<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

SS投稿掲示板


[広告]


No.13960の一覧
[0] 『男子が花道』(リリなの二次 転生男オリ主 原作知識なし 同年代)[十和](2011/02/03 00:01)
[1] 『本気でなのはに恋する男』 一話[十和](2009/11/14 18:14)
[2] 『本気でなのはに恋する男』 二話[十和](2009/11/21 14:06)
[3] 『本気でなのはに恋する男』 三話[十和](2009/11/26 00:43)
[4] 『本気でなのはに恋する男』 四話[十和](2009/12/06 21:56)
[5] 『本気でなのはに恋する男』 五話[十和](2009/12/12 17:08)
[6] 『本気でなのはに恋する男』 閑話[十和](2009/12/19 16:31)
[7] 『本気でなのはに恋する男』 六話[十和](2009/12/26 16:03)
[8] 『本気でなのはに恋する男』 七話[十和](2009/12/29 22:23)
[9] 『本気でなのはに恋する男』 八話[十和](2010/01/02 17:41)
[10] 『本気でなのはに恋する男』 九話[十和](2010/01/09 17:10)
[11] 『本気でなのはに恋する男』 十話[十和](2010/01/16 22:25)
[12] 『本気でなのはに恋する男』 十一話[十和](2010/01/24 00:44)
[13] 『本気でなのはに恋する男』 閑話2[十和](2010/02/06 15:52)
[14] 『本気でなのはに恋する男』 十二話[十和](2010/02/06 16:16)
[15] 『本気でなのはに恋する男』 十三話[十和](2010/02/13 16:36)
[16] 『本気でなのはに恋する男』 十四話[十和](2010/02/21 03:06)
[17] 『本気でなのはに恋する男』 十五話[十和](2010/02/28 03:46)
[18] 『本気でなのはに恋する男』 十六話[十和](2010/03/07 04:46)
[19] 『本気でなのはに恋する男』 十六話②[十和](2010/03/14 04:01)
[20] 『本気でなのはに恋する男』 十七話[十和](2010/03/21 14:32)
[21] 『本気でなのはに恋する男』 閑話3[十和](2010/03/28 10:42)
[22] 『本気でなのはに恋する男』 十八話[十和](2010/04/04 11:03)
[23] 『本気でなのはに恋する男』 十九話[十和](2010/04/11 00:50)
[24] 『本気でなのはに恋する男』 二十話[十和](2010/04/18 02:40)
[25] 『本気でなのはに恋する男』 二十一話[十和](2010/04/25 03:48)
[26] 『本気でなのはに恋する男』 二十二話[十和](2010/05/03 22:19)
[27] 『本気でなのはに恋する男』 二十三話[十和](2010/05/09 20:54)
[28] 『本気でなのはに恋する男』 閑話4[十和](2010/05/15 22:25)
[29] 『本気でなのはに恋する男』 二十四話[十和](2010/05/22 17:27)
[30] 『本気でなのはに恋する男』 二十五話(無印終了)[十和](2010/05/30 04:14)
[31] 『本気でなのはに恋する男』 二十六話[十和](2010/06/27 10:51)
[32] 『本気でなのはに恋する男』 二十七話[十和](2010/07/04 22:03)
[33] 『本気でなのはに恋する男』 二十八話[十和](2010/07/14 23:33)
[34] 『本気でなのはに恋する男』 28.5話[十和](2010/08/15 23:44)
[35] 『本気でなのはに恋する男』 二十九話[十和](2010/09/05 23:24)
[36] 『本気でなのはに恋する男』 三十話[十和](2010/11/07 00:59)
[37] 『本気でなのはに恋する男』 三十一話[十和](2010/11/25 00:15)
[38] 『本気でなのはに恋する男』 三十二話[十和](2010/12/24 00:10)
[39] 『本気でなのはに恋する男』 三十三話[十和](2011/02/03 00:02)
[40] 『本気でなのはに恋する男』 三十四話[十和](2011/04/12 00:05)
[41] 『本気でなのはに恋する男』 三十五話[十和](2011/08/12 23:47)
[42] 『本気でなのはに恋する男』 三十六話[十和](2011/12/04 23:03)
[43] 『本気でなのはに恋する男』 三十七話(空白期間終了)[十和](2012/03/20 00:10)
[44] なの恋 簡易的キャラ紹介[十和](2011/12/04 23:04)
[45] 『なの恋』 外伝 『ドリームカップル』[十和](2010/06/06 21:32)
[46] 『なの恋』 外伝『ARISA』[十和](2010/08/15 23:39)
[47] 『なの恋』 外伝『ARISA epⅡ』[十和](2010/10/06 00:08)
[48] 『なの恋』 外伝『ARISA epⅢ』(最新話)[十和](2012/03/20 00:10)
[49] ネタ『魔法少女リリカルなのは TTS』[十和](2010/06/20 03:13)
[50] オマケ『短編集』[十和](2010/10/06 00:11)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[13960] 『なの恋』 外伝『ARISA epⅢ』(最新話)
Name: 十和◆b8521f01 ID:c60c17ce 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/03/20 00:10
+++前書き
 今作、外伝『ARISA epⅢ』はタイトルどおり、外伝『ARISA』『ARISAⅡ』の続きの話となっています。ですので、読む際は是非とも『ARISA』『ARISAⅡ』を読んでからご覧ください。

 注意事項といいますか、この話もまた時系列的には小学生の話でありながら、作者の脳内では中学生くらいで作成しているため、随所に違和感が発生するかもしれません。
 ですので、ご覧になる際は読んで違和感の無いほうでの想像をよろしくお願いします。

 今作はなのは、アリサ視点を交互に移る上に、途中で大きく時間軸が動きますのでご注意ください…それでは、外伝本編をどうぞ。



+++Side、なのは

「……何か、ちょっと二人の雰囲気、変だったよね?」
「うん、何かあったのかな?」

 二人が出て行った病室で、すずかちゃんとそんな事を言い合う。
 アリサちゃんの場合は、何だか今日は来たときからちょっと変だったけど。

「ねぇすずかちゃん? アリサちゃんは、今日は朝からあんな感じだったの?」
「うん、だから気分転換もかねて誘って来たんだけど……」

 お見舞いで気分転換には、ならないと思うよ?
 外に出るって意味なら、効果はあると思うけど。
 でもアリサちゃんだけじゃなくて、雄介くんもちょっと……

「すずかちゃんは、雄介くんの方は何か知ってる?」
「ううん、でもなのはちゃんの方が知ってるんじゃない?」

 え?と思ってすずかちゃんを見返すと、何も疑問に思っていないような表情。
 だって、とすずかちゃんは続けて。

「雄介君があそこまで変わっちゃうのは、殆どなのはちゃんが原因だし……今日、ずっとあんな感じだったから。 思い当たること、無い?」
「……えっと」

 余りにも真っ直ぐな、すずかちゃんの言葉に何を考える間もなく、自分の記憶を思い返す。
 そうやって思い返したら、すぐ…二日前のあの日のことが思い出せた。
 一人遅れてお見舞いに来てくれた雄介くん、そして…真剣な顔で管理局を辞めてくれって頼まれた時の事を。

「……思い当たること、あったんだ?」
「え、あ……うん」

 私の表情で分かったのか、小さな声で問いかけてくるすずかちゃんに、少しだけ躊躇いながら頷いて。
 そして改めて思い出すのは、あの時の雄介くんの、その言葉。

+++

『……まだ、管理局員を続けるのか? そんな、大怪我して』

 病室に入ってきた後、少しだけいつも通りの他愛も無い話をした、その後。
 いきなり手を取られて驚いていた私に、凄く真剣な顔で雄介くんはそう切り出して。

『なぁ? そんなに大怪我して、まだ続けるのか? そんなになってまで、続ける事なのか?』

 真っ直ぐに、正面から言われる言葉に、私は咄嗟に何も言い返せなくて。

『どうして、なのはがそんなになる必要があるんだ? なのはが、怪我してまでしなきゃいけない事じゃないだろう!?』

 少しだけ、雄介くんが声を荒げた。
 でも直ぐに、それを隠すように俯いてしまって。
 咄嗟に何か言おうとしたけど、何も言えないまま、私は雄介くんが顔を上げるのを、見てる事しか出来なかった。

『……心配なんだ、なのはの事が』

 ギュッと、強く手を握られて。

『怪我したのを見て、凄く怖かった。 もしかしたらとか、そんな事だって考えた』

 震えるような声で、そう言う雄介くん。
 でも私は、何も反応できなかった。
 驚いてたのは勿論だけど、でもそれ以上に凄く、雄介くんがこんな風に感情をあらわにしてるのが、私にとってはとても意外で。

『もう! お前が怪我したりなんて、見たくないんだ、アリサも、すずかも……俺だって、お前が怪我するの、嫌なんだ』

 きっと、雄介くんは気が付いていなかったと思うけど。
 そう言い続けている雄介くんの目元には、小さく涙が光っていて。

『もう、良いだろう? 頑張ったじゃないか、良くやったじゃないか……もう十分じゃ、ないのか?』

 それでも、真っ直ぐな目で。

『辞めたって、誰も何も言わないぞ? いや……俺が、絶対に言わせないから。 だから、もう、辞めよう、なのは?』

 真っ直ぐな声と、力強く握られる手の力強さで。

『見たくないよ、俺は……お前が怪我したり、傷ついたり、誰かを護るためにでも、身を挺したりするのなんて』

 雄介くんの、本当の声が、私に響いて。

『……頼むよ、なのは』

 でも、私は。

+++

「なのはちゃん?」

 呼ばれた声に、ハッと顔を上げると、すずかちゃんが心配そうにこっちを覗き込んでいて。

「大丈夫、なのはちゃん?」
「う、うん大丈夫だよ。 ゴメンね、ちょっと考え込んじゃってて」

 そう言いながら、私は自分のカーディガンを握る手に、強く力が篭っていることに気がついた。

+++


『ARISA epⅢ わたしとあなたのホントの気持ち』


+++Side、アリサ

「~♪」

 一人、自室でちょっと歌を歌いながら、並べてある服からまた一組選んでみる。
 鏡の前で合わせてみて、

「……なんか、ちょっとパッとしないわね」

 そう呟いて、持っていた服を置きなおして、ふと周りの惨状に視線を向ける。
 部屋中に散らばるのは、私の選び抜いた私服の数々。
 ついでに言えば、その真ん中で下着姿のまま仁王立ちしてる私も、惨状の一つかも知れない。
 うん、見られた時の私と……他意はないけど、見てしまった場合の雄介の双方にとって、ね。

コンコンッ

 部屋に響くノックの音に、思わず小さく飛び上がる。
 ドアへと視線を向けたその直後、ドアの向こう側から聞こえたのは

「お嬢様?」
「さ、鮫島?」
「はい、そうですが?」

 思わず聞き返してしまったけど、そういえば出掛ける30分前の時間に、鮫島に声を掛けて欲しいと言っておいたんだっけ。
 一応時計を確認すれば、ちょうど私の頼んだ時間。

「ありがとう鮫島、もうあと少ししたら出るから」
「はい、送迎などはいかがしますか?」
「ん……今日は良いわ、歩いていくから」
「分かりました、それでは失礼いたします」

 そんなやり取りを交わし鮫島が立ち去る気配を感じてから、もう一度改めて私服の山に向かい合った。
 鮫島が声を掛けてきた以上、もうこれ以上はあんまり時間を掛けられないんだけど…それでも迷う。
 何しろ今日これから行くのは、私と雄介の初デートに、なるんだから……一応。
 まだ別に、ちゃんと付き合ってる訳じゃないんだけど……それでも二人きりなんだし、私としてはそういう気構えで準備したいんだし。

 そもそも、雄介に私の気持ちを伝えて、雄介の気持ちも聞いて。
 それでも私達の関係に、そこまで大きな変化は無かった。
 出た結論が、殆ど現状維持だったって言うのもあるけど、それでも何より……なのはが入院中だったのが、きっと一番の理由。
 雄介はきっと、なのはが入院してる間は、そんな事に気を使えないと思うし……私だって、なのはの入院に付け入るような真似、したくなかったしね。

 だから、互いの気持ちを伝えてから、なのはが退院するまで半年と少し、私達はどっちも必要以上に相手に構ったりはしなかった。
 まぁそれでも、学校帰りにちょっとその辺のお店に寄ったりとかはしたんだけど、それくらいは友達付き合いとして普通くらいの距離。
 まぁそういう感じでずっと今まで過ごしてきて、それでこの間なのはが退院して、ちょっと不謹慎だけど私としてはようやくチャンスがやってきた。

 雄介が一人で居るところを狙ってちょっと強引に、今日の二人きりでの約束を取り付けて。
 別に、今日の一回で雄介の気持ちを完全に振り向かせようとか、そんな事は考えてないけれど。
 ただ、私は本気だって、まだ諦めてないって言うのを、改めて雄介に伝えるために。

 だから選ぶ服には妥協したくないし、本当は髪型も色々変えてみたかったけれど。
 髪型は、今日はちょっと無理そう。
 仕方ないから、服だけでも一切の妥協なしに、最高のものを選んで。

 それで、雄介のビックリした顔でも見れれば、それで十分。
 今まで友達だった、そんな私にドキッとしてくれれば、それで十分に伝えられるから。
 頭の中にそうなった雄介の様子を思い浮かべて、小さく笑いながらまた服を選んで。

 こんな事で満足できるなんて、私って……安い女、かな?


+++Side、なのは


「あれ?」

 ミッドの病院を退院して、海鳴に戻ってきての静養中。
 本当は、すぐにでも訓練を再開したかったけれど、絶対にダメってお医者さんに言われたから。
 だから今は里帰りと、ちょっと散歩したりする程度の運動だけの静養生活を、こっちで送ってる。

 毎日ちょっとした散歩に出掛けて、ノンビリと過ごす日常。
 今日もそれだけだったつもりだけど、散歩に出かけた先の公園でちょっと意外な人に会った。

「雄介くん」
「……ん、なのはか」

 後姿に声を掛けて、振り向いたのは予想通りの人。
 ちょっとだけ、驚いたような顔をしている雄介くんは、ちょっとこっちを見た後に首を傾げて。

「動いても、平気だったか?」
「もう退院してるし、ずっと動かないと鈍っちゃうよ」

 そうかって一言で答える雄介くんに、笑顔を向けながら。

「久しぶり、雄介くん」
「おう、久しぶり」

 雄介くんと最後に会ったのは、雄介くんがお見舞いに来て、私に管理局を辞めて欲しいって言ったとき以来。
 ずっと、なんて雄介くんに話しかけたら言いかって考えていたけど、実際に会ってみたらすっと言葉が出てきて。
 自分でも、自然に笑えてるなって思いながら。

「雄介くんは、ここで何してるの?」
「ん、まぁ待ち合わせだ……そういう、なのはは?」
「お散歩だよ、ずっとお家に居るのも暇だから」

 そうなのか、なんて頷いてみせる雄介くんに、言葉に出来ないような、そんな安心感を感じる。
 私は、自分でも変わったって思うけど、だからこそ昔から変わらないような雄介くんを見て、不思議な安心感を貰って。

「ねぇ、雄介くん」
「ん?」
「今度またオススメの本とか、教えて貰っても良い? 最近、時間がいっぱい出来ちゃったから」
「……考えとくよ」

 そう、雄介くんは言うけれど、顔は苦笑するみたいに笑っていて。
 だから私も、釣られるように笑って。

「雄介!!」

 聞こえてきた声に、弾かれるみたいに視線を向けた。
 そこに居たのは、見たことの無い、でも知ってる人で。
 普段とは全く違う印象の格好をしたアリサちゃんが、こっちを睨むようにしながら強い眼差しを。

 私に、真っ直ぐ向けていた。


+++Side、アリサ


 自分でも、浮かれてるなぁなんて思いながら、雄介と会う約束の公園に来て。
 まだ時間が合ったから少しだけ寄り道して、そのついでに髪型もやっぱりちょっと変えたりしてみて。
 変えた髪形に自信が持てなくて、少しだけ後ろで一つに縛った髪を弄びながら、着いた約束の場所に。

 雄介と、なのはが居た。

 少しだけ、心がちくっとして。
 でもそれを押し殺して、いつも通りの、そんな顔を作って二人に近づいて。
 声を掛けようと、二人の顔に目をやって。

 雄介となのはが、互いだけを見て笑いあっているのに、どうしても耐えられなかった。

「雄介!!」

 直前まで考えていた言葉は全て吹き飛んで、ただ声を荒げてそう叫んで。

「こっちに、来て!」
「おい、アリサ?」
「あっ……」

 強引に、雄介の腕を取って、すぐに来た方に引き返す。
 雄介が戸惑っているのは分かったし、なのはが驚いた顔をしているのも理解できたけど。
 今の私には、そんな事を気に掛ける余裕が無かった。

 雄介の腕を掴んで、必至にさっきの場所から離れようと歩きながら、強く強く唇を噛んで。
 震えそうになる体を叱咤しながら、頭の中ではさっきの光景が駆け巡っていた。
 小さく、自然な笑いを浮かべながら、互いを見てる雄介となのは。

「お、おい、如何したんだ?」

 自分でも、分かってるはずだった……雄介がまだなのはを好きだって。
 理解していて、もし雄介となのはが付き合うなら、祝福しようって考えたこともあった。
 でも、それでも……まだ、覚悟が足りなかったのかな?

「おい? アリサ?」

 ただ、笑いあってるだけだったのに、それでもそんな二人を見てるのが、言葉に出来ないくらい衝撃的で。
 笑って、冗談交じりに避わす事も出来ず、ただ声を荒げ二人を引き離すしか出来なくて。
 そして今は……ただ雄介を連れて、あの場所から逃げる事しか出来なかった。
 後ろから、何度か私を呼ぶ声が聞こえていたけれど、それらは全て無視して。

 どこを歩いているのかも分からないまま、ただひたすら雄介の手を引いて歩いて。
 どこに向かっているのかも、一体何がしたいのかも分からなかった。
 ただただ、必至に歩き続けて。

「アリサ!」

 それは、私にとっては突然の呼び掛けで。
 呼ばれるのと同時に、強く手を引かれた。
 咄嗟にバランスを保てなくて、身体が後ろに倒れそうになり。

「おい、しっかりしろ!」

 その身体が、雄介に受け止められた。
 いつもだったら、そのまま受け止めてもらう事も出来たのに、私は全力で雄介の腕を振り払って。
 自分が、全然制御できなくて。

「お、おい?」

 戸惑った声を出す雄介に、向かい合うことも出来なくて、背中を向けたまま立ち止まる。
 どうすれば良いのか、何を言えば良いのか、そんな事も何も分からなくて。
 下を向いて俯いていると、ふと何かが頬を流れていくの感じた。

 そっと、手で拭ってみると、それは私の涙で。
 自分が泣いているのだと自覚した途端、堪えきれなくなったみたいにとめどなく涙が溢れてきて。
 何度も、何度拭っても溢れてくる涙を拭っていると。

「おい!?」

 私の後姿から何か分かったのか、雄介の驚いた声が聞こえた。
 それと同時に雄介の手が私の肩に置かれ、そのまま振り向かされそうになって。
 泣いた顔が見られたくなくて、そのまま咄嗟に雄介の胸へと飛び込んだ。

 飛び込んだ瞬間、いつかのように一瞬だけ肩を支えられたけれど、その手はすぐに離されて。
 その事にまた一つ心を揺さぶられながら、必至に顔を見せないように雄介の肩へと顔を伏せる。
 何度か、躊躇するような気配を感じて、やがてそっと雄介の手が肩に乗せられて。

 そのままこちらを、あくまでも優しくそっと押しのけようとする手に、雄介の胸元を掴んで抵抗する。
 何度か肩を押されて、それでも手を離さない私に、諦めて肩から手を離す雄介。
 最後まで優しく、決して強引に押し退けなかった事に、安堵と少しの切なさを感じて。

 どうして、ここまで優しいの?
 今だって、なのはから無理矢理に引き離したのに。
 ……怒ってくれても、良いのに。

 私は、雄介にとってその程度なの?
 何するんだって、怒って無理矢理に私を押し退けても、きっとそれは正しいのに。
 やっぱり、私の事は友達にしか見てくれないの?

 そこまでの考えが頭の中を過ぎって、私の口が自然と動いた。
 それは今まで黙っていて、それでいて絶対に雄介には言わないようにしようとしていたこと。
 雄介のこともなのはの事も無視した、自分勝手なホントの気持ち。

「……どうしてよ」

 ちゃんと、気持ちは伝えたのに。
 好きだって、言って。
 雄介も、認めてくれたじゃない。

「どう、してなの」

 ちゃんと、約束したのに。
 無理やりでも、雄介だって笑ってたのに。
 一緒に笑って、頷いてたのに。

「今日は、私とだったのに」

 初めての、二人きりなのに。
 ずっと、行きたかったけど。
 でも、ずっと言えなくて。

「なんで」

 どうして。

「私じゃ、ダメなの……?」

 雄介。

+++

 どれくらい、雄介の肩に顔を伏せたままだったのか。
 気がつけば自然と私の涙は止まっていて、一体どれくらい泣いていたのか、全く分からなかった。
 ある程度は気持ちも落ち着いていたけれど、顔を上げようとは思えなかった。

 きっと目元は、泣き過ぎて赤く腫れてるし、軽くしてたお化粧もグシャグシャで酷い顔。
 でも、自分が酷い顔とか、そんなのはわりとどうでも良くて。
 ただ、雄介が今どんな顔をしているか、それが気になった。

 きっと、呆れてる?
 それとも、失望された?
 頭の中は、そんな暗い想像が飛び交っていて。

 それなのに、次の瞬間に起こったのは、全く理解出来なかった。
 何を思ったのか、雄介は私の肩に手を置いて。
 そしてそのまま、そっと私を抱き寄せたのだ。

「……悪、かったな、アリサ」

 聞いた瞬間は、その言葉が理解できなかった。
 とうして……どうして、ここで雄介が謝るの?
 悪いのは、どう考えても私の筈で。

「俺、そこまで真面目に考えてなかった。」

 ポツリと、囁くように呟く雄介。
 その声は、何かを悔やんでいるような、そんな声で。
 私はただ、雄介に抱き寄せられたまま、静かに聞くことしか出来なくて。

「お前に好きだって、そう言われてたのに。 それなのに、さ」

 そう言いながら雄介の手が私の背中にまわされて、さらに強く抱きしめられて。

「お前が泣くなんて、考えたこともなかった」

 私はその雄介の言葉に、ただ黙っているだけしか出来なかった。
 抱きしめる腕の力は強くて、でも、痛いって言うことも出来なくて。
 雄介はそんな私を抱きしめたまま、悪いってもう一度だけ繰り返してから。

「俺となのはが一緒に居るのを見て、お前が泣くなんて想像したこともなかった……俺のことが好きっていうの、本気だって思ってなかったんだな、俺」

 そう言う雄介の声は、少しだけ濁しながらどこまでもハッキリとしていて。
 あぁ、本当に本気じゃなかったんだって、つい納得してしまった。
 悲しいけれど、でもそれ以上に何だか自分が情けなくて。

 雄介との初デートなんて、浮かれたことを考えてた私。
 でもそれは、雄介にとっては普段通りの、単なる遊びの一環でしかなくて。
 私って、本当に……馬鹿。

「ゴメンな、アリサ。 幾ら謝っても許されることじゃないけど……本当に、ゴメン」

 そう言って、さらに私を強く抱きしめる雄介。
 今はもう、何も考えたくなくて、ただ雄介に体を任せて。
 でも、それでも。

「……雄介」

 そっと名前を呼んで、ちょっと痛いのを無視して顔を上げる。
 ほんの少し、高いところにある雄介の顔。
 そこには、ただ私だけを真っ直ぐに見てくれる視線があって。

 雄介と見つめ合っている、本当にただそれだけの事で私の頭は一杯になる。
 熱に浮かされたみたいに、頭の芯からぼぅっとしてしまって。
 そして、私は自分でも意識していなかった事を呟いてしまった。

「キス、して」

 呟いた言葉に、雄介の顔が驚きに染まる。
 それを見て、自分が何を言ったのか理解して。
 改めて、自分の言葉を心の中で呟いた。

 そして

「キス、して……雄介」

 もう一度、同じ言葉を繰り返して。
 聞き間違いでも、私の言い間違いでも無い。
 これは、今私が本当にして欲しいことだからって、そんな意味を込める。

 じっと、少し高いところにある雄介の顔を見つめて。
 最初の驚いたような顔から、少しだけ考えるような間を置いて、顔を赤くする雄介。
 普段なら、ふざけるななんて言われて、軽く突き放されてしまうけれど、今だけはそんな事もなくて。

 何時もなら、こうやって顔を赤くするのは私の方。
 そんな事を思いながら、少しだけ……本当に少しだけ強く雄介の胸元に、自分の体を押しつける。
 背中にまわっていた雄介の手も、私を押しのけたりするような事はなくて。

「……アリサ」

 躊躇いがちに名前を呼ばれて、いつの間にか固くなっていた体の力を抜いた。
 そして、ゆっくりと雄介の視線に、自分の視線を合わせて。
 ただじっと、視線を合わせる私たち。

「……良いのか?」

 囁くような声で、そう言う雄介。
 私は無言で、ただ小さく頷いて。
 それでも雄介は、しばらく躊躇っていたけれど。

「雄介」

 私がもう一度名前を呼ぶと、意を決したように正面から見つめ返してきて。
 私の背中に置いていた手を、ぐっと自分の方に引き寄せる雄介。
 抵抗せず、私はそのまま雄介を見つめ続けて。

「ん」

 何の予告もなく、雄介の唇が重ねられた。
 ロマンチックな言葉も、何かの意味を込めた視線でのやり取りも何もなく。
 ただ見つめ合ったままの、それが雄介からの初めてのキスだった。


+++Side、なのは


 どうして?

 私の心に浮かんできたのは、そのたった一言だけで。

 雄介君を引っ張って、走り去ったアリサちゃん。
 その様子に、何だか心が騒ぐのを感じて。
 まだリハビリ中だから、走って追いかける事も出来なくて。

 ただ当てもなく歩いていただけだったのに、どうしてか見つけることが出来た。
 公園の人気のない一角で、雄介君の後ろ姿を見つけそこへと向かって。
 そして、私がそこで見たのは。

 雄介君とアリサちゃんの、抱き合っている姿だった。

 アリサちゃんの肩に手を置いている雄介君と、雄介君の胸元に飛び込んでいるように見えるアリサちゃん。
 それを認識した瞬間、私の足が止まって。
 その距離は顔は見えても声は聞こえず、でも向こうからも雄介くんからは背中側になっていて、私は見えない………そんな距離と位置で。

 アリサちゃんからは、もしかしたら見えるかもしれないけど、今は雄介くんの肩に顔を伏せていて。
 だから見つからないって、思ったその次の瞬間。
 雄介君が、アリサちゃんを抱き寄せたのを見てしまった。

 それは、見間違いでも何でもなく、雄介くんがそっとアリサちゃんの肩に置いていた手を背中に回して。
 それは、親愛の表現なんかじゃない、まるで何かを求めるみたいな、そんな抱き寄せ方で。
 私の頭の中は、真っ白になってしまった。

 ただただ呆然としながら、どうしてこんなにショック何だろうって、そんな事を考えて。
 ビックリするのはおかしくない、でも何で私はショックを受けているんだろうって、そんな考えが頭を過ぎって。
 まだ、その気持ちがハッキリしない私の視界の中で、

 雄介くんが、アリサちゃんとキスをしていた。

 何が起こったのか、咄嗟に理解できなくて。
 目の前で起こった事に、どこまでも現実感が伴わなくて。
 ようやく、自分の中で何が起こったのかを理解したとき。

 私のどこかが、大きな悲鳴を上げた。

+++

 気がつけば、私は走っていた。
 それはリハビリ中の身体には、とても辛い行為だったけど。
 どうしてか、止まることだけは考えられなくて。

 必至に足を動かして、脇目も振らずに走り続けて。
 ……まるで、何かから逃げるみたいに、走って。
 ただ走りながら、頭の中ではたった一つの光景がぐるぐる、ぐるぐると回り続けていた。

「はぁ、はぁ……っ!」

 息が、苦しい。
 呼吸も満足に出来なくて、胸がじくじくと痛んで。
 でも、それは本当に息が苦しいから?

 走るのをやめて呼吸を整えれば、どうして痛いのか分かるはずだけど。
 でも今の私には、止まることが出来なくて。
 ……どうして止まれないかも、分からないのに。

 走り続けながら、私の脳裏を過ぎるのは、ずっと同じ光景で。
 その光景が何度も、何度も再生してはまた止まって。
 一瞬だけ、まるで見せ付けられてるなんて、そんな感じがした。

 どれくらい走っていたのか、やがて視界の中に見慣れた自宅が見えてきて。
 そのまま、家に駆け込んだ。
 鍵を開けて、靴を脱ぐために足を止めたところで、今までの疲労が一気に来て。

「っぁ!?」

 崩れ落ちるみたいに、膝をついた。
 忘れていた呼吸が再開して、苦しくて顔を伏せて。
 そして、その視線の先にあった物を見て、咄嗟にまた息が吸えなくなった。

 視線の先にあったのは、家の鍵やキーホルダーのついた普通の鍵束。
 でも私の視線は、その中のある一つのものに据えられたまま、目を離すことも出来なくて。
 青い星形の、なんて事のない普通のストラップ。

 でもそれは、雄介くんから貰ったもので。
 何年か前に貰って、最初は携帯電話につけていたけど、管理局での仕事とかで携帯を持てないことが増えて。
 それからは、ずっと持っていられるように、こっちの鍵束に付け替えたものだった。

 それが手に握り込んだ鍵束からこぼれて、一つだけ私の目の前に飛び込んできて。
 驚きと、それと何か分からない感情の二つが、私の中で渦巻いていて。
 私は一度、ぎゅっと目を閉じた。

「誰か、帰ってきたー? って……なのはっ!?」

 目を閉じた直後、そんな声が聞こえて目を開ければ、慌てた顔のお姉ちゃんが居て。
 膝をついている私を見て、慌てて駆け寄ってくるお姉ちゃん。
 でもそんなお姉ちゃんに、大丈夫だよって言ってあげることも出来なくて。

 分からない事が多すぎて、苦しい事が多すぎて、私は必至にまた目を閉じる。
 そうやって目を閉じると、何も見えなくなった所為か。
 ふと昔の……雄介くんの事が、頭を過ぎった。

 例えば、このストラップをくれた時の事。
 まだ魔法に出会ったばかりで、色々な隠し事をしていた時期。
 アリサちゃん達と選びながら、最後は雄介くんの意見が決め手で。

 その後、雄介くんのお土産を決めるときには、アリサちゃん達の勧めで形は一緒のストラップ。
 色違いのお揃いだぁ、なんてその時は心の中で思っていたけど。
 今思えば、きっと一人だけお揃いなのが、ちょっと照れくさかったから。

 一人だけお揃いなのはちょっと照れくさくて、でも雄介くんとお揃いなのは、純粋に嬉しいなってあの時は思った。
 普段は、少し不思議な行動もするけど、一緒に居て楽しい大切なお友達。
 でも、それが少しだけ変わったのは、きっと私がアリサちゃんを怒らせちゃった、その時からで。

 私にとって雄介くんは、なんて言うか同い年なのに、時々お兄ちゃんみたいな雰囲気の時があるちょっと不思議なお友達。
 私が魔法に出会って、アリサちゃんやすずかちゃん、雄介くんに隠し事をしてるとき、私が隠し事してることに気がついても、無理に聞いたりはしてこなくって。
 一回だけ、本当に話せないかだけを聞いたら、後は聞かないでそっとしてくれる……そんな、ちょっと甘えちゃえるような人。

 それ以外にも、色々アリサちゃんたちには相談できないことを、雄介くんには相談したりして。
 あの頃は、まだ意識していなかったけど、きっと雄介くんの事はすごく信頼してて。
 誰にも相談出来ない事でも、最後には雄介くんに相談すれば良いんだって、そんな事を考えちゃうくらい私は。

(そっか……)

 唐突に、それでいてふっと、何の気なしに気がついた。
 きっと私、雄介くんの事が好き。
 雄介くんを頼りにして、甘えても良いなんてそんな事を考えるくらい、雄介くんの事が好きで。

 今まで、意識していなかったけど。
 でも、もうハッキリと言える。
 私は、雄介くんの事が好き。

 だから、アリサちゃんと抱き合ってるのを見て、頭が真っ白になって。
 キスしてるのが、信じられなくて、心が痛かった。
 何も、考えたくなくなる位に。

「なのは、大丈夫? どうしたの、一体?」
「お姉ちゃん……」

 優しく肩を揺すられて、ゆっくりと顔を上げる。
 じっとお姉ちゃんを見つめると、お姉ちゃんはそっと涙を拭ってくれて、そのまま私を抱きしめてくれ。
 そうやって抱きしめられるままに、お姉ちゃんの肩に顔を伏せて考える。

 自分の気持ちに気がついてしまえば、どうして今まで気づかなかったんだろうって思うくらい。
 それくらい、自分の中ですんなり納得出来て。
 もう他には考えられないくらい、自分の気持ちを信じれた。
 
 私はきっと意識せず、ずっと雄介くんの事が好きで。
 その気持ちがずっと、友達に対してのものだって、そう頑なに思いこんでて。
 でも……

「お姉ちゃん……」
「なに、なのは?」
「私、ね」

 雄介くんの事が好き。
 そう、たった一言を誰かに伝えるだけで、私の心臓は高鳴って。
 お姉ちゃんは、まるで分かってるって言うように、優しく私の背中を叩いてくれて。

「でも……」
「でも? どうか、したの?」

 つい口から零れた一言の続きは、口に出来なかった。
 口にしたら、もう変えられないから……どんなに信じたくなくても。
 どんなに嘘だって思っても、雄介くんがキスをしてたのは本当だから。

 でもどんなに否定したって、私の見たものは変わらなくて。
 見たものが変わらないのなら、それは雄介くんとアリサちゃんが抱き合っていたと言う事も、変わらないって言うことで。
 キスしてた事も、変わらないまま。

 気づかなければ良かった、こんな気持ち。
 知らなかったら、きっと祝福できたのに。
 何も知らない私なら、きっと……きっと、どこかで気付いちゃったのかな。

 知らないままだったら、どこかで気付いて、結局苦しかったのかな。
 今でこんなに苦しいんだから、今よりずっと苦しくなったかな?
 ……でも、やっぱり気付かなければ良かった。

 何も言わないで、ただ抱きしめてくれるお姉ちゃんに甘えて。
 自分の甘い考えに泣きたくなって、でもこの気持ちは無くならなくて。
 一瞬だけ、雄介くんを好きにならなければ良かったなんて、考えた。



+++あとがき
 『なの恋』外伝『ARISA』、これにて終幕!
 いやぁ、とても難産だった……とくに最後のなのはの部分。
 ぶっちゃけそれ以外はもう二ヶ月は前に出来てたのに、そこだけで二ヶ月もかかりましたよ。
 最初と過程はノリノリで書けるのに、ラストをまとめるのが異常に苦手な十和です。
 ……えぇ、本当にこれで終わりですよ? 雄介がどっちを選んだとかそういう結末はまったく書く気ないです。
 理由としては作者の想像の楽しみをなくさないためです、えぇ、この後の展開を考えるのがとっても楽しいので。
 一応、この後の展開として考えていたのは、

1、自分の気持ちに気づいたなのはが動き出す、もしくは雄介が自分の初めの気持ちに立ち返る『なのはルート』が約三割。
2、アリサに惹かれずっと自分と一緒に、そして傍に居たのは誰なのかに気づく『アリサルート』も約三割。
3、二人の気持ちも、自分の思いも重すぎて、二人から逃げ出す『逃亡ルート』が約四割。

 みたいな感じでした。 誰かを選ぶのが合計で六割と見るか、逃げ出すのが四割もあると見るのかは皆さんにお任せしますね。
 まぁともかく、作者的にはこのルートをそれぞれニヤニヤしながら想像するのが楽しいので、これ以上はきっと書きません。
 『ARISA』という話自体は、なのはとアリサの二人が自分の気持ちに気づく話が書きたかったので、目標は達成済みです。

 次回は本編更新……ようし、A'sのアニメでも見よう!


前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.04283618927002