 20:14)
[93] 第七話 三頁目[粒子案](2013/05/16 20:14)
[94] 第七話 四頁目[粒子案](2013/05/16 20:15)
[95] 第七話 五頁目[粒子案](2013/05/16 20:15)
[96] 第八話 一頁目[粒子案](2013/05/17 22:06)
[97] 第八話 二頁目 [粒子案](2013/05/17 22:07)
[98] 第八話 三頁目[粒子案](2013/05/17 22:07)
[99] 第八話 四頁目[粒子案](2013/05/17 22:07)
[100] 第八話 五頁目[粒子案](2013/05/17 22:07)
[101] 第八話 六頁目[粒子案](2013/05/17 22:08)
[102] 第八話 七頁目[粒子案](2013/05/17 22:08)
[103] 第九話 一頁目[粒子案](2013/08/01 21:49)
[104] 第九話 二頁目[粒子案](2013/08/07 19:43)
[105] 第九話 三頁目[粒子案](2013/08/14 21:09)
[106] 第九話 四頁目[粒子案](2013/08/28 19:06)
[107] 第九話 五頁目[粒子案](2013/09/04 20:10)
[108] 第九話 六頁目[粒子案](2013/09/11 18:37)
[109] 第九話 七頁目[粒子案](2013/09/11 18:38)
[110] 閑話 槍衾がやってくる 前編[粒子案](2013/10/02 21:14)
[111] 閑話 槍衾がやってくる 後編[粒子案](2013/10/02 21:15)
[112] 閑話 ヴァーサス[粒子案](2014/02/05 16:12)
[113] 閑話 最悪の日[粒子案](2014/02/05 16:13)
[114] 第十話 一頁目[粒子案](2014/04/30 13:59)
[115] 第十話 二頁目[粒子案](2014/05/07 21:52)
[116] 第十話 三頁目[粒子案](2014/05/14 12:50)
[117] 閑話 ヴァーサスその2[粒子案](2014/05/28 22:30)
[118] 閑話 渚のエトセトラ[粒子案](2014/07/23 13:53)
[119] 第十話 四頁目[粒子案](2014/12/03 13:57)
[120] 第十話 五頁目[粒子案](2014/12/10 16:40)
[121] 第十話 六頁目[粒子案](2014/12/17 14:04)
[122] 第十話 七頁目[粒子案](2014/12/24 14:04)
[123] 第十話 八頁目[粒子案](2014/12/31 15:37)
[124] 第十話 九頁目[粒子案](2015/01/07 13:14)
[125] 第十話 十頁目[粒子案](2015/01/14 15:44)
[126] 第十話 十一頁目[粒子案](2015/01/21 18:13)
[127] 第十一話 一頁目[粒子案](2015/12/23 14:54)
[128] 第十一話 二頁目[粒子案](2015/12/23 14:54)
[129] 第十一話 三頁目[粒子案](2015/12/23 14:55)
[130] 第十一話 四頁目[粒子案](2015/12/23 14:55)
[131] 第十一話 五頁目[粒子案](2015/12/23 14:55)
[132] 第十一話 六頁目[粒子案](2015/12/23 14:56)
[133] エピローグなど[粒子案](2015/12/30 21:36)
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[14064] 閑話 ヴァーサスその2
Name: 粒子案◆a2a463f2 ID:1d4afd70 前を表示する / 次を表示する
Date: 2014/05/28 22:30


 全ての発端はなんだったのだろうかと考える。
 それは、ある意味レイフォン・アルセイフという個人に由来する物だったのかも知れないし、もしかしたらハイア・ライアという個人に由来する物だったのかも知れない。
 はっきりしたことは言えないが、何か発端と呼べる物があったはずだと言う事は確かだろう。
 そして何よりも、ただ一つ言えることがあるとすれば、全てが偶然であり必然であり、そして成り行きだったのだと言う事だ。
 
 
 
 
 
 このところのレイフォンの朝はたいがいにして早い。
 武芸者としてあるまじき事なのではあるのだが、寝起きが悪いレイフォンとは言え少々の事情があれば早く目が覚めることだってあるのだ。
 いや。ここ何ヶ月かは自分の部屋ではろくに眠れていないと言えるだろう。
 そう。本が見せる悪夢によって安らかな眠りの園から叩き出されるという事情があるためにレイフォンの朝はかなり早い。

「さ、さいあくだ」

 マイアス戦の前にウォリアスが置いていった本は、その殆どが読まれるか電子データ化されレイフォンの部屋から姿を消していた。それは間違いない。
 だが、現実問題として視界を埋め尽くす程の勢いで積み上げられているのは、やはりウォリアスが置いていった本の数々でしかない。
 種明かしは簡単である。
 マイアスとアルフィスに勝利したことにより、ウォリアスの受け取る報酬がうなぎ登りに上昇したために、消費される以上の速度でレイフォンの部屋へと本が運び込まれているのだ。
 そう。悪夢はまだ続いているし、そしてこれから先も終わることを知らないだろう。
 詰まるところレイフォンに安息の日々は訪れないのだ。

「全くその通りだと僕も思うよ」
「ですよねぇ」

 同じく脳と剄脈の区別がつかない元同僚の声に返す。
 最終的にサヴァリスと同居しているという事実が、悪夢を更に深くしていることは認識しているのだが、他の場所で眠らせると恐ろしいことになりそうなので致し方がないのだ。主にナルキの命的な意味で。
 アルフィスとの戦いで何か目覚めたのか、サヴァリスは時々ウォリアスの報酬を読んでいるようだが、その内容をきちんと理解しているかどうかは全く不明だ。と言うか、理解していないと確信している。
 そんな悪夢の巣窟となり果てている自室から這い出すと、ツェルニはまだ暗かった。日が昇っていないのだ。

「しかし。ツェルニは恐ろしい都市だね」
「残念なことに同意しますよ」

 元と現役の天剣授受者を完膚無きまでに敗者の位置へと追いやる恐るべき乗り物や、何か間違っているようにしか思えない事件の数々に連続で見舞われるツェルニは、ある意味グレンダンよりも遙かに恐ろしい都市であると断言できる。
 特に学力やテストと言った意味に置いて、ツェルニは恐るべき都市である。
 それに比べたら、廃貴族の影響を受けたと思われる暴走など可愛い物だった。剄脈さえ使っていれば何とかなるという意味に置いてとてもレイフォン的には楽な事態だったと今頃になって思う。

「それじゃあ、取り敢えずやろうか」
「・・・。やりますか」

 この会話をするのにも慣れたはずだと言うのに、未だに一瞬程何か突発事態が起こってくれないかと願ってしまうレイフォンが確かにいる。
 そう。これから始まるのは技量が落ちないようにするための緩い殺し合いだ。
 一瞬の間に外縁部まで移動し、そして剄を流し込んで錬金鋼を復元する。
 一応、双方が安全設定のかかった錬金鋼を使っているとは言え、天剣授受者の攻撃に安全な物など存在しないという事実の前には、何らの慰めにもならない。
 そして、お互いの間合いの外側からゆっくりと構える。
 まだ夜も明けきらない時間に外縁部でサヴァリスと殺し合おうという事態を憂いていたのは、ほんの一瞬前までの話だ。
 レイフォンを殺すことが出来る武芸者が、必殺の間合いの一歩外側で構えている状況で他の何かを考えている余裕など有りはしないのだ。
 この緩い殺し合いの常として、サヴァリスが先に仕掛けてくる。
 空気を揺らすことさえない加速と共に軽い左の一撃がレイフォンの右肩付近を狙って放たれる。
 それを半歩だけ横にずれることで回避したレイフォンは、身体を沈めてサヴァリスの右足による横薙ぎの一撃を更に回避する。
 一瞬だけ背中が見えた隙に切り上げの一撃を放つが、当然の様に微かに前進して回避された。
 ルールは簡単だ。
 衝剄や化錬剄は使わない。
 活剄は大いに使ってかまわない。
 ご近所迷惑なので騒音を立てる攻撃や防御は行わない。
 以上のルールを踏まえたために、お互いに拳打や斬撃の応酬となるのだが、サヴァリス相手に楽に勝てるはずなど無いことは十分以上に理解している。
 それどころか、今まで一度として決着がついた試しさえない。
 ナルキを交えての殺し合いの時とは、明らかに意味合いが違うのだ。
 つまり、どちらも決定打に欠ける状況であり、続けることこそに意味があると言える。
 だが、今朝に限って突如として変化が訪れた。

「!!」
「おや?」

 レイフォンの斬撃がサヴァリスの頸動脈を薙ぎ払おうと振るわれる一瞬前、サヴァリスの回し蹴りがレイフォンの左脇腹を捉えようとする一瞬前、それは突然にやってきた。
 常人には捉えられない程微かな空気の動きだが、お互い以外は見えていないという程切羽詰まった状況ではない二人には捉えることが出来た。
 一般人ではあり得ない速度と高度で、空中を移動する生物。
 武芸者が活剄を使えば出来るだろうが、至近距離から視線を合わせて、お互いが剄脈の気配を感じていないことを確認した。
 つまりは、武芸者ではない何かが高速で移動していると言う事。
 となれば考えられるのは、養殖科が生み出した謎生物の暗躍。
 別段放って置いても良かったのだが、サヴァリスとの死合を続けるよりは生産的であると判断したレイフォンが刀を引くと、少々残念そうにではあったが相手も活剄を納めてくれた。

「少し気になりますから追いかけてみます」
「仕方が無いね。注意がそちらに行ってしまっては楽しめないから僕も付き合うよ」

 少々不安な展開だが、サヴァリスも一緒に謎の高速移動する生物を追うこととなった。
 そして、実はもう一つ不安な現実と言う物がある。
 それは、こちらに向かってかなりの高速で移動してくる武芸者が居ることだ。ツェルニの小隊員だったとしたらかなり名の売れた人物だろう事が分かる程の速度をもった武芸者だ。
 だが、やって来るのは間違いなくツェルニの武芸者ではない。
 やって来るのはレイフォンにとっても馴染みの深い気配である。
 だが、そのお馴染みさんが合流するまでにはもう暫く時間がかかるだろう。純粋に距離がまだかなりあるからだ。
 だからレイフォンは目的である謎の生物へと注意を向ける。
 注意を向けると言っても、当然、普通の武芸者に出せる速度でしか移動していいない謎の生命体に追いつくのに二秒とかからなかった。
 ある程度距離を置いて、それがなんであるかを観察する。
 まだ日が昇らない闇の中での出来事だとは言え、活剄を使えば昼間と遜色のない視界を確保することが出来るのだが、それでも少し捉えるのに時間がかかった。
 何よりも大きな原因として、その生き物が小さかったと言う事が上げられるだろう。
 そしてすばしっこかった。
 だが、一度捉えてしまえば追い続けることは造作もない。
 徐々に距離を縮めつつ、その生物が何かを抱えていることに気が付いた。

「!!」

 その何かに気を取られた一瞬、謎の生き物の手が動き、レイフォンに向かって何かを放り投げてきた。
 お互いに高速移動中であり、尚かつレイフォンが油断していたために、その何かは見事にレイフォンの顔面にヒット。
 だが、その投げつけられた物体はとても軽く柔らかく、そして何故か不明だったが、とても良い匂いがした。

(メイシェンの匂いじゃないな)

 咄嗟にその考えが浮かぶ程に良い匂いだったと言っておこう。
 だが、視界が塞がれてしまったのは事実だったので、周りの気配を探りつつ慎重に着地をする。
 と、ここで後から接近してきたお馴染みの気配が追いついてきた。
 元サリンバン教導傭兵団の団長であり、同じサイハーデンの継承者であるハイアだ。
 かなり急いできたようだが、全く呼吸を乱していないのは当然のこととして、何故か不明だが、サヴァリスと先に行ってしまった謎の生物ではなくレイフォンのいる場所へと着地をする。
 更に不思議な事実として、ハイアの剄の密度がどんどんと上がり、まるでこれから全力の殺し合いをするような気配へと変わって行く。
 この気配を放って置く程サヴァリスは追跡劇に夢中になっていなかったのか、レイフォンから少し離れた場所へと着地。
 興味津々とレイフォンとハイアを見比べて、そしてとても楽しそうにしているのがその呼吸音だけでも分かる。
 ここに来てやっとのこと、レイフォンは自分の視界を塞いでいる柔らかな何かに手をかけ、そして硬直する。
 良く知っている感触というわけではない。
 だが、全く知らないわけでもない。
 適度な固さを持つカップを備えたそれを人々はこう呼ぶ。
 ブラジャーと。

「え、えっっっと?」

 ゆっくりと手を動かして頭の上に乗り視界を塞いでいたブラジャーをどかす。
 あえて言わせて頂ければ、メイシェンのと同じくらいに大きい。

「ヴォルフシュテイン」
「な、何かなハイア?」

 レイフォンが手にブラジャーを持っていることに何か思うところがあるのか、今まで殺し合うために高められていた剄の密度が、限界を超えてしまったのではないかと思う程に圧縮されて行くのを感じる。
 むしろゆっくりとした動作で剣帯から鋼鉄錬金鋼を抜き取り、そして復元する。
 復元した刀の切っ先は、当然のことレイフォンに向けられ、そして技が放たれる。
 外力衝剄の化錬変化 炎竜巻。
 サイハーデン刀争術、逆捻子の容量で、刀に纏わり付かせた、向きの違う衝剄を化錬変化させ、炎の竜巻として放つ。
 その威力は洒落で済まされる範囲を大きく超えていたために、思わず全力で横へと飛んで炎の一撃を回避する。
 全く意味不明だが、黙って殺されるわけにはいかないのも事実なので、レイフォンも刀を復元して構える。
 すぐに二激目が来ると思っていたのだが、ハイアの視線は何故かレイフォンを捉えてはいない。
 いや。先ほどまでレイフォンがいた辺りに向けられ、こちらを気にする素振りさえない。
 吊られてレイフォンもハイアの見ている辺りを注意深く見る。

「・・・あ」

 そこには、何かが燃えた後のような黒い固まりが落ちているだけだった。
 完全に燃え尽きてしまっている布の部分は仕方が無いとしても、ワイヤーやホックといった金属部分が黒く変色して無残な姿を曝している。
 そう。ハイアの放った技のせいでつい何秒か前まで存在していたブラジャーは、既にこの世に存在を許されなくなっていたのだ。

「ヴォルフシュテイン」
「ぼ、僕のせいじゃないぞ!! 焼き払ったのはお前だからな!!」

 完全に責任逃れであることは承知している。
 だが、逃げるのに夢中で誰の物とも知れない下着にかまっていられなくなっていたのも事実だ。
 いや。誰の物だったかは何となく分かるような気がする。
 ハイアが、誰か分からない女性のブラジャーのためにここまでの闘志を燃やすはずはない。
 サイズ的にも十分に合致する人物を、レイフォンも良く知っている。
 最近は、メイシェンと一緒にお菓子や料理を作ったりしている。
 つまりミュンファ。

「貴様を生かしておいたのがオレッチの間違いさぁ」
「お、落ち着けハイア。少し落ち着いて話そう」
「下着泥棒ごときと話す舌は持ち合わせていないのさぁ」
「まてぃ」

 とても心外なことを言われたが、反論することは出来なかった。
 なぜならば、全力で手加減抜きのハイアの一撃がレイフォンに降り注いだからだ。
 その一撃の凄まじさは、何時ぞやの試合の比ではなかった。
 精神的な状態が悪すぎたために、危うく唐竹割にされそうになったが何とか防御に成功する。
 だが、それだけで終わるはずはない。
 防御したとは言え、精神状態が悪すぎたために一歩だけ後退してしまった。
 それはつまり、ハイアの刀が地面近くまで下がったと言う事。
 峰打ちの要領で壮絶な切り上げが襲いかかる。

「っく!」

 その一撃を何とか横に弾くことで退けたが、レイフォンのその力さえ利用した身体を回転させた横薙ぎの一撃が襲いかかる。
 腕力と遠心力とレイフォンの弾く力を乗せたその一撃は、更に化錬剄の炎まで纏っているという凶暴極まりない物だったが、回転する間の一瞬の時間を与えてもくれた。
 その一瞬を使って精神と身体と、何よりも剄脈の状況を整える。
 ハイアの横薙ぎの一撃の威力と、レイフォン自身の脚力を利用して十メルトル程の距離を開ける。
 服の一部が焦げてしまっているが気にしている余裕など無い。

「金髪眼鏡で巨乳な幼馴染みフェチのハイアちゃん」
「なにさぁ? 巨乳下着フェチなコソ泥のレイフォン君」

 さっきのお返しとばかりに最も嫌がるはずの呼び方をしたのだが、反撃として返ってきたのは更に心外な呼ばれ方だった。
 だが、これではっきりしたこともある。
 ハイアは、ミュンファの下着を盗んだのがレイフォンだと確信している、と。
 思わず心が折れそうになったが、それを何とか立て直す。
 そして、出来うる限り視線も注意もハイアから外さないようにして観戦を決め込んでいる人物を確認する。
 さっきから黙って事の成り行きを見守っている現役の天剣授受者が少しだけ気になったのだが、正直見なければ良かったとそう思う。

「指咥えて見てないで下さいよ」

 そう。観戦を決め込んでいたはずのサヴァリスは、何故かとても羨ましそうな表情で右手の人差し指を咥えていたのだ。
 いや。むしろしゃぶっている。
 子供じゃあるまいしと突っ込みたいところだが、そんな余裕はレイフォンには無い。

「こうしているのがセオリーだと聞いたのだけれど、実にこれは僕の心を表していると思わないかい?」
「思いませんから」

 思わず突っ込んだ瞬間、ハイアの刺突が喉元に迫る。
 仰け反るついでに切り上げることで第二激目が放たれるのを防ぐ。
 だが、やって来たのは蹴りだった。
 体制が崩れた瞬間を見逃さない攻撃は十分に脅威だった。
 レイフォン以外だったら。
 活剄衝剄混合変化 千手閃。
 ハイアの蹴りを二本の腕で受け止めつつ、四本の腕でレイフォン自身の身体を支えつつ、本来の腕で刀を横薙ぎに払い軸足への攻撃を放つ。

「っち!!」

 いくら安全設定が施されているとは言え、武芸者が本気で振るった一撃を食らえばただでは済まないことはハイアも十分に理解しているので、慌てて後方に飛んで距離を稼ぐ。
 追撃を放ちたいところだったが、レイフォンの方も体制を整えなければ満足な技を放てないのも事実だ。
 四本の腕で身体を持ち上げ、軽い跳躍で体制を整える。

「金髪眼鏡で巨乳な幼馴染みフェチにしてはなかなかやるじゃないかハイアちゃん」
「巨乳下着フェチなコソ泥にしてはずいぶんと粘るさレイフォン君」

 お互いに手詰まりに陥る。
 レイフォンが持っているのが天剣だったのならば、あるいは力押しで何とか勝てたのかも知れないが、生憎と全力を出せる状況ではない。
 これで、技量に圧倒的な違いがあるというのだったらまた話は違うのだが、残念なことに剄量以外は天剣授受者として何ら欠点がないハイア相手には愚痴でしかない。
 そして何よりも、お互いが平常心からほど遠いところで刀を交えているとあっては、決定打を送り込めるはずがないのだ。
 最終的には、時間をかけて相手を消耗させることを主眼に置いた長期戦と言う事になるのだが、実はこれにも問題が有るのだ。
 そう。レイフォンは授業に出なければならない。
 ハイアの方はツェルニの学生というわけではないのでこの点とても有利だ。
 なので、相手の精神状態を出来うる限り悪い方向へと持って行くこととする。
 一気に距離を詰めつつ右八相に構えた刀を振り下ろしつつ精神攻撃も放つ。

「やーいやーい。巨乳幼馴染みフェチィ」
「やーいやーい。巨乳下着フェチィ」

 同じ事を考えているハイアとの低レベルなののしり合いに陥ってしまった。
 レイフォンの斬撃を受け流したハイアがお返しとばかりに、右下段からの切り上げが迫る。
 それに対応しつつも、更なる精神攻撃を放つ。

「お前なんか幼馴染みの巨乳で死にかければ良いんだ」
「お前なんか巨乳の下着で天国に行けば良いのさ」

 お互いがお互いの精神力を削ろうとあらん限りの方法で攻撃を仕掛けるが、残念なことに慣れていないために殆ど効果がない。
 いや。自分のやっていることに疑問を持ち始めているという意味では、明らかに自爆技である。
 だが、ここではレイフォンが僅かに有利である。
 そう。レイフォンは下着泥棒ではないのだ。
 断じて下着泥棒ではないのだ。
 大事なことなので二度言うのだ。
 だが、当然のことのの知り合いの最中にも斬撃と打撃の応酬は続いている。
 ナルキだったのならば、一秒間に五回以上は死ねるような攻撃を防御したり受け流したりしつつ同程度の攻撃を放ち、やはり防御されたり受け流されたりすると言う、ある意味本格的な殺し合いに突入しているのは理解しているが、それを止める方法をレイフォンは知らない。
 切り下ろす。切り上げる。薙ぎ払う。突き込む。柄頭での打撃。合間合間に拳や足での攻撃、そして頭突きさえ織り交ぜつつハイアを罵り続ける。

「巨乳幼馴染みが恋しくなっただろうハイアちゃん!!」
「巨乳下着で変態行為をしたくなっただろうレイフォン君!!」

 最終的に、お互いがお互いの精神力と体力と剄を削るという当初の方針から離れることが出来ず、事態は長期化への道を一直線に突き進む。
 このままお互いがボロボロになるまで殺し合わなければならないのだと、レイフォンがそう覚悟した瞬間だった。

『やはり大きい方がよいのですね』
「は」「い」

 突如として良く知っている念威繰者の声が聞こえた瞬間、下から突き上げる衝撃を認識したことによりレイフォンとハイアの戦いは強制的に終了させられたのだった。
 それが、全力を振り絞ったフェリの、念威爆雷の攻撃だと言うことを知ったのは病院のベッドの上でのことだった。
 
 
 
 
 
 ちなみに、養殖科が開発したが放り出してしまい野生化した動物が、大きなカップをもったブラジャーで子守をしていたという事実が判明するのは、レイフォンとハイアが退院した直後のことだった。
 周り中から浴びせられる哀れみの視線がとても痛かった事を含めて、とても納得の行かない騒動はこうして終了するのだった。
 
 
 
 
 
  おまけ。
 
 
 
 
 
 謎の知識の固まりがたむろしている自分の部屋に戻ったレイフォンだったが、当然のこと安眠など出来るはずはなかった。
 悪夢の元凶たるハードカバーの本が山積みされているのでは、安心して眠れないのだ。
 そして当然の様に、真夜中と呼べる時間に目覚めた。
 だがそれは知識の固まりである本によって見せられている悪夢が原因ではない。
 人の動く気配を感じたのだ。
 そう。暫く前まで二人部屋を一人で使えると喜んでいたレイフォンだったが、今は同居人がいるのだ。
 ツェルニで唯一レイフォンと互角に戦えるはずの、現役の天剣授受者サヴァリスである。

「どこへ行くんですか?」
「うん? 起こしてしまったね」

 普通の人間だったら気が付かないだろうが、残念なことに、こんな事もあろうかと緊張していたレイフォンはきちんと反応してしまったのだ。
 そう。ハイアとのあの不毛な戦いの跡、部屋に帰ってきた初日だというのに、サヴァリスのことが気になって眠りが浅くなっていたのだ。
 つくづく不幸である。

「で、どこへ行って何をしようとしていたんですか?」

 窓を開けて、今にも飛び出しそうなサヴァリスに向かって剣呑な声と殺意を向ける。
 当然、そんな事で動揺するような生き物ではないが、レイフォン的にやらないと気が済まなかったのだ。
 そして、ある程度覚悟していたこととは言え、答えはレイフォンのやる気を削ぐのに十分すぎる物だった。

「トリンデン君の下着を盗みに」
「・・・。止めて下さいとお願いしたら止めてくれますか?」
「無理だね」

 平然と答えているサヴァリスはこう考えたのだ。
 メイシェンの下着を盗めばレイフォンが殺しに来るに違いないと。
 ミュンファの下着をレイフォンが盗んだと勘違いしたハイアが全力で襲いかかってきたように、サヴァリスを本気で殺しに来てくれるに違いないと。
 レイフォンから挑んできたのだから、返り討ちにしてしまっても、結果的に殺してしまってもサヴァリスは悪くない。
 そう、アルシェイラに弁明するつもりなのだ。
 目的はあくまでもレイフォンと殺し合うこと。
 そのために手段を選ぶという選択肢はサヴァリスの中にないのだ。
 そこまで分かっているからこそ、レイフォンのやる気は底なし沼に嵌り込んだかのようにどんどんと沈み込んでいってしまうのだ。

「おや? 何故やる気を無くしているんだい? 僕を止めるために全力で殺しに来ると思ったんだけれど」
「僕がそう考えると貴男が思っているから、僕は何もしないことにしたんですよ。襲いかかったらサヴァリスさんの思うつぼでしょう」
「うぅぅん? それはつまらないなぁ」

 レイフォンの行動が思っていたのと違うためにサヴァリスは取り敢えず今日の窃盗行為を諦めたようだ。
 渋々とベッドに戻りつつ、しかしその瞳は諦めると言う事を知らないようにキラキラと耀いていた。
 次はどんな手で来るだろうかという不安と共に、レイフォンは再び浅い眠りへと落ちるのだった。
 不幸はまだまだ続く。
 
 
 
 
 
  後書きに代えて。
 てな訳で下着泥棒事件をお送りしました。
 今回、原作と違う展開にしようと決めつけて書き始めてみたところ、何故か浮かんできたのがレイフォンとハイアが低レベルなののしり合いをしつつ殺し合うという物でした。
 最終的にフェリの念威爆雷で片を付けましたが、構想段階ではフォーメッドが事件を解決するまで二人で延々と殺し合うというのもありました。
 どちらの方が良かったのか未だに分かりませんが、取り敢えずフェリの出番が少ないのでこちらを完成させました。
 そうそう。ミュンファの下着を追いかけてハイアがレイフォンに襲いかかるという事態に細かい設定はありません。
 何時の間にかできてしまっているとか言う話ではありません。
 関係は進んでいますから、ある意味独占欲がハイアの暴走の原因だと、そうご理解下さい。
 さて最も大きな問題は、最近サヴァリスさんがどんどん変な方向へと突き進んでいることです。
 目的はレイフォンと殺し合うこと。
 そのためならば変態の汚名さえ喜んで着るという徹底ぶり。
 この先彼はどうなってしまうのでしょうね?
 
 
 
  それと、これは完全に余談ですが。
 ゼンマイ式の懐中時計など買ってしまいました。
 一週間で三十秒くらい進むだけというかなり凄い奴です。
 お値段四万円。
 一日一回はゼンマイを巻かなければならないですが、手間をかけるのが嫌いでない方は是非買ってみて下さい。
 貿易赤字が進んでいる昨今。できれば日本製の奴を。
 以上、余談でした。


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