はじめまして、乾貨です。
皆さんの作品を読んでいて、自分も書きたくなりました。
遅筆なもので、一週間に一話のペースで更新できたらと思います。
拙い文章ですが、よろしくお願いします。
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目蓋越しに視線を空に捧げて一呼吸。
天を貫けと建てられた祭壇の、その頂点に立つ我と、身の丈と同じだけの髪を嬲る風は強く、鋭い――これは、嘆きだ。憐憫で惜別で哀惜で苛烈で情愛に満ち満ちた嵐の王の慟哭。
左手を心臓に、右腕を地と空を繋ぎ垂直に。
心臓が二度大きく脈動し噤んだ唇の端から、血が零れる。その痕跡を根こそぎ略奪し撒き散らし己の血肉と変えながら轟然と嵐の王は赤子のように、気高く泣き喚く。唱和して我の全身を風の刃が、浅く、けれど絶え間なく切り裂き始めた。
血煙が舞い上がり、結集し、一筋の糸となって、空中に意味のある術式を形成する。血の供給がほんの一瞬でも滞ったなら文字通り風と消える脆く、拙い、けれど我が我として在る限り永遠に持続する魔法。
誰もが、懸命に生きていた。皆が、今よりより良くあろうと願いのもと足掻いていた。まぬがれぬ理不尽に声高に反逆した。
罪の所在を問うならば。ことここに至って敢えて欲すなら。情にほだされ何事にも決断の遅かった、我にこそあるというのに。
目を開いた先には今にも中心から割れようとする暗雲。我らが同胞をことごとく滅ぼし尽くした理不尽の具現が、天を割り現出しようとしている。光を従えて生まれるそれは愚かしいまでに神々しく。その神性に、ほんの一瞬、惑いが生まれ、即座に、唇を噛み切った。
嗚呼、なんて愚か。この身はすでにそのようなものとは決別しつくしているというのに、皆の屍の上に在りながらなお救いを求めている。
後悔する時は過ぎた。信じて闘い抜いたものに懺悔などはなから不要。
ならば、我がいまこの場に立つ意味は。原罪でありながら、皆の屍に守られ、生き恥を晒すこの愚物の存在証明は。
呟くだけだ。
赤く染まる視界の向こう、理不尽をひたと見据え。
より良い未来に向けて、願いを込めて、ただのひとたび、声帯を震わせ。
「世界よ終われ」
と。
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とりあえずプロローグでした。
次回から本筋に入っていきます。剣と魔法のファンタジーになる予定です。
誤字脱字の指摘、感想などいただけたら嬉しいです。