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No.14013の一覧
[0] 封じられた鞘(ネギま!×FATE、TSあり)  喪失懐古/八改訂[大和守](2010/09/08 09:15)
[1] prologue[大和守](2009/12/18 13:29)
[2] 封鞘墜臨 / 一[大和守](2009/12/18 13:30)
[3] 封鞘墜臨 / 二[大和守](2009/12/18 13:30)
[4] 封鞘墜臨 / 三[大和守](2009/12/18 13:32)
[5] 封鞘墜臨 / 四[大和守](2009/12/18 13:35)
[6] 封鞘墜臨 / 五[大和守](2010/02/12 14:11)
[7] 封鞘墜臨 / 六[大和守](2009/12/18 13:38)
[8] 封鞘墜臨 / 七[大和守](2009/12/18 13:38)
[9] 封鞘墜臨 / 八[大和守](2009/12/18 13:39)
[10] 喪失懐古 / 一[大和守](2010/01/18 15:48)
[11] 喪失懐古 / ニ[大和守](2010/01/19 17:10)
[12] 喪失懐古 / 三[大和守](2010/02/02 12:51)
[13] 喪失懐古 / 四[大和守](2010/02/12 16:53)
[14] 喪失懐古 / 五[大和守](2010/03/05 12:12)
[15] 喪失懐古 / 六[大和守](2010/03/26 11:14)
[16] 喪失懐古 / 七[大和守](2010/08/04 06:49)
[17] 喪失懐古 / 八[大和守](2010/09/08 07:49)
[18] 閑話 / 小話集・1[大和守](2010/09/06 18:19)
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[14013] prologue
Name: 大和守◆4fd55422 ID:fb470a4e 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/12/18 13:29

Prologue――

 それは、ユメの結末。
 それは、幻想の交差。



 ――――繰り返す。
 ただ、繰り返す。
 ひたすらに繰り返す。
 見失わない様に。落としてしまわない様に。
 繰り返し繰り返し、『在る』事を確認する為に。

 保存された“記録”を“再生”し、“再認”する。

 どれだけ繰り返しても止めない。
 どれだけ繰り返しても止まらない。
 どれだけ繰り返しても止められない。

 時の概念は消失し、
 “記録”は繰り返す毎に磨耗し、
 “再生”する度に次第に欠落し、
 “再認”も儘為らなくなった情報だけが増加する。

 情報へと成り下がった“記録”は朽ち果て、古いモノから損壊していく。

 思考は既に停止した。
 思念は疾うに消失した。
 思わず、感じず、新たな刺激も与えられず、
 内に在る記録のみを、ただくるくると繰り返す。

 次第に磨耗し、欠落してゆくなか、それでもなお鮮明に焼き付いた“記憶”のみを――――。



 ――がちゃり、と空気が震えた。
 閉塞した漆黒を切り裂く光条を伴い、ヒトガタが二つ、するりと室内へ滑り込む。
 ソレは興味も示さない。もとより、外界の情報を取得する手段を全て剥奪されてしまっているのだから当然だ。
 侵入者はそのまま扉を閉め、背負ったモノを担ぎ直し、手近な所から探り始める。
 一つ一つ、見間違いの無い様に、一刻も早く目的を遂げる為に。

 ――程なくソレは発見(みつ)かった。

 透明な容器に収められたソレを目的たる存在と認めた少女はその瞬間に凝固した。
 その様子にすぐに姉が駆け寄り、やはりソレを目にして、骨も砕けよと拳を握る。
 二人、そのまま直立していたのはどれ程か。
 先に動いたのは、やはり姉の方だった。

 瞬間――少女の右手を光源に、容器に収められたモノが照らされる。


「―――■」
 それは、呟きとも取れる、ポツリと空気を震わせる声。
 呼び掛けにびくりと肩を震わせた妹も、数瞬後には姉を手伝い始めた。
 持ち込んだ道具類から必要な物を順番に取り出し、描き、配置し、築き上げる。
 互いに言葉を発しない。
 ただ、黙々と作業に没頭する。
 ――何かから逃避する様に。
 ――何かを忌避する様に。
 ――ナニカを、務めて考えない様に。

 時間は無い。
 かの大師父と姉の好敵手、二人の協力の下に作られた制限時間内に全てを済まさなければならない。
 既に卓越した技量を備えるに至った姉妹をもってしても未だ理解出来無いモノだらけな室内、手狭な空間に可能な限りの規模・速度で築き上げていく。

 それは、神殿。

 大師父直々の構築である。
 自身が残した“宿題”をやり遂げた弟子の願い。それに応えて曰く、
 ――面白い。
 ただ、それだけの理由で弟子に協力する事を決めた彼は、翌日にはこの神殿の設計図を姉妹に放り投げて寄越したのだ。
 今もこの“時計塔”の最上層部にふらりと現れ、騒ぎを起こして衆目を集めている。
 そして、神殿構築において必要な物の半分以上は姉の好敵手の協力によるものだ。
 ――御世話になりましたからね。
 誰の、とは言わなかった。言わずとも彼女らには通じるから。
 この部屋に侵入する際の時間稼ぎをしてくれた彼女は無事だろうか。
 ―――…………。

 ――否。今は無駄な思考を挟むな。

 もう二度と戻らない、旧懐と感傷に耽るのは、全てを済ませた後にしろ。



 詠う。
 朗々と、粛々と、設定された機能を起動させる命令を送り出す。
 神殿が発光を始める。
 端から中央へと、描かれたラインを伝わり、薄ぼんやりと、次第に強く。
 室内の闇を犯し、命令を実行する為の力を充填していく。
 姉妹の唱が佳境に入る。
 呼応し、さらに光が強まる。光が舞う。
 中央にすげられたソレの容器が、鈍く光を反射させた。



 疲弊を極める姉妹が共に座り込み、両側からソレの容器に半身を預けた。
 儀式は既に二人の手を離れた。
 もう二人が手を出さずとも、じきに定められたシステムは動き出す。
 時が近い。
 床から舞い踊る光に照らされながら、二人はただ、それぞれに過去を振り返る。



 ――脳裏に浮かぶ一人の青年。
 特徴的な赤銅の髪。何処か達観していながらナニカを見据え続ける強い双瞳。
 20代も半ばに至った彼は、“あの時”からその姿を変えず、過去と幻想の世界の住人になってしまった。

 ―――――こんなにも、近くに居るのに。

 思えば、随分と迷惑を被ったっけ――その内容は一つ一つ、あまりにも鮮明すぎて苦笑しか浮かばない。
 苦労、心労、掛けられっぱなしだった。
 何しろ、自分から騒動に首を突っ込んでいくのだ。彼が割って入っても事態の収拾が付くかどうかなど、考えもしない。理非善悪そっちのけで、しかし善意あってこその行動であるが故にタチが悪い。
 ――挙句、こんな事になった。
 あの時は本当に本気で怒り、本気で怨んだ。
 何故自分達が彼の後始末をしなくてはならないのかと。
 気付いたのは何時だろう。
 自分達で背負いに行った事だっていう、一番初めのコトを。

 だから、コレが最後の決着。
 この儀式の完了が、自分達と彼の繋がりの終着なのだ。



 直視出来なくなるほど光が強まる。
 終わりが近い。
 神殿に与えた命題が果たされる。
 今はただ、容器に収められているソレを見つめる。
 神殿の中央に在る容器。側には丸まった子供が入れる位の黒い箱。箱には、真紅に染め上げられた外套が被さっていた。
 それらが光に包まれ始め、二人は最後の時を悟った。
 ゆっくりと立ち上がる。
 神殿の外に出て、眩い光をそれでも最後まで見据え続ける。
 奇蹟が、カタチを顕にする―――――。



 事後の形跡は完全に抹消した。
 容器におさめられていたソレのみを除いて、全ての物は二人が侵入する前と寸分たりとも違わない。
 外に気配が無い事を確認し、ガチャリと扉を押し開く。
 侵入した時とは真逆、名残惜しげにゆっくりと部屋を出る。
「先輩―――――」
 呟いた妹の目尻に浮かぶモノをあえて無視して、ただ背中に触れて促した。
 けれど、最後には姉も振りかえり、押し殺した涙声をポツリと洩らした。

「―――よなら、士ろ―――――」


 閉じられる扉によって狭まる光条が、カラとなった容器のプレートを映し出す。
 記されていたのは内容物の名称だろう。他には何も書かれていない。

――BLADE MAKER――

 ばたん、と閉じられた暗室は、再び静寂に包まれた。


◇  ◆  ◇


 第一に、突然正体不明の強大な魔力が発生した事。
 第二に、発生地点が“神木・蟠桃”近辺である事。
 第三に、発生した魔力に呼応する様に“神木・蟠桃”が発光した事。
 その異常、どれか一つだけでも付近の魔法使いが駆けつけるに足る異常である。
 それが三つ一度にとなれば、学園都市・麻帆良中の魔法使いが集結しても何らおかしい事では無い。
 “神木・蟠桃”は『聖地』としての側面も持つ麻帆良の中核とも云える。
 その間近に突発的な魔力の発生。それを察知した魔法使い達は、外部への警戒要員を残し、主力人員を中心として半数以上の戦力が集結した。

「認識阻害の魔法結界、安定しました。私達は結界周辺の警戒に当たります」
「了解。気をつけて」
 裾丈が異様に長いローブを纏う数名の魔法使い達を、スーツ姿の壮年の男が見送った。
 その男にごくシンプルなゴシックドレスを纏う少女が歩み寄る。
「――想定出来るのは、世界樹の魔力を利用した転移魔法か?」
 目前の光源を見据え忌々しそうに吐き捨てた小柄な少女に、壮年の男がポケットに両手を突っ込んだままに同意した。
「と言うか、それしか考えられないね。世界樹の魔力が呼応するという事は、他の『聖地』からの転移行使という可能性もあるけど………事前通告も無しの、しかもコレだけ大規模な魔法行使による来訪となると、警戒も厳重にするに越した事は無い」
 発生後既に一時間も経ち、なお増大し続ける魔力量を正確に把握して、故に互いに表情は厳しい。尤も、壮年の男がこれから来るナニカに対する警戒によるものであるのに対し、少女の方は『ワケの分からない厄介事に巻き込まれた』コトによる不機嫌のそれであるのだが。
「フン。…………度派手かつ迷惑極まりない侵入者もいたもんだ」
「同感だ」
 これほどの魔力を行使出来る魔法使いなど、古今の全世界を見渡しても十指では確実に余り、五指にすら満ちるかどうか。
 少女は、その中の一人に数えられるかもしれない程の卓越した魔法使いではあるが、今はとある理由によって行使可能な魔力を極端に制限され、全盛期の一割の能力も発揮出来無い。彼女がこの場にいるのは、その豊富な魔法術式に関する知識によってこの事象を正確に把握する事を期待されていたからだ。
 逆に戦闘要員の中核として居るのが壮年の男の方だ。彼はこの麻帆良では最上位に位置する実力者である。しかし彼に魔法使いとしてのスキルは無い。限られた一握りの技能のみを鍛え上げた末に得たその実力も、この魔力量、その行使技術の前には霞んでしまう。
「さてタカミチ、この国ではこんな状況はなんと言ったか――確か、鬼が出るか蛇が出るか、だったか」
「あまり笑えないな、エヴァ。ソレは災厄の象徴であって実物を指している訳ではないんだよ?」
 軽口の応酬は互いの緊張を飼いならす為のものに過ぎない。互いに顔を見合わせなくとも、それぞれに緊張と戦慄が張り付いて剥がし切れていない事は明白だ。
 それでも。彼らはそれぞれの理由から逃避する訳には行かないのだ。
 ならば立ち向かうのみ。如何なる脅威を前にしようとも、その先にしか未来が開かれないというのならば。どのような手段をもってしても、どんな過程を経たとしても、生きてその先へと進むのみ。

 魔力の動きが変化する。
 ただ集約され、凝縮し、その密度を高めるばかりだった魔力が、その周囲に展開される魔方陣に流れ出す。
 高みより低きへと流れる水の様に。
 魔方陣自体もなおその展開規模を拡大させてゆく。
 ただの転移魔方陣ではない。
 その全容を顕にしながら、その性質を全く理解させない魔法術式。六百と云う年月を生きた『不死の魔法使い』たる吸血鬼、その魔法知識が通用しない、全く異質とも云える“魔法理論”。
 術式を紐解く事が出来ず、故に対消滅(キャンセル)する事も出来ず、こうして手をこまねいて術式の完成、魔法の発現を観察している。
 緊張は既に最高潮。
 戦慄は全身を縛り付ける鎖の様。
 不可思議は恐怖を招き、恐怖は身体を侵し、身体は生命保存の為に悲鳴をあげてその場からの離脱を訴える。
 それでも、その場に集まった魔法使い達は、誰一人として一歩も引かず、その瞬間を待ち受ける。
 魔法陣の拡大が止まる。浸透した魔力がそれに追いついた。魔力が完全に通りきった魔法陣が淡く燐光を放ち始める。
 奇蹟が、そのカタチを顕にする――――。

 世界が震えた。
 それは、現代において英雄の道を駆け抜け、しかし英霊へと昇り詰め損ねた存在を迎える、■■■の戦慄(歓喜)。




――Prologue・end 





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