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No.14013の一覧
[0] 封じられた鞘(ネギま!×FATE、TSあり)  喪失懐古/八改訂[大和守](2010/09/08 09:15)
[1] prologue[大和守](2009/12/18 13:29)
[2] 封鞘墜臨 / 一[大和守](2009/12/18 13:30)
[3] 封鞘墜臨 / 二[大和守](2009/12/18 13:30)
[4] 封鞘墜臨 / 三[大和守](2009/12/18 13:32)
[5] 封鞘墜臨 / 四[大和守](2009/12/18 13:35)
[6] 封鞘墜臨 / 五[大和守](2010/02/12 14:11)
[7] 封鞘墜臨 / 六[大和守](2009/12/18 13:38)
[8] 封鞘墜臨 / 七[大和守](2009/12/18 13:38)
[9] 封鞘墜臨 / 八[大和守](2009/12/18 13:39)
[10] 喪失懐古 / 一[大和守](2010/01/18 15:48)
[11] 喪失懐古 / ニ[大和守](2010/01/19 17:10)
[12] 喪失懐古 / 三[大和守](2010/02/02 12:51)
[13] 喪失懐古 / 四[大和守](2010/02/12 16:53)
[14] 喪失懐古 / 五[大和守](2010/03/05 12:12)
[15] 喪失懐古 / 六[大和守](2010/03/26 11:14)
[16] 喪失懐古 / 七[大和守](2010/08/04 06:49)
[17] 喪失懐古 / 八[大和守](2010/09/08 07:49)
[18] 閑話 / 小話集・1[大和守](2010/09/06 18:19)
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[14013] 喪失懐古 / 一
Name: 大和守◆4fd55422 ID:fb470a4e 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/01/18 15:48
 ――――ノイズ。黒白の濃淡、ピントが合わない。

「■■■――

 ――――ノイズ。霞掛かった視界がもどかしい。

      ――貴方を、

 ――――ノイズ。鮮明になる視界、色鮮やかに染め上げられる瞬間。それでも『彼女』の顔が、

            愛している」

 ――――ブラックアウト。


 喪失懐古 / 一


 その話を聞かされたのは、一週間前。



「新任の教師?」
「そう。僕の代わりに二年A組の受け持ちになるよ」
「……大丈夫なのか、色々な意味で。俺自身が要因の一つである以上、本当は言えたものではないが……もう一度言ってくれ。何だって?」
「去年欧州の魔法学校を卒業した、十歳の魔法使いが、一週間後にこの麻帆良に新任の教師として来日するんだよ。ちなみに決定したのは卒業した今年七月。受け入れ態勢は整っている、決定事項なんだよ」
 …………あきれてものが言えない、とはこの事だ。
 思わず意識を飛ばしかけて、制御を離れた行使魔力の過多から目前の電子基盤をオシャカにするところだった。
「……いいのかそれで。それはつまり、事実上俺の監視が無くなるってコトだぞ? 過激派連中が黙っていないんじゃないのか」
 気を取り直して基盤の解析を再開する。
 構成を解読、埃を掃除しながら不具合原因を特定、しつつ高畑の答えを聞く。
「元からそこまで深刻な問題じゃないよ。『封印されていた』って言うのはそれだけで僕達が保護に動くに足る問題だったし、当の衛宮も今まで平穏無事に過ごしている事だし、今現在沈静化している問題をわざわざ掘り起こしてまで騒ぐ者は始めからいない。それに、僕も広域指導専属に名義が変わるだけで籍は此処に置き続けるしね」
「それでも、事実上身体が空くのだから『出張』も増えるだろう。いやそれ以前に、あのクラスを経験の無い者に任せようという決定に疑問だが」
「んー、なんとかなるさ」
 ――――信じられない。本気で言っているのなら、何て楽観的な思考だ。
「……高畑」
「ん、なんだい?」
「本気で言っている訳じゃないだろう?」
「―――まあね。裏が在るのは認めるよ」
 だろうとは思う。そうでなければ理屈に合わな過ぎる。労働基準法うんぬん以前に世間の認識(つまり常識)がそんな非常識を許さない。その非常識への認識を、学園結界によって緩めて受け入れさせる心算なのだろうが。
「……何と言い繕っても事実は変わらない。けれど、未だ不透明な部分もあるから端的に言うけど。
 その子――ネギ君って言うんだけど――は、君の始まりに似た体験をしている」

「――――――――、それで?」

「その事件から生還したのは二人。ネギ君と、ネギ君の従姉でね。二人の証言によって、ネギ君が暮らしていた村を襲ったのは下級悪魔(レッサーデーモン)と爵位級悪魔の混成からなる、“軍勢”とも呼ぶべきモノだった。だが、それらの召喚者は不明のまま……。つまり、」
「その少年は未だ狙われている可能性が高い、と? 襲撃の理由は分かっているのか」
「……ネギ君はね、過去魔法界で勃発した大戦を終結させた英雄の子供なんだよ。君なら分かるだろう。“英雄”と呼ばれる存在が背負うモノを。それが理由と考えられる」
「…………英雄が意図せず継承させてしまった負の遺産、か」
「ああ。本来、ネギ君を守ってくれる筈のナギ――あ、さっき言った英雄で、ネギ君の父親だよ――はネギ君が生まれた年に失踪、現在では死亡扱いだ。だからこそ、僕達はネギ君を守る。今回の措置もその一環だよ。ネギ君には才能がある。彼を守護し、その成長を見守るためにね」
「……そうか。そこまでの事情は理解した」
 要はこの学園をその子供の揺り篭にしようと言う訳だ。
 確かに、保護と成長の助成が目的だというならそちら側の筋は通る。表世界に対する認識操作など苦にもしない理由になるだけ、その“英雄の息子”の価値は高いのだろう。
 だが。
「だとしても、“あの”クラスに放り込む理由にはならないだろう」
「……言ってはなんだけど、こっちはついでと言うか、どうせなら、って感じで(学園長が)決めちゃった事なんだけど。―――特異な能力、突出した才能は、互いに引かれあう。
 衛宮だって気付いてるだろ? あのクラスには、そういった子達が集まっている。そうなって欲しくは無いけれど、万が一の場合には、これから築く関係がきっと役に立つ」
「…………」
 ――――ならこれ以上は、部外者である俺が口を出すべきではないコトだ。
「俺は基本的に不干渉だ。求められれば応じても、俺からは関わらないぞ」
「ん……まあ、それでもいいよ」



 そんな話をしたんだよな、と。思い返すのはその子供先生が赴任する朝7時半、始業前のコトである。
「いや、助かったよブラウニー。またなんかあったらヨロシクね♪」
「何かないように気をつける、とは言わないんだな。あとブラウニー違うから」
「だってアンタが頼りになりすぎんのよぅ! じゃ、今日はコレで。明日にゃお礼のスィーツタダ券用意しとくよん」
 しゅたっ、と手を上げた後、後輩の朝練習を監督しにいく上級生。
 見送るでもなく見やった後に、自分のクラスに歩く。始業ベルまでは余裕があるが、手が空いてしまったものは仕方がない。クラスに戻って予習や復習をやっておこう。



『―――学園生徒の皆さん、こちらは生活指導委員会です。
 今週は遅刻者ゼロ週間、始業ベルまで10分を切りました。急ぎましょう――――
 今週遅刻した人には当委員会よりイエローカードが進呈されます。
 くれぐれも余裕を持った登校を……』

 その放送に。
 ふと、単語帳から顔を上げた。
「……1つ、素朴な疑問があるんだが」
「?」
「イエローカードを進呈されて、どうしろと言うんだ……?」
「あー…………さあ?」
 斜め後ろに座る俺の疑問に、律儀に返答を返して再び机にかじりつく早乙女。
「―――なんだ。また修羅場なのか」
「……あー? 何時も通りのペースよ? ホントは。けどホラ、今日は新任の先生が来るって話じゃない。ならこのクラスでは―――分かるでしょ?」
 今度は顔をこっちに向ける事無く、手を休めずに返事が来る。
「……成程。ではそれは」
「そ。今日は騒ぐからねー。今の内に騒げるようにしとかないとさ」
 ……。そこまでして騒がなくてはいけないのか。いや、早乙女の場合、自分の関わらない所で皆がどんちゃん騒いで楽しんでいるのが悔しいのかも。
「新任一人に大わらわだな……春日や鳴滝姉妹は珍しく早く来てはトラップ設置に余念が無いし―――どうでもいいが。鳴滝姉は、もっと慎みというものを覚えたほうが良さそうだな」
 スカートを穿いているのに股を開くな。女子校だからと言って油断しすぎだ。君のようなタイプは此処でそんなだと他の場所でも同じ格好をするぞ。ああほら、隠すべき絶対領域がガラ空きじゃないか。

「「「――――アンタが言うか、衛宮アルト(ぼそっと)」」」

「ん、なんか言ったか?」
「いや何も」
「…………苦しくなったら言えよ? 流石に毎度毎度、綾瀬や宮崎を手伝わせている訳にも行かないだろう。二人にだって予定ややりたい事はあるだろうし」
「あはは。気持ちは受け取っとくわー。でも私にだって先週付き合わせたばっかりの相手に今週も泣き付く程の厚顔無恥さは無いの。アンタホントは今日もどっかから頼まれゴトしてて、今日はどうやって抜け出そうかなーとか考えてるんじゃないの?」
 む。確かに今日の放課後も一件、運動部からちょっと来てくれ、と声を掛けられている。
「確かに声は掛けられているけど。それほど切羽詰っている様子でもなかったし、今日一日ぐらいは空けられるぞ、俺だって」
「―――衛宮さんの言葉には説得力がありませんね。そう言って実際には、クラスの用事が終わった直後に間に合うかどうか先方まで確認し、懸案次第では寮まで持ち帰り、ともすればハルナの手伝いと平行してコトを済ませようとするのは、過去の事実が証明します」
「そうそう。そして目の下にクマまで作るクセに、早朝のランニングは絶対欠かさず、授業中に居眠りしてせっかく持ち直しかけてる成績を落とすのよ。いいからさ、もうちょっと自分の身体のコト考えたら? 頼ってる私達が言うのも何だけどさ」
「……むう」
「ハハハ。見事に論破されたみたいネ、エミヤン?」
 と。
 途中から加わった綾瀬の前に、超が袋包みを差し出しながら入ってきた。
「どうかナ? 一個百円ネ」
「……その呼称を止めてくれるのなら一つ貰おう」
 今や毎朝恒例となってしまった交換条件を提示する。こんな台詞を吐きながら、胸ポケットから百円玉を取り出している辺り、俺も相当、このクラスに馴染んでしまっているのだろう。
「ほら」
「ウム」
 差し出した掌に超包子特製と銘打たれた肉まんが置かれ、換わりに指先に挟んでいた百円玉を超の手に落とす。じんわりと熱を放つ肉まんは折角なので早々に食べる。冷めてしまうともったいない。もきゅもきゅと頬張りながら再び単語帳に向かおうとして、
「衛宮さーん」
 朝倉の声で断念する。
「最近さぁ、職員室に呼ばれたりはしてない?」
「……一週間前、高畑さんに呼ばれたのが最後だな」
 給湯ポットの故障で。
「その時にさ、新任の先生に関してなんか話聞いてない?」
「――――、それらしい話題は耳にしていないな。今じゃ俺が職員室にいても然程注目はされなくなったけど、やはりそういう話を生徒がいる時には話さないんじゃないか」
 実際には高畑からばっちり詳細を聞いているが。
「そっかぁ。エミヤン情報も無理か……んー、このままだとちょっと弱いのよねー。美形だったらそれだけで記事のネタが増えるんだけど」
 ……安心しろ朝倉。新任は年端も行かない少年なのだから、お前ならそれだけで強い記事に仕上げられる。
「…………衛宮さん、貴女は何時から朝倉さんの諜報員になったのですか」
「そんなものになった覚えは欠片も無い。……けど、あちこちに顔を出していればそれなりに小ネタが耳に入って来るんだよ。俺自身は詳細まで突っ込まないけど、朝倉は俺から聞いた小ネタを頼りに先方に取材してるらしい」
「それは既に諜報員です」
「……やっぱりそう思うか」
 けど、朝倉に明かすネタは俺自身で捨取選択しているし、朝倉も悪どい記事は書かないので大丈夫だろう。この地自体に他者をあげつらう風潮が無いコトも大きい。なので、今までは全部笑い話で終わっているし、これからもそうだろう。
「だからそう気にする事でもないと思うぞ」
「?」
 結論だけを言って不思議な顔をされた。
「取り合えずさ、これから新任の先生関係で面白そうな話題があったら教えてよ」
「……ああ。小耳に挟んだ程度で良いならそうしよう」
「サンキュ」
 ウィンクを残して自席へ戻る朝倉を見送る。超もクラス内の商売の為に離れて行く。
 そして、
「……はあ。おはよー」
 と、最後に登校する形になった神楽坂と近衛が視界に入った。
「……珍しいな。神楽坂が浮かない顔で、こんな遅く登校とは。何かあったのか?」
 普段ならギリギリではあっても遅刻せずに登校してきたし、あんなあらかさまに疲労と不機嫌を表に出した神楽坂は始めて見る。
「……んー? あったわよ。最悪なコトがもう、立て続けに。なんだって私がこんな……」
「……?」
 どういう事だ、と近衛に視線で尋ねる。
「―――ウチは可愛えと思うけどなー。ちょっと出会い方が悪かったみたいなんや。今来ると思うし、直接見ればええんちゃう?」
「は?」
 ――――うん。近衛はどこかピントが外れている時があると思う。

 結論から言えば。
 神楽坂が、登校中に新任の教師――つまり、件の子供先生に侮辱的な発言を受けたものらしい。
 さらに子供先生にはその意識が微塵も無く、親友である近衛や学園長には軽やかにスルーされ(学園長側は意図的だろう。絶対に)、その上同室に泊まらせろと要請され、あまつさえ高畑は担任から外れる事が発覚し(まあ、教育実習扱いならば通常は担任の補佐役となるし)―――と、神楽坂主観で散々な目にあったのが不機嫌の原因のようだった。
「だからといって授業を台無しにするのはやり過ぎだと思うぞ?」
「ふん!」
「……」
 取り付く島が無い、とはこの事だ。
 高畑、どうやらお前たちの思惑は初日から完全にすれ違ってしまっているらしいぞ。
「衛宮さん、ちょっとよろしいでしょうか?」
「ん、なんだ委員長。ネギ先生の歓迎会準備か」
「ええ。皆さんで協力して、この教室でやろうと思っていますの。衛宮さんには教室の飾り付けを先導して欲しいのですが」
「? 俺が先導か」
「ええ。この手の作業工程で、衛宮さんは正確、かつ効率的な装飾が出来ると聞きましたので」
 にっこりと微笑む雪広あやか。その向こうに、にひ、と嗤う影が三つ。
 ……成程。厄介事を俺に押し付けてとんずらをかまそうというハラか。―――そうそう都合の良い結果には問屋が降ろさん。
「よし了解した。ついては従える戦力を指名したいが、許可願えるだろうか委員長?」
「ええ。こちらからお願いするのですし、衛宮さんが直接選ぶ方々ならきっと私が選ぶよりも捗ると思いますわ」
 ゲ、と顔を引きつらせてももう遅い。
「では早速―――大河内、絡操、龍宮。悪いが、そこから逃げようとしている明石と春日、鳴滝姉を連行してきてくれ。あとは鳴滝妹と長瀬、朝倉を借りようか。クラスの三分の一だが、いいか?」
 ええ、と首肯を受けてメンバーは固まった。弱冠数名、策謀が裏目に出たショックと有無を言わせず連行されたコトで涙目だが問題無い。
「では始めようか。主賓を待たせるわけにも行かないしな」
 ―――この背中に、ついて来い。



 かくて再び、歓迎会の名を借りたお祭り騒ぎが再演される。
 即席の用意といえど侮れない。このクラスの本領は、こういった非日常的なイベントでこそ発揮される。教室に施した装飾こそ色紙を使用したオーソドックスなものだが、そこに並べられる食べ物は近場で調達されたお菓子、甘味に加え、お料理研究会・超包子提供の料理まで。はっきり言って贅沢だ。
 …………だと言うのに、肝心の主賓が中座するとは何事だろう。高畑と神楽坂の間を往復して、直後に神楽坂が退室し、それを追っていたようだが。
「……高畑さん、ネギ、――君、と何を?」
 先生、とも呼びにくいし、かといって他の生徒の手前、呼び捨てもし辛い。ハンパな立場だな。
「ん? いや、アスナ君の事をどう思っているのか聞かれただけだけど」
「……額に手を当ててか?」
「そうなんだよね。なんだったんだろうね?」
 思い当たる節があるような無い様な、微妙な顔の返答だった。
「…………委員長達も追っていたが、あまり長くやって帰りが遅くなるのもいただけない。頃合を見て中締めないとな」
「うん。皆が戻ってきたら声を掛けるよ。衛宮君はどうするんだい? 今日は何処かに頼まれ事は無いのかい」
「あったが、明日に伸ばしてもらった。朝に綾瀬と早乙女に窘められたからな。大人しくしてるさ」



 そうして子供先生の赴任初日は過ぎていく。
 魔術使いは宣言通りに干渉せず。
 故に、彼と彼女が深く関わりあうのは、もう少し先の話である。



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