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No.14064の一覧
[0] 完結 復活の時(鋼殻のレギオスif)[粒子案](2016/01/21 09:22)
[1] 第一話 一頁目[粒子案](2013/05/08 21:06)
[2] 第一話 二頁目[粒子案](2013/05/08 21:06)
[3] 第一話 三頁目[粒子案](2013/05/08 21:07)
[4] 第一話 四頁目[粒子案](2013/05/08 21:07)
[5] 第一話 五頁目[粒子案](2013/05/08 21:07)
[6] 第一話 六頁目[粒子案](2013/05/08 21:08)
[7] 第一話 七頁目[粒子案](2013/05/08 21:08)
[8] 第一話 八頁目[粒子案](2013/05/08 21:08)
[9] 第一話 九頁目[粒子案](2013/05/08 21:09)
[10] 第一話 十頁目[粒子案](2013/05/08 21:09)
[11] 第一話 十一頁目[粒子案](2013/05/08 21:10)
[12] 第一話 十二頁目[粒子案](2013/05/08 21:10)
[13] 閑話 一頁目[粒子案](2013/05/09 22:03)
[14] 閑話 二頁目[粒子案](2013/05/09 22:03)
[15] 閑話 三頁目[粒子案](2013/05/09 22:04)
[16] 閑話 四頁目[粒子案](2013/05/09 22:04)
[17] 第二話 一頁目[粒子案](2013/05/10 20:48)
[18] 第二話 二頁目[粒子案](2013/05/10 20:48)
[19] 第二話 三頁目[粒子案](2013/05/10 20:49)
[24] 第二話 四頁目[粒子案](2013/05/10 20:49)
[34] 第二話 五頁目[粒子案](2013/05/10 20:49)
[35] 第二話 六頁目[粒子案](2013/05/10 20:50)
[36] 第二話 七頁目[粒子案](2013/05/10 20:50)
[38] 第二話 八頁目[粒子案](2013/05/10 20:50)
[39] 第二話 九頁目[粒子案](2013/05/10 20:51)
[40] 第二話 十頁目[粒子案](2013/05/10 20:51)
[41] 第二話 十一頁目[粒子案](2013/05/10 20:51)
[42] 閑話 赤毛猫の一日[粒子案](2013/05/11 22:13)
[43] 第三話 一頁目[粒子案](2013/05/11 22:13)
[44] 第三話 二頁目[粒子案](2013/05/11 22:13)
[45] 第三話 三頁目[粒子案](2013/05/11 22:14)
[46] 第三話 四頁目[粒子案](2013/05/11 22:14)
[47] 第三話 五頁目[粒子案](2013/05/11 22:14)
[48] 第三話 六頁目[粒子案](2013/05/11 22:15)
[49] 第三話 七頁目[粒子案](2013/05/11 22:15)
[50] 第三話 八頁目[粒子案](2013/05/11 22:15)
[51] 第三話 九頁目[粒子案](2013/05/11 22:16)
[52] 第三話 十頁目[粒子案](2013/05/11 22:16)
[53] 第三話 十一頁目[粒子案](2013/05/11 22:16)
[54] 第三話 蛇足[粒子案](2013/05/11 22:17)
[55] 閑話 乙女と野獣[粒子案](2013/05/11 22:17)
[56] 第四話 一頁目[粒子案](2013/05/12 21:10)
[57] 第四話 二頁目[粒子案](2013/05/12 21:11)
[58] 第四話 三頁目[粒子案](2013/05/12 21:11)
[59] 第四話 四頁目[粒子案](2013/05/12 21:11)
[60] 第四話 五頁目[粒子案](2013/05/12 21:12)
[61] 第四話 六頁目[粒子案](2013/05/12 21:12)
[62] 第四話 七頁目[粒子案](2013/05/12 21:12)
[63] 第四話 八頁目[粒子案](2013/05/12 21:13)
[64] 第四話 九頁目[粒子案](2013/05/12 21:13)
[65] 第四話 十頁目[粒子案](2013/05/12 21:13)
[66] 第四話 十一頁目[粒子案](2013/05/12 21:14)
[67] 閑話 ツェルニに死す![粒子案](2013/05/13 20:47)
[68] 閑話 ニーナの勉強会その一[粒子案](2013/05/13 20:48)
[69] 閑話 ニーナの勉強会その二[粒子案](2013/05/13 20:48)
[70] 戦慄! 女子寮の朝[粒子案](2013/05/13 20:48)
[71] 第五話 一頁目[粒子案](2013/05/14 22:07)
[72] 第五話 二頁目[粒子案](2013/05/14 22:07)
[73] 第五話 三頁目[粒子案](2013/05/14 22:07)
[74] 第五話 四頁目[粒子案](2013/05/14 22:08)
[75] 第五話 五頁目[粒子案](2013/05/14 22:08)
[76] 第五話 六頁目[粒子案](2013/05/14 22:08)
[77] 第五話 七頁目[粒子案](2013/05/14 22:09)
[78] 第五話 八頁目[粒子案](2013/05/14 22:09)
[79] 第五話 九頁目[粒子案](2013/05/14 22:09)
[80] 閑話 第五話の後始末[粒子案](2013/05/14 22:10)
[81] 閑話 第一次食料大戦[粒子案](2013/05/15 22:17)
[82] 第六話 一頁目[粒子案](2013/05/15 22:18)
[83] 第六話 二頁目[粒子案](2013/05/15 22:18)
[84] 第六話 三頁目[粒子案](2013/05/15 22:19)
[85] 閑話 第二次食料大戦[粒子案](2013/05/15 22:19)
[86] 第六話 四頁目[粒子案](2013/05/15 22:19)
[87] 第六話 五頁目[粒子案](2013/05/15 22:20)
[88] 第六話 六頁目[粒子案](2013/05/15 22:20)
[89] 大惨事食べ物大戦[粒子案](2013/05/15 22:21)
[90] 閑話 サイハーデンの戦士達[粒子案](2013/05/16 20:13)
[91] 第七話 一頁目[粒子案](2013/05/16 20:14)
[92] 第七話 二頁目[粒子案](2013/05/16 20:14)
[93] 第七話 三頁目[粒子案](2013/05/16 20:14)
[94] 第七話 四頁目[粒子案](2013/05/16 20:15)
[95] 第七話 五頁目[粒子案](2013/05/16 20:15)
[96] 第八話 一頁目[粒子案](2013/05/17 22:06)
[97] 第八話 二頁目 [粒子案](2013/05/17 22:07)
[98] 第八話 三頁目[粒子案](2013/05/17 22:07)
[99] 第八話 四頁目[粒子案](2013/05/17 22:07)
[100] 第八話 五頁目[粒子案](2013/05/17 22:07)
[101] 第八話 六頁目[粒子案](2013/05/17 22:08)
[102] 第八話 七頁目[粒子案](2013/05/17 22:08)
[103] 第九話 一頁目[粒子案](2013/08/01 21:49)
[104] 第九話 二頁目[粒子案](2013/08/07 19:43)
[105] 第九話 三頁目[粒子案](2013/08/14 21:09)
[106] 第九話 四頁目[粒子案](2013/08/28 19:06)
[107] 第九話 五頁目[粒子案](2013/09/04 20:10)
[108] 第九話 六頁目[粒子案](2013/09/11 18:37)
[109] 第九話 七頁目[粒子案](2013/09/11 18:38)
[110] 閑話 槍衾がやってくる 前編[粒子案](2013/10/02 21:14)
[111] 閑話 槍衾がやってくる 後編[粒子案](2013/10/02 21:15)
[112] 閑話 ヴァーサス[粒子案](2014/02/05 16:12)
[113] 閑話 最悪の日[粒子案](2014/02/05 16:13)
[114] 第十話 一頁目[粒子案](2014/04/30 13:59)
[115] 第十話 二頁目[粒子案](2014/05/07 21:52)
[116] 第十話 三頁目[粒子案](2014/05/14 12:50)
[117] 閑話 ヴァーサスその2[粒子案](2014/05/28 22:30)
[118] 閑話 渚のエトセトラ[粒子案](2014/07/23 13:53)
[119] 第十話 四頁目[粒子案](2014/12/03 13:57)
[120] 第十話 五頁目[粒子案](2014/12/10 16:40)
[121] 第十話 六頁目[粒子案](2014/12/17 14:04)
[122] 第十話 七頁目[粒子案](2014/12/24 14:04)
[123] 第十話 八頁目[粒子案](2014/12/31 15:37)
[124] 第十話 九頁目[粒子案](2015/01/07 13:14)
[125] 第十話 十頁目[粒子案](2015/01/14 15:44)
[126] 第十話 十一頁目[粒子案](2015/01/21 18:13)
[127] 第十一話 一頁目[粒子案](2015/12/23 14:54)
[128] 第十一話 二頁目[粒子案](2015/12/23 14:54)
[129] 第十一話 三頁目[粒子案](2015/12/23 14:55)
[130] 第十一話 四頁目[粒子案](2015/12/23 14:55)
[131] 第十一話 五頁目[粒子案](2015/12/23 14:55)
[132] 第十一話 六頁目[粒子案](2015/12/23 14:56)
[133] エピローグなど[粒子案](2015/12/30 21:36)
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[14064] 第一話 十頁目
Name: 粒子案◆a2a463f2 ID:eb9f205d 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/05/08 21:09


 夕食の支度が始まる前に、メイシェンがナルキ家を訪れる事は、割と珍しくない。
 最近では、殆ど毎日やってきている。
 それは、欠食児童な武芸者がいるからでもあるし、このところ我が家にいると少し騒がしいからでもあるのだ。
 だが。

「メイシェン。これを上げるよ」
「ひゃ?」

 傷も汚れもないレイフォンが指し出したのは、安売りのボールペン。
 この間一緒に買いに行った一品だ。

「へへ。燃え尽きちまったぜ。真っ白によ」
「レ、レイとん?」

 なにやら凄まじく不吉な事を言いつつ、壁を背にした丸いいすに座るレイフォン。
 いきなりその首が前に倒れ、すべての力が抜けてしまう。

「ひゃ!」

 思わず肩を支え、転倒しない様にする。
 上半身だけとはいえ、運動が苦手なメイシェンがレイフォンの体重を長く支える事は不可能だ。
 この部屋にいる二人の支援が絶対的に必要だ。

「っち! この程度の事で死にかけるなんて、情けないにもほどがある」

 憤懣やるかたないミィフィが、教科書を片付け始める。

「全くだ。私達の特訓の時には不死身の無敵だったのに、体を使わないとなったらこの有様か」

 レイフォンの襟首をひっつかみ、ベッドへ放り込みつつ不満を呟くナルキ。
 かなり乱暴に扱われているにも関わらず、一向に何かするわけでもないレイフォンは実のところ。

「寝ちゃったね」

 文字通り、死んだ様に眠っている。
 留学が決定してからこちら、レイフォンにはナルキとミィフィとメイシェンによる勉強尽くしの毎日が訪れていた。
 本人も認めている事だが、武芸者として全力疾走してきたために、学力が非常に低い。
 普通にやっていたのでは、奨学金はおろか入学さえ危ぶまれる状況。
 結局のところ、スパルタ的に詰め込み教育をしているのだが、本人に勉強するという習慣がないために、こちらもはかどっていない。

「しかし、努力はしているんだよな、レイとん」
「うん。努力している事は認めるけれど、なかなか結果が出ないよね」
「・・・・」

 二人の会話を聞いていて、メイシェンはふと思う。
 もしかしたら、レイフォンは努力しても報われないという、呪いにかかっているのではないかと。
 なんだか凄まじい説得力があるような気がしてならないが、それを認めるわけにはいかないのだ。

「そ、そんなことないもん!」

 突如思いついた仮説を、力の限り否定する。
 その余波が消えた頃になって、ふと、視線を感じた。

「珍しいな。メイッチが大声出すなんて」
「にひひひひひ。レイとんと一緒に学校行けるかどうかの瀬戸際だからね」

 にやり笑いを浮かべる二人の視線から逃れるすべは、無い。

「そ、そうだ。私達も勉強しないと」
「そんなもん。とっくにやっているさ。レイとんに教えるために散々な」
「そうそう。レイとん以外は特に問題無い成績だし、今のまま進めば何とか入学は出来るはずだよ」

 そう言われてみれば、確かにそれほど成績が悪いわけではない。
 ややミィフィの成績は悪いのだが、それでも入学試験に落ちると言うほどではない。たぶん。

「じゃあ、今日はこれまでと言う事で」
「そだね。レイとんが寝たんじゃ、これ以上は出来ないからね」

 二人の意見が一致した様なので、メイシェンは逃げる算段を始めた。
 時間が出来たら、間違いなく話の続きがやってくるから。

「そういえば、レイとんのプロポーズには答えたんだっけ?」
「あう」

 不意打ちをミィフィが放ち、それがメイシェンの胸を直撃した。

「そう言えば、有耶無耶になっていたっけな」

 レイフォンの過去を聞いてから、おおよそ一月。
 思い出した様にこの話題が上っている昨今。

「あう」

 後ずさろうとして、すぐにベッドのフレームに退路を断たれてしまった。
 これ以上後ずされば、レイフォンの上に倒れてしまいかねない。

「にひひひひひ。大丈夫だよ。レイとんは昏々と眠っているから」
「そうだぞメイッチ。今なら喋っても誰も聞いていないぞ」

 両親は働きに出てしまっている。
 この家にいるのは、後シリアだけ。
 そのシリアも、先ほど夕飯の買い出しに出てしまっている。
 おそらく、これも計画の一部だったに違いないが、分かったところで意味はない。

「え、えっと」
「うんうん」

 視線を泳がせて、逃げ道を探しつつ時間を稼ぐ。

「あ、あのね」
「なんだ?」

 だが、シリアはさっき出て行ったばかり。
 一時間ほどは戻ってこないはずだ。

「あうあう」

 無意味な声を上げつつ、レイフォンが起きる事に最後の望みを託す。

「すぅぅぅう。すぅぅぅぅぅう」

 規則正しい寝息が聞こえるだけだ。

「ひゃぅぅ」

 腰砕けになってしまった。
 もはや、限界点間近。

「う、うぅぅん。僕に近づくな」

 そんなメイシェンを救ったのは、レイフォンの苦しげな寝言。

「? 何に襲われているんだ?」
「にひひひひひ。もしかしてメイッチ?」
「それはないよ」

 レイフォンならば、間違いなくメイシェンが襲いかかったとしても、平然とよけられるのだ。
 だから違うと言う事にして、寝言の続きを聞く。

「うぅぅん。来るな。ボールペンの分際で、僕を襲うなぁぁぁ」

 なにやら凄まじい形相で、とんでもない事を言っている。

「起こしてあげた方が良いのかな?」
「い、いや。やっぱり寝かせておいた方が、親切じゃないか?」
「そうだよね。ボールペンに襲われるなんて、夢だって分かっているだろうし」

 三人の意見はおおむね一致を見たが。

「ぼ、僕を自由にしてくれ。参考書の分際で、僕を縛るな!」

 今度は、参考書に絡まれている様だ。

「ど、どうしよう?」
「どうするって」
「面白いから、もう少し見ていよう」

 どうするか、行動の選択に迷っている間に。

「な、何でだ! 教科書ごときが、何で切れないんだ!!」

 今度は、教科書と戦っている様だ。

「ど、どうしよう?」
「え、えっと。とりあえずこういう時は、メイッチが手を握ってみるってのはどうだ?」
「それは名案だね。レイとんだって、メイッチに手を握られていれば、安眠できるかもしれないし」

 とりあえず、ナルキとミィフィの提案を受け入れ、うなされているレイフォンの手を握ろうとした。

「僕に触るな!」
「ひゃぅ!」

 いきなりの大声で、思わず心臓が止まりそうになった。

「円周率なんか、だいっ嫌いだぁぁぁぁ!!」

 円周率に縛り上げられる夢でも見ているのかもしれない。

「お、起こしてあげようよ」
「そ、そうだな。さすがにこれは少し拙い」

 ナルキも、同情票に傾いた様なので、ミィフィを見る。

「そうだね。そろそろ起こして運動させないと、明日からの予定が狂うね」

 三人の意見が一致したので、恐る恐るトレイフォンに近づく。

「にひひひひ。王子様を起こすには、やっぱり口付けだよね」

 後一歩でレイフォンに触れるという瞬間、ミィフィのとんでもない発言が飛び出してしまった。
 そして、思わず苦しげに歪められた、レイフォンの唇を凝視してしまう事一秒。

「ひゃぁぁぁ」

 悲鳴を放って飛び退る。

「にひひひひひひ。さあメイッチ。今ならレイとんの唇を奪い放題だぞ?」
「ち、ちがうもん」

 何が違うのか全く理解不能だが、とりあえずそう言いながらミィフィを睨む。

「うんうん。奪う必要なんか無いもんね。すでにメイッチはレイとんのお嫁さんだし」
「きゅぁぁぁ」

 今までと少し違う悲鳴を上げてしまった。

「ち、ちがうもん」
「ほうほう。レイとんのプロポーズは結局のところ失敗に終わるのだね」
「あうあう」

 そう言う意味ではないのだが、ミィフィが言うとそうなるかもしれないと思ってしまう。

「いい加減にしろよな。そろそろ止めておかないと、本格的にメイッチが怒るぞ?」
「うむ。ではそろそろ遊びの時間は終わりだね」

 うんうんと頷きつつ、レイフォンの方を見る。

「じゃあ、普通に起こしてあげたら?」
「う、うん?」

 ミィフィの許可が下りたので、今までよりも慎重に、レイフォンに近づいた。

「リーリン」
「!」

 その瞬間を見計らっていたかの様に、レイフォンの唇が小さく動き、女性の名前らしき物を呟いた。

「だ、だれだ?」
「む、昔の知り合いじゃない?」

 驚愕しているのはメイシェンも同じなのだが、距離が近かったせいでレイフォンの表情を正確に見る事が出来た。
 それは、グレンダンにいた頃を懐かしんでいる物では、決してなかった。
 どちらかと言えば。

「アイリーン、イザベル、エドガー、ヴィルジニー、オリビエ。死なないで」

 唯一残った左目から涙を流して、何に対してかは分からないが、懇願しているのだ。

「カルロ、ギオーム、クラウディア、ケビン、シルヴァーナ、僕が働くから、働いてお金をもらってくるから、だから死なないで」

 今まで聞いた事もないほど、真剣で真摯で、儚い願いを唇から放つたびに、レイフォンの顔を悲しみが支配してゆく。

「とうさん。僕が戦ってお金を稼いでくるから、だから、そんな悲しい顔は止めてよ。お願いだから」

 何かにすがる様に、その手が空を掴む。

「・・・」

 悪夢を見ていたレイフォンは、いつの間にか、過去を見てしまっている事を知った。
 だからメイシェンは、伸ばされたその手を握る事しかできない。

「ぐむ」

 後ろで何か声にならない抗議があがった気もしたが、今はそれどころではないのだ。
 半月ほど前に、レイフォンが武芸者を目指したその理由を聞かされた。
 その結果、レイフォンは呼吸困難に陥り、ナルキやミィフィでさえ数日間暗い表情が抜けなかった。
 メイシェンに至っては、実際に目の当たりにしたわけでもないのに、時々夢に見て夜中に飛び起きる。
 実体験としてレイフォンを形作っているとなれば、その重さはメイシェンの比でない事も理解している。
 理解してしまっているからこそ、手を握る以外に出来る事がないのだ。

「もう、大丈夫だからね」

 ここはヨルテムであって、グレンダンではない。
 過去を持つのは仕方がないにせよ、それに囚われる事は、出来れば止めて欲しいのだ。
 つらい事ならば、なおさら。
 そう思いつつも、一つの疑問が浮かんでいた。

(何で、女の子の名前が多いの?)

 こればかりは、いつかレイフォンに問いたださなければならないと、心に誓いつつ、手を握り続ける。
 
 
 
 買い物を終えて帰宅したシリアは、なんだか非常に疲れている少女二人を確認してしまった。
 リビングにあるソファーに長々と伸びたその姿は、あまりにも嫁入り前の乙女からはかけ離れている。

「どうしたんですか?」

 両手に荷物を持ったまま、リビングの入り口で固まるのもどうかと思うのだが、残念な事に、ソファーは二人によって占領されているのだ。

「いやね。上で二人がラブラブでさ」

 ミィフィが脱力しているのが疲れではなく欲求不満からだと言う事を、何となく認識。

「二人って、何か出来るんですか?」

 メイシェンとレイフォンだ。
 せいぜいが頬を突きあっている程度のはず。
 それが欲求不満の原因かとも思ったが、それにしてはナルキの表情がさえない。

「まあ、レイとんが問題だと言う事に変わりは無いんだがな」

 こちらも、なんだか歯切れが悪い。
 これから察するに、シリアがまだ知らされていない、レイフォンの過去が原因らしいと言う事が分かった。
 もしかしたら、メイシェンが慰めているのかもしれない。
 どうやって慰めているかは不明ではあるのだが、十分にあり得る状況だ。

「成る程。では、二人がいない以上、食事はどうするかを考えなければなりませんね」

 二人の事にこれ以上深入りするのは流石に無粋と思い、強制的に話題を転換する。

「メイシェン姉と妹は?」

 名前を呼んでもらえない事に不憫を感じつつも、聞かれた事には答える。

「今日は補習とかで遅くなるそうです」

 姉の成績は、レイフォンほどではないにせよかなり悪い。
 妹は部活で遅くなる事が日常茶飯事だ。

「家の弟に押しつけようか?」

 ミィフィの家には当然弟がいるのだが、そちらはそちらで非常に問題があるのだ。

「変に手の込んだ物を作って、自滅するのがオチです」

 もう少し基本を学んでからやればいいと思うのだが、何故か、いきなり難しい事を始めて、失敗すると言う事を繰り返しているのだ。
 家計にとって、非常に悪い事なのだが。

「つまりだ。現状を打破するためには、レイとんかメイシェンが活動できる様にならなければならないわけだな」
「うぅぅぅぅん? 夕飯いつになるだろう?」
「自分達で作るという選択肢は、始めから無いんですね」

 ナルキもミィフィもそれなりに作る事は出来るのだが、何時もメイシェンがいるためにやらないのだ。

「これじゃあ、留学したら大変ですね」

 もちろんメイシェンの事を心配しているのだ。

「レイとんにがんばってもらおう」
「そうだな。私も手伝うつもりではいるのだが、レイとんを当てにしておこう」

 何事に付けてもたいがい率先してやるナルキだが、料理だけは例外の様だ。

「はあ。僕が下ごしらえをしておきますよ」

 それほど上手くはないのだが、二人が動かない以上、やるしかないのだ。

「頑張ってねぇ。お姉さんは応援しているから」
「一応手伝う」

 やっとの事でナルキが動き出したのだが、食事が出来るまでの道のりは、まだまだ遠い様だ。
 
 
 
 入学試験に向けた勉強が佳境を迎えようとしている時期を見計らったかの様に、トマスの元へ手紙が届いた。
 しばらく前にデルクに出した手紙の返事だ。

「それは良いのですが」

 目の前にいるのは、やっとの事で捕まえた交差騎士団団長の、ダン。
 忙しい彼と面会すると言う事が、どれほど大変かは知っているつもりだったのだが、まさか予約で一週間待たされるとは思いもよらなかった。
 まあ、ダンの計らいがあったので、一日しか待たなかったのは非常な幸運だった。
 彼の執務室は質実剛健、装飾らしき物と言えば、孫が書いたと思われる絵が数点のみ。
 非常にアンバランスではあるのだが、ダン・ウィルキンソンらしいと言えば、非常に彼らしい部屋だ。

「拝見する」

 そう言いつつ、ダンの手が封筒から便箋を取り出した。
 封筒も便箋も何の飾り気もなく、ここからすでにデルクという人物を予測できてしまう。
 トマスが手紙を受け取った瞬間、それを開ける事への恐怖はなかった。
 だが、一読してみて、トマスが想像していたデルク像とは、やはりかなり違ってしまったのだ。
 ある意味、レイフォンを見ていれば予測が出来たはずなのだが、まるきり甘かったと言わざる終えない。
 
 前略。この度はご丁寧なお手紙を頂いた事、誠にうれしく思います。
 また、我が子レイフォンを保護して頂いた事に、限りない感謝をいたします。
 さて。レイフォンがグレンダンを追放される経緯はご存じとの事。
 ならば、レイフォンに伝えて頂きたい。
 グレンダンでの事の責任、その全ては私にあるのだと。
 我が身の未熟もわきまえず、感情のままに孤児を引き取り、経営難に陥った事。
 レイフォンの武芸の才にばかり目が行ってしまい、他の大切な事を教える事を怠った事。
 全ては我が身にこそ、その責任が有るにもかかわらず、結果としてレイフォンに全て押しつけてしまいました。
 更に、帰宅したレイフォンの事を、守ろうとしたはずの子供達が批難した際、私自身も衝撃を受けていたとは言え、彼を庇う事さえ出来なかった不甲斐なさ。
 全ては、私に責が有る事を、どうかレイフォンにお伝え願いたい。
 そして、自分を責める必要はない。悪いのは無能な養父だと。
 私が出来なかった事を、貴方にお頼みするのは心苦しくはありますが、どうか、レイフォンに伝えて、レイフォン自身が自分を許せる様に、導いて頂きたい。
 どうか、お願いいたします。
 敬愛する、トマス・ゲルニ様へ
 デルク・サイハーデン
 
 全てを読み終えたらしいダンが、深く溜息をつくのを眺めつつ、トマスは理解していた。
 間違いなく、デルク・サイハーデンは、レイフォン・アルセイフの父なのだと。

「レイフォン君の評価は、殆どそのままデルク氏の評価になるわけだな」
「そうなります」

 だからこそ困るのだ。

「これを読んだレイフォンが、ムキになって自分を責める危険性は、かなり高いと思われます」

 と言うよりは、むしろそうならない事の方を想像できない。

「だからこそ、私に相談している訳か」

 普通に渡して事態が好転するのならば、いくらでもそうしたのだが。

「残念ながら、悪いところまで二人は似てしまっています」
「大昔は、父が息子を育て上げ、結果としてよく似た人物になったと聞いていたが」
「今回ばかりは、残念な事ですが、これを渡す事ははばかられると」

 だが、渡さなければ渡さなかったで、非常な問題が出てしまうのだ。

「父に見捨てられたと、レイフォン君が思うのは非常に拙いな」
「はい。これを渡さなければ、そうなると確信してしまっています」

 渡しても渡さなくても、レイフォンが自分を追い詰めてしまうのに変わりはない。

「困ったな」
「困りました」

 頼みの綱だったダンまで、この有様ではどうして良いものかトマスには分からない。

「・・・・。しかし」
「はい?」

 暫く考えていたダンが、なにやら思いついた様にトマスを見る。

「君は、私に助言を求めてきたな」
「はい。他に頼れる人を思いつけなかった物ですから」

 同じ班の連中にも見せたが、トマス以上に困惑するばかりだった。
 ならばと、トマス達よりも人生経験が長く、種々雑多な問題に直面してきたであろうダンを頼ったのだ。

「ふむ。一つ聞くが」
「一つと言わず、この問題が解決するのならば、いくらでもお尋ねください」

 藁にも縋ると言うのは、もしかしたらこんな心理状況なのかも知れないと思いつつ、ダンの質問を待つ。

「レイフォン君は、君を信頼しているかね?」
「は?」

 思わず質問の意味が理解できなかった。

「つまりだね。君が私を頼った様に、彼も君を頼ると思うかね?」

 補足の質問で、トマスも理解できた。

「・・・・。まだ、積極的に私を信頼しているとは言い切れませんが、それでも、多少なりとも頼りにされていると判断しています」

 汚染獣の襲撃の少し前に、レイフォンの悩みを少しだけ聞いた事がある。
 それ以降も、悩んでいるときに声をかければ、ぽつぽつと話してくれる様になってきた。

「ならば、これを渡すべきだな。他の人間の考えを聞くという行為を知っているのならば、後は君の腕次第だ」
「私の、腕ですか」

 武芸者で警察官なんかやっている以上、それなり以上には相談を持ちかけられる事は多い。
 だが、今回のこれは、少々トマスの手に余る様な気もするのだ。

「勘違いしてはいけない。君に押しつけて、後は知らぬ存ぜぬなどと言うつもりはない」

 いざとなったら、ダンも巻き込めと言っているのだ。

「了解しました。では、これはそのままレイフォンに渡したいと思います」
「うむ」

 敬礼一つ残して、ダンの部屋を後にする。
 願わくば、トマスが思っているよりも、レイフォンが他の人を頼りにするという行為を習得していてくれる様に願いながら。
 武芸者として超絶的な才能を持つ故に、殆ど一人で走ってきてしまった少年が、少しだけ周りを見る余裕を持っていてくれる様に願いつつ。
 
 
 
 かなり角度がついてしまった日差しを浴びるリビングのソファーで、レイフォンがそれを手にしたのは、暫く前の話だ。
 おおよそ五分前。
 その五分という時間を、ナルキの見ている前で、封筒を持ったまま固まり続けている。
 ツェルニへの入学試験が終わり、後は結果を待つだけという状況でなければ、とてもこんなのんびりとはしていられない。

「レイとん」

 心配気にメイシェンが声をかけるが、それでもレイフォンは動かない。
 彼の養父からの手紙をトマスが持ってきたと聞かされたときには、ナルキはかなり喜んだ。
 レイフォンの事をデルクが許していると、そう思えたからだ。
 ナルキもメイシェンもミィフィも、それが許しの手紙である事を疑っていない。
 そう。当事者たるレイフォン以外は、誰も疑っていない。
 トマスが読めと言うのだから、絶縁状が入っているわけはないと分かっているはずなのに、それでもレイフォンはその封筒を開ける事が出来ない。
 半年以上の時間を一緒に過ごして分かった事だが、実はレイフォンは非常に臆病だ。
 食糧危機と貧困が、どれほどレイフォンを追い詰めていたか、想像するだけでも恐ろしいほどに、臆病なのだ。
 そして、汚染獣との戦いの時は頼りになるのだが、それ以外では優柔不断きわまりない。
 明らかに好意を寄せているメイシェンとの付き合い方にも、それは現れているし、この手紙の事もそうだ。

「レイとん」
「メイシェン。僕は、これを読んで、良いのかな?」

 今更そんな事を言っているあたり、渾身の力で殴り倒したい衝動に駆られるのだが、それをするわけにはいかない。
 全ては、レイフォンが決めなければ意味がない。
 トマスにそう釘を刺されているから。

「サイハーデンに泥を塗って、養父さんに迷惑をかけて、弟や妹に批難された僕が、これを読んで良いのかな?」

 雄性体を一撃で切り刻んだ、グレンダン最強の十二人の一人。
 そのレイフォンが、今、たかが封筒を持つ事さえ出来ないと、手が震えている。

「大丈夫。きっと、大丈夫」

 実は、ナルキもそろそろ限界なのだ。
 先ほどから開封を急かそうとするミィフィを押さえているのだが、一般人を怪我させない様に押さえるのは、結構大変なのだ。

「う、うん」

 おずおずと、本当にゆっくりと、レイフォンの手が開封された口を広げ便箋を取り出す。
 恐る恐ると、それを開き、一字一句読み間違えない様に、慎重に視線が文章を追って行く。
 一度、下までたどり着いた後、再び最初に戻り、再び読み直す。
 その動作を何度も繰り返し、手紙の内容を理解するために、ゆっくりと瞳を閉じる。
 ナルキも、ミィフィを捕まえていた腕の力を緩め、レイフォンの次の行動を待つ。
 ただただ、待ち続ける。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 ナルキ家のリビングを支配している、緊張感は全く衰えない。
 このような空気に、長い時間耐えられるはずのないメイシェンだが、それでもレイフォンから視線を外さず、待ち続ける。

「とうさん」

 どのくらい経ったか分からなくなるほど、緊張している時間が経過した頃、ぽつりとレイフォンが呟いた。

「トマスさん」
「何だね、レイフォン?」

 左目がゆっくりと開き、トマスを見つめる。

「とうさんは、僕を許してくれたのでしょうか?」

 そのレイフォンの言葉に、思わずミィフィが突っ込みそうになるのを、何とか不発に押さえた。

「レイフォン。デルク氏がその手紙で君の事を許していないとしたら、どこをどう探しても、許される人なんかいないと思うよ」

 うんうんと、ミィフィも頷いている。
 当事者としては誰かに確認したかったのだろうが、あまりにも間抜けな質問にも思える。

「そ、そうなんでしょうか?」

 非常に自信なさげだ。

「そう思うよ。私に君の事を頼んでいただろう? それは、レイフォンが立ち直ってくれる事を願っているからだと思うよ」

 非常に熱心にトマスが断言する。

「・・・・・。僕は、本当に、許されて良いのかな?」

 そう呟いたきり、俯いてしまう。
 これはかなり駄目だ。
 思考が後ろ向きなのは仕方が無いが、罪悪感ばかりが先に立ってしまい、一歩も前へ進めていない。
 それだけ、デルクとサイハーデンを大事にしていたと言う事なのだろうが、かなり度が過ぎている様な気もする。

「レイフォン」

 珍しく、メイシェンが本名で呼んだ。

「大丈夫。デルクさんは、レイフォンが不幸になる事を望んでいないから」

 血はつながっていないが、親子である事は十分に理解している。
 と言うか、何で血がつながっていないのか、そちらの方が理解できないほど、デルクとレイフォンは似通っている。

「だから、えっと、あ、あの」

 メイシェンの方も、何をどう伝えたらいいのか上手い言い回しが見つからない様で、困っている。

「本当に、僕は」

 再び、小さく呟いたレイフォンの視線が上がり、トマスをとらえた。

「僕も、とうさんに手紙を出してみようと思います」
「そうだね。直接話は出来ないが、そうするのが一番良いだろうね」

 大事そうに便箋を封筒に戻し、メイシェンの頭を撫でたレイフォンは、席を立った。

「大丈夫なのかね、あれ?」

 レイフォンが部屋からいなくなったとたん、今まで喋れなかった鬱憤を晴らす様に、ミィフィの声がリビングにこだまする。

「まだ何とも言えんが、それでも、他の人に意見を聞くだけの余裕があるのだから、大丈夫だと思う」

 確かにグレンダンにいた頃の話を聞く限り、レイフォンは周りが見えずに猪突するタイプだった。
 それが今は、周りの人の意見も聞いている。
 格段の進歩だと言えない事もない。

「大丈夫だよ。きっと、大丈夫だよ」

 メイシェンもそう言う事だし、ナルキは二階に上がってしまったレイフォンを、もう少し見ていようと決意を固めた。
 
 
 
 散々悩んでいたレイフォンも、三時間ほど部屋にこもっていた後に、やっと出てきた。
 だが、その姿は見るからにボロボロで、ナルキとシリアが三日特訓を受けた後よりも、更にボロボロだった。

「な、何をやっていたんだい?」

 たまらずトマスが声をかけるが、ミィフィには何となくレイフォンが理解できていた。

「・・・。手紙を書いていました」
「は?」

 思わず固まるトマスと、他の二人。

「うんうん。喋る事も苦手なレイとんが、誰かに手紙を書くなんて、そうそう出来る事じゃないもんね」

 恐らく、生まれて始めて書いた手紙なのだろう。
 ならば、なおさら。
 よくぞ三時間で書き上げたと、褒めてやりたいほどだ。

「まあ、手紙が書けたのならば、送るとしよう。私の物と一緒で良いかい?」
「はい。お願いします」

 トマスに手紙を渡したレイフォンが、足下も危なっかしく立ち上がり、そして崩れ落ちた。

「レ、レイとん?」

 床に伸びてしまったレイフォンを心配してメイシェンが声をかけるが、ミィフィは少し違った事が気になっていた。

「どんな内容なんだろう?」
「馬鹿。人の手紙を読むんじゃない」

 ナルキに止められたが、トマスを見ると少し心を動かされた様だ。

「い、いや。まさかとは思うのだが、誤字脱字が連続していたりしないだろうか?」

 うんうんと頷いてトマスに同意する。

「い、いや。いくら何でも、そんな子供じみた間違いはしないだろう」

 自信なさげにナルキが否定するが。

「円周率の存在を知らなかった」
「うぐ」
「電気のアンペアーとボルトとワットが理解できていなかった」
「ぐぐ」

 まだまだ上げればきりがないほど、レイフォンの学力の低さは折り紙付きだ。

「だ、大丈夫だと思うよ」

 自信なさげなメイシェンの声がかからなければ、きっと開封する事に誰も反対できなくなっていただろう。

「何でそう思うのかね?」

 誰もが聞きたい質問を、代表してトマスがする。

「これ」

 メイシェンがレイフォンの手を開かせると、中から出てきたのはポケットサイズの辞書。
 あちこちめくった跡がくっきりと残っている。

「どう判断すべきだと思う?」
「全ての単語を辞書で引いて綴りが間違っていないか、確認した」

 ミィフィが想像するレイフォンならば、間違いなくこのくらいの事はやる。

「やはり、そうか」

 トマスもおおむね同意した様子で、レイフォンの手紙を自分の書いた物と一緒に封筒にしまい、封をした。

「あああああ!」
「いやね。本当に誤字脱字が気になっただけだから」

 抗議の声も聞こえない様に、投函するだけになった封筒を内ポケットにしまうトマス。

「うぬぬぬぬぬ」

 記者魂が、叫ぶのだ。
 レイフォンの手紙を読めと。

「色々あったんだから、少し野次馬根性は押さえろよ」
「だって。知れば知るほど面白いんだもん、レイとん」

 これほど、色々ある人間はそうそう転がっていない。
 出来ればもっといじって楽しみたいのだが、メイシェンの視線が厳しくなり始めたので、当面あきらめる事にした。

「兎に角だ。私はこれを出してくるので、レイフォンを部屋へ運んでおく様に」
「分かったよ、父さん」

 色々思うところがあるが、多分デルクからの返信はレイフォンが泣きながら読むだろうから、その時に聞き出せば良いかと計画を立てつつ、ミィフィも自分の家へと戻る事にした。
 入学試験は終わったが、もうすぐやってくる長期休暇の計画も立てなければならないからだ。


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