「あーと、えっとね? それであの子、飼いフェレットじゃないみたいで当分の間、家で預かることになったんだけど…」
雰囲気を変えようとしたのか、そんな事を言うなのは。
だがアリサはニヤニヤ、すずかはニコニコとこっちを見ている
今もの凄く居た堪れない俺は、しばらく黙ろうかと真剣に考える。
「…えーと、雄介くん?」
「ナ、ナンダ?」
…思いっきり、声が裏返った。
あぁちくしょう、こっち見るなそこの二人!
「え、えっとね? 雄介くんもフェレット預かっていいかって、聞いてくれたんだよね? 家で預かることになっちゃったんだけど…」
「あぁ、いやそれは別に良いけど」
「うん、ありがとう。 ごめんね、勝手に決めちゃって」
「気にすんな、別に俺はどうしても預かりたいってわけじゃなかったし…誰も預かれなかった時の、予備みたいなつもりだったしな」
わざわざ俺を気にするなのはに、そう言って笑ってみせる。
実際、本当に俺はなのは達が預かれなかったらと思っていたんだし。
「まぁ雄介の事はこの辺にしておいて、あのフェレットはなのはが預かるのは決まったけど…名前とか、決めとかない?」
「あ、アリサちゃん。 それなら、もう決めてるんだけど…」
どうやら、なのはは既にあのフェレットに名前を付けたらしい。
なんとなくだが、珍しいと思う。
なのはなら、相談してからだと思ったけれど。
「そうなの? どんな名前にしたのよ?」
「あのね、ユーノくんって言うの」
アリサの問い掛けに、笑顔で答えるなのは。
何となく、オスっぽい名前だ。
「ユーノ、くん?」
「うん、ユーノくん」
何となく、アリサがユーノとくんを区切るように聞いている。
確かに、ぱっと聞くとユーノくんなのかユーノクンなのか…いや解るけど。
「なんか、オスっぽい名前だけど、オスだったっけ?」
「うん、男の子だよ」
昨日はそこまでは見てなかったけど、オスのようだ。
「良い名前だね、なのはちゃん」
「うん!」
すずかの言葉に、満面の笑みを浮かべるなのはだった。
+++
今日も学校が終わって、四人で帰っていた。
四人並んで海沿いの道…と言うか、堤防の上を通って帰る。
帰り道は、結構その日その日で変えるのが俺たちだ。
と言っても皆で何にも無い日とか、アリサとすずかだけが習い事の日で違うんだけど。
この道はかなり危なそうに思うから、いつもは苦言を言うのだが…
今日は、昼間にからかわれた『なのはのお父さん』が確実に蒸し返されるので、黙々と後ろを着いて歩く。
「じゃあね、すずか」
「ばいばい、すずかちゃん」
「また明日、すずか」
「うん、皆ばいばい」
今日最初に別れたのはすずか、すずかの家まで四人で一緒に帰った。
塾とか、習い事などでけっこう俺たちは途中で別れることも多い。
昨日は皆で塾だったが、わりとそっちの方が珍しいしな。
と言うか、いつ見てもすずかの家は大きいと言うか、豪華と言うか。
改めて、良い所のお嬢様なのだと認識する。
「…あ、アリサお迎えが来たみたいだぞ」
「ん、そうね」
そうして今度は三人で帰っていると、俺たちの近くにリムジンが停車する。
中から出てきたのは、アリサの家の執事の人。
アリサに声をかけて俺たちに挨拶する鮫島さんに、なのはと揃って挨拶を返した。
アリサはリムジンに乗り込むと、なのはに声を掛ける。
「なのは、乗ってく?」
「…おい、何でなのはにだけ聞くんだ」
「男でしょ、歩きなさいよ」
なんて差別だ、いや今日は用事があるから歩くつもりだけど。
「このブルジョアリサめ」
「変な造語を作るな!」
「あはは、私ちょっと寄りたいところがあるから」
「そう、じゃあねなのは、雄介」
「うん、ばいばいアリサちゃん」
「じゃあな、アリサ」
軽く挨拶を交わして、アリサはリムジンに乗って去っていった。
いやしかしお迎えのリムジンとかを見ると、やはりアリサがお金持ちだというのを思い出す。
つまりは、完璧に忘れていたんだけど。
だって、それっぽくないしアイツは。
何かこう、俺のイメージとはそぐわない。
「じゃあ、帰ろっか雄介くん?」
「そうだな」
二人だけの帰り道…だからと言って、何かあるわけでも無いのだけど。
何時もどおりに、適当な話題で会話しながら並んで歩いているだけだ。
なのはも、俺と二人きりだといっても大して気にしては居ないみたいだし…単に『友達』と思われすぎてて『男』と思われてないのかも知れないけれど。
いや、なのははまだ小学生何だしそういうのを知らないだけだろう…それでからかってくる、アリサとすずかが例外なんだきっと。
「っと、悪いなのは。 俺は今日ちょっと図書館に寄るから、ここで別れるな?」
「え? うん、図書館に?」
いつも別れる所より、多少手前でなのはに声を掛ける。
首を傾げて尋ねてくるなのはに、俺は自分のカバンを叩きながら。
「期日はまだだけど、図書館で借りた本を読み終わったんでな。 これから返しに行こうと思ってる」
「そうなんだ、どんな本借りてたの?」
「ん、コレだが?」
カバンから取り出したのは、ハードカバーの本。
ちなみにタイトルは、
「三国志?」
「あぁ、自分でも持ってるけど翻訳者が違うヤツだな」
「…そ、そういえば雄介くんの部屋には、本がたくさんあったもんね」
若干なのはは引いているが、俺の部屋の様子を思い出しているのだろうか? そんなに、引かれるような部屋はしてないと思うんだけど…。
ちなみに俺の部屋は、四方の壁の一面が本棚で埋まっている部屋だ。
漫画に小説やライトノベル、辞書や哲学書など二回目の人生なのを最大限に利用してなかなか読めなかった本を大量に買ったりして読んでいる。
ついでに言えば、本は基本的に手元に置きたいタイプの人間なので溜まる一方だ。
「雄介くんって、良く図書館で本借りるよね?」
「まぁな、買うお金が無いのと…」
「のと?」
小さく、首を傾げてみせるなのは。
可愛いな、いやそうじゃなくて…
「これ以上買うと、部屋の床が抜けるかもって言われて本棚を増やせないからな」
「…そうなんだ」
「あぁ」
だから、本はあんまり増やせない。
ただでさえ、今の本棚は一杯なのだから。
後、良く行くお店はブッ○オフ…定価でなんて、小学生の小遣いじゃ買ってられないんだよ。
今回みたいに、自分でも持ってるヤツの訳者が違うとかは借りて済ませるけども。
あとはゲームもそこそこ、基本的には物語を読むのが好きなのだ。
「そういうわけで、今日はサヨナラだな」
「うん、ばいばい雄介くん」
「あぁじゃあな、なの…あーいや、ちょっと待った」
「ん? どうかしたの、雄介くん?」
咄嗟に思い出して声を掛けたは良いけれど、改めて思えば聞くのはちょっと恥ずかしい。
と言うのも、前に約束したことの確認みたいなものだけど。
いやしかし、わざわざ確認するのも恥ずかしい…俺自身に関係することだから、余計に。
「あー…週末のサッカーの試合、見にくるんだよな?」
「うん! 頑張ってね雄介くん、アリサちゃんたちと応援してるから!」
「…頑張ります」
少しは狙ってたとは言え、実際にこうなると恥ずかしいものがある。
俺、まともに試合できるよな…うん、きっと大丈夫な筈だ。
「じゃあな、なのは」
「うん、ばいばい雄介くん!」
+++
なのはと別れ図書館に到着し、本を返却すれば後はまた探すのみだ。
とはいえ、結構読みたいと思う奴は読んでしまったんだけど。
精神大人の、小学生の時間の使い方はとてもたくさんあるように見えて、少ないんです。
子供らしくない行動は、出来ないしな。
まぁ、こうやって大量の本を読むのは普通…だと、良いなぁ。
「そういえば、一回ここですずかと会ったなぁ」
どのくらい前だったかは覚えていないけど、偶然の遭遇だった。
その時は、二人揃って珍しいものを見たって顔で向かい合っていたんだったか。
それからはちょくちょく、すずかと面白い本の情報を交換しているけども。
そんな事を考えつつこの後は結局、特に良いのが無かったので翻訳者の違う水滸伝を借りて帰る事にしたのだった。
+++後書きとコメレス
とあるオリ主となのは短編見てテンション上がったので、書きかけだったのを気力で書き上げたww
いつも、これくらいの気力が続けばいいのにww
>ココロッケさん
ありがとうございます、このままほのぼのしていくので魔法に関わるのはまだ先の予定ですww 魔法以外では、そこそこ早いうちに関わるつもりですww