こちらは板移行記念番外編です。
ダーク、バッドエンド気味なのでそれらを許容出来る方のみ、お読み下さい。
ヤンデルイズ番外編【もしも、ルイズがサイトを呼び出せていなかったら】
とうとうこの日が来た。
この十年、本当に長かった。
この日の為にいろいろ考え、準備もしてきた。
「五つの力を司るペンタゴン」
学院に入ってからの一年は、この部屋に一人でいるだけで何百倍もの時間を感じた。
「我の定めに従いし」
でもそれも今日で終わる。
「使い魔を召喚せよ」
私は今日、二十六年ぶりに彼と再会できるのだ。
***
ボムッ!!
辺りには突如白煙が舞う。
「うわっ!?」
「げほっげほっ!!やっぱり失敗したなゼロのルイズ!!」
たくさんいる魔法学院の生徒達は口々に一人の少女を罵る。
だが、その少女はそんな彼女に向けられた罵詈雑言など耳にしていなかった。
(お願い……!!)
煙の中央にムクリと黒い影が生まれる。
「おい、何かいないかあそこ」
生徒の一人がそれに気付く。
「!!」
ルイズはそれを聞くや否や弾けるように飛び出した。
今だ晴れぬ白煙。
誰かが風の魔法で煙を吹き飛ばしていくがそれよりも早く、ルイズは影本人の前に立っていた。
そこには、色褪せて消えたはずの映像が、モノクロからカラー、立体へと像を結ぶように戻っていき、
「グルルルルルル!!」
超強力そうなドラゴンが仁王立ちしていた。
周りの者は皆羨ましそうに眺める。
が、
「こんなのいらない」
ルイズは自身が呼び出した使い魔を一言で切って捨てる。
彼女が来て欲しい使い魔はこの世でたった一人しかいないのだ。
「ミスタ・コルベール!!やり直させて下さい!!」
「え?ミス・ヴァリエール?こんなに素晴らしい使い魔が召喚されたのですよ?」
「こんなのいりません」
そんなルイズの台詞に皆唖然とする。
何せドラゴンだ。
喜びこそすれ、いらないなどと何を考えているのかわからない。
「ダ、ダメですよミス・ヴァリエール。使い魔の儀式とは神聖なもの、気に食わないからやり直すなどというのは許されないのです」
コルベールは驚きながらもルイズを諫め、
「さぁコントラクト・サーヴァントを」
次のステップを進めた。
しかし、
「嫌です、私の唇は一生涯サイト以外に捧げません」
「サイト?誰ですかなそれは」
コルベールにとっては意味不明な事を言って断った。
「私の最愛の使い魔です」
「はぁ?よくわかりませんがコントラクト・サーヴァントをしないと進級できませんよ」
「構いません、スミマセン私学院を止めます」
ルイズは契約もせずに学院を後にする。
「「「「えええええーーーーーッ!?」」」」
後には驚きで絶叫する生徒とコルベール、
「ガルル?」
そして呼び出されたのに何もされない疑問符を浮かべたドラゴンがいた。
***
晩年の頃、彼女は思いを諦めきれないでいた。
寿命というには明らかに早いその晩年は、彼女の齢二十四歳の時に訪れた。
彼女は生きる事を諦めたかのように、人が生命活動を行うに必要なあらゆる行動を放棄していた。
彼女がそれでもこの年齢に至れたのは偏に彼女が貴族だったからだ。
「……好きよ、サイト」
伝えたかった言葉。
伝える事が終ぞ叶わなかった言葉。
願わくば彼女はもう一度彼に会いたかった。
彼女の胸の鼓動が数分おきに小さくなって、やがて止まる。
口元から吸っては吐かれていた吐息は無くなり、完全に時が停止する。
静まり返る室内。
享年二十四歳(実年齢五十歳)
トリステイン王国公爵家ラ・ヴァリエール公爵が三女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは、こうして大きな無念を抱え込んだまま、その短い二度目の生涯を終えた。
***
暗い暗い場所。
グラリグラリと揺れ動く懐かしい感覚。
この場所には覚えがある、そう思って彼女は自身に被さっている布を振り払う。
自室のベッドで横になっていたはずの自分は、中庭の池にある小船の上にいた。
ルイズは逃げるようにしてその場からすぐに駆け出した。
礼儀など金繰り捨てて自室へと駆け出し、カレンダーを眺める。
その暦は、間違いなく自分の今の容姿、六歳頃のそれであった。
「あは……」
自分はまだ六歳。
けどこのまま育てば十年後には十六歳。
「あはは……」
その頃にはトリスイテン魔法学院にいて、“使い魔”を召喚するはず。
「あははははははははは!!!!!!!!!!!!!!!!」
その時、私はまた彼と会うことが出来る……かもしれない。
いつの間にか自分しかいない部屋で大声を出して笑う。
「サイト……やった、やったわ!!私また貴方と会えるの、会えるのよ!!」
それから十年の歳月が流れた。
***
とうとうこの日が来た。
この十年、本当に長かった。
この日の為にいろいろ考え、準備もしてきた。
「五つの力を司るペンタゴン」
学院に入ってからの一年は、この部屋に一人でいるだけで何千倍もの時間を感じた。
「我の定めに従いし」
でもそれも今日で終わる。
「使い魔を召喚せよ」
私は今日、四十四年ぶりに彼と再会できるのだ。
***
ボムッ!!
辺りには突如白煙が舞う。
「うわっ!?」
「げほっげほっ!!やっぱり失敗したなゼロのルイズ!!」
たくさんいる魔法学院の生徒達は口々に一人の少女を罵る。
だが、その少女はそんな彼女に向けられた罵詈雑言など耳にしていなかった。
(お願い……!!)
煙の中央にムクリと黒い影が生まれる。
「おい、何かいないかあそこ」
生徒の一人がそれに気付く。
「!!」
ルイズはそれを聞くや否や弾けるように飛び出した。
今だ晴れぬ白煙。
誰かが風の魔法で煙を吹き飛ばしていくがそれよりも早く、ルイズは影本人の前に立っていた。
そこには、色褪せて消えたはずの映像が、モノクロからカラー、立体へと像を結ぶように戻っていき、
「あれ?ここ何処?」
名も顔も知らぬ一般人Aを呼び出してしまっていた。
「ミスタ・コルベール!!やり直させて下さい!!」
即座にルイズはコルベールに申し出る。
例えその答えがわかっていたとしても。
「ダ、ダメですよミス・ヴァリエール。使い魔の儀式とは神聖なもの、気に食わないからやり直すなどというのは許されないのです」
コルベールはルイズを諫め、
「さぁコントラクト・サーヴァントを」
次のステップを進めた。
しかし、
「嫌です、私の唇は一生涯サイト以外に捧げません」
「はぁ?よくわかりませんがコントラクト・サーヴァントをしないと進級できませんよ」
「構いません、スミマセン私学院を止めます」
「え、えええッ!?」
ルイズは契約もせずに学院を後にする。
「「「「えええええーーーーーッ!?」」」」
後には驚きで絶叫する生徒とコルベール、
「ここ何処?」
そして呼び出されたのに何もされない疑問符を浮かべたそのへんの人Aがいた。
***
晩年の頃、彼女は思いを諦めきれないでいた。
寿命というには明らかに早いその晩年は、彼女の齢二十一歳の時に訪れた。
彼女は生きる事を諦めたかのように、人が生命活動を行うに必要なあらゆる行動を放棄していた。
彼女がそれでもこの年齢に至れたのは偏に彼女が貴族だったからだ。
「……好きよ、サイト」
伝えたかった言葉。
伝える事が終ぞ叶わなかった言葉。
願わくば彼女はもう一度彼に会いたかった。
彼女の胸の鼓動が数分おきに小さくなって、やがて止まる。
口元から吸っては吐かれていた吐息は無くなり、完全に時が停止する。
静まり返る室内。
享年二十一歳(実年齢六十五歳)
トリステイン王国公爵家ラ・ヴァリエール公爵が三女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは、こうして大きな無念を抱え込んだまま、その短いようで長い三度目の生涯を終えた。
***
暗い暗い場所。
グラリグラリと揺れ動く懐かしい感覚。
この場所には覚えがある、そう思って彼女は自身に被さっている布を振り払う。
自室のベッドで横になっていたはずの自分は、中庭の池にある小船の上にいた。
ルイズは逃げるようにして、しかし半ば期待しながらその場からすぐに駆け出した。
礼儀など金繰り捨てて自室へと駆け出し、カレンダーを眺める。
その暦は、間違いなく自分の今の容姿、六歳頃のそれであった。
「あは……」
自分はまだ六歳。
けどこのまま育てば十年後には十六歳。
「あはは……」
その頃にはトリスイテン魔法学院にいて、“使い魔”を召喚するはず。
「あははははははははは!!!!!!!!!!!!!!!!」
その時、私はまた彼と会うことが出来る……かもしれない。
いつの間にか自分しかいない部屋で大声を出して笑う。
「サイト……やった、やったわ!!私また貴方と会えるの、会えるのよ!!」
それから十年の歳月が流れた。
***
とうとうこの日が来た。
この十年、本当に長かった。
この日の為にいろいろ考え、準備もしてきた。
「五つの力を司るペンタゴン」
学院に入ってからの一年は、この部屋に一人でいるだけで何億倍もの時間を感じた。
「我の定めに従いし」
でもそれも今日で終わる。
「使い魔を召喚せよ」
私は今日、五十九年ぶりに彼と再会できるのだ。
***
ボムッ!!
辺りには突如白煙が舞う。
「うわっ!?」
「げほっげほっ!!やっぱり失敗したなゼロのルイズ!!」
たくさんいる魔法学院の生徒達は口々に一人の少女を罵る。
だが、その少女はそんな彼女に向けられた罵詈雑言など耳にしていなかった。
(お願い……!!)
煙の中央にムクリと黒い影が生まれる。
「おい、何かいないかあそこ」
生徒の一人がそれに気付く。
「!!」
ルイズはそれを聞くや否や弾けるように飛び出した。
今だ晴れぬ白煙。
誰かが風の魔法で煙を吹き飛ばしていくがそれよりも早く、ルイズは影本人の前に立っていた。
そこには、色褪せて消えたはずの映像が、モノクロからカラー、立体へと像を結ぶように戻っていき、
「???」
名も顔も知らぬ一般人Bを呼び出してしまっていた。
「ミスタ・コルベール!!やり直させて下さい!!」
即座にルイズはコルベールに申し出る。
例えその答えがわかっていたとしても。
「ダ、ダメですよミス・ヴァリエール。使い魔の儀式とは神聖なもの、気に食わないからやり直すなどというのは許されないのです」
コルベールはルイズを諫め、
「さぁコントラクト・サーヴァントを」
次のステップを進めた。
「……もうめんどくさい、毎回毎回十年も待てない」
しかしルイズはコルベールの勧めを断り杖を掲げ、
ドォォォン!!
一般人Bを爆殺する。
「ミッ、ミス・ヴァリエール!?何をっ!?」
コルベールは焦るが、
「これで私は使い魔を失いました、もう一回やります」
ルイズはそれを無視して再び使い魔を召喚し、
「??」
名も顔も知らぬ一般人Cを召喚してしまい、
ドォォォン!!
「もう一回」
「??」
名も顔も知らぬ一般人Dを召喚してしまい、
ドォォォン!!
「もう一回」
「??」
名も顔も知らぬ一般人Eを召喚してしまい、
ドォォォン!!
「もう一回」
無限に使い魔を呼び続けた。
(サイト、もう少しよ、もう少しで貴方に会えるわ、あはははははははははは!!)
彼女(実年齢七十五歳)の狂気は、彼を引き当てるまで止まることは無い。